JP2004293613A - ブレーキダウンシフト判別戻し式車輌用自動変速装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブレーキ作動に応じて変速装置の変速比を上げるブレーキダウンシフトを行ったとき、これをその後のアクセルペダルの踏込みと踏込み低減により解除せんとするとき、通常走行状態と急減速状態とを判別して対処する。
【解決手段】アクセル開度が所定値を越えた後アクセル開度増大速度が第一の所定の負の値以下に低下することによりブレーキダウンシフトの解除を開始し、その後所定時間内にアクセル開度増大速度が前記第一の負の値より小さい第二の所定の負の値以下に低下するときにはブレーキダウンシフトの解除を中止してブレーキダウンシフトを再開する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輌用変速装置に係り、特にブレーキの作動に応じて変速比を増大させるブレーキダウンシフトに関し改良された車輌用変速装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
遊星歯車機構とクラッチの組合せ等により数段の変速段の間に切り換えられる有段変速機構またはベルト式或いはトロイダル式の無段変速機構による変速装置を備え、変速段または変速比が車輌の運転状態に応じて自動的に制御されるようになった自動車等の車輌に於いては、車輌の走行中にブレーキが作動されたとき、制動作用をより効果的に発揮させるべく、変速装置の変速比を自動的に上げる制御を行うブレーキダウンシフトが知られている。特に、無段変速装置に於いては、変速比が小幅に変化する多数の変速段を設定することができるので、幅広い運転領域にわたってより繊細なブレーキダウンシフトを実行することができる。
【0003】
図3は無段変速装置を含む公知の車輌駆動系の基本構成を示す概略図である。図に於いて、10はエンジンであり、直結クラッチ12を備えたトルクコンバータ14、歯車変速機構16、無段変速機(CVT)18、プロペラ軸20、差動歯車22、一対の車軸24を経て一対の駆動輪26を駆動するようになっている。エンジン10、トルクコンバータの直結クラッチ12、歯車変速機構16、無段変速機18の作動はマイクロコンピュータを備えた電子制御装置(ECU)28により制御されるようになっている。電子制御装置28には、図には示されていないアクセルペダルおよびブレーキペダルよりそれぞれの踏み込みに関する信号、車速センサ30より車速に関する信号、シフトレバーの如き操作端を備えた変速操作装置32より運転者による変速指令信号、その他の電子制御装置の作動に必要が情報を与える信号が供給されている。
【0004】
変速操作装置32は、一例として、図示の如くP、R、N、D、M、+、−の各シフト位置を備えたJ字型の溝と、これに沿って各シフト位置の間に手にて移動されるシフトレバー(図示せず)とを備えている。P、R、Nはそれぞれパーキング、リバース、ニュートラルのシフト位置である。シフトレバーがD位置にあるとき、無段変速機18は電子制御装置28の制御判断に従って所定の変速比を達成する状態に制御され、またシフトレバーがM位置にあるとき、無段変速機18は運転者によるシフトレバーの操作に従って所定の変速比を達成する状態に制御される。この場合、図示の公知例に於いては、シフトレバーは運転者がこれを手にて操作することによりM位置より+位置または−位置へ任意にシフトされるが、運転者がシフトレバーに加える力を解除すると、シフトレバーはばね力によりM位置に戻されるようになっている。そしてシフトレバーがM位置より+位置へシフトされる度に無段変速機は1段階だけアップシフトされ、またシフトレバーがM位置より−位置へシフトされる度に無段変速機は1段階だけダウンシフトされるようになっている。
【0005】
即ち、無段変速機18による変速は、自動変速モードにて作動されるときには、図4に示す如きCVT入力回転数を縦軸とし車速を横軸とする座標系で見て、例えば変速線A−B−Cの如き経過を経て無段階にアップシフトされ、また変速線C−Dの如き経過を経て無段階にダウンシフトされるが、手動変速モードにて作動されるときには、図にR1〜R9にて示す如く予め複数の変速段が設定され、シフトレバーがM位置より+位置または−位置へシフトされる度に、これらの予め設定された変速段の間で1段ずつアップシフト側またはダウンシフト側へ変速段が切換えられ、例えばアップシフトは変速線L−M−N−O−… …−Pの如き経過を経て段階的に行われ、ダウンシフトは変速線P−Q−R−… …−Sの如き経過を経て段階的に行われるようになっている。尚、かかる段階的変速段は自動的に行われるブレーキダウンシフトに対し用いられてよい。
【0006】
ブレーキダウンシフトについては、スロットル開度と車速とに基づいて変速段を設定するに当たり、平坦路走行中であるか否か、またカーブ走行中であるか否かによって制御を変えることが下記の特許文献1に記載されている。また下記の特許文献2には、ブレーキダウンシフトが行われた後、車輌が車速とアクセル開度との関係により定まる所定の運転領域にあり、かつアクセル開度の踏込み側への変化が所定値以下か、またはアクセル開度の積算値が所定値以下の場合にブレーキダウンシフトを解除するが、ブレーキダウンシフト後、アクセルが踏込み側へわずかしかが踏み込まれない場合や所定の積算値以上に踏み込まれない場合にブレーキダウンシフト状態を維持することが記載されている。
【特許文献1】
特開平8−152060号公報
【特許文献2】
特開平11−218317号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ブレーキダウンシフトが行われたとき、これを解除することについては、上記特許文献2にも記載されている如く、その後アクセルペダルが踏まれるときまでダウンシフト状態を保って車輌の加速性を高めておき、アクセル開度の踏込み側への変化が所定値以下となったとき、即ちアクセル開度増大速度が所定の負の値以下に低下したとき、これをダウンシフト解除のときとすることが考えられるが、この点に関し、上記特許文献2に於ける如く、ダウンシフト後、アクセルペダルが踏み込み側へわずかしか踏まれない場合や所定の積算値以上に踏まれない場合にダウンシフトを維持する制御では、運転者が一旦ある程度以上に大きくアクセルペダルを踏み込んでしまうと、その後で運転者が再度車輌を急減速しようとしてアクセルペダルを急速に戻しても、そのままダウンシフトを解除してしまい、再度の急減速にはダウンシフトが得られなくなるという問題がある。
【0008】
本発明は、ブレーキダウンシフトの解除制御に於ける上記の問題に着目し、この点に関し改良された車輌用変速装置を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するものとして、本発明は、変速機構と、前記変速機構の変速比を変更する変速制御手段とを有し、前記変速制御手段はブレーキの作動に応じて変速比を増大させたとき、アクセル開度が所定値を越えた後アクセル開度増大速度が第一の所定の負の値以下に低下することにより前記のブレーキ作動に応じた変速比増大の解除を開始し、その後所定時間内にアクセル開度増大速度が前記第一の負の値より小さい第二の所定の負の値以下に低下するとき前記のブレーキ作動に応じた変速比増大の解除を中止してブレーキ作動に応じた変速比増大を再開するようになっていることを特徴とする車輌用変速装置を提案するものである。
【0010】
【発明の作用及び効果】
上記の如く、車輌用変速装置が、変速機構と、変速機構の変速比を変更する変速制御手段とを有し、変速制御手段がブレーキの作動に応じて変速比を増大させたとき、アクセル開度が所定値を越えた後アクセル開度増大速度が第一の所定の負の値以下に低下することにより前記のブレーキ作動に応じた変速比増大の解除を開始し、その後所定時間内にアクセル開度増大速度が前記第一の負の値より小さい第二の所定の負の値以下に低下するとき前記のブレーキ作動に応じた変速比増大の解除を中止してブレーキ作動に応じた変速比増大を再開するようになっていれば、ブレーキダウンシフトが行われた後、運転者がアクセルペダルを踏むことに応じてブレーキダウンシフトを解除する制御を行なうとき、運転者がその後ブレーキダウンシフトの解除に適した運転を行なわんとしているのか、或いは一旦加速を試みたが直ぐまた車輌を減速しようとし、ダウンシフト解除を中止してダウンシフトを続けることが望まれる状態であるのかを判別し、いずれの場合にも車輌の運転状態によりよく適合した変速制御を行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1はブレーキダウンシフトをアクセルペダルの踏込みに応じて解除しようとするときの2つの典型的な場合の変速指令(変速段または変速比)、アクセル開度、アクセル開度変化速度の時間的経過を時間について対応させて示すグラフである。今、変速装置がn+1段(または変速比γu)からn段(または変速比γd)にブレーキダウンシフトされた状態にある時点t0から始まって、時点t1にてアクセルペダルが踏み込まれ、アクセル開度は時点t2にて或る限界値Pacを越え、更に時点t3まで増大された後、これより減小に転じたとする。この場合、上記の特許文献2にも記載されている公知のブレーキダウンシフト解除制御は、アクセル開度が一度或る程度以上に開かれて車輌の加速が行われる間、ブレーキダウンシフトによる変速比増大状態を車輌の加速に有効に利用し、その後、アクセル開度が減小に転じたことを確認できた時点t4にてブレーキダウンシフト解除指令を発することである。かかるブレーキダウンシフト解除制御は、アクセル開度がその後グラフにて実線により示されている如く変化して車輌が元の変速段または変速比に戻って程々のアクセル開度にて運行されるときには適当である。
【0012】
しかし、場合によっては、一旦加速が開始されても、再び急減速が求められ、アクセル開度は図中点線にて示す如く急速に閉じられることも多々生ずる。このことは時点t4に於けるアクセル開度変化速度の検出のみによっては知ることができない。そこで、ブレーキダウンシフト後、アクセルペダルが踏まれ、次いでそれが弛められることに応じてダウンシフトを解除するに当って、アクセル開度が或る適当な所定値Pacを越えた後、アクセル開度変化速度が或る適当な第一の負の値Dpa1以下に下がることを検出してダウンシフト解除の変速指令を出すが、それより或る適当な所定時間内にアクセル開度変化速度が図中点線にて示す如く前記第一の負の値より所定偏差だけ更に低い或る適当な第二の値Dpa2以下に下がるときには、ダウンシフト解除を取りやめ、ブレーキダウンシフトを再開する変速指令を出すようにしておけば、アクセルペダルの操作状況を応じて、図中実線にて示す如き運転状態と図中点線にて示す如き運転状態とを判別し、それぞれに対応した制御を行うことができる。
【0013】
図2は上記の如き判別制御を行う本発明による車輌用変速装置の一つの実施の形態をその作動態様の形にて示すフローチャートである。尚、変速装置のハード的構成は、その概略に於いて図3に示し且つ説明した公知の構成と同じであってよい。かかるフローチャートによる制御は、車輌の始動に当ってイグニションスイッチが閉じられると同時に開始され、車輌の運転中常時十数ミリセカンドないし数十ミリセカンドの周期にて繰り返されるようになっていてよい。
【0014】
制御が開始されると、ステップ1に於いてアクセル開度Pa、ブレーキ信号、変速段とその履歴、その他の制御に必要な信号の読み込みが行われる。次いでステップ2にてアクセル開度の変化速度Dpaが計算される。ステップ3にては、フラグFが1であるか否かが判断される。かかるフラグは通常制御の開始時に0にリセットされるので、制御が開始後初めてここに至ったときには、答はノーであり、制御はステップ4へ進む。
【0015】
ステップ4に於いては、ブレーキダウンシフトがなされた後か否かが判断される。答がノーのときにはこの回のフローチャートに沿った制御はこれにて終了するが、答がイエスときには制御はステップ5へ進み、アクセル開度Paが図1に例示した如きある所定の限界値Pacを越えたか否かが判断される。ここでも答がノーであればこの回の制御はこれにて終了するが、答がイエスであれば制御はステップ6へ進み、ステップ2にて計算されたアクセル開度変化速度Dpaが図1に例示した如き所定の第一の負の値Dpa1以下であるか否かが判断される。答がノーであれば今回の制御はこれにて終了するが、答がイエスであれば制御はステップ7へ進み、ブレーキダウンシフトを解除する指令が発せられる。次いで制御はステップ8へ進み、図3の電子制御装置28の如き電子制御装置内に組み込まれたタイマがスタートされ、フラグFが1にセットされる。
【0016】
制御が一度ステップ7に至り、フラグFが1にセットされると、次回からのフローチャートに沿う制御は、ステップ3の答がイエスとなることによってこれよりステップ9へ進み、ステップ8にてスタートされたタイマがタイムアウトしたか否かが判断される。答がノーである間、制御はステップ10へ進み、アクセル開度変化速度Dpaが図1に例示した如き所定の第二の負の値Dpa2以下であるか否かが判断される。答がノーであれば今回の制御はこれにて終了するが、答がイエスになると制御はステップ11へ進み、ブレーキダウンシフトを再開する指令が発せられる。このとき制御はステップ12へ進み、タイマがストップされ、フラグFが0にリセットされる。
【0017】
こうして図1に於いて実線と破線により例示した如きブレーキダウンシフト後のアクセルの開きと戻しに関する2種類の異なる態様に対し個別に対応して、それぞれによりよく適合したブレーキダウンシフトの戻し制御が行なわれる。
【0018】
以上に於いては本発明を一つの実施の形態について詳細に説明したが、かかる実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブレーキダウンシフトをアクセルペダルの踏込みに応じて解除しようとするときの2つの典型的な場合の変速指令(変速段または変速比)、アクセル開度、アクセル開度変化速度の時間的経過を時間について対応させて示すグラフ。
【図2】図1に示す如き判別制御を行う本発明による車輌用変速装置の一つの実施の形態をその作動態様の形にて示すフローチャート。
【図3】本発明による改良の対象となる車輌用変速装置を含む車輌駆動系の公知の基本構成例を示す概略図。
【図4】図3に示す車輌用変速装置の公知の変速作動態様をCVT入口回転数を縦軸とし車速を横軸とする座標系に於いて示す線図。
【符号の説明】
10…エンジン、12…直結クラッチ、14…トルクコンバータ、16…歯車変速機構、18…無段変速機(CVT)、20…プロペラ軸、22…差動歯車、24…車軸、26…駆動輪、28…電子制御装置(ECU)、30…車速センサ、32…変速操作装置

Claims (1)

  1. 変速機構と、前記変速機構の変速比を変更する変速制御手段とを有し、前記変速制御手段はブレーキの作動に応じて変速比を増大させたとき、アクセル開度が所定値を越えた後アクセル開度増大速度が第一の所定の負の値以下に低下することにより前記のブレーキ作動に応じた変速比増大の解除を開始し、その後所定時間内にアクセル開度増大速度が前記第一の負の値より小さい第二の所定の負の値以下に低下するとき前記のブレーキ作動に応じた変速比増大の解除を中止してブレーキ作動に応じた変速比増大を再開するようになっていることを特徴とする車輌用変速装置。
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