JP2004290333A - 人工骨又は人工歯根インプラントおよび人工歯根フィクスチャー - Google Patents

人工骨又は人工歯根インプラントおよび人工歯根フィクスチャー Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は人工骨及び人工歯根インプラントで生体内あるいは顎骨に埋入する場合に、その生体適合性と定着を迅速化させることにある。
【解決手段】インプラントを構成する金属表面に生体内への金属の溶出防止と共に生体適合性を良好なものとするため、結晶化した化学量論的ハイドロキシアパタイトをレーザーアブレーションにより下層としてコーティングを行い、この上に引き続き連続して定着と骨誘導を迅速化するための天然骨又は天然歯をそのまま、あるいはこれらと類似の組成のイオン置換型ハイドロキシアパタイトを上層としてコーティングを行う。上層のコーティング層と類似組成のコーティングでは同組成でかつ安定な結晶体よりなるターゲットを作製し、これをレーザーアブレーションにより的確に転写する。インプラントへのコーティングでは真空成膜チャンバー21内に下層、上層それぞれのターゲットを並置し、レーザーをターゲットに順次照射して連続的に行い効率的に実施する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は人工骨及び人工歯根インプラントを生体内又は顎骨に埋入した後の定着を早期化すると共にインプラント構成基体金属の生体内への溶出を防止することを目的とした人工骨及び人工歯根インプラント及びフィクスチャーに関する。
【0002】
【従来の技術】
人工骨及び人工歯根インプラントにおいてはその構成材料として生体適合性のよいチタン、又はその合金材を用いている。そして該構成基体金属の表面にバイオガラス、あるいはハイドロキシアパタイトをコーティングした人工骨、人口歯根は、生体内又は顎骨に埋入した場合、更に適合性がよくなることは例えば特許文献1に開示されている。又、コーティングされたハイドロキシアパタイトの組成として化学量論的組成のものより天然骨に近い組成成分とすることが例えば特許文献2に開示されている。さらに特許文献3においては、インプラント表面にリン酸カルシウム系化合物を被覆した後、該被覆層を溶液中に浸漬、密封、加熱による水熱処理によりアパタイト系セラミックス層を形成し、この表層にリン酸カルシウム化合物を形成して複合インプラントとしている。
【0003】
上記構成材料表面へのハイドロキシアパタイトのコーティング方法としては、化学蒸着法、物理蒸着法の気相法、液相法、あるいは固相法等種々の方法で実施されている。
上記各種コーティング方法で、特にプラズマ溶射法によるとハイドロキシアパタイトの膜厚は5〜100μm程度となり、従来この膜厚にコーティングされたものが利用されている。
【0004】
【特許文献1】
実公平5−34646号公報
【特許文献2】
特許第2987758号公報
【特許文献3】
特許第307637号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
人工歯根のインプラント構成材料の顎骨への埋入部はフィクスチャーと呼ばれ、人工骨と同様に主としてチタン、あるいはその合金等の金属材料よりなる。人工骨及び人工歯根インプラントを生体内又は顎骨に埋入した後、細胞あるいは骨の誘導と結合を良くするため、あるいはその表面にハイドロキシアパタイトをコーティングする場合にはこのコーティング膜との密着を良くするため、構成材料である基体金属表面をサンドブラスト法、エッチング法等によりその表面積の拡大を行っている。しかし、ハイドロキシアパタイトをコーティングする場合、ハイドロキシアパタイト膜の膜厚が厚くなると基体金属表面にこのような処理を施しても、ハイドロキシアパタイト膜との密着強度は低下し剥離し易くなる。従ってハイドロキシアパタイトをコーティングする場合は、コーティング膜は緻密なものとし膜厚は薄く密着強度が出来るだけ高いものとすることが望ましい。
【0006】
人工骨又は人工歯根インプラントが体内又は顎骨に埋入された場合、異物の体内埋入に対して生体は埋入部周辺生体内のマイクロファージ、及び異物検知細胞により検知活動が開始される。この場合、ハイドロキシアパタイト、あるいはインプラントの構成基体材料表面にハイドロキシアパタイトがコーティングされている場合、これらが骨の組織組成に近いため異物検知細胞は生体組織として判定し、細胞及び骨の誘導と結合が早期に進行する。この場合コーティングされたハイドロキシアパタイト組成が天然骨組成、あるいは天然歯組成、あるいはこれらにより近くNa、K、Mg2+、Cl、F、CO 2− 等のイオンがハイドロキシアパタイトコーティング膜中に含有置換されていると、生体中への適合性と定着が早くなる。従ってコーティングされるハイドロキシアパタイトコーティング膜の組成はより生体に適合し易いものとすることが望ましい。
【0007】
一方、人工骨又は人工歯根インプラント表面にハイドロキシアパタイトをコーティングした場合、このハイドロキシアパタイト膜は生体内に埋入後、径時的に体内に溶出する。下層となる化学量論的ハイドロキシアパタイト組成のコーティング膜は生体内に溶出しがたいが、この溶出の程度はコーティング膜のコーティング方法、及びコーティング膜の構造、組成により大きく異なり、ハイドロキシアパタイトコーティング膜の体内への溶出はできるだけ抑止することが望ましい。特にコーティング膜の溶出によるインプラントの構成基体金属の生体内への溶出は避けなければならない。
【0008】
従来より実施されている方法によると、ハイドロキシアパタイトのコーティング膜の膜厚が厚く緻密性が劣るため、そのコーティング膜の基体金属材料への密着性が低く剥離し易い。また定着性をよくするため天然骨組織の組成を意識してのイオン置換型ハイドロキシアパタイトの場合も従来のコーティング膜の作製方法では、これらハイドロキシアパタイトコーティングした人工骨及び人工歯根インプラントの生体内への埋入後において径時的に埋入部周辺の生体内への溶解、溶出が速いものとなる。
【0009】
本発明においては人工骨又は人工歯根インプラントの生体内への埋入時、及び埋入後において、定着性がよくコーティングが剥離を起さず、かつ埋入後に径時的な埋入部周辺の生体内へ溶解、溶出を抑止したハイドロキシアパタイトコーティングの人工骨又は人工歯根インプラントを提供すること、インプラント表面に組成構造の異なるハイドロキシアパタイトのコーティング膜を連続して積層コーティングすること、更にコーティング膜を緻密かつ所望の組成としてレーザーアブレーションでコーティングするに適切なターゲットを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
望ましくは生体適合性のよいチタン及びその合金により構成される人工骨又は人工歯根インプラントの構成基体金属表面に組成構造の異なるハイドロキシアパタイトをレーザーアブレーション法により2層あるいは多層にコーティングする。上記構成基体金属に接する最下層のコーティング膜は化学量論的なハイドロキシアパタイトを組成のターゲットより500〜10000Å程度の膜厚にインサイチュ法、又はポストアニーリング法によるレーザーアブレーション法によりコーティングすることが望ましい。この場合ハイドロキシアパタイトコーティング膜はインサイチュ法の場合結晶軸がC軸方向に揃った緻密なコーティング膜となり、ポストアニーリング法の場合は結晶軸方向は不定であるが同じく多結晶の緻密なコーティング膜となる。さらにこれらコーティング膜を構成基体金属にさらに密着よくコーティングするには、レーザーアブレーションコーティングを初期において真空中で短時間実施し、プレコーティングすることにより構成基体金属表面に酸化物を生成することなくコーティングすることにより達成することができる。
【0011】
本発明においては、ハイドロキシアパタイトのコーティング膜を下層としてこの上に更にイオン置換型のハイドロキシアパタイトをコーティングすることにした。この下層となるコーティングはターゲットとして化学量論的なハイドロキシアパタイトCa10(PO10(OH)を圧縮成型したものを用い、これをレーザーアブレーションにより人工骨又は人工歯根インプラント構造基体金属表面にコーティングすることにより、コーティング膜をコーティング後に水熱処理することなく化学量論的組成のハイドロキシアパタイトの多結晶膜とすることができる。
【0012】
ここでこのコーティング初期において、真空中でハイドロキシアパタイトを前処理コーティングすると、人工骨又は人工歯根インプラント構造基体金属表面とハイドロキシアパタイトコーティング膜との間に酸化膜が形成されることがない。構造基体金属表面に酸化物層が形成されるとコーティング膜との密着性が悪くなる。コーティングに先立って前処理コーティングすることにより強固で緻密なハイドロキシアパタイト膜を形成することができる。
本発明においては、真空成膜チャンバー内に上層としてコーティングする組成のターゲットを並置し、上記のように下層として化学量論的組成のハイドロキシアパタイトのコーティング膜を形成し、この上に多層膜形成プログラムに従って順次天然骨、天然歯、あるいはこれらに類似の組成に調整したハイドロキシアパタイトをコーティングすることが望ましい。
【0013】
更に本発明においては、上記構成基体金属の表面に天然骨又は天然歯、あるいはそれらの粉砕焼成物をレーザーアブレーションにより単層でコーティングした人工骨又は人工歯根インプラントが提供される。
【0014】
天然骨又は天然歯の化学組成は化学量論的なハイドロキシアパタイトCaとP比が異なり、かつCa2+が他のNa、K、Mg2+等の他金属イオンとPOイオン基がCO 2− 等の陰イオンと、OH基がCO 2− 、Cl、F等の陰イオンにより一部置換された化学組成構造のものが主成分となり、さらにHその他の成分よりなっている。これら天然骨又は天然歯、あるいはこれらの類似組成のハイドロキシアパタイトをターゲットとしてレーザーアブレーション法でコーティングした上層のコーティング膜は置換型ハイドロキシアパタイトの多結晶膜となる。このコーティング膜の結晶粒界には結晶粒と組成の異なるその他の成分が含有されたバウンダリーが形成される。
【0015】
本発明においては、上層となるコーティング膜を置換型のハイドロキシアパタイトとして形成し、下層としてコーティングした化学量論的ハイドロキシアパタイト組成のコーティング膜に比べ天然骨あるいは天然歯と同組成、あるいは類似した組成のものとする。
これらは化学量論的組成のハイドロキシアパタイトコーティング膜に較べると生体内への溶出は大きくなるが、より天然骨あるいは天然歯に組成が近く生体適合性がよく、且つ下層のコーティング膜の生体内への溶出を抑止する。
一方、レーザーアブレーション法により上記ハイドロキシアパタイトをターゲットとしてコーティングすると、ターゲットの組成とコーティング膜の組成を同様のものとする転写性がよいことが特徴となる。更に天然骨又は天然歯組成に類似の組成とするためには、ターゲットの組成を天然骨、天然歯により類似のものとするための、補充成分をさらに上層に積層してコーティングする。また、補充イオンによってはコーティング後表層面よりハイドロキシアパタイトの吸着能を利用することにより補充を行なう。
【0016】
さらに、人工歯根インプラントにおけるフィクスチャーにおいては、フィクスチャーを顎骨に埋入した場合、そのフィクスチャーの上縁部は口腔に近く、埋入後定着までの間細菌感染を防ぐため上縁部表面のハイドロキシアパタイトのコーティング層の上にAg、TiO、Al等をレーザーアブレーションでコーティングするか、あるいはこれらのいずれかをハイドロキシアパタイトコーティング層中に混入し、周囲のハイドロキシアパタイトが溶出されるとこれらが露出し触媒作用により殺菌、除菌を行うようにしたものも作製した。
【0017】
【発明の実施の形態】
人工骨の1例としては図1の股関節用人工骨(1) 、人工歯根インプラント(11)は図2に示すような形状であり、人工骨(1) は表面にハイドロキシアパタイトコーティング(2) を有し、該人工骨(1) は全体を生体内に埋入され、一方人工歯根(11)ではその下端の顎骨への埋入部がフィクスチャー(13)として生体内に埋入される。図中(12)は天然歯である。上記人工骨(1) 、人工歯根インプラント(11)はチタン、チタン合金等の金属材を構成基体材料としている。この人工骨(1) 又は人工歯根フィクスチャー(13)表面にはハイドロキシアパタイトがコーティングされるが、コーティング下層となる化学量論的ハイドロキシアパタイトのコーティングにおいては構成基体金属材料表面に密着よく剥離の生じないようなコーティング膜とするため緻密な薄膜として500〜10000Å程度のものとし、ハイドロキシアパタイトのコーティング方法としてはレーザーアブレーション法によることにした。
【0018】
レーザーアブレーション法によりハイドロキシアパタイトをコーティングする方法としてインサイチュ法とポストアニーリング法とが考えられる。
純化学量論的ハイドロキシアパタイトの下地コーティングとしては人工骨(1) 又は人工歯根用インプラント(13)の構成基体金属の吸蔵ガスを除去し、かつ表面を浄化した後、図3に示すようにレーザーアブレーション成膜装置の真空成膜チャンバー(21)内で、上記構成基体金属をヒーター温度制御器(32)を備えたヒーター(24)上の取付回転台(23)に設置し、ターゲット(25)として化学量論的ハイドロキシアパタイト粉末を金型で加圧成型したものを上記構成基体金属に対向する位置に設置する。この状態で真空成膜チャンバー(21)内をロータリーポンプ及びターボ分子ポンプ(22)により所定の真空度まで排気する。
排気後上記構成基体金属をヒーター(24)により所定の温度に昇温する。次に該真空成膜チャンパー内にガス導入経路(26A) を介してガス導入ノズル(26)より水蒸気または水蒸気含有ガスを導入し、ArFエキシマレーザー(27)をミラー(28)、レンズ(29)、スリット(31)を介して真空成膜チャンバー(21)の窓(30)からターゲット(25)に照射し、ハイドロキシアパタイトの分解された原子、イオンクラスタを対向する上記構成基体金属を取付回転台(23)を介して回転させながら該表面にコーティングする。コーティング膜の膜厚は膜厚計(34)によって測定する。なおチャンバー(21)内の温度は温度計(33)によって測定する。
【0019】
上記水蒸気含有ガスとしては、例えば酸素ガス−水蒸気混合ガス、アルゴンガス−水蒸気混合ガス、ヘリウムガス−水蒸気混合ガス、窒素ガス−水蒸気混合ガス、空気−水蒸気混合ガス、過酸化水素−水蒸気混合ガス等が使用される。
【0020】
この場合、水蒸気または水蒸気含有ガスのガス圧を大きくすると、ハイドロキシアパタイトの分解成分は人工骨(1) 又は人工歯根用インプラント(13)の構成基体金属表面上に化学量論的ハイドロキシアパタイトとしてC軸方向にそろって結晶化して成長しながらコーティングが行われ、インサイチュ法では図4(b)に示すX線回折パターンとなる。水蒸気、または水蒸気含有ガスのガス圧を下げると、上記構成基体金属表面上には無定形の化学量論的ハイドロキシアパタイトが堆積し、インプラントを真空成膜チャンバーより取り出すことなく加熱することにより多結晶化したハイドロキシアパタイト膜がコーティングされポストアニーリング法てでは図4(c)に示すX線回折パターンとなる。
【0021】
上記いずれの方法においても、前記したようにコーティング膜厚を500〜10000Å程度に薄くコーティングすると、ハイドロキシアパタイトコーティング膜を、人工骨(1) 又は人工歯根用インプラント(13)を構成する基体金属表面に密着よく強固にコーティングすることができる。
しかし、上記コーティングの際、人工骨(1) 又は人工歯根インプラント(13)の構成基体金属表面とコーティング膜との界面には該構成基体金属の酸化物が形成される。コーティング膜と構成基体金属との密着強度をさらに上げるためには、界面における酸化物層の生成を防止することが好ましい。
【0022】
このために上記コーティングの実施前に真空成膜チャンパー(21)内を高真空1×10−7Torr程度に排気後、人工骨(1) 又は人工歯根インプラント(13)をヒーター(24)により所定の温度に昇温し、取付回転台(23)を介して該人工骨(1) 又は人工歯根用インプラント(13)の構成基体金属を回転させながら、そのままの真空中でArFエキシマレーザーをハイドロキシアパタイトターゲットに照射する。この照射を短時間とし、ハイドロキシアパタイトの分解生成物を上記構成基体金属表面に極く薄く300Å程度にコーティングする。このハイドロキシアパタイト分解生成物薄膜は、その後に引き続き実施する水蒸気または水蒸気含有ガス中でのコーティングにおいて、該人工骨又は人工歯根インプラントの構成基体金属表面に酸化膜が生成されることを防止することができ、さらに強固なコーティングを実施することができる。
【0023】
従来より、ハイドロキシアパタイトのコーティング方法としては化学蒸着法、物理蒸着法等の気相法、液相法、固相法等があり実施されているが、上記記載のレーザーアブレーション以外の方法による場合はコーティング膜厚が通常1μm以上のものとなり、コーティング膜と基体金属との密着性が弱く剥離し易いものとなる。上記レーザーアブレーションにより化学量論的ハイドロキシアパタイトのコーティングによる下層を作製した場合、そのコーティング膜は緻密な膜となり、化学量論的純ハイドロキシアパタイトの多結晶膜となり、結晶粒界となるバウンダリーの組成も結晶相と同組成のものとなり、生体への溶出のないコーティング膜となる。
【0024】
本発明においては人工骨(1) 又は人工歯根インプラント(13)の構成基体金属表面へのハイドロキシアパタイトのコーティングにおいて、下層として生体に溶出し難い化学量論的組成のハイドロキシアパタイトをコーティングし、この上に天然骨、天然歯あるいはこれに類似の組成をもったものとして置換型ハイドロキシアパタイト及びH又はその他の成分を含有させてコーティングすることを特徴としている。図5に人工歯根のフィクスチャーの一例を示す。図において(41)はフィクスチャー基体金属であり、(42)は下層の化学量論的ハイドロキシアパタイトのコーティング膜であり、(43)は上層の天然骨又は天然歯あるいはこれに類似組成のハイドロキシアパタイトコーティング層である。
【0025】
この上層として天然骨又は天然歯をターゲットとしてそのままコーティングする場合、天然骨及び天然歯においては個々人によってその組成が異なるものとなる。図6に示したように天然歯の場合は、歯髄(53)の外側構成部分のエナメル質部(51)、象牙質部(52)によっても組成が異なる。図6において、(54)はセメント質、(55)は歯根膜、(56)は歯槽骨、(57)は歯肉である。一事例として表1、及び図7に分析例を示した。
【0026】
【表1】
Figure 2004290333
【0027】
従って天然歯をターゲットにする場合においては、天然歯の各構成部分の粉砕混合粉体の成型体をターゲットとすると、コーティング膜組成は構成部分の平均的な組成となる。
【0028】
また、天然骨又は天然歯類似の組成のコーティング膜を形成する場合においても、インプラント埋入患者の天然骨又は天然歯の分析組成結果を基にした類似組成とするか、前記一般的組成における平均的組成をもって天然骨又は天然歯と類似の組成とすることにした。これは、従来の化学量論的ハイドロキシアパタイトのコーティング膜よりより天然骨又は天然歯組成に近づけた組成のコーティング膜をインプラント表面に形成し、生体内へのインプラント埋入後の定着の迅速化を計ることを目的とする。
【0029】
天然骨又は天然歯をそのまま、あるいは天然骨又は天然歯類似の組成の置換型ハイドロキシアパタイトは、その化学構造組成が化学量論的ハイドロキシアパタイトCa10(PO(OH)のCaの一部をNa、K、Mg2+、Sr2+各イオン等で置換されたもの、あるいはPO基をCO 2− 、あるいは他のイオン で、OH基をCl、Fで置換されている。
【0030】
人工骨あるいは人工歯根インプラントの表層のコーティング膜が天然骨又は天然歯、あるいはこれに類似の組成をもつことにより、インプラントが生体内に埋入された場合、埋入時にインプラントのコーティング膜がマイクロファージ、異物検知細胞による検知活動において、化学量論的ハイドロキシアパタイトよりより生体に近いことを検知し、生体物質としての検知、判断を迅速なものとして埋入後の定着を良好なものとする。
【0031】
上記上層となるコーティングは、下層の化学量論的ハイドロキシアパタイトのコーティングと同様にレーザーアブレーション法により上記下層に連続してコーティングを実施する。この際のターゲットは天然骨、天然歯、あるいはこれらに類似した組成のものを用いる。
ハイドロキシアパタイトのコーティング法としてレーザーアブレーション法はターゲット組成とコーティング膜組成は他のコーティング法に較べより転写性の優れたコーティング法となる。
【0032】
天然骨又は天然歯のハイドロキシアパタイトの組成構造は、化学量論的ハイドロキシアパタイトとCaとPの比が異なるのとPO基、OH基の一部が他のイオンで置換されたイオン置換型ハイドロキシアパタイトであり、天然骨又は天然歯そのものをターゲットする場合の他はコーティング膜組成がより天然骨又は天然歯組成に近づくようターゲットの組成を調整したものとするか、あるいは組成の異なるコーティング膜を多層化して積層コーティングする。
【0033】
人工骨又は人工歯根フィクスチャー表面にコーティングされる上層となる置換型ハイドロキシアパタイトにおける組成成分としてのCaとPのCa/P比は最重要組成となる。レーザーアブレーション法によればターゲットのCa/P比をコーティング膜のCa/P比に転写することは容易である。コーティング膜のCa/P比を天然骨又は天然歯組成と類似のものとするための調整としてはターゲット組成として化学量論的ハイドロキシアパタイト組成にP又はCaCO等を必要量混合添加することにより、添加量にほぼ比例したCa/P比のコーティング膜を作製することができる。
【0034】
図8には化学量論的ハイドロキシアパタイトCa10(PO(OH)に5酸化燐Pを添加量を変えて混合成型したターゲットをレーザーアブレーションによりコーティングした場合のCa/P比が示される。図に示されるようにレーザーアブレーションによるとターゲットの混合比をそのままにコーティング膜に転写することができる。
次に天然骨又は天然歯と類似組成として重要な置換イオンとしてはNa、K、Mgである。これらをコーティング膜に添加するためターゲットに炭酸塩としてNaCO、KCO、MgCOを天然骨又は天然歯の分析組成に近い量を母体となるハイドロキシアパタイトに添加し、混合、粉砕、成型して作製するか、あるいは下記の方法による。
【0035】
Na、K、Mg2+、Sr2+置換のハイドロキシアパタイトのターゲットの作製において、母体となるハイドロキシアパタイトとして化学量論的ハイドロキシアパタイトをそのまま利用してもよいが、図9に示すようにCa(POをHO+Oガス中で600℃10時間の焼成によってCaのモル比が10%少ないCa(PO(OH)が安定した結晶として得られることから、この組成比のハイドロキシアパタイトに上記の必要とされるNa、K、Mg等の炭酸塩を混合しHO+Oガス中でさらに600℃10時間の焼成をすると、図10に示すようにこれらいずれのイオンもCaNa(PO(OH)のようにドーピングされたイオン置換型ハイドロキシアパタイトの安定した結晶が得られる。
【0036】
上記の方法においてCa/P比を天然骨又は天然歯組成に類似のものとすると共に、上記Na、K、Mg2+、Sr2+で置換したCa(PO(OH)構造のターゲットも併用して人工骨又は人工歯根インプラント表面に上層コーティングを行い天然骨又は天然歯と類似の組成のコーティング膜を作製する。さらにOH基にCl、Fを置換するにはコーティングしたインプラントをこれらの塩の水溶液中に浸漬するとハイドロキシアパタイトの特性としてCl、FはOH基と置換することができる。この処理により天然骨又は天然歯に更に近い組成をもったコーティングを実施することができる。
【0037】
人工歯根フィクスチャーを顎骨に埋入した場合、フィクスチャー上縁部は口腔に近く細菌、雑菌による汚染が考えられる。これによる感染防止のためフィクスチャー上縁部表面のハイドロキシアパタイトのコーティング層に殺菌、除菌作用をもたらせるため、更に上層として、あるいはコーティング膜中にAg、TiO、Al等の触媒作用をもつ材料のいずれかをレーザーアブレーション法によりコーティングすることができる。
これらのコーティング膜中への混入に関しては、上記ハイドロキシアパタイトコーティング用のターゲットとは別にAg、TiO、Al等のうち所望の材料についてのターゲットを成型し、これらを図3に示すレーザーアブレーション蒸着装置の真空成膜チャンバー(21)内に並置して必要な材料について選択コーティングを行う。
【0038】
ハイドロキシアパタイトコーティング膜中に上記触媒作用をもつ材料を混入する方法としては、ハイドロキシアパタイトターゲットと共に真空成膜チャンバー(21)内に並置したこれら材料のターゲットにレーザー光を交互に照射することにより達成することができる。その膜厚はレーザーの照射時間により調整する。
また、図11に示すように、フィクスチャー(61)上縁部(62)の必要箇所へ上記触媒作用を有する材料を混合したのコーティングを施す場合には、コーティング時にマスキングすることにより達成される。
【0039】
〔実施例1〕
チタンを構成基体金属とする人工歯根フィクスチャーを図3に示すレーザーアブレーション成膜装置の真空成膜チャンバー(21)内のヒーター(24)と接するフィクスチャーを取付回転台(23)に設置しコーティングを行う。コーティングを行うに先立ちフィクスチャー表面はアセトン、超純水で超音波洗浄を行い、成膜チャンバー(21)内の取付回転台(23)に設置する。成膜チャンバー(21)内を排気系のロータリーポンプ及びターボ分子ポンプ(22)により1×10−7Torrに排気後、フィクスチャーをヒーター(24)により300℃に昇温、脱ガスを行う。
【0040】
次に、加熱したフィクスチャーを回転させながら、各種ターゲット設置台に設置した化学量論的組成のハイドロキシアパタイトのターゲット(25)にArFエキシマレーザー源(27)よりレーザーを照射し3分間300Å程度の膜厚に前処理コーティングを行う。その後酸素ガス−水蒸気混合ガスを導入し、フィクスチャー温度を530℃に昇温してガス圧100mTorrでインサイチュ蒸着法により下層として化学量論的組成のハイドロキシアパタイトを3000Åの膜厚にコーティングする。
【0041】
フィクスチャーへ上記下層コーティングを行った後、引き続き真空成膜チャンバー(21)内の各種ターゲット設置台(25)に設置された天然歯ターゲットにレーザーを照射し、上層として天然歯組成のハイドロキシアパタイトを膜厚3000Å程度にコーティングする。
コーティング後450℃10時間、酸素ガス−水蒸気混合ガス中でポストアニーリングを行なう。これにより、化学量論的組成のハイドロキシアパタイトを下層とし、その上に上層として天然歯組成のハイドロキシアパタイトコーティングした2層構造の人工歯根フィクスチャーを作製した。
【0042】
〔実施例2〕
実施例1と同様に図1に示すチタン合金よりなる股関節用人工骨(1) の構成基体金属の表面に下層として化学量論的組成のハイドロキシアパタイトを真空中で前処理コーティングした後、同組成の化学量論的ハイドロキシアパタイトをターゲットとしてその上にインサイチュ法でコーティングして下層とし、そのまま引き続いて真空成膜チャンバー内に並置した天然骨に類似組成のイオン置換型ハイドロキシアパタイトを上層としてコーティングして人工骨(1) とした。
上層となる天然骨組成類似のコーティング層の作製方法としては、まずCaとPの比が天然骨組成に近いハイドロキシアパタイトコーティングを行ない、続いて天然骨組成に近いNa、K、Mg2+、Sr2+置換のハイドロキシアパタイトコーティングを行う2層構造とした。
【0043】
化学量論的ハイドロキシアパタイトのCa/P比がモル比で1.67、重量比で2.15である。こゝで天然歯組成ではこの比が小である。従って化学量論的ハイドロキシアパタイト粉末に所望の比率になるようCaCO、CaCl等のCa化合物、P、H等のP化合物、及びCa(PO、CaHPO、Ca(HPO等のリン酸カルシウム化合物のいずれか又はこれらの二種以上の粉末を、添加混合して成形し、CaとPの比を天然歯と類似の組成としたターゲットを作製する。しかし天然骨組成の場合は、Ca/P比がほぼ同じかやや大きいため、化学量論的ハイドロキシアパタイトをそのままあるいはCaCOを添加粉砕混合して成形しターゲットとする。このターゲットを真空成膜チャンバー内の各種ターゲット設置台に設置する。
【0044】
Na、K、Mg2+、Sr2+添加のターゲットとしてはCa(POを酸素ガス水蒸気雰囲気中で600℃10時間焼成することにより化学量論的ハイドロキシアパタイトよりCaのモル比が10%少ないCa(PO(OH) の構造をもった安定した結晶を作製する。この出発原料材にNaCOをCaのモル比で9対1の割合で混合し、前記同様酸素−水蒸気混合ガス中で600℃10時間の焼成によりCaNa(PO(OH) の組成構造の安定したNaイオン置換型ハイドロキシアパタイト結晶を作製する。同様にKCO、MgCO、又はSrCOを添加して同様のCa(PO(OH) 、CaMg1/2(PO(OH) 、CaSr1/2(PO(OH)の組成構造の安定した結晶を作製する。これらの粉体をそれぞれ成型してレーザーアブレーションのNa、K、Mg2+、Sr2+添加のターゲットとして、真空成膜チャンバー内の各種ターゲット設置台に設置する。
【0045】
本実施例における人工骨へのハイドロキシアパタイトのコーティングにおいては真空成膜チャンバー内に下層となる化学量論的ハイドロキシアパタイト成形体であるターゲット、天然骨と類似のCaとPの比になるように調整したハイドロキシアパタイトの混合成形体であるターゲット、前記Naイオン置換のCaNa(PO(OH)の成形体であるターゲット、K置換のCa(PO(OH)の成形体であるターゲット、Mg置換のCaMg1/2(PO(OH)の成形体であるターゲット、Srイオン置換のCaSr1/2(PO(OH)の成形体であるターゲットのそれぞれを、レーザー照射可能な位置にある各種ターゲット設置台に設置する。
【0046】
前記のように人工骨構成基体金属表面に下層として化学量論的組成のハイドロキシアパタイトをコーティングした後、上層のコーティングは真空成膜チャンバー内を下層のコーティングの際と同条件としたまま、引き続きレーザーを各種ターゲットに順次必要時間照射し、天然骨組成に類似したCa/P比のハイドロキシアパタイト、Na、K、Mg2+、Sr2+のイオン置換型ハイドロキシアパタイトを所望の組成比になるようコーティング時間を変えて繰り返し、コーティング膜を積層し、上層のハイドロキシアパタイトコーティング膜を500〜10000Å程度コーティングする。コーティング後450℃10時間真空成膜チャンバー内で加熱し、人工骨構成基体金属へのコーティングを完了し、股関節用人工骨とした。
【0047】
〔実施例3〕
本実施例は人工歯根インプラントに関るもので、人工歯根フィクスチャーに対応するものとして、φ3.3mm、長さ4mmの円柱状チタン材に天然骨を原材料としたハイドロキシアパタイトを表面にコーティングした試料と、表面未処理のコーティングなしの試料を作製し、動物実験により顎骨に埋入後の新生骨誘導の比較を行った。
【0048】
レーザーアブレーションによる円柱状チタン金属表面の上層となるハイドロキシアパタイトのターゲットとしては、牛等の哺乳動物の生硬骨を粉砕し、これを加圧下、200〜400℃で90分間煮沸後、900〜1100℃で60〜80分間焼成し、加圧成形したものを用いた。その成分組成は表2に示す。
【0049】
【表2】
Figure 2004290333
【0050】
まず実施例1と同様の化学量論的組成のハイドロキシアパタイトによる下層コーティングを行った後、上記天然骨より作製したターゲットにより上層コーティングを行った。この際のコーティング条件として、試料を300℃に加熱し、OとHOの混合ガス圧0.8mTorr中でコーティング後、引続き試料を380℃に加熱し、OとHO雰囲気中で1時間、ポストアニーリングすることにより、膜厚3000Åの天然骨組成の上層コーティングを行った。
【0051】
動物実験としてはビーグル犬を用い、静脈内注射により全身麻酔を行い、下顎小臼歯を抜去し、骨性治癒を待ち、3ヵ月後、再び全身麻酔下で下顎小臼歯部の上皮粘膜を剥離、下顎骨を露出し生理食塩水を滴下しながらラウンドバーで皮質骨を穿孔し、更にインプラント専用モータードリルでφ3.3mm、深さ4mmの埋入窩を形成した。その後、上記コーティングを行った試料インプラントと表面無処理の比較試料インプラントそれぞれを埋入適合させ縫合した。
【0052】
4週間の実験期間終了後、全身麻酔下で総顎動脈を剖出、脱血し、3%ホルマリンで潅流固定を行い、試料インプラントとその周囲組織を含めて摘出した。この摘出試料を硬組織用カッティングマシーンにより、インプラントと共に頬舌方向に切断し標本とした。標本を自然乾燥し、金蒸着を行い走査型電子顕微鏡を用いて、それぞれを観察した。両試料インプラントの断面写真を図12及び図13に示した。
【0053】
本発明による天然骨より作製したターゲットによる天然骨コーティングインプラントでは図12に示されるようにインプラント(71)周囲全体に新生骨(72)の形成がみられ、既存骨から新生骨の伸展(73)が起り、天然骨ハイドロキシアパタイトコーティングによる骨生成誘導が4週間で生起している。一方、図13に示されるように表面未処理の試料インプラント(81)ではインプラント周囲の一部に新生骨(82)の形成はみられたが、その他の周囲では新生血管(84)の伸展がみられたにとどまった。
【0054】
〔実施例4〕
本実施例はフィクスチャーの上縁部外周にフィクスチャーを顎骨に埋入後口腔よりの細菌による感染防止のため除菌、殺菌を目的とした殺菌剤、触媒剤をコーティングしたものの作製事例を示す。
最初に実施例1、又は2に示した化学量論的ハイドロキシアパタイトの下層コーティングに引き続いて上層としてイオン置換型ハイドロキシアパタイトをコーティングしたフィクスチャーを作製し、同真空成膜チャンバー内にてフィクスチャーの上縁部の上端より5mm程度の範囲にわたり下端部をマスキングし、Ag、TiO、Alのいずれかを目的に合わせてコーティングを重ねた。
【0055】
上縁部外周へのコーティングは真空成膜チャンバー内にターゲットとして前記実施例2におけるターゲットに追加して必要とされる下記ターゲットを設置台に設置する。このターゲットとしてはAg、TiO、Alについてはいずれも粉末成形体とし、これらのうちいずれかを選択し、上縁部のコーティング膜上にコーティングする。あるいは上層コーティングと同組成のハイドロキシアパタイトをコーティングすると共に、該ターゲットのいずれか選択されたターゲットにレーザーを照射し両者を交互にコーティングして上層ハイドロキシアパタイトのコーティング膜中に必要とされるターゲットの成分を混在させた。
以上本発明に関る実施の形態を示したが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
【発明の効果】
本発明においては人工骨又は人工歯根インプラント表面に下層としてレーザーアブレーションによりターゲットと同組成の化学量論的ハイドロキシアパタイトを緻密で且つ強固に薄膜としてコーティングする。この下層は生体内へ溶出し難いコーティング層となる。この下層のコーティングに引き続き上層として天然骨又は天然歯、あるいは天然骨又は天然歯に類似のNa、K、Mg2+、Sr2+等のイオン置換ハイドロキシアパタイト層をコーティングしたもので、天然骨又は天然歯組成に類似の上層コーティングには結晶性のよい安定したCaNa(PO(OH)、あるいは同組成構造に置換したK、Mg2+、Sr2+よりなるイオン置 換型ハイドロキシアパタイトをターゲットとしてコーティングする。上記したように下層は生体内へ溶出し難いコーティング層となるので、コーティング層全体の生体内への溶出が抑制される。
【0057】
さらに、本発明によりコーティングされたインプラントは生体内に埋入後、その表層のコーティング膜組成が天然骨又は天然歯、さらに天然骨又は天然歯と類似の組成よりなるため生体に対する親和性が大であり、骨の誘導と結合が短時間で行なわれ、例えば人工歯根のフィクスチャーに天然骨を二層コーティングしたものは、従来のフィクスチャーの顎骨に埋入して骨との結合に8週間を要したものが、4週間で定着がみられ治療期間、定着期間を短縮することができた。
【0058】
また、人工歯根フィクスチャーにおいては上縁外周部に抗菌、触媒作用を持った材料をコーティングするかあるいは、ハイドロキシアパタイトコーティング層に混在させることにより顎骨埋入後の雑菌、細菌による感染防止が可能となった。
【0059】
本発明の人工骨又は人工歯根インプラントへのハイドロキシアパタイトの多層コーティングはレーザーアブレーションによっている。レーザーアブレーションによりコーティングを実施すると、ターゲットの組成をそのままコーティング膜に転写することが可能である。多層コーティングの各層コーティング膜に要求される組成の安定したターゲットを調整作製し、これらターゲットを真空成膜チャンバー内に並置し、コーティングプログラムにそってインプラントを真空成膜チャンバーより取り出すことなく、順次コーティングを継続して実施すれば、所望のコーティングインプラントを効率よく作製することができる。
【図面の簡単な説明】
図1〜図13は本発明の一実施例を示すものである。
【図1】人工骨の説明図
【図2】人工歯根を顎骨へ埋入した状態の説明図
【図3】レーザーアブレーション成膜装置の説明図
【図4】Ti−6Al−4V合金へのインサイチュ法及びポストアニーリング法によりハイドロキシアパタイトをコーティングした場合のハイドロキシアパタイトコーティング膜のX線回折パターン
(a):コーティング前
(b):インサイチュ法
(c):ポストアニーリング法
【図5】ハイドロキシアパタイトコーティング人工歯根フィクスチャーの断面図
【図6】天然歯の説明断面図
【図7】天然骨及び天然歯と結晶ハイドロキシアパタイトのX線回折パターン
(A):天然骨
(B):エナメル質
(C):象牙質
(D):結晶ハイドロキシアパタイト
【図8】Pの添加量とコーティング層のCa/P重量比との関係を示すグラフ
【図9】Ca(PO(OH)のX線回折パターン
【図10】CaNa(PO(OH)のX線回折パターン
【図11】上縁部に触媒機能を有するコーティングを施した人工歯根フィクスチャーの説明断面図
【図12】顎骨に埋入したインプラントの埋入4週間後の周囲の状況(天然骨ハイドロキシアパタイトコーティングインプラント)
【図13】顎骨に埋入したインプラントの埋入4週間後の周囲の状況(表面未処理インプラント)
【符号の説明】
21 真空成膜チャンバー
22 排気系ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ
23 取付回転台
24 ヒーター
25 ターゲット設置台
26 ガス導入ノズル
27 ArFエキシマレーザー光源
28 ミラー
29 レンズ
30 窓
31 スリット
32 ヒーター温度制御器
33 温度計
34 膜厚計

Claims (12)

  1. 構成基体金属の表面に組成構造の異なるハイドロキシアパタイトをレーザーアブレーションにより2層あるいは多層にコーティングしたことを特徴とする人工骨又は人工歯根インプラント
  2. 上記構成基体金属に接する最下層のコーティング膜が化学量論的ハイドロキシアパタイト組成のターゲットより、インサイチュ法又はポストアニーリング法によるレーザーアブレーションでコーティングされた請求項1に記載の人工骨又は人工歯根インプラント。
  3. 上記構成基体金属に接する最下層のコーティング前に真空中で化学量論的ハイドロキシアパタイトをターゲットとしてプレコーティングを施した請求項1または2に記載の人工骨又は人工歯根インプラント。
  4. 上記表層のコーティング膜が天然骨又は天然歯をターゲットとしてコーティングを行なうことによって形成された天然骨又は天然歯組成よりなる請求項1〜3に記載の人工骨又は人工歯根インプラント。
  5. 上記表層のコーティング膜がターゲットに化学量論的ハイドロキシアパタイトにCa化合物、P化合物およびリン酸カルシウム化合物のいずれか又はこれらの二種以上を混合成型したものを用いて形成されている請求項1〜3に記載の人工骨又は人工歯根インプラント。
  6. 上記表層のコーティング膜がハイドロキシアパタイトに含まれるCa2+の1部をNa、K、Mg2+、Sr2+のいずれか、あるいはこれら金属イオンの二種以上で置換された組成のターゲットを用いて形成されいてる請求項1〜3に記載の人工骨又は人工歯根インプラント。
  7. 上記ターゲットにCaNa(PO(OH)の結晶体、ある いは上記結晶体のNaをK、Mg2+、Sr2+のいずれかによって置換したものを使用した請求項6に記載の人工骨又は人工歯根インプラント。
  8. 上記レーザーアブレーションにより形成された2層あるいは多層のコーティング層の各層の膜厚を500〜10000Åとしたこと請求項1〜4に記載の人工骨又は人工歯根インプラント。
  9. 上記表層のコーティング膜が組成の異なるターゲットをレーザーアブレーション成膜装置の真空成膜チャンパー内に個別に設置し、レーザーをそれぞれのターゲットに交互に照射することにより、組成の異なるハイドロキシアパタイトコーティング膜を積層することによって形成されている請求項1〜8に記載の人工骨又は人工歯根インプラント。
  10. 構成基体金属表面に天然骨又は天然歯あるいはそれらの粉砕焼成物をレーザーアブレーションによりコーティングしたことを特徴とする人工骨又は人工歯根インプラント。
  11. 請求項1〜9におけるハイドロキシアパタイトコーティング膜中のOH基の一部をCl、F、CO 2− のいずれかによって置換したことを特徴とする人工歯根フィクスチャー。
  12. 人工歯根インプラントフィクスチャーの上縁部外周表面において、Ag、TiO、Alのいずれかあるいはこれらの二種以上をコーティングするか、あるいはハイドロキシアパタイトコーティング膜中にAg、TiO、Alのいずれかあるいはこれらの二種以上を混在させたことを特徴とする人工歯根フィクスチャー。
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