JP2004286253A - 冷媒高圧回避方法およびそれを用いた空気調和システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧縮機と、複数個の室外熱交換器に分割可能に使用される室外熱交換器を内蔵した室外ユニットと、当該室外ユニットとユニット間配管を介してつながれ、室内熱交換器を各々内蔵した複数個の室外ユニットとを備えた空気調和システムであって、稼働中の室内ユニットの運転容量に応じて前記複数個の室外熱交換器を選択的に使用可能な空気調和システムにおいて、暖房運転時に冷媒圧が異常高圧状態である場合に、当該複数個の室外熱交換器のうちの未使用状態にある少なくとも一つの室外熱交換器内に、冷媒回路内を循環する冷媒の一部を取り入れ、寝込ませることを特徴とする。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、室外熱交換器を内蔵した室外ユニットと、室内熱交換器を内蔵した複数台の室内ユニットとから構成された空気調和装置のための冷媒高圧回避方法並びにそれを用いた空気調和システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
複数台の室内ユニットを利用して冷暖房動作を行う空気調和システムとして、並列に配置され、各々室内熱交換器を有した複数台の室内ユニットと、これらの室内ユニットにユニット間配管を介してつながれた、圧縮機、室外熱交換器等を内蔵した室外ユニットとから構成され、室内ユニットが配置される複数室の全てを同時に冷房又は同時に暖房できるマルチ形空気調和システムや、室外熱交換器を内蔵した室外ユニットと、高圧管、低圧管および液管を介して室外ユニットにつながれ、各々室内熱交換器を内蔵した複数台の室内ユニットとから構成され、室内ユニットが配置される複数室の全てを同時に冷房又は暖房でき、且つ、同時に複数室の幾つかの室を冷房し、他室を暖房できる冷暖房同時(3−ウェイ)マルチ形空気調和システムが知られている。
【0003】
上述した空気調和システムにおいて、例えば、暖房運転時に運転室内ユニットの運転容量が小さい場合(例えば、20馬力システム(室外ユニットの定格冷凍能力が20馬力)において、1馬力の室内ユニットのみが暖房運転される場合)、室外熱交換器の蒸発器能力(20馬力)に対して室内熱交換器の凝縮器能力(1馬力)が極めて小さくなり、冷媒の圧力が高くなり、冷媒回路の保護装置(高圧スイッチ等)が作動し、空気調和システムの運転が継続困難となる場合があった。
【0004】
このような問題を解決するために、以下のような幾つかの解決方法が利用されていた。
【0005】
例えば、上述したマルチ形空気調和システムの場合、(1)暖房運転中に冷媒圧力が高くなった場合に、停止中の室内ユニットの膨張弁を開き冷媒を流した上で、室内ファンを微風にして運転し、その室内ユニットの室内熱交換器で冷媒を凝縮させることによって(すなわち、凝縮器を増やすことで)、空気調和システム内の冷媒圧力の高圧上昇を防止する方法、(2)圧縮機から吐出された高温高圧ガス冷媒の一部を、室外ユニットに搭載されたバイパス弁を開くことで、圧縮機吸い込み側へ室内ユニットを介することなく直接戻すことで(すなわち、冷媒循環量を低下させることで)、空気調和システム全体の能力を低下させ、冷媒圧力の高圧上昇を防止する方法、(3)圧縮機の回転速度を下げて冷媒循環量を低下させることで、冷媒圧力の高圧を低減させる方法、または、(4)室外熱交換器入り口に搭載された膨張弁の開度を小さくすることにより、冷媒循環量を低下させ、冷媒圧力の高圧を低減させる方法等が利用されている。
【0006】
一方、上述の3−ウェイタイプのマルチ形空気調和システムの場合、各室内ユニット毎に冷媒の流れ方向(冷房方向、暖房方向)を制御するための電磁弁ユニットが設けられている。ここで、室外ユニットの熱交換器が蒸発器として作用し、小容量の室内ユニットが暖房運転し、他の室内ユニットが全て停止している場合、その停止中の室内ユニットの電磁ユニットは無通電状態、すなわち、これらの全ての電磁ユニットが閉状態となっているため、上述した(1)の方法は利用できない。従って、この場合、停止中の室内ユニットの電磁弁ユニットの吐出弁を特別に開くことで、停止中の室内ユニットの室内熱交換器中で冷媒を凝縮している((5)の方法)。
【0007】
また、3−ウェイタイプのマルチ形空気調和システムでは、室外熱交換器を分割して利用することが一般的に行われている。これは、室外熱交換器を複数(例えば、2つ)に分割して、運転駆動される室内ユニットの熱交換器容量に応じた任意の室外熱交換器を駆動して、空気調和運転(冷暖房運転)を行うものである。この場合、例えば、20馬力の熱交換器を15馬力と5馬力に2分割した場合、前述の室内小容量暖房時には、5馬力の室外熱交換器のみを蒸発器として作用させる(15馬力の熱交換器は電動弁、電磁弁を閉として、使用しない)ことにより、室内熱交換器と室外熱交換器との熱アンバランスをできる限り軽減させ、空気調和装置内の冷媒の高圧上昇を防止している((6)の方法)(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−3326637号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような冷媒圧力の高圧化を防止する方法を用いた場合、例えば、(1)の方法では、ユーザの意図しない暖房運転が行われることになり、冷媒音や室温上昇などの原因になったりする。また、(2)の方法では、バイパス弁の利用により無駄な冷媒の循環が発生し、COP(成績係数)が低下する。さらには、圧縮機から吐出された高温ガス冷媒を直接吸い込みへ戻すため、圧縮機は再度高温ガスを圧縮することになり、冷媒温度の上昇が問題となり、条件によっては、圧縮機(あるいは冷凍機油)を保護するための保護装置(圧縮機吐出温度異常)が働き、空気調和装置の運転継続が困難になる場合がある。さらに、(3)の方法では、圧縮機の駆動にエンジンを用いるGHP(ガスヒートポンプ)では、最低回転数に制限があり、これ以下ではエンジンストールが生じる。従って、圧縮機を最低回転数以下まで低下させても、冷媒圧の高圧の上昇が防止できない。さらに、(4)の方法では、室外熱膨張弁を絞ることによって、空気調和装置の液管内に液冷媒が溜まっていくが、液管の容量を超えた冷媒については暖房運転中の室内熱交換器内に溜まることになる。この場合、暖房室内ユニットの吹き出し温度が低下することになり、これを防ぐために、液管にレシーバータンクを搭載し、冷媒のバッファとする必要が発生する。しかしながら、この場合でも、結局このレシーバタンクの容量を超えた場合は、同様の現象が発生することになる。また、レシーバータンクの容量を空気調和システムの冷媒量に対して十分な大きさとするには、レシーバタンクが高圧容器であるために、その肉厚などを大きくする必要があり、大容量の空気調和装置においては、コスト的に大きな問題となる。
【0010】
一方、3−ウェイタイプのマルチ形空気調和装置では、停止中の室内ユニットの電磁弁ユニットの吐出弁を特別に開き、停止中の室内ユニットの室内熱交換器中で冷媒を凝縮させることで冷媒圧力の高圧化を防止しているが((5)の方法)、停止中の室内ユニットの電磁弁が開くことにより、その室内ユニットの室内熱交換器へ急激な冷媒の流れ込みが発生し、著しい冷媒音が発生する。また、電磁弁の励磁音、開閉回路の増加による耐久性の問題も生じる。
【0011】
さらに、室外熱交換器の分割利用により冷媒圧力の高圧化を防止する方法((6)の方法)では、例えば、20馬力の室外ユニットにおいて、室外熱交換器の分割比を15:5に設定した場合、室内ユニットが5馬力の暖房運転をしている場合は、室外ユニットは小さい方の室外熱交換器1台を蒸発器として作用させることにより、熱交換量のバランスを保っている。ここで、室内ユニットの容量が1馬力となった場合は、やはり室外ユニット側の熱交換器容量が大きすぎるため、冷媒圧力の高圧上昇を招くことになる。一方、同様の室外ユニットにおいて、分割比を19:1に設定した場合、小容量熱交換器と大容量熱交換器との容量差が大きすぎるため、中間的な容量を補完することが困難となる。これらを解決するためには、室外熱交換器をさらに細分化(例えば、15:4:1等)する方法が有効であるが、室外熱交換器の分割毎に電磁弁(遮断弁)、電動弁(膨張弁)が必要となり、コストの上昇を招くことになる。
【0012】
本発明は上述の事情を考慮してなされたものであり、室外熱交換器を分割した空気調和システムにおいて、小容量熱交換器のみを蒸発器として使用した場合でも、蒸発器(室外熱交換器)の熱交換容量が凝縮器(室内熱交換器)として比較して多大となり、空気調和システム内の冷媒圧力の高圧上昇を回避できない場合に、未使用中の室外熱交換器に冷媒を取り入れ、寝込ませることにより、冷媒圧力の高圧上昇を回避することが可能な冷媒高圧上昇回避方法並びに空気調和システムを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、圧縮機と、複数個の室外熱交換器に分割可能に使用される室外熱交換器を内蔵した室外ユニットと、当該室外ユニットとユニット間配管を介してつながれ、室内熱交換器を各々内蔵した複数個の室内ユニットとを備えた空気調和システムであって、稼働中の室内ユニットの運転容量に応じて前記複数個の室外熱交換器を選択的に使用可能な空気調和システムにおいて、暖房運転時に冷媒圧が異常高圧状態である場合に、当該複数個の室外熱交換器のうちの未使用状態にある少なくとも一つの室外熱交換器内に、冷媒回路内を循環する冷媒の一部を取り入れ、寝込ませることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記圧縮機の冷媒吐出側の冷媒圧を検出する冷媒圧検出手段と、前記冷媒圧検出手段により検出された冷媒圧と前記所定圧力値とを比較して、前記冷媒圧が前記所定圧力値を超えた場合に、前記冷媒回路内を循環する冷媒が異常高圧状態であると判定する高圧判定手段と、該高圧判定手段により前記冷媒が異常高圧状態であると判定される場合に、前記複数個の室外熱交換器のなかで、未使用状態にある少なくとも一つの室外熱交換器内に、前記冷媒の一部を取り入れ、寝込ませる冷媒圧低減手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記冷媒圧低減手段が、前記冷媒が異常高圧状態である期間、前記複数個の室外熱交換器のうち、使用中の室外熱交換器で最大熱交換容量を有する室外熱交換器を順次未使用状態とする未使用熱交換器選択手段と、該未使用熱交換器選択手段により未使用状態にされた前記室外熱交換器を含む、全未使用状態の室外熱交換器の少なくとも一つに前記冷媒の一部を取り入れ、寝込ませる冷媒取り入れ手段とを有することを特徴とする請求項2記載の空気調和システム。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記冷媒の一部を取り込ませる前記未使用状態の室外熱交換器が、最大熱交換容量を有する室外熱交換器であることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記冷媒の一部の取り入れが、所定時間間隔毎に断続的に行われることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、前記未使用状態にある少なくとも一つの室外熱交換器への前記冷媒の取り入れおよび寝込ませが、当該室外熱交換器の冷媒入口側に備えられた膨張弁を制御して行われることを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、圧縮機と、複数個の室外熱交換器に分割可能に使用される室外熱交換器を内蔵した室外ユニットと、当該室外ユニットとユニット間配管を介してつながれ、室内熱交換器を各々内蔵した複数個の室外ユニットとを備えた空気調和システムであって、稼働中の室内ユニットの運転容量に応じて前記複数個の室外熱交換器を選択的に使用可能な空気調和システムのための冷媒高圧回避方法において、前記圧縮機の冷媒吐出側の冷媒圧を検出するステップと、前記冷媒圧検出ステップにより検出された冷媒圧と所定圧力値とを比較し、前記冷媒圧が前記所定圧力値を超えた場合に、前記冷媒が異常高圧状態であると判定する高圧判定ステップと、該高圧判定ステップにより前記冷媒が異常高圧状態であると判定される場合に、前記複数個の室外熱交換器のなかで、未使用状態にある少なくとも一つの室外熱交換器内に、前記冷媒の一部を取り入れ、寝込ませる冷媒圧低減ステップとからなることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の発明は、前記冷媒圧低減ステップが、前記冷媒が異常高圧状態である期間、前記複数個の室外熱交換器のうち、使用中の室外熱交換器で最大熱交換容量を有する室外熱交換器を順次未使用状態とする未使用熱交換器選択ステップと、該未使用熱交換器選択ステップにより未使用状態にされた前記室外熱交換器を含む、全未使用状態の室外熱交換器の少なくとも一つに前記冷媒の一部を取り入れ、寝込ませる冷媒取り入れステップとを有することを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る空気調和システム(冷暖房同時運転マルチシステム)の一実施の形態における冷媒回路を示す図である。なお、本実施形態では、本発明をマルチ形空気調和システムや3ウェイマルチ形空気調和システム等の冷暖房運転可能な複数個の室内ユニットが設けられた空気調和システムに適応可能であるが、この場合室外ユニット側の室外熱交換器が分割利用可能かまたは選択利用可能な複数個の室外熱交換器が設けられていることが必要である。また、圧縮機の駆動源として、ガスヒートポンプ、あるいは、電動機等の他の動力源を用いた空気調和システム(空気調和装置)にも本発明を適用できることは言うまでもない。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態の空気調和システムは、圧縮機1と、熱交換容量の異なる室外熱交換器6,7と、アキュムレータ13と、電磁弁(3,4,11,12)および電動弁(8,9)を基本的に備える室外ユニットCと、熱交換容量が同じかもしくは異なる室内熱交換器A−2、B−2を備えた室内ユニットA、Bと、前記室外ユニットCおよび室内ユニットA、Bとを接続するユニット管配管(低圧管15、高圧管16、液管17)と、空気調和システム全体を制御する制御装置CTとを有して構成されている。
【0024】
室外ユニットCにおいて、圧縮機1の冷媒吐出管はオイルセパレータ2に接続した後分岐され、一方の分岐管が室外熱交換器6,7に室外側吐出弁4,3を介して接続されている。また、他の分岐管は各室内ユニットA、Bの室内熱交換器A−2、B−2に電磁ユニットA,Bの電磁弁A―5,B−5を介して接続されている。これらの分岐管は高圧ガス管16を構成する。一方、圧縮機1の冷媒吸い込み管はアキュムレータ13に接続した後分岐され、一方の分岐管が室外吸い込み弁11,12を介して室外熱交換器6,7に各々接続されている。また、他の分岐管は各室内ユニットA、Bに電磁弁A、Bの電磁弁A−4,B−4を介して接続されており、これらの分岐管は低圧ガス管15を構成する。
【0025】
さらに、室外側吐出弁4,3及び室外側吸い込み弁11,12との接続ポートとは反対側の室外熱交換器6,7の各接続ポートには、室外膨張弁8,9を介して冷媒管(液管)の一端が接続されており、当該冷媒管の他端はレシーバタンク10を介した後分岐し、一方の分岐管は室内ユニットAの室内膨張弁A−1を介して室内熱交換器A−2の接続ポートに接続され、他方の分岐管は室内ユニットBの室内膨張弁B−1を介して室内熱交換器B−2の接続ポートに接続されている。なお、室内吸い込み弁A−4と室内吐出弁A−5とは電磁弁ユニットAを構成しており、室内吸い込み弁B−4と室内吐出弁B−5とは電磁弁ユニットBを構成している。さらに、室外熱交換器6,7の近傍には室外熱交換器6,7と熱交換させるための外気を供給する室外ファン5が配置されており、また、室内熱交換器A−2,B−2の近傍にも、熱交換用の室内空気を供給する室内ファンA−3,B−3が各々配置されている。
【0026】
なお、上述したように、室外熱交換器6,7はそれぞれ熱交換容量の異なる熱交換器であるが、以下、室外熱交換器6を熱交換容量の大きい「大熱交換器」と称し、室外熱交換器7を熱交換容量の小さい「小熱交換器」と称して説明する。
【0027】
また、CTは本実施形態の空気調和システム全体の制御を行う制御装置である。当該制御装置CTは、図示されていないが、室外ユニットC及び各室内ユニットA,Bと通信線を介して電気的に接続されており、室外ユニットC及び各室内ユニットA,Bの動作制御や室内ユニットA,Bの要求負荷に応じた室外ユニットの動作制御を行うように構成されている。また、各室内ユニットA,Bには、それぞれが配置される室内の温度を検出するための温度センサー、各室内ユニットの動作状況を検知するセンサー等が設けられており、それらの検知情報が制御装置CTへ送信されている。さらに、室外ユニットには、圧縮機1の冷媒吐出側の圧力を検知するための圧力センサーPや、冷媒の温度を検出するための温度センサー(図示せず)等が設けられており、それぞれの検出情報が制御装置CTへ送信されている。
【0028】
さて、本実施態様では、暖房運転時において、室外ユニットの小熱交換器のみを蒸発器として使用した場合でも、蒸発器の熱交換容量が室内ユニット側の凝縮器の熱交換容量と比較して多大となり、空気調和システムの高圧上昇が回避できないと判断される場合に、室外ユニット側の未使用室外熱交換器中に冷媒の一部を寝込ませる(貯留する)ことで、空気調和システム全体を循環する冷媒の絶対量を低下させ、これにより冷媒圧力の高圧上昇を回避させるものである。以下この冷媒高圧回避動作について説明する。
【0029】
図2は、本実施態様である冷媒高圧回避動作を説明するためのフローチャートである。
【0030】
空気調和システム(装置)の電源投入とともに冷媒高圧回避動作が起動される。まず、室外ユニットで駆動されている室外熱交換器6,7の運転モードが蒸発器モードであるかどうかが判断される(S1)。すなわち、室外ユニットC側の室外熱交換器6,7が凝縮器として機能しているか、蒸発器として機能しているかが判断される。ここで、本実施態様では、暖房運転時の冷媒高圧上昇を回避することを目的としていることから、室外ユニットC側の室外熱交換器6,7が凝縮器として機能している場合(すなわち、冷房運転時)は、本冷媒高圧回避動作を行う必要がないので、ステップS13へ移行する。
【0031】
いま、室外熱交換器6,7の少なくとも一方が駆動されており、駆動中の室外熱交換器が蒸発器として機能している場合(S1:Y)、圧縮機吐出側に配置した圧力センサーPにより検出された冷媒圧力Prが、所定圧力Ptより大きいかどうかが判断される(S2)。なお、圧縮機吐出側での適正冷媒圧は約2.1MPa程度であるが、冷媒圧Prが、例えば、2.4MPaを超えると、空気調和システム動作に影響を与える程度の高圧と判断され、高圧上昇を抑制する必要がある。従って、Ptを2.4MPaに設定している。
【0032】
ステップS2で、冷媒圧Prが所定圧力Pt以下であれば、冷媒圧の高圧を低下させる必要はないが、冷媒圧Prが所定圧力Ptより大きい場合(S2:Y)、室外ユニット側で使用中の室外熱交換器が小熱交換器7のみかどうかを判断する(S3)。ここで、使用中の室外熱交換器が大熱交換器6のみであった場合、あるいは、大熱交換器6と小熱交換器7との両方であった場合は(S3:N)、ステップS4で、小熱交換器7のみが駆動されるように弁の切替動作を行う。具体的には、室外側吐出弁3,4、室外側吸い込み弁11および室外膨張弁8が閉じられ、室外側吸い込み弁12および室外膨張弁9が開かれた状態になるように、各弁の切替動作が制御装置CTにより行われる。以降、ステップS1,S2,S3を繰り返し行う。なお、使用中の室外熱交換器が大熱交換器6と小熱交換器7との両方であった場合は、大熱交換器6のみを使用状態とし(冷媒入出力側の弁を開く)、小熱交換器7を未使用状態(冷媒入出側の弁を閉じる)として、ステップS1,S2の処理を行っても良い。また、これによっても依然冷媒の高圧状態が回避されなければステップS4の切替動作を行うようにしても良い。なお、大容量熱交換器から未使用状態とするほうがより迅速に高圧上昇を防止することができる。
【0033】
さて、ステップS3において、使用室外熱交換器が小熱交換器7のみとの判断が得られれば(S3:Y)、冷媒高圧回避動作が実施中であることを示す高圧回避フラグが“1”かどうかを判断する(S5)。
【0034】
前述したように、本実施態様では、冷媒圧の高圧上昇の回避は、未使用中の室外熱交換器中に冷媒の一部を寝込ませることで行われている。このためには、未使用中の室外熱交換器の室外膨張弁を一時的に開くことで、当該室外熱交換器へ所定量の冷媒(液状)を取り入れ、しかる後に当該室外膨張弁を閉じることで取り入れられた冷媒を寝込ませている。従って、ステップS3にて高圧回避フラグが“1”でないと判断された場合は、未使用中の室外熱交換器である室外熱交換器(大熱交換器)6の室外膨張弁8を開き(S6)、内部に冷媒を取り入れ、寝込ませる。室外膨張弁8は電動弁から構成されており、この開度はステップモータにより調節されているが、本実施態様の場合、室外膨張弁8を480ステップに設定する(すなわち、全開状態にする)。
【0035】
さて、ステップS5で高圧回避フラグが”1”でないと判断されれば、室外膨張弁8を全開にし(S6)、タイマーT1をスタートさせる(S7)。このタイマーT1は室外膨張弁の開状態の時間を設定するためのものであり、所定時間T0(例えば60秒)を計時するように設定されている。さらに、高圧回避フラグを“1”に設定して(S8)、未使用中の室外熱交換器の室外膨張弁が開かれていることを示し、ステップS1に戻る。
【0036】
ステップS1における判断(S1:Y)の後、ステップS2にて高圧状態が依然継続中であるとの判断であれば(S2:Y)、ステップS3での判断(S3:Y)とステップS5での判断を行う。ステップS5では、すでに高圧回避フラグが“1”に設定されているので、ステップS9へ移行し、タイマーT1により所定時間T0が計時されたかどうかが判断される(S9)。所定時間の計時がまだ完了していないのであれば(S9:N)、ステップS9の処理を繰り返し行う。ステップS9でタイマーT1により所定時間T0が計時された時は(S9:Y)、室外膨張弁8を閉じる(S10)。具体的には、大熱交換器6の室外膨張弁8をステップ20(全閉)に設定する。さらに、高圧回避フラグを“0”に設定し(S11)、タイマーT1をリセットし(S12)、ステップS1に戻り、以上の動作を繰り返す。
【0037】
なお、ステップS1で、冷媒高圧回避動作中に室外熱交換器の運転モードが冷房運転に切り替えられた場合(ステップS1に判断がNOとなった場合)や、冷媒の高圧が回避された場合(ステップS2の判断がNOとなった場合)は、大熱交換器6の室外膨張弁8を閉じ(S13)、タイマーT1をリセットし(S14)、高圧回避フラグを“0”に設定し(S15)、ステップS1に戻って冷媒高圧回避制御動作を繰り返し行う。
【0038】
本実施態様では、室外熱交換器が2つに分割して利用されている場合であったが、室外熱交換器の分割は3以上でもよい(例えば、大、中、小熱交換器等)。この場合、冷媒圧の高圧回避を行うために、使用中の熱室外熱交換器の中で、熱交換容量の最も大きいものを未使用状態とし、これによっても高圧回避ができない場合には、順次、熱交換容量の大きいものをさらに未使用状態としていく動作を行っても良い。この場合、室内ユニット側の熱交換容量を下回らない程度に室外ユニット側の熱交換容量を維持する必要があるが、この段階でも高圧回避ができない場合は、上述の冷媒の寝込ませを未使用の最大熱交換容量を有する室外熱交換器で行うように、弁の開閉動作を制御してもよい。
【0039】
図3は、本実施態様の冷媒高圧回避動作を行う制御系のブロック図を示したものである。
【0040】
圧縮機1の冷媒吐出側の圧力を検出する圧力検出手段18から、検出された圧力情報が高圧判定手段19へ出力される。高圧判定手段19では、入力した圧力情報に基づいて、暖房運転時において、この圧力が駆動中の空気調和システム内での異常高圧であるかどうかを判定する。上述したように、この判定には、例えば、2.4MPaの圧力値がしきい値として利用されている。高圧判定手段19に基づいて、空気調和システム内の冷媒の圧力が異常高圧状態であると判定された場合、冷媒圧低減手段22の未使用熱交換器選択手段20は、空気調和システム内で、室外ユニット側の熱交換容量(蒸発器能力)が室内ユニット側の熱交換容量(凝縮器能力)より多大であるものと判断し、可能な限り熱交換容量の大きな室外熱交換器を順次未使用状態とする(当該室外熱交換器の室外吐出弁、室外吸い込み弁、室外膨張弁を閉じる)。この場合に、依然高圧状態が回避されなければ、冷媒圧低減手段22の冷媒取り入れ手段21により、液管内の冷媒の一部が未使用にした、あるいは初めから未使用状態にあった室外熱交換器(例えば、最大の熱交換容量を有する未使用室外熱交換器)内に取り入れられるように、当該未使用室外熱交換器の室外膨張弁のみを開く。この冷媒取り入れ動作を所定時間(例えば60秒)毎に断続的に行い、冷媒の高圧状態が回避された段階(すなわち、高圧判定手段19により高圧でないと判定された場合)で、冷媒取り入れ手段21による取り入れ動作を終了する。
【0041】
なお、上述した実施形態では、室外ユニットに内蔵される室外熱交換器は熱交換効率の異なる二つの室外熱交換器に分割されていたが、分割数はこれに限定されるものではなく、上述したように3台以上の室外熱交換器を用いてもよく、また、熱交換率が同じものであっても良い。この場合は、任意に一つの室外熱交換器を未使用にすることができる。また、図1では室内ユニットは2台であったが、室内ユニットの数もこれに限定されるものではない。
【0042】
上述の実施態様では、一つの未使用室外熱交換器に冷媒の一部を寝込ませていたが、室外熱交換器が3つ以上に分割利用される場合、状況によっては、二つ以上の未使用室外熱交換器に冷媒の一部を寝込ませるようにしてもよい。
【0043】
また、上述の実施態様では、冷媒の圧力を検出する圧力センサーを圧縮機の冷媒吐出側に設けていたが、圧力センサーの取り付け位置は必ずしもこの位置に限定される必要はなく、空気調和システムに影響を与える程度に高圧の冷媒圧力を検出可能の箇所であればどこでも良い。また、圧力センサーは必ずしも一つである必要はなく、複数箇所に設置し、統計的な処理を施すことでより正確な冷媒圧を検出するようにしても良い。
【0044】
さらに、上述の実施形態では、冷媒の取り込み動作を所定時間毎に断続的に行い、冷媒の高圧状態が回避された段階で、取り込み動作を終了させていたが、冷媒の取り込み動作を連続で行い、冷媒圧が所定圧力以下になった段階で動作を終了するようにしても良い。なお、この場合、連続取り込みによる過剰取り込みを防止するために、冷媒の取り込み量を小さくしてもよい(すなわち、室外膨張弁の開度を小さくする)。
【0045】
また、上述の実施態様では、冷媒の取り込み動作を断続的に行いながら、冷媒圧力が所定圧力より低下した段階で冷媒取り込み動作を終了していた。しかしながら、冷媒の取り込み動作を断続的に行い、冷媒の状態が安定するまで待機(例えば、10分)した後、冷媒圧が所定圧力以下になっていなければ、再度冷媒取り込み動作を行うようにしてもよい。すなわち、上述した実施態様では、タイマーによる所定時間T0の計測と同時に室外膨張弁を全閉とし、この時点での冷媒圧に基づいて次の冷媒取り込み動作が行われていた。これに対して、室外膨張弁を全閉とし、所定時間(例えば、10分)待機した後、あらためて冷媒圧に基づいて冷媒取り込み動作を行うべきかどうかを判断するようにしてもよい(すなわち、冷媒取り込み動作にインターバルを設けてもよい)。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、発明に係る空気調和システムによれば、空気調和システムの冷媒高圧上昇を回避できない場合に、システムを循環する冷媒量(絶対量)を低減することにより効果的に高圧回避が可能となる。また、本発明では、未使用室外熱交換器内へ冷媒の一部を寝込ませるだけで冷媒圧の高圧を回避しているので、停止室内ユニットの冷媒音、電磁弁の励磁音、室温上昇、不安定な運転による空調性の悪化、および効率低下などの不具合を回避することができる。また、冷媒量を調節する際にレシバータンクが不要であるので、製品コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る空気調和システムの一実施の形態における冷媒回路等を示す回路図である。
【図2】本発明に係わる空気調和システムの冷媒高圧回避動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の空気調和システムにおける、冷媒高圧動作を行う制御系のブロック図である。
【符号の説明】
1 圧縮機
6、7 室外熱交換器
15 低圧ガス管
16 高圧ガス管
17 液管
18 圧力検出手段
19 高圧判定手段
20 未使用熱交換器選択手段
21 冷媒注入手段
A、B 室内ユニット
C 室外ユニット
CT 制御装置
A−2、B−2 室内熱交換器
Claims (8)
- 圧縮機と、複数個の室外熱交換器に分割可能に使用される室外熱交換器を内蔵した室外ユニットと、当該室外ユニットとユニット間配管を介してつながれ、室内熱交換器を各々内蔵した複数個の室内ユニットとを備えた空気調和システムであって、稼働中の室内ユニットの運転容量に応じて前記複数個の室外熱交換器を選択的に使用可能な空気調和システムにおいて、暖房運転時に冷媒圧が異常高圧状態である場合に、当該複数個の室外熱交換器のうちの未使用状態にある少なくとも一つの室外熱交換器内に、冷媒回路内を循環する冷媒の一部を取り入れ、寝込ませることを特徴とする空気調和システム。
- 前記圧縮機の冷媒吐出側の冷媒圧を検出する冷媒圧検出手段と、前記冷媒圧検出手段により検出された冷媒圧と前記所定圧力値とを比較して、前記冷媒圧が前記所定圧力値を超えた場合に、前記冷媒回路内を循環する冷媒が異常高圧状態であると判定する高圧判定手段と、該高圧判定手段により前記冷媒が異常高圧状態であると判定される場合に、前記複数個の室外熱交換器のなかで、未使用状態にある少なくとも一つの室外熱交換器内に、前記冷媒の一部を取り入れ、寝込ませる冷媒圧低減手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の空気調和システム。
- 前記冷媒圧低減手段は、前記冷媒が異常高圧状態である期間、前記複数個の室外熱交換器のうち、使用中の室外熱交換器で最大熱交換容量を有する室外熱交換器を順次未使用状態とする未使用熱交換器選択手段と、該未使用熱交換器選択手段により未使用状態にされた前記室外熱交換器を含む、全未使用状態の室外熱交換器の少なくとも一つに前記冷媒の一部を取り入れ、寝込ませる冷媒取り入れ手段とを有することを特徴とする請求項2記載の空気調和システム。
- 前記冷媒の一部を取り込ませる前記未使用状態の室外熱交換器は、最大熱交換容量を有する室外熱交換器であることを特徴とする請求項3記載の空気調和システム。
- 前記冷媒の一部の取り入れは、所定時間間隔毎に断続的に行われることを特徴とする請求項1記載の空気調和システム。
- 前記未使用状態にある少なくとも一つの室外熱交換器への前記冷媒の取り入れおよび寝込ませは、当該室外熱交換器の冷媒入口側に備えられた膨張弁を制御して行われることを特徴とする請求項1記載の空気調和システム。
- 圧縮機と、複数個の室外熱交換器に分割可能に使用される室外熱交換器を内蔵した室外ユニットと、当該室外ユニットとユニット間配管を介してつながれ、室内熱交換器を各々内蔵した複数個の室外ユニットとを備えた空気調和システムであって、稼働中の室内ユニットの運転容量に応じて前記複数個の室外熱交換器を選択的に使用可能な空気調和システムのための冷媒高圧回避方法において、前記圧縮機の冷媒吐出側の冷媒圧を検出するステップと、前記冷媒圧検出ステップにより検出された冷媒圧と所定圧力値とを比較し、前記冷媒圧が前記所定圧力値を超えた場合に、前記冷媒が異常高圧状態であると判定する高圧判定ステップと、該高圧判定ステップにより前記冷媒が異常高圧状態であると判定される場合に、前記複数個の室外熱交換器のなかで、未使用状態にある少なくとも一つの室外熱交換器内に、前記冷媒の一部を取り入れ、寝込ませる冷媒圧低減ステップとからなることを特徴とする冷媒高圧回避方法。
- 前記冷媒圧低減ステップは、前記冷媒が異常高圧状態である期間、前記複数個の室外熱交換器のうち、使用中の室外熱交換器で最大熱交換容量を有する室外熱交換器を順次未使用状態とする未使用熱交換器選択ステップと、該未使用熱交換器選択ステップにより未使用状態にされた前記室外熱交換器を含む、全未使用状態の室外熱交換器の少なくとも一つに前記冷媒の一部を取り入れ、寝込ませる冷媒取り入れステップとを有することを特徴とする請求項8記載の空気調和システム。
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