本発明は、偏光板を備えた液晶表示素子を用いて無彩色表示を行い、かつ赤、青、および緑の各カラー表示が可能な反射型カラー液晶表示装置に関する。特に、偏光板を1枚としたものである。
従来、両電極間の液晶分子のツイスト角を大きくして、鋭い電圧−透過率変化を起こし、高密度のドットマトリックス表示をする方法として、非特許文献1に記載されたスーパーツイスト素子が知られていた。
しかし、この方法は特許文献1によると、用いる液晶表示素子の液晶の複屈折率Δnと液晶層の厚みdとの積Δn・dの値が実質的に0.8〜1.2μmの間に設けられていた。そして、表示色としては黄緑色と暗青色、青紫色と淡黄色など、特定の色相の組み合わせでのみ良好なコントラストが得られていた。このように、このSTN液晶表示素子では白黒表示ができないことが欠点であった。
そこで、非特許文献2において、白黒表示が可能でかつコントラストの高い液晶表示装置として、互いに逆螺旋の液晶セルを2層積層し、一方のセルにのみ電圧を印加し、他方の液晶セルを単なる光学的な補償板として使用する方法が提案された。
また、液晶層と偏光板の間に複屈折板を配置することにより、白黒表示を可能にする方法も提案された。従来、パーソナルコンピュータなどのOA機器に用いられるカラー液晶表示装置は、前述した白黒表示が可能な液晶表示装置とカラーフィルタとが組み合わされて実用化されている。
ところがカラーフィルタは高価であり、かつ赤、青、緑の3画素で表示をするために光利用効率が著しく低い。例えば、白を表示するために、赤、青、緑の3画素をオン状態にしたとしても明るさは1/3となってしまうため、暗い表示しかできない。したがって、カラーフィルタを用いない明るいカラー表示装置としていくつかの手法が提案された。
例えば、複屈折制御(ECB)効果型の液晶表示装置がある。この液晶表示素子は、階調電圧(例えば8階調の電圧)を画素に印加すると、印加された階調電圧に応じて液晶分子の配向が変化し、これにともなって液晶セルのΔn・dが変化する。そして、複屈折にともなう様々な色相変化を用いて発色を得る。
しかし、このECB効果型の液晶表示装置は、液晶がツイストされていないため、印加電圧に応じた液晶の状態変化が小さくなり、マルチプレックス駆動ができないという問題があった。
特許文献2には、ツイストした液晶セルにおいて印加電圧を変化させることにより様々な色相変化が可能であることが示されている。しかし、この特許文献2の場合は、その発色は黄、赤、紫、青紫、青緑、緑であり、無彩色である黒または白を表示することはできないという課題を残している。なぜならば、黒または白の表示が欠けた表示手法の視認性は大きく低下することが一般に知られているからである。
表示において、視認すべくデータ部に対して、背景部分は面積的に広い部分を通常占めている。その部分に背景色として、例えば黄色または緑色の表示を用いると全体的に落ち着きのある表示を得ることが難しくなる。そのため、グラフを表示するとき等、背景色の色は白または黒の無彩色が選ばれることが多い。
表示の基本は紙に記した文字のように、白地の上に黒の線図の表現が基本的である。この形態が通常求められている。本来、白と黒とを表示し、さらに青または緑または赤が表示できることが好ましい。したがって、白または黒の表示が得られない表示装置は視認性に大きく欠けることになる。
また、この特許文献2では、補償セルを用いて2層にすることにより白黒表示が可能であることが示されている。しかし、色を出すときに補償セルに電圧を印加し、補償セルが光学的に存在しないような状態におくことによって発色を達成している。よって、マルチプレックス駆動を行ったとき、白または黒と、青や緑などの色を混在させることができないという問題がある。
特許文献3では、補償セル側にも画素を形成し、表示を行う。この2層液晶セルの各表示を組み合わせてマルチプレックス駆動を行ったとき、白または黒と、青や緑などの色を混在させうるとしている。しかし、2層の液晶セルは両者の各画素を1画素ずつ対応させて形成しなければならない。これは製造が困難になることと、斜めから見た場合の視差が生じて色がにじんで見えてしまうという欠点がある。
これでは実用に供することのできる表示品質がなかなか得られない。また、2層であるために重いという欠点もあり、液晶セルのギャップを制御することが難しく、歩留がさらに低下することなどの欠点が生ずる。
特許文献4には、位相差板を用いることにより色を改善できると示されている。しかし、無彩色(白または黒)を出すことまでは開示されていない。
特許文献5の実施例では、青、緑、白、赤の表示が可能であると示されている。しかし、印加電圧が低いときには青の表示色となり、印加電圧を大きくしたときに白が発色するようになっている。そのため、格子状のマトリックス駆動を行った場合、駆動電極の線間が青色であると、画素が白でも、全体的に青い表示となってしまい、色純度の良い白を発色させることが難しいという問題が起こる。
つまり、上述したように、液晶表示素子のマトリックス表示の線間は無彩色であることが好ましい。そして、電圧が印加されていないときに、ほぼ無彩色であることが望ましい。また、中間調の電圧で無彩色を出すようにすると、中間電圧での液晶状態は電圧の僅かな変化に対しても急峻な変化をするような状態なので、全体の無彩色表示を行うときに、僅かな電圧変動に対して発色が変化してしまい、綺麗な無彩色表示ができない。
これは、中間電圧である色を全体に表示するときにも同様なことがいえる。しかし、一般に背景色には無彩色が用いられることが多く、無彩色は大きな面積を占めることとなる。この大きな面積を占める色が色むらを起こすと表示としての美しさが大きく低下する。均一な色を出すには無彩色が中間電圧で発色されることを回避することが望ましい。
以上のような課題を考慮すると、電圧が印加されていないとき、またはマルチプレックス駆動を行ったときのオフ波形(非選択波形)の際に無彩色の表示が得られることが好ましい。
また、特許文献5の実施例5では、白、青、緑の表示が可能であることが示されている。しかし、白を発色する印加電圧が0.2V以下であり、青を発色する印加電圧が1.3〜2.2Vであり、緑を発色する印加電圧が3.0V以上である。これは明らかにマルチプレックス駆動(時分割駆動)が困難な素子設計となっている。このような駆動電圧は特定した用途にしか用いることが難しくなる。
特許文献6の実施例6では、0.9Vまたは1.6V以下において白表示が可能であると示されている。しかし、これも緑や赤や青の表示を行う場合、マルチプレックス駆動したときにデユーティ比を大きくすることができない。
特許文献7の実施例では、オフ波形で白表示できると示されている。しかし、この特許文献7では赤の表示が得られてはいない。以上は偏光板がセルの両面にある場合の公知例を示した。よって、上述した公知例では、どれも光の透過率が低く暗いことになる。さらに、反射型モードとして用いると反射層で損失する分だけ光量が低くなって、もっと暗い表示となる。
特許文献8の実施例では、偏光板を1枚のみ用いて、カラー表示を可能としている。その実施例において、電圧無印加時は白色、その後電圧を大きくするにしたがい、白→黄→青→黄→青→緑と変化することが示されている。しかし、電圧が低い時に(白からすぐに黄色や青に変化した電圧の時)、純度の良い発色を得られず、電圧を大きくすることにより純度の良い発色が得られていることを示している。
また、特許文献8では赤の発色が得られていない。また、電圧の低いとき純度の良い発色を得られないことから、マルチプレックス駆動に適しないなどの問題がある。
この特許文献8に用いられている構成は、色制御用液晶セルのツイスト角とΔn・dは、表示用液晶セルのツイスト角とΔn・dにほぼ同等とする。色制御用液晶セルのツイスト方向は、表示用液晶セルのツイスト方向と逆である。また、表示用液晶セルと、色制御用液晶セルの互いに近接する表面の液晶分子の配向方向の交差角がほぼ90°とする。さらに、偏光板の偏光軸は、近接される液晶分子の配向方向と、ほぼ45°±5°の交差角とするとよいと述べられている。
また、特許文献9においては、補償セルをねじれ位相差板にすることが記載されている。しかし、その構成は特許文献8と基本的に同じであり、発色にまだ問題がある。
特開昭60−10720号公報
特開平2−118516号公報
特開平2−183220号公報
特開平6−175125号公報
特開平6−301006号公報
特開平6−301026号公報
特開平6−337397号公報
特開平6−308483号公報
特開平7−5457号公報
T.J.Scheffer and J.Nehring, Appl.Phys.Lett.45(10)1021−1023(1984)
奥村ほか、テレビジョン学会技術報告、11(27)79(1987)
本発明は上記内容を鑑みて、その目的とするところは、カラーフィルタを用いずに、マルチプレックス駆動が可能で、非選択波形のときに明るい白表示が可能で、選択波形または選択波形と非選択波形の中間の電圧を印加したときに、青または緑または赤の発色が可能とすることである。
言い換えれば、電圧を印加されないとき、または電圧が低いときに、非常に明るいほぼ無彩色表示ができ、かつ電圧を印加して明るいカラー表示を実現できる明るい反射型カラー液晶表示装置を提供することである。
本発明の基本的な構成は、吸収軸を有する1枚の偏光板と反射層との間に、両面に光学異方軸を有し、一方から他方の光学異方軸に対して光学異方軸が回転せしめられてなる1枚の位相差板と、両面に備えられた配向方向によってねじれ角が設定された1つの液晶層とが設けられ、位相差板と液晶層との位置は交互に交換可能であって、光は偏光板を通り、位相差板から液晶層、または液晶層から位相差板を通過し、反射層によって反射せしめられ、逆方向に進行して偏光板から出射せしめられる。
この際に、液晶層に印加される駆動電圧の実効的な3値以上の電圧値によって、無彩色を含むカラー表示が得られるように設けられる。
角度の表記として、+方向は時計回りを、−方向は反時計回りを示すこととする。本発明の角度関係を図1、図4などに示す。
請求項1の発明は、吸収軸を有する1枚の偏光板と、位相差板と、第1の液晶層と、反射層と、第1の液晶層に印加される駆動電圧を供給する駆動回路とが設けられ、偏光板と反射層との間に第1の液晶層および位相差板が配置され、
第1の液晶層は旋光性物質を含有した正の誘電異方性のネマチック液晶を有し、第1の液晶層の第1の面側の第1の配向方向から第2の面側の第2の配向方向に対してねじれ角θ1 が設けられ、
位相差板は偏光板側に位置する第1の面における光学異方軸のうちの第1の遅相軸から反対側の第2の面における光学異方軸のうちの第2の遅相軸の方向におけるねじれ角θ2 を有し、
第1の液晶層の屈折率異方性Δn1 と第1の液晶層の厚みd1 との積Δn1 ・d1 が0.30〜2.00μmとされ、位相差板の屈折率異方性Δn2 と位相差板の厚みd2 との積Δn2 ・d2 が0.30〜2.00μmとされ、
第1の液晶層の第1の配向方向から位相差板の第2の遅相軸に対して角度θ3 が設けられ、位相差板の第1の遅相軸から偏光板の吸収軸とがなす角度θ4 が設けられ、
角度θ1 、θ2 、θ3 、およびθ4 は時計回り方向(+)または反時計回り方向(−)で、{角度θ1 は−160〜−300°、角度θ2 は+160〜+300°、角度θ3 は(+90°+[−10°〜+40°])、角度θ4 は(+45°+[−30°〜+25°])もしくは(+135°+[−30°〜+25°])}または、{角度θ1 は+160〜+300°、角度θ2 は−160〜−300°、角度θ3 は(−90°+[+10°〜−40°])、角度θ4 は(−45°+[+30°〜−25°])もしくは(−135°+[+30°〜−25°])}とされ、
3値以上の電圧値が選択されて第1の液晶層に駆動電圧が印加されることを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。
請求項2の発明は、|角度θ1 |は230〜250°、|角度θ2 |は230〜250°、0.8≦Δn1 ・d1 ≦1.5、およびΔn1 ・d1 −0.15≦Δn2 ・d2 ≦Δn1 ・d1 +0.15とされたことを特徴とする請求項1の反射型カラー液晶表示装置を提供する。
請求項3の発明は、{角度θ1 は−230〜−250°、角度θ2 は+230〜+250°、角度θ3 は(+90°+[−10°〜+10°])、角度θ4 は(+45°+[−20°〜−10°])もしくは(+135°+[−20°〜−10°])}または、{角度θ1 は+230〜+250°、角度θ2 は−230〜−250°、角度θ3 は(−90°+[+10°〜−10°])、角度θ4 は(−45°+[+20°〜+10°])もしくは(−135°+[+20°〜+10°])}とされ、1.25≦Δn1 ・d1 ≦1.35、および1.25≦Δn2 ・d2 ≦1.35とされてなることを特徴とする請求項1の反射型カラー液晶表示装置を提供する。
請求項4の発明は、{角度θ1 は−230〜−250°、角度θ2 は+230〜+250°、角度θ3 は(+90°+[+10°〜+30°])、角度θ4 は(+45°+[+5°〜+25°])もしくは(+135°+[+5°〜+25°])}または、{角度θ1 は+230〜+250°、角度θ2 は−230〜−250°、角度θ3 は(−90°+[−10°〜−30°])、角度θ4 は(−45°+[−5°〜−25°])もしくは(−135°+[−5°〜−25°])}とされ、0.80≦Δn1 ・d1 ≦0.90、および0.80≦Δn2 ・d2 ≦0.90とされてなることを特徴とする請求項1の反射型カラー液晶表示装置を提供する。
請求項5の発明は、{角度θ1 は−230〜−250°、角度θ2 は+230〜+250°、角度θ3 は(+90°+[−10°〜+10°])、角度θ4 は(+45°+[−30°〜−10°])もしくは(+135°+[−30°〜−10°])}または、{角度θ1 は+230〜+250°、角度θ2 は−230〜−250°、角度θ3 は(−90°+[+10°〜−10°])、角度θ4 は(−45°+[+30°〜+10°])もしくは(−135°+[+30°〜+10°])}とされ、1.20≦Δn1 ・d1 ≦1.30、および1.30≦Δn2 ・d2 ≦1.40とされてなることを特徴とする請求項1の反射型カラー液晶表示装置を提供する。
請求項6の発明は、{角度θ1 は−230〜−250°、角度θ2 は+230〜+250°、角度θ3 は(+90°+[−10°〜+40°])、角度θ4 は(+45°+[−30°〜+25°])もしくは(+135°+[−30°〜+25°])}または、{角度θ1 は+230〜+250°、角度θ2 は−230〜−250°、角度θ3 は(−90°+[+10°〜−40°])、角度θ4 は(−45°+[+30°〜−25°])もしくは(−135°+[+30°〜−25°])}とされ、1.20≦Δn1 ・d1 ≦1.50、および0.70≦Δn2 ・d2 ≦0.90とされてなることを特徴とする請求項1の反射型カラー液晶表示装置を提供する。
請求項7の発明は、{角度θ1 は−170〜−190°、角度θ2 は+170〜+190°、角度θ3 は(+90°+[−10°〜+40°])、角度θ4 は(+45°+[−30°〜+25°])もしくは(+135°+[−30°〜+25°])}または、{角度θ1 は+170〜+190°、角度θ2 は−170〜−190°、角度θ3 は(−90°+[+10°〜−40°])、角度θ4 は(−45°+[+30°〜−25°])もしくは(−135°+[+30°〜−25°])}とされ、0.30≦Δn1 ・d1 ≦2.00、および0.30≦Δn2 ・d2 ≦2.00とされてなることを特徴とする請求項1の反射型カラー液晶表示装置を提供する。
請求項8の発明は、{角度θ1 は−170〜−190°、角度θ2 は+170〜+190°、角度θ3 は(+90°+[−10°〜+40°])、角度θ4 は(+45°+[−30°〜+25°])もしくは(+135°+[−30°〜+25°])}または、{角度θ1 は+170〜+190°、角度θ2 は−170〜−190°、角度θ3 は(−90°+[+10°〜−40°])、角度θ4 は(−45°+[+30°〜−25°])もしくは(−135°+[+30°〜−25°])}とされ、0.90≦Δn1 ・d1 ≦1.30、およびΔn1 ・d1 −0.15≦Δn2 ・d2 ≦Δn1 ・d1 +0.15とされてなることを特徴とする請求項1の反射型カラー液晶表示装置を提供する。
請求項9の発明は、{角度θ1 は−170〜−190°、角度θ2 は+170〜+190°、角度θ3 は(+90°+[+10°〜+30°])、角度θ4 は(+45°+[−20°〜+20°])もしくは(+135°+[−20°〜+20°])}または、{角度θ1 は+170〜+190°、角度θ2 は−170〜−190°、角度θ3 は(−90°+[−10°〜−30°])、角度θ4 は(−45°+[+20°〜−20°])もしくは(−135°+[+20°〜−20°])}とされ、0.75≦Δn1 ・d1 ≦1.05、および0.75≦Δn2 ・d2 ≦1.05とされてなることを特徴とする請求項1の反射型カラー液晶表示装置を提供する。
請求項10の発明は、(10°)2 ≦(|θ3 |−90°)2 +(|θ4 |− 45°)2 、かつ(10°)2 ≦(|θ3 |−90°)2 +(|θ4 |−135°)2 の関係が満たされることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項の反射型カラー液晶表示装置を提供する。
また、上記の各請求項のいずれかの発明において、マルチプレックス駆動によって、3値以上の電圧値が選択されて第1の液晶セルに電圧が印加されることを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。
また、上記の各請求項のいずれかの発明において、マルチプレックス駆動の非選択波形のときに白表示が行われ、選択波形または選択波形と非選択波形の中間の電圧が印加されたときに、青表示または緑表示または赤表示の発色が行われることを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。
また、上記の各請求項のいずれかの発明において、マルチプレックス駆動の非選択波形のときに白表示が行われ、選択波形または選択波形と非選択波形の中間の電圧が印加されたときに、電圧の低い方から高い方にしたがって、赤表示、青表示、緑表示の発色が行われることを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。
また、上記の各請求項のいずれかの発明において、マルチプレックス駆動によって、4値以上の電圧値が選択されることを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。
また、上記のマルチプレックス駆動が用いられた反射型カラー液晶表示装置のいずれかの発明において、N回のフレームを周期とし、N回のフレーム周期のうち、オン波形を出力する回数がMとされ、オフ波形を出力する回数が(N−M)回とされてなることを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。
この際に、M=0のときに白表示、M=Nのときに緑表示、M≠0かつM≠Nのときに赤表示または青表示が行われることを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。また、Nに対するMの設定により階調電圧を発生させ、色表示が行われることを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。
また、上記の各マルチプレックス駆動が用いられたいずれかの発明において、マルチプレックス駆動のデューティ比が1/32以上であることを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。より多くの情報をカラー表示で提供できるので好ましい。
また、上記の各請求項のいずれかの発明において、電極が行と列のマトリックス状に設けられ、複数の行電極が同時に選択されて駆動されることを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。また、本発明の好ましい態様においては、反射層が液晶層を駆動する電極を兼用してなる。
また、上記の各請求項のいずれかの発明において、赤表示がCIE 1931色度図で0.33≦Xの領域の発色を含むことを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。
また、上記の各請求項のいずれかの発明において、白表示がCIE 1931色度図で0.3≦X<0.33、かつ、0.3<Y<0.34の領域の発色を含むことを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。
また、上記の各請求項のいずれかの発明において、青表示がCIE 1931色度図でX≦0.31、かつ、Y≦0.30の領域の発色を含むことを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。
また、上記の各請求項のいずれかの発明において、緑表示がCIE 1931色度図でX≦0.30、かつ、0.30≦Yの領域の発色を含むことを特徴とする反射型カラー液晶表示装置を提供する。
本発明のうちで、角度θ1 、θ2 を175〜185°とする構成は一般の白黒STNでは通常用いられていない構成である。
本発明により、カラーフィルタを用いずに、一画素で、電圧が印加されないとき、または電圧が低いときにほぼ無彩色表示ができ、かつ電圧を印加することにより赤または青または緑のカラー表示ができる反射型カラー液晶表示装置を実現できた。また、カラーフィルタを液晶セル内部に形成する必要がないために、液晶セルのセルギャップ制御が容易になった。また、歩留が向上し、生産性を向上することができた。
そして、低消費電力で明るく携帯に適した反射型カラー表示装置が可能となった。偏光板が1枚であるので光の損失が少なく表示に寄与する光量が大きく増大した。
また、Ag反射膜を用いた場合、反射率がAlよりも約20%よいのでさらに光の利用効率が改善された。AgとAlでは反射の際の波長依存性が異なり、一般に銀の反射は青色の波長域の反射率が低く、反射光は黄色っぽくなる。色度図上で液晶セルの表示が全体的に青色側に寄った使用にすることで総合の表示特性が改善され、明るく色純度のよい表示が得られた。
本発明において、第1の液晶層が表示データを駆動する能動的な光学層として機能する。基本的には両側に透明電極および配向制御膜が備えられた液晶セルである。裏面側の反射層と電極とを兼用する場合には、偏光板側のみ透明電極とする。また、電極は通常ストライプ状のマトリックス構成とされるが、種々の図形状にパターン化されていてもよい。
本発明において、位相差板とは、一方の面から他方の面に光が通過する際に光の位相が大きく変化するものを用い、複屈折板などとも呼ばれる。通常のTN液晶セルと同様に、160〜300°のねじれ角を有する。この位相差板としてはツイスト配向された液晶セルそのもの(第2の液晶層)、ねじれ位相差板、または位相差フィルムの積層体を使用できる。つまり、液晶表示セルとその補償セルという2つの光学媒体の組み合わせで構成する。位相差板が第1の液晶層と偏光板との間に配置されてなることが好ましい。
通常の位相差板はポリカーボネートなどの透明プラスチックフィルムを精度よく1軸延伸して形成される。その光学異方軸を1枚毎に徐々にずらし、複数枚を積層してねじれ位相差板として使用できる。
また、ねじれ位相差板は、光学的に異方性を持った層を、その光学異方軸が連続的にツイストするように多層重ね合わせたものと同等の特性を有する位相差板である。一般には配向規制力を持った2枚の基板間に、ねじれ特性を有する液晶高分子を挟み、硬化させたものである。
温度によってΔn・dが変化する温度補償位相差板を用いると使用温度域が広がるのでより好ましい。周囲温度が変化しても、色の発色が低下せず良好な反射型カラー液晶表示装置を提供できる。この場合、温度によって変化するΔn・dは、液晶が温度によって変化するΔn・dとほぼ同等であるように設けるのが望ましい。
波長による光学異方性の分散を変えたねじれ位相差板を用いることも好ましい。これにより色純度をさらに改良した反射型カラー液晶表示装置を提供できる。
従来から、一対の偏光板の間に液晶層を持つ液晶セルを挟み白黒化するために、二つの液晶セルを用い、第1の液晶層を補償するように第2の液晶層を用いる方法が知られている。
そのときに用いられる最適条件は、第2の液晶層のツイスト角とΔn・dは、第1の液晶層のツイスト角とΔn・dにほぼ同等であり、第2の液晶層のツイスト方向は、第1の液晶層のツイスト方向と逆である。また、第1の液晶層の表面の液晶分子の配向方向(第2の液晶層側)と、第2の液晶セルの表面の液晶分子の配向方向(第1の液晶層側)との交差角がほぼ90°とされる。さらに、偏光板の偏光軸は、それぞれ近設される第1の液晶層または第2の液晶層の偏光板側の表面の液晶分子の配向方向と、ほぼ45°の交差角を有するように設けられる。
このような構成条件で、反射層側の偏光板を無くしただけであると、電圧が低いとき、または無印加のとき、明るい無彩色の透過状態が得られる。
しかし、印加電圧を上げるにしたがい、白→黄→青→黄→青→緑の表示が得られる。これは、特許文献8の実施例で示されている発明と同等の色変化をするのみである。つまりかなり淡い色変化しかできないか、または赤を発色することができない。
ところが、本発明においては、第1の液晶セルの表面の液晶分子の配向方向と(第2の液晶セル側)と、第2の液晶セルの表面の液晶分子の配向方向(第1の液晶セル側)との交差角を、+90°から−10〜+40°、狭い範囲においては+10〜+30°の範囲でずらすようにする。好ましくは、+15〜+25°、特に、+20°程度ずらして設けるようにすることにより、電圧無印加または非選択状態で明るい無彩色の透過状態が得られる。
具体的に説明すると、液晶層では第1の配向方向から第2の配向方向へ反時計回りに回転し、位相差板の液晶層側における光学異方軸から反液晶層側の光学異方軸へ時計回りに回転する場合、位相差板の液晶層側の面における光学異方軸から第1の配向方向への回転は反時計回りに100〜120°である。そして、電圧を増大させるにつれ、赤、青、緑のカラー表示を可能となしうる。このときの無彩色は明るく、かつ赤、青、緑も良好な色を発色させることが可能となる。
従来の補償セルを用いて白黒を出すための条件に対して、交差角をずらして設けることを述べたが、この他にもねじれ角、Δn・d、波長分散を変更することで同様の効果が得られる。
温度によってΔn・dが変化する温度補償位相差板を用いることにより、周囲温度が変化しても、表示が安定して見やすい反射型カラー液晶表示装置を提供できる。この場合、温度によって変化するΔn・dは、液晶が温度によって変化するΔn・dとほぼ同等であるように設ける。また、波長による光学異方性の分散を換えたねじれ位相差板を用いることも好ましい。これにより、色純度をさらに改良した反射型カラー液晶表示装置を提供する。
本発明において、白表示(W)とは色度座標において、0.3≦X<0.33、かつ、0.3<Y<0.34、赤表示(R)は0.33≦X、青表示(B)はX≦0.31、かつY≦0.3、緑表示はX≦0.30、かつ、0.3≦Yの領域の発色を示すものとする。本発明においては、それぞれの色領域を発色することができるように設けられている。もちろん、境界領域を若干ずらして設定して用いることもできるが、各色領域の主たる発色が境界領域以外のより色純度の高い部分の発色を用いていればよい。
よい発色の定義をさらに述べる。白表示(W)とは色度座標において、x=0.31、y=0.316に近いこと、反射率が40%以上あること、赤表示(R)はx=0.5、y=0.3の色座標に近いこと、反射率が25%以上あること、青表示(B)はx=0.15、y=0.1の色座標に近いこと、反射率が20%以下であること、緑表示はx=0.2、y=0.4の色座標に近いことと考えている。なお、色の測定にはミノルタ社のCR−200を用いた。
さらに、本発明について具体的に説明を進める。本発明において、両電極間での第1の液晶セルの液晶分子のツイスト角を160〜300°とすればよい。これは、160°未満では急峻な透過率変化が必要とされる高デューティ比での時分割駆動をした際の液晶の状態変化が少なく、300°超ではヒステリシスや光を散乱するドメインを生じやすいためである。
また、液晶層の液晶の屈折率異方性(Δn1 )とその液晶層の厚み(d1 )との積Δn1 ・d1 が0.30〜2.00μmとされる。これは、0.30μm未満では、電圧を印加したときの液晶の状態変化が小さいこと、2.00μm超では、視角や応答性が悪くなるからである。
特に、無彩色の発色を可能とし、電圧に対する色変化を大きくするために、液晶のねじれ角は170〜190°、または230〜250°とされることが好ましい。特に、180°または240°近傍が好ましい。高デューティ比でのマルチプレックス駆動を行う場合は240°のものが好ましい。なお、このΔn1 ・d1 の範囲は、その液晶表示素子の使用温度範囲内で満足されるようにされることが好ましく、使用温度範囲内で美しい表示が得られる。
もっとも室外使用を目的とした性能要求のために、使用温度範囲内の一部でのみ、この関係を満足するようにされることもある。この場合には、Δn1 ・d1 の範囲が上記範囲から外れる温度範囲では、表示の色が所望のものから外れたり、視野角特性が低下したりすることになる。
あるいは、或る色を発生させる駆動電圧が温度によって変化するため、温度変化に対応して駆動電圧が変化するように、温度補償回路が設置されていることが使いやすい装置となる。駆動電圧が温度に対してほぼ線形に変化する場合、温度に対して線形に駆動電圧が変化するように設定すればよい。
反射型カラー液晶表示装置において、発色の駆動電圧幅は狭い。よって、反射型カラー液晶表示装置を用いた電子機器の使用者が自分で駆動電圧を調整できるように、調整つまみが設けられていると使いやすい電子機器となる。
次に、液晶セルの構造について説明する。第1の液晶セルの形成は、所望のパターンにパターニングをしたITO(In2 O3 −SnO2 )、SnO2 等の透明電極を設けたプラスチック、ガラス等の基板の表面にポリイミド、ポリアミド等の膜を設け、この表面をラビングしたり、SiO等を斜め蒸着したりして配向制御膜を形成した透明電極付きの基板の間に、前記した誘電率異方性が正のネマチック液晶による160〜300°ねじれた液晶層を挟持するように設ける。
この代表的な例としては、多数の行列状の電極が形成されたドットマトリックス液晶表示素子があり、一方の基板に640本のストライプ状の電極が形成され、他方の基板にこれに直交するように400本のストライプ状の電極が形成され、640×400ドットのような表示がなされる。通常、ドットを形成するひとつの画素の寸法は270μm×270μm程度であり、画素間の間隙は30μm程度である。
なお、電極と配向制御膜との間に基板間短絡防止のためにTiO2 、SiO2 、Al2 O3 等の絶縁膜を設けたり、透明電極にAl、Cr、Ti等の低抵抗のリード電極を併設したりしてもよい。端辺はシール材で固定することにより、第1の液晶セルを作製する。
同様にガラス基板に、ポリイミドの薄膜を形成し、布によりラビングすることにより、配向制御膜を形成する。この基板を重ね合わせ、その中に液晶を入れ、端辺をシール材で固定することにより、第2の液晶セルを形成する。
第1の液晶セルと第2の液晶セルとは重ね合わせられ、積層された2層の液晶セルの片側に偏光板が配置される。この偏光板自体は液晶セルを構成する基板の外側に配置することが一般的である。なお、所望の光学性能の範囲内で、構造を簡易化し、生産性を向上するために、基板自体を偏光板で構成したり、基板と電極との間に偏光層を設けてもよい。
第1の液晶セルと第2の液晶セルへ重ね合わした偏光板に対して反対側の位置に、反射層を配置する。この反射層は凸凹された表面にAlを蒸着した物体を用いてもよい。また、Al以外に、Ag、Cr、Ni、Au、Wなどの金属を用いてもよい。また、AlやAg、Cr、Ni、Au、W等の薄膜の表面を凹凸に粗して用いてもよい。
なお、金属表面を凹凸に形成しても光はその偏光状態をほぼ維持したまま反射される。これは紙などの場合のように、偏光の反射がほとんどランダムになってしまうこととは異なる。したがって、液晶層を通過した光は金属の反射層によって、偏光状態が変化せずにほぼそのまま反射され、再び液晶層を通過する。
また、第2の液晶セルを上述したようなセル構造とせずに同等の光学的特性を有する位相差板とすることができる。特性的に同等なねじれ位相差板を用いてもよい。特性的に同等とは、光がある面から入射したとき、反対側の面から出射してくる光の偏光状態が同じであることを示す。
ねじれ位相差板は、光学的異方性を持つ分子を厚み方向にツイストさせて形成されたものである。分子のねじれ角、分子の持つΔn・dの大きさ、ねじれ方向がほぼ同じであれば、特性的に第2の液晶セルとほぼ同じものが形成できる。ねじれ位相差板を用いた場合、第2の液晶セルと同様に第1の液晶セルの基板の外側に配置しなくても、第1の液晶セルの液晶層と基板の間に挟んでもよい。
本発明では液晶表示装置を実際に作成するとともに液晶デバイスシミュレータを用いた。それは液晶の光学計算に広く用いられているバールマン(Berreman)の4×4マトリックス法という計算手法である。液晶層と補償セル(位相差板)の各Δn・dや、偏光板との間の相互の交差角に関する条件と光学特性(色の発色)の関係について計算を行った。
この計算手法では、最初に液晶の印加電圧に対する配向状態を計算する。次に、液晶、補償フィルム、偏光板等の光学部材を適当な厚みの層に分割し、その分割した層ごとに局所伝播マトリックス(local propagation matrix)を計算する。その後、各層の局所伝播マトリックスを掛け合わせ、光学部材全体の伝播マトリックス(propagation matrix)を計算する。最後に、その伝播マトリックスを用いて入射光に対する反射光および透過光を計算する。
この4×4マトリックス法を用いることにより各波長毎の透過率および反射率を計算できる。透感透過率および視感反射率を計算できるだけでなく、本発明のカラー液晶表示装置の色度座標のx値、y値等を高速かつ高精度で計算できた。この4×4マトリックス法は数値計算により実験結果を見事に再現できる手法として知られている。本発明の実施例について実験結果と対比した結果は有効精度内でほぼ一致することが確認できた。
実際のLCDには或る有限の透過率と波長特性を持つITOや、ガラス基板や、ギャップ制御用のスペーサなどがある。それらの影響を考慮すると、計算された透過率−印加電圧特性は実測結果をよく再現している。また、色度の計算結果についても、実測結果と良く一致しており、この4×4マトリックス法による計算は実験を代替できる。
本発明の反射型カラー液晶表示装置の基本構成を図1に示す。吸収軸18を有する偏光板1と反射層8の間に第1の液晶層6と位相差板3を備え、駆動回路10から3値以上の電圧値が選択されて第1の液晶層6にマルチプレックス駆動によって印加され、吸収軸18、第1の液晶セルの第1の配向方向14および第2の配向方向15、第2の液晶層の第1の配向方向16および第2の配向方向17の間のそれぞれの交差角θ1 、θ2 、θ3 、θ4 を所定角度に設定してある。角度の関係を平面的に図8に示す。なお、本発明で定義する角度の表示は回転方向を含むものとし、偏光板側から見た場合を示し、プラスの角度は時計回り、マイナスの角度は反時計回りを指す。
こうして形成された反射型カラー液晶表示装置に電圧を加えると、図5に示すような色変化および図6に示す反射率・電圧特性が得られる。駆動する電圧レベルにより色の発色が変化するので、色の選択は階調電圧レベルを選択することにより行う。
電圧を階調駆動する方法としては、フレーム階調、振幅階調、パルス幅階調など種々の方法が公知である。液晶に印加される実効電圧の大きさを変化させられる手法であれば、どんな方法でもよい。現在一般に用いられているのは、フレーム階調であるがこの手法を用いても良好な表示が得られている。また、疑似階調を用いてもよい。
また、複数の行電極を同時に選択する駆動法(一例を挙げると高速応答性の液晶に対し、複数の行電極を同時選択し、選択パルスを分散させることにより緩和を防止して、高コントラストの表示を得る高速表示のための駆動技術である。マルチラインセレクション法などと呼ばれる、例えば、米国特許第5262881号明細書に示された駆動方法)も採用できる。
これにより高速の表示であっても、コントラストを落さずに明るい反射型カラー表示が得られる。低消費電力化された液晶表示装置、もしくは高速表示用の液晶材料を用いても色純度を低下させずに動画対応可能な反射型カラー液晶表示装置を提供できる。
また、マルチプレックス駆動を用いるためには、電圧に対する光学的変化を大きくする必要がある。本発明において、それを実現するために以下の点について配慮しなければならない。
まず、最初に、液晶のねじれ角を大きくすることである。これはシェーファー(Scheffer)らによって指摘されていたことである。これにより、電圧に対する液晶分子の変化を大きくすることができ、電圧に対する光学的変化を大きくすることが可能となった。
次に、反射層が配置されている側の偏光板をなくしたことである。電圧に対する液晶層のΔn・d変化は同じでも光は同じ光路をもう一度通るので、実質的なΔn・dの変化は2倍変化したものと考えることができる。つまり光学的変化が大きくなることとなる。
従来、反射層は、偏光板の外側に配置しなければならなかったが、この構成では反射層側に偏光板がないのでその必要はない。量産に用いられている偏光板は、高温高湿環境に置かれると、耐久性が低くなるので基板の液晶側に偏光板を配置することは、実用上の信頼性に問題がある。よって偏光板は基板の外側(反液晶セル側)に配置されるため、反射層は当然基板の外側に配置される。
このとき、反射層が液晶から基板の厚み分、離れているため、透過(白)背景で非透過(黒)表示を行う反射型液晶表示装置を見ると、黒表示の影が観察される。これは、黒表示したいところは明るくなり、白表示したいところは暗くなるため、視認性が大きく減少する。
さらに、液晶から反射層までの距離が短ければ短いほど、視認性は向上する。基板の液晶側に反射層が配置されればよい。例えば、基板の液晶側に反射層を配置し、その上に電極を配置すればよい。
具体的には、ガラス基板の表面を凹凸にしAlの薄膜を形成し反射層とし、その上に絶縁膜を形成し、その上にITOの膜を形成し、所望のパターンにITOをパターニングをする。この上にさらに絶縁膜、配向膜を形成し、その上に液晶層となる。
また、ITOの電極の代わりに、Al等の反射特性を持つ材料を電極に用いてもよい。Al以外に、Ag、Cr、Ni、Au、Wなどの金属が考えられる。反射率から考えると銀が最も望ましいが、量産性やコストとの兼ね合いで材料を選択すればよい。
本発明の反射型カラー液晶表示装置は、光が液晶セルを2度通過して発色するため、液晶セルから反射板までの距離がより短いことが、色純度のより良好な表示となる。
液晶セルから反射板までの距離を短くする方法としては、例えば反射板側の基板の厚みを薄くする。通常基板として用いられているガラス基板の厚みは1.1mmや0.7mmが多い。このガラス基板を0.4mm厚のガラス基板に変更するとよい。さらに薄い0.3mmや0.1mm以下のガラス基板を用いるとさらによい。0.4mm以下の厚みのガラスで、大きなサイズの反射型カラー液晶表示装置を作ると、ガラス基板は割れやすく、使用上または製造上問題となる。その対策としては、反射板側の基板の厚みを0.4mm以下とし、偏光板側の基板の厚みを0.4mm以上とすると割れにくくなり、使用上または製造上有益である。
ガラス基板の代わりにポリカーボネートやアクリル樹脂などのプラスチックを用いると、薄く軽く割れにくい反射型カラー液晶表示装置ができる。また、液晶セルと反射板の距離を短くする方法として、反射板を液晶セルの基板の液晶側に作成すれば、液晶と反射板の距離は更に短くなるので、色純度は改善される。
例えば、ガラス基板の表面をフッ酸等でエッチングすることにより凹凸にする。またはガラス表面に数μm〜数10μmの径を持つ粒子を配置させることにより、表面に凹凸を形成する方法などがある。反射板の凹凸は、10〜20μmピッチでピークからピークまでの凹凸が1〜2μm程度にするのが、反射輝度が高く見栄えがよい。
そして、凹凸の表面に蒸着またはスパッタ等でAlの薄膜を形成し反射層とする。Al以外に、Ag、Cr、Ni、Au、Wなどを用いてもよい。Alの上に凹凸を平坦化する平坦化膜または絶縁膜を形成する。さらにその上に透明電極を形成し、所望のパターンにパターニングする。 また、電極に反射板としての機能を持たしてもよい。
電極を反射層にした場合、例えばストライプ状にパターニングした場合、線間は反射されない状態となる。線間に入った光は反射に利用されないことになる。これでは暗い状態となってしまうので、基板の外側(反液晶セル側)に反射層をさらに配置してもよい。
本発明は、カラーフィルタを用いずに、マルチプレックス駆動が可能で、非選択波形のときに明るい白表示が可能で、選択波形または選択波形と非選択波形の中間の電圧を印加したときに、青または緑または赤の発色が可能とすることである。
言い換えれば、電圧を印加されないとき、または電圧が低いときに、ほぼ無彩色表示ができ、かつ電圧を印加してカラー表示を実現できる反射型カラー液晶表示装置が得られる。
なお、このカラー液晶表示装置は偏光板を1枚しか用いていないため、明るい表示が可能である。よって、バックライトが無くても非常に明るい反射型カラー液晶表示装置として使用できる。バックライトを設ける必要がないので、低消費電力化でき、特に携帯用に適する。また、液晶表示装置の厚みを相対的に薄くできる。
特に、電極を反射層として用いると、影が発生したり、色の濁り等が発生せず視認性の極めて高い表示が可能となる。この際、反射層の材料として銀を用いるとその高い反射能と合わせてより明るいカラー表示が得られる。
次に、フレーム階調について詳細に説明する。本発明に用いるマルチプレックス駆動において、表示画素(オン画素)を作るための波形をオン波形、非表示画素(オフ画素)を作るための波形をオフ波形と呼ぶ。
まず、デューティ比やバイアス電圧によって、オン波形、オフ波形の形状やオン波形とオフ波形の印加実効電圧比が決定される。オン波形、オフ波形の1フレームでの印加実効電圧をそれぞれVON、VOFF とする。例えば、最適バイアス法を用いると、1/200デューティの場合、VON/VOFF =1.07であり、1/128デューティのとき、VON/VOFF =1.09であり、1/64デューティのとき、VON/VOFF =1.13であり、1/32デューティのとき、VON/VOFF =1.20であり、1/16デューティのとき、VON/VOFF =1.29である。
通常、表示画素はVONの実効電圧が印加され、非表示画素はVOFF の実効電圧が印加されるだけである。つまり、VONとVOFF の中間の実効電圧を印加できない。
しかし、今、仮に7フレームのうちで、1回オン波形のフレームを印加し、6回オフ波形のフレームを印加するように設定すると、画素には、1フレームに対して(VON+VOFF ×6)/7の平均実効電圧が印加されることとなる。つまり、VONとVOFF の中間の実効電圧が印加可能となることを意味する。7フレームの中で、3回オン波形のフレームを印加し、4回オフ波形のフレームを印加するように設定すると、画素には、1フレームに対して(VON×3+VOFF ×4)/7の平均実効電圧が印加されることとなる。
このような手法によれば、7フレームを用いることにより、8階調の実効電圧レベルが可能となる。図1を参照し、より詳細に説明する。図1では第1の液晶層6を挟持する電極(図示を省略している)間に駆動回路10からフレーム変調の駆動波形を供給する。
駆動波形において、縦軸が電圧値、横軸が時間である。V3、V2、V1は基準0Vからの電圧値を示し、T1、T2、T3は時間幅を示す。マルチプレックス駆動により、1画素に印加される波形は、例えば1/200デユーティ、1/15バイアスで駆動したときに、表示画素に印加されるオン波形は(a)のように、非表示画素に印加されるオフ波形は(b)のようになる。
1/200デューティで1/15バイアスのとき、V3:V2:V1=15:13:1であり、(T1+T2+T3):T2=200:1である。ここで、(T1+T2+T3)を1フレームと呼ぶ。T2は走査時を表し、T1とT3は非走査時を表す。V1は走査時の表示画素に印加される電圧の高さを、V2は走査時の非表示画素に印加される電圧の高さを、V3は非走査時に印加される電圧の高さを表す。
(a)の1フレームで印加される実効電圧はVONで表され、(b)の1フレームで印加される実効電圧はVOFF で表されるものとする。一般に、液晶に印加される電圧は交流化される。なぜなら、液晶にDC電圧が印加されると液晶の分解が起こるためなどである。
(a)は、1フレームの後に、反転させたフレームを印加させ交流化する方法を示す。このように、2フレーム毎で交流化すると低周波成分が増大するため、解決策としてライン反転駆動方式を採用するのが一般的である。1フレーム内でも、一定のライン数を駆動する毎に極性を変えていく方法である。以下、2フレーム毎で交流化することを考えると、8階調を行うのに14フレームを必要とする。
(a)に14フレーム全てが走査時の電圧がV1または−V1の波形を表す。このとき印加される1フレームの平均実効電圧はVONとなる。(b)に14フレーム全てが走査時の電圧がV2または−V2の波形を表す。このとき印加される1フレームの平均実効電圧はVOFF となる。(c)に14フレーム中の6フレームだけがV1で8フレームがV2の波形を表す。
このとき印加される1フレームの平均実効電圧は(VON×6+VOFF ×8)/14の値となる。(d)に14フレーム中の2フレームがV1で12フレームがV2の波形を示す。このとき印加される1フレームの平均実効電圧は(VON×2+VOFF ×12)/14となる。
このように、オン波形のフレームとオフ波形のフレームが混ざって印加される場合を選択することにより、オン波形のみによる実効電圧とオフ波形のみによる実効電圧の間の実効電圧を選択できる。
まずグループAの例について説明する。
(グループA)
(例A1)
図2は本例を模式的に表した断面図である。図2において、偏光板1、第2の液晶セル4、第1の液晶セル6、および反射層8とが順に設けられている。第2の液晶セル4は、液晶層4L、第2の液晶セルの第1の基板4A、第2の液晶セルの第2の基板4D、第2の液晶セルの第1の配向制御膜4B、第2の液晶セルの第2の配向制御膜4Cを有する。
第1の液晶セル6は、液晶層6L、第1の液晶セルの第1の基板6A、第1の液晶セルの第2の基板6D、第1の液晶セルの第1の電極6E(第1の基板6A側)、第1の液晶セルの第1の配向制御膜6B、第1の液晶セルの第2の配向制御膜6C、第1の液晶セルの第2の電極6F(第2の基板6D側)、絶縁層6E、6Hなどを有する。また、図示を省略した駆動回路から第1の液晶セルの上下の電極(第1の電極6E、第2の電極6F)に駆動電圧が印加される。
また、液晶セル6においては、液晶層6Lの周辺シール、電極と配向制御膜との間に配置される絶縁膜、遮光膜、引き出し電極端子、下地膜、保護膜、その他の通常の液晶セルに用いられる構成要素が備えられている。なお、液晶セルの詳細な構造の説明は省略している。次に、液晶セル6の形成について説明する。
まず、透明電極(ITO)の付いたガラス基板を、ITOをストライプ状にパターニングし、一方の電極である第1の電極6Bとし、その上に、TiO2 とSiO2 の薄膜を作製し、絶縁膜を形成し、ポリイミドの薄膜を形成し、布によりラビングすることにより、第1の配向膜制御6Bを形成した。この基板および同様に形成したもう1枚の基板とをストライプ状の電極が交差するように2枚重ね合わせ、その中に液晶材料を入れ、端辺をシール材で固定することにより、第1の液晶セルを形成した。
同様に、ガラス基板にポリイミドの薄膜を形成し、布によりラビングすることにより、配向制御膜4Bを形成した。この基板を重ね合わせ、その中に液晶材料を入れ、端辺をシール材で固定することにより、第2の液晶セル4を形成した。図2において偏光板側を上側、反射層側を下側と定義する。
図4において、第1の液晶セルの上側の液晶分子の配向方向を14、第1の液晶セルの下側の液晶分子の配向方向を15、第2の液晶セルの上側の液晶分子の配向方向を16、第2の液晶セルの下側の液晶分子の配向方向を17、偏光板の吸収軸を18とする。また、図4において、液晶分子の配向方向を示す矢印の方向(DLC)は、基板面(配向制御膜)に対して液晶分子が傾いている矢印方向を示すものとする。
また、第1の液晶セルの上側の液晶分子の配向方向14から第1の液晶セルの下側の液晶分子の配向方向15までの液晶ねじれ角を反時計回りにθ1 、第2の液晶セルの上側の液晶分子の配向方向16から第2の液晶セルの下側の液晶分子の配向方向17までの液晶ねじれ角を時計回りにθ2 とする。
また偏光板の吸収軸18から第2の液晶セルの上側の液晶分子の配向方向16までの時計回りの角度をθ4 とし、第2の液晶セルの下側の液晶分子の配向方向17と第1の液晶セルの上側の液晶分子の配向方向14までの時計回りの角度をθ3 とする。
また、本例では、第1の液晶セルを左螺旋、第2の液晶セルを右螺旋としたが、螺旋がそれぞれ逆であっても第1の液晶セルや第2の液晶セルの液晶分子の配向方向、偏光板の吸収軸方向との関係θ1 、θ2 、θ3 、θ4 の回転方向を逆にすることにより、上記の例と同様に容易にカラー表示が得られる。基本的にθ1 とθ2 との間には互換性がある。
そして、第1の液晶セルの屈折率異方性Δn1 と液晶層の厚みd1 を調整し液晶層のΔn1 ・d1 をほぼ0.95μmとした。第2の液晶セルの屈折率異方性Δn2 と液晶層の厚みd2 を調整し液晶層のΔn2 ・d2 もほぼ0.95μmとした。そして、θ1 =−180°、θ2 =180°、θ3 =110°、θ4 =45゜と設定した。
図5の発色状態を示す色度図(CIE 1931色度図の部分拡大図)に示すように印加される実効電圧の増大にともない、明るい白から、赤、青、緑の表示が得られた。パルス状階調電圧を印加することで発色が得られた。充分に視認できる良好な色純度を有するカラー液晶表示が達成できた。
この液晶表示素子を、1/32デューティで8階調駆動することにより、0/7レベルで白表示、3/7レベルで赤表示、5/7レベルで青表示、7/7レベルで緑表示が得られた。もちろん、スタティック駆動も可能である。なお、この色度は開口率約80%のドットマトリックス型表示素子の画素のない線間の部分のノイズを含んだものであって、実際に視認される色にほぼ近い。
表示画面の大きさとしては64×64ドットの表示を行った。本例の反射型カラー液晶表示装置を用いてグラフの表示を行った。背景色が白であって、棒グラフを赤、青、緑の3色表示とした。そのため視認性がきわめて向上した。
また、日程管理を表す場合に、重要な会議を赤表示として注意を促すことができた。また、カレンダーの表示を行う際には、土曜日と日曜日を赤表示とし、平日を青表示とし、今日の曜日を緑表示とした。この場合も背景色は白とした。
また、文章の表示を行った。背景色は同様に白として、文字を青表示とし、文中の或るブロックについて赤表示としてマーキングとした。表題は緑色表示とし、アンダーラインを緑または赤で表示した。
また、グラフィック表示は、白と赤と青と緑とを用い、中間電圧を多用することにより、白っぽい赤、紫、青緑を用いて、人間の顔を表現したり、景色をカラー表示することができた。
このように本例において、単純な白黒表示に比較すると明るく、また表示において視認性が改善され、さらに、作業性のよい環境を提供できた。
(例A2)
例A1の第2の液晶セルの代わりにほぼ同じ構成のねじれ位相差板を用いた。図3にその構成を示す。偏光板1、ねじれ位相差板5、第1の液晶セル(液晶層6L)、反射層8とを設けた。この例A2の実験結果は、例A1とほぼ同じ効果が得られた。
例A1がガラス基板を用いて第2の液晶セルを形成したのに対し、本例の位相差板はフイルムのみで作製されているので軽く、使用上携帯用途に適する。
(例A3)
例A1の第1の液晶セルの下側に張り付けた反射層の代わりに、下側の電極を反射層と兼用とした。具体的には、基板として用いられるガラス基板を、片側のみ露出させHF(フッ酸)につけて、ガラス表面を凹凸にし、その上にAlの蒸着を行う。その後、パターニングを行い、ストライプ状の電極を作製する。
さらに、その上にSiO2 とTiO2 の絶縁膜を作製し、その上にポリイミドの配向制御膜を作製した。この基板と、ITOの透明電極がストライプ状にパターニングされたものを、スペーサを介して重ね合わせ、周辺にシール材により固定し、液晶を注入し、第1の液晶セルを形成した。
電圧に対する発色等は、ほぼ例A1と同等の効果が得られた。さらに、電極と反射層を兼用にすることにより、影の発生がほとんどないので見やすく、色純度のよい表示が可能となった。この例A3において、Alの代わりにAgを用いて蒸着しても、同様の効果が得られた。
(例A4)
例A3と同じ構成において、第1の液晶セルの下側にさらに反射層を貼って構成した。このようにして、電極と反射層とを兼用にすると、電極のパターニングにより除去された電極部からは反射がなくなり暗くなるが、本例の構成とすれば、パターニングによって反射が無くなった部分からも基板の下側の反射層から反射が起きることにより明るい反射型の表示が得られた。
(例A5)
例A3の反射層兼用電極を次のように作製した。基板として用いられるガラス基板上に、半径が数μmの球状のガラスを付着させ、ガラス表面を凸凹にし、その上にAlの蒸着を行う。
その後、パターニングを行い、ストライプ状の電極を作製する。さらに、その上にSiO2 とTiO2 の絶縁膜を作製し、その上にポリイミドの配向制御膜を作製した。この基板と、ITOの透明絶縁膜がストライプ状にパターニングされたものを、スペーサを介して重ね合わせ、周辺にシール材により固定し、液晶を注入し、第1の液晶セルを作製した。これにより、前述した各例と同様に、影の発生がほとんど無く、色純度の良好な表示が可能となった。
また、半径が数μmの球状のガラスを付着させただけであると、表面の凹凸が大きいので、レベリング材により表面の凸凹を小さくすることにより、ギャップコントロールが簡単になり、色純度の良い表示を得ることが可能となった。
(例A6)
例A3の反射層兼用電極を次のように形成した。基板として用いられるガラス基板上には、鏡面状のAlの電極を作製し、パターニングを行い、ストライプ状の電極を作製する。さらに、その上にSiO2 とTiO2 の絶縁膜を作製し、その上にポリイミドの配向膜を作製した。
この基板と、ITOの透明絶縁膜がストライプ状にパターニングされたものを、スペーサを介して重ね合わせ、周辺にシール材により固定し、液晶を注入し、第1の液晶セルを作製した。このように反射層が鏡面として作用するときは、特定の角度で入射した光しか利用されない。
特定の方向から見た場合には良好な表示が得られるが、若干角度が変化すると急激に表示が悪くなる。そのため、観察者側に拡散板をおいたり、プリズムアレイをおいたり、レンチキュラーレンズをおいたりすることにより、視角の広い表示が得られた。
(例A7)
第1の液晶セルの屈折率異方性Δn1 と液晶層の厚みd1 を調整し、液晶層のΔn1 ・d1 をほぼ0.85μmとした。同様に、第2の液晶セルの屈折率異方性Δn2 と液晶層の厚みd2 を調整し、液晶層のΔn2 ・d2 をほぼ0.85μmとした。
θ1 =−240°、θ2 =240°、θ3 =110°、θ4 =45°と設定した。1/200デューティ、8階調のマルチプレックス駆動と同等の駆動波形で表示を行った。0/7で白表示、3/7で赤表示、5/7で青表示、7/7で緑表示を行うことができた。
しかし、色の純度は例A1のものに比較して相対的に淡く、充分鮮明なカラー表示は得られなかった。しかし、背景色に淡い地色が好まれるような表示に充分用いることができた。例えば、うすいピンク色の表示を提供できた。また、本例の液晶セルは従来の白黒STN液晶表示素子の製造工程を用いて素子形成を行いうるので好ましい。
さらに本発明を用いた別の例について説明する。PDA(パーソナルデジタルアシスタント)に、上記の例A1〜A7の反射型カラ−液晶表示装置を用いた。従来、カラー表示をする表示装置は、カラーフィルタを用いたTFT−LCDやSTN−LCDしかなかった。しかし、カラーフィルタを用いた液晶表示装置は透過率が低いため、反射型としては使えず、バックライトを必要とする。バックライトは消費電力が大きく、携帯用の端末としては、長時間使用ができない。バックライトを用いた液晶表示装置は、約2Wの消費電力である。
PDAの表示部として、この反射型カラー液晶表示装置を用いると、消費電力は約0.5Wであった。そのため、カラー表示をしながら、長時間使用が可能となった。また、従来の偏向板を2枚用いたタイプよりも、偏向板を1枚しか使用していないため、明るい表示が可能となった。
(グループB)
次に本発明に関するグループBの例を説明する。角度θ1 とθ2 はおよそ240°に設定される。その概要を表1に示す。基本的な構成とその製造方法は上述した例A1〜A7と同様である。
θ3 とθ4 がある関係を満たすと、明るく色純度の良い発色を得ることができる。その関係を図7に示す。斜線で囲まれる範囲が良い発色が得られるところである。
図9には、6つの斜線部が示されている。これらは、横軸(θ4 )、縦軸(θ3 )の座標位置が、ほぼ(10°,110°)を中心としてほぼ5〜10°に相当する長さの直径を有する円と、ほぼ(60°,110°)を中心としてほぼ10°に相当する長さの直径を有する円と、座標位置がほぼ(25°,95°)および(115°,95°)を中心としてほぼ25〜30°に相当する長さの直径を有する円と、座標位置がほぼ(50°,115°)および(140°,115°)を中心としてほぼ30°に相当する長さの長径とほぼ15〜20°に相当する長さの短径を有する縦長の楕円の領域である。
また、液晶セルのΔn1 ・d1 とねじれ位相差板のΔn2 ・d2 がある関係を満たすと、明るく色純度の良い発色を得ることができる。その関係を図10に示す。斜線で囲まれる範囲が良い発色を得られるところである。
図10には、5つの斜線部が示されている。これらは、横軸(Δn2 ・d2 )、縦軸(Δn1 ・d1 )の座標位置が(0.6,1.1)、(0.9,1.05)を中心としてほぼ0.05μmに相当する長さの直径を有する円と、座標位置がほぼ(0.75,1.35)を中心として約0.3μmに相当する長径と約0.2μmに相当する短径を有する縦長の楕円と、座標位置がほぼ(0.85〜0.9,0.85〜0.9)を中心とし長径が45°右上りで約0.15μm、短径が約0.1μmの楕円、および座標位置がほぼ(1.3,1.25)を中心とし長径が45°右上りで約0.2〜0.25μm、短径が約0.1μmの楕円の領域である。
図11〜図17に例B1〜B7、図42〜図44に例B8〜B10の発色ループを示す色度座標と印加電圧と反射率との関係を示すグラフをそれぞれ示す。表4、表5(例B8)、表6、表7(例B9)、表8、表9(例B10)にコンピュータシミュレーションによる印加電圧(V)と透過率(%)、および色データ(X−Y座標値)を示す。
図18は公知例の発色を示す。図19は比較例B0の場合を示す。グループAの中で、例B8、B9、B10は色の純度が特によく、かつ明るい表示が可能となり、表示素子として視認性にすぐれており、種々の応用に供しうる。
(グループC)
次に本発明に関するグループCの例を説明する。角度θ1 とθ2 はおよそ180°に設定される。その概要を表2に示す。基本的な構成とその製造方法は上述した例A1〜A7と同様である。
θ3 とθ4 がある関係を満たすと、明るく色純度のよい発色が得られる。その関係を図4に示す。斜線で囲まれる範囲がよい発色が得られるところである。格子で囲まれる範囲(斜線が重なった範囲)が、さらによい発色が得られるところである。
図20には、4つの斜線部が示されている。これらは、横軸(θ4 )、縦軸(θ3 )の座標系において、中心座標がほぼ(20°,90°)および(110°,90°)で直径が約10°に相当する2つのほぼ円形の範囲と、縦軸が約80〜125°で、横軸が約35〜70°、および約125〜160°の2つの矩形領域におさまる形状の範囲である。特に発色のよい領域は、縦軸が約95〜110°で、横軸が約45〜65°、および約135〜155°の2つの矩形領域内におさまる範囲である。
また、液晶セルのΔn1 ・d1 とねじれ位相差板のΔn2 ・d2 がある関係を満たすと、明るく色純度のよい発色が得られる。その関係を図21に示す。斜線で囲まれる範囲がよい発色を得られるところである。
図21には、2つの斜線部が示されている。これらは、横軸(Δn2 ・d2 ),縦軸(Δn1 ・d1 )の座標系において、中心座標がほぼ(0.85,1.0)で、直径約0.1μmのほぼ円形の小領域と、縦軸が約0.9〜1.45で、横軸が約0.9〜1.35の矩形内におさまる斜め右上りの楕円体またはそれに近い形状の範囲である。
図22〜図27に例C1〜C6の発色ループを示す色度座標と印加電圧と反射率との関係を示すグラフをそれぞれ示す。
(グループD)
次に本発明に関するグループDの例を説明する。角度θ1 とθ2 はおよそ240°に設定される。その概要を表3に示す。基本的な構成とその製造方法は上述した例A1〜A7と同様である。
θ1 が240°ツイストで、Δn2 ・d2 が0.845μmのとき、ねじれ位相差板のねじれ角θ2 と液晶セルのΔn1 ・d1 が、ある関係を満たすと、明るく色純度のよい発色が得られる。その関係を図28に示す。斜線で囲まれる範囲がよい発色が得られるところである。
図28には、3つの斜線部が示されている。これらは、横軸(θ2 )、縦軸(Δn1 ・d1 )の座標位置が、ほぼ(100°,1.1μm)を中心とする長辺約0.45、短辺40°の長さに相当する縦長の矩形内におさまる略とっくり形状の範囲と、中心座標がほぼ(190°,1.35μm)で長径約80°、短径約0.3μmの長さに相当する横長の矩形内におさまる略楕円形状の範囲と、中心座標がほぼ(240°,0.9μm)で長辺約30°、短辺約0.2μmの長さに相当する横長の矩形内におさまる略楕円形状の範囲である。
θ1 が240°ツイストで、Δn2 ・d2 が0.845μmのとき、θ3 とθ4 が、ある関係を満たすと、明るく色純度のよい発色が得られる。その関係を図29に示す。斜線で囲まれる範囲がよい発色が得られるところである。
図29には、7つの斜線部が示されている。これらは、横軸(θ4 )、縦軸(θ3 )の座標系で、中心座標がほぼ(10°,105°)で、長辺約20°、短辺約10°に相当する縦長の矩形内におさまる略楕円形状の範囲と、中心座標がほぼ(40°,105°)で、縦約30°、横約30°の矩形内におさまる斜め右上がりの長体形状の範囲と、中心座標がほぼ(85°,105°)で、縦約20〜25°、横約25〜30°の矩形内におさまる左上がりの変形楕円形状の範囲と、中心座標がほぼ(130°,105°)で、縦約30°、横約30°の矩形内におさまる斜め右上がりの長体形状の範囲と、中心座標がほぼ(170°,105〜110°)で、縦約20°、横約15°の矩形内におさまる略縦長の楕円形状の範囲と、中心座標がほぼ(55°,50°)で、縦約15°、横約20°の矩形内におさまる横長の略楕円形状の範囲と、中心座標がほぼ(150°,50°)で、縦約15°、横約15°の矩形内におさまる略円形の範囲である。
θ1 が240°ツイストで、Δn2 ・d2 が1.04μmのとき、ねじれ位相差板のねじれ角θ2 と液晶セルのΔn1 ・d1 が、ある関係を満たすと、明るく色純度のよい発色が得られる。その関係を図30に示す。斜線で囲まれる範囲がよい発色が得られるところである。
図30には、1つの斜線部が示されている。これは、横軸(θ2 )、縦軸(Δn1 ・d1 )の座標系で、中心座標がほぼ(170〜175°,1.05μm )で、縦約0.25μm、横約25°の矩形内におさまる縦長の変形楕円形状の範囲である。
θ1 が240°ツイストで、Δn2 ・d2 が1.04μmのとき、θ3 とθ4 が、ある関係を満たすと、明るく色純度のよい発色が得られる。その関係を図7に示す。斜線で囲まれる範囲がよい発色が得られるところである。
図31には、8つの斜線部が示されている。これらは、横軸(θ4 )、縦軸(θ3 )の座標系で、中心座標がほぼ(10°,110°)で、縦約10°、横約10°の矩形内におさまる略円形の範囲と、中心座標がほぼ(30°,100〜105°)で、縦約15°、横約15°の矩形内におさまる略右上がりの楕円形状の範囲と、中心座標がほぼ(40°,90°)で、縦約20°、横約20°の矩形内におさまる円形に近い右上がりの略楕円形状の範囲と、中心座標がほぼ(70°,80°)で、縦約20°、横約20°の矩形内におさまる円形に近い右上がりの略楕円形状の範囲である。
さらに、中心座標がほぼ(100°,110°)で、縦約15°、横約15〜20°の矩形内におさまるほぼ円形の範囲と、中心座標がほぼ(120°,100°)で、縦約10°、横約10°の矩形内におさまる略円形の範囲と、中心座標がほぼ(125〜130°,90°)で、縦約15°、横約10°の矩形内におさまる略縦長の楕円形状の範囲と、中心座標がほぼ(155°,80°)で、縦約15°、横約20°の矩形内におさまる横長の変形楕円形状の範囲である。
液晶セルのねじれ角θ1 は、160°〜300°までよいが、特に230〜250°とされることがよい発色を得るには好ましい。特に、240°近傍が好ましい。
ねじれ位相差板のねじれ角θ2 は、液晶セルのねじれ角θ1 より小さいことがよい。θ2 は各条件によって最適値が異なる。例えば、θ1 が240°ツイストで、Δn2 ・d2 が0.845μmのとき、θ2 は80〜120°であることがよい。またθ1 が240°ツイストで、Δn2 ・d2 が1.04μmのとき、θ2 は160〜190°であることがよい。
図32〜図41に例D1〜D10の発色ループを示す色度座標と印加電圧と反射率との関係を示すグラフをそれぞれ示す。
以上説明したグループB〜Dの各例においては、マトリックスによって構成される画素のサイズは400×400μmとした。また、反射層側の透明基板の厚みを0.4mmとした。次に、反射を利用してカラー表示を得る本発明における画素サイズと透明基板の厚みについて説明する。
図45に反射型カラー液晶表示装置の断面図と光路とを示す。図中のΦは実質的に良好な発色が視認できる開き角の範囲を示す。このΦは実用的な範囲で広い方が好ましい。本発明では少なくとも20°の角度範囲が得られるようにする。また、図46に透明基板(光の進行方向の後方に配置されたガラス基板などが用いられる)の厚みTと画素の線幅と開き角Φとの関係を示す。
この開き角Φの範囲内で良好な色表示を見ることができる。この開き角よりも大きな範囲では色純度が低下する傾向を示す。近似的に、(反射層側の透明基板の厚みT)≦1.4・(画素サイズ)の関係を満足すると良好な発色が得られる。より好ましくは、T≦1.2・(画素サイズ)とする。さらに、基板の厚みが薄い、T≦1.0・(画素サイズ)の条件下では高い色純度の表示が得られる。
本発明の液晶表示素子はパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、魚群探知機、車載用のインスツルメンツパネル、公衆電話の表示、公衆表示装置、行き先案内表示、情報端末機、産業用の情報表示機器(例えば、コピー機の操作パネルにおける動作状態表示(赤をコピー中、枚数を緑表示、線を青表示、背景を白表示とする)または、動力機器の運転表示(背景色を白、運転状態を緑、危険表示を赤とする)など、各種の民生用のドットマトリックス表示装置(オーディオ機器、時計、ゲーム機器、アミューズメント、通信機器、カーナビゲーション、カメラ、TV電話、電卓の表示)などの表示機能を担う機能要素として使用できる。
特に、本発明の反射型カラー液晶表示装置は低消費電力で使用できることから、なかでも携帯用の電子機器、例えば、携帯電話、電子手帳、電子ブック、電子辞書、PDA(携帯情報端末)、ページャー(ポケットベル)、携帯用パーソナルコンピュータなどに用いた場合に、その高い視認性、表現力と合わせて高い機能性を発揮する。さらに、本発明はその効果を損しない範囲で種々の応用ができる。例えば、視認性に優れるため、タッチパネルや視線制御による液晶装置などにも好ましく採用できる。
本発明の基本構成を示す模式図。
例A1を模式的に表した断面図。
例A2を模式的に表した断面図。
例A1における偏光板の吸収軸、第1の液晶セルおよび第2の液晶セルの配向方向との角度関係を示した平面図。
例A1の電圧に対する色変化を示す色度図。
例A1の電圧に対する反射率を示すグラフ。
グループB、CおよびDの例における断面を示す模式図。
グループB、CおよびDの各例における角度関係を示す模式図。
発色のよいθ3 とθ4 の領域を示す模式図。
発色のよいΔn1 ・d1 とΔn2 ・d2 の領域を示す模式図。
分図11aは例B1の電圧に対する色変化を示す色度図、分図11bは例B1の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図12aは例B2の電圧に対する色変化を示す色度図、分図12bは例B2の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図13aは例B3の電圧に対する色変化を示す色度図、分図13bは例B3の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図14aは例B4の電圧に対する色変化を示す色度図、分図14bは例B4の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図15aは例B5の電圧に対する色変化を示す色度図、分図15bは例B5の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図16aは例B6の電圧に対する色変化を示す色度図、分図16bは例B6の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図17aは例B7の電圧に対する色変化を示す色度図、分図17bは例B7の電圧に対する色変化を示すグラフ。
公知例の発色ループを示す色度図。
分図19aは比較例B0の電圧に対する色変化を示す色度図、分図19bは比較例B0の電圧に対する色変化を示すグラフ。
グループCにおける発色のよいθ3 とθ4 の領域を示す模式図。
グループCにおける発色のよいΔn1 ・d1 とΔn2 ・d2 の領域を示す模式図。
分図22aは例C1の電圧に対する色変化を示す色度図、分図22bは例C1の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図23aは例C2の電圧に対する色変化を示す色度図、分図23bは例C2の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図24aは例C3の電圧に対する色変化を示す色度図、分図24bは例C3の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図25aは例C4の電圧に対する色変化を示す色度図、分図25bは例C4の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図26aは例C5の電圧に対する色変化を示す色度図、分図26bは例C5の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図27aは例C6の電圧に対する色変化を示す色度図、分図27bは例C6の電圧に対する色変化を示すグラフ。
グループD(Δn2 ・d2 =0.845um)における発色のよいΔn1 ・d1 とθ2 の領域を示す模式図。
グループD(Δn2 ・d2 =0.845um)における発色のよいθ3 とθ4 の領域を示す模式図。
グループD(Δn2 ・d2 =1.04um)における発色のよいΔn1 ・d1 とθ2 の領域を示す模式図。
グループD(Δn2 ・d2 =1.04um)における発色のよいθ3 とθ4 の領域を示す模式図。
分図32aは例D1の電圧に対する色変化を示す色度図、分図32bは例D1の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図33aは例D2の電圧に対する色変化を示す色度図、分図33bは例D2の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図34aは例D3の電圧に対する色変化を示す色度図、分図34bは例D3の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図35aは例D4の電圧に対する色変化を示す色度図、分図35bは例D4の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図36aは例D5の電圧に対する色変化を示す色度図、分図36bは例D5の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図37aは例D6の電圧に対する色変化を示す色度図、分図37bは例D6の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図38aは例D7の電圧に対する色変化を示す色度図、分図38bは例D7の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図39aは例D8の電圧に対する色変化を示す色度図、分図39bは例D8の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図40aは例D9の電圧に対する色変化を示す色度図、分図40bは例D9の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図41aは例D10の電圧に対する色変化を示す色度図、分図41bは例D10の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図42aは例B8の電圧に対する色変化を示す色度図、分図42bは例B8の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図43aは例B9の電圧に対する色変化を示す色度図、分図43bは例B9の電圧に対する色変化を示すグラフ。
分図44aは例B10の電圧に対する色変化を示す色度図、分図44bは例B10の電圧に対する色変化を示すグラフ。
液晶セルの断面と光路を示す模式図。
開き角Φと基板の厚みTとの関係を示すグラフ。
符号の説明
1:偏光板
3:位相差板
6:液晶層
8:反射層
10:駆動回路
14:第1の液晶セルの上側の液晶分子配向方向(第1の配向方向)
15:第1の液晶セルの下側の液晶分子配向方向(第2の配向方向)
16:位相差板(第2の液晶セル)の第1の光学異方軸
17:位相差板(第2の液晶セル)の第2の光学異方軸
18:偏光板の吸収軸