JP2004291438A - 樹脂製部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】締結具によって相手材に締付されるシール部を持つ樹脂製部材であって、熱負荷のかかる条件においても相手材に対するシール性を良好に保つことのできる樹脂製部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂製部材のシール部を熱可塑性エラストマーを材料として成形し、その後にこのシール部に加熱荷重処理を施すことで、シール部に予め初期ヘタリを生じさせて使用時に生じる耐久ヘタリを低減する。
【選択図】図2
【解決手段】樹脂製部材のシール部を熱可塑性エラストマーを材料として成形し、その後にこのシール部に加熱荷重処理を施すことで、シール部に予め初期ヘタリを生じさせて使用時に生じる耐久ヘタリを低減する。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂製部材およびその製造方法に関し、詳しくは、締結具によって相手材に締付される樹脂製部材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂製部材の相手材に対する取付方法としては種々の方法があるが、このうち、樹脂製部材と相手材とのシール性を確保するための取付方法として、樹脂製部材を相手材に取付し、樹脂製部材と相手材との取付部分を締結具によって締結して樹脂製部材を相手材方向に押圧することで樹脂製部材と相手材とのシール性を増す方法が知られている。
【0003】
樹脂部材と相手材とのシール性には、樹脂部材と相手材との取付部分の形状が大きく関与する。このため、この取付部分の形状を種々に設計することで樹脂部材と相手材との密着性を向上させることが従来よりおこなわれている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1のブーツ取付構造には、樹脂部材と相手材との取付部分のうち相手材側の形状を所定の範囲に設定することで、樹脂部材と相手材とのシール性を向上できることが開示されている。
【0005】
ここで、樹脂部材のうち締結具によって相手材に締付される部分であるシール部は、締付されることによって相手材の表面形状に対応する形状に変形しつつ相手材に押圧され、所定の面圧で相手材に当接する。このシール部の面圧によって相手材に対するシール性が発揮される。ところが、樹脂製部材と相手材とを熱負荷がかかる条件下で使用すると、締付されて一時的に変形している樹脂製部材がもとの形状に戻らなくなる現象(所謂ヘタリ)が生じる場合がある。締結具の締結力が一定の状態で樹脂部材にヘタリが生じると、シール部の相手材に対する面圧が低下する。したがって、特許文献1に開示されるような取付構造によっても、ヘタリが生じた場合にはシール性が低下する問題があった。このため、熱負荷のかかる条件で使用する場合にも、シール部の相手材に対するシール性が良好に保たれる樹脂製部材およびその製造方法の開発が求められていた。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−39383号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、熱負荷のかかる条件においても相手材に対するシール性を良好に保つことのできる樹脂製部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の樹脂製部材は、締結具によって相手材に締付されるシール部を持つ樹脂製部材であって、上記シール部は熱可塑性エラストマーを材料として成形されたのちに加熱荷重処理されてなることを特徴とする。
【0009】
シール部が熱可塑性エラストマーを材料として成形されたのちに加熱荷重処理されてなることで、樹脂製部材を熱負荷がかかる条件下で相手材に締付して使用する場合にも、シール部にヘタリが生じることが抑制される。したがって、熱負荷がかかる条件下で使用する場合にも、樹脂製部材と相手材とのシール性は良好に保たれることとなる。
【0010】
また、上記シール部の成形時の初期肉厚t0と上記シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)は、30〜80%の範囲であることが好ましい。
【0011】
さらに、上記シール部の成形時の初期肉厚t0と上記シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)は、50〜80%の範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明の樹脂製部材において、上記シール部の成形時の初期肉厚t0は、3〜7.5mmの範囲であることが好ましい。
【0013】
本発明の樹脂製部材において、上記シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1は、1.5〜2.5mmの範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明の樹脂製部材の製造方法は、締結具によって相手材に締付されるシール部を持つ樹脂製部材の製造方法であって、少なくとも上記シール部が熱可塑性エラストマーを材料とする上記樹脂製部材の第1成形体を成形する成形工程と、該第1成形体の上記シール部に加熱荷重処理を施すプレス工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の樹脂成形品の製造方法によると、樹脂製部材の製造を成形工程とプレス工程によっておこなうことで、得られた樹脂製部材を熱負荷がかかる条件下で相手材に締付して使用する場合でも、シール部にヘタリが生じることが抑制できる。
【0016】
上記プレス工程は、上記第1成形体の上記シール部の初期肉厚t0と上記シール部の上記プレス工程後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)が、30〜80%の範囲となるようにおこなわれることが好ましい。
【0017】
上記プレス工程は、上記第1成形体の上記シール部の初期肉厚t0と上記シール部の上記プレス工程後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)が、50〜80%の範囲となるようにおこなわれることが好ましい。
【0018】
上記第1成形体の上記シール部の初期肉厚t0は、3〜7.5mmの範囲であることが好ましい。
【0019】
上記シール部の上記プレス工程後の肉厚t1は、1.5〜2.5mmの範囲であることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂製部材は、締結具によって相手材に締付されるシール部を持つ樹脂製部材である。樹脂製部材のうちシール部は、締結具によって相手材に締付されることで、変形しつつ相手材に押圧されて所定の面圧で相手材に当接する。このためシール部の相手材に対するシール性が発揮されて、樹脂製部材は相手材に一部密着しつつ取付される。
【0021】
本発明の樹脂製部材において、シール部は熱可塑性エラストマーを材料として成形されたのちに加熱荷重処理されてなる。
【0022】
上述したように、相手材に締付された樹脂部材を熱負荷がかかる条件で使用する場合、相手材に押圧される部分であるシール部にヘタリが生じ、シール部と相手材とのシール性が低減する場合がある。本発明の発明者らは鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性エラストマーを材料として成形したシール部に予め加熱荷重処理を施すことで、得られた樹脂製部材を熱負荷がかかる条件で使用する場合にもシール部と相手材とのシール性が良好に保たれることを見いだした。熱可塑性エラストマーを材料とする樹脂部材に予め加熱荷重処理を施すことで、この樹脂部材にはヘタリが生じるため(以下、初期ヘタリと呼ぶ)、相手材に締付して熱負荷がかかる条件で使用する場合に生じるヘタリ(以下、耐久ヘタリと呼ぶ)が低減されるものと考えられる。すなわち、成形品のヘタリには一定の範囲があるため、その範囲を超えたヘタリは生じ難い。したがって、加熱荷重処理を施して予め樹脂部材に初期ヘタリを生じさせておくことで、耐久ヘタリの大きさを低減することが可能となるものと考えられる。
【0023】
本発明の樹脂製部材およびその製造方法においては、樹脂製部材の全体を熱可塑性エラストマーによって構成することもできるし、あるいはシール部のみを熱可塑性エラストマーによって構成しその他の部分を異なる樹脂材料によって構成することもできる。少なくともシール部が熱可塑性エラストマーを材料とすることで、上述する耐久ヘタリの低減効果が発揮される。また、樹脂製部材全体を加熱荷重処理されてなるものとすることもできるし、シール部のみを加熱荷重処理されてなるものとすることもできるが、熱可塑性エラストマーに劣化が生じる可能性があることを考慮するとシール部のみが加熱荷重処理されてなることが好ましい。
【0024】
シール部の成形時の初期肉厚t0とシール部の加熱荷重処理後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)(以下、初期ヘタリ率とする)は、0%を超えれば上述した耐久ヘタリの低減効果が得られる。初期ヘタリ率が大きい程耐久ヘタリの低減効果が大きくなり、初期ヘタリ率が小さいほど耐久ヘタリの低減効果は小さくなる。したがって、樹脂製部材を使用する条件等によって初期ヘタリ率は所望の値とすることができるが、初期ヘタリ率の範囲は30〜80%の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜80%の範囲である。初期ヘタリ率が大きすぎると、熱可塑性エラストマーに劣化が生じる場合があり、初期ヘタリ率が小さすぎると所望する耐久ヘタリの低減効果が得られない場合があるからである。
【0025】
シール部の成形時の初期肉厚t0は、3〜7.5mmの範囲であることが好ましい。シール部の成形時の初期肉厚t0がこの範囲を超えると、所望する初期ヘタリ率で加熱荷重処理をおこなうことが困難となる。すなわち、シール部に加熱荷重処理を施す際には、シール部には荷重による変形が生じるが、肉厚が大きい場合にはシール部の反発力が大きくなる。このため、所望する荷重を与えることが困難となる場合や、樹脂製部材を所望する形状に形成することが困難となる場合がある。また、シール部の成形時の初期肉厚t0がこの範囲に満たないと、シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1が小さくなりすぎる場合がある。
【0026】
シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1は、1.5〜2.5mmの範囲であることが好ましい。加熱荷重処理後の肉厚t1は小さい方が相手材との密着性に優れるため、加熱荷重処理後の肉厚t1は2.5mm以下であることが好ましい。また、加熱荷重処理後の肉厚t1が小さすぎると、締結具による締付の際に破断するおそれがあるため、加熱荷重処理後の肉厚t1は1.5mm以上であることが好ましい。
【0027】
本発明の樹脂製部材の製造方法は、上述した本発明の樹脂製部材を製造するための方法である。本発明の樹脂製部材の製造方法は、成形工程とプレス工程とを有する。
【0028】
成形工程は、樹脂製部材の第1成形体を形成する工程である。ここで、本発明の樹脂製部材の製造方法において、第1成形体とは後述するプレス工程をおこなう前の樹脂製部材を指し、シール部に加熱荷重処理が施されていない状態の樹脂製部材を指す。換言すると、プレス処理がなされていない従来の樹脂製部材が本発明における第1成形体に相当する。
【0029】
成形工程において、第1成形体のうち少なくともシール部が熱可塑性エラストマーを材料として成形される。第1成形体の成形方法としてはブロー成形や射出成形等既知の成形方法を用いることができ、シール部のみを熱可塑性エラストマーで成形する場合には例えば2色成形等の成形方法を用いることができる。
【0030】
本発明の樹脂製部材およびその製造方法において、プレス工程は、第1成形体のシール部に加熱荷重処理を施す工程である。プレス工程による加熱温度および荷重圧力は所望する初期ヘタリ率に応じて所望のものとすることができる。なお、工程に要する時間を短くするためには、加熱温度を高くし、荷重圧力を大きくすることが好ましい。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を図面を基にして説明する。
【0032】
(実施例)
本発明の実施例は、本発明の樹脂製部材を車両のドライブシャフト用の等速ジョイントに被覆される等速ジョイント用ブーツに適用したものである。本実施例の樹脂製部材の要部拡大模式断面図を図1に示す。
【0033】
本実施例の樹脂製部材1は等速ジョイントブーツであり、ジョイントアウターレースなどに保持される大径の大径筒部(図示せず)と、大径筒部より小径でシャフト2に保持される小径筒部3と、大径筒部と小径筒部3を一体的に連結する略円錐台形状の蛇腹部5とから構成されている。このうち小径筒部3は、略リング状に形成され、外表面6の中央部には外表面を一周するリング溝7が設けられている。このリング溝7には、小径筒部3と相手材であるシャフト2とを締結するための締結具8が挿入される。本実施例において小径筒部3のうちリング溝7の内周側に位置する部分がシール部10となり、締結具8により小径筒部3がシャフト2に締付されると、このシール部10がシャフト2の表面に押圧されてシール性が発揮される。さらに、シール部10の内周面には内周面を一周するリップ11が設けられており、このリップ11は締結具8による締付時にシャフト2の表面に設けられたリップ溝12に押付されるため、面圧が高まりシール性は更に向上される。
【0034】
本実施例1の樹脂製部材は以下のように製造される。
▲1▼成形工程
先ず、熱可塑性エラストマーを材料としてパリソンを成形し、このパリソンをブロー成形型内に配置するとともにパリソン内部にエアを吹入することで、樹脂製部材の第1成形体13を得た。第1成形体13は、シール部10の成形時の初期肉厚t0が3.0mm,4.0mm,4.3mm,5.0mm,5.7mm,7.2mm,7.5mm,10.0mm,12.5mmの9種のものを製作した。
▲2▼プレス工程
成形工程で得た第1成形体13のうち、シール部10に加圧加熱処理を施す。図2にシール部の要部拡大断面図を示す。
【0035】
先ず、小径筒部3の内周表面と対応する形状の受け治具15を小径筒部3内部に挿入した。次に、小径筒部3のうちリング溝7に、第1成形体13のリング溝7の形状と対応するリング状のプレス治具16を挿入し、シール部10に加熱荷重処理を施して図3に示す本実施例の樹脂製部材1を製作した。
【0036】
ここで、プレス治具16は図示しないヒータによって加熱されている。また、プレス治具16はシール部10方向に荷重を加えるべく、小径筒部3の外周より内周方向に縮径するものである。したがって、このプレス工程によって小径筒部3のうちシール部10のみに加熱荷重処理が施された。この加熱荷重処理は、温度160〜200℃,圧力50〜100MPaでおこなった。
【0037】
本プレス工程において加熱荷重処理は、初期ヘタリ率が50%(第1成形体のt0が3.0mm,4.0mm,5.0mm),65%(第1成形体のt0が4.3mm,5.7mm,7.2mm),80%(第1成形体のt0が7.5mm,10.0mm,12.5mm)の3水準となるようにおこなった。
【0038】
以上の成形工程およびプレス工程で、実施例1の樹脂製部材1〜9を製造した。樹脂製部材1〜9の各樹脂製部材のt0,t1,初期ヘタリ率およびプレス加工性を表1に示す。なおプレス加工性は、得られた樹脂製部材の形状を目視で確認し、良い(○)あまり良くない(△)悪い(×)の3通りで評価した。
【0039】
(比較例)
比較例の樹脂製部材は、実施例の樹脂製部材1の第1成形体であり、シール部の成形時の初期肉厚(t0)が3.0mmのものである。すなわち、本比較例の樹脂製部材はシール部が加熱荷重処理されていないこと以外は実施例と同じものである。
【0040】
〈性能評価試験〉
▲1▼シール性試験
実施例の樹脂製部材1〜9および比較例の樹脂製部材についてシール性試験を行った。シール性試験の方法を以下に示す。
【0041】
先ず、実施例の樹脂製部材1〜9および比較例の樹脂製部材を、各々シール試験機に取付し、蛇腹部内部にグリースを封入した上で、シール部とシャフトとを締結具で締付した。そののち、試験機を駆動し、シャフトを高角度状態で維持したまま600rpmで回転駆動した。回転駆動後、シール部に耐久ヘタリが生じてシール部とシャフトとの間からグリースが漏れるまでの時間を計測した。シール性はシール性能(倍)であらわし、以下の式で算出された。
【0042】
シール性能
=(実施例の各々の樹脂製部材にグリース漏れが生じるまでの時間)/(比較例の樹脂製部材にグリース漏れが生じるまでの時間)
本発明の実施例の各樹脂製部材のシール性能を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
本発明の実施例の各樹脂製部材は何れもシール性能に優れ、シール性能は、初期ヘタリ率50%のもので1.5倍、初期ヘタリ率65%のもので3.0倍、初期ヘタリ率80%のもので4.0倍であった。この結果から初期ヘタリ率が大きいほどシール性が向上することがわかる。
【0045】
なお、第1成形体のt0が10.0mmの樹脂製部材はプレス加工性があまり良くなく、第1成形体のt0が12.5mmの樹脂製部材はプレス加工性が悪かったことから、シール部の成形時の初期肉厚t0が大きいとプレス加工性が悪くなることもわかった。
【0046】
▲2▼耐久ヘタリ特性試験
比較例の樹脂製部材と実施例の樹脂製部材2とを用いて、耐久ヘタリ特性試験を行った。耐久ヘタリ特性試験の方法を以下に示す。
【0047】
先ず、実施例の樹脂製部材2を6個、比較例の樹脂製部材を12個準備し、各々の樹脂製部材を金属製のシャフトに取付して、締結具によってシール部を金属製のシャフトに締付した。このとき、締付はシール部の肉厚方向の長さが25%圧縮される圧力でおこなった。
【0048】
次に金属製の棒を加熱して、6個の実施例の樹脂製部材2と6個の比較例の樹脂製部材のシール部に120℃の熱負荷をかけた。また、6個の比較例の樹脂製部材に100℃の熱負荷をかけた。これら熱負荷がかけられた樹脂製部材を、70時間,139時間,278時間,561時間,1000時間でそれぞれ金属製のシャフトから取り外し、シール部の肉厚(t2)の経時変化を測定した。耐久ヘタリは耐久ヘタリ率(%)であらわし、以下の式で算出された。
【0049】
耐久ヘタリ率=(t1−t2)/t1×100
ここで、t1はシール部の耐久ヘタリ特性試験前の肉厚を表し、t2はシール部の耐久ヘタリ特性試験後の肉厚を表す。
【0050】
本耐久ヘタリ特性試験の結果を表すグラフを図4に示す。図4に示すように、本耐久ヘタリ特性試験によると、本発明の実施例の樹脂製部材2は、同じ温度(120℃)で熱負荷をかけた比較例の樹脂製部材と比較して耐久ヘタリ率が著しく低減されたばかりでなく、低い温度(100℃)で熱負荷をかけた比較例の樹脂製部材と比較しても耐久ヘタリ率が著しく低減された。このことから、本発明の樹脂製部材は耐久ヘタリ特性に優れることがわかる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の樹脂製部材によると、耐久ヘタリが低減され熱負荷のかかる条件においても相手材に対するシール性を良好に保つことが可能となる。また、本発明の樹脂製部材の製造方法によると、熱負荷のかかる条件においても相手材に対するシール性を良好に保つ本発明の樹脂製部材を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の樹脂製部材のうち小径筒部を表す要部拡大模式断面図である。
【図2】実施例の第1成形体のうちシール部を表す要部拡大断面図である。
【図3】実施例の樹脂製部材のうちシール部を表す要部拡大断面図である。
【図4】実施例の樹脂製部材2と比較例の樹脂製部材との耐久ヘタリ特性試験の結果を表すグラフである。
【符号の説明】
1:樹脂製部材 2:シャフト 8:締結具 10:シール部 13:第1成形体
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂製部材およびその製造方法に関し、詳しくは、締結具によって相手材に締付される樹脂製部材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂製部材の相手材に対する取付方法としては種々の方法があるが、このうち、樹脂製部材と相手材とのシール性を確保するための取付方法として、樹脂製部材を相手材に取付し、樹脂製部材と相手材との取付部分を締結具によって締結して樹脂製部材を相手材方向に押圧することで樹脂製部材と相手材とのシール性を増す方法が知られている。
【0003】
樹脂部材と相手材とのシール性には、樹脂部材と相手材との取付部分の形状が大きく関与する。このため、この取付部分の形状を種々に設計することで樹脂部材と相手材との密着性を向上させることが従来よりおこなわれている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1のブーツ取付構造には、樹脂部材と相手材との取付部分のうち相手材側の形状を所定の範囲に設定することで、樹脂部材と相手材とのシール性を向上できることが開示されている。
【0005】
ここで、樹脂部材のうち締結具によって相手材に締付される部分であるシール部は、締付されることによって相手材の表面形状に対応する形状に変形しつつ相手材に押圧され、所定の面圧で相手材に当接する。このシール部の面圧によって相手材に対するシール性が発揮される。ところが、樹脂製部材と相手材とを熱負荷がかかる条件下で使用すると、締付されて一時的に変形している樹脂製部材がもとの形状に戻らなくなる現象(所謂ヘタリ)が生じる場合がある。締結具の締結力が一定の状態で樹脂部材にヘタリが生じると、シール部の相手材に対する面圧が低下する。したがって、特許文献1に開示されるような取付構造によっても、ヘタリが生じた場合にはシール性が低下する問題があった。このため、熱負荷のかかる条件で使用する場合にも、シール部の相手材に対するシール性が良好に保たれる樹脂製部材およびその製造方法の開発が求められていた。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−39383号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、熱負荷のかかる条件においても相手材に対するシール性を良好に保つことのできる樹脂製部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の樹脂製部材は、締結具によって相手材に締付されるシール部を持つ樹脂製部材であって、上記シール部は熱可塑性エラストマーを材料として成形されたのちに加熱荷重処理されてなることを特徴とする。
【0009】
シール部が熱可塑性エラストマーを材料として成形されたのちに加熱荷重処理されてなることで、樹脂製部材を熱負荷がかかる条件下で相手材に締付して使用する場合にも、シール部にヘタリが生じることが抑制される。したがって、熱負荷がかかる条件下で使用する場合にも、樹脂製部材と相手材とのシール性は良好に保たれることとなる。
【0010】
また、上記シール部の成形時の初期肉厚t0と上記シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)は、30〜80%の範囲であることが好ましい。
【0011】
さらに、上記シール部の成形時の初期肉厚t0と上記シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)は、50〜80%の範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明の樹脂製部材において、上記シール部の成形時の初期肉厚t0は、3〜7.5mmの範囲であることが好ましい。
【0013】
本発明の樹脂製部材において、上記シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1は、1.5〜2.5mmの範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明の樹脂製部材の製造方法は、締結具によって相手材に締付されるシール部を持つ樹脂製部材の製造方法であって、少なくとも上記シール部が熱可塑性エラストマーを材料とする上記樹脂製部材の第1成形体を成形する成形工程と、該第1成形体の上記シール部に加熱荷重処理を施すプレス工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の樹脂成形品の製造方法によると、樹脂製部材の製造を成形工程とプレス工程によっておこなうことで、得られた樹脂製部材を熱負荷がかかる条件下で相手材に締付して使用する場合でも、シール部にヘタリが生じることが抑制できる。
【0016】
上記プレス工程は、上記第1成形体の上記シール部の初期肉厚t0と上記シール部の上記プレス工程後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)が、30〜80%の範囲となるようにおこなわれることが好ましい。
【0017】
上記プレス工程は、上記第1成形体の上記シール部の初期肉厚t0と上記シール部の上記プレス工程後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)が、50〜80%の範囲となるようにおこなわれることが好ましい。
【0018】
上記第1成形体の上記シール部の初期肉厚t0は、3〜7.5mmの範囲であることが好ましい。
【0019】
上記シール部の上記プレス工程後の肉厚t1は、1.5〜2.5mmの範囲であることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂製部材は、締結具によって相手材に締付されるシール部を持つ樹脂製部材である。樹脂製部材のうちシール部は、締結具によって相手材に締付されることで、変形しつつ相手材に押圧されて所定の面圧で相手材に当接する。このためシール部の相手材に対するシール性が発揮されて、樹脂製部材は相手材に一部密着しつつ取付される。
【0021】
本発明の樹脂製部材において、シール部は熱可塑性エラストマーを材料として成形されたのちに加熱荷重処理されてなる。
【0022】
上述したように、相手材に締付された樹脂部材を熱負荷がかかる条件で使用する場合、相手材に押圧される部分であるシール部にヘタリが生じ、シール部と相手材とのシール性が低減する場合がある。本発明の発明者らは鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性エラストマーを材料として成形したシール部に予め加熱荷重処理を施すことで、得られた樹脂製部材を熱負荷がかかる条件で使用する場合にもシール部と相手材とのシール性が良好に保たれることを見いだした。熱可塑性エラストマーを材料とする樹脂部材に予め加熱荷重処理を施すことで、この樹脂部材にはヘタリが生じるため(以下、初期ヘタリと呼ぶ)、相手材に締付して熱負荷がかかる条件で使用する場合に生じるヘタリ(以下、耐久ヘタリと呼ぶ)が低減されるものと考えられる。すなわち、成形品のヘタリには一定の範囲があるため、その範囲を超えたヘタリは生じ難い。したがって、加熱荷重処理を施して予め樹脂部材に初期ヘタリを生じさせておくことで、耐久ヘタリの大きさを低減することが可能となるものと考えられる。
【0023】
本発明の樹脂製部材およびその製造方法においては、樹脂製部材の全体を熱可塑性エラストマーによって構成することもできるし、あるいはシール部のみを熱可塑性エラストマーによって構成しその他の部分を異なる樹脂材料によって構成することもできる。少なくともシール部が熱可塑性エラストマーを材料とすることで、上述する耐久ヘタリの低減効果が発揮される。また、樹脂製部材全体を加熱荷重処理されてなるものとすることもできるし、シール部のみを加熱荷重処理されてなるものとすることもできるが、熱可塑性エラストマーに劣化が生じる可能性があることを考慮するとシール部のみが加熱荷重処理されてなることが好ましい。
【0024】
シール部の成形時の初期肉厚t0とシール部の加熱荷重処理後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)(以下、初期ヘタリ率とする)は、0%を超えれば上述した耐久ヘタリの低減効果が得られる。初期ヘタリ率が大きい程耐久ヘタリの低減効果が大きくなり、初期ヘタリ率が小さいほど耐久ヘタリの低減効果は小さくなる。したがって、樹脂製部材を使用する条件等によって初期ヘタリ率は所望の値とすることができるが、初期ヘタリ率の範囲は30〜80%の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜80%の範囲である。初期ヘタリ率が大きすぎると、熱可塑性エラストマーに劣化が生じる場合があり、初期ヘタリ率が小さすぎると所望する耐久ヘタリの低減効果が得られない場合があるからである。
【0025】
シール部の成形時の初期肉厚t0は、3〜7.5mmの範囲であることが好ましい。シール部の成形時の初期肉厚t0がこの範囲を超えると、所望する初期ヘタリ率で加熱荷重処理をおこなうことが困難となる。すなわち、シール部に加熱荷重処理を施す際には、シール部には荷重による変形が生じるが、肉厚が大きい場合にはシール部の反発力が大きくなる。このため、所望する荷重を与えることが困難となる場合や、樹脂製部材を所望する形状に形成することが困難となる場合がある。また、シール部の成形時の初期肉厚t0がこの範囲に満たないと、シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1が小さくなりすぎる場合がある。
【0026】
シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1は、1.5〜2.5mmの範囲であることが好ましい。加熱荷重処理後の肉厚t1は小さい方が相手材との密着性に優れるため、加熱荷重処理後の肉厚t1は2.5mm以下であることが好ましい。また、加熱荷重処理後の肉厚t1が小さすぎると、締結具による締付の際に破断するおそれがあるため、加熱荷重処理後の肉厚t1は1.5mm以上であることが好ましい。
【0027】
本発明の樹脂製部材の製造方法は、上述した本発明の樹脂製部材を製造するための方法である。本発明の樹脂製部材の製造方法は、成形工程とプレス工程とを有する。
【0028】
成形工程は、樹脂製部材の第1成形体を形成する工程である。ここで、本発明の樹脂製部材の製造方法において、第1成形体とは後述するプレス工程をおこなう前の樹脂製部材を指し、シール部に加熱荷重処理が施されていない状態の樹脂製部材を指す。換言すると、プレス処理がなされていない従来の樹脂製部材が本発明における第1成形体に相当する。
【0029】
成形工程において、第1成形体のうち少なくともシール部が熱可塑性エラストマーを材料として成形される。第1成形体の成形方法としてはブロー成形や射出成形等既知の成形方法を用いることができ、シール部のみを熱可塑性エラストマーで成形する場合には例えば2色成形等の成形方法を用いることができる。
【0030】
本発明の樹脂製部材およびその製造方法において、プレス工程は、第1成形体のシール部に加熱荷重処理を施す工程である。プレス工程による加熱温度および荷重圧力は所望する初期ヘタリ率に応じて所望のものとすることができる。なお、工程に要する時間を短くするためには、加熱温度を高くし、荷重圧力を大きくすることが好ましい。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を図面を基にして説明する。
【0032】
(実施例)
本発明の実施例は、本発明の樹脂製部材を車両のドライブシャフト用の等速ジョイントに被覆される等速ジョイント用ブーツに適用したものである。本実施例の樹脂製部材の要部拡大模式断面図を図1に示す。
【0033】
本実施例の樹脂製部材1は等速ジョイントブーツであり、ジョイントアウターレースなどに保持される大径の大径筒部(図示せず)と、大径筒部より小径でシャフト2に保持される小径筒部3と、大径筒部と小径筒部3を一体的に連結する略円錐台形状の蛇腹部5とから構成されている。このうち小径筒部3は、略リング状に形成され、外表面6の中央部には外表面を一周するリング溝7が設けられている。このリング溝7には、小径筒部3と相手材であるシャフト2とを締結するための締結具8が挿入される。本実施例において小径筒部3のうちリング溝7の内周側に位置する部分がシール部10となり、締結具8により小径筒部3がシャフト2に締付されると、このシール部10がシャフト2の表面に押圧されてシール性が発揮される。さらに、シール部10の内周面には内周面を一周するリップ11が設けられており、このリップ11は締結具8による締付時にシャフト2の表面に設けられたリップ溝12に押付されるため、面圧が高まりシール性は更に向上される。
【0034】
本実施例1の樹脂製部材は以下のように製造される。
▲1▼成形工程
先ず、熱可塑性エラストマーを材料としてパリソンを成形し、このパリソンをブロー成形型内に配置するとともにパリソン内部にエアを吹入することで、樹脂製部材の第1成形体13を得た。第1成形体13は、シール部10の成形時の初期肉厚t0が3.0mm,4.0mm,4.3mm,5.0mm,5.7mm,7.2mm,7.5mm,10.0mm,12.5mmの9種のものを製作した。
▲2▼プレス工程
成形工程で得た第1成形体13のうち、シール部10に加圧加熱処理を施す。図2にシール部の要部拡大断面図を示す。
【0035】
先ず、小径筒部3の内周表面と対応する形状の受け治具15を小径筒部3内部に挿入した。次に、小径筒部3のうちリング溝7に、第1成形体13のリング溝7の形状と対応するリング状のプレス治具16を挿入し、シール部10に加熱荷重処理を施して図3に示す本実施例の樹脂製部材1を製作した。
【0036】
ここで、プレス治具16は図示しないヒータによって加熱されている。また、プレス治具16はシール部10方向に荷重を加えるべく、小径筒部3の外周より内周方向に縮径するものである。したがって、このプレス工程によって小径筒部3のうちシール部10のみに加熱荷重処理が施された。この加熱荷重処理は、温度160〜200℃,圧力50〜100MPaでおこなった。
【0037】
本プレス工程において加熱荷重処理は、初期ヘタリ率が50%(第1成形体のt0が3.0mm,4.0mm,5.0mm),65%(第1成形体のt0が4.3mm,5.7mm,7.2mm),80%(第1成形体のt0が7.5mm,10.0mm,12.5mm)の3水準となるようにおこなった。
【0038】
以上の成形工程およびプレス工程で、実施例1の樹脂製部材1〜9を製造した。樹脂製部材1〜9の各樹脂製部材のt0,t1,初期ヘタリ率およびプレス加工性を表1に示す。なおプレス加工性は、得られた樹脂製部材の形状を目視で確認し、良い(○)あまり良くない(△)悪い(×)の3通りで評価した。
【0039】
(比較例)
比較例の樹脂製部材は、実施例の樹脂製部材1の第1成形体であり、シール部の成形時の初期肉厚(t0)が3.0mmのものである。すなわち、本比較例の樹脂製部材はシール部が加熱荷重処理されていないこと以外は実施例と同じものである。
【0040】
〈性能評価試験〉
▲1▼シール性試験
実施例の樹脂製部材1〜9および比較例の樹脂製部材についてシール性試験を行った。シール性試験の方法を以下に示す。
【0041】
先ず、実施例の樹脂製部材1〜9および比較例の樹脂製部材を、各々シール試験機に取付し、蛇腹部内部にグリースを封入した上で、シール部とシャフトとを締結具で締付した。そののち、試験機を駆動し、シャフトを高角度状態で維持したまま600rpmで回転駆動した。回転駆動後、シール部に耐久ヘタリが生じてシール部とシャフトとの間からグリースが漏れるまでの時間を計測した。シール性はシール性能(倍)であらわし、以下の式で算出された。
【0042】
シール性能
=(実施例の各々の樹脂製部材にグリース漏れが生じるまでの時間)/(比較例の樹脂製部材にグリース漏れが生じるまでの時間)
本発明の実施例の各樹脂製部材のシール性能を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
本発明の実施例の各樹脂製部材は何れもシール性能に優れ、シール性能は、初期ヘタリ率50%のもので1.5倍、初期ヘタリ率65%のもので3.0倍、初期ヘタリ率80%のもので4.0倍であった。この結果から初期ヘタリ率が大きいほどシール性が向上することがわかる。
【0045】
なお、第1成形体のt0が10.0mmの樹脂製部材はプレス加工性があまり良くなく、第1成形体のt0が12.5mmの樹脂製部材はプレス加工性が悪かったことから、シール部の成形時の初期肉厚t0が大きいとプレス加工性が悪くなることもわかった。
【0046】
▲2▼耐久ヘタリ特性試験
比較例の樹脂製部材と実施例の樹脂製部材2とを用いて、耐久ヘタリ特性試験を行った。耐久ヘタリ特性試験の方法を以下に示す。
【0047】
先ず、実施例の樹脂製部材2を6個、比較例の樹脂製部材を12個準備し、各々の樹脂製部材を金属製のシャフトに取付して、締結具によってシール部を金属製のシャフトに締付した。このとき、締付はシール部の肉厚方向の長さが25%圧縮される圧力でおこなった。
【0048】
次に金属製の棒を加熱して、6個の実施例の樹脂製部材2と6個の比較例の樹脂製部材のシール部に120℃の熱負荷をかけた。また、6個の比較例の樹脂製部材に100℃の熱負荷をかけた。これら熱負荷がかけられた樹脂製部材を、70時間,139時間,278時間,561時間,1000時間でそれぞれ金属製のシャフトから取り外し、シール部の肉厚(t2)の経時変化を測定した。耐久ヘタリは耐久ヘタリ率(%)であらわし、以下の式で算出された。
【0049】
耐久ヘタリ率=(t1−t2)/t1×100
ここで、t1はシール部の耐久ヘタリ特性試験前の肉厚を表し、t2はシール部の耐久ヘタリ特性試験後の肉厚を表す。
【0050】
本耐久ヘタリ特性試験の結果を表すグラフを図4に示す。図4に示すように、本耐久ヘタリ特性試験によると、本発明の実施例の樹脂製部材2は、同じ温度(120℃)で熱負荷をかけた比較例の樹脂製部材と比較して耐久ヘタリ率が著しく低減されたばかりでなく、低い温度(100℃)で熱負荷をかけた比較例の樹脂製部材と比較しても耐久ヘタリ率が著しく低減された。このことから、本発明の樹脂製部材は耐久ヘタリ特性に優れることがわかる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の樹脂製部材によると、耐久ヘタリが低減され熱負荷のかかる条件においても相手材に対するシール性を良好に保つことが可能となる。また、本発明の樹脂製部材の製造方法によると、熱負荷のかかる条件においても相手材に対するシール性を良好に保つ本発明の樹脂製部材を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の樹脂製部材のうち小径筒部を表す要部拡大模式断面図である。
【図2】実施例の第1成形体のうちシール部を表す要部拡大断面図である。
【図3】実施例の樹脂製部材のうちシール部を表す要部拡大断面図である。
【図4】実施例の樹脂製部材2と比較例の樹脂製部材との耐久ヘタリ特性試験の結果を表すグラフである。
【符号の説明】
1:樹脂製部材 2:シャフト 8:締結具 10:シール部 13:第1成形体
Claims (10)
- 締結具によって相手材に締付されるシール部を持つ樹脂製部材であって、
前記シール部は熱可塑性エラストマーを材料として成形されたのちに加熱荷重処理されてなることを特徴とする樹脂製部材。 - 前記シール部の成形時の初期肉厚t0と前記シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)が、30〜80%の範囲である請求項1に記載の樹脂製部材。
- 前記シール部の成形時の初期肉厚t0と前記シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)が、50〜80%の範囲である請求項2に記載の樹脂製部材。
- 前記シール部の成形時の初期肉厚t0は、3〜7.5mmの範囲である請求項1〜請求項3の何れかに記載の樹脂製部材。
- 前記シール部の加熱荷重処理後の肉厚t1は、1.5〜2.5mmの範囲である請求項1〜請求項4の何れかに記載の樹脂製部材。
- 締結具によって相手材に締付されるシール部を持つ樹脂製部材の製造方法であって、
少なくとも前記シール部が熱可塑性エラストマーを材料とする前記樹脂製部材の第1成形体を成形する成形工程と、
該第1成形体の前記シール部に加熱荷重処理を施すプレス工程と、を有することを特徴とする樹脂製部材の製造方法。 - 前記プレス工程は、前記第1成形体の前記シール部の初期肉厚t0と前記シール部の前記プレス工程後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)が、30〜80%の範囲となるようにおこなわれる請求項6に記載の樹脂製部材の製造方法。
- 前記プレス工程は、前記第1成形体の前記シール部の初期肉厚t0と前記シール部の前記プレス工程後の肉厚t1との関係(t0−t1)/t0×100(%)が、50〜80%の範囲となるようにおこなわれる請求項7に記載の樹脂製部材の製造方法。
- 前記第1成形体の前記シール部の初期肉厚t0は、3〜7.5mmの範囲である請求項6〜請求項8の何れかに記載の樹脂製部材の製造方法。
- 前記シール部の前記プレス工程後の肉厚t1は、1.5〜2.5mmの範囲である請求項6〜請求項9の何れかに記載の樹脂製部材の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN100396973C (zh) * | 2005-03-14 | 2008-06-25 | 丰田合成株式会社 | 等速万向接头保护罩 |
EP1975476A1 (en) | 2007-03-29 | 2008-10-01 | Toyoda Gosei Co., Ltd. | Boot for constant-velocity universal joint and fixing structure for the same |
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-
2003
- 2003-03-27 JP JP2003087667A patent/JP2004291438A/ja active Pending
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