JP2004291261A - 2,4’−ジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】感熱記録材料として用いた時に、地肌かぶりの発生を大幅に抑制するか或いは殆んど発生しない2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法の提供。
【解決手段】2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法であって、
(1)不純物としてフェノールスルホン酸フェニルエステルを含む粗ジヒドロキシジフェニルスルホンと
(2)粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホンに対して1.5当量以上のアルカリ性物質と
(3)水系溶媒とを含む混合物を加熱混合する工程を含むことを特徴とするジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法であって、
(1)不純物としてフェノールスルホン酸フェニルエステルを含む粗ジヒドロキシジフェニルスルホンと
(2)粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホンに対して1.5当量以上のアルカリ性物質と
(3)水系溶媒とを含む混合物を加熱混合する工程を含むことを特徴とするジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、感熱記録材料として極めて有用である(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、高純度の2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを感熱記録材料として用いても、地肌かぶりが生じる場合があり、その原因の解明が強く望まれている。
【0004】
また、特許文献2には、「2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン粗製品を、塩基性アルカリ金属化合物の水性溶液に溶解または懸濁処理して、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンまたはその1/2アルカリ金属塩を析出、分離し、次いで必要に応じてこれを酸処理することを特徴とする2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの精製法」が開示されている。
【0005】
しかしながら、この方法は異性体混合物から2、4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン体を効率よく回収することを目的としているため、得られる2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの地肌かぶり性については改善の余地があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−270550号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平10−139756号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の問題点を鑑み成されたものであって、感熱記録材料として用いた時に、地肌かぶりの発生を大幅に抑制するか或いは殆んど発生しない2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法を提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
まず、本発明者は、公知の方法で製造されたジヒドロキシジフェニルスルホン(以下「BS」ということがある)に、不純物としてフェノールスルホン酸フェニルエステル(以下、「PPS」ということがある)が含まれていることを見出した。以下にPPSの構造式を示す。
【0010】
【化1】
【0011】
また、BSを感熱記録材料として用いた場合に生じる地肌かぶりとPPSの含有量との間に相関関係があることを見出し、この点に着目した。本発明者は、鋭意研究の結果、特定量のアルカリ性物質を使用し、所定の処理をすることによって、PPS含有量を低減し、上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の製造方法に係るものである。
【0013】
項1.2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法であって、
(1)不純物としてフェノールスルホン酸フェニルエステルを含む粗ジヒドロキシジフェニルスルホンと
(2)粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホンに対して1.5当量以上のアルカリ性物質と
(3)水系溶媒とを含む混合物を加熱混合する工程を含むことを特徴とするジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法。
【0014】
項2.加熱温度が、80〜200℃であることを特徴とする項1に記載のジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法。
【0015】
項3.得られた2,4’−ジヒドロキシフェニルスルホンに含まれるフェノールスルホン酸フェニルエステル含有量が、1.5重量%以下であることを特徴とする項1または2に記載のジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法であって、
(1)不純物としてフェノールスルホン酸フェニルエステルを含む粗ジヒドロキシジフェニルスルホンと
(2)粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホンに対して1.5当量以上のアルカリ性物質と
(3)水系溶媒とを含む混合物を加熱混合する工程を含むことを特徴とする2,4’−ジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法に係る。
【0017】
本発明において用いる粗ジヒドロキシジフェニルスルホンは、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下「4,4’−BS」ということがある)及び2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下「2,4’−BS」ということがある)を含む。粗ジヒドロキシジフェニルスルホンとしては、2,4’−BSを主成分とするものが好ましい。粗ジヒドロキシジフェニルスルホンには、4,4’−BSと2,4’−BSとの合計に対して、2,4’−BSが通常90重量%以上、好ましくは92重量%以上含まれる。
【0018】
本発明において用いる粗ジヒドロキシジフェニルスルホンには、不純物としてフェノールスルホン酸フェニルエステルが含まれる。公知の方法によって製造したジヒドロキシジフェニルスルホンには、通常1.5〜7重量%程度、製造条件によっては5〜20重量%程度のPPSが含まれる。本発明では、公知の方法によって製造したジヒドロキシジフェニルスルホンを、原料として好適に用いることができる。例えば、PPSを含むジヒドロキシフェニルスルホンからPPSを除去する際に副生される高濃度PPSを含む粗ジヒドロキシジフェニルスルホン(PPS含有量:5〜10重量%程度)などから、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンを製造することができる。
【0019】
本発明では、粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’−BSと4,4’−BSの総量)に対して1.5当量以上程度のアルカリ性物質を用いる。ここで、「粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホンに対して1当量」とは、粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホン1モルをジヒドロキシジフェニルスルホンの一アルカリ金属塩1モルに変えるのに必要な塩基性化合物の量を言う。アルカリ性物質の使用量は、通常1.5当量以上程度であるが、好ましくは1.8〜5当量程度であり、より好ましくは2〜4当量程度である。
【0020】
本発明で用いるアルカリ性物質は、特に制限されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;アンモニア;トリエチルアミン等のアミン化合物などを例示することができる。これらの中では、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0021】
本発明において用いる水系溶媒は、全て水でもよく、低級アルコールを含有していてもよい。水系溶媒としては、水が好ましい。水系溶媒に含まれる低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどの炭素数1〜3程度のアルコールを例示することができる。低級アルコールの含有量は、通常50重量%以下程度であり、好ましくは30重量%以下程度である。
【0022】
水系溶媒の量は、粗BSを所望量溶解させることができる限り特に制限されないが、粗BSに対して、通常0.5〜10重量倍程度、好ましくは1〜5重量倍程度、更に好ましくは1.8〜3重量倍程度である。
【0023】
本発明では、粗BSと所定量のアルカリ性物質と水系溶媒とを加熱混合する。このとき、不純物であるPPSが加水分解され、除去される。加熱混合時には、粗BSの少なくとも一部を溶解させる。加熱混合により、粗BSを完全に溶解させるのが好ましい。加熱温度は、粗BSが少なくとも一部溶解する程度の温度であれば特に制限されないが、粗BSが完全に溶解する温度が好ましい。加熱温度は、通常80℃〜200℃程度であり、好ましくは90℃〜150℃程度であり、より好ましくは95〜130℃程度である。加熱混合は、常圧において行ってもよいが、加圧下において行ってもよい。圧力は、特に制限されないが、通常0.1〜2MPa程度であり、好ましくは0.1〜1.5MPa程度である。
【0024】
加熱時間は、所望量のPPSが加水分解される限り特に制限されないが、通常0.1〜20時間程度、好ましくは0.5〜15時間程度である。
【0025】
加熱混合時に必要に応じて、活性炭処理を行ったり、ハイドロサルファイト等の還元剤を添加して脱色操作を行っても良い。
【0026】
上述したような加熱混合工程の後、公知の方法によりBSを分離すればよい。例えば、加熱混合工程の後、酸を添加し、反応混合物を中和することによりBSを晶析し、公知の手段を用いてBSを分離する方法などを例示することができる。酸の添加前および/または添加後に、必要に応じて、反応混合物を冷却してもよい。
【0027】
中和に用いる酸は、特に制限されず、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、酢酸等の有機酸等が挙げられる。これらの中では、硫酸が好ましい。
【0028】
晶析したBSの分離には、ろ過、遠心分離などの公知の固液分離手段を用いればよい。更に、必要に応じて、洗浄、乾燥などの公知の後処理を施してもよい。
【0029】
本発明の方法によると高純度の2,4’−BSを得ることができる。本発明により得られる目的物には、通常90重量%以上程度、好ましくは92重量%以上程度の2,4’−BSが含まれる。
【0030】
本発明の方法により、PPS含量の少ない2,4’−BSを得ることができる。本発明の方法により得られる2,4’−BSのPPS含有量は、通常1.5重量%以下程度であり、条件によっては0.5重量%以下程度、好ましい条件によっては0.3重量%以下程度とすることができる。
【0031】
PPSの含有量を所望量とすることができなかった場合などには、必要に応じて、上述したような加熱混合工程を含む操作を繰り返し行ってもよい。加熱混合工程を行う場合には、前回と同じ条件下で行ってもよく、または前回よりも厳しい条件下で行ってもよい。例えば、アルカリ性物質の量を増加したり、加熱混合温度をより高くしたり、加熱混合時間をより長くするなどの条件下において加熱混合工程を繰り返してもよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、不純物であるPPSの含有量が少ない2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造することができる。PPSは、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを感熱記録材料として用いた場合に、地肌かぶりの原因となるので、本発明により得られた2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、感熱記録材料として好適に用いることができる。また、本発明によれば、原料である粗ジヒドロキシジフェニルスルホンから、不純物であるPPSを選択的に除去し、高純度の2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを高収率で得ることができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0034】
実施例1
PPS 4.8重量%を含む粗ジヒドロキシジフェニルスルホン5.0g(0.02モル、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比=1.7/98.3)に水10gおよび水酸化ナトリウム1.6g(0.04モル)を加え、撹拌しながら100℃で10時間保温した。得られた反応混合物を60℃まで冷却し、50重量%硫酸4.0gを滴下することにより結晶を析出させた。更に30℃まで冷却した後、結晶を濾別、水洗および乾燥することにより結晶(4.7g)を得た。
【0035】
得られた結晶をHPLCで分析した結果、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比は1.5/98.5であり、PPS含量は、0.20重量%であった。
【0036】
実施例2
密閉下において120℃、0.2MPaで保温した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、結晶(4.7g)を得た。
【0037】
得られた結晶をHPLCで分析した結果、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比は1.6/98.4であり、PPS含量は、0.10重量%であった。
【0038】
実施例3
水酸化ナトリウムの使用量を1.92g (0.048 モル)とし、保温時間を4時間とした以外は、実施例1と同様の操作をすることにより結晶(4.7g)を得た。
【0039】
得られた結晶をHPLCで分析した結果、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比は1.5/98.5であり、PPS含量は、0.10重量%であった。
【0040】
実施例4
密閉下において、120℃、0.2MPaで、3時間保温した以外は、実施例3と同様の操作をすることにより結晶(4.7g)を得た。
【0041】
得られた結晶をHPLCで分析した結果、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比は1.4/98.6であり、PPS含量は、0.08重量%であった。
【0042】
上記の実施例1〜4において得られた結晶を顕色剤として使用して、後述する方法で感熱記録紙を製造し、性能を評価した。また、比較例1として、実施例1において原料として用いた粗ジヒドロキシジフェニルスルホン(PPS含有量:4.8重量%、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比=1.7/98.3)を顕色剤として使用する以外は、同様の方法により感熱記録紙を製造し、性能を評価した。
【0043】
[感熱記録紙の製造]
下記配合割合で、顕色剤、染料及び増感剤の各分散液を、それぞれ別個にサンドグラインダーで平均粒子径1μmになるまで湿式磨砕を行った。
A液(顕色剤分散液):顕色剤4.0重量部、10%−PVA(ポリビニルアルコール)水溶液18.8重量部、水11.2重量部。
B液(染料分散液):3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(ODB−2)2.0重量部、10%−PVA水溶液4.6重量部、水2.6重量部。
C液(増感剤分散液):4−アセチルビフェニル4.0重量部、10%−PVA水溶液18.8重量部、水11.2重量部。
【0044】
次いで、A液36重量部、B液9.2重量部、C液34重量部および炭酸カルシウム18重量部の割合で混合、撹拌し、塗布液を調製した。
【0045】
上記塗布液を基紙に塗布した後、乾燥を行い、塗布量6.0g/m2の感熱記録紙を得た。
【0046】
[感熱記録紙の評価]
作製した感熱記録紙について、感熱記録印字装置(印字電圧24V、パルス幅1ms)で印字した。地肌の記録濃度を、マクベス濃度計(RD−914)で測定した。
・地肌着色(発色)の評価:地肌の記録濃度を測定した。
【0047】
結果を表1に示す。
【0048】
表1には、上記の実施例1〜4および比較例1において得られたBS結晶中のPPS含有量(重量%)を併記する。
【0049】
【表1】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、感熱記録材料として極めて有用である(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、高純度の2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを感熱記録材料として用いても、地肌かぶりが生じる場合があり、その原因の解明が強く望まれている。
【0004】
また、特許文献2には、「2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン粗製品を、塩基性アルカリ金属化合物の水性溶液に溶解または懸濁処理して、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンまたはその1/2アルカリ金属塩を析出、分離し、次いで必要に応じてこれを酸処理することを特徴とする2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの精製法」が開示されている。
【0005】
しかしながら、この方法は異性体混合物から2、4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン体を効率よく回収することを目的としているため、得られる2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの地肌かぶり性については改善の余地があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−270550号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平10−139756号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の問題点を鑑み成されたものであって、感熱記録材料として用いた時に、地肌かぶりの発生を大幅に抑制するか或いは殆んど発生しない2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法を提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
まず、本発明者は、公知の方法で製造されたジヒドロキシジフェニルスルホン(以下「BS」ということがある)に、不純物としてフェノールスルホン酸フェニルエステル(以下、「PPS」ということがある)が含まれていることを見出した。以下にPPSの構造式を示す。
【0010】
【化1】
【0011】
また、BSを感熱記録材料として用いた場合に生じる地肌かぶりとPPSの含有量との間に相関関係があることを見出し、この点に着目した。本発明者は、鋭意研究の結果、特定量のアルカリ性物質を使用し、所定の処理をすることによって、PPS含有量を低減し、上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の製造方法に係るものである。
【0013】
項1.2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法であって、
(1)不純物としてフェノールスルホン酸フェニルエステルを含む粗ジヒドロキシジフェニルスルホンと
(2)粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホンに対して1.5当量以上のアルカリ性物質と
(3)水系溶媒とを含む混合物を加熱混合する工程を含むことを特徴とするジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法。
【0014】
項2.加熱温度が、80〜200℃であることを特徴とする項1に記載のジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法。
【0015】
項3.得られた2,4’−ジヒドロキシフェニルスルホンに含まれるフェノールスルホン酸フェニルエステル含有量が、1.5重量%以下であることを特徴とする項1または2に記載のジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法であって、
(1)不純物としてフェノールスルホン酸フェニルエステルを含む粗ジヒドロキシジフェニルスルホンと
(2)粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホンに対して1.5当量以上のアルカリ性物質と
(3)水系溶媒とを含む混合物を加熱混合する工程を含むことを特徴とする2,4’−ジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法に係る。
【0017】
本発明において用いる粗ジヒドロキシジフェニルスルホンは、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下「4,4’−BS」ということがある)及び2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下「2,4’−BS」ということがある)を含む。粗ジヒドロキシジフェニルスルホンとしては、2,4’−BSを主成分とするものが好ましい。粗ジヒドロキシジフェニルスルホンには、4,4’−BSと2,4’−BSとの合計に対して、2,4’−BSが通常90重量%以上、好ましくは92重量%以上含まれる。
【0018】
本発明において用いる粗ジヒドロキシジフェニルスルホンには、不純物としてフェノールスルホン酸フェニルエステルが含まれる。公知の方法によって製造したジヒドロキシジフェニルスルホンには、通常1.5〜7重量%程度、製造条件によっては5〜20重量%程度のPPSが含まれる。本発明では、公知の方法によって製造したジヒドロキシジフェニルスルホンを、原料として好適に用いることができる。例えば、PPSを含むジヒドロキシフェニルスルホンからPPSを除去する際に副生される高濃度PPSを含む粗ジヒドロキシジフェニルスルホン(PPS含有量:5〜10重量%程度)などから、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンを製造することができる。
【0019】
本発明では、粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’−BSと4,4’−BSの総量)に対して1.5当量以上程度のアルカリ性物質を用いる。ここで、「粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホンに対して1当量」とは、粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホン1モルをジヒドロキシジフェニルスルホンの一アルカリ金属塩1モルに変えるのに必要な塩基性化合物の量を言う。アルカリ性物質の使用量は、通常1.5当量以上程度であるが、好ましくは1.8〜5当量程度であり、より好ましくは2〜4当量程度である。
【0020】
本発明で用いるアルカリ性物質は、特に制限されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;アンモニア;トリエチルアミン等のアミン化合物などを例示することができる。これらの中では、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0021】
本発明において用いる水系溶媒は、全て水でもよく、低級アルコールを含有していてもよい。水系溶媒としては、水が好ましい。水系溶媒に含まれる低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどの炭素数1〜3程度のアルコールを例示することができる。低級アルコールの含有量は、通常50重量%以下程度であり、好ましくは30重量%以下程度である。
【0022】
水系溶媒の量は、粗BSを所望量溶解させることができる限り特に制限されないが、粗BSに対して、通常0.5〜10重量倍程度、好ましくは1〜5重量倍程度、更に好ましくは1.8〜3重量倍程度である。
【0023】
本発明では、粗BSと所定量のアルカリ性物質と水系溶媒とを加熱混合する。このとき、不純物であるPPSが加水分解され、除去される。加熱混合時には、粗BSの少なくとも一部を溶解させる。加熱混合により、粗BSを完全に溶解させるのが好ましい。加熱温度は、粗BSが少なくとも一部溶解する程度の温度であれば特に制限されないが、粗BSが完全に溶解する温度が好ましい。加熱温度は、通常80℃〜200℃程度であり、好ましくは90℃〜150℃程度であり、より好ましくは95〜130℃程度である。加熱混合は、常圧において行ってもよいが、加圧下において行ってもよい。圧力は、特に制限されないが、通常0.1〜2MPa程度であり、好ましくは0.1〜1.5MPa程度である。
【0024】
加熱時間は、所望量のPPSが加水分解される限り特に制限されないが、通常0.1〜20時間程度、好ましくは0.5〜15時間程度である。
【0025】
加熱混合時に必要に応じて、活性炭処理を行ったり、ハイドロサルファイト等の還元剤を添加して脱色操作を行っても良い。
【0026】
上述したような加熱混合工程の後、公知の方法によりBSを分離すればよい。例えば、加熱混合工程の後、酸を添加し、反応混合物を中和することによりBSを晶析し、公知の手段を用いてBSを分離する方法などを例示することができる。酸の添加前および/または添加後に、必要に応じて、反応混合物を冷却してもよい。
【0027】
中和に用いる酸は、特に制限されず、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、酢酸等の有機酸等が挙げられる。これらの中では、硫酸が好ましい。
【0028】
晶析したBSの分離には、ろ過、遠心分離などの公知の固液分離手段を用いればよい。更に、必要に応じて、洗浄、乾燥などの公知の後処理を施してもよい。
【0029】
本発明の方法によると高純度の2,4’−BSを得ることができる。本発明により得られる目的物には、通常90重量%以上程度、好ましくは92重量%以上程度の2,4’−BSが含まれる。
【0030】
本発明の方法により、PPS含量の少ない2,4’−BSを得ることができる。本発明の方法により得られる2,4’−BSのPPS含有量は、通常1.5重量%以下程度であり、条件によっては0.5重量%以下程度、好ましい条件によっては0.3重量%以下程度とすることができる。
【0031】
PPSの含有量を所望量とすることができなかった場合などには、必要に応じて、上述したような加熱混合工程を含む操作を繰り返し行ってもよい。加熱混合工程を行う場合には、前回と同じ条件下で行ってもよく、または前回よりも厳しい条件下で行ってもよい。例えば、アルカリ性物質の量を増加したり、加熱混合温度をより高くしたり、加熱混合時間をより長くするなどの条件下において加熱混合工程を繰り返してもよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、不純物であるPPSの含有量が少ない2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造することができる。PPSは、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを感熱記録材料として用いた場合に、地肌かぶりの原因となるので、本発明により得られた2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、感熱記録材料として好適に用いることができる。また、本発明によれば、原料である粗ジヒドロキシジフェニルスルホンから、不純物であるPPSを選択的に除去し、高純度の2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを高収率で得ることができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0034】
実施例1
PPS 4.8重量%を含む粗ジヒドロキシジフェニルスルホン5.0g(0.02モル、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比=1.7/98.3)に水10gおよび水酸化ナトリウム1.6g(0.04モル)を加え、撹拌しながら100℃で10時間保温した。得られた反応混合物を60℃まで冷却し、50重量%硫酸4.0gを滴下することにより結晶を析出させた。更に30℃まで冷却した後、結晶を濾別、水洗および乾燥することにより結晶(4.7g)を得た。
【0035】
得られた結晶をHPLCで分析した結果、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比は1.5/98.5であり、PPS含量は、0.20重量%であった。
【0036】
実施例2
密閉下において120℃、0.2MPaで保温した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、結晶(4.7g)を得た。
【0037】
得られた結晶をHPLCで分析した結果、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比は1.6/98.4であり、PPS含量は、0.10重量%であった。
【0038】
実施例3
水酸化ナトリウムの使用量を1.92g (0.048 モル)とし、保温時間を4時間とした以外は、実施例1と同様の操作をすることにより結晶(4.7g)を得た。
【0039】
得られた結晶をHPLCで分析した結果、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比は1.5/98.5であり、PPS含量は、0.10重量%であった。
【0040】
実施例4
密閉下において、120℃、0.2MPaで、3時間保温した以外は、実施例3と同様の操作をすることにより結晶(4.7g)を得た。
【0041】
得られた結晶をHPLCで分析した結果、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比は1.4/98.6であり、PPS含量は、0.08重量%であった。
【0042】
上記の実施例1〜4において得られた結晶を顕色剤として使用して、後述する方法で感熱記録紙を製造し、性能を評価した。また、比較例1として、実施例1において原料として用いた粗ジヒドロキシジフェニルスルホン(PPS含有量:4.8重量%、4,4’−BS/2,4’−BSの重量比=1.7/98.3)を顕色剤として使用する以外は、同様の方法により感熱記録紙を製造し、性能を評価した。
【0043】
[感熱記録紙の製造]
下記配合割合で、顕色剤、染料及び増感剤の各分散液を、それぞれ別個にサンドグラインダーで平均粒子径1μmになるまで湿式磨砕を行った。
A液(顕色剤分散液):顕色剤4.0重量部、10%−PVA(ポリビニルアルコール)水溶液18.8重量部、水11.2重量部。
B液(染料分散液):3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(ODB−2)2.0重量部、10%−PVA水溶液4.6重量部、水2.6重量部。
C液(増感剤分散液):4−アセチルビフェニル4.0重量部、10%−PVA水溶液18.8重量部、水11.2重量部。
【0044】
次いで、A液36重量部、B液9.2重量部、C液34重量部および炭酸カルシウム18重量部の割合で混合、撹拌し、塗布液を調製した。
【0045】
上記塗布液を基紙に塗布した後、乾燥を行い、塗布量6.0g/m2の感熱記録紙を得た。
【0046】
[感熱記録紙の評価]
作製した感熱記録紙について、感熱記録印字装置(印字電圧24V、パルス幅1ms)で印字した。地肌の記録濃度を、マクベス濃度計(RD−914)で測定した。
・地肌着色(発色)の評価:地肌の記録濃度を測定した。
【0047】
結果を表1に示す。
【0048】
表1には、上記の実施例1〜4および比較例1において得られたBS結晶中のPPS含有量(重量%)を併記する。
【0049】
【表1】
Claims (3)
- 2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が90重量%以上であるジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法であって、
(1)不純物としてフェノールスルホン酸フェニルエステルを含む粗ジヒドロキシジフェニルスルホンと
(2)粗ジヒドロキシジフェニルスルホンに含まれるジヒドロキシジフェニルスルホンに対して1.5当量以上のアルカリ性物質と
(3)水系溶媒とを含む混合物を加熱混合する工程を含むことを特徴とするジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法。 - 加熱温度が、80〜200℃であることを特徴とする請求項1に記載のジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法。
- 得られた2,4’−ジヒドロキシフェニルスルホンに含まれるフェノールスルホン酸フェニルエステル含有量が、1.5重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のジヒドロキシフェニルスルホンの製造方法。
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