以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。なお本願では、実施形態の標準的な使用状態に基づき、「上」、「下」、「上側」、「上端」、「下側」、「下端」等の用語が用いられる。水栓の姿勢等は様々に設定することができ、上記用語は当該姿勢等に応じて読み替えられて解釈される。
図1は、一実施形態に係る水栓装置2の斜視図であり、図2は水栓装置2の側面図である。水栓装置2は、水栓本体4と、水導入管6と、湯導入管8と、吐出管10とを有する。水栓装置2は、例えば、キッチン、洗面台等で使用される。水導入管6及び湯導入管8は、サプライ管である。
水栓本体4は、水栓基部12と、ハンドル14と、吐出部16とを有する。吐出部16は、ヘッド20を有する。ヘッド20は、切替操作部22と水形調整部24と吐出口26とを有する。吐出部16には、浄水カートリッジ(図示されず)が内臓されている。切替操作部22により、浄水カートリッジを透過する流路と、浄水カートリッジを透過しない流路とが切り換えられる。浄水カートリッジを透過する流路に切り換えられると、浄水が吐出される。浄水カートリッジを透過しない流路に切り換えられると、原水が吐出される。
ハンドル14の上下回動により、吐出量が調整される。本実施形態では、ハンドル14を上側に動かすほど、吐出量が増加する。ハンドル14の左右回動により、湯と水との混合割合が変化し、吐水の温度が調整される。水栓装置2は、湯水混合栓を構成している。水栓基部12には、ハンドル14の操作により吐出量及び吐水温度を調整しうる弁機構が内蔵されている。周知の通り、この弁機構は可動弁体と固定弁体とを含み、固定弁体は水孔、湯孔及び排出孔を有している(図示省略)。
更に水栓装置2は、シャンク管30と、水栓固定ナット32と、ワッシャー34と、パッキン36とを有する。シャンク管30は、水栓本体4の下端部に取り付けられている。シャンク管30は、水栓本体4の下端部から下側に延びている。シャンク管30は、水栓基部12の外面と同軸である。なお本願では、管状であってその外周面に雄ねじが形成されたネジパイプをシャンク管と称する。
水栓装置2は、取付基体に固定されている。シャンク管30は、この固定に寄与している。取付基体の一例は、キッチンの天板40(図2参照)である。シャンク管30は、天板40の貫通孔に上方から差し込まれる。差し込まれたシャンク管30に、下側から水栓固定ナット32が螺合される。水栓固定ナット32を締め付けることで、天板40が、シャンク部材50の挟持部(又は水栓基部12)と水栓固定ナット32とで挟まれる。この結果、水栓装置2は天板40(取付基体)に固定される。なお、図2では、水栓固定ナット32は天板40よりも下方に位置している。水栓固定ナット32を回して水栓固定ナット32を上側に移動させることで、天板40が挟み込まれる。
図3は、図2のA-A線に沿った断面図である。シャンク管30は管状体であり、その内部は中空である。この中空の部分に、水導入管6、湯導入管8及び吐出管10が通っている。すなわち、シャンク管30の内側に、水導入管6、湯導入管8及び吐出管10が通っている。なお図3では、シャンク管30の厚みが変化しているように見えるが、これは、螺旋状に形成されたネジ山を有するシャンク管30を水平な断面で見たためである。実際には、シャンク管30の厚みは、周方向において一定である。
水導入管6は、水栓本体4からシャンク管30の内側を通って外部に至っている。水導入管6は、外部に配置された給水接続部(図示省略)に接続される。水導入管6は、上水道の水を水栓本体4に導入する。水導入管6は、給水接続部からの水を前記固定弁体の水孔に供給する。
水導入管6は、第1部分6aと第2部分6bとを有する。第1部分6aは、水栓本体4と第2部分6bとを繋いでいる。第2部分6bは、第1部分6aと給水接続部とを繋ぐ。第1部分6aは、金属管(銅管)である。第2部分6bは、ブレードホースである。第2部分6bの端部には、継手雄管6cが設けられている。図示されないが、雄管6cが、前記給水接続部に設けられた継手雌管に接続される。シャンク管30の内側を通っているのは、水導入管6における第1部分6aである。
湯導入管8は、水栓本体4からシャンク管30の内側を通って外部に至っている。湯導入管8は、外部に配置された給湯接続部(図示省略)に接続される。湯導入管8は、給湯器等で加熱された湯を水栓本体4に導入する。湯導入管8は、給湯接続部からの湯を前記固定弁体の湯孔に供給する。
湯導入管8は、第1部分8aと第2部分8bとを有する。第1部分8aは、水栓本体4と第2部分8bとを繋いでいる。第2部分8bは、第1部分8aと給湯接続部とを繋ぐ。第1部分8aは、金属管(銅管)である。第2部分8bは、ブレードホースである。第2部分8bの端部には、継手雄管8cが設けられている。図示されないが、この継手雄管8cが、前記給湯接続部に設けられた継手雌管に接続される。シャンク管30の内側を通っているのは、湯導入管8における第1部分8aである。
吐出管10は、前記弁機構と吐出部16とを繋いでいる。吐出管10は、第1部分10aと第2部分10bとを有する。第1部分10aは、前記弁機構(固定弁体の排出孔)と第2部分10bとを繋いでいる。第2部分10bは、第1部分10aと吐出部16とを繋いでいる。第1部分10aは、金属管(銅管)である。第2部分10bは、フレキホースである。吐出管10を通った水は、吐出部16を経由して、吐出口26から排出される。
図1及び図2では、吐出管10の中間部分の記載が省略されている。この中間部分では、第2部分10b(フレキホース)は、途中で折り返された状態で垂れ下がっている。この垂れ下がった部分は、吐出管10に付加的長さを与える。この付加的長さは、吐出管10を水栓本体4から取り出して使用することを可能とする。水栓装置2において、吐出部16は、水栓本体4から取り外して使用されうる。このとき、吐出部16に追随して、吐出管10(第2部分10b)が引き出される。このとき吐出管10(第2部分10b)はシャンク管30の内側で移動する。シャンク管30の内側の空洞が確保されることで、吐出管10(第2部分10b)の円滑な引き出しが可能となる。
図3が示すように、吐出管10の第1部分10a(銅管)と第2部分10b(フレキホース)とが、シャンク管30の内側を通っている。シャンク管30の内側を通っているのは、水導入管6(第1部分6a)、湯導入管8(第1部分8a)、吐出管10の第1部分10a及び吐出管10の第2部分10bである。
図4(a)は、シャンク管30を構成するシャンク部材50の斜視図である。図4(b)は、シャンク部材50の正面図である。図4(c)は、シャンク部材50の左側面図である。図4(d)は、シャンク部材50の右側面図である。図4(e)は、シャンク部材50の底面図である。
シャンク部材50は、基部52と、フランジ54と、シャンク管30とを有する。基部52は、シャンク部材50の上部を構成している。基部52は、管状体である。基部52は、水栓基部12の外壁の下端部に固定(ねじ止め)されている。フランジ54は、径方向外側に突出している。フランジ54は、水栓基部12の下端を塞いでいる。シャンク管30は、シャンク部材50の下部を構成している。シャンク部材50における、フランジ54よりも下側の部分が、シャンク管30である。フランジ54は、基部52とシャンク管30との間に位置する。基部52とシャンク管30とは同軸である。フランジ54とシャンク管30とは同軸である。フランジ54は、シャンク部材50の挟持部の一例である。この挟持部は、シャンク管30の上側に位置し、径方向外側に延在している。シャンク部材50は、全体として一体成形されている。なお、特に説明しない限り、本願において径方向とは、シャンク管30の径方向を意味する。
シャンク管30は、雄ねじ部30aを有する。雄ねじ部30aは、シャンク管30の外周面に形成されている。シャンク管30の略全長に亘って、雄ねじ部30aが形成されている。
雄ねじ部30aは、上端30bと下端30cとを有する。下端30cは、シャンク管30の下端でもある。下端30cは、自由端である。下端30cは、下端面を構成している。
シャンク管30は、第1欠落部k1と、第2欠落部k2とを有する。第1欠落部k1は、シャンク管30の一部が欠落することによって構成されている。本実施形態では、第1欠落部k1は、シャンク管30の一部を切除することで形成された切欠きである。本実施形態では、第2欠落部k2は、シャンク管30の一部を切除することで形成された切欠きである。
第1欠落部k1がシャンク管30の内側における湯導入管8(第1部分8a)に近くなるように、第1欠落部k1の周方向位置が設定されている。第1欠落部k1は、湯導入管8(第1部分8a)を通過させうる幅を有する。湯導入管8(第1部分8a)は、第1欠落部k1を通過しうる。
第2欠落部k2がシャンク管30の内側における水導入管6(第1部分6a)に近くなるように、第2欠落部k2の周方向位置が設定されている。第2欠落部k2は、水導入管6(第1部分6a)を通過させうる幅を有する。水導入管6(第1部分6a)は、第2欠落部k2を通過しうる。
図4(e)が示すように、第1欠落部k1の周方向位置は、第2欠落部k2の周方向位置とは異なる。第1欠落部k1は、周方向第1位置に設けられている。第1欠落部k1は、シャンク管30の下端30cから上側に向かって延びている。第2欠落部k2は、周方向第2位置に設けられている。第2欠落部k2は、シャンク管30の下端30cから上側に向かって延びている。なお、特に説明しない限り、本願における周方向とは、シャンク管30の周方向を意味する。特に説明しない限り、本願における径方向とは、シャンク管30の半径方向を意味する。特に説明しない限り、本願における軸方向とは、シャンク管30の軸方向を意味する。
図5は、図4(e)の拡大図である。
図5において2点鎖線で示されるのは、水栓本体4の基準中心線CL1である。基準中心線CL1は、シャンク管30の中心線z1を通る。この基準中心線CL1は、水栓本体4の正面方向に一致している。この基準中心線CL1に基づいて、手前側位置S1及び奥側位置S2が定義される。手前側位置S1及び奥側位置S2は、シャンク管30の周方向における位置である。手前側位置S1の方向は、水栓本体4の手前側(水栓手前側)である(図2参照)。換言すれば、手前側位置S1の方向は、使用者側である。奥側位置S2の方向は、水栓本体4の奥側(水栓奥側)である。典型的なキッチンでは、水栓本体4の手前側(使用者側)にシンクが設けられている。手前側位置S1は、ハンドル14の左右回動における正面位置である。シャンク管30の中心線z1に対して垂直な断面(横断面図)において、第1欠落部k1と第2欠落部k2とは、直線AS1を対称軸とした線対称の関係にある。本実施形態では、対称軸AS1が、基準中心線CL1に一致している。
シャンク管30は、第1欠落部k1の手前側を画定する欠落部画定面k11と、第1欠落部k1の奥側を画定する欠落部画定面k12とを有する。欠落部画定面k11及び欠落部画定面k12は、軸方向に延在している(図4(d)参照)。本実施形態では、欠落部画定面k11及び欠落部画定面k12は、切削加工によって形成された切削面である。シャンク管30を部分的に切除して第1欠落部k1を形成する際に、欠落部画定面k11及び欠落部画定面k12が形成される。
欠落部画定面k12は、基準中心線CL1(対称軸AS1)に垂直な直線に対して略平行である。略平行とは、基準中心線CL1(対称軸AS1)に対する欠落部画定面k12の成す角度が10°以下、更には5°以下であることを意味する。欠落部画定面k12は、欠落部画定面k11に平行である。
シャンク管30は、第2欠落部k2の手前側を画定する欠落部画定面k21と、第2欠落部k2の奥側を画定する欠落部画定面k22とを有する。欠落部画定面k21及び欠落部画定面k22は、軸方向に延在している(図4(c)参照)。本実施形態では、欠落部画定面k21及び欠落部画定面k22は、切削加工によって形成された切削面である。シャンク管30を部分的に切除して第2欠落部k2を形成する際に、欠落部画定面k21及び欠落部画定面k22が形成される。
欠落部画定面k22は、基準中心線CL1(対称軸AS1)に垂直な直線に対して略平行である。略平行とは、基準中心線CL1(対称軸AS1)に対する欠落部画定面k22の成す角度が10°以下、更には5°以下であることを意味する。欠落部画定面k22は、欠落部画定面k21に平行である。
図5において符号P1で示されるのは、第1欠落部k1の周方向位置である。この周方向位置P1は、周方向第1位置とも称される。周方向位置P1は、欠落部画定面k11の周方向位置P11と、欠落部画定面k12の周方向位置P12との間を2等分する位置である。周方向位置P11は、欠落部画定面k11の径方向最外点60の周方向位置である。周方向位置P12は、欠落部画定面k12の径方向最外点62の周方向位置である。
図5において符号P2で示されるのは、第2欠落部k2の周方向位置である。この周方向位置P2は、周方向第2位置とも称される。周方向位置P2は、欠落部画定面k21の周方向位置P21と、欠落部画定面k22の周方向位置P22との間を2等分する位置である。周方向位置P21は、欠落部画定面k21の径方向最外点64の周方向位置である。周方向位置P22は、欠落部画定面k22の径方向最外点66の周方向位置である。
図5において符号P3で示されるのは、欠落部画定面k12の径方向最内点70の周方向位置である。図5において符号P4で示されるのは、欠落部画定面k22の径方向最内点72の周方向位置である。
第1欠落部k1及び第2欠落部k2が存在する軸方向領域では、シャンク管30は、第1周方向部分80と第2周方向部分82とに分断されている。第1欠落部k1及び第2欠落部k2が存在する軸方向領域は、シャンク管30の下部とも称される。第1周方向部分80は、欠落部画定面k11から欠落部画定面k21までの部分であり、周方向に連続した部分である。第2周方向部分82は、欠落部画定面k12から欠落部画定面k22までの部分であり、周方向に連続した部分である。シャンク管30において、第1周方向部分80は手前側に位置し、第2周方向部分82は奥側に位置する。図5の底面図(又はシャンク管30の横断面図)において、第1周方向部分80は、基準中心線CL1を対称軸として線対称である。図5の底面図(又はシャンク管30の横断面図)において、第2周方向部分82は、基準中心線CL1を対称軸として線対称である。図5の底面図(又はシャンク管30の横断面図)において、第1周方向部分80は、基準中心線CL1を対称軸として線対称である。
図5において両矢印θ1で示されるのは、周方向第1位置P1と周方向第2位置P2との間の中心角である。図5において両矢印θ2で示されるのは、第1周方向部分80の中心角である。図5において両矢印θ3で示されるのは、周方向位置P3と周方向位置P4との間の中心角である。θ3は、径方向内側における第2周方向部分82の中心角である。図5において両矢印θ4で示されるのは、第2周方向部分82の中心角である。本実施形態では、θ4は、径方向外側における第2周方向部分82の中心角θ5に等しい。
本実施形態では、第2周方向部分82の中心角θ4は、周方向位置P12と周方向位置P22との間の中心角に一致している。欠落部画定面k12及び欠落部画定面k22のように、欠落部画定面が径方向に対して傾斜している場合、中心角θ4は、当該中心角の最大値とされる。よって中心角θ4は、最大中心角とも称される。この点は、第1周方向部分80の中心角θ2についても同じである。中心角θ2は、最大中心角とも称される。
第1欠落部k1及び第2欠落部k2は、周方向において、一方側(奥側)に偏在して配置されている。第2周方向部分82の最大中心角θ4は、第1周方向部分80の最大中心角θ2よりも小さい。
欠落部画定面k12は、径方向外側にいくほど周方向手前側にいくように傾斜している。欠落部画定面k22は、径方向外側いくほど周方向手前側にいくように傾斜している。周方向手前側とは、周方向において手前側位置S1に近づく方向である。中心角θ5は、中心角θ3よりも大きい。
図6は、図4(b)のA-A線に沿った断面図(縦断面図)である。シャンク部材50は、上方及び下方に開放されている。シャンク管30は、シャンク部材50の下側の部分を占めている。シャンク管30は、上方及び下方に開放されている。
シャンク管30は、主部30dと下端部30eとを有する。シャンク管30は、主部30dと下端部30eのみから構成されている。主部30dの軸方向長さは、下端部30eの軸方向長さよりも大きい。シャンク管30の内径は、下端部30eにおいて小さくなっている。この結果、下端部30eは主部30dに比べて厚肉である。下端部30eの厚さt2は、主部30dの厚さt2よりも大きい。また、ねじの谷からシャンク管30の内面までの厚さt1についても、下端部30eが主部30dよりも大きい。厚肉の下端部30eは、無くてもよい。t1及びt2は、径方向に沿って測定される。
雄ねじ部30aは、シャンク管30の略全長に亘って形成されている。雄ねじ部30aは、シャンク管30の全長L1の90%以上に形成されている。雄ねじ部30aの仕様は、主部30dと下端部30eとで変化しない。ねじ山の高さ(t2-t1)及びねじ山の外径は、雄ねじ部30aの全体において一定である。雄ねじ部30aは、シャンク管30の下端30cから上側に向かって形成されている。
シャンク管30は、全長L1を有する。全長L1は、軸方向に沿って測定される。また、シャンク管30は、シャンク管30の上端から第2欠落部k2の上端までの軸方向距離L2を有する。軸方向距離L2は、シャンク管30において欠落部k1、k2を有さない部分の軸方向長さである。図6では図示されないが、第1欠落部k1についても、軸方向距離L2が定義される。シャンク管30は、シャンク管30の上端から第1欠落部k1の上端までの軸方向距離L2を有する。
シャンク管30は、外径D1を有する。シャンク管30の外径D1は一定である。雄ねじ部30aにおいて、外径D1は最大径である。すなわち、雄ねじ部30aにおいて、外径D1は、ねじ山の頂点において測定される。
図7は、図5と同じく、シャンク部材50の底面図である。図5で符号が混み合っているため、見やすさの観点から、図5とは別に図7を設けている。
第1欠落部k1及び第2欠落部k2は、欠落幅W1を有する。図7が示すように、第1欠落部k1において、欠落幅W1は、欠落部画定面k11と欠落部画定面k12との最短距離である。図示されないが、第2欠落部k2の欠落幅W1は第1欠落部k1のそれと同様である。第2欠落部k2において、欠落幅W1は、欠落部画定面k21と欠落部画定面k22との最短距離である。
図7において両矢印V1で示されるのは、第2欠落部k2の中心点c1とシャンク管30の中心線z1との距離である。図7が示すように、中心点c1は、周方向位置P2を示す径方向線とシャンク管30の内面との交点である。距離V1は、基準中心線CL1(図5参照)に沿って測定される。図示されないが、第2欠落部k2と同様に、第1欠落部k1も、距離V1を有している。
このような構成を有するシャンク管30では、第2欠落部k2から水導入管6(第1部分6a)を引き出すことができる。このため、水導入管6(第1部分6a)を、より上側の位置で曲げることができる(図4(a)及び図4(b)において仮想線で示される水導入管6を参照)。よって、水導入管6の曲がり位置の自由度が高まる。この点は、湯導入管8についても同様である。シャンク管30では、第1欠落部k1から湯導入管8(第1部分8a)を引き出すことができる。このため、湯導入管8(第1部分8a)を、より上側の位置で曲げることができる(図4(b)において仮想線で示される湯導入管8を参照)。よって、湯導入管8の曲がり位置の自由度が高まる。
前述の通り、水導入管6は、給水接続部に接続される。施工現場によって、給水接続部の位置は異なる。例えば、この給水接続部の位置が高く、給水接続部が水栓本体4に近い場合がある。完成された製品としての水栓装置2に水導入管6が設けられており、この水導入管6の長さは調整できない。給水接続部が高い位置にあり水栓本体4に近い場合、水導入管6を急激に湾曲させて、水導入管6(雄管6c)を給水接続部に接続する必要がある。しかし、水導入管6の柔軟性には限度があり、水導入管6を給水接続部に接続できない事態が起こりうる。この点は湯導入管8についても同様である。給湯接続部が高い位置にあり水栓本体4に近い場合、湯導入管8を給湯接続部に接続できない事態が起こりうる。
第1欠落部k1により、シャンク管30の下端30cよりも高い位置で湯導入管8を曲げることができる。このため、給湯接続部の位置に対する対応性が高まり、より高い位置の給湯接続部に湯導入管8を接続することが可能となる。第2欠落部k2により、シャンク管30の下端30cよりも高い位置で水導入管6を曲げることができる。このため、給水接続部の位置に対する対応性が高まり、より高い位置の給水接続部に水導入管6を接続することが可能となる。
第1欠落部k1及び第2欠落部k2により、シャンク管30は、周方向における2箇所で分断されることになる。すなわち、シャンク管30は、第1周方向部分80と第2周方向部分82とに分断される(図5参照)。このため、シャンク管30の強度及び剛性の低下が懸念された。水栓装置2を固定するシャンク管30には、強い力が作用しうる。このシャンク管30に第1欠落部k1及び第2欠落部k2を設けることは、困難と考えられた。
また、第1欠落部k1及び第2欠落部k2により、雄ねじ部30aも周方向における2箇所で分断される。例えば、第2周方向部分82が変形すると、第1周方向部分80の雄ねじ部30aと第2周方向部分82の雄ねじ部30aとの間でズレが生じ、水栓固定ナット32の螺合が困難となる。この観点からも、シャンク管30に第1欠落部k1及び第2欠落部k2を設けることは、困難と考えられた。
シャンク管30の外面には雄ねじ部30aが設けられている。雄ねじ部30aが切られたことで、シャンク管30の平均厚みは減少している。また、シャンク管30の内側には、水導入管6、湯導入管8、吐出管10の第1部分10a、及び、吐出管10の第2部分10bが通されるため、シャンク管30の内径は大きくされる。加えて、シャンク管30の外径は規格により制約される。結果として、シャンク管30の厚みは制限される。この観点からも、シャンク管30に第1欠落部k1及び第2欠落部k2を設けることは、困難と考えられた。
しかし、実際には、第1欠落部k1及び第2欠落部k2が設けられても、シャンク管30は容易に変形せず、水栓装置2を強固に固定する役割を果たしうることが分かった。
シャンク管30に作用する力として、取付基体40を挟み込む力(締結力)が挙げられる。この締結力は非常に大きい。しかし、この締結力は軸方向に沿った力であり、欠落部k1,k2を有するシャンク管30を変形させないことが分かった。
欠落部k1,k2から導入管6、8が引き出されるときに、導入管6、8及び工具がシャンク管30に当たりうる。この際に、シャンク管30には、径方向外側への力が作用する。この力は、シャンク管30(特に第2周方向部分82)を径方向外側に曲げやすいと考えられた。しかし、この曲がり変形もほとんど起こらないことが分かった。第1周方向部分80及び第2周方向部分82は、円に沿って曲がった円弧形状を有する。この円弧形状は、径方向外側に曲がる変形を抑制しうる(円弧形状効果)。
上述の通り、第1欠落部k1及び第2欠落部k2は、周方向において、一方側(奥側)に偏在して配置されている。この偏在により、欠落部k1,k2から導入管6、8を引き出すのが容易とされている(図3参照)。しかし、この偏在により、第2周方向部分82の中心角θ4が小さくなっている(図5参照)。このため、第2周方向部分82の剛性が低下し、第2周方向部分82が径方向外側に曲がることが懸念された。しかし、上述の円弧形状効果に起因して、この変形は抑制されうることが分かった。
欠落部k1,k2を一方側に偏在させることで、欠落幅W1を抑制しつつ、導入管6、8の引き出しが容易とされうる。また、第2周方向部分82の中心角θ4が小さくても、第2周方向部分82は容易に変形しないことが分かった。これらの観点から、第2周方向部分82の最大中心角θ4は、115°以下が好ましく、110°以下がより好ましく、105°以下がより好ましい。上述の通り、このようにθ4が小さくされても、第2周方向部分82の変形は抑制される。第2周方向部分82の剛性の観点から、第2周方向部分82の中心角θ4は、85°以上が好ましく、90°以上がより好ましく、95°以上がより好ましい。上記実施形態では、θ4は100°である。
欠落幅W1を抑制する観点から、第1周方向部分80の最大中心角θ2は、165°以上が好ましく、170°以上がより好ましく、175°以上がより好ましい。導入管6、8の引き出しを容易とする観点から、第1周方向部分80の中心角θ2は、200°以下が好ましく、195°以下がより好ましく、190°以下がより好ましい。上記実施形態では、θ2は187°である。
θ4がθ2よりも小さくされることで、欠落幅W1を抑制しつつ、導入管6、8の引き出しを容易とすることができる。また、第2周方向部分82の中心角θ4が小さくても、第2周方向部分82は容易に変形しないことが分かった。これらの観点から、差(θ2-θ4)は、50°以上が好ましく、60°以上がより好ましく、70°以上がより好ましく、80°以上がより好ましい。欠落幅W1を抑制しつつ、導入管6、8の引き出しを容易とする観点から、差(θ2-θ4)は、110°以下が好ましく、100°以下がより好ましく、90°以下がより好ましい。上記実施形態では、差(θ2-θ4)は87°である。
導入管6、8の引き出しを容易とする観点から、前記中心角θ1は、160°以下が好ましく、150°以下がより好ましく、140°以下がより好ましい。同じ観点から、前記中心角θ1は、110°以上が好ましく、120°以上がより好ましく、130°以上がより好ましい。上記実施形態では、θ1は138°である。
前述の通り、欠落部画定面k12は、径方向外側にいくほど周方向手前側にいくように傾斜している。また、欠落部画定面k22は、径方向外側にいくほど周方向手前側にいくように傾斜している。この傾斜に起因して、径方向外側における第2周方向部分82の中心角θ5は、径方向内側における第2周方向部分82の中心角θ3よりも大きい。
θ5がθ3よりも大きくされることで、欠落幅W1を確保しながら第2周方向部分82の剛性を高めることができ、円弧形状効果が高まる。また、θ5がθ3よりも大きくされることで、欠落幅W1を確保しながら、第2周方向部分82における雄ねじ部30aの周方向幅を大きくすることができ、ナット噛み合い効果(後述)が高まる。これらの観点から、差(θ5-θ3)は、8°以上が好ましく、10°以上がより好ましく、12°以上がより好ましい。径方向に対する欠落部画定面k12の傾斜が過大であると、欠落部画定面k12の径方向外側縁に存在するねじ山が欠けやすくなる。同様に、径方向に対する欠落部画定面k22の傾斜が過大であると、欠落部画定面k22の径方向外側縁に存在するねじ山が欠けやすくなる。これらの観点から、差(θ5-θ3)は、20°以下が好ましく、18°以下がより好ましく、16°以下がより好ましい。上記実施形態では、差(θ5-θ3)は14°である。
長期使用住宅部材標準化推進協議会(以下、CJKともいう)は、部材基準書を定めている。このCJKで定められた基準寸法に設定することで、水栓の汎用性が確保されうる。逆に言えば、汎用性を確保するためには、水栓装置2の寸法は、このCJKで定められた基準寸法に制約されうる。
上記基準寸法の観点から、シャンク管30の外径D1は、35mm以上が好ましい。シャンク管30の強度を考慮すると、外径D1は36mm以上がより好ましい。上記基準寸法の観点から、外径D1は39mm以下が好ましく、キッチンの天板40への施工性を考慮すると、38mm以下がより好ましい。上記実施形態では、外径D1は37mmとされた。
外径D1が39mm以下に制約されることで、第1欠落部k1と第2欠落部k2とが近くなり、第2周方向部分82が変形しやすいことが懸念された。しかし、外径D1が39mm以下とされることで、第2周方向部分82の曲率半径が小さくなり、上記円弧形状効果が高まることが判った。
上記基準寸法によれば、キッチンの天板40の厚さは6~30mmである。また、水栓固定ナット32の厚みと、ワッシャー34の厚みと、パッキン36の厚みとを合計すると、好ましくは12mm程度である。これらの観点から、シャンク管30の全長L1(図6参照)は、42mm以上が好ましい。あらゆるキッチンの天板40への対応性を考慮すると、全長L1は45mm以上がより好ましい。キッチンへの施工性の観点から、全長L1は50mm以下が好ましく、49mm以下がより好ましい。上記実施形態では、全長L1は48mmとされた。
上述の通り、シャンク管30は、シャンク管30の上端から欠落部k1,k2の上端までの軸方向距離L2を有する(図6参照)。シャンク管30の強度及び剛性の観点から、距離L2は、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、15mm以上がより好ましい。導入管6、8の曲げ位置の自由度を高める観点から、距離L2は、20mm以下が好ましく、19mm以下がより好ましい。上記実施形態では、距離L2は18mmとされた。
ただし、軸方向距離L2が小さくても、シャンク管30は水栓装置2を固定できることが判明した。一旦水栓固定ナット32を締め付けてしまえば、水栓固定ナット32がシャンク管30に噛み合っているため、シャンク管30は容易に変形しないことが分かった(ナット噛み合い効果)。第2周方向部分82は、上記円弧形状効果に加えて、このナット噛み合い効果により、容易には変形しないことが分かった。導入管6、8の曲げ位置の自由度を優先する観点からは、距離L2は、15mm以下でもよく、10mm以下でもよく、5mm以下でもよく、0mmであってもよい。距離L2は、水栓固定ナット32の軸方向長さより小さくてもよい。
シャンク管30を挿通している導入管6、8は、金属管であるのが好ましく、銅管であるのがより好ましい。上記実施形態では、第1部分6a,8aが金属管であるのが好ましく、銅管であるのがより好ましい。ゴムホース等と比べて、金属管(銅管)の柔軟性は低い。よって、金属管(銅管)の場合には、欠落部k1,k2による効果(曲げ位置の自由度を高める効果)が際立つ。
汎用の第1部分6a及び第1部分8a(銅管)の外径は、9.5mm程度である。銅管を通過させる観点から、欠落幅W1(図7参照)は、9.7mm以上が好ましく、9.8mm以上がより好ましい。シャンク管30の強度の観点から、欠落幅W1は11mm以下が好ましく、10.5mm以下がより好ましい。上記実施形態では、銅管が通るスペースとシャンク管30の強度とを考慮して、欠落幅W1は10mmとされた。
導入管6、8の引き出し易さの観点から、上記距離V1(図7参照)は、5mm以上が好ましく、5.5mm以上がより好ましい。導入管6、8の引き出し易さの観点から、上記距離V1は、7mm以下が好ましく、6.5mm以下がより好ましい。上記実施形態では、距離V1は6mmとされた。
図6の拡大部が示すように、差(t2-t1)は、雄ねじ部30aのねじ山の高さである。水栓固定ナット32の締め付けによる締結力を高める観点から、このねじ山の高さは、0.8mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましい。シャンク管30の強度の観点から、このねじ山の高さは、1.6mm以下が好ましく、1.4mm以下がより好ましい。上記実施形態では、このねじ山の高さは1.2mmとされた。
シャンク管30の内径を確保する観点から、上記厚さt1(図6参照)は、1.5mm以下が好ましく、1.3mm以下がより好ましく、1.2mm以下がより好ましい。外径D1が制約される中でも、シャンク管30の内径を確保することで、管6a、8a、10a及び10bが通されうる。強度の観点から、厚さt1は、0.5mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましい。上記実施形態では、厚さt1は0.75mm~1.1mmとされた。
上記厚さt1が小さいシャンク管30では、第1欠落部k1及び第2欠落部k2に起因する剛性の低下が懸念された。しかし上述の通り、第2周方向部分82は容易に変形せず、シャンク管30の機能は維持された。
強度の観点から、シャンク管30の好ましい材質として、樹脂及び金属が挙げられる。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。金属では、施工時の強度確保及び生産性の観点から、黄銅が好ましい。コスト及び生産性の観点から、樹脂が用いられても良い。樹脂では、成形が容易な熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の中では、特に成形性に優れるとの観点から、PP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、POM(ポリアセタール)及びPPS(ポリフェニレンサルファイド)が好ましい。その中でも、強度確保の観点から、PPSが特に好ましい。上記実施形態では、生産性及び強度の観点から、シャンク管30の材質は黄銅とされた。
シール性の観点から、パッキン36の好ましい材質として、NBR(ニトリルゴム)、シリコーン及びEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)が挙げられる。上記実施形態では、安価で機械的強度に優れるNBRが用いられた。
強度の観点から、ワッシャー34の好ましい材質として、樹脂及び金属が挙げられる。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。金属では、生産性の観点から、ステンレス鋼が好ましい。コスト及び生産性の観点から、樹脂が用いられても良い。樹脂では、成形が容易な熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の中では、特に成形性に優れるとの観点から、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ナイロン樹脂、POM(ポリアセタール)が好ましい。その中でも、機械的強度に優れるナイロン樹脂が特に好ましい。上記実施形態では、生産性及び強度の観点から、ワッシャー34の材質はステンレス鋼とされた。
強度の観点から、水栓固定ナット32の好ましい材質として、樹脂及び金属が挙げられる。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。金属では、施工時の強度確保及び生産性の観点から、黄銅が好ましい。コスト及び生産性の観点から、樹脂が用いられても良い。樹脂では、成形が容易な熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の中では、特に成形性に優れるとの観点から、PP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、POM(ポリアセタール)及びPPS(ポリフェニレンサルファイド)が好ましい。その中でも、強度確保の観点から、PPSが特に好ましい。上記実施形態では、生産性及び強度の観点から、水栓固定ナット32の材質は黄銅とされた。
上述した実施形態に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
水栓本体と、
前記水栓本体から下側に延びており且つその外周面に雄ねじ部が形成されたシャンク管と、
前記水栓本体から前記シャンク管の内側を通って外部に至る水導入管と、
前記水栓本体から前記シャンク管の内側を通って外部に至る湯導入管と、
前記シャンク管の前記雄ねじ部に螺合する水栓固定ナットと、
を備えており、
前記シャンク管が、第1欠落部と第2欠落部とを有しており、
前記第1欠落部が、周方向第1位置において、前記シャンク管の下端から上側に向かって延びており、
前記第2欠落部が、周方向第2位置において、前記シャンク管の下端から上側に向かって延びており、
前記第1欠落部及び前記第2欠落部により、前記シャンク管の下部が、第1周方向部分と第2周方向部分とに分断されている水栓装置。
[付記2]
前記第1欠落部及び前記第2欠落部が、前記シャンク管の上端よりも下側で終端している付記1に記載の水栓装置。
[付記3]
前記第2周方向部分の最大中心角が、前記第1周方向部分の最大中心角よりも小さい付記1又は2に記載の水栓装置。
[付記4]
前記第1周方向部分の最大中心角がθ2とされ、前記第2周方向部分の最大中心角がθ4とされるとき、差(θ2-θ4)が50°以上である付記3に記載の水栓装置。
[付記5]
径方向外側における前記第2周方向部分の中心角が、径方向内側における前記第2周方向部分の中心角よりも大きい付記3又は4に記載の水栓装置。
[付記6]
径方向外側における前記第2周方向部分の中心角がθ5とされ、径方向内側における前記第2周方向部分の中心角がθ3とされるとき、差(θ5-θ3)が8°以上である付記5に記載の水栓装置。
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明に含まれない他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。