JP2004292633A - プリプレグ及び積層板の製造方法、及びプリプレグの製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な含浸性と表面平滑性を有するプリプレグ及び積層板の製造方法、及び、このプリプレグの製造装置を提供する。
【解決手段】プリプレグの製造方法であって、
(a)シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を上記シート状繊維基材に担持させて、担持基材Aとする工程、
(b)上記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、上記担持基材Aに負圧を作用させ、担持基材Bとする工程、
を有することを特徴とするプリプレグの製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】プリプレグの製造方法であって、
(a)シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を上記シート状繊維基材に担持させて、担持基材Aとする工程、
(b)上記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、上記担持基材Aに負圧を作用させ、担持基材Bとする工程、
を有することを特徴とするプリプレグの製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリプレグ及び積層板の製造方法、及びプリプレグの製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、高機能化に伴い、搭載されるプリント回路基板に用いられる材料には、小型化、薄型化、高集積化に対応できる品質が求められている。また、価格の低減についても大きな課題となっている。
【0003】
高機能電子機器に用いられるプリント回路基板には、熱硬化性樹脂組成物をガラス基材に含浸させたプリプレグ、及びこれを銅箔などの金属箔とともに積層成形した銅張積層板が用いられている。ここで、金属箔は回路を形成し、熱硬化性樹脂含浸基材部は絶縁層としての機能を有している。プリント回路基板の小型化、薄型化に対応するためには、回路を細線化し、絶縁層を薄くする方法が有効である。
【0004】
しかし、例えば基材としてガラス織布を用いた場合、これに熱硬化性樹脂組成物を含浸させたプリプレグの表面には、ガラス織布の織り目に起因する凹凸が残存する。これは、熱硬化性樹脂組成物の付着量が、ガラス繊維基材の密度の粗密や表面の凹凸に関わらず、基材の面方向において一定になりやすいことが原因の一つであるが、このようなプリプレグに銅箔を積層成形すると、銅箔面に同様な凹凸が形成されてしまう。この凹凸は、回路加工時に部分的な回路細りを生ずる原因となり、回路を細線化する際の障害となっていた。
【0005】
一方、絶縁層の厚みを薄くするためには、薄い絶縁層であっても良好な絶縁性能を有していることが必要であり、具体的には、ガラス織布を用いた場合では、織布の繊維束間はもちろん、微細な繊維束内においても熱硬化性樹脂組成物の含浸性が良好であることが要求される。
基材に対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性を向上させる方法としては、熱硬化性樹脂組成物の含浸時間を長く確保する方法、用いる熱硬化性樹脂組成物に大量の有機溶剤を使用して低粘度ワニスとする方法、あるいは、このような低粘度ワニス又は有機溶剤のみを先に含浸させ、次いで、通常濃度のワニスを含浸させる方法などが挙げられる。(例えば、特許文献1、2参照。)。
しかし、これらの方法は生産性の低下や製造コストの高騰を招き、有機溶剤を大量に使用する場合は環境汚染が懸念されるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平05−001158号公報
【特許文献2】
特開平05−230240号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、良好な含浸性と表面平滑性を有するプリプレグ及び積層板の製造方法、及び、このプリプレグの製造装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(8)により達成される。
(1) プリプレグの製造方法であって、
(a)シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を前記シート状繊維基材に担持させて、担持基材Aとする工程、
(b)前記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、前記担持基材Aに負圧を作用させ、担持基材Bとする工程、
を有することを特徴とするプリプレグの製造方法。
(2) さらに、
(c)前記担持基材Bの少なくとも一方の表面側から、前記熱硬化性樹脂組成物を前記担持基材Bに担持させて、担持基材Cとする工程
を有する、上記(1)に記載のプリプレグの製造方法。
(3) さらに、
(d)前記担持基材Cの表面を整面して、担持基材Dとする工程、
を有する、上記(2)に記載のプリプレグの製造方法。
(4) 前記熱硬化性樹脂組成物は、固形分比率が50〜90重量%の液状ワニスである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
(5) 前記熱硬化性樹脂組成物は、粒子状の熱硬化性樹脂組成物を水に分散させた樹脂分散水である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
(6) 前記(a)工程は、前記熱硬化性樹脂組成物を、スプレー装置を用いて前記シート状繊維基材に担持させる上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
(7) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の製造方法により得られたプリプレグを加熱加圧成形することを特徴とする積層板の製造方法。
(8) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載されたプリプレグの製造方法を適用できるプリプレグの製造装置であって、
(p)シート状繊維基材を供給搬送する装置、
(q)前記シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を前記シート状繊維基材に担持させる塗工装置、
(r)前記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、前記熱硬化性樹脂組成物が担持された部位に負圧を作用させる装置、及び、
(s)前記負圧を発生させる装置、
を有することを特徴とする、プリプレグの製造装置。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のプリプレグ及び積層板の製造方法、及びプリプレグの製造装置について説明する。本発明のプリプレグの製造方法は、
(a)シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を上記シート状繊維基材に担持させて、担持基材Aとする工程、
(b)上記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、上記担持基材Aに負圧を作用させ、担持基材Bとする工程、
を有することを特徴とすることを特徴とする。
また、本発明の積層板の製造方法は、上記プリプレグの製造方法で得られたプリプレグを加熱加圧成形することを特徴とする。
そして、本発明のプリプレグの製造装置は、上記プリプレグの製造方法を適用できるプリプレグの製造装置であって、
(p)シート状繊維基材を供給搬送する装置、
(q)上記シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を上記シート状繊維基材に担持させる塗工装置、
(r)上記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、上記熱硬化性樹脂組成物が担持された部位に負圧を作用させる装置、及び、
(s)上記負圧を発生させる装置、
を有することを特徴とする。
はじめに、本発明のプリプレグの製造方法について説明する。
【0010】
本発明のプリプレグの製造方法は、まず、
(a)シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を上記シート状繊維基材に担持させて、担持基材Aとする。
【0011】
上記(a)工程において用いられる熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ということがある)としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂を含有し、このほか必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、無機充填材などのほか、熱可塑性樹脂などの可塑性付与剤、カップリング剤、着色剤などの添加剤を配合したものを用いることができる。
【0012】
樹脂組成物中の熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂、シアネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
この熱硬化性樹脂の硬化に際して、硬化剤や硬化促進剤を必要とする場合には、これを配合することができる。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合は、硬化剤として酸無水物化合物、ジシアンジアミド、芳香族アミンなどのアミン化合物、ノボラック型フェノール樹脂などを用いることができる。また、硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、第3級アミン化合物などを用いることができる。
【0013】
この樹脂組成物に無機充填材を配合する場合、その種類としては特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、アルミナ、シリカ、未焼成クレー、焼成クレー、硫酸バリウム等が挙げられる。このような無機充填材の添加により、耐トラッキング性、耐熱性、低熱膨張率等の特性を付与することができる。
【0014】
この樹脂組成物の形態は特に限定されないが、例えば、上記成分を有機溶剤に溶解させて樹脂ワニスとして用いる方法、上記成分を粉体に調製し、これを水などの貧溶媒に分散させて樹脂分散水として用いる方法、あるいは、粉体のままで用いる方法などが挙げられる。
これらの中でも、樹脂ワニスとして用いる方法、あるいは、樹脂分散水として用いる方法が好ましい。これにより、取り扱い性を良好なものにすることができる。また、基材への担持を簡易に行うことができる。そして、担持量の調整も容易であり、この担持量を基材の面方向において均一にしやすいという利点も有する。
【0015】
この樹脂ワニスを調製する際に用いられる有機溶剤としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、エチレングリコールなどのグリコール類、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類のほか、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。これらは必要に応じて2種類以上を併せて用いることができる。
【0016】
この樹脂ワニスを調製する際の、樹脂ワニス中の固形分濃度は特に限定されないが、50〜90重量%とすることが好ましい。さらに好ましくは60〜80重量%である。これにより、用いる有機溶剤の量を低減できるので、表面平滑性に優れたプリプレグを製造しやすくなるとともに、製造コストを抑えることができる。
【0017】
また、樹脂分散水を調製する方法としては特に限定されないが、湿式、乾式いずれの方法を適用することができる。
湿式の場合は、高圧ホモジナイザーに代表されるような高圧高速の分散装置を粉砕装置として利用することができる。具体的には、例えば、予め平均粒子径50〜150μmに粗粉砕された材料混合物を水に分散させ、これを200〜3000kg/cm2の高圧で高速処理することにより、微粒子化物が分散した樹脂分散水を連続的に得ることができる。
このほかにも、微粒子化した原材料混合物をノズル噴霧装置から噴霧し、これにノズル霧化装置により微粒子化された水に接触させて、水との濡れ性を高めた後に、通常の撹拌装置等を用いて水に分散させる方法などが挙げられる。
また、乾式の場合は、粗粉砕された材料もしくは材料混合物をジェットミルに代表されるような粉砕装置を用いて微粒子化し、これをヘンシェルミキサーのような攪拌装置などを用いて水に分散混合させることにより、樹脂分散水を得ることができる。
【0018】
この樹脂分散水中の樹脂組成物濃度は特に限定されないが、20〜80重量%とすることが好ましい。さらに好ましくは40〜70重量%である。これにより、取り扱い性に優れ、基材へ担持させるのに適した樹脂分散水とすることができる。
樹脂組成物の含有量が上記下限値より小さいと、樹脂分散水の塗工が長時間を所要することがあり、プリプレグの製造効率が低下することがある。また、樹脂組成物を基材に担持させた後、水分を除去する際のエネルギーが増大するようになる。一方、上記上限値より大きいと、樹脂分散水が高粘度化する傾向があるため、取り扱い性が低下することがある。
また、この樹脂分散水は、有機溶剤を含有することができる。例えば、硬化剤、硬化促進剤、添加剤など、樹脂組成物中における配合量は少量であっても、その機能が重要であり、かつ、樹脂組成物中に高い均一分散性で混合する必要がある成分については、これらを有機溶剤に溶解し、上記樹脂分散水と混合して用いることもできる。
【0019】
この樹脂分散水を調製する際に用いられる樹脂組成物粒子の粒径は特に限定されないが、樹脂分散水中における平均粒径が0.1〜100μmであることが好ましい。さらに好ましくは0.5〜50μm、特に好ましくは1〜20μmである。これにより、プリプレグの製造時における各材料の均一分散性と、プリプレグ並びに積層板を製造する際の熱硬化性樹脂成分の均一硬化性を向上させることができる。さらに、樹脂組成物粒子が基材の単繊維間へ侵入しやすくなるとともに、その後に加熱工程を経る場合には、樹脂組成物の溶融・含浸が容易になり、含浸性の良好なプリプレグを得ることができる。平均粒径が上記下限値未満では、樹脂分散水を調製する際の取り扱い性が低下することがあり、上記上限値を超えると、均一分散性が低下したり、加熱により溶融させる際に時間を要し、用いる熱硬化性樹脂や基材の種類によっては含浸性に影響を与えたりすることがある。
【0020】
以上の方法により得られた組成物を、基材の一方の表面側から基材に担持させる。
【0021】
ここで用いられる基材としては特に限定されないが、例えば、ガラス織布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、紙、合成繊維等からなる織布や不織布、金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維等からなる織布、不織布、マット類等が挙げられる。これらの基材の原料繊維は単独又は混合して使用することもできる。
【0022】
樹脂組成物を基材に担持させる方法としては特に限定されないが、例えば、スプレー装置を用いて樹脂組成物を基材に噴射して塗工する方法、ナイフコーター、コンマコーター等の各種コーターを用いて樹脂組成物を基材に塗工する方法、あるいは、リバースコーター等の転写ロールにより樹脂組成物を基材に転写して塗工する方法、などが挙げられる。これらの方法を単独又は組み合わせて用いることができる。
【0023】
これらの方法の中でも、特に、スプレー装置を用いて樹脂組成物を基材に噴射して塗工する方法が好ましい。これにより、樹脂組成物として樹脂ワニスを用いた場合、あるいは、樹脂分散水を用いた場合のいずれにおいても、樹脂組成物を基材に担持させる際に運動エネルギーを与えることができ、樹脂組成物が基材繊維間に圧入される効果を高めることができる。また、基材に樹脂組成物を担持させる際の基材の搬送方向を問わず、簡易な装置でこれを実施することができる。
【0024】
次に、本発明のプリプレグの製造方法においては、
(b)上記基材のもう一方の表面側から、上記担持基材Aに負圧を作用させ、担持基材Bとする。
【0025】
この基材のもう一方の表面側から、上記担持基材Aに負圧を作用させる方法としては特に限定されないが、例えば、真空ポンプ等の装置により負圧を発生させ、これに接続された負圧を作用させる装置、例えば空気吸引口などを、基材面に接触又は接近させる方法が挙げられる。
【0026】
ここで作用させる負圧の大きさは特に限定されないが、負圧を作用させる担持基材Aの表面部分において、20〜200Torrとすることが好ましい。これにより、例えば基材としてガラス織布を用いた場合では、樹脂組成物は基材表面の基材繊維束が存在する部分だけでなく、基材繊維束間の空隙部分にも担持されやすくなる。この結果、基材繊維束の織目、あるいは、基材の厚み方向における繊維束の粗密差に起因する、基材表面の凹凸を補填して、担持基材Bの表面平滑性を向上させることができる。
また、基材繊維束内への樹脂組成物の移動や含浸を促進させることができるので、この(b)工程や、後述する担持基材を加熱する工程において、最も時間を要する基材繊維束内への樹脂組成物の含浸を短時間で行うことができる。
なお、この負圧を作用させる時間としては特に限定されず、用いる樹脂組成物の形態・粘度、用いる基材の繊維密度等により必要かつ充分な時間を選定することができる。
【0027】
このほかにも、本発明のプリプレグの製造方法を適用できる例として、以下のものが挙げられる。
ガラス織布基材を用いたプリプレグを、内層回路基板とともに用いて多層回路プリント板を製造する場合には、プリプレグにより層間絶縁層を形成するとともに、プリプレグの両面側に積層される回路基板あるいは他のプリプレグとの間に良好な接着性を有することが求められる。しかし、用いる樹脂組成物の種類によっては、例えば無機充填材の含有量が多く、熱硬化性樹脂成分が少ないために、この接着性を充分に確保することが難しい場合がある。
このような場合、上記(b)工程において、まず、担持基材Aに負圧を作用させ、基材繊維束内への樹脂組成物の移動や含浸を行い、次いで、これよりも強い負圧を作用させて、負圧が大きく作用する基材繊維束の織目交点間の空隙部分において樹脂組成物を除去する。この結果、基材繊維束内へは樹脂組成物が充分に担持され、かつ、基材繊維束の織目交点間の空隙部分においては樹脂組成物が担持されていない、すなわち、プリプレグ両表面を貫通する微小な孔を多数有したプリプレグを製造することができる。このような形態のプリプレグを、接着性の良好な樹脂組成物を用いた他のプリプレグと併せて成形すると、接着性の良好な樹脂組成物がこの貫通孔にも充填されるので、プリプレグや回路基板等との接着性を改善することができる。
本発明のプリプレグの製造方法は、このような形態のプリプレグを製造する際にも適用することができるものである。
【0028】
本発明のプリプレグの製造方法においては、特に限定されないが、さらに、
(c)担持基材Bの少なくとも一方の表面側から、樹脂組成物を担持基材Bに担持させて、担持基材Cとすることができる。
これにより、(b)工程までにおいて樹脂組成物の担持量が不足する場合でもこれを補充することができる。また、基材の両表面における樹脂組成物の担持量を調整することができる。
【0029】
本発明のプリプレグの製造方法においては、特に限定されないが、上記(c)工程の後に、さらに、
(d)上記担持基材Cの表面を整面して、担持基材Dとすることができる。
これにより、基材表面の凹凸を充填して、平滑性を向上させる効果を高めることができる。
このように整面する方法としては特に限定されないが、例えば、コンマロール、スクイズロールなどを用いて行うことができる。
【0030】
本発明のプリプレグの製造方法においては、以上に説明したように、樹脂組成物を基材の一方の表面側から担持させ、そのもう一方の表面側から負圧を作用させることを特徴とするものである。
【0031】
従来の製造方法、例えば樹脂ワニス中にガラス織布基材を浸漬して含浸させる方式では、基材が樹脂ワニス中に浸漬された時点で、基材の両側表面は樹脂ワニスに遮断されるため、基材繊維中に存在していた空気は逃げ場を失う。このため、特に基材の繊維束内部の空気が樹脂ワニスと交換されて含浸が完了するには長い時間を要する。これは特に固形分濃度が高い高粘度樹脂ワニスでは顕著となる。また、通常の樹脂ワニスは気泡を多く含んでおり、これが樹脂ワニスとともに基材中に取り込まれるとプリプレグ中に残存するボイドの一因にもなる。
【0032】
本発明の製造方法においては、樹脂組成物を基材の一方の表面側から担持させるので、もう一方の表面側は解放された状態にある。さらに、このもう一方の表面側から負圧を作用させることにより、基材の繊維束内部に存在する空気を吸引するので、ここに負圧を生じ、樹脂組成物を繊維束内部に強制的に移動させることができるので、この工程ないしは担持基材を加熱する工程において、樹脂組成物の含浸を短時間で行うことができる。
【0033】
また、負圧を作用させることで、樹脂組成物は基材表面に均一に担持されるのではなく、基材表面の凹凸を補填するように担持されやすくなる。そして、好ましくは固形分濃度が高い樹脂組成物を用いることにより、樹脂組成物が相対的に多く担持された部分においても、有機溶剤あるいは水分等の除去による体積減少をより小さく抑えることができる。これにより、表面凹凸の小さな、表面平滑性に優れたプリプレグを製造することができる。
【0034】
さらに、このように負圧を作用させることで、この工程において、樹脂組成物中に含有される有機溶剤あるいは水分の蒸発を促進させることができる。この結果、後述する担持基材を加熱する工程において、有機溶剤あるいは水分の蒸発に必要な熱量供給を低減することができるので、製造効率を高めることができるとともに、低コスト化を図れるという利点も有する。
【0035】
本発明のプリプレグの製造方法においては、上記工程の後、通常、この担持基材を加熱する工程を有する。これにより、有機溶剤あるいは水が実質的に全て蒸発するとともに、熱硬化性樹脂成分等が溶融して低粘度化し、基材繊維間に含浸したプリプレグを得ることができる。また、熱硬化性樹脂の硬化反応を途中まで進行させることができるので、プリプレグに担持される樹脂組成物の流動性を適正なものとすることができ、後述する積層板の製造工程において、樹脂組成物の過大な流れ出しを防止し、かつ、短時間で積層板を製造することができる。また、プリプレグの取り扱い性を向上させることができる。
【0036】
この担持基材を加熱する方法としては特に限定されないが、例えば、加温した空気により行う方法、加温した輻射パネルからの輻射熱により行う方法、あるいは、遠赤外線ヒーターパネルなどにより行う方法などが挙げられる。
担持基材を加熱する条件としては、熱硬化性樹脂や硬化剤などの種類、配合量により異なるので特に限定されないが、通常、担持基材の表面温度が100〜220℃、好ましくは120〜190℃で1〜10分間行うことができる。
【0037】
このようにして得られたプリプレグに担持されている樹脂組成物の量としては特に限定されないが、通常、プリプレグ重量(基材+樹脂組成物)全体に対して、40〜60重量%程度とすることができる。
【0038】
次に、本発明の積層板の製造方法について説明する。
本発明の積層板の製造方法は、以上の方法により得られたプリプレグを加熱加圧成形することを特徴とする。
本発明の積層板の製造方法において、プリプレグを加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、平板プレス装置を使用して、温度150〜200℃、圧力2〜6MPa、時間15〜100分間で成形することができる。
また、上記プリプレグとともに金属箔を加熱加圧成形して、金属箔張積層板とすることもできる。このような金属箔を構成する金属としては特に限定されないが、例えば、銅または銅系合金、アルミまたはアルミ系合金等を挙げることができる。金属箔の厚さは特に限定されないが、通常3〜70μmのものが用いられる。金属箔は、プリプレグの片面あるいは両面に積層され、プリプレグとともに一体成形され金属箔張積層板とすることができる。
【0039】
次に、本発明のプリプレグの製造装置について説明する。
本発明のプリプレグの製造装置は、本発明のプリプレグの製造方法を適用することができるプリプレグの製造装置であって、
(p)基材を供給搬送する装置、
(q)上記基材の一方の表面側から、樹脂組成物を上記基材に担持させる塗工装置、
(r)上記基材のもう一方の表面側から、上記樹脂組成物が担持された部位に負圧を作用させる装置、及び、
(s)上記負圧を発生させる装置、
を有することを特徴とする。
【0040】
以下、本発明のプリプレグの製造装置(以下、単に「製造装置」ということがある)について、好適な実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の製造装置の一例を示す断面側面図である。本発明の製造装置は、図1に示すように、基材の供給搬送装置1、樹脂組成物の塗工装置2、樹脂組成物が担持された部位の基材のもう一方の表面側から負圧を作用させる装置3、負圧を発生させる装置4、担持基材を加熱する装置5、とを有している。
【0041】
図1において、基材は巻物形態の基材1aから繰り出されて供給・搬送される。
基材1bは、スプレー装置21aにより、その一方の表面側から樹脂組成物23を噴射され、これが担持される。そして、もう一方の表面側から、負圧を発生させる装置4に接続された、負圧を作用させる装置3により負圧を与えられ、担持基材1cとなる。
次いで、スプレー装置21b、21cにより、担持基材1cの両面側からさらに樹脂組成物23を噴射されて担持基材1dとなった後、適正なギャップに調整されたコンマロール対22a、22bの間を通過して、担持基材1eとなる。この後、担持基材1eは、これを加熱する装置5へ搬送される。なお、余剰分の樹脂組成物23はバット24に回収され、樹脂組成物23の貯留装置25へ送られる。
【0042】
装置5には、担持基材1eの上昇路及び下降路において、基材表面に対して垂直方向から輻射熱を供給できる輻射パネル51、51、...が、基材の両面側に配置されている。この輻射パネル51、51、...からの熱供給により、樹脂組成物の溶融、基材への含浸、熱硬化性樹脂成分の部分的硬化を進行させた担持基材1fとすることができる。
【0043】
担持基材1fは装置5の内部において比較的高温に加温されており、その表面は溶融樹脂により強いタック性を有していることが多い。このため、輻射パネル51、51、...から必要な輻射熱の供給を受けた後、冷風供給ノズル52、52により、担持基材1fを冷却し、タック性をなくすことにより取り扱いが容易な担持基材1gとなる。冷風供給ノズル52、52からの空気は、図示していない温調装置により所定の温度に冷却されたものを、ブロアー61から供給している。
装置5から搬出された担持基材1gは、方向転換後、巻き取りを行って巻物状のプリプレグ1hとなる。
【0044】
本発明の製造装置において、基材に樹脂分散水を担持させる方法としては、図1に示したようなスプレー装置を用いる方法のほか、上記本発明の製造方法において説明したような方法によって行うこともできる。
【0045】
また、装置3内における基材の移送方法として、図1に示した実施形態においては、基材を鉛直方向に搬送し、これを1回反転させる方式を用いているが、特にこのような方式に限定されるものではなく、例えば、鉛直方向に反転せず1パスで搬送する方式、あるいは、水平方向に搬送する方式などを適用することもできる。
【0046】
本発明の製造装置において、負圧を作用させる装置の形態としては特に限定されないが、基材の幅方向全面に、面形状で負圧を作用させることが好ましい。具体的には、例えば、基材の幅方向全幅を吸引できるスリット状の吸引口を設置する方法、またはこれを基材の搬送方向に複数本数並べて配置する方法、あるいは、比較的大型の長方形形状の吸引口を設け、目開きを有する平織、綾織、ハニカム形状の網、あるいはパンチングプレートなどを設けて、基材を支持しながら吸引する方法によることもできる。
【0047】
また、装置5内において用いられる、担持基材を加熱する方式としては、図1に示したような輻射熱を用いる方法のほか、熱風、遠赤外線などによる方法を用いることもできる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0049】
<実施例1>
(1)樹脂組成物Aの調製
平均粒径80μmの粉末状のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製・臭素化エポキシ樹脂Ep5048、エポキシ当量675)100重量部、平均粒子径15μmの粉末状の硬化剤(ジシアンジアミド)2重量部、及び平均粒径15μmの粉末状の硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.1重量部を、ヘンシェルミキサーで混合攪拌(600rpm、1分)した。この混合原料をホソカワミクロン社製のカウンタージェットミル200AFG(ノズル径3mm×3本)を用いて、空気圧600kPa、圧空量1.7m3/minで処理し、分級ローター(11500rpm)で補集し、樹脂組成物Aを得た。この平均粒径を測定したところ、1.5μmであった。
【0050】
(2)樹脂分散水Aの調製
水100重量部に対して、界面活性剤としてポリオキシエチレンモノステアレート(花王社製・エマノーン3199)1重量部を加え、ディスパーザー(1560rpm)で撹拌混合しながら、上記樹脂組成物Aを徐々に100重量部まで加えていった。その後、さらに10分間攪拌し、樹脂組成物Aの含有率が50重量%である樹脂分散水Aを得た。
【0051】
(3)プリプレグの製造
図1に示した形態の装置を用いて行った。
(3.1)塗工
基材として、平均繊維径9μm、坪量100g/m2のガラス織布を使用し、この一方の表面側から、スプレー装置(アトマックス社製・2流体スプレーノズル・BN−90S−IS 空気圧4kg/cm2)を用い、樹脂組成物担持量が80g/m2となるように樹脂分散水Aを噴射して塗工を行い、もう一方の表面側から、真空ポンプに接続した装置で、50Torrで1秒間、負圧を作用させた。
次いで、上記と同じ仕様のスプレー装置を用い、基材の両方の表面側から樹脂分散水Aを噴射し、これを、コンマコーター対間を通して、樹脂組成物担持量が114g/m2となるように調整して、担持基材を得た。
【0052】
(3.2)担持基材の加熱
図1において、装置5の内部に設置された輻射パネルにより、担持基材の表面温度190℃で1.5分間保持できるように加熱処理を行い、プリプレグを得た。
【0053】
(4)積層板の製造
上記で得られたプリプレグ2枚を重ね合わせ、さらにその表裏に厚さ18μmの電解銅箔を重ね合わせ、真空プレス装置を用い、温度190℃、圧力4MPaで90分間加熱加圧成形して、厚さ0.22mmの銅張積層板を製造した。
【0054】
<実施例2>
(1)樹脂ワニスBの調製
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製・臭素化エポキシEp5048、エポキシ当量675)100重量部、硬化剤(ジシアンジアミド)2重量部、及び硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.1重量部を、メチルセルソルブ50重量部に溶解し、樹脂組成物の含有率が67重量%である樹脂ワニスBを調製した。
【0055】
(2)プリプレグの製造
図1に示した形態の装置を用い、実施例1と同様にしてプリプレグを製造した。
【0056】
(3)積層板の製造
上記で得られたプリプレグ用い、実施例1と同様にして銅張積層板を製造した。
【0057】
<比較例1>
(1)樹脂ワニスCの調製
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製・臭素化エポキシEp5048、エポキシ当量675)100重量部、硬化剤(ジシアンジアミド)2重量部、及び硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.1重量部をメチルセルソルブ100重量部に溶解し、樹脂組成物の含有率が51重量%である樹脂ワニスCを調製した。
【0058】
(2)プリプレグの製造
上記で得られた樹脂ワニスCに、実施例1で用いた基材を1秒間浸漬した後、コンマコーターを用いて樹脂組成物保持量が114g/m2となるように調整し、これを170℃の熱風加熱乾燥装置で3分間加熱してプリプレグを製造した。
【0059】
(3)積層板の製造
上記で得られたプリプレグ用い、実施例1と同様にして銅張積層板を製造した。
【0060】
実施例及び比較例で得られたプリプレグ及び積層板について、各特性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
〔測定方法〕
(1)平均粒子径:粒度分布計(HORIBA LA−910)により測定した。
(2)含浸性:プリプレグを実体顕微鏡にて観察し、基材繊維束の内部、及び基材繊維束間に存在するボイドを確認した。各符号は下記の通りである。
◎:ボイドが実質的に観察されなかった
○:ストランド内にわずかにボイドがある
(3)成形性:銅張積層板の銅箔をエッチングして、目視によりかすれやボイド等の成形不良が確認されなかったものを「良好」とした。
(4)表面平滑性:JIS−B0601に準拠して、銅張積層板表面の基材方向に接触式表面粗さ計を用いて基準長さ5mmを測定し、この間におけるRmax(最大高さ)で表示した。
(5)銅箔引き剥し強さ:JISC 6481に準拠して測定した。
(6)半田耐熱性:50×50mmの積層板を、260℃の半田浴に3分間フロートさせ、ふくれの有無を測定した。
(7)絶縁抵抗:JISC 6481に準拠して測定した。
【0063】
表1の結果から、実施例1〜2は本発明のプリプレグの製造方法により得られたプリプレグ及びこれを成形した積層板であり、プリプレグの含浸性、積層板の成形性、表面平滑性などのいずれにおいても、従来の製造方法である比較例1と同等以上に優れたものとなった。
【0064】
【発明の効果】
本発明は、(a)シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を前記シート状繊維基材に担持させて、担持基材Aとする工程、(b)上記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、上記担持基材Aに負圧を作用させ、担持基材Bとする工程、を有することを特徴とするプリプレグの製造方法であり、含浸性に優れ、表面平滑性の高いプリプレグを製造することができる。そして、本発明の積層板の製造方法は、このプリプレグを用いた積層板の製造方法であり、同様に良好な含浸性と表面平滑性を有する積層板を製造することができる。従って本発明は、小型化、薄型化、高集積化に対応できるプリプレグ及び積層板の工業的な製造方法として好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプリプレグの製造装置の一例(側断面図)
【符号の説明】
1 基材の供給搬送装置
2 樹脂組成物の塗工装置
3 樹脂組成物が担持された部位の基材のもう一方の表面側から負圧を作用させる装置
4 負圧を発生させる装置
5 担持基材を加熱する装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリプレグ及び積層板の製造方法、及びプリプレグの製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、高機能化に伴い、搭載されるプリント回路基板に用いられる材料には、小型化、薄型化、高集積化に対応できる品質が求められている。また、価格の低減についても大きな課題となっている。
【0003】
高機能電子機器に用いられるプリント回路基板には、熱硬化性樹脂組成物をガラス基材に含浸させたプリプレグ、及びこれを銅箔などの金属箔とともに積層成形した銅張積層板が用いられている。ここで、金属箔は回路を形成し、熱硬化性樹脂含浸基材部は絶縁層としての機能を有している。プリント回路基板の小型化、薄型化に対応するためには、回路を細線化し、絶縁層を薄くする方法が有効である。
【0004】
しかし、例えば基材としてガラス織布を用いた場合、これに熱硬化性樹脂組成物を含浸させたプリプレグの表面には、ガラス織布の織り目に起因する凹凸が残存する。これは、熱硬化性樹脂組成物の付着量が、ガラス繊維基材の密度の粗密や表面の凹凸に関わらず、基材の面方向において一定になりやすいことが原因の一つであるが、このようなプリプレグに銅箔を積層成形すると、銅箔面に同様な凹凸が形成されてしまう。この凹凸は、回路加工時に部分的な回路細りを生ずる原因となり、回路を細線化する際の障害となっていた。
【0005】
一方、絶縁層の厚みを薄くするためには、薄い絶縁層であっても良好な絶縁性能を有していることが必要であり、具体的には、ガラス織布を用いた場合では、織布の繊維束間はもちろん、微細な繊維束内においても熱硬化性樹脂組成物の含浸性が良好であることが要求される。
基材に対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性を向上させる方法としては、熱硬化性樹脂組成物の含浸時間を長く確保する方法、用いる熱硬化性樹脂組成物に大量の有機溶剤を使用して低粘度ワニスとする方法、あるいは、このような低粘度ワニス又は有機溶剤のみを先に含浸させ、次いで、通常濃度のワニスを含浸させる方法などが挙げられる。(例えば、特許文献1、2参照。)。
しかし、これらの方法は生産性の低下や製造コストの高騰を招き、有機溶剤を大量に使用する場合は環境汚染が懸念されるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平05−001158号公報
【特許文献2】
特開平05−230240号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、良好な含浸性と表面平滑性を有するプリプレグ及び積層板の製造方法、及び、このプリプレグの製造装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(8)により達成される。
(1) プリプレグの製造方法であって、
(a)シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を前記シート状繊維基材に担持させて、担持基材Aとする工程、
(b)前記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、前記担持基材Aに負圧を作用させ、担持基材Bとする工程、
を有することを特徴とするプリプレグの製造方法。
(2) さらに、
(c)前記担持基材Bの少なくとも一方の表面側から、前記熱硬化性樹脂組成物を前記担持基材Bに担持させて、担持基材Cとする工程
を有する、上記(1)に記載のプリプレグの製造方法。
(3) さらに、
(d)前記担持基材Cの表面を整面して、担持基材Dとする工程、
を有する、上記(2)に記載のプリプレグの製造方法。
(4) 前記熱硬化性樹脂組成物は、固形分比率が50〜90重量%の液状ワニスである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
(5) 前記熱硬化性樹脂組成物は、粒子状の熱硬化性樹脂組成物を水に分散させた樹脂分散水である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
(6) 前記(a)工程は、前記熱硬化性樹脂組成物を、スプレー装置を用いて前記シート状繊維基材に担持させる上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
(7) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の製造方法により得られたプリプレグを加熱加圧成形することを特徴とする積層板の製造方法。
(8) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載されたプリプレグの製造方法を適用できるプリプレグの製造装置であって、
(p)シート状繊維基材を供給搬送する装置、
(q)前記シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を前記シート状繊維基材に担持させる塗工装置、
(r)前記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、前記熱硬化性樹脂組成物が担持された部位に負圧を作用させる装置、及び、
(s)前記負圧を発生させる装置、
を有することを特徴とする、プリプレグの製造装置。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のプリプレグ及び積層板の製造方法、及びプリプレグの製造装置について説明する。本発明のプリプレグの製造方法は、
(a)シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を上記シート状繊維基材に担持させて、担持基材Aとする工程、
(b)上記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、上記担持基材Aに負圧を作用させ、担持基材Bとする工程、
を有することを特徴とすることを特徴とする。
また、本発明の積層板の製造方法は、上記プリプレグの製造方法で得られたプリプレグを加熱加圧成形することを特徴とする。
そして、本発明のプリプレグの製造装置は、上記プリプレグの製造方法を適用できるプリプレグの製造装置であって、
(p)シート状繊維基材を供給搬送する装置、
(q)上記シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を上記シート状繊維基材に担持させる塗工装置、
(r)上記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、上記熱硬化性樹脂組成物が担持された部位に負圧を作用させる装置、及び、
(s)上記負圧を発生させる装置、
を有することを特徴とする。
はじめに、本発明のプリプレグの製造方法について説明する。
【0010】
本発明のプリプレグの製造方法は、まず、
(a)シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を上記シート状繊維基材に担持させて、担持基材Aとする。
【0011】
上記(a)工程において用いられる熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ということがある)としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂を含有し、このほか必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、無機充填材などのほか、熱可塑性樹脂などの可塑性付与剤、カップリング剤、着色剤などの添加剤を配合したものを用いることができる。
【0012】
樹脂組成物中の熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂、シアネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
この熱硬化性樹脂の硬化に際して、硬化剤や硬化促進剤を必要とする場合には、これを配合することができる。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合は、硬化剤として酸無水物化合物、ジシアンジアミド、芳香族アミンなどのアミン化合物、ノボラック型フェノール樹脂などを用いることができる。また、硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、第3級アミン化合物などを用いることができる。
【0013】
この樹脂組成物に無機充填材を配合する場合、その種類としては特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、アルミナ、シリカ、未焼成クレー、焼成クレー、硫酸バリウム等が挙げられる。このような無機充填材の添加により、耐トラッキング性、耐熱性、低熱膨張率等の特性を付与することができる。
【0014】
この樹脂組成物の形態は特に限定されないが、例えば、上記成分を有機溶剤に溶解させて樹脂ワニスとして用いる方法、上記成分を粉体に調製し、これを水などの貧溶媒に分散させて樹脂分散水として用いる方法、あるいは、粉体のままで用いる方法などが挙げられる。
これらの中でも、樹脂ワニスとして用いる方法、あるいは、樹脂分散水として用いる方法が好ましい。これにより、取り扱い性を良好なものにすることができる。また、基材への担持を簡易に行うことができる。そして、担持量の調整も容易であり、この担持量を基材の面方向において均一にしやすいという利点も有する。
【0015】
この樹脂ワニスを調製する際に用いられる有機溶剤としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、エチレングリコールなどのグリコール類、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類のほか、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。これらは必要に応じて2種類以上を併せて用いることができる。
【0016】
この樹脂ワニスを調製する際の、樹脂ワニス中の固形分濃度は特に限定されないが、50〜90重量%とすることが好ましい。さらに好ましくは60〜80重量%である。これにより、用いる有機溶剤の量を低減できるので、表面平滑性に優れたプリプレグを製造しやすくなるとともに、製造コストを抑えることができる。
【0017】
また、樹脂分散水を調製する方法としては特に限定されないが、湿式、乾式いずれの方法を適用することができる。
湿式の場合は、高圧ホモジナイザーに代表されるような高圧高速の分散装置を粉砕装置として利用することができる。具体的には、例えば、予め平均粒子径50〜150μmに粗粉砕された材料混合物を水に分散させ、これを200〜3000kg/cm2の高圧で高速処理することにより、微粒子化物が分散した樹脂分散水を連続的に得ることができる。
このほかにも、微粒子化した原材料混合物をノズル噴霧装置から噴霧し、これにノズル霧化装置により微粒子化された水に接触させて、水との濡れ性を高めた後に、通常の撹拌装置等を用いて水に分散させる方法などが挙げられる。
また、乾式の場合は、粗粉砕された材料もしくは材料混合物をジェットミルに代表されるような粉砕装置を用いて微粒子化し、これをヘンシェルミキサーのような攪拌装置などを用いて水に分散混合させることにより、樹脂分散水を得ることができる。
【0018】
この樹脂分散水中の樹脂組成物濃度は特に限定されないが、20〜80重量%とすることが好ましい。さらに好ましくは40〜70重量%である。これにより、取り扱い性に優れ、基材へ担持させるのに適した樹脂分散水とすることができる。
樹脂組成物の含有量が上記下限値より小さいと、樹脂分散水の塗工が長時間を所要することがあり、プリプレグの製造効率が低下することがある。また、樹脂組成物を基材に担持させた後、水分を除去する際のエネルギーが増大するようになる。一方、上記上限値より大きいと、樹脂分散水が高粘度化する傾向があるため、取り扱い性が低下することがある。
また、この樹脂分散水は、有機溶剤を含有することができる。例えば、硬化剤、硬化促進剤、添加剤など、樹脂組成物中における配合量は少量であっても、その機能が重要であり、かつ、樹脂組成物中に高い均一分散性で混合する必要がある成分については、これらを有機溶剤に溶解し、上記樹脂分散水と混合して用いることもできる。
【0019】
この樹脂分散水を調製する際に用いられる樹脂組成物粒子の粒径は特に限定されないが、樹脂分散水中における平均粒径が0.1〜100μmであることが好ましい。さらに好ましくは0.5〜50μm、特に好ましくは1〜20μmである。これにより、プリプレグの製造時における各材料の均一分散性と、プリプレグ並びに積層板を製造する際の熱硬化性樹脂成分の均一硬化性を向上させることができる。さらに、樹脂組成物粒子が基材の単繊維間へ侵入しやすくなるとともに、その後に加熱工程を経る場合には、樹脂組成物の溶融・含浸が容易になり、含浸性の良好なプリプレグを得ることができる。平均粒径が上記下限値未満では、樹脂分散水を調製する際の取り扱い性が低下することがあり、上記上限値を超えると、均一分散性が低下したり、加熱により溶融させる際に時間を要し、用いる熱硬化性樹脂や基材の種類によっては含浸性に影響を与えたりすることがある。
【0020】
以上の方法により得られた組成物を、基材の一方の表面側から基材に担持させる。
【0021】
ここで用いられる基材としては特に限定されないが、例えば、ガラス織布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、紙、合成繊維等からなる織布や不織布、金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維等からなる織布、不織布、マット類等が挙げられる。これらの基材の原料繊維は単独又は混合して使用することもできる。
【0022】
樹脂組成物を基材に担持させる方法としては特に限定されないが、例えば、スプレー装置を用いて樹脂組成物を基材に噴射して塗工する方法、ナイフコーター、コンマコーター等の各種コーターを用いて樹脂組成物を基材に塗工する方法、あるいは、リバースコーター等の転写ロールにより樹脂組成物を基材に転写して塗工する方法、などが挙げられる。これらの方法を単独又は組み合わせて用いることができる。
【0023】
これらの方法の中でも、特に、スプレー装置を用いて樹脂組成物を基材に噴射して塗工する方法が好ましい。これにより、樹脂組成物として樹脂ワニスを用いた場合、あるいは、樹脂分散水を用いた場合のいずれにおいても、樹脂組成物を基材に担持させる際に運動エネルギーを与えることができ、樹脂組成物が基材繊維間に圧入される効果を高めることができる。また、基材に樹脂組成物を担持させる際の基材の搬送方向を問わず、簡易な装置でこれを実施することができる。
【0024】
次に、本発明のプリプレグの製造方法においては、
(b)上記基材のもう一方の表面側から、上記担持基材Aに負圧を作用させ、担持基材Bとする。
【0025】
この基材のもう一方の表面側から、上記担持基材Aに負圧を作用させる方法としては特に限定されないが、例えば、真空ポンプ等の装置により負圧を発生させ、これに接続された負圧を作用させる装置、例えば空気吸引口などを、基材面に接触又は接近させる方法が挙げられる。
【0026】
ここで作用させる負圧の大きさは特に限定されないが、負圧を作用させる担持基材Aの表面部分において、20〜200Torrとすることが好ましい。これにより、例えば基材としてガラス織布を用いた場合では、樹脂組成物は基材表面の基材繊維束が存在する部分だけでなく、基材繊維束間の空隙部分にも担持されやすくなる。この結果、基材繊維束の織目、あるいは、基材の厚み方向における繊維束の粗密差に起因する、基材表面の凹凸を補填して、担持基材Bの表面平滑性を向上させることができる。
また、基材繊維束内への樹脂組成物の移動や含浸を促進させることができるので、この(b)工程や、後述する担持基材を加熱する工程において、最も時間を要する基材繊維束内への樹脂組成物の含浸を短時間で行うことができる。
なお、この負圧を作用させる時間としては特に限定されず、用いる樹脂組成物の形態・粘度、用いる基材の繊維密度等により必要かつ充分な時間を選定することができる。
【0027】
このほかにも、本発明のプリプレグの製造方法を適用できる例として、以下のものが挙げられる。
ガラス織布基材を用いたプリプレグを、内層回路基板とともに用いて多層回路プリント板を製造する場合には、プリプレグにより層間絶縁層を形成するとともに、プリプレグの両面側に積層される回路基板あるいは他のプリプレグとの間に良好な接着性を有することが求められる。しかし、用いる樹脂組成物の種類によっては、例えば無機充填材の含有量が多く、熱硬化性樹脂成分が少ないために、この接着性を充分に確保することが難しい場合がある。
このような場合、上記(b)工程において、まず、担持基材Aに負圧を作用させ、基材繊維束内への樹脂組成物の移動や含浸を行い、次いで、これよりも強い負圧を作用させて、負圧が大きく作用する基材繊維束の織目交点間の空隙部分において樹脂組成物を除去する。この結果、基材繊維束内へは樹脂組成物が充分に担持され、かつ、基材繊維束の織目交点間の空隙部分においては樹脂組成物が担持されていない、すなわち、プリプレグ両表面を貫通する微小な孔を多数有したプリプレグを製造することができる。このような形態のプリプレグを、接着性の良好な樹脂組成物を用いた他のプリプレグと併せて成形すると、接着性の良好な樹脂組成物がこの貫通孔にも充填されるので、プリプレグや回路基板等との接着性を改善することができる。
本発明のプリプレグの製造方法は、このような形態のプリプレグを製造する際にも適用することができるものである。
【0028】
本発明のプリプレグの製造方法においては、特に限定されないが、さらに、
(c)担持基材Bの少なくとも一方の表面側から、樹脂組成物を担持基材Bに担持させて、担持基材Cとすることができる。
これにより、(b)工程までにおいて樹脂組成物の担持量が不足する場合でもこれを補充することができる。また、基材の両表面における樹脂組成物の担持量を調整することができる。
【0029】
本発明のプリプレグの製造方法においては、特に限定されないが、上記(c)工程の後に、さらに、
(d)上記担持基材Cの表面を整面して、担持基材Dとすることができる。
これにより、基材表面の凹凸を充填して、平滑性を向上させる効果を高めることができる。
このように整面する方法としては特に限定されないが、例えば、コンマロール、スクイズロールなどを用いて行うことができる。
【0030】
本発明のプリプレグの製造方法においては、以上に説明したように、樹脂組成物を基材の一方の表面側から担持させ、そのもう一方の表面側から負圧を作用させることを特徴とするものである。
【0031】
従来の製造方法、例えば樹脂ワニス中にガラス織布基材を浸漬して含浸させる方式では、基材が樹脂ワニス中に浸漬された時点で、基材の両側表面は樹脂ワニスに遮断されるため、基材繊維中に存在していた空気は逃げ場を失う。このため、特に基材の繊維束内部の空気が樹脂ワニスと交換されて含浸が完了するには長い時間を要する。これは特に固形分濃度が高い高粘度樹脂ワニスでは顕著となる。また、通常の樹脂ワニスは気泡を多く含んでおり、これが樹脂ワニスとともに基材中に取り込まれるとプリプレグ中に残存するボイドの一因にもなる。
【0032】
本発明の製造方法においては、樹脂組成物を基材の一方の表面側から担持させるので、もう一方の表面側は解放された状態にある。さらに、このもう一方の表面側から負圧を作用させることにより、基材の繊維束内部に存在する空気を吸引するので、ここに負圧を生じ、樹脂組成物を繊維束内部に強制的に移動させることができるので、この工程ないしは担持基材を加熱する工程において、樹脂組成物の含浸を短時間で行うことができる。
【0033】
また、負圧を作用させることで、樹脂組成物は基材表面に均一に担持されるのではなく、基材表面の凹凸を補填するように担持されやすくなる。そして、好ましくは固形分濃度が高い樹脂組成物を用いることにより、樹脂組成物が相対的に多く担持された部分においても、有機溶剤あるいは水分等の除去による体積減少をより小さく抑えることができる。これにより、表面凹凸の小さな、表面平滑性に優れたプリプレグを製造することができる。
【0034】
さらに、このように負圧を作用させることで、この工程において、樹脂組成物中に含有される有機溶剤あるいは水分の蒸発を促進させることができる。この結果、後述する担持基材を加熱する工程において、有機溶剤あるいは水分の蒸発に必要な熱量供給を低減することができるので、製造効率を高めることができるとともに、低コスト化を図れるという利点も有する。
【0035】
本発明のプリプレグの製造方法においては、上記工程の後、通常、この担持基材を加熱する工程を有する。これにより、有機溶剤あるいは水が実質的に全て蒸発するとともに、熱硬化性樹脂成分等が溶融して低粘度化し、基材繊維間に含浸したプリプレグを得ることができる。また、熱硬化性樹脂の硬化反応を途中まで進行させることができるので、プリプレグに担持される樹脂組成物の流動性を適正なものとすることができ、後述する積層板の製造工程において、樹脂組成物の過大な流れ出しを防止し、かつ、短時間で積層板を製造することができる。また、プリプレグの取り扱い性を向上させることができる。
【0036】
この担持基材を加熱する方法としては特に限定されないが、例えば、加温した空気により行う方法、加温した輻射パネルからの輻射熱により行う方法、あるいは、遠赤外線ヒーターパネルなどにより行う方法などが挙げられる。
担持基材を加熱する条件としては、熱硬化性樹脂や硬化剤などの種類、配合量により異なるので特に限定されないが、通常、担持基材の表面温度が100〜220℃、好ましくは120〜190℃で1〜10分間行うことができる。
【0037】
このようにして得られたプリプレグに担持されている樹脂組成物の量としては特に限定されないが、通常、プリプレグ重量(基材+樹脂組成物)全体に対して、40〜60重量%程度とすることができる。
【0038】
次に、本発明の積層板の製造方法について説明する。
本発明の積層板の製造方法は、以上の方法により得られたプリプレグを加熱加圧成形することを特徴とする。
本発明の積層板の製造方法において、プリプレグを加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、平板プレス装置を使用して、温度150〜200℃、圧力2〜6MPa、時間15〜100分間で成形することができる。
また、上記プリプレグとともに金属箔を加熱加圧成形して、金属箔張積層板とすることもできる。このような金属箔を構成する金属としては特に限定されないが、例えば、銅または銅系合金、アルミまたはアルミ系合金等を挙げることができる。金属箔の厚さは特に限定されないが、通常3〜70μmのものが用いられる。金属箔は、プリプレグの片面あるいは両面に積層され、プリプレグとともに一体成形され金属箔張積層板とすることができる。
【0039】
次に、本発明のプリプレグの製造装置について説明する。
本発明のプリプレグの製造装置は、本発明のプリプレグの製造方法を適用することができるプリプレグの製造装置であって、
(p)基材を供給搬送する装置、
(q)上記基材の一方の表面側から、樹脂組成物を上記基材に担持させる塗工装置、
(r)上記基材のもう一方の表面側から、上記樹脂組成物が担持された部位に負圧を作用させる装置、及び、
(s)上記負圧を発生させる装置、
を有することを特徴とする。
【0040】
以下、本発明のプリプレグの製造装置(以下、単に「製造装置」ということがある)について、好適な実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の製造装置の一例を示す断面側面図である。本発明の製造装置は、図1に示すように、基材の供給搬送装置1、樹脂組成物の塗工装置2、樹脂組成物が担持された部位の基材のもう一方の表面側から負圧を作用させる装置3、負圧を発生させる装置4、担持基材を加熱する装置5、とを有している。
【0041】
図1において、基材は巻物形態の基材1aから繰り出されて供給・搬送される。
基材1bは、スプレー装置21aにより、その一方の表面側から樹脂組成物23を噴射され、これが担持される。そして、もう一方の表面側から、負圧を発生させる装置4に接続された、負圧を作用させる装置3により負圧を与えられ、担持基材1cとなる。
次いで、スプレー装置21b、21cにより、担持基材1cの両面側からさらに樹脂組成物23を噴射されて担持基材1dとなった後、適正なギャップに調整されたコンマロール対22a、22bの間を通過して、担持基材1eとなる。この後、担持基材1eは、これを加熱する装置5へ搬送される。なお、余剰分の樹脂組成物23はバット24に回収され、樹脂組成物23の貯留装置25へ送られる。
【0042】
装置5には、担持基材1eの上昇路及び下降路において、基材表面に対して垂直方向から輻射熱を供給できる輻射パネル51、51、...が、基材の両面側に配置されている。この輻射パネル51、51、...からの熱供給により、樹脂組成物の溶融、基材への含浸、熱硬化性樹脂成分の部分的硬化を進行させた担持基材1fとすることができる。
【0043】
担持基材1fは装置5の内部において比較的高温に加温されており、その表面は溶融樹脂により強いタック性を有していることが多い。このため、輻射パネル51、51、...から必要な輻射熱の供給を受けた後、冷風供給ノズル52、52により、担持基材1fを冷却し、タック性をなくすことにより取り扱いが容易な担持基材1gとなる。冷風供給ノズル52、52からの空気は、図示していない温調装置により所定の温度に冷却されたものを、ブロアー61から供給している。
装置5から搬出された担持基材1gは、方向転換後、巻き取りを行って巻物状のプリプレグ1hとなる。
【0044】
本発明の製造装置において、基材に樹脂分散水を担持させる方法としては、図1に示したようなスプレー装置を用いる方法のほか、上記本発明の製造方法において説明したような方法によって行うこともできる。
【0045】
また、装置3内における基材の移送方法として、図1に示した実施形態においては、基材を鉛直方向に搬送し、これを1回反転させる方式を用いているが、特にこのような方式に限定されるものではなく、例えば、鉛直方向に反転せず1パスで搬送する方式、あるいは、水平方向に搬送する方式などを適用することもできる。
【0046】
本発明の製造装置において、負圧を作用させる装置の形態としては特に限定されないが、基材の幅方向全面に、面形状で負圧を作用させることが好ましい。具体的には、例えば、基材の幅方向全幅を吸引できるスリット状の吸引口を設置する方法、またはこれを基材の搬送方向に複数本数並べて配置する方法、あるいは、比較的大型の長方形形状の吸引口を設け、目開きを有する平織、綾織、ハニカム形状の網、あるいはパンチングプレートなどを設けて、基材を支持しながら吸引する方法によることもできる。
【0047】
また、装置5内において用いられる、担持基材を加熱する方式としては、図1に示したような輻射熱を用いる方法のほか、熱風、遠赤外線などによる方法を用いることもできる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0049】
<実施例1>
(1)樹脂組成物Aの調製
平均粒径80μmの粉末状のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製・臭素化エポキシ樹脂Ep5048、エポキシ当量675)100重量部、平均粒子径15μmの粉末状の硬化剤(ジシアンジアミド)2重量部、及び平均粒径15μmの粉末状の硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.1重量部を、ヘンシェルミキサーで混合攪拌(600rpm、1分)した。この混合原料をホソカワミクロン社製のカウンタージェットミル200AFG(ノズル径3mm×3本)を用いて、空気圧600kPa、圧空量1.7m3/minで処理し、分級ローター(11500rpm)で補集し、樹脂組成物Aを得た。この平均粒径を測定したところ、1.5μmであった。
【0050】
(2)樹脂分散水Aの調製
水100重量部に対して、界面活性剤としてポリオキシエチレンモノステアレート(花王社製・エマノーン3199)1重量部を加え、ディスパーザー(1560rpm)で撹拌混合しながら、上記樹脂組成物Aを徐々に100重量部まで加えていった。その後、さらに10分間攪拌し、樹脂組成物Aの含有率が50重量%である樹脂分散水Aを得た。
【0051】
(3)プリプレグの製造
図1に示した形態の装置を用いて行った。
(3.1)塗工
基材として、平均繊維径9μm、坪量100g/m2のガラス織布を使用し、この一方の表面側から、スプレー装置(アトマックス社製・2流体スプレーノズル・BN−90S−IS 空気圧4kg/cm2)を用い、樹脂組成物担持量が80g/m2となるように樹脂分散水Aを噴射して塗工を行い、もう一方の表面側から、真空ポンプに接続した装置で、50Torrで1秒間、負圧を作用させた。
次いで、上記と同じ仕様のスプレー装置を用い、基材の両方の表面側から樹脂分散水Aを噴射し、これを、コンマコーター対間を通して、樹脂組成物担持量が114g/m2となるように調整して、担持基材を得た。
【0052】
(3.2)担持基材の加熱
図1において、装置5の内部に設置された輻射パネルにより、担持基材の表面温度190℃で1.5分間保持できるように加熱処理を行い、プリプレグを得た。
【0053】
(4)積層板の製造
上記で得られたプリプレグ2枚を重ね合わせ、さらにその表裏に厚さ18μmの電解銅箔を重ね合わせ、真空プレス装置を用い、温度190℃、圧力4MPaで90分間加熱加圧成形して、厚さ0.22mmの銅張積層板を製造した。
【0054】
<実施例2>
(1)樹脂ワニスBの調製
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製・臭素化エポキシEp5048、エポキシ当量675)100重量部、硬化剤(ジシアンジアミド)2重量部、及び硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.1重量部を、メチルセルソルブ50重量部に溶解し、樹脂組成物の含有率が67重量%である樹脂ワニスBを調製した。
【0055】
(2)プリプレグの製造
図1に示した形態の装置を用い、実施例1と同様にしてプリプレグを製造した。
【0056】
(3)積層板の製造
上記で得られたプリプレグ用い、実施例1と同様にして銅張積層板を製造した。
【0057】
<比較例1>
(1)樹脂ワニスCの調製
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製・臭素化エポキシEp5048、エポキシ当量675)100重量部、硬化剤(ジシアンジアミド)2重量部、及び硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.1重量部をメチルセルソルブ100重量部に溶解し、樹脂組成物の含有率が51重量%である樹脂ワニスCを調製した。
【0058】
(2)プリプレグの製造
上記で得られた樹脂ワニスCに、実施例1で用いた基材を1秒間浸漬した後、コンマコーターを用いて樹脂組成物保持量が114g/m2となるように調整し、これを170℃の熱風加熱乾燥装置で3分間加熱してプリプレグを製造した。
【0059】
(3)積層板の製造
上記で得られたプリプレグ用い、実施例1と同様にして銅張積層板を製造した。
【0060】
実施例及び比較例で得られたプリプレグ及び積層板について、各特性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
〔測定方法〕
(1)平均粒子径:粒度分布計(HORIBA LA−910)により測定した。
(2)含浸性:プリプレグを実体顕微鏡にて観察し、基材繊維束の内部、及び基材繊維束間に存在するボイドを確認した。各符号は下記の通りである。
◎:ボイドが実質的に観察されなかった
○:ストランド内にわずかにボイドがある
(3)成形性:銅張積層板の銅箔をエッチングして、目視によりかすれやボイド等の成形不良が確認されなかったものを「良好」とした。
(4)表面平滑性:JIS−B0601に準拠して、銅張積層板表面の基材方向に接触式表面粗さ計を用いて基準長さ5mmを測定し、この間におけるRmax(最大高さ)で表示した。
(5)銅箔引き剥し強さ:JISC 6481に準拠して測定した。
(6)半田耐熱性:50×50mmの積層板を、260℃の半田浴に3分間フロートさせ、ふくれの有無を測定した。
(7)絶縁抵抗:JISC 6481に準拠して測定した。
【0063】
表1の結果から、実施例1〜2は本発明のプリプレグの製造方法により得られたプリプレグ及びこれを成形した積層板であり、プリプレグの含浸性、積層板の成形性、表面平滑性などのいずれにおいても、従来の製造方法である比較例1と同等以上に優れたものとなった。
【0064】
【発明の効果】
本発明は、(a)シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を前記シート状繊維基材に担持させて、担持基材Aとする工程、(b)上記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、上記担持基材Aに負圧を作用させ、担持基材Bとする工程、を有することを特徴とするプリプレグの製造方法であり、含浸性に優れ、表面平滑性の高いプリプレグを製造することができる。そして、本発明の積層板の製造方法は、このプリプレグを用いた積層板の製造方法であり、同様に良好な含浸性と表面平滑性を有する積層板を製造することができる。従って本発明は、小型化、薄型化、高集積化に対応できるプリプレグ及び積層板の工業的な製造方法として好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプリプレグの製造装置の一例(側断面図)
【符号の説明】
1 基材の供給搬送装置
2 樹脂組成物の塗工装置
3 樹脂組成物が担持された部位の基材のもう一方の表面側から負圧を作用させる装置
4 負圧を発生させる装置
5 担持基材を加熱する装置
Claims (8)
- プリプレグの製造方法であって、
(a)シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を前記シート状繊維基材に担持させて、担持基材Aとする工程、
(b)前記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、前記担持基材Aに負圧を作用させ、担持基材Bとする工程、
を有することを特徴とするプリプレグの製造方法。 - さらに、
(c)前記担持基材Bの少なくとも一方の表面側から、前記熱硬化性樹脂組成物を前記担持基材Bに担持させて、担持基材Cとする工程
を有する、請求項1に記載のプリプレグの製造方法。 - さらに、
(d)前記担持基材Cの表面を整面して、担持基材Dとする工程、
を有する、請求項2に記載のプリプレグの製造方法。 - 前記熱硬化性樹脂組成物は、固形分比率が50〜90重量%の液状ワニスである請求項1ないし3のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂組成物は、粒子状の熱硬化性樹脂組成物を水に分散させた樹脂分散水である請求項1ないし3のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
- 前記(a)工程は、前記熱硬化性樹脂組成物を、スプレー装置を用いて前記シート状繊維基材に担持させる請求項1ないし5のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の製造方法により得られたプリプレグを加熱加圧成形することを特徴とする積層板の製造方法。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載されたプリプレグの製造方法を適用できるプリプレグの製造装置であって、
(p)シート状繊維基材を供給搬送する装置、
(q)前記シート状繊維基材の一方の表面側から、熱硬化性樹脂組成物を前記シート状繊維基材に担持させる塗工装置、
(r)前記シート状繊維基材のもう一方の表面側から、前記熱硬化性樹脂組成物が担持された部位に負圧を作用させる装置、及び、
(s)前記負圧を発生させる装置、
を有することを特徴とする、プリプレグの製造装置。
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2003
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