JP2004293206A - 通水部材およびその通水部材を用いた水栓ならびにその通水部材の製造方法 - Google Patents

通水部材およびその通水部材を用いた水栓ならびにその通水部材の製造方法 Download PDF

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拓央 奥田
Naohito Tokumaru
尚人 得丸
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Abstract

【課題】断熱性に優れ熱湯を通水しても表面温度が高温にならず、長期間にわたる使用においても鉛成分の溶出や錆などの腐食が発生せず、異形状の管にも応用可能であるとともに、組み立て性が良好で外観意匠性にも優れ、安価に製作できる通水部材およびその通水部材を用いた水栓ならびにその通水部材の製造方法を提供する。
【解決手段】異形状である外装部の内側に内装部を有する通水部材において、前記内装部は、架橋により成形される合成樹脂または、ゴム製のホースであって、前記外装部の内側に挿入し取り付けて、通水部を形成したことを特徴とする通水部材とした。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通水部材およびその通水部材を用いた水栓に関する。詳しくは、内装部を、架橋により成形される合成樹脂またはゴム製のホースで構成した通水部材およびその通水部材を用いた水栓ならびにその通水部材を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属製の通水部材(たとえば、水栓の吐水管、脚や給水器具など)に熱湯を通水すると、通水部材は熱伝導性がよい金属製であるために通水部材の表面は高温となる。そのため、通水部材を素手で操作あるいは取り扱うことは困難であり、使用者にとって不都合が生じることがあった。
このような問題を解決するために、内装部を金属管とし、外装部を合成樹脂製のケースとして、金属管を上下から合成樹脂製のケースで挟み込んで水栓の吐水管を構成するような通水部材があった(例えば特許文献1を参照のこと。)。
【0003】
このような構成にすることで、金属管に熱湯を通水しても合成樹脂製のケースで熱伝導性が低下するため合成樹脂製のケース外面が熱くなるようなことはなくなり、水栓の吐水管の操作や取り扱いが容易になり、使用者にとっての不都合を解消することができる。
【0004】
また、外装部と内装部で構成された他の水栓として、外装部を金属製の吐水管とし、その内側に内装部として、フレキシブルホースを挿通し、吐水口を含む吐水部と接続して吐水部を吐水管から着脱自在に構成したものがある(例えば特許文献2を参照のこと。)。
【0005】
一方、通水部材の耐食性や断熱性をもたせるための手法として、外装部を金属管とし、内装部を合成樹脂管として構成される通水部材があった。この通水部材の作製方法としては、外装部の金属管と内装部の合成樹脂管を別々に作製し、金属管内に合成樹脂管を挿入して接着する手法がとられていた。(例えば特許文献3を参照のこと)
また、外装部が金属管、内装部が合成樹脂層で構成される通水部材として、公知の塩化ビニルライニング鋼管や耐熱性を向上させた耐熱性塩化ビニルライニング鋼管がある。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−303631公報
【特許文献2】
特開平5−132982公報
【特許文献3】
特開昭55−161639公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、金属管を上下から合成樹脂製のケースで挟み込んで水栓の吐水管を構成するものは、金属管を挟み込むための合成樹脂製のケースを2種類設けることになり、それぞれのケースをネジで固定しなければならない。さらに、ネジ部の露出を防止するために化粧キャップを被せるので、構成部品の点数が多く、それに伴い組み立て工数も増加して、製作費がかかる。
また、水栓の吐水管が、取り付け面に対して水平に延びるような形状では、合成樹脂製ケースの合せ面を使用者から判り難くくする工夫は可能である。しかし、水栓の吐水管が逆J字状のグースネック形状のように取り付け面に対して垂直に延び、湾曲した吐水管に適用する場合は、合成樹脂製のケースの合せ面が露出し、吐水管を含めた水栓の意匠性が損なわれる。
【0008】
また、水栓の吐水管の内側にフレキシブルホースを挿通し、吐水口を含む吐水部と接続して吐水部を水栓の吐水管から着脱自在に構成した水栓では、フレキシブルホースと水栓の吐水管は、ともに金属で作製されているのが一般的であり、吐水部を水栓の吐水管から引出すときの摺動により音が発生していた。特に、逆J字状のグースネック形状の水栓において、吐水部を水栓の吐水管から着脱自在にする場合、吐水部を引き出すとき、通水部の頂上部で必ずフレキシブルホースと通水部が接触することになる。そのため、特にフレキシブルホースの滑りが悪く、フレキシブルホースと通水部の摺動により大きな音が発生して使用者にとって不快なものであった。
【0009】
一方、外装部を金属管とし、内装部を合成樹脂管として作製される通水部材は、金属管と合成樹脂管を別々に作製した後、金属管に合成樹脂管を挿入して接着、養生するというように工程数が多い上、金属管の内周面の研磨及びその表面粗度、金属管と合成樹脂管の寸法公差管理、接着の養生管理など、煩わしい作業が必要であった。
さらに、金属管と合成樹脂管を接着する際には、金属管に合成樹脂管を挿入せねばならない。図1の(a)のようにストレート形状の管や、図1の(b)のように曲率半径が同一径であるシングルアールの管ならば金属管に合成樹脂管を挿入することは容易であるが、図2の(a)のように逆J字状に形成されたグースネック形状の金属管や、図2の(b)のように波形の金属管などのような異形状の金属管には剛性を持った合成樹脂管を挿入することができないため、接着による二重管の作製は不可能である。したがって、金属管内に合成樹脂管を挿入して接着する手法は、ストレート管などの特定の形状にしか適用することができない。
【0010】
さらに、通水部材として用いる金属管は、青銅や黄銅に代表される鉛成分を含有する銅合金、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの様々なものが用いられるが、特に銅合金では長期間使用すると、接水部の金属管内面からの鉛成分の水中への溶出や、金属管内部が腐食などにより劣化する恐れがある。この対策として、鉛成分の水中への溶出低減や耐食性向上のために通水部内面に薬液による処理やコーティング面の形成等の表面処理などを施す必要があった。
【0011】
また、塩化ビニルライニング鋼管は、一般的に耐熱性が低くく、耐熱性を向上させた耐熱性塩化ビニルライニング鋼管でも、その耐熱温度は85℃前後であり、熱湯等を通水する場合において、耐熱性が充分ではなく、合成樹脂層が剥離するといった問題があった。さらに、一般にライニングによる被覆の場合も、前述のストレート形状の管やシングルアールの管ならば好適にライニング加工可能であるが、グースネック形状の金属管や波形の金属管などのように異形状の金属管への加工は困難である。異形状へのライニング加工が困難であるため、ストレート管とエルボといった形で多部品化して異形状の金属管を形成しライニング加工を行うと、部品の接続部に防食加工が必要となってしまう。
【0012】
そこで、本発明は、上述の不具合を解決するために、断熱性に優れ熱湯を通水しても表面温度が高温にならず、長期間にわたる使用においても鉛成分の溶出や錆などの腐食が発生せず、異形状の管にも応用可能であるとともに、組み立て性が良好で外観意匠性にも優れ、安価に製作できる通水部材およびその通水部材を用いた水栓ならびにその通水部材を製造する方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するため本発明の請求項1においては、異形状である外装部の内側に内装部を有する通水部材において、前記内装部は、架橋により成形される合成樹脂または、ゴム製のホースであって、前記外装部の内側に挿入し取り付けて、通水部を形成したことを特徴とする。
【0014】
これにより、内装部に弾性を有する合成樹脂またはゴムのホースを用いることで、外装部が異形状な場合や外装部の内面に凹凸があるよう場合でも、内装部が、その形状あるいは凹凸に合せて変形、追従するため、比較的容易に外装部内に挿入することができる。そのため、外装部の内面を研磨する工程を省略できる利点もある。
さらに、外装部の金属管が、鉛成分を含有するような銅合金である場合は、水中への鉛溶出を低減するための表面処理等の特別な処理を必要としないため、比較的少ない工程数で断熱性の優れた通水部材を提供することができる。
なお、ここでいう異形状とは、図2に示す逆J字状のグースネック形状や波形のようにストレート部と円弧部が連続して形成されている形状のことを意味している。
また、通水部とは、通水部材内部の直接湯水などの流体が流れる部分のことを示すほか、この通水部材内に通したフレキシブルホースなどの可撓管に湯水などの流体を流す場合も含む。
【0015】
請求項2においては、前記通水部材の一端に吐水口を設け、他端に接続具を設けて水栓本体と接続したことを特徴とする。
【0016】
このようにすれば、水栓に熱湯を通した場合でも、内装部が熱伝導率の低い部材であるため、外装部の表面まで熱が伝わり難く、水栓の吐水管を素手で容易に取り扱うことができる。
【0017】
請求項3においては、前記通水部材の通水部にフレキシブルホースを挿通して前記吐水口を含む吐水部に接続し、前記吐水部を通水部材から着脱自在に構成したことを特徴とする。
【0018】
このようにすれば、架橋により成形される合成樹脂またはゴム製ホースの内装部を形成することによりフレキシブルホースと通水部材の摺動で発生する音を低減することができる。また、内装部が外装部の内側で固定されているので、フレキシブルホースを通水部材の外に引き出した時に、内装部がつられて通水部材の外に出てくる恐れがない。
【0019】
請求項4においては、前記吐水管は、逆J字状に形成されたことを特徴とする。
【0020】
架橋により成形された合成樹脂またはゴム製のホースを内装部として吐水管の内側に設けているため、吐水管の頂上部でフレキシブルホースが、吐水管の内壁で接触、摺動しても音が小さいグースネック形状に湾曲している水栓を提供することができる。
【0021】
請求項5においては、前記内装部を形成するホースが、ポリオレフィン系合成樹脂組成物であることを特徴とする。
【0022】
このように、内装部を形成するホースをポリオレフィン系合成樹脂組成物で作製すれば、ポリオレフィン製部材が有する特性、すなわち加工性や製作費の安価さを発揮することができるため、内装部を形成するホースの形状を作りやすく、また、内装部を形成するホースを安価に作製することができる。
【0023】
請求項6においては、前記内装部を形成するホースを外層と内層の2層構造とし、前記外層は、前記内層より硬度を低くくしたことを特徴とする。
【0024】
異形状をした外装部に、内装部を形成するホースを挿入するためには、ホースの硬度が低いほうが挿入しやすく、硬度が高いと異形状の外装部に挿入が困難になる。一方で、ホースの硬度が低いと、通水部にフレキシブルホースを通す場合では、内装部と接触するフレキシブルホースの滑りが悪くなる。しかし、このように内装部を形成するホースが外層と内層の2層構造とし、外層の硬度を低く、内層の硬度を高くすることで、好適に外装部に挿入することができ、かつフレキシブルホースとの良好な滑りを確保することができる。
【0025】
請求項7においては、前記内装部を形成するホースの内層側の長手方向にリブを設けたこと特徴とする。
【0026】
内装部とフレキシブルホースの接触面積が大きければ大きいほど摩擦が大きくなり滑りが悪くなるのは自明の事実である。しかし、このようにホースの内層側の長手方向にリブを設けることにより、内装部とフレキシブルホースの接触面積が著しく小さくなるため、飛躍的に滑りを良くすることができる。
【0027】
請求項8においては、前記リブを螺旋形状に形成したことを特徴とする。
【0028】
このようにすれば、第7の発明と同様の効果に加えて、内装部を形成するホースを曲げることが容易であるため、特に曲率半径の小さい円弧形状等を持つような外装部に容易に挿入することができる。
【0029】
請求項9においては、異形状である外装部と、その外装部の内側に内装部を設けた通水部材において、前記内装部は、架橋により成形される合成樹脂または、ゴム製のホースであって、前記外装部の内側に挿入した後、加熱による再架橋を行うことによって、前記内装部が、前記外装部の内部で硬化して取り付けられ通水部を形成したことを特徴とする通水部材の製造方法である。
【0030】
このように、内装部を外装部に挿入した後、加熱することにより、架橋成形された合成樹脂またはゴム製のホースに含まれた未架橋成分が再架橋を起こし、内装部の外装部側の硬度が高くなり、内装部の弾性が低下しフレキシビリティが小さくなるため、内装部と外装部との取付が確実なものとなる。このように、内装部の挿入から取付までの組み立て性が容易であるとともに、その工程も簡略化できるので製作費を抑制することができる。
【0031】
請求項10においては、異形状である外装部と、その外装部の内側に内装部を設けた通水部材において、前記内装部は、架橋により成形される合成樹脂または、ゴム製のホースであって、前記内装部の外周面に滑り性を有する層間材を備えて前記外装部の内側に挿入した後、前記層間材を引き抜くことによって、前記内装部が、前記外装部の内周面に密着して取り付けられ通水部を形成したことを特徴とする通水部材の製造方法である。
【0032】
このようにすれば、内装部と外装部の間に滑り性のよい層間材が介在するため、第9の発明と同様に内装部の外装部への挿入が容易に行うことができる。特に、内装部の材質がゴムや硬度の低い(軟らかい)合成樹脂の場合には滑り性に良い層間材が好適である。また、内装部を挿入した後、層間材を引き抜くと、層間材のみが外装部から引き抜かれ、内装部は、外装部内周面との摩擦抵抗によって、外装部から脱落することはないので、外装部への組み立て性がさらに容易になる。
また、内装部は、合成樹脂またはゴム製のホースを用いるので、通水部材の製作工程や製作費の面で第9の発明と同様の効果を得ることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、以下の図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
図1には、ストレート管とシングルアール管の概略図を示す。
図2には、異形状の管であるグースネック形状の管と波形の管の概略図を示す。
図3には、本発明の通水部材を示した概略図を示す。
図4には、本発明の通水部材に滑り性を有する層間材を取り付けた概略図を示す。
図5には、本発明の通水部材を用いた第1実施形態の水栓を示した概略図を示す。
図6には、本発明の通水部材を用いた第2実施形態の水栓を示した概略図を示す。
図7には、本発明の通水部材を用いた第3実施形態の水栓を示した概略図を示す。
図8には、外層と内層を設けた合成樹脂製ホースの断面を示した概略図を示す。
図9には、リブを設けた合成樹脂製ホースの断面を示した概略図を示す。
図10には、リブを螺旋形状に形成した合成樹脂製ホースの断面を示した概略図を示す。
【0035】
図3に示すように、本発明の通水部材10は、外装部11が異形状の管、内装部12が合成樹脂またはゴムで作製されており、配管及び水回り用器具の給水本体や吐水管などに用いることができる。
そして、特に湯水を通す配管及び水回り用器具の給水器具本体や吐水管、排水管などの通水部材に好適である。
また、吐水口を有する吐水部と接続された屈曲自在のホースが、水栓本体及び吐水管を通して引き出し可能であり、洗面化粧台や流し台のキャビネットに収納される引き出し式水栓に好適な吐水管を提供することができる。
【0036】
まず、外装部11となる管について説明する。
外装部11を構成する管としては、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅などの金属やそれらの合金などを適宜利用できる。特に鋼管、めっき鋼管、ステンレス鋼管、アルミニウム管、銅管等、一般に金属管と呼ばれるものを使用することができる。また、外装部11は、上記した金属管やそれにバルジ加工、他部材を溶接など加工したもの、あるいは、鋳造や鍛造で成形された中空部材などが好適に利用できる。
また、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)ポリカーボネート(PC)、PC/ABS、ポリサルホン(PSU)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンオキサイド(変性PPO)ポリブチレンテレフタラート(PBT)等の合成樹脂を使用することも可能である。さらに、前記の材料を2種類以上組み合わせて外装部11を作製することも可能である。
これらのなかで、耐蝕性、加工性、強度の観点から、外装部11となる管は、特に黄銅や青銅等の銅合金を選定することが好ましい。また、更なる耐蝕性、耐薬品性を持たせるためや外観品位を持たせるために、上記の金属で構成される外装部11の表面にニッケル−クロムめっきなどのめっきを施すとよい。
そして、この外装部11としては、直管だけに限定されず、特に、通水部を有する屈曲・湾曲した形状、異形状なものを適用することができる。
【0037】
次に、内装部12について説明する。内装部12は、架橋により成形される合成樹脂またはゴム製のホースを用い、外装部11の内側に挿入するものである。
内装部12に用いる合成樹脂またはゴムとしては、熱硬化性樹脂やポリオレフィン系合成樹脂等の架橋によって成形される合成樹脂や熱可塑性エラストマー(TPE)、公知のゴム(EPDM、NBR、SBR、フッ素ゴム、シリコンゴム)を使用することが可能である。特に好ましくはポリオレフィン系合成樹脂(高密度、中密度、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン類、プロピレン単独共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体やランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ジエン化合物共重合体などのポリプロピレン類、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1など)、が挙げられる。
【0038】
また、内装部12に用いられる合成樹脂製ホースには、合成樹脂の線膨張係数を低下させる目的で適宜、無機物質を加えることができる。合成樹脂製ホースの線膨張係数を低下させる理由としては、外装部11の金属管より、内装部12の合成樹脂製ホースのほうが、線膨張係数が大きく熱湯等が通ることに伴う温度上昇により外装部11と内装部12との境界面に応力が発生するのを防ぐためである。そのため、無機物質を加えることで、内装部12を構成する合成樹脂製ホースの線膨張係数をできるだけ外装部11の金属管の線膨張率係数に近づけて境界面に生じる応力を低減することができるのである。
【0039】
この無機物質としては、例えばガラス繊維(チョップドストランド)、炭素繊維、金属被覆炭素繊維、耐熱有機繊維、金属繊維、金属粉、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー等の繊維状充填材、マイカ、ガラスフレーク、グラファイトフレーク等の板状充填材、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、炭素短繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン等の粒子状充填材を使用することができる。また、これらの成分を2つ以上組み合わせて使用しても構わない。
内装部12の合成樹脂は、上述した無機物質を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混錬ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。
更に、本発明の目的である断熱性、さらには成形加工性等を損なわない範囲で、合成樹脂に無機物質を添加するほかに樹脂組成物に通常用いられる難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、発泡剤、染顔料、抗菌剤等の添加剤が含まれても差し支えない。
【0040】
また、内装部12に用いられるゴムに対しても、本発明の目的である断熱性、さらには成形加工性等を損なわない範囲で、ゴム組成物に通常用いられる、カーボンブラックやケイ酸に代表されるような補強材、炭酸カルシウムやケイ酸アルミニウムなどに代表されるような充填剤、DOP、DOSなどの可塑剤、着色剤、ステアリン酸やポリエチレングリコールなどの加工助剤、老化防止剤、架橋促進助剤、架橋促進剤、加硫剤等の添加剤が含まれていても差し支えない。
【0041】
このようにして得られた合成樹脂又はゴム材料を押出成形、射出成形、ブロー成形、積層成形、圧縮成形などにより、合成樹脂製またはゴム製のホースを作製することができる。
【0042】
上記のような外装部11と内装部12で構成される通水部材10の製造方法は、図3に示すように、まず、逆J字状に形成したグースネック形状の外装部11の内側に内装部12の一端側を外装部の内側に設けた当接部11aの位置まで挿入する。内装部12は、弾性を有する合成樹脂またはゴム製のホースを用いるため、外装部11が異形状な場合や外装部11の内面に凹凸があるような場合でも、内装部12が、外装部11の形状あるいは外装部11の内面にある凹凸に合せて変形したり、追従して容易に外装部11内に挿入することができる。
【0043】
内装部12を挿入した後、外装部11とともに雰囲気温度80℃で5分間加熱すると、内装部12の合成樹脂またはゴム製ホースが再架橋され、ホースの硬度が高くなるとともに、弾性が低下してホースのフレキシビリティが小さくなるため、外装部11の内側で固定された状態となる。そして、図3の(b)に示したように内装部12の端部に設けた接続具28を給水管、給湯管あるいは湯水を混合して吐水する水栓器具の湯水出口部等と接続して通水部材10を形成するものである。
【0044】
また、図4に示す前述とは異なる通水部材10の製造方法について以下に説明する。内装部12は、硬度を低くく調整した(軟らかい)合成樹脂または、ゴム製のホースを用いる。この場合、内装部12の外周には、滑り性のよい層間材13を設けて外装部11の当接部11aまで挿入する。挿入時、内装部12と外装部11の間には、滑り性のよい層間材13が介在しているので、内装部12の挿入を容易に行うことができる。内装部12を所定の位置まで挿入した後、層間材13を引き抜くと、内装部12の摩擦抵抗によって外装部11の内面に固定された状態になって通水部材10を形成するものである。尚、層間材13は、厚さ1mm以下でビニールやフィルム状の層間材が好適に用いられる。層間材の形状としては一端が閉じ一端が開いている袋状のものが好ましい。特に好ましくは、ホースの外径よりも20mm程度大きい外径で、円筒の袋状のものである。
【0045】
尚、意匠性をもたせるために外装部11の外観表面にめっきを施してもよい。
本発明の通水部材においては、外装部を金属としてその表面にめっきを施し外観性を向上させることができる。しかも、前述したような従来技術である外装部が合成樹脂、内装部が金属で形成された通水部材と比較すると、本発明の通水部材は内装部を合成樹脂製ホースにて形成しているので、熱湯等の高温流体が断続的に長期間流れたとしても外装部まで温度が伝わり難く、さらには、外装部が合成樹脂である場合はめっき層と合成樹脂層の線膨張係数の差が大きいが、めっき層と金属層の線膨張係数の差は比較的小さいため、本発明のように外装部が金属で形成されると、めっきが剥がれにくく長期に亘り高品質の外観性を維持することができる。また、めっきを施すことで、金属管の劣化を防ぐことができる。
【0046】
次に、上記のようにして作製される通水部材10を用いた水栓の第1実施形態について図5を用いて説明する。
図5の(a)は、本発明の通水部材10を用いた第1実施形態の湯水混合水栓20の平面図で、図5の(b)は、湯水混合水栓20の吐水管21の側面断面図を示したものである。湯水混合水栓20は、水栓本体22と吐水管21と水道管(図示しない)に接続される給水脚金具23と、給湯器からの配管(図示しない)に接続される給湯脚金具24とを備えている。水栓本体22には、主要な機能部品を収納しており、その両端には、湯水温度を調節するための温度調節ハンドル25および吐水、止水を切替えるための切替ハンドル26を備えている。
【0047】
第1実施形態の湯水混合水栓20において、外装部となる吐水管21にJISA硬度70Hsで外径12.5mm、内径8.5mmで押出成形により作製された架橋ポリエチレンホース27をあらかじめバルジ加工された内径13mmの吐水管21の一方から所定の位置まで挿入する。その後、架橋ポリエチレンホース27と吐水管21を80℃で5分間加熱する。これによって、架橋ポリエチレンホース27が再架橋され、硬度が高くなるとともに、弾性が低下して架橋ポリエチレンホース27のフレキシビリティが小さくなるため、吐水管21の内側で取り付けられた状態となる。そして、架橋ポリエチレンホース27と吐水管21で構成される通水部材10は、架橋ポリエチレンホース27の端部を水栓本体22の湯水出口部29に設けた凹部29aに差し込んで、吐水管21に設けた接続具28を湯水出口部29に螺合して作製されるものである。架橋ポリエチレンホース27の端部を水栓本体22の湯水出口部29に設けた凹部29aに差し込む際、この接合部からの漏水を防止するために、架橋ポリエチレンホース27の端部あるいは、湯水出口部29に設けた凹部29aにシリコン等を塗布するとよい。
尚、湯水混合水栓20の吐水管21部の作製方法は、架橋ポリエチレンホース27を吐水管21に挿入した後、過熱する方法に限定されず、前述したように架橋ポリエチレンホース27の外周に層間材13を巻き付けて吐水管21に挿入し、その後、層間材13のみを引き抜く方法で組み立てもよい。
【0048】
このようにして作製された湯水混合水栓20は、通水部となる内装部12が架橋ポリエチレンホース27で形成されているため、長期間の使用に対しても金属管に比べて内装部12の表面が劣化する恐れが少ない。また、金属管に微量に含有する鉛成分の水中への溶出を低減するための表面処理等の特別な処理を必要としない。
また、架橋ポリエチレンホース27に熱湯が流れた場合においても、架橋ポリエチレンホース27の熱伝導係数が低いため、吐水管21の表面温度が上がりにくい。そのため、従来の吐水管に比べて左右に動かす等の操作を熱い思いをせずに容易に行うことができる。
【0049】
次に、本発明の通水部材10を用いた第2実施形態の水栓について説明する。
第2実施形態の水栓となる引き出し式水栓30は、図6に示すように吐水口31を有するシャワーヘッド32が、屈曲自在のフレキシブルホース33と接続されており、水栓本体34及び吐水管35を通して水栓本体34から引き出し可能となっている。そして、使用者が、シャワーヘッド32を引き出すことにより、使用者の思いの場所に湯水を供給できるものである。
【0050】
第2実施形態の引き出し式水栓30では、外装部となる吐水管35に内装部となる架橋ポリエチレンホース36を挿入する。架橋ポリエチレンホース36は、外径29mm、内径23mmの2層構造のホースを押出成形により作製する。図8に示したように、架橋ポリエチレンホース36の2層構造は、外層36aは、JIS A硬度70で厚みが2.5mm、内層36bは硬度100で厚みを0.5mmとした。こうして得られた架橋ポリエチレンホース36を、鋳造加工により作製された吐水管35の下部より所定の位置まで挿入する。その後、架橋ポリエチレンホース36と吐水管35を80℃で5分間加熱する。これによって、架橋ポリエチレンホース36が再架橋され、硬度が高くなるとともに、弾性が低下して架橋ポリエチレンホース36のフレキシビリティが小さくなるため、吐水管35の内側で固定された状態となって引き出し式水栓30の通水部を形成するものである。
尚、引き出し式水栓30の吐水管35部の作製方法は、架橋ポリエチレンホース36を吐水管35に挿入した後、加熱する方法に限定されず、前述したように架橋ポリエチレンホース36の外周に層間材13を備えて吐水管35に挿入し、その後、層間材13のみを引き抜く方法で組み立てもよい。
【0051】
このようにして作製された引き出し式水栓30は、内装部が、架橋ポリエチレンホース36で形成されているため、シャワーヘッド32の引き出しの際に架橋ポリエチレンホース36とフレキシブルホース33が接触しても発生する音は非常に小さく抑えることができ、従来のような金属製の吐水管内部にフレキシブルホース33を通す場合に、金属と金属が摺動することにより発生する特有の高い音を防止することができる。
【0052】
次に、本発明の通水部材10を用いた第3実施形態の水栓について説明する。第3実施形態の水栓である引き出し式水栓40は、図7に示すように吐水管41の先端に設けた吐水口42が、屈曲自在のフレキシブルホース33と水栓本体43及び逆J字状に形成したグースネック状の吐水管41を通して接続されており、吐水管41から引き出し可能となっている。そして、使用者が、吐水口42を引き出すことにより、使用者の思いの場所に湯水を供給できるものである。また、吐水口42がグースネック形状に湾曲していることより、吐水口42の下の空間が幅広く使えることを特徴とする水栓である。
【0053】
第3実施形態の引き出し式水栓40では、外装部となる吐水管41に内装部となる架橋ポリエチレンホース44を挿入する。架橋ポリエチレンホース44は、外径22mm、内径18mmの2層構造の架橋ポリエチレンホース44を押出成形により作製する。図9に示したように、架橋ポリエチレンホース44の2層構造は、外層44aはJIS A硬度70Hsで厚みが1.5mm、内層44bはJIS A硬度100で厚みを0.5mmとした。また、架橋ポリエチレンホース44の内層側の長手方向に4本のリブ45を設けた。こうして得られた架橋ポリエチレンホース44を、鋳造加工により作製された吐水管41に所定の位置まで挿入する。
こうして得られた架橋ポリエチレンホース44を、鋳造加工により作製された吐水管41の下部より所定の位置まで挿入する。その後、架橋ポリエチレンホース44と吐水管41を80℃で5分間加熱する。これによって、架橋ポリエチレンホース44が再架橋され、硬度が高くなるとともに、弾性が低下して架橋ポリエチレンホース44のフレキシビリティが小さくなるため、吐水管41の内側で固定された状態となって引き出し式水栓40の通水部を形成するものである。
尚、引き出し式水栓40の吐水管41部の作製方法は、架橋ポリエチレンホース44を吐水管41に挿入した後、加熱する方法に限定されず、前述したように架橋ポリエチレンホース44の外周に層間材13を巻き付けて吐水管41に挿入し、その後、層間材13のみを引き抜く方法で組み立てもよい。また、本発明の目的である断熱、静音等の効果を損なわない範囲で架橋ポリエチレンホース44に切り込みを入れて吐水管41に挿入してもよい。
【0054】
これらの工程を経て作製された引き出し式水栓40では、吐水口42の引き出しの際に架橋ポリエチレンホース44とフレキシブルホース33が、引き出し式水栓40の頂上部46の内面で接触するが、内装部が架橋ポリエチレンホース44で形成されているため、接触時に発生する音は非常に小さく、従来の金属製の吐水管とフレキシブルホース33といった、金属同士の接触時に発生する特有の高い音を防止することができる。また、架橋ポリエチレンホース44の長手方向にリブ45が設けられているため、フレキシブルホース33との接触面積が小さくなり、滑りが良くなって組み立て性が向上する。
【0055】
また、架橋ポリエチレンホース44の内層側の長手方向に4本のリブ45を設けたが、図10に示すように、リブ45の形状を螺旋状に形成することもできる。この場合、前述と同様の効果が得られると同時に、内装部を形成する架橋ポリエチレンホース44を曲げることが容易となり、特に曲率半径の小さい円弧形状等を持つような外装部に容易に挿入することができる。
【0056】
尚、本発明の通水部材は、前述のように湯水を通水するものに限定されることなく、他の液体や気体を通すことも含み、例えばガソリンなどの油、水栓の手洗いに用いられる水石けん、酸やアルカリの薬剤を通す通水部材であってもよい。
【0057】
また、本発明の通水部材は断熱効果を発揮するため、熱湯を通水したときに外装部の表面温度が上がりにくく通水部材を素手でも扱いやすいというだけでなく、結露を防止することができる。つまり、通水部材内部を通る流体の温度が低く、通水部材の設置されている場所の外気温が高かったとしても、熱伝導率の低い樹脂製の内装部が間に介在するため、通水部材の外装部表面と外気温との温度差が大きくならないため、結露が発生しにくい。よって、本発明は洗面スペースの排水管などにも好適に用いることができるのである。
【0058】
【発明の効果】
以上により、断熱性に優れ熱湯を通水しても表面温度が高温にならず、長時間にわたる使用においても鉛成分の溶出や錆などの腐食が発生せず、さらには、異形状の通水部材にも応用可能であるとともに、組み立て性が良好で外観意匠性にも優れ、安価に製作できる通水部材および通水部材を用いた水栓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ストレート管とシングルアール管の断面図
【図2】グースネック形状の管と波形の管の断面図
【図3】本発明の通水部材を示した図
【図4】層間材を用いた内装部の取り付け方法を示した図
【図5】本発明の通水部材を用いた第1実施形態の水栓を示した図
【図6】本発明の通水部材を用いた第2実施形態の水栓を示した図
【図7】本発明の通水部材を用いた第3実施形態の水栓を示した図
【図8】外層と内層を設けた合成樹脂製ホースの断面を示した図
【図9】リブを設けた合成樹脂製ホースの断面を示した図
【図10】リブを螺旋形状に形成した合成樹脂製ホースの断面を示した図
【符号の説明】
10:通水部材
11:外装部
12:内装部
13:層間材
20:湯水混合水栓
21:吐水管
22:水栓本体
23:給水脚金具
24:給湯脚金具
25:温度調節ハンドル
26:切替ハンドル
27:架橋ポリエチレンホース
28:接続具
29:湯水出口部
30:引き出し式水栓
31:吐水口
32:シャワーヘッド
33:フレキシブルホース
34:水栓本体
35:吐水管
36:架橋ポリエチレンホース
40:引き出し式水栓
41:吐水管
42:吐水口
43:水栓本体
44:架橋ポリエチレンホース
45:リブ
46:頂上部

Claims (10)

  1. 異形状である外装部の内側に内装部を有する通水部材において、前記内装部は、架橋により成形される合成樹脂または、ゴム製のホースであって、前記外装部の内側に挿入し取り付けて、通水部を形成したことを特徴とする通水部材。
  2. 前記通水部材の一端に吐水口を設け、他端に接続具を設けて水栓本体と接続したことを特徴とする請求項1に記載の通水部材を用いた水栓。
  3. 前記通水部材の通水部にフレキシブルホースを挿通して前記吐水口を含む吐水部に接続し、前記吐水部を通水部材から着脱自在に構成したことを特徴とする請求項2に記載の水栓。
  4. 前記吐水管は、逆J字状に形成されたことを特徴とする請求項3に記載の水栓。
  5. 前記内装部を形成するホースが、ポリオレフィン系合成樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の通水部材。
  6. 前記内装部を形成するホースを外層と内層の2層構造とし、前記外層は、前記内層より硬度を低くくしたことを特徴とする請求項5記載の通水部材。
  7. 前記内装部を形成するホースの内層側の長手方向にリブを設けたこと特徴とする請求項5または請求項6に記載の通水部材。
  8. 前記リブを螺旋形状に形成したことを特徴とする請求項7に記載の通水部材。
  9. 異形状である外装部と、その外装部の内側に内装部を設けた通水部材において、前記内装部は、架橋により成形される合成樹脂または、ゴム製のホースであって、前記外装部の内側に挿入した後、加熱による再架橋を行うことによって、前記内装部が、前記外装部の内部で硬化して取り付けられ通水部を形成したことを特徴とする通水部材製造方法。
  10. 異形状である外装部と、その外装部の内側に内装部を設けた通水部材において、前記内装部は、架橋により成形される合成樹脂または、ゴム製のホースであって、前記内装部の外周面に滑り性を有する層間材を備えて前記外装部の内側に挿入した後、前記層間材を引き抜くことによって、前記内装部が、前記外装部の内周面に密着して取り付けられ通水部を形成したことを特徴とする通水部材の製造方法。
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