JP2001235595A - 放射性固体有機物の処理方法および処理システム - Google Patents

放射性固体有機物の処理方法および処理システム

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JP2001235595A
JP2001235595A JP2000047254A JP2000047254A JP2001235595A JP 2001235595 A JP2001235595 A JP 2001235595A JP 2000047254 A JP2000047254 A JP 2000047254A JP 2000047254 A JP2000047254 A JP 2000047254A JP 2001235595 A JP2001235595 A JP 2001235595A
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solid organic
radioactive solid
oxide
metal oxide
organic substance
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JP2000047254A
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Takashi Nishi
高志 西
Takeyuki Kondo
健之 近藤
Masami Matsuda
将省 松田
Kiyotaka Ueda
清隆 上田
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 放射性固体有機物の減容・固化処理におい
て、熱分解・ガス化による減容と残渣の固型化を単一プ
ロセスで行い、減容比を向上させ、固型化物への放射性
核種の固定化率を高める。 【解決手段】 供給器4により放射性固体有機物に金属
酸化物を添加・混合してなる被処理物を容器3に充填
し、加熱炉5内部において不活性雰囲気中で被処理物が
容器3ごと溶融状態に達するまで加熱処理した後、冷却
凝固させる。また上記金属酸化物が原子力プラントで発
生したクラッド(鉄さび)を含有する。また被処理物を
不活性雰囲気で溶融状態に達するまで加熱処理した後に
おいて、さらに溶融した被処理物を炭素物質(塊状黒鉛
6)の間に流下させて接触させた上で冷却凝固させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は原子力関連施設より
発生する放射性廃棄物の処理に係り、特に放射性固体有
機物の減容および固型化を行う処理方法および処理シス
テムに関する。
【0002】
【従来の技術】原子力発電所、原子力関連の研究所から
発生する放射性廃棄物は、様々な方法で減容・安定化さ
れている。そのうち、紙、ビニル、ゴム、使用済イオン
交換樹脂、廃活性炭等の有機物(固体有機物)に関して
は、焼却、熱分解等の方法により無機化減容処理が行わ
れている。
【0003】焼却処理装置の代表例として、特開平6-12
6176号公報に示すような流動床式焼却炉がある。これ
は、空気を焼却炉内に吹き込み、800℃から1000℃程度
で有機物を酸化分解する方式である。分解した有機物は
二酸化炭素等となって排ガス系へ排出され残った無機物
は焼却灰として流動砂から分離されて排出される。この
方法の利点は、減容比が大きいことにある。
【0004】また、熱分解処理装置の代表例として、特
表平8-504261号公報に示すような熱分解炉がある。この
方式は、400℃から700℃程度の不活性雰囲気下で有機物
を分解し、炭化水素として排ガス系へ排出される。熱分
解しなかった炭素分や無機物はチャーと呼ばれる炭素化
物として排出される。この方法の利点は、上記焼却処理
より低温で処理できること、及び処理に伴う放射性物質
の飛散が少ないことにある。
【0005】一方、湿式で放射性固体有機物を分解する
方法として、特開平11-23793号公報に示されるような超
臨界水による酸化分解が考えられている。この方法の利
点は、固体有機物は完全に分解し、固体有機物に含まれ
ている放射性物質、並びに無機成分は水中に溶解するの
で、一括して放射性廃液としての取扱が可能になる点で
ある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】原子力発電所では、原
子炉冷却水や燃料プール水の浄化に、物理的かつ化学的
に作用するフィルターにあるイオン交換樹脂を使用して
いるが、このイオン交換樹脂はCo-60等の放射性物質を
多量に含むため、作業者が接近不可能なほど強い放射線
を発するものとなり、使用済みのイオン交換樹脂は処理
されずに貯蔵されている。
【0007】放射性固体有機物として、上記イオン交換
樹脂のように放射能レベルが比較的高い廃棄物を想定し
た場合、前記従来技術には次のような課題が考えられ
る。前記焼却処理や熱分解処理では、発生する焼却灰や
チャー等の残渣は、残渣を安定な廃棄体にするために、
セメント固化等の二次処理が必要になる。しかし、これ
らの残渣は、有機物中の放射性物質が濃縮されており、
非常に強い放射線を発する。そのため、安定化処理時に
は、ハンドリングに遠隔操作が必要になるなど、残渣の
取扱いには困難が伴う。さらに、焼却処理では、揮発性
の高いCsなどの核種が飛灰として排ガス処理系の方へ移
行しやすい課題がある。また熱分解法では、分解の進行
に伴って固体有機物のグラファイト化(黒鉛化)が進
み、減容比が大きくできない課題があった。
【0008】また前記、超臨界水酸化法では、高温・高
圧容器での分解になるため処理容量に限界があること、
また分解後の廃液にはイオン交換樹脂の官能基の部分が
無機塩として廃液中に残存するため、廃液の濃縮・乾燥
を行ったとしてもトータルの減容比は大きくできない課
題があった。
【0009】従って本発明の目的は、放射性固体有機物
の分解・ガス化による減容と残渣の固型化を単一プロセ
スで行うことで分解残渣のハンドリング、二次処理を不
要にし、かつ減容比を向上させ、かつ放射性核種の飛散
を低減し、固型化物への放射性核種の固定化率を高める
ことのできる処理方法および処理システムを提供するこ
とである。
【0010】
【課題を解決するための手段】(1)上記の目的を達成
するために、本発明によれば、放射性固体有機物の処理
方法において、放射性固体有機物に金属酸化物を添加し
てなる被処理物を、不活性雰囲気中で被処理物を溶融状
態に達するまで加熱処理した後、冷却凝固させるものと
する。
【0011】これにより、放射性固体有機物の分解・ガ
ス化による減容と、残渣の固型化を単一プロセスで行う
ことができるため、分解残渣のハンドリング、二次処理
を不要にすることができる。また、放射性固体有機物は
不活性雰囲気中での熱分解によってグラファイト化した
後、さらに金属酸化物によってゆるやかに酸化分解を受
けるため、減容性が向上するとともに、放射性核種の飛
散を抑制することができる。また、最終的な固型化物は
金属インゴット固化体であり、自己遮蔽能力が高く固化
体の表面線量率を低減することができる。
【0012】(2)上記の目的を達成するために、本発
明によれば、放射性固体有機物の処理方法において、放
射性固体有機物に金属酸化物を添加してなる被処理物
を、不活性雰囲気中で被処理物が溶融状態に達するまで
加熱処理し、さらに溶融した被処理物を炭素物質に接触
させた後、冷却凝固させるものとする。
【0013】これにより、上記の目的が達成されること
に加え、放射性固体有機物を完全に酸化分解した後に残
存する余分な金属酸化物をも炭素物質により完全に金属
に還元することになり、作成されるインゴット固化体の
均一性を高める効果がある。
【0014】(3)上記(1)または(2)の放射性固
体有機物の処理方法において、好ましくは、加熱処理は
黒鉛を加熱体として利用して行い、その黒鉛を不活性雰
囲気を生成するための還元剤としても利用するものとす
る。これにより、より少ない資材によって効率的な処理
が可能となる。
【0015】(4)上記(1)ないし(3)のいずれか
の放射性固体有機物の処理方法において、好ましくは、
金属酸化物は、その金属の酸化物生成が放射性固体有機
物の熱分解残渣中における炭素から一酸化炭素を生成す
る標準自由エネルギーよりも高い標準自由エネルギーを
有する金属酸化物であるものとする。
【0016】これにより、放射性固体有機物の熱分解残
渣に対してさらに確実に酸化分解を行えるものとなり、
熱分解残渣の一層の減容が達成される。
【0017】(5)上記(1)ないし(3)のいずれか
の放射性固体有機物の処理方法において、好ましくは、
金属酸化物が、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、酸化ニッ
ケル(NiO)、酸化コバルト(CoO)、酸化銅(Cu2O)、酸化鉛
(PbO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化クロム(C
r2O3)、酸化二オブ(Nb2O5)の中から選ばれたものとす
る。これにより、具体的な溶融触媒を用いてのより確実
な熱分解残渣の減容が達成される。
【0018】(6)上記(1)ないし(3)のいずれか
の放射性固体有機物の処理方法において、好ましくは、
金属酸化物が、原子力プラントで発生した鉄さびを含有
するものとする。
【0019】これにより、添加物として用いる金属酸化
物の使用量を減らすことができるとともに、いずれは処
理しなければならない廃棄物にある鉄さび(クラッド)
を溶融触媒として有効に利用でき、トータルの減容比を
さらに向上できるものとなる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に従い詳細に
説明する。図1は本発明による放射性固体有機物の処理
システムの一実施形態を示す概略構成図である。この図
において、本実施形態の処理システムは、イオン交換樹
脂などの廃樹脂を貯蔵する貯蔵タンク1と、貯蔵タンク
1から不図示のポンプにより移送された廃樹脂を脱水す
る脱水機2と、脱水機2の下方に位置され、所定量の廃
樹脂を充填する容器3と、廃樹脂を充填した容器3内に
上方から所定量の金属酸化物を供給する供給器4と、容
器3を収納した状態で、容器3内の廃樹脂と金属酸化物
(被処理物)を不活性雰囲気中で溶融状態に達するまで
加熱処理を施す電磁誘導加熱炉5(以下、加熱炉5とい
う)と、加熱炉5の上部に設けられた内部の空間に連通
する排ガス管16と、そこから排出された分解ガスが順
次通過する二次燃焼器10、減温器11、フィルター1
2、スクラバー13、ブロワー14、排気塔15とを備
えている。
【0021】なお、容器3が供給器4から金属酸化物が
供給される位置には、容器3に振動を与えたりまたは内
部を攪拌することなどにより廃樹脂と金属酸化物を積極
的に混合してもよい。
【0022】加熱炉5は、炉体5aを有し、炉体5aの
外周には加熱コイル7が巻かれ、内部は下方に多数の塊
状黒鉛6が充填されてその上方の空間に容器3が密閉収
納される。加熱炉5の底部には内部の底面に連通する出
湯口8が設けられ、そこから排出される溶融物を受ける
ように受容器9が設置されている。
【0023】排出系ラインにおける二次燃焼器10は固
体有機物の熱分解に伴って発生する分解ガス(炭化水
素、タール分)を燃焼させるものであり、減温器11は
その燃焼ガスの温度を下げ、フィルター12は排ガス中
の粉塵を除去し、そしてスクラバー13は有害ガスであ
る窒素酸化物、イオウ酸化物、塩化水素等を吸収除去す
るものである。
【0024】以下に上記処理システムにより行われる本
発明の放射性固体有機物の処理方法の原理について説明
する。先ず発明者らは次のような実験により本発明に至
った。実験では、固体有機物としてイオン交換樹脂の乾
燥物を用い、これに不純物を模擬して酸化鉄(Fe2O3)を
添加し窒素ガス流通下(不活性雰囲気)で熱天秤を用いて
イオン交換樹脂の熱分解特性を調べた。その結果を図2
に示す。図2は、熱分解温度と重量減少比の関係を、酸
化鉄(Fe2O3)添加の有無で比較して示している。樹脂は
熱分解によりガス化していくので、重量減少比は分解の
程度を意味している。酸化鉄(Fe2O3)を添加しないケー
スでは、熱分解に伴い樹脂のグラファイト化が進み、重
量減少比に限界がある、すなわちいくら温度をあげて
も、それ以上分解が進まないことがわかる。
【0025】一方、酸化鉄(Fe2O3)を添加したケースで
は、1200℃を超えるところから再び重量減少が始まり、
一度グラファイト化した樹脂が再度分解を始めることを
見出した。熱分解後の残渣の主成分は、金属鉄(Fe)であ
ることが分析の結果わかった。反応の物質収支を検討し
た結果、この体系では、概略次のような反応が進行する
ことが明らかになった。 樹脂 → 熱分解残渣(炭素主成分) + 分解ガス(炭
化水素類) 熱分解残渣(炭素主成分)+酸化鉄(Fe2O3) → 鉄+分
解ガス(CO主成分) すなわち、熱分解残渣(炭素主成分)は酸化鉄が持ってい
る酸素原子によってゆるやかに酸化分解を受けガス化し
ていく一方で、酸化鉄は酸素原子を奪われて(還元され
て)鉄に変化し溶融状態になり、最終的な樹脂の熱分解
残渣を取り込んでインゴット化できる。この過程を応用
すれば前述した目的は達成できると考え、本発明に至っ
た。
【0026】そこで本発明の第1の特徴は、放射性固体
有機物に金属酸化物を添加してなる被処理物を、不活性
雰囲気中で被処理物が溶融状態に達するまで加熱処理し
た後、冷却凝固させることにある。
【0027】本発明で言う金属酸化物には、下記条件に
該当するものが使用可能である。 (金属の酸化物生成の標準自由エネルギーΔG)>(炭素から一酸化炭素(CO)を生 成する標準自由エネルギーΔG) (式1) つまり、金属酸化物中の金属の酸化物生成の標準自由エ
ネルギーが、熱分解残渣中の炭素から一酸化炭素(C
O)を生成する標準自由エネルギーより高ければ、金属
酸化物中の酸素原子は熱分解残渣中の炭素に取り込ま
れ、熱分解残渣は酸化分解する。
【0028】この条件に該当する金属酸化物としては、
酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、酸化二ッケル(NiO)、酸化
コバルト(CoO)、酸化銅(Cu2O)、酸化鉛(PbO)、酸化亜鉛
(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化二オ
ブ(Nb2O5)が選ばれる。
【0029】しかし、金属及び酸化物の融点の差が大き
すぎるものは処理が困難になる。例えば、酸化鉛の融点
は鉛の融点よりはるかに高く、酸化鉛が溶融する濃度で
は上記反応で生成した鉛が瞬時に溶融ガス化してしまう
可能性がある。したがって、上記酸化金属の中では特に
酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、酸化二ッケル(NiO)、酸化
コバルト(CoO)、酸化銅(Cu2O)が用いる金属酸化物とし
ては適している。
【0030】また、本発明で言う不活性雰囲気とは、炉
内の空気あるいはその空気中の酸素成分を除去した雰囲
気をいい、不活性ガスである窒素、アルゴン等の希ガス
で加熱炉内を常時パージするか、あるいは黒鉛等の炭素
物質を炉内に共存させることにより実施できる。
【0031】本発明によって、固体有機物は熱分解によ
りグラファイト化した後に、金属酸化物により酸化分解
を受けるので、減容比が向上する。また、この反応によ
り金属酸化物は還元され、金属溶融物になる。最終的な
固体有機物の熱分解残渣はこの金属溶融物に取り込ま
れ、冷却凝固することによりインゴット固化体として固
型化される。すなわち、固体有機物の分解・ガス化によ
る減容と、インゴット固化体への固型化が単一のプロセ
スで行えるので、焼却灰や熱分解残渣のハンドリング、
二次処理を削除することができる。また、固体有機物に
含有していた放射性核種は熱分解によりグラファイト化
する過程でその中に取り込まれ、最終的に金属溶融物に
取り込まれるため、ガス系への揮発ロスが小さいという
効果がある。
【0032】以上、本発明である金属酸化物を用いる効
果を、考えうる代替案との対比で以下にまとめる。ま
ず、溶融媒質として本発明でいう金属酸化物以外の酸化
物(式1の条件にあてはまらない酸化物、例えばSiO2
Al2O3など)を用いた場合、このような酸化物では固体
有機物の熱分解残渣を酸化分解する機能がないため、熱
分解残渣の減容が達成されない。また、酸化物の溶融ス
ラグ中で熱分解残渣が浮上し、冷却凝固されたインゴッ
ト固化体は不均一なものとなり、廃棄体管理上好ましく
ない。熱分解残渣を酸化分解するためには溶融スラグ中
に空気を注入する(つまり燃焼する)方法が考えられる
が、燃焼ガスとして気流中へ揮発性の放射性物質が移行
しやすいため、本発明の目的の一つである固型化物への
放射性物質の固定化率向上が達し得ない。
【0033】次に、溶融媒質として金属酸化物ではなく
金属を用いた場合も、固体有機物の熱分解残渣は酸化分
解を受けず、そのまま残る。ここで金属を用いた場合の
特徴として、金属への炭素(熱分解残渣)の固溶によっ
て熱分解残渣の減容が図られる。しかしながら、金属へ
の炭素の固溶割合には、用いる金属によって限界があ
り、したがって減容比にも限界値が存在する。金属溶融
浴中に空気を注入する(即ち燃焼する)ことによって酸
化分解効果を付与することはできるが、上記したように
気流中へ揮発性の放射性物質が移行しやすいため、本発
明の目的の一つである固型化物への放射性物質の固定化
率向上が達し得ない。
【0034】次に、加熱炉に酸素濃度を制御した空気を
注入して、固体有機物の熱分解残渣を酸化分解する方法
が考えられるが、黒鉛等で雰囲気を調整した加熱炉では
注入酸素が黒鉛側で消費され、熱分解残渣の酸化分解に
有効に作用しない問題がある。また、固体有機物の熱分
解残渣の貧酸素燃焼を達成できたとしても、焼却灰とし
て残存し、固型化のための高線量残渣のハンドリングを
回避し得ない。
【0035】以上の観点から、本発明の目的を達成する
ためには、固体有機物を式1で定義される金属酸化物と
共存(混合)させ、不活性雰囲気で加熱溶融させる処理
が不可欠である。
【0036】本発明の第2の特徴は、上記金属酸化物が
原子力プラントで発生したクラッド(鉄さび)を含有す
ることにある。原子力プラントの冷却水系で発生したク
ラッドは通常、放射能を帯びており、フィルターで捕捉
された後、逆洗スラッジとして保管されている。このよ
うなクラッド(鉄の酸化物が主成分)を本発明の金属酸化
物として用いることにより、添加物として用いる金属酸
化物の使用量を減らすことができるとともに、いずれは
処理しなければならないクラッドに対して、本発明の処
理を適用することにより、酸化物が金属に還元され、し
かもインゴットの状態になることで、クラッド自身が約
1/4に減容できる。従って、固体有機物とクラッドを廃
棄物とした場合、トータルの減容比をさらに向上できる
効果がある。また、最終的には鉄のインゴットになって
比重が高くなるため、セメント固化体に比べ廃棄体とし
ての放射線の遮蔽性能が向上し廃棄体の表面線量率を低
減する効果もある。クラッド(鉄さび)は有機固形物で
あるろ過助剤等を含んでいても、使用可能である。
【0037】本発明の第3の特徴は、放射性固体有機物
に金属酸化物を添加・混合してなる被処理物を、不活性
雰囲気で被処理物が溶融状態に達するまで加熱処理した
後に、さらに溶融した被処理物と炭素物質を接触させた
上で冷却凝固させることにある。これにより、放射性固
体有機物を完全に酸化分解した後において被処理物中に
残存する余分な金属酸化物に対しても、この炭素物質と
の接触により完全に金属に還元するよう作用する。この
ため、作成されるインゴット固化体の均一性を高める効
果がある。ここで炭素物質には黒鉛、コークス、SiCな
どが該当する。接触の手段としては、炭素物質の充填物
の間隙に溶融した被処理物を流下させる方法や、溶融し
た被処理物に粉状、粒状、塊上の炭素物質を添加する方
法が該当する。
【0038】以上の原理に基づいて図1に示した処理シ
ステムは構成したものであり、以下当該システムによる
減容・固化処理の実施の手順について説明する。放射性
固体有機物として原子力プラントで使用されたイオン交
換樹脂を処理する場合を例に説明する。
【0039】まず廃樹脂のスラリーを貯蔵タンク1から
ポンプで移送し、脱水器2へ供給する。脱水器2で含水
率50%程度まで水を切り、容器3へ所定量充填する。次
に金属酸化物として工業用ベンガラを供給器4から所定
量、容器3へ供給する。その後、容器3は電磁誘導加熱
炉5へ移送・投入される。電磁誘導加熱炉5には、塊状
黒鉛6を発熱体として充填しており、炉外周に巻かれた
加熱コイル7からの高周波磁場によりジュール発熱する
仕組みになっている。炉内は黒鉛の存在により不活性雰
囲気が維持されている。炉内は初期段階では1300℃に保
持されている。炉内に設置された容器3は1300℃より高
い融点のSUS容器が望ましい。容器内の樹脂は、加熱炉
により乾燥、熱分解を経てグラファイト化し、添加した
ベンガラと反応して90%以上が分解・ガス化する。添加
したベンガラは鉄に還元され溶融状態になる。ここで炉
内温度を1500℃に上げ、SUS製の容器3を溶融し、溶融
物は塊状黒鉛6の間隙を流下し、出湯口8から排出、受
容器9へ注入され自然冷却、凝固してインゴット固化体
となる。添加したベンガラの中で還元されなかった成分
は塊状黒鉛との接触で直ちに金属鉄に還元されるため、
溶融固化体の均一性が高まる。樹脂の分解に伴い発生す
る分解ガスは、排ガス管16から排出されて二次燃焼器
10で可燃成分を燃焼させ、減温器11を介し、フィルター
12でダスト成分を除去し、スクラバー13で窒素酸化物、
イオウ酸化物等の有害成分を吸収した後、ブロア14を介
して、排気塔15から排出される。
【0040】本実施形態での物量バランスは次のように
なった。内容積120LのSUS容器(肉厚約2mm)に、 脱水樹脂:80kg(100L相当) 工業用ベンガラ:40kg(20L相当) を添加した。溶融炉から排出、凝固したインゴット固化
体は約6Lであり、樹脂の減容比は約1/17(=6/10
0)となった。ここで、金属酸化物として工業用ベンガ
ラの替わりに発電所で発生する廃棄物の一種であるクラ
ッドを用いた場合、トータルの減容比は1/20(=6/
(100+20))に向上する。
【0041】本実施形態により、放射性廃樹脂の分解・
ガス化による減容と、残渣の固型化を単一プロセスで行
うことができ、分解残渣のハンドリング、二次処理が不
要になる。また、通常の熱分解処理に比べ、減容比が3
倍以上向上できる。また、放射性核種は、金属インゴッ
トに均一に溶け込むため、放射性核種の飛散を低減でき
るとともに、インゴットの自己遮蔽効果により、固化体
の表面線量率を低減できる効果が得られる。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、放射性固体有機物の処
理方法に関して、放射性固体有機物の分解・ガス化によ
る減容と、残渣の固型化を単一プロセスで行うことがで
きるため、分解残渣のハンドリング、二次処理を不要に
することができる。
【0043】また本発明によれば、放射性固体有機物の
処理方法に関して、放射性固体有機物は不活性雰囲気で
の熱分解によってグラファイト化した後、さらに金属酸
化物によってゆるやかに酸化分解を受けるため、減容性
が向上するとともに、放射性核種の飛散を抑制すること
ができる。
【0044】また本発明によれば、放射性固体有機物の
処理方法に関して、最終的な固型化物は金属インゴット
固化体であり、自己遮蔽能力が高い。これによって、固
化体の表面線量率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による放射性固体有機物の処理システム
の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】イオン交換樹脂の熱分解特性を示す図であり、
熱分解温度と重量減少比の関係を酸化鉄(Fe2O3)添加の
有無で比較した図である。
【符号の説明】
1 貯蔵タンク 2 脱水機 3 容器 4 供給器 5 電磁誘導加熱炉 5a炉体 6 塊状黒鉛 7 加熱コイル 8 出湯口 9 受容器 10 二次燃焼器 11 減温器 12 フィルター 13 スクラバー 14 ブロワー 15 排気塔 16 排ガス管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B09B 3/00 F23G 5/00 115B F23G 5/00 ZAB 7/00 ZABJ 115 G21F 9/32 A 7/00 ZAB A62D 3/00 ZAB G21F 9/32 B09B 3/00 ZAB // A62D 3/00 ZAB 303Z (72)発明者 松田 将省 茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株 式会社日立製作所電力・電機開発研究所内 (72)発明者 上田 清隆 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所原子力事業部内 Fターム(参考) 2E191 BA11 BB00 BB10 BC01 BD01 BD11 3K061 AA18 AB03 AC09 BA05 CA15 DA04 DA15 DA18 4D004 AA06 AB09 AC05 CA27 CA28 CA29 CA36 CA37 CA45 CB04 CB33 CB43 CC11

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】放射性固体有機物に金属酸化物を添加して
    なる被処理物を、不活性雰囲気で前記被処理物が溶融状
    態に達するまで加熱処理した後、冷却凝固させることを
    特徴とする放射性固体有機物の処理方法。
  2. 【請求項2】放射性固体有機物に金属酸化物を添加して
    なる被処理物を、不活性雰囲気で前記被処理物が溶融状
    態に達するまで加熱処理し、さらに溶融した前記被処理
    物を炭素物質に接触させた後、冷却凝固させることを特
    徴とする放射性固体有機物の処理方法。
  3. 【請求項3】請求項1または2記載の放射性固体有機物
    の処理方法において、 前記加熱処理は黒鉛を加熱体として利用して行い、前記
    黒鉛を前記不活性雰囲気を生成するための還元剤として
    も利用することを特徴とする放射性固体有機物の処理方
    法。
  4. 【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1項記載の放
    射性固体有機物の処理方法において、 前記金属酸化物は、その金属の酸化物生成が前記放射性
    固体有機物の熱分解残渣中における炭素から一酸化炭素
    を生成する標準自由エネルギーよりも高い標準自由エネ
    ルギーを有する金属酸化物であることを特徴とする放射
    性固体有機物の処理方法。
  5. 【請求項5】請求項1ないし3のいずれか1項記載の放
    射性固体有機物の処理方法において、 前記金属酸化物が、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、酸化
    ニッケル(NiO)、酸化コバルト(CoO)、酸化銅(Cu2O)、酸
    化鉛(PbO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化クロ
    ム(Cr2O3)、酸化二オブ(Nb2O5)の中から選ばれたもので
    あることを特徴とする放射性固体有機物の処理方法。
  6. 【請求項6】請求項1ないし3のいずれか1項記載の放
    射性固体有機物の処理方法において、 前記金属酸化物が、原子力プラントで発生した鉄さびを
    含有することを特徴とする放射性固体有機物の処理方
    法。
  7. 【請求項7】放射性固体有機物に金属酸化物を添加して
    被処理物とする金属酸化物供給手段と、 前記被処理物を不活性雰囲気中で溶融状態に達するまで
    加熱処理を施す加熱炉と、 溶融した前記被処理物質を冷却凝固させる受容器とを備
    えることを特徴とする放射性固体有機物の処理システ
    ム。
  8. 【請求項8】放射性固体有機物に金属酸化物を添加して
    被処理物とする金属酸化物供給手段と、 前記被処理物を不活性雰囲気中で溶融状態に達するまで
    加熱処理を施し、かつ前記被処理物を炭素物質に接触さ
    せる加熱炉と、 溶融した前記被処理物質を冷却凝固させる受容器とを備
    えることを特徴とする放射性固体有機物の処理システ
    ム。
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