JP2004290878A - 重金属を含む土壌の処理方法及び処理システム - Google Patents
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Abstract
【課題】重金属で汚染された土壌から重金属を塩化揮発法によって分離し回収するに際し、重金属の塩化揮発や塩化水素の処理に要する化学薬剤の使用量を削減することができ、かつ、最終的に安定化処理すべき重金属を含む物質の量を削減することのできる処理方法を提供する。
【解決手段】(A)重金属を含む土壌1と、塩化カルシウム2とをロータリーキルン8内で加熱して、重金属が除去された焼成物9と、塩化水素等を含む排ガス10とを得る工程と、(B)排ガス10を塩化水素処理手段18に導いて、消石灰14を添加し、塩化カルシウムを含む粗粒分16と、排ガス10とを分別して得る工程と、(C)粗粒分16を、塩素分供給路17を介して混合槽5に導き、工程(A)の焼成原料として用いる工程と、(D)工程(B)で得られた排ガスから、集塵機19によって重金属の塩化物20を回収する工程とを含む。
【選択図】 図1
【解決手段】(A)重金属を含む土壌1と、塩化カルシウム2とをロータリーキルン8内で加熱して、重金属が除去された焼成物9と、塩化水素等を含む排ガス10とを得る工程と、(B)排ガス10を塩化水素処理手段18に導いて、消石灰14を添加し、塩化カルシウムを含む粗粒分16と、排ガス10とを分別して得る工程と、(C)粗粒分16を、塩素分供給路17を介して混合槽5に導き、工程(A)の焼成原料として用いる工程と、(D)工程(B)で得られた排ガスから、集塵機19によって重金属の塩化物20を回収する工程とを含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉛等の重金属で汚染された土壌から重金属を除去するための処理方法及び処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、有害な重金属で汚染された土壌から、重金属を分離するための種々の方法が知られている。例えば、物理的な分離方法として、▲1▼洗浄分級法、▲2▼磁力による選別方法、▲3▼比重による選別方法、▲4▼浮遊選鉱等が知られている。
これらの物理的な方法は、処理対象となる土壌の種類に制限があり、例えば、シルト質や粘土分等の微細粒子を多く含むものに対して、重金属の十分な分離を行なうことができないという問題がある。
【0003】
そのため、重金属で汚染された土壌に、塩素分を含む物質を配合して混合物を得た後、該混合物を高温で加熱して、土壌中の重金属を塩化物として揮発させて分離回収する技術(本明細書中において「塩化揮発法」ともいう。)が提案されている。
例えば、重金属含有廃棄物(例えば、重金属汚染土壌)に対して塩素含有廃棄物を混合後の塩素含有量が少なくとも2重量%となるように配合して得た混合物を、750℃以上の温度で高熱処理することにより廃棄物中の重金属分を塩化揮発させると共に、残留重金属分を不溶安定化することを特徴とする重金属含有廃棄物の処理方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−182983号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の塩化揮発法を用いて土壌に対し重金属の除去処理を施す場合には、塩素分を含む物質が多量に必要である。特に、塩素分を含む物質として、塩化カルシウム等の化学薬剤を用いると、薬剤費が加わることで処理費用が増大することになる。
また、塩化揮発法を用いた場合、加熱処理後の排ガス中には、揮発した重金属の塩化物の他に、塩化水素が含まれている。この塩化水素の除去処理方法として、例えば、加熱処理後の塩化水素及び重金属の塩化物を含む排ガスに対し、塩化水素の3〜4倍当量の消石灰を添加した後、生成した塩化カルシウムと、未反応の消石灰と、重金属の塩化物とを含むダストを、バグフィルタの如き集塵機で捕集し回収する方法が挙げられる。しかし、この方法では、重金属の塩化物のみを集塵機で捕集し回収する場合と比べて、多量の特別管理廃棄物を生み出すことになり、この特別管理廃棄物の安定化処理の負担が多大なものとなる。特に、ダスト中に未反応の消石灰を多く含む場合には、処理の効率が悪く、不経済であるばかりか、有害な重金属である鉛が溶出し易いため、安定化処理に多大の労力及び多額の費用を必要とする。
【0006】
そこで、本発明は、重金属で汚染された土壌から重金属を塩化揮発法によって分離し回収するに際し、重金属の塩化揮発や塩化水素の処理に用いられる化学薬剤の使用量を大幅に削減することができるとともに、塩化水素の処理で生じる塩化カルシウム等からなる粗粒分を含むことなく、重金属の塩化物を含む細粒分を分別して回収し、安定化処理等の負担を軽減することのできるような処理方法及び処理システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、塩化揮発法によって生成する重金属の塩化物及び塩化水素を含む排ガスを、特定の手段を用いて処理すれば、上記課題を達成することができることに想到し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明(請求項1)の重金属を含む土壌の処理方法は、(A)鉛の如き重金属を含む土壌と、塩化カルシウムの如き塩素含有物質とを、重金属が塩化揮発し得る温度で加熱して、重金属が除去された焼成物と、塩化水素及び重金属の塩化物を含む排ガスとを得る焼成工程と、(B)前記排ガスに消石灰の如きCaO源を添加して反応させ、次いで、該反応によって生じる塩化カルシウムを含む固体分と、重金属の塩化物を含む排ガスとを分別して得る塩化水素除去工程と、(C)前記塩化カルシウムを含む固体分を、前記工程(A)の前記塩素含有物質の少なくとも一部として用いる塩素分循環工程と、(D)前記工程(B)で得られた前記排ガスから、前記重金属の塩化物を回収する重金属回収工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の方法によれば、工程(B)で得られる塩化カルシウムを含む固体分(通常、消石灰の如き未反応のCaO源をも含む粗粒分)を、工程(A)の塩素源(塩素含有物質)として用いているので、新たに系外から供給すべき塩素含有物質の量を大幅に削減することができる。また、工程(B)において、重金属を含む塩化物(細粒分)を排ガス中に存在させたままの状態で、塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分)を排ガスから捕集しているので、後工程のバグフィルタ等で捕集される重金属の塩化物を含む固体分の量を少なくすることができ、当該重金属の塩化物を含む固体分の安定化処理の負担を軽減することができる。
【0010】
前記工程(B)で用いられる前記CaO源として、例えば、消石灰、炭酸カルシウム及び生石灰からなる群より選ばれる一種以上を用いることができる(請求項2)。
前記工程(B)において、前記CaO源は、好ましくは、スラリーとして噴霧される(請求項3)。
【0011】
本発明(請求項4)の重金属を含む土壌の処理システムは、(a)鉛の如き重金属を含む土壌と、塩化カルシウムの如き塩素含有物質とを加熱して、重金属が除去された焼成物と、塩化水素及び重金属の塩化物を含む排ガスとを得るための焼成炉と、(b)前記排ガスに消石灰の如きCaO源を添加するための手段(例えば、消石灰スラリーを噴霧する反応塔)、及び該CaO源の添加によって生成する塩化カルシウムを含む固体分と、重金属の塩化物を含む排ガスとを分別して得るための手段(例えば、サイクロン)を有する塩化水素除去手段と、(c)前記塩化水素除去手段(b)で得られる前記塩化カルシウムを含む固体分を、前記焼成炉(a)またはそれよりも原料供給側の領域(例えば、焼成炉に投入する前の混合槽)に供給するための塩素分供給路と、(d)前記塩化水素除去手段(b)で得られる前記排ガスから、前記重金属の塩化物を回収するための集塵機(例えば、バグフィルタ)とを含むことを特徴とする。
【0012】
前記塩化水素除去手段(b)の一例としては、前記CaO源を添加するための反応塔と、該反応塔の後流側に配設される、前記塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分)を捕集するためのサイクロンとを組み合わせてなるものが挙げられる(請求項5)。
前記塩化水素除去手段(b)の他の例としては、半乾式スラリー噴霧装置が挙げられる(請求項6)。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の重金属を含む土壌の処理方法は、(A)重金属を含む土壌と、塩素含有物質とを、ロータリーキルンの如き焼成炉内において、重金属が塩化揮発し得る温度で加熱して、焼成物と排ガスとを得る工程と、(B)工程(A)で得られた排ガスにCaO源を添加して反応させ、次いで、該反応によって生じる塩化カルシウムを含む固体分と、排ガスとを分別して得る工程と、(C)工程(B)で得られた塩化カルシウムを含む固体分を、工程(A)の塩素含有物質の少なくとも一部として用いる工程と、(D)工程(B)で得られた排ガスから重金属の塩化物を回収する工程とを含むものである。
【0014】
[工程(A)]
工程(A)では、まず、重金属を含む土壌と、塩素含有物質とを混合する。
ここで、重金属を含む土壌としては、例えば、工場の跡地の土壌や、廃棄物処理場の周辺の土壌等が挙げられる。
重金属としては、例えば、鉛、亜鉛、銅等が挙げられる。
塩素含有物質としては、塩素を含有するものであれば任意であるが、通常、塩化カルシウムや塩化マグネシウムの如きアルカリ土類金属の塩化物等の化学薬剤や、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素含有合成樹脂(特に、廃プラスチック)等が用いられる。また、塩素含有合成樹脂の廃棄物等を焼却して得られる塩素含有率の高い焼却飛灰や溶融飛灰等を、本発明の塩素含有物質として用いることもできる。
【0015】
上述の塩素含有物質の中でも、塩化カルシウムは、本工程(A)で得られる焼成物をセメント原料として用いる際にその品質を高めることのできるカルシウム分と、重金属の塩化揮発を生じさせるのに必要な塩素分とからなるので、本発明において好適に用いられる。
塩素含有物質の添加量は、土壌中の塩化揮発法の対象となる重金属(例えば、Pb等)の量に応じて適宜定めればよい。
重金属を含む土壌と、塩素含有物質との混合は、混合槽で行なってもよいし、あるいはロータリーキルンの如き混合機能を有する焼成炉内で行なってもよい。
ただし、これらの材料を十分に混合して均一な混合物を得るためには、焼成手段と独立して設けた混合槽を用いることが望ましい。
【0016】
重金属を含む土壌と塩素含有物質との混合物を、重金属の塩化揮発が生じ得る温度で加熱するための加熱手段(焼成炉)としては、例えば、ロータリーキルン(内熱式または外熱式)、竪型焼成炉、電気炉等が挙げられる。中でも、ロータリーキルンは、温度調整等が容易で、かつ連続的に焼成することができる等の点で、好ましく用いられる。
焼成炉内の温度は、重金属の塩化揮発が生じ得る温度であればよく、例えば、800〜1,400℃である。
重金属(例えば、鉛)を含む土壌と塩素含有物質(例えば、塩化カルシウム)との混合物を焼成炉内で加熱すると、土壌中の重金属と塩素含有物質中の塩素とが、塩化物(塩化鉛)として揮発するとともに、塩化水素が副生成物として生成する。これら重金属の塩化物及び塩化水素は、排ガス中に存在する物質として、焼成炉から排出される。なお、塩化水素は、例えば、焼成炉の燃料である重油等に由来する水分と、塩素含有物質中の塩素等が反応して生成するものである。
なお、焼成炉内における化学反応は、例えば、次のとおりである。
PbO+CaCl2+SiO2 → CaSiO3+PbCl2↑
CaCl2+SiO2+H2O → CaSiO3+2HCl↑
一方、土壌と塩素含有物質との混合物の加熱処理後の残渣である焼成物は、重金属が除去され、かつ珪酸分やカルシウム分等を含むものであり、セメント原料等として好適に用いることができる。
【0017】
[工程(B)]
工程(B)では、まず、焼成炉から排出された排ガスにCaO源を添加する。
ここで、CaO源としては、例えば、消石灰、炭酸カルシウム、生石灰等が挙げられる。
排ガスにCaO源を添加する際の温度は、好ましくは120〜200℃である。該温度が120℃以上であると、後述のCaO源を含むスラリーの突沸による蒸発を生じさせて、大きな有効接触面積を有するポーラス状の捕集し易い粒子を形成することができる。また、該温度が200℃以下であると、CaO源による塩化水素の中和反応を良好に進行させることができ、かつ、ダイオキシンの再合成を抑制することができる。
【0018】
CaO源を添加する際の形態は、スラリーと乾式のいずれでもよいが、スラリーとするのが好ましい。スラリーが好ましい理由は、次の通りである。
CaO源(例えば、消石灰)をスラリーとして添加すると、このスラリーは、まず、添加時に排ガス中の塩化水素等の酸性ガスと気液接触反応(中和反応)を起こした後、排ガスの持つ熱によって瞬間的に乾燥し、塩化水素等の酸性ガスと固気接触反応(中和反応)を起こすこととなる。この際、スラリー中の水分は、突沸して蒸発する。そのため、スラリーに含まれていたCaO源は、ポーラス状の粒子を形成し、大きな有効接触面積を有するものとなる。さらに、スラリーの添加による中和反応によって生成した塩化カルシウムがバインダーとなって、ポーラス状の粒子(CaO源)が凝集するため、ポーラス状の粒子(CaO源)の見掛けの粒径が増大し、サイクロン等の捕集手段で粗粒分として捕集され易くなる。つまり、塩化カルシウム等を含む固体分(粗粒分)を、重金属の塩化物からなる細粒分と容易に分別し回収することができる。
【0019】
本発明においては、消石灰等のCaO源を添加して上述の反応を生じさせた後、塩化カルシウムを含む固体分(凝集体である粗粒分)と、重金属の塩化物(0.1μm〜数μmの粒径を有する細粒分)を含む排ガスとを分別して得る。
分別するための方法としては、(a)消石灰の如きCaO源のスラリーを噴霧して、塩化水素を含む排ガスと反応させるための反応塔と、反応塔から排出された排ガス中の粗粒分(塩化カルシウムを含む固体分)のみを捕集して、重金属の塩化物を含む排ガスを通過させるためのサイクロンとを組み合わせてなる塩化水素処理手段を用いる方法や、(b)CaO源のスラリーと排ガスとの反応、及び該反応で生成する粗粒分(塩化カルシウムを含む固体分)の回収を、単一の装置で行なうことのできる半乾式スラリー噴霧装置を用いる方法等が、挙げられる。
【0020】
なお、上記(a)の方法において、CaO源のスラリーは、反応塔のみならず、サイクロンにおいても添加することができる。
また、上記(a)の方法で用いられるサイクロンにおける捕集可能な粒子の最小粒径は、好ましくは3〜20μm、より好ましくは5〜10μmである。該最小粒径が3μm未満では、細粒分である重金属の塩化物までがサイクロンで捕集されてしまい、重金属を分別して回収することが困難になる。該最小粒径が20μmを超えると、排ガス中の塩化水素と反応して生成した塩化カルシウムや土壌成分の相当量が、細粒分である重金属の塩化物と共に、排ガスとして工程(D)に搬送されてしまい、後述する工程(D)におけるバグフィルタ等の集塵機における捕集量が過大になるばかりでなく、セメント原料等として用い得る工程(A)の焼成物の量が減少してしまう。
なお、捕集可能な粒子の最小粒径が小さくなるほど、サイクロンの径が小さくなって、処理可能な排ガス量は少なくなる。しかし、この場合でも、排ガス量に応じて複数のサイクロンを並列に配設すれば、多量の排ガスを処理することができる。
【0021】
[工程(C)]
工程(B)で得られた塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分)は、上述の通り、通常、未反応のCaO源(例えば、消石灰)を含む凝集物であり、工程(A)における塩素含有物質の少なくとも一部として、循環して使用される。その際、塩化カルシウムを含む固体分は、焼成炉またはそれよりも原料供給側の領域(例えば、重金属を含む土壌と、塩素含有物質とを混合するための混合槽)に供給される。それによって、系外から供給すべき新たな塩素含有物質(例えば、化学薬剤である塩化カルシウム)の供給量を削減し、薬剤費を節約することができる。
また、工程(A)に供給される塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分)に含まれる未反応の消石灰は、工程(A)における加熱処理の際に、塩化水素の発生量を抑制することができるとともに、カルシウム分を含むため、焼成物中のカルシウムの含有率を高めて、セメント原料としての品質を高めることができる。
【0022】
[工程(D)]
工程(B)で得られた重金属の塩化物(細粒分;塩化物フューム)を含む排ガスは、バグフィルタ等の集塵手段によって処理され、細粒分を含まない浄化されたガスとして系外に排出される。一方、集塵手段によって捕集された重金属の塩化物(細粒分)は、安定化処理を施した後、処分される。なお、捕集された重金属の塩化物は、精錬原料等として用いることもできる。
なお、塩化水素処理手段(例えば、反応塔とサイクロンとを組み合わせてなるものや、半乾式スラリー噴霧装置等)から排出される排ガスを集塵手段で処理する前に、排ガスに消石灰等のCaO源を添加して、排ガス中に残存する塩化水素を更に処理することもできる。ここで処理される塩化水素の量は、塩化水素処理手段で処理される量と比べて少量であるため、塩化カルシウムを含む粗粒分の生成量が少なく、それゆえ、バグフィルタ等の集塵手段における捕集量を過度に増大させて、安定化処理の負担を大きくすることはない。
【0023】
次に、図面に基づいて、本発明の重金属を含む土壌の処理システムの一例を説明する。図1は、本発明の重金属を含む土壌の処理システムの一例を示す図、図2は、本発明の処理システムで用いられる半乾式スラリー噴霧装置の一例を模式的に示す断面図である。
図1中、重金属を含む土壌1と、塩化カルシウム(塩素含有物質)2は、各々、土壌貯留槽3、薬剤貯留槽4から混合槽5内に供給され、撹拌混合されて混合物6となった後、供給ホッパ7からロータリーキルン8内に投入される。混合物6は、ロータリーキルン8内で所定の温度にて加熱され、一部が、重金属の除去された焼成物9となり、残部が、重金属の塩化物等を含む排ガス10となる。
このうち、焼成物9は、ロータリーキルン8からクーラ11内に供給されて冷却された後、セメント原料等として使用される。
【0024】
一方、排ガス10は、反応塔12に導かれる。反応塔12の内部では、薬剤貯留槽13から供給される消石灰スラリー14が噴霧されている。この消石灰スラリー14と、排ガス10中の塩化水素とが反応して、塩化カルシウムと未反応の消石灰とからなる凝集物(粗粒分)が生成する。この凝集物は、排ガス中に含まれた状態で、反応塔12からサイクロン15に供給される。
サイクロン15では、反応塔12から流入した排ガスに含まれる物質のうち、凝集物(粗粒分)が捕集される。捕集された凝集物16は、管路(塩素分供給路)17を介して混合槽5に供給され、混合槽5内にて、重金属を含む土壌1及び塩化カルシウム2と共に撹拌混合された後、ロータリーキルン8へと導かれ、以後、上述と同様の循環を繰り返すことになる。
なお、図1中、点線で囲った部分は、反応塔12、サイクロン15及び薬剤貯留槽13を含む塩化水素処理手段18を表す。
【0025】
サイクロン15を通過した排ガス10は、バグフィルタ19に導かれ、細粒分である重金属の塩化物20が捕集される。なお、必要に応じて、サイクロン15からバグフィルタ19までの管路の途中に、薬剤貯留槽21を配置させ、この薬剤貯留槽21から管路内に消石灰22を供給して、排ガス中に残存する塩化水素の処理を行なってもよい。
バグフィルタ19で処理された後の排ガス10は、必要に応じて更なる浄化処理を行なった後、煙突23から排出される。一方、バグフィルタ19で捕集された重金属の塩化物を含む固体分(細粒分)は、安定化処理を行なった後、処分される。
【0026】
本発明においては、図1に示す反応塔12等からなる塩化水素処理手段18(点線で囲った部分)に代えて、例えば、図2に示す半乾式スラリー噴霧装置30を用いることもできる。
図2中、消石灰スラリー31は、ガス温度を調節するための水と共に、スラリー供給口32から半乾式スラリー噴霧装置30内に供給され、特殊アトマイザ33によって装置30内に噴霧される。一方、ロータリーキルンからの排ガス34は、排ガス供給口35から半乾式スラリー噴霧装置30内に導かれる。そして、装置30内にて、排ガス34中の塩化水素と、噴霧された消石灰スラリー31とが反応して、塩化カルシウム及び未反応の消石灰を含む凝集物(粗粒分)36が生じる。この凝集物(粗粒分)36は、塩素分供給路37(図中、一部のみを示す。)を介して混合槽(図示せず。)に導かれる。一方、半乾式スラリー噴霧装置30内での反応後の排ガス38は、管路39(図中、一部のみを示す。)を介してバグフィルタ(図示せず。)へと導かれる。
【0027】
【発明の効果】
本発明の処理方法及び処理システムによれば、重金属で汚染された土壌から重金属を塩化揮発法によって分離し回収するに際し、塩化カルシウムの如き塩素含有物質を系内で循環して使用するので、重金属の塩化揮発に用いられる化学薬剤(例えば、塩化カルシウム)の使用量を大幅に削減することができる。
また、本発明によれば、塩化揮発法によって生じる重金属の塩化物を、塩化水素の処理で生じる塩化カルシウム等からなる粗粒分と分離した状態で、集塵機にて細粒分として回収するので、未反応のCaO源を含む粗粒分と共に重金属の塩化物を回収する場合と比べて、安定化処理の必要な重金属を含む物質の量を大幅に削減することができる。
さらに、塩化水素の処理及びその反応生成物(粗粒分)の回収が、CaO源を添加するための反応塔と、その後流側に配設される粗粒分の捕集用のサイクロンとの組み合わせの如き特定の手段によって行なわれるので、塩化水素の処理を効率的に行なうことができるとともに、消石灰の如きCaO源の使用量を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重金属を含む土壌の処理システムの一例を示す図である。
【図2】本発明の処理システムで用いられる半乾式スラリー噴霧装置の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 重金属を含む土壌
2 塩化カルシウム(塩素含有物質)
3 土壌貯留槽
4 薬剤貯留槽
5 混合槽
6 混合物
7 供給ホッパ
8 ロータリーキルン(焼成炉)
9 焼成物
10 排ガス
11 クーラ
12 反応塔
13 薬剤貯留槽
14 消石灰スラリー
15 サイクロン
16 塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分;凝集物)
17 管路(塩素分供給路)
18 塩化水素処理手段
19 バグフィルタ
20 重金属の塩化物(細粒分)
21 薬剤貯留槽
22 消石灰
23 煙突
30 半乾式スラリー噴霧装置
31 消石灰スラリー
32 スラリー供給口
33 特殊アトマイザ
34 排ガス
35 排ガス供給口
36 塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分;凝集物)
37 管路(塩素分供給路)
38 排ガス
39 管路
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉛等の重金属で汚染された土壌から重金属を除去するための処理方法及び処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、有害な重金属で汚染された土壌から、重金属を分離するための種々の方法が知られている。例えば、物理的な分離方法として、▲1▼洗浄分級法、▲2▼磁力による選別方法、▲3▼比重による選別方法、▲4▼浮遊選鉱等が知られている。
これらの物理的な方法は、処理対象となる土壌の種類に制限があり、例えば、シルト質や粘土分等の微細粒子を多く含むものに対して、重金属の十分な分離を行なうことができないという問題がある。
【0003】
そのため、重金属で汚染された土壌に、塩素分を含む物質を配合して混合物を得た後、該混合物を高温で加熱して、土壌中の重金属を塩化物として揮発させて分離回収する技術(本明細書中において「塩化揮発法」ともいう。)が提案されている。
例えば、重金属含有廃棄物(例えば、重金属汚染土壌)に対して塩素含有廃棄物を混合後の塩素含有量が少なくとも2重量%となるように配合して得た混合物を、750℃以上の温度で高熱処理することにより廃棄物中の重金属分を塩化揮発させると共に、残留重金属分を不溶安定化することを特徴とする重金属含有廃棄物の処理方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−182983号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の塩化揮発法を用いて土壌に対し重金属の除去処理を施す場合には、塩素分を含む物質が多量に必要である。特に、塩素分を含む物質として、塩化カルシウム等の化学薬剤を用いると、薬剤費が加わることで処理費用が増大することになる。
また、塩化揮発法を用いた場合、加熱処理後の排ガス中には、揮発した重金属の塩化物の他に、塩化水素が含まれている。この塩化水素の除去処理方法として、例えば、加熱処理後の塩化水素及び重金属の塩化物を含む排ガスに対し、塩化水素の3〜4倍当量の消石灰を添加した後、生成した塩化カルシウムと、未反応の消石灰と、重金属の塩化物とを含むダストを、バグフィルタの如き集塵機で捕集し回収する方法が挙げられる。しかし、この方法では、重金属の塩化物のみを集塵機で捕集し回収する場合と比べて、多量の特別管理廃棄物を生み出すことになり、この特別管理廃棄物の安定化処理の負担が多大なものとなる。特に、ダスト中に未反応の消石灰を多く含む場合には、処理の効率が悪く、不経済であるばかりか、有害な重金属である鉛が溶出し易いため、安定化処理に多大の労力及び多額の費用を必要とする。
【0006】
そこで、本発明は、重金属で汚染された土壌から重金属を塩化揮発法によって分離し回収するに際し、重金属の塩化揮発や塩化水素の処理に用いられる化学薬剤の使用量を大幅に削減することができるとともに、塩化水素の処理で生じる塩化カルシウム等からなる粗粒分を含むことなく、重金属の塩化物を含む細粒分を分別して回収し、安定化処理等の負担を軽減することのできるような処理方法及び処理システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、塩化揮発法によって生成する重金属の塩化物及び塩化水素を含む排ガスを、特定の手段を用いて処理すれば、上記課題を達成することができることに想到し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明(請求項1)の重金属を含む土壌の処理方法は、(A)鉛の如き重金属を含む土壌と、塩化カルシウムの如き塩素含有物質とを、重金属が塩化揮発し得る温度で加熱して、重金属が除去された焼成物と、塩化水素及び重金属の塩化物を含む排ガスとを得る焼成工程と、(B)前記排ガスに消石灰の如きCaO源を添加して反応させ、次いで、該反応によって生じる塩化カルシウムを含む固体分と、重金属の塩化物を含む排ガスとを分別して得る塩化水素除去工程と、(C)前記塩化カルシウムを含む固体分を、前記工程(A)の前記塩素含有物質の少なくとも一部として用いる塩素分循環工程と、(D)前記工程(B)で得られた前記排ガスから、前記重金属の塩化物を回収する重金属回収工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の方法によれば、工程(B)で得られる塩化カルシウムを含む固体分(通常、消石灰の如き未反応のCaO源をも含む粗粒分)を、工程(A)の塩素源(塩素含有物質)として用いているので、新たに系外から供給すべき塩素含有物質の量を大幅に削減することができる。また、工程(B)において、重金属を含む塩化物(細粒分)を排ガス中に存在させたままの状態で、塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分)を排ガスから捕集しているので、後工程のバグフィルタ等で捕集される重金属の塩化物を含む固体分の量を少なくすることができ、当該重金属の塩化物を含む固体分の安定化処理の負担を軽減することができる。
【0010】
前記工程(B)で用いられる前記CaO源として、例えば、消石灰、炭酸カルシウム及び生石灰からなる群より選ばれる一種以上を用いることができる(請求項2)。
前記工程(B)において、前記CaO源は、好ましくは、スラリーとして噴霧される(請求項3)。
【0011】
本発明(請求項4)の重金属を含む土壌の処理システムは、(a)鉛の如き重金属を含む土壌と、塩化カルシウムの如き塩素含有物質とを加熱して、重金属が除去された焼成物と、塩化水素及び重金属の塩化物を含む排ガスとを得るための焼成炉と、(b)前記排ガスに消石灰の如きCaO源を添加するための手段(例えば、消石灰スラリーを噴霧する反応塔)、及び該CaO源の添加によって生成する塩化カルシウムを含む固体分と、重金属の塩化物を含む排ガスとを分別して得るための手段(例えば、サイクロン)を有する塩化水素除去手段と、(c)前記塩化水素除去手段(b)で得られる前記塩化カルシウムを含む固体分を、前記焼成炉(a)またはそれよりも原料供給側の領域(例えば、焼成炉に投入する前の混合槽)に供給するための塩素分供給路と、(d)前記塩化水素除去手段(b)で得られる前記排ガスから、前記重金属の塩化物を回収するための集塵機(例えば、バグフィルタ)とを含むことを特徴とする。
【0012】
前記塩化水素除去手段(b)の一例としては、前記CaO源を添加するための反応塔と、該反応塔の後流側に配設される、前記塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分)を捕集するためのサイクロンとを組み合わせてなるものが挙げられる(請求項5)。
前記塩化水素除去手段(b)の他の例としては、半乾式スラリー噴霧装置が挙げられる(請求項6)。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の重金属を含む土壌の処理方法は、(A)重金属を含む土壌と、塩素含有物質とを、ロータリーキルンの如き焼成炉内において、重金属が塩化揮発し得る温度で加熱して、焼成物と排ガスとを得る工程と、(B)工程(A)で得られた排ガスにCaO源を添加して反応させ、次いで、該反応によって生じる塩化カルシウムを含む固体分と、排ガスとを分別して得る工程と、(C)工程(B)で得られた塩化カルシウムを含む固体分を、工程(A)の塩素含有物質の少なくとも一部として用いる工程と、(D)工程(B)で得られた排ガスから重金属の塩化物を回収する工程とを含むものである。
【0014】
[工程(A)]
工程(A)では、まず、重金属を含む土壌と、塩素含有物質とを混合する。
ここで、重金属を含む土壌としては、例えば、工場の跡地の土壌や、廃棄物処理場の周辺の土壌等が挙げられる。
重金属としては、例えば、鉛、亜鉛、銅等が挙げられる。
塩素含有物質としては、塩素を含有するものであれば任意であるが、通常、塩化カルシウムや塩化マグネシウムの如きアルカリ土類金属の塩化物等の化学薬剤や、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素含有合成樹脂(特に、廃プラスチック)等が用いられる。また、塩素含有合成樹脂の廃棄物等を焼却して得られる塩素含有率の高い焼却飛灰や溶融飛灰等を、本発明の塩素含有物質として用いることもできる。
【0015】
上述の塩素含有物質の中でも、塩化カルシウムは、本工程(A)で得られる焼成物をセメント原料として用いる際にその品質を高めることのできるカルシウム分と、重金属の塩化揮発を生じさせるのに必要な塩素分とからなるので、本発明において好適に用いられる。
塩素含有物質の添加量は、土壌中の塩化揮発法の対象となる重金属(例えば、Pb等)の量に応じて適宜定めればよい。
重金属を含む土壌と、塩素含有物質との混合は、混合槽で行なってもよいし、あるいはロータリーキルンの如き混合機能を有する焼成炉内で行なってもよい。
ただし、これらの材料を十分に混合して均一な混合物を得るためには、焼成手段と独立して設けた混合槽を用いることが望ましい。
【0016】
重金属を含む土壌と塩素含有物質との混合物を、重金属の塩化揮発が生じ得る温度で加熱するための加熱手段(焼成炉)としては、例えば、ロータリーキルン(内熱式または外熱式)、竪型焼成炉、電気炉等が挙げられる。中でも、ロータリーキルンは、温度調整等が容易で、かつ連続的に焼成することができる等の点で、好ましく用いられる。
焼成炉内の温度は、重金属の塩化揮発が生じ得る温度であればよく、例えば、800〜1,400℃である。
重金属(例えば、鉛)を含む土壌と塩素含有物質(例えば、塩化カルシウム)との混合物を焼成炉内で加熱すると、土壌中の重金属と塩素含有物質中の塩素とが、塩化物(塩化鉛)として揮発するとともに、塩化水素が副生成物として生成する。これら重金属の塩化物及び塩化水素は、排ガス中に存在する物質として、焼成炉から排出される。なお、塩化水素は、例えば、焼成炉の燃料である重油等に由来する水分と、塩素含有物質中の塩素等が反応して生成するものである。
なお、焼成炉内における化学反応は、例えば、次のとおりである。
PbO+CaCl2+SiO2 → CaSiO3+PbCl2↑
CaCl2+SiO2+H2O → CaSiO3+2HCl↑
一方、土壌と塩素含有物質との混合物の加熱処理後の残渣である焼成物は、重金属が除去され、かつ珪酸分やカルシウム分等を含むものであり、セメント原料等として好適に用いることができる。
【0017】
[工程(B)]
工程(B)では、まず、焼成炉から排出された排ガスにCaO源を添加する。
ここで、CaO源としては、例えば、消石灰、炭酸カルシウム、生石灰等が挙げられる。
排ガスにCaO源を添加する際の温度は、好ましくは120〜200℃である。該温度が120℃以上であると、後述のCaO源を含むスラリーの突沸による蒸発を生じさせて、大きな有効接触面積を有するポーラス状の捕集し易い粒子を形成することができる。また、該温度が200℃以下であると、CaO源による塩化水素の中和反応を良好に進行させることができ、かつ、ダイオキシンの再合成を抑制することができる。
【0018】
CaO源を添加する際の形態は、スラリーと乾式のいずれでもよいが、スラリーとするのが好ましい。スラリーが好ましい理由は、次の通りである。
CaO源(例えば、消石灰)をスラリーとして添加すると、このスラリーは、まず、添加時に排ガス中の塩化水素等の酸性ガスと気液接触反応(中和反応)を起こした後、排ガスの持つ熱によって瞬間的に乾燥し、塩化水素等の酸性ガスと固気接触反応(中和反応)を起こすこととなる。この際、スラリー中の水分は、突沸して蒸発する。そのため、スラリーに含まれていたCaO源は、ポーラス状の粒子を形成し、大きな有効接触面積を有するものとなる。さらに、スラリーの添加による中和反応によって生成した塩化カルシウムがバインダーとなって、ポーラス状の粒子(CaO源)が凝集するため、ポーラス状の粒子(CaO源)の見掛けの粒径が増大し、サイクロン等の捕集手段で粗粒分として捕集され易くなる。つまり、塩化カルシウム等を含む固体分(粗粒分)を、重金属の塩化物からなる細粒分と容易に分別し回収することができる。
【0019】
本発明においては、消石灰等のCaO源を添加して上述の反応を生じさせた後、塩化カルシウムを含む固体分(凝集体である粗粒分)と、重金属の塩化物(0.1μm〜数μmの粒径を有する細粒分)を含む排ガスとを分別して得る。
分別するための方法としては、(a)消石灰の如きCaO源のスラリーを噴霧して、塩化水素を含む排ガスと反応させるための反応塔と、反応塔から排出された排ガス中の粗粒分(塩化カルシウムを含む固体分)のみを捕集して、重金属の塩化物を含む排ガスを通過させるためのサイクロンとを組み合わせてなる塩化水素処理手段を用いる方法や、(b)CaO源のスラリーと排ガスとの反応、及び該反応で生成する粗粒分(塩化カルシウムを含む固体分)の回収を、単一の装置で行なうことのできる半乾式スラリー噴霧装置を用いる方法等が、挙げられる。
【0020】
なお、上記(a)の方法において、CaO源のスラリーは、反応塔のみならず、サイクロンにおいても添加することができる。
また、上記(a)の方法で用いられるサイクロンにおける捕集可能な粒子の最小粒径は、好ましくは3〜20μm、より好ましくは5〜10μmである。該最小粒径が3μm未満では、細粒分である重金属の塩化物までがサイクロンで捕集されてしまい、重金属を分別して回収することが困難になる。該最小粒径が20μmを超えると、排ガス中の塩化水素と反応して生成した塩化カルシウムや土壌成分の相当量が、細粒分である重金属の塩化物と共に、排ガスとして工程(D)に搬送されてしまい、後述する工程(D)におけるバグフィルタ等の集塵機における捕集量が過大になるばかりでなく、セメント原料等として用い得る工程(A)の焼成物の量が減少してしまう。
なお、捕集可能な粒子の最小粒径が小さくなるほど、サイクロンの径が小さくなって、処理可能な排ガス量は少なくなる。しかし、この場合でも、排ガス量に応じて複数のサイクロンを並列に配設すれば、多量の排ガスを処理することができる。
【0021】
[工程(C)]
工程(B)で得られた塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分)は、上述の通り、通常、未反応のCaO源(例えば、消石灰)を含む凝集物であり、工程(A)における塩素含有物質の少なくとも一部として、循環して使用される。その際、塩化カルシウムを含む固体分は、焼成炉またはそれよりも原料供給側の領域(例えば、重金属を含む土壌と、塩素含有物質とを混合するための混合槽)に供給される。それによって、系外から供給すべき新たな塩素含有物質(例えば、化学薬剤である塩化カルシウム)の供給量を削減し、薬剤費を節約することができる。
また、工程(A)に供給される塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分)に含まれる未反応の消石灰は、工程(A)における加熱処理の際に、塩化水素の発生量を抑制することができるとともに、カルシウム分を含むため、焼成物中のカルシウムの含有率を高めて、セメント原料としての品質を高めることができる。
【0022】
[工程(D)]
工程(B)で得られた重金属の塩化物(細粒分;塩化物フューム)を含む排ガスは、バグフィルタ等の集塵手段によって処理され、細粒分を含まない浄化されたガスとして系外に排出される。一方、集塵手段によって捕集された重金属の塩化物(細粒分)は、安定化処理を施した後、処分される。なお、捕集された重金属の塩化物は、精錬原料等として用いることもできる。
なお、塩化水素処理手段(例えば、反応塔とサイクロンとを組み合わせてなるものや、半乾式スラリー噴霧装置等)から排出される排ガスを集塵手段で処理する前に、排ガスに消石灰等のCaO源を添加して、排ガス中に残存する塩化水素を更に処理することもできる。ここで処理される塩化水素の量は、塩化水素処理手段で処理される量と比べて少量であるため、塩化カルシウムを含む粗粒分の生成量が少なく、それゆえ、バグフィルタ等の集塵手段における捕集量を過度に増大させて、安定化処理の負担を大きくすることはない。
【0023】
次に、図面に基づいて、本発明の重金属を含む土壌の処理システムの一例を説明する。図1は、本発明の重金属を含む土壌の処理システムの一例を示す図、図2は、本発明の処理システムで用いられる半乾式スラリー噴霧装置の一例を模式的に示す断面図である。
図1中、重金属を含む土壌1と、塩化カルシウム(塩素含有物質)2は、各々、土壌貯留槽3、薬剤貯留槽4から混合槽5内に供給され、撹拌混合されて混合物6となった後、供給ホッパ7からロータリーキルン8内に投入される。混合物6は、ロータリーキルン8内で所定の温度にて加熱され、一部が、重金属の除去された焼成物9となり、残部が、重金属の塩化物等を含む排ガス10となる。
このうち、焼成物9は、ロータリーキルン8からクーラ11内に供給されて冷却された後、セメント原料等として使用される。
【0024】
一方、排ガス10は、反応塔12に導かれる。反応塔12の内部では、薬剤貯留槽13から供給される消石灰スラリー14が噴霧されている。この消石灰スラリー14と、排ガス10中の塩化水素とが反応して、塩化カルシウムと未反応の消石灰とからなる凝集物(粗粒分)が生成する。この凝集物は、排ガス中に含まれた状態で、反応塔12からサイクロン15に供給される。
サイクロン15では、反応塔12から流入した排ガスに含まれる物質のうち、凝集物(粗粒分)が捕集される。捕集された凝集物16は、管路(塩素分供給路)17を介して混合槽5に供給され、混合槽5内にて、重金属を含む土壌1及び塩化カルシウム2と共に撹拌混合された後、ロータリーキルン8へと導かれ、以後、上述と同様の循環を繰り返すことになる。
なお、図1中、点線で囲った部分は、反応塔12、サイクロン15及び薬剤貯留槽13を含む塩化水素処理手段18を表す。
【0025】
サイクロン15を通過した排ガス10は、バグフィルタ19に導かれ、細粒分である重金属の塩化物20が捕集される。なお、必要に応じて、サイクロン15からバグフィルタ19までの管路の途中に、薬剤貯留槽21を配置させ、この薬剤貯留槽21から管路内に消石灰22を供給して、排ガス中に残存する塩化水素の処理を行なってもよい。
バグフィルタ19で処理された後の排ガス10は、必要に応じて更なる浄化処理を行なった後、煙突23から排出される。一方、バグフィルタ19で捕集された重金属の塩化物を含む固体分(細粒分)は、安定化処理を行なった後、処分される。
【0026】
本発明においては、図1に示す反応塔12等からなる塩化水素処理手段18(点線で囲った部分)に代えて、例えば、図2に示す半乾式スラリー噴霧装置30を用いることもできる。
図2中、消石灰スラリー31は、ガス温度を調節するための水と共に、スラリー供給口32から半乾式スラリー噴霧装置30内に供給され、特殊アトマイザ33によって装置30内に噴霧される。一方、ロータリーキルンからの排ガス34は、排ガス供給口35から半乾式スラリー噴霧装置30内に導かれる。そして、装置30内にて、排ガス34中の塩化水素と、噴霧された消石灰スラリー31とが反応して、塩化カルシウム及び未反応の消石灰を含む凝集物(粗粒分)36が生じる。この凝集物(粗粒分)36は、塩素分供給路37(図中、一部のみを示す。)を介して混合槽(図示せず。)に導かれる。一方、半乾式スラリー噴霧装置30内での反応後の排ガス38は、管路39(図中、一部のみを示す。)を介してバグフィルタ(図示せず。)へと導かれる。
【0027】
【発明の効果】
本発明の処理方法及び処理システムによれば、重金属で汚染された土壌から重金属を塩化揮発法によって分離し回収するに際し、塩化カルシウムの如き塩素含有物質を系内で循環して使用するので、重金属の塩化揮発に用いられる化学薬剤(例えば、塩化カルシウム)の使用量を大幅に削減することができる。
また、本発明によれば、塩化揮発法によって生じる重金属の塩化物を、塩化水素の処理で生じる塩化カルシウム等からなる粗粒分と分離した状態で、集塵機にて細粒分として回収するので、未反応のCaO源を含む粗粒分と共に重金属の塩化物を回収する場合と比べて、安定化処理の必要な重金属を含む物質の量を大幅に削減することができる。
さらに、塩化水素の処理及びその反応生成物(粗粒分)の回収が、CaO源を添加するための反応塔と、その後流側に配設される粗粒分の捕集用のサイクロンとの組み合わせの如き特定の手段によって行なわれるので、塩化水素の処理を効率的に行なうことができるとともに、消石灰の如きCaO源の使用量を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重金属を含む土壌の処理システムの一例を示す図である。
【図2】本発明の処理システムで用いられる半乾式スラリー噴霧装置の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 重金属を含む土壌
2 塩化カルシウム(塩素含有物質)
3 土壌貯留槽
4 薬剤貯留槽
5 混合槽
6 混合物
7 供給ホッパ
8 ロータリーキルン(焼成炉)
9 焼成物
10 排ガス
11 クーラ
12 反応塔
13 薬剤貯留槽
14 消石灰スラリー
15 サイクロン
16 塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分;凝集物)
17 管路(塩素分供給路)
18 塩化水素処理手段
19 バグフィルタ
20 重金属の塩化物(細粒分)
21 薬剤貯留槽
22 消石灰
23 煙突
30 半乾式スラリー噴霧装置
31 消石灰スラリー
32 スラリー供給口
33 特殊アトマイザ
34 排ガス
35 排ガス供給口
36 塩化カルシウムを含む固体分(粗粒分;凝集物)
37 管路(塩素分供給路)
38 排ガス
39 管路
Claims (6)
- (A)重金属を含む土壌と、塩素含有物質とを重金属が塩化揮発し得る温度で加熱して、重金属が除去された焼成物と、塩化水素及び重金属の塩化物を含む排ガスとを得る焼成工程と、
(B)前記排ガスにCaO源を添加して反応させ、次いで、該反応によって生じる塩化カルシウムを含む固体分と、重金属の塩化物を含む排ガスとを分別して得る塩化水素除去工程と、
(C)前記工程(B)で得られた塩化カルシウムを含む固体分を、前記工程(A)の前記塩素含有物質の少なくとも一部として用いる塩素分循環工程と、
(D)前記工程(B)で得られた前記排ガスから、前記重金属の塩化物を回収する重金属回収工程と
を含むことを特徴とする重金属を含む土壌の処理方法。 - 前記工程(B)における前記CaO源として、消石灰、炭酸カルシウム及び生石灰からなる群より選ばれる一種以上を用いる請求項1に記載の重金属を含む土壌の処理方法。
- 前記工程(B)において、前記CaO源をスラリーとして噴霧する請求項1又は2に記載の重金属を含む土壌の処理方法。
- (a)重金属を含む土壌と、塩素含有物質とを加熱して、重金属が除去された焼成物と、塩化水素及び重金属の塩化物を含む排ガスとを得るための焼成炉と、
(b)前記排ガスにCaO源を添加するための手段、及び該CaO源の添加によって生成する塩化カルシウムを含む固体分と、重金属の塩化物を含む排ガスとを分別して得るための手段を有する塩化水素除去手段と、
(c)前記塩化水素除去手段(b)で得られる前記塩化カルシウムを含む固体分を、前記焼成炉(a)またはそれよりも原料供給側の領域に供給するための塩素分供給路と、
(d)前記塩化水素除去手段(b)で得られる前記排ガスから、前記重金属の塩化物を回収するための集塵機と
を含むことを特徴とする重金属を含む土壌の処理システム。 - 前記塩化水素除去手段(b)が、前記CaO源を添加するための反応塔と、該反応塔の後流側に配設される、前記塩化カルシウムを含む固体分を捕集するためのサイクロンとを組み合わせてなる請求項4に記載の重金属を含む土壌の処理システム。
- 前記塩化水素除去手段(b)が、半乾式スラリー噴霧装置である請求項4に記載の重金属を含む土壌の処理システム。
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Cited By (1)
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JP2007029813A (ja) * | 2005-07-25 | 2007-02-08 | Kobelco Eco-Solutions Co Ltd | 複合重金属汚染土壌の無害化処理方法および無害化処理装置 |
-
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JP4567544B2 (ja) * | 2005-07-25 | 2010-10-20 | 株式会社神鋼環境ソリューション | 複合重金属汚染土壌の無害化処理方法および無害化処理装置 |
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