JP2004293419A - 火花点火式直噴エンジン - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料噴霧先端の混合気が過剰に濃くなることを抑制し、成層運転領域を高負荷側に拡大することが可能な火花点火式直噴エンジンを提供することにある。
【解決手段】少なくとも低負荷を含む成層運転領域で、点火プラグ16周りに濃い混合気が成層化されるよう燃料噴射弁18を制御するもので、同一燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を変更可能な開弁期間変更手段を備え、該手段は、成層運転領域における高負荷領域では、当該高負荷領域と同一回転数での低負荷運転領域に対して、燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を大きくする。
従って、成層運転領域における高負荷領域では燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合が大きくされ、単位時間当たりに噴射される燃料噴射量が減少されるため、燃料噴霧の移動速度を低下でき、点火プラグ16周りに位置する燃料噴霧先端の混合気濃度が過剰に濃くなるのを抑制できる。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも低負荷を含む成層運転領域で、点火プラグ16周りに濃い混合気が成層化されるよう燃料噴射弁18を制御するもので、同一燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を変更可能な開弁期間変更手段を備え、該手段は、成層運転領域における高負荷領域では、当該高負荷領域と同一回転数での低負荷運転領域に対して、燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を大きくする。
従って、成層運転領域における高負荷領域では燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合が大きくされ、単位時間当たりに噴射される燃料噴射量が減少されるため、燃料噴霧の移動速度を低下でき、点火プラグ16周りに位置する燃料噴霧先端の混合気濃度が過剰に濃くなるのを抑制できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花点火式直噴エンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、燃焼室に点火プラグ及び燃料噴射弁を備え、燃焼室内に直接燃料を噴射供給する火花点火式直噴エンジンは知られている。このような火花点火式直噴エンジンにおいては、点火プラグ周りに濃い混合気を存在させるとともに、点火プラグから遠い燃焼室周辺には相対的に薄い混合気を存在させ、燃焼室内における混合気の空燃比をリーン化する、所謂成層化燃焼を行い、燃費向上を図ることが知られている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の成層化燃焼は、通常、低負荷運転領域で行われるが、更なる燃費向上を図るためには、この成層化燃焼が行われる運転領域を可及的に高い負荷領域まで広げることが望まれている。
しかしながら、単に、成層化燃焼を高負荷側に拡大すると、負荷の増加に伴う燃料噴射量の増加によって点火プラグ周りの混合気が過剰に濃くなり、着火性が悪化するという問題がある。
つまり、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧の濃度分布は、図11に示すように、燃料噴霧先端側になる程、つまり、燃料噴射弁から遠ざかり点火プラグに近づくにつれて濃い分布となる。
これは、時間的に前で噴射された燃料噴霧に、後から噴射された燃料噴霧が追いつき、燃料噴霧先端側に混合気が集まるものと推定される。
従って、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧は、低負荷では、可燃濃度範囲に収まるものの、高負荷では、燃料噴射量が増加されるため、その増加分濃くなり、可燃濃度範囲よりも濃くなってしまうものである。
【0004】
尚、下記特許文献1には、燃料噴射前半の噴射率を高めるとともに、燃料噴射末期における噴射率を低下させることにより、燃料噴射末期に噴射された燃料により形成される混合気の移動速度を低下させ、点火プラグに可燃混合気が接触する期間を延長し、成層燃焼領域を可及的に高負荷側に拡大を図ることが開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2003−013739号公報
【0006】
しかしながら、上述の先行技術においては、燃料噴射末期は噴射率が低下され、混合気の移動速度が低下させられるものの、その低下分を補うため燃料噴射前半の噴射率が高められており、燃料噴射前半における混合気の移動速度は逆に増加するため、トータルとして混合気の移動速度を低下させることはできず、燃料噴霧先端における混合気の濃度が過剰に濃くなることを抑制することはできないものである。
つまり、先行技術では燃料噴射期間中における噴射率が変えられても全体の燃料噴射期間は一定とされているため、混合気の移動速度を変えることはできず、燃料噴霧先端の混合気が濃くなるという問題を解消することはできない。
【0007】
本発明は、以上のような課題に勘案してなされたもので、その目的は、燃料噴霧先端の混合気が過剰に濃くなることを抑制して、成層運転領域を高負荷側に拡大することが可能な火花点火式直噴エンジンを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明にあってはその解決手法として次のようにしてある。すなわち、本発明の第1の構成において、燃焼室の略中央に配設される点火プラグと、
上記燃焼室内に配設され、上記点火プラグの電極方向に燃料噴射方向が設定される燃料噴射弁と、
少なくとも低負荷を含む成層運転領域において、上記点火プラグ周りに濃い混合気が成層化されるよう上記燃料噴射弁を制御する燃料噴射制御手段とを備える火花点火式直噴エンジンにおいて、
同一燃料噴射量に対する上記燃料噴射弁の開弁期間の割合を変更可能な開弁期間変更手段を備え、
該開弁期間変更手段は、成層運転領域における高負荷領域においては、当該高負荷領域と同一回転数での低負荷運転領域に対して、燃料噴射量に対する上記燃料噴射弁の開弁期間の割合を大きくするよう構成してある。
本発明の第1の構成によれば、成層運転領域における高負荷領域においては、当該高負荷領域と同一回転数での低負荷運転領域に対して、燃料噴射量に対する上記燃料噴射弁の開弁期間の割合が大きくされるため、単位時間当たりに噴射される燃料噴射量が減少され、燃料噴霧の移動速度を低下させることができるため、点火プラグ周りに位置することになる燃料噴霧先端の混合気濃度が過剰に濃くなるのを抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の構成において、上記開弁期間変更手段は、上記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更する燃圧変更手段と、上記燃料噴射弁の針弁リフト量を変更する針弁リフト量変更手段との内、少なくとも一方から構成してある。
同一噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を変えるたるには、燃料噴射弁の針弁リフト量一定の基で燃圧を変える、または、燃圧一定の基で燃料噴射弁の針弁リフト量を変えることの内、いずれか一方を行うことによって達成することができる。
本発明の第2の構成によれば、燃圧変更手段または針弁リフト量変更手段によって燃料噴射量に対する上記燃料噴射弁の開弁期間の割合が大きくすることができる。
【0010】
本発明の第3の構成において、上記点火プラグによる点火時期を制御する点火時期制御手段と、
上記燃焼室内におけるエンジンの燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段と、
上記燃料噴射制御手段による成層運転領域において、上記燃焼状態検出手段により検出されたエンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束するよう、上記燃料噴射制御手段と上記点火時期制御手段との内、少なくとも一方を制御する燃焼制御手段とを備え、
上記開弁期間変更手段は、上記燃焼状態検出手段により検出された燃焼状態に基づいてエンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束するよう制御可能に構成してある。
本発明の第3の構成によれば、燃料噴射制御手段または点火時期制御手段によるエンジンの燃焼状態の安定範囲への収束制御に加え、燃料噴霧先端の混合気が過剰に濃くなることを抑制するための開弁期間変更手段を利用してエンジンの燃焼状態の安定範囲への収束制御が可能とされるため、エンジンの燃焼状態を制御するための制御範囲を実質的に拡大することができ、更にエンジンの燃焼状態の安定化を図ることができる。
【0011】
本発明の第4の構成において、上記開弁期間変更手段は、上記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更する燃圧変更手段により構成されるとともに、該燃圧変更手段は、上記燃焼制御手段によりエンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束しない時のみ、エンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束するよう燃圧を制御するよう構成してある。
通常、火花点火式直噴エンジンにおいては、運転状態に応じて燃圧を変える必要があるため、可変式の高圧レギュレータや電動高圧燃料ポンプ等、もともと燃圧変更手段が備えられている。
従って、開弁期間変更手段としては、燃圧変更手段を利用することが望ましいものであるが、燃圧変更手段はその応答性が悪く、変化の速いエンジンの燃焼状態の変化に十分追従することができないため、常時、燃圧を変化させてエンジンの燃焼状態を制御すると、却って発散するおそれがある。
本発明の第4の構成によれば、エンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束しない時のみ、エンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束するよう燃圧が制御されるため、通常は、燃料噴射制御または点火時期制御の内、少なくとも一方に基づいて応答性よくエンジンの燃焼状態が安定範囲内に収束するよう制御される一方で、燃料噴射制御または点火時期制御の少なくとも一方によってエンジンの燃焼状態を安定範囲に収束できない時のみ、非常対応的に燃圧制御によってエンジンの燃焼状態が制御されるため、発散への影響を極力抑制しつつ、エンジンの燃焼安定性を確保することができる。
【0012】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料噴霧先端の混合気が過剰に濃くなることを抑制して、成層運転領域を高負荷側に拡大することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る火花式直噴エンジン1の全体構成図を示す。
このエンジン1は、複数の気筒、例えば、4つの気筒2、2、2、2(図1では1つのみ開示)が直列に設けられたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配置されたシリンダヘッド4とを有しており、各気筒2内にはピストン5が上下方向に往復動可能に嵌挿されている。この各ピストン5とシリンダヘッド4との間の気筒2内には燃焼室6がそれぞれ区画それており、その燃焼室6は、図2に拡大して示すように、気筒2の天井部における略中央部からシリンダヘッド4の下端面付近まで延びる2つの傾斜面を形成することにより、互いに差し掛けられた屋根のような形状をなすいわゆるペントルーフ型燃焼室とされている。一方、ピストン5よりも下方のシリンダブロック3内にはクランク軸7が回転自在に支持されており、このクランク軸7とピストン5とはコネクティングロッド8を介して連結されている。
【0014】
シリンダヘッド4には、図1、図2に示すように、吸気ポート10及び排気ポート11がそれぞれ2つずつ(図1、図2では、いずれも1つのみ開示)形成されている。この2つの吸気ポート10、10は、その各一端が各気筒2天井部における傾斜面の一方から燃焼室6に開口され、その各他端側が燃焼室6から斜め上方に延びて、エンジン1の一側面(図1、図2中右側面)に互いに独立して開口されており、その各吸気ポート10、10の一端開口には、それぞれ所定のタイミングで開閉作動される吸気弁12、12が配置されている。(図1、図2では、いずれも1つのみ開示)2つの排気ポート11、11には、その各一端が各気筒2の天井部における傾斜面の他方から燃焼室6に開口され、その各他端側は、途中で1つに合流した後略水平に延びてエンジン1の他端面(図1、図2中左側面)に開口されており、その各排気ポート11、11の一端開口には、それぞれ所定のタイミングで開閉作動される排気弁13、13が配置されている。(図1、図2では、いずれも1つのみ開示)
【0015】
エンジン1の一側面には、図1に示すように、各気筒2の吸気ポート10、10にそれぞれ連通する吸気通路30が接続されている。この吸気通路30は、エンジン1の燃焼室6に対してエアクリーナ(不図示)で濾過された吸気を供給するためのものであり、その上流側から下流側に向かって順に、エンジン1に吸入される吸入空気量を検出するためのホットワイヤ式エアフローセンサ31と、吸気通路26を絞る電気式スロットル弁32と、サージタンク33とがそれぞれ配設されている。電気式スロットル弁32は、アクセルペダル(不図示)に対し機械的に連結されておらず、図示しない電気式駆動モータにより駆動されて開閉されるようになっている。
【0016】
また、サージタンク33よりも下流側の吸気通路30は、各気筒2毎に分岐する独立通路とされていて、その各独立通路の下流端部がさらに2つに分岐してそれぞれ吸気ポート10、10に連通されている。
【0017】
また、燃焼室6の上部には、4つの吸排気弁12、12、13、13に囲まれた燃焼室6の略中心に、点火プラグ16が配設されている。この点火プラグ16の先端の電極は、燃焼室6の天井部から所定距離だけ突出した位置にあり、その点火プラグ16の基端部には点火回路17が接続されており、各気筒2毎に所定のタイミングで点火プラグ16に通電するようになっている。
【0018】
また、燃焼室6の周縁部には、2つの吸気ポート10、10間で、その各吸気ポート10、10下方に燃料噴射弁18が配設されている。この燃料噴射弁18は、複数の噴口を備えたマルチホール型燃料噴射弁であって、各噴項から噴射される燃料噴霧が直接点火プラグ16周辺に指向するよう、その燃料噴射弁18の燃料噴射方向が設定されている。これによって、スプレーガイド式の火花点火式直噴エンジン1が構成されている。
【0019】
燃料噴射弁18の基端部には、全気筒2、2、2、2に共通の燃料分配管19が接続されており、その燃料分配管19は、燃料供給系20から供給される高圧の燃料を各気筒2に分配供給するようになっている。この燃料供給系20は、例えば、図3(a)に示すように構成され、燃料分配管19と燃料タンク21とを連通する燃料通路22の上流側から下流側に向かって、低圧燃料ポンプ23、低圧レギュレータ24、燃料フィルタ25、高圧燃料ポンプ26及び燃圧を調節可能とされる高圧レギュレータ27が順に配設されており、高圧燃料ポンプ26及び高圧レギュレータ27は、リターン通路29により燃料タンク21側に接続されている。尚、符合28は、燃料タンク21側に戻す燃料の圧力状態を整える低圧レギュレータである。
【0020】
これにより、低圧燃料ポンプ23により燃料タンク21から吸い上げられた燃料は、低圧レギュレータ24により調圧された後、燃料フィルタ25を介して高圧燃料ポンプ26に圧送される。そして、高圧燃料ポンプ26によって昇圧した燃料の一部を高圧レギュレータ27により流量調節しながらリターン通路29によって燃料タンク21側に戻すことで、燃料分配管19へ供給する燃料の圧力状態を適正値、例えば、7MPa〜20MPaに調整する。
【0021】
尚、燃料供給系20の構成は、図3(a)に限られず、例えば、図3(b)に示す燃料供給系20’のように高圧レギュレータ27を省略することも可能である。この場合、燃料の吐出量を広い範囲に亘って変更することのできる電動高圧燃料ポンプ29を使用し、この電動高圧燃料ポンプ29から燃料分配管19への燃料の吐出量を可変調節することによって、燃料の圧力状態を制御することかできる。
【0022】
一方、エンジンの他側面には、図1に示すように、燃焼室6から既燃ガス(排気ガス)を排出する排気通路36が接続されている。この排気通路36の上流端部は、各気筒2毎に分岐して排気ポート11に連通する排気マニホールド37であり、この排気マニホールド37の集合部には排気中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ38が配設されている。このリニアO2センサ38は排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出するために用いられるもので、理論空燃比を含む所定範囲において酸素濃度に対してリニアな出力が選られるようになっている。
【0023】
また、排気マニホールド37の集合部には、排気管39の上流端が接続されており、その排気管39には、上流側から下流側に向けて順に、三元触媒54、NOx吸収剤40が接続されている。そのNOx吸収剤40は、排気中の酸素濃度の高い雰囲気でNOxを吸収する一方、酸素濃度の低下に伴い吸収したNOxを放出し、その放出NOxを排気中のHC、CO等により還元浄化するNOx吸収還元タイプのものとされている。
【0024】
図1中、50は、エンジンコントロールユニットであって、点火回路17、燃料噴射弁18、燃料供給系20の高圧レギュレータ27、電気式スロットル弁32、吸気流動制御弁34、EGR弁44等は、このエンジンコントロールユニット(以下、ECUという)50によって制御される。このため、ECU50には、少なくとも、クランク軸7の回転角度(エンジン回転数)を検出するクランク角センサ9、エアフローセンサ31、リニアO2センサ38等からの各出力信号が入力され、加えて、アクセルペダルの開度(アクセル操作量)を検出するアクセル開度センサ51からの出力信号が入力されるようになっている。
【0025】
ECU50は、各センサから入力される信号に基づいて、燃料噴射弁18による燃料噴射時期、高圧レギュレータ27による燃圧制御、及び燃料噴射弁18、点火回路17、高圧レギュレータ27による燃焼状態制御を行うよう構成されている。
(燃料噴射制御)
燃料噴射制御は、図4に示すように、エンジンの運転状態が低負荷低回転領域にある時、成層燃焼領域とされ、その領域では、燃料噴射弁18による燃料噴射時期を圧縮行程の所定時期、例えば、圧縮上死点前(BTDC)40°〜140°の範囲に燃料を噴射させて、点火プラグ16の近傍に混合気が層状に偏在する状態で燃焼させる成層燃焼が行われる。この成層燃焼領域では、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーン側になるように、燃料噴射量やスロットル開度が制御される。また、成層燃焼領域以外の領域は、均一燃焼領域とされており、燃料噴射弁18により気筒2の吸気行程で燃料を噴射させて吸気と十分に混合し、燃焼室6内に均一な混合気を形成した上で燃焼させる均一燃焼が行われる。この均一燃焼領域では、大部分の運転領域で混合気の空燃比が略理論空燃比(A/F≒14.7)になるように、燃料噴射量やスロットル開度が制御されるが、全負荷運転状態では、空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比(A/F=13程度)に制御して、高負荷に対応した大出力が得られるようになっている。
【0026】
(燃圧制御)
燃圧制御は、成層燃焼領域における低負荷領域I、成層燃焼領域における高負荷領域II、及び均一燃焼領域IIIとで、それぞれ異なる燃圧になるよう高圧レギュレータ27により制御される。
具体的には、図5に示すように、成層燃焼領域における低負荷領域Iでは、燃圧がエンジン回転数の上昇につれて燃圧が12MPaから20MPaに変更される。また、成層燃焼領域における高負荷領域IIでは、その高負荷領域IIと同一回転数での低負荷領域Iに比べて低い燃圧に変更、例えば、エンジン回転数の上昇につれて燃圧が7MPaから15MPaに変更される。また、均一燃焼領域IIIでは、一律20MPaに設定される。
【0027】
(燃焼状態制御)
成層燃焼領域では、空燃比が理論空燃比よりもリーンに制御され、燃焼状態が不安定状態になることがあるため、エンジンの燃焼状態を検出、例えば、クランク角センサ9により検出されたクランク角速度変動等に基づいて検出し、検出されたクランク角速度変動が予め設定された安定範囲内に収束するように燃料噴射時期、点火時期、燃圧が制御される。
具体的には、成層燃焼領域において、検出された実クランク角速度変動(例えば、前回のクランク角速度と今回のクランク角速度との偏差等によって算出されるクランク角速度変化量)が予め設定された安定範囲外で、かつクランク角速度変動が小さい時、燃料噴射時期と点火時期とによってクランク角速度変動が安定範囲内に収束するようエンジンの燃焼状態を制御するとともに、検出された実クランク角速度変動が予め設定された安定範囲外で、かつクランク角速度変動が大きい時、燃料噴射時期と点火時期とによるエンジンの燃焼状態の制御に加え、燃圧を制御してエンジンの燃焼状態を制御する。
尚、安定範囲は、図6に示すように、点火時期と燃料噴射時期との間に一定の関係があり、安定範囲は、点火時期を遅角されるに伴い狭まる傾向がある。
【0028】
次に、図7のフローチャートに基づいて、燃圧、燃料噴射時期、及び点火時期の制御について、説明する。
図7のステップS1において、クランク角センサ9、エアフローセンサ31、リニアO2センサ38、アクセル開度センサ51等各種センサの検出信号が読込まれる。
続く、ステップS2では、エンジンの運転状態が図4で示す成層燃焼領域か否か判定する。
ステップS2でYESと判定された時、ステップS3に進み、エンジンの運転状態が、成層燃焼領域の中でも低負荷領域Iにあるか否か判定する。
ステップS3でYESと判定された時は、ステップS4に進み、図5で示すように、燃圧をエンジン回転数の増加に応じて12MPaから20MPaまでの間に設定する。
また、ステップS3でNOと判定された時、つまり、成層燃焼領域における高負荷領域IIであると判定された時は、ステップS5に進み、図5で示すように、燃圧を、低負荷領域Iに比べて低い、7MPaから15MPaまでの間に設定する。
続く、ステップS6では、クランク角速度変動量が安定範囲外にあるか否か判定する。
ステップS6でYESと判定された時は、ステップS7で成層燃焼運転領域における運転状態に対応して設定される燃料噴射時期をクランク角変動量が抑制される方向に補正するとともに、ステップと8ではステップS7で求められた燃料噴射時期に応じて図6で示したように安定範囲内に収束するように点火時期を求める。
続く、ステップS9では、クランク角速度変動量が安定範囲外で、かつクランク角速度変動量が所定値以上大きい状態か否か判定される。
ステップS9でYESと判定された時、つまり、燃料噴射時期と点火時期とでエンジンの燃焼状態を制御しているにも拘わらず、クランク角速度変動が安定範囲よりも所定値以上大きい時は、ステップS10に進み、燃圧を変更してエンジンの燃焼状態が安定範囲内に収束するよう制御する。
ここで、燃圧制御の具体例を説明する。燃焼状態の不安定さは、点火プラグ16周りの混合気の空燃比が過剰にリーンであるか、または過剰にリッチであるかによって生じるものであることから、前者の場合は、ステップS4またはステップS5で設定された燃圧を、上昇方向に補正して燃料噴射弁18のペネトレーションを増加させることによって点火プラグ周りの混合気をリッチ化させる方向に制御し、逆に、後者の場合は、ステップS4またはステップS5で設定された燃圧を、低下方向に補正して燃料噴射弁18のペネトレーションを低下させることによって点火プラグ周りの混合気をリーン化させる方向に制御することが行われる。
また、ステップS6でNOと判定された時は、ステップS11、ステップS12に進み、クランク角速度変動の影響を考慮しない成層燃焼領域における運転状態に対応した燃料噴射時期、点火時期を設定する。
また、上記ステップS2でNOと判定された時、つまり、均一燃焼領域であることが判定された時、ステップS13〜S15において、燃圧を一定値(例えば、20MPa)に設定するとともに、燃料噴射時期、及び点火時期を均一燃焼領域における運転状態に対応した値に設定する。
そして、ステップS16〜S18において、ステップS4、S5、S10、S13のいずれかにおいて設定された燃圧になるよう高圧レギュレータ27が制御され、ステップS7、S11、S14のいずれかにおいて設定された燃料噴射時期になるよう燃料噴射弁18が制御され、ステップS8、S12、S15のいずれかにおいて設定された点火時期になるよう点火回路17が制御される。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、図8に示すように、成層運転領域における高負荷領域IIにおいては、その高負荷領域IIと同一回転数での低負荷運転領域Iに対して燃圧が低下され、燃料噴射量に対する燃料噴射弁18の開弁期間の割合が大きくされるため、単位時間当たりに噴射される燃料噴射量が減少され、燃料噴霧の移動速度を低下させることができるため、破線で示す従来のように、点火プラグ16周りに位置することになる燃料噴霧先端の混合気濃度が過剰に濃くなるのを抑制することができる。
また、燃料噴射時期または点火時期制御によるエンジンのクランク角速度変動量の安定範囲への収束制御に加え、燃料噴霧先端の混合気が過剰に濃くなることを抑制するための高圧レギュレータ27を利用してエンジンの燃焼状態の安定範囲への収束制御が可能とされるため、エンジンの燃焼状態を制御するための制御範囲を実質的に拡大することができ、更にエンジンの燃焼状態の安定化を図ることができる。
また、エンジンのクランク角速度変動量が予め設定された安定範囲内に収束しない時のみ、エンジンのクランク角速度変動量が予め設定された安定範囲内に収束するよう燃圧が制御されるため、通常は、燃料噴射制御または点火時期制御の内、少なくとも一方に基づいて応答性よくエンジンの燃焼状態が安定範囲内に収束するよう制御される一方で、燃料噴射制御または点火時期制御の少なくとも一方によってエンジンの燃焼状態を安定範囲に収束できない時のみ、非常対応的に燃圧制御によってエンジンの燃焼状態が制御されるため、発散への影響を極力抑制しつつ、エンジンの燃焼安定性を確保することができる。
【0030】
(他の実施形態)
本実施形態では、開弁期間変更手段として燃圧の調整が可能な高圧レギュレータ27を用いる例を示したが、その他、ピエゾ素子等を用いて燃料噴射弁18の針弁リフト量を変更可能な手段を適用するようにしてもよい。
この場合、成層燃焼領域における高負荷領域IIは、成層燃焼領域における低負荷領域Iに比べて、針弁リフト量を小さく設定し、同一燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を大きくすることにより、単位時間当たりに噴射される燃料噴射量が減少され、燃料噴霧の移動速度を低下させることができるため、点火プラグ16周りに位置することになる燃料噴霧先端の混合気濃度が過剰に濃くなるのを抑制することができる。
【0031】
(他の実施形態)
本実施形態では、開弁期間変更手段として燃圧の調整が可能な高圧レギュレータ27を用いる例を示したが、その他、燃料噴射弁18を駆動するための駆動ドライバー(通常、ECU50内に配置されており、不図示とされている。)に対する駆動電流を変更可能な手段を適用するようにしてもよい。
燃料噴射弁18には、駆動開始時において、駆動電流通電開始に対する実際の針弁動作開始までにに遅れがあるため、この遅れ分燃料噴射量が低下する。そこで、この遅れを極力小さくするため、燃料噴射弁18の駆動ドライバーへの通電開始時、一時的に駆動電流を増大することが行われている。
つまり、駆動電流を変えることによって針弁の作動遅れ期間を変更でき、同一燃料噴射量を得るための燃料噴射弁の開弁期間を変更することができるものである。
従って、図9に示すように、成層燃焼領域における高負荷領域IIでは、成層燃焼領域における低負荷領域Iに比べて、燃料噴射弁18の駆動ドライバーに対する駆動開始時における駆動電流を小さく設定し、同一燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を大きくすることにより、単位時間当たりに噴射される燃料噴射量が減少され、燃料噴霧の移動速度を低下させることができるため、点火プラグ16周りに位置することになる燃料噴霧先端の混合気濃度が過剰に濃くなるのを抑制することができる。
【0032】
(他の実施形態)
本実施形態では、成層燃焼領域における高負荷領域IIにおいて燃圧を一律に低下させ、同一燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を一定にする例を示したが、例えば、図10に示すように、負荷が増加するにつれて同一燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を徐々に大きくするようにしてもよい。
このような制御によって、負荷の増加に対応させて燃料噴射弁の開弁期間割合を変更させることができるため、更に負荷が高い成層燃焼領域においても点火プラグ16周りの混合気が過剰に濃くなるの抑制することができ、更に、成層燃焼領域を高負荷側に拡大することができるものである。
尚、このような制御は、高圧レギュレータ27、電動高圧燃料ポンプ29、ピエゾ素子等を用いて燃料噴射弁18の針弁リフト量を変更可能な手段、燃料噴射弁18を駆動するための駆動ドライバーに対する駆動電流を変更可能な手段のいずれか一つを制御することによって達成することができる。
【0033】
尚、本実施形態では、火花点火式直噴エンジンとして、燃料噴射弁18からの燃料噴霧を直接点火プラグ16に指向させるスプレーガイド式に適用する例を示したが、その他、ピストン頂部に凹部が形成されるとともに、ピストンが上死点付近にある時点火プラグの一部がその凹部内に臨むように点火プラグが配設され、噴射された燃料をその凹部内に集めて点火プラグ周りに成層化するウォールガイド式や、噴射された燃料をタンブル等の吸気流動によって点火プラグ周りに集めるエアガイド式に適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る火花式直噴エンジン1の全体構成図。
【図2】本発明の実施形態に係るシリンダヘッドの縦側面図。
【図3】本発明の実施形態に係る燃料供給系概略図。
【図4】本発明の実施形態に係る成層燃焼領域と均一燃焼領域とをそれぞれ設定した制御マップを示す図。
【図5】本発明の実施形態に係る燃圧制御マップを示す図。
【図6】本発明の実施形態に係る点火時期及び燃料噴射時期と燃焼安定領域との対応関係を示す特性図。
【図7】本発明の実施形態に係る制御フローチャートを示す図。
【図8】本発明の実施形態に係る燃焼状態を示す説明図。
【図9】他の実施形態に係る制御特性を示す図。
【図10】他の実施形態に係る制御特性を示す図。
【図11】従来例の問題を示す説明図。
【符号の説明】
1:火花点火式直噴エンジン
6:燃焼室
16:点火プラグ
17:点火回路
18:燃料噴射弁
20:燃料供給系
30:吸気通路
36:排気通路
27:高圧レギュレータ(開弁期間変更手段)
29:電動高圧燃料ポンプ(開弁期間変更手段)
50:エンジンコントロールユニット
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花点火式直噴エンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、燃焼室に点火プラグ及び燃料噴射弁を備え、燃焼室内に直接燃料を噴射供給する火花点火式直噴エンジンは知られている。このような火花点火式直噴エンジンにおいては、点火プラグ周りに濃い混合気を存在させるとともに、点火プラグから遠い燃焼室周辺には相対的に薄い混合気を存在させ、燃焼室内における混合気の空燃比をリーン化する、所謂成層化燃焼を行い、燃費向上を図ることが知られている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の成層化燃焼は、通常、低負荷運転領域で行われるが、更なる燃費向上を図るためには、この成層化燃焼が行われる運転領域を可及的に高い負荷領域まで広げることが望まれている。
しかしながら、単に、成層化燃焼を高負荷側に拡大すると、負荷の増加に伴う燃料噴射量の増加によって点火プラグ周りの混合気が過剰に濃くなり、着火性が悪化するという問題がある。
つまり、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧の濃度分布は、図11に示すように、燃料噴霧先端側になる程、つまり、燃料噴射弁から遠ざかり点火プラグに近づくにつれて濃い分布となる。
これは、時間的に前で噴射された燃料噴霧に、後から噴射された燃料噴霧が追いつき、燃料噴霧先端側に混合気が集まるものと推定される。
従って、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧は、低負荷では、可燃濃度範囲に収まるものの、高負荷では、燃料噴射量が増加されるため、その増加分濃くなり、可燃濃度範囲よりも濃くなってしまうものである。
【0004】
尚、下記特許文献1には、燃料噴射前半の噴射率を高めるとともに、燃料噴射末期における噴射率を低下させることにより、燃料噴射末期に噴射された燃料により形成される混合気の移動速度を低下させ、点火プラグに可燃混合気が接触する期間を延長し、成層燃焼領域を可及的に高負荷側に拡大を図ることが開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2003−013739号公報
【0006】
しかしながら、上述の先行技術においては、燃料噴射末期は噴射率が低下され、混合気の移動速度が低下させられるものの、その低下分を補うため燃料噴射前半の噴射率が高められており、燃料噴射前半における混合気の移動速度は逆に増加するため、トータルとして混合気の移動速度を低下させることはできず、燃料噴霧先端における混合気の濃度が過剰に濃くなることを抑制することはできないものである。
つまり、先行技術では燃料噴射期間中における噴射率が変えられても全体の燃料噴射期間は一定とされているため、混合気の移動速度を変えることはできず、燃料噴霧先端の混合気が濃くなるという問題を解消することはできない。
【0007】
本発明は、以上のような課題に勘案してなされたもので、その目的は、燃料噴霧先端の混合気が過剰に濃くなることを抑制して、成層運転領域を高負荷側に拡大することが可能な火花点火式直噴エンジンを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明にあってはその解決手法として次のようにしてある。すなわち、本発明の第1の構成において、燃焼室の略中央に配設される点火プラグと、
上記燃焼室内に配設され、上記点火プラグの電極方向に燃料噴射方向が設定される燃料噴射弁と、
少なくとも低負荷を含む成層運転領域において、上記点火プラグ周りに濃い混合気が成層化されるよう上記燃料噴射弁を制御する燃料噴射制御手段とを備える火花点火式直噴エンジンにおいて、
同一燃料噴射量に対する上記燃料噴射弁の開弁期間の割合を変更可能な開弁期間変更手段を備え、
該開弁期間変更手段は、成層運転領域における高負荷領域においては、当該高負荷領域と同一回転数での低負荷運転領域に対して、燃料噴射量に対する上記燃料噴射弁の開弁期間の割合を大きくするよう構成してある。
本発明の第1の構成によれば、成層運転領域における高負荷領域においては、当該高負荷領域と同一回転数での低負荷運転領域に対して、燃料噴射量に対する上記燃料噴射弁の開弁期間の割合が大きくされるため、単位時間当たりに噴射される燃料噴射量が減少され、燃料噴霧の移動速度を低下させることができるため、点火プラグ周りに位置することになる燃料噴霧先端の混合気濃度が過剰に濃くなるのを抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の構成において、上記開弁期間変更手段は、上記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更する燃圧変更手段と、上記燃料噴射弁の針弁リフト量を変更する針弁リフト量変更手段との内、少なくとも一方から構成してある。
同一噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を変えるたるには、燃料噴射弁の針弁リフト量一定の基で燃圧を変える、または、燃圧一定の基で燃料噴射弁の針弁リフト量を変えることの内、いずれか一方を行うことによって達成することができる。
本発明の第2の構成によれば、燃圧変更手段または針弁リフト量変更手段によって燃料噴射量に対する上記燃料噴射弁の開弁期間の割合が大きくすることができる。
【0010】
本発明の第3の構成において、上記点火プラグによる点火時期を制御する点火時期制御手段と、
上記燃焼室内におけるエンジンの燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段と、
上記燃料噴射制御手段による成層運転領域において、上記燃焼状態検出手段により検出されたエンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束するよう、上記燃料噴射制御手段と上記点火時期制御手段との内、少なくとも一方を制御する燃焼制御手段とを備え、
上記開弁期間変更手段は、上記燃焼状態検出手段により検出された燃焼状態に基づいてエンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束するよう制御可能に構成してある。
本発明の第3の構成によれば、燃料噴射制御手段または点火時期制御手段によるエンジンの燃焼状態の安定範囲への収束制御に加え、燃料噴霧先端の混合気が過剰に濃くなることを抑制するための開弁期間変更手段を利用してエンジンの燃焼状態の安定範囲への収束制御が可能とされるため、エンジンの燃焼状態を制御するための制御範囲を実質的に拡大することができ、更にエンジンの燃焼状態の安定化を図ることができる。
【0011】
本発明の第4の構成において、上記開弁期間変更手段は、上記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更する燃圧変更手段により構成されるとともに、該燃圧変更手段は、上記燃焼制御手段によりエンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束しない時のみ、エンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束するよう燃圧を制御するよう構成してある。
通常、火花点火式直噴エンジンにおいては、運転状態に応じて燃圧を変える必要があるため、可変式の高圧レギュレータや電動高圧燃料ポンプ等、もともと燃圧変更手段が備えられている。
従って、開弁期間変更手段としては、燃圧変更手段を利用することが望ましいものであるが、燃圧変更手段はその応答性が悪く、変化の速いエンジンの燃焼状態の変化に十分追従することができないため、常時、燃圧を変化させてエンジンの燃焼状態を制御すると、却って発散するおそれがある。
本発明の第4の構成によれば、エンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束しない時のみ、エンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束するよう燃圧が制御されるため、通常は、燃料噴射制御または点火時期制御の内、少なくとも一方に基づいて応答性よくエンジンの燃焼状態が安定範囲内に収束するよう制御される一方で、燃料噴射制御または点火時期制御の少なくとも一方によってエンジンの燃焼状態を安定範囲に収束できない時のみ、非常対応的に燃圧制御によってエンジンの燃焼状態が制御されるため、発散への影響を極力抑制しつつ、エンジンの燃焼安定性を確保することができる。
【0012】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料噴霧先端の混合気が過剰に濃くなることを抑制して、成層運転領域を高負荷側に拡大することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る火花式直噴エンジン1の全体構成図を示す。
このエンジン1は、複数の気筒、例えば、4つの気筒2、2、2、2(図1では1つのみ開示)が直列に設けられたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配置されたシリンダヘッド4とを有しており、各気筒2内にはピストン5が上下方向に往復動可能に嵌挿されている。この各ピストン5とシリンダヘッド4との間の気筒2内には燃焼室6がそれぞれ区画それており、その燃焼室6は、図2に拡大して示すように、気筒2の天井部における略中央部からシリンダヘッド4の下端面付近まで延びる2つの傾斜面を形成することにより、互いに差し掛けられた屋根のような形状をなすいわゆるペントルーフ型燃焼室とされている。一方、ピストン5よりも下方のシリンダブロック3内にはクランク軸7が回転自在に支持されており、このクランク軸7とピストン5とはコネクティングロッド8を介して連結されている。
【0014】
シリンダヘッド4には、図1、図2に示すように、吸気ポート10及び排気ポート11がそれぞれ2つずつ(図1、図2では、いずれも1つのみ開示)形成されている。この2つの吸気ポート10、10は、その各一端が各気筒2天井部における傾斜面の一方から燃焼室6に開口され、その各他端側が燃焼室6から斜め上方に延びて、エンジン1の一側面(図1、図2中右側面)に互いに独立して開口されており、その各吸気ポート10、10の一端開口には、それぞれ所定のタイミングで開閉作動される吸気弁12、12が配置されている。(図1、図2では、いずれも1つのみ開示)2つの排気ポート11、11には、その各一端が各気筒2の天井部における傾斜面の他方から燃焼室6に開口され、その各他端側は、途中で1つに合流した後略水平に延びてエンジン1の他端面(図1、図2中左側面)に開口されており、その各排気ポート11、11の一端開口には、それぞれ所定のタイミングで開閉作動される排気弁13、13が配置されている。(図1、図2では、いずれも1つのみ開示)
【0015】
エンジン1の一側面には、図1に示すように、各気筒2の吸気ポート10、10にそれぞれ連通する吸気通路30が接続されている。この吸気通路30は、エンジン1の燃焼室6に対してエアクリーナ(不図示)で濾過された吸気を供給するためのものであり、その上流側から下流側に向かって順に、エンジン1に吸入される吸入空気量を検出するためのホットワイヤ式エアフローセンサ31と、吸気通路26を絞る電気式スロットル弁32と、サージタンク33とがそれぞれ配設されている。電気式スロットル弁32は、アクセルペダル(不図示)に対し機械的に連結されておらず、図示しない電気式駆動モータにより駆動されて開閉されるようになっている。
【0016】
また、サージタンク33よりも下流側の吸気通路30は、各気筒2毎に分岐する独立通路とされていて、その各独立通路の下流端部がさらに2つに分岐してそれぞれ吸気ポート10、10に連通されている。
【0017】
また、燃焼室6の上部には、4つの吸排気弁12、12、13、13に囲まれた燃焼室6の略中心に、点火プラグ16が配設されている。この点火プラグ16の先端の電極は、燃焼室6の天井部から所定距離だけ突出した位置にあり、その点火プラグ16の基端部には点火回路17が接続されており、各気筒2毎に所定のタイミングで点火プラグ16に通電するようになっている。
【0018】
また、燃焼室6の周縁部には、2つの吸気ポート10、10間で、その各吸気ポート10、10下方に燃料噴射弁18が配設されている。この燃料噴射弁18は、複数の噴口を備えたマルチホール型燃料噴射弁であって、各噴項から噴射される燃料噴霧が直接点火プラグ16周辺に指向するよう、その燃料噴射弁18の燃料噴射方向が設定されている。これによって、スプレーガイド式の火花点火式直噴エンジン1が構成されている。
【0019】
燃料噴射弁18の基端部には、全気筒2、2、2、2に共通の燃料分配管19が接続されており、その燃料分配管19は、燃料供給系20から供給される高圧の燃料を各気筒2に分配供給するようになっている。この燃料供給系20は、例えば、図3(a)に示すように構成され、燃料分配管19と燃料タンク21とを連通する燃料通路22の上流側から下流側に向かって、低圧燃料ポンプ23、低圧レギュレータ24、燃料フィルタ25、高圧燃料ポンプ26及び燃圧を調節可能とされる高圧レギュレータ27が順に配設されており、高圧燃料ポンプ26及び高圧レギュレータ27は、リターン通路29により燃料タンク21側に接続されている。尚、符合28は、燃料タンク21側に戻す燃料の圧力状態を整える低圧レギュレータである。
【0020】
これにより、低圧燃料ポンプ23により燃料タンク21から吸い上げられた燃料は、低圧レギュレータ24により調圧された後、燃料フィルタ25を介して高圧燃料ポンプ26に圧送される。そして、高圧燃料ポンプ26によって昇圧した燃料の一部を高圧レギュレータ27により流量調節しながらリターン通路29によって燃料タンク21側に戻すことで、燃料分配管19へ供給する燃料の圧力状態を適正値、例えば、7MPa〜20MPaに調整する。
【0021】
尚、燃料供給系20の構成は、図3(a)に限られず、例えば、図3(b)に示す燃料供給系20’のように高圧レギュレータ27を省略することも可能である。この場合、燃料の吐出量を広い範囲に亘って変更することのできる電動高圧燃料ポンプ29を使用し、この電動高圧燃料ポンプ29から燃料分配管19への燃料の吐出量を可変調節することによって、燃料の圧力状態を制御することかできる。
【0022】
一方、エンジンの他側面には、図1に示すように、燃焼室6から既燃ガス(排気ガス)を排出する排気通路36が接続されている。この排気通路36の上流端部は、各気筒2毎に分岐して排気ポート11に連通する排気マニホールド37であり、この排気マニホールド37の集合部には排気中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ38が配設されている。このリニアO2センサ38は排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出するために用いられるもので、理論空燃比を含む所定範囲において酸素濃度に対してリニアな出力が選られるようになっている。
【0023】
また、排気マニホールド37の集合部には、排気管39の上流端が接続されており、その排気管39には、上流側から下流側に向けて順に、三元触媒54、NOx吸収剤40が接続されている。そのNOx吸収剤40は、排気中の酸素濃度の高い雰囲気でNOxを吸収する一方、酸素濃度の低下に伴い吸収したNOxを放出し、その放出NOxを排気中のHC、CO等により還元浄化するNOx吸収還元タイプのものとされている。
【0024】
図1中、50は、エンジンコントロールユニットであって、点火回路17、燃料噴射弁18、燃料供給系20の高圧レギュレータ27、電気式スロットル弁32、吸気流動制御弁34、EGR弁44等は、このエンジンコントロールユニット(以下、ECUという)50によって制御される。このため、ECU50には、少なくとも、クランク軸7の回転角度(エンジン回転数)を検出するクランク角センサ9、エアフローセンサ31、リニアO2センサ38等からの各出力信号が入力され、加えて、アクセルペダルの開度(アクセル操作量)を検出するアクセル開度センサ51からの出力信号が入力されるようになっている。
【0025】
ECU50は、各センサから入力される信号に基づいて、燃料噴射弁18による燃料噴射時期、高圧レギュレータ27による燃圧制御、及び燃料噴射弁18、点火回路17、高圧レギュレータ27による燃焼状態制御を行うよう構成されている。
(燃料噴射制御)
燃料噴射制御は、図4に示すように、エンジンの運転状態が低負荷低回転領域にある時、成層燃焼領域とされ、その領域では、燃料噴射弁18による燃料噴射時期を圧縮行程の所定時期、例えば、圧縮上死点前(BTDC)40°〜140°の範囲に燃料を噴射させて、点火プラグ16の近傍に混合気が層状に偏在する状態で燃焼させる成層燃焼が行われる。この成層燃焼領域では、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーン側になるように、燃料噴射量やスロットル開度が制御される。また、成層燃焼領域以外の領域は、均一燃焼領域とされており、燃料噴射弁18により気筒2の吸気行程で燃料を噴射させて吸気と十分に混合し、燃焼室6内に均一な混合気を形成した上で燃焼させる均一燃焼が行われる。この均一燃焼領域では、大部分の運転領域で混合気の空燃比が略理論空燃比(A/F≒14.7)になるように、燃料噴射量やスロットル開度が制御されるが、全負荷運転状態では、空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比(A/F=13程度)に制御して、高負荷に対応した大出力が得られるようになっている。
【0026】
(燃圧制御)
燃圧制御は、成層燃焼領域における低負荷領域I、成層燃焼領域における高負荷領域II、及び均一燃焼領域IIIとで、それぞれ異なる燃圧になるよう高圧レギュレータ27により制御される。
具体的には、図5に示すように、成層燃焼領域における低負荷領域Iでは、燃圧がエンジン回転数の上昇につれて燃圧が12MPaから20MPaに変更される。また、成層燃焼領域における高負荷領域IIでは、その高負荷領域IIと同一回転数での低負荷領域Iに比べて低い燃圧に変更、例えば、エンジン回転数の上昇につれて燃圧が7MPaから15MPaに変更される。また、均一燃焼領域IIIでは、一律20MPaに設定される。
【0027】
(燃焼状態制御)
成層燃焼領域では、空燃比が理論空燃比よりもリーンに制御され、燃焼状態が不安定状態になることがあるため、エンジンの燃焼状態を検出、例えば、クランク角センサ9により検出されたクランク角速度変動等に基づいて検出し、検出されたクランク角速度変動が予め設定された安定範囲内に収束するように燃料噴射時期、点火時期、燃圧が制御される。
具体的には、成層燃焼領域において、検出された実クランク角速度変動(例えば、前回のクランク角速度と今回のクランク角速度との偏差等によって算出されるクランク角速度変化量)が予め設定された安定範囲外で、かつクランク角速度変動が小さい時、燃料噴射時期と点火時期とによってクランク角速度変動が安定範囲内に収束するようエンジンの燃焼状態を制御するとともに、検出された実クランク角速度変動が予め設定された安定範囲外で、かつクランク角速度変動が大きい時、燃料噴射時期と点火時期とによるエンジンの燃焼状態の制御に加え、燃圧を制御してエンジンの燃焼状態を制御する。
尚、安定範囲は、図6に示すように、点火時期と燃料噴射時期との間に一定の関係があり、安定範囲は、点火時期を遅角されるに伴い狭まる傾向がある。
【0028】
次に、図7のフローチャートに基づいて、燃圧、燃料噴射時期、及び点火時期の制御について、説明する。
図7のステップS1において、クランク角センサ9、エアフローセンサ31、リニアO2センサ38、アクセル開度センサ51等各種センサの検出信号が読込まれる。
続く、ステップS2では、エンジンの運転状態が図4で示す成層燃焼領域か否か判定する。
ステップS2でYESと判定された時、ステップS3に進み、エンジンの運転状態が、成層燃焼領域の中でも低負荷領域Iにあるか否か判定する。
ステップS3でYESと判定された時は、ステップS4に進み、図5で示すように、燃圧をエンジン回転数の増加に応じて12MPaから20MPaまでの間に設定する。
また、ステップS3でNOと判定された時、つまり、成層燃焼領域における高負荷領域IIであると判定された時は、ステップS5に進み、図5で示すように、燃圧を、低負荷領域Iに比べて低い、7MPaから15MPaまでの間に設定する。
続く、ステップS6では、クランク角速度変動量が安定範囲外にあるか否か判定する。
ステップS6でYESと判定された時は、ステップS7で成層燃焼運転領域における運転状態に対応して設定される燃料噴射時期をクランク角変動量が抑制される方向に補正するとともに、ステップと8ではステップS7で求められた燃料噴射時期に応じて図6で示したように安定範囲内に収束するように点火時期を求める。
続く、ステップS9では、クランク角速度変動量が安定範囲外で、かつクランク角速度変動量が所定値以上大きい状態か否か判定される。
ステップS9でYESと判定された時、つまり、燃料噴射時期と点火時期とでエンジンの燃焼状態を制御しているにも拘わらず、クランク角速度変動が安定範囲よりも所定値以上大きい時は、ステップS10に進み、燃圧を変更してエンジンの燃焼状態が安定範囲内に収束するよう制御する。
ここで、燃圧制御の具体例を説明する。燃焼状態の不安定さは、点火プラグ16周りの混合気の空燃比が過剰にリーンであるか、または過剰にリッチであるかによって生じるものであることから、前者の場合は、ステップS4またはステップS5で設定された燃圧を、上昇方向に補正して燃料噴射弁18のペネトレーションを増加させることによって点火プラグ周りの混合気をリッチ化させる方向に制御し、逆に、後者の場合は、ステップS4またはステップS5で設定された燃圧を、低下方向に補正して燃料噴射弁18のペネトレーションを低下させることによって点火プラグ周りの混合気をリーン化させる方向に制御することが行われる。
また、ステップS6でNOと判定された時は、ステップS11、ステップS12に進み、クランク角速度変動の影響を考慮しない成層燃焼領域における運転状態に対応した燃料噴射時期、点火時期を設定する。
また、上記ステップS2でNOと判定された時、つまり、均一燃焼領域であることが判定された時、ステップS13〜S15において、燃圧を一定値(例えば、20MPa)に設定するとともに、燃料噴射時期、及び点火時期を均一燃焼領域における運転状態に対応した値に設定する。
そして、ステップS16〜S18において、ステップS4、S5、S10、S13のいずれかにおいて設定された燃圧になるよう高圧レギュレータ27が制御され、ステップS7、S11、S14のいずれかにおいて設定された燃料噴射時期になるよう燃料噴射弁18が制御され、ステップS8、S12、S15のいずれかにおいて設定された点火時期になるよう点火回路17が制御される。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、図8に示すように、成層運転領域における高負荷領域IIにおいては、その高負荷領域IIと同一回転数での低負荷運転領域Iに対して燃圧が低下され、燃料噴射量に対する燃料噴射弁18の開弁期間の割合が大きくされるため、単位時間当たりに噴射される燃料噴射量が減少され、燃料噴霧の移動速度を低下させることができるため、破線で示す従来のように、点火プラグ16周りに位置することになる燃料噴霧先端の混合気濃度が過剰に濃くなるのを抑制することができる。
また、燃料噴射時期または点火時期制御によるエンジンのクランク角速度変動量の安定範囲への収束制御に加え、燃料噴霧先端の混合気が過剰に濃くなることを抑制するための高圧レギュレータ27を利用してエンジンの燃焼状態の安定範囲への収束制御が可能とされるため、エンジンの燃焼状態を制御するための制御範囲を実質的に拡大することができ、更にエンジンの燃焼状態の安定化を図ることができる。
また、エンジンのクランク角速度変動量が予め設定された安定範囲内に収束しない時のみ、エンジンのクランク角速度変動量が予め設定された安定範囲内に収束するよう燃圧が制御されるため、通常は、燃料噴射制御または点火時期制御の内、少なくとも一方に基づいて応答性よくエンジンの燃焼状態が安定範囲内に収束するよう制御される一方で、燃料噴射制御または点火時期制御の少なくとも一方によってエンジンの燃焼状態を安定範囲に収束できない時のみ、非常対応的に燃圧制御によってエンジンの燃焼状態が制御されるため、発散への影響を極力抑制しつつ、エンジンの燃焼安定性を確保することができる。
【0030】
(他の実施形態)
本実施形態では、開弁期間変更手段として燃圧の調整が可能な高圧レギュレータ27を用いる例を示したが、その他、ピエゾ素子等を用いて燃料噴射弁18の針弁リフト量を変更可能な手段を適用するようにしてもよい。
この場合、成層燃焼領域における高負荷領域IIは、成層燃焼領域における低負荷領域Iに比べて、針弁リフト量を小さく設定し、同一燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を大きくすることにより、単位時間当たりに噴射される燃料噴射量が減少され、燃料噴霧の移動速度を低下させることができるため、点火プラグ16周りに位置することになる燃料噴霧先端の混合気濃度が過剰に濃くなるのを抑制することができる。
【0031】
(他の実施形態)
本実施形態では、開弁期間変更手段として燃圧の調整が可能な高圧レギュレータ27を用いる例を示したが、その他、燃料噴射弁18を駆動するための駆動ドライバー(通常、ECU50内に配置されており、不図示とされている。)に対する駆動電流を変更可能な手段を適用するようにしてもよい。
燃料噴射弁18には、駆動開始時において、駆動電流通電開始に対する実際の針弁動作開始までにに遅れがあるため、この遅れ分燃料噴射量が低下する。そこで、この遅れを極力小さくするため、燃料噴射弁18の駆動ドライバーへの通電開始時、一時的に駆動電流を増大することが行われている。
つまり、駆動電流を変えることによって針弁の作動遅れ期間を変更でき、同一燃料噴射量を得るための燃料噴射弁の開弁期間を変更することができるものである。
従って、図9に示すように、成層燃焼領域における高負荷領域IIでは、成層燃焼領域における低負荷領域Iに比べて、燃料噴射弁18の駆動ドライバーに対する駆動開始時における駆動電流を小さく設定し、同一燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を大きくすることにより、単位時間当たりに噴射される燃料噴射量が減少され、燃料噴霧の移動速度を低下させることができるため、点火プラグ16周りに位置することになる燃料噴霧先端の混合気濃度が過剰に濃くなるのを抑制することができる。
【0032】
(他の実施形態)
本実施形態では、成層燃焼領域における高負荷領域IIにおいて燃圧を一律に低下させ、同一燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を一定にする例を示したが、例えば、図10に示すように、負荷が増加するにつれて同一燃料噴射量に対する燃料噴射弁の開弁期間の割合を徐々に大きくするようにしてもよい。
このような制御によって、負荷の増加に対応させて燃料噴射弁の開弁期間割合を変更させることができるため、更に負荷が高い成層燃焼領域においても点火プラグ16周りの混合気が過剰に濃くなるの抑制することができ、更に、成層燃焼領域を高負荷側に拡大することができるものである。
尚、このような制御は、高圧レギュレータ27、電動高圧燃料ポンプ29、ピエゾ素子等を用いて燃料噴射弁18の針弁リフト量を変更可能な手段、燃料噴射弁18を駆動するための駆動ドライバーに対する駆動電流を変更可能な手段のいずれか一つを制御することによって達成することができる。
【0033】
尚、本実施形態では、火花点火式直噴エンジンとして、燃料噴射弁18からの燃料噴霧を直接点火プラグ16に指向させるスプレーガイド式に適用する例を示したが、その他、ピストン頂部に凹部が形成されるとともに、ピストンが上死点付近にある時点火プラグの一部がその凹部内に臨むように点火プラグが配設され、噴射された燃料をその凹部内に集めて点火プラグ周りに成層化するウォールガイド式や、噴射された燃料をタンブル等の吸気流動によって点火プラグ周りに集めるエアガイド式に適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る火花式直噴エンジン1の全体構成図。
【図2】本発明の実施形態に係るシリンダヘッドの縦側面図。
【図3】本発明の実施形態に係る燃料供給系概略図。
【図4】本発明の実施形態に係る成層燃焼領域と均一燃焼領域とをそれぞれ設定した制御マップを示す図。
【図5】本発明の実施形態に係る燃圧制御マップを示す図。
【図6】本発明の実施形態に係る点火時期及び燃料噴射時期と燃焼安定領域との対応関係を示す特性図。
【図7】本発明の実施形態に係る制御フローチャートを示す図。
【図8】本発明の実施形態に係る燃焼状態を示す説明図。
【図9】他の実施形態に係る制御特性を示す図。
【図10】他の実施形態に係る制御特性を示す図。
【図11】従来例の問題を示す説明図。
【符号の説明】
1:火花点火式直噴エンジン
6:燃焼室
16:点火プラグ
17:点火回路
18:燃料噴射弁
20:燃料供給系
30:吸気通路
36:排気通路
27:高圧レギュレータ(開弁期間変更手段)
29:電動高圧燃料ポンプ(開弁期間変更手段)
50:エンジンコントロールユニット
Claims (4)
- 燃焼室の略中央に配設される点火プラグと、
上記燃焼室内に配設され、上記点火プラグの電極方向に燃料噴射方向が設定される燃料噴射弁と、
少なくとも低負荷を含む成層運転領域において、上記点火プラグ周りに濃い混合気が成層化されるよう上記燃料噴射弁を制御する燃料噴射制御手段とを備える火花点火式直噴エンジンにおいて、
同一燃料噴射量に対する上記燃料噴射弁の開弁期間の割合を変更可能な開弁期間変更手段を備え、
該開弁期間変更手段は、成層運転領域における高負荷領域においては、当該高負荷領域と同一回転数での低負荷運転領域に対して、燃料噴射量に対する上記燃料噴射弁の開弁期間の割合を大きくすることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。 - 上記開弁期間変更手段は、上記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更する燃圧変更手段と、上記燃料噴射弁の針弁リフト量を変更する針弁リフト量変更手段との内、少なくとも一方から構成されることを特徴とする請求項1記載の火花点火式直噴エンジン。
- 上記点火プラグによる点火時期を制御する点火時期制御手段と、
上記燃焼室内におけるエンジンの燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段と、
上記燃料噴射制御手段による成層運転領域において、上記燃焼状態検出手段により検出されたエンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束するよう、上記燃料噴射制御手段と上記点火時期制御手段との内、少なくとも一方を制御する燃焼制御手段とを備え、
上記開弁期間変更手段は、上記燃焼状態検出手段により検出された燃焼状態に基づいてエンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束するよう制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の火花点火式直噴エンジン。 - 上記開弁期間変更手段は、上記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更する燃圧変更手段により構成されるとともに、該燃圧変更手段は、上記燃焼制御手段によりエンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束しない時のみ、エンジンの燃焼状態が予め設定された安定範囲内に収束するよう燃圧を制御することを特徴とする請求項3に記載の火花点火式直噴エンジン。
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JP2003087061A JP2004293419A (ja) | 2003-03-27 | 2003-03-27 | 火花点火式直噴エンジン |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009024682A (ja) * | 2007-07-24 | 2009-02-05 | Denso Corp | スプレーガイド式筒内噴射内燃機関の制御装置 |
-
2003
- 2003-03-27 JP JP2003087061A patent/JP2004293419A/ja not_active Abandoned
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