JP4074422B2 - 空調機とその制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、冬期など外気温度が低い場合にも冷房が必要な高発熱機器用の空調機とその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、コンピュータ等の高発熱機器が設置された室内空間を年間にわたって冷房する装置として、年間冷房型空調機が知られている。
この空調機は、圧縮機、水冷凝縮器、膨張弁、および室内熱交換器を通して冷媒を循環させる冷凍サイクルと、冷却水循環ポンプ、冷却塔、および上記水冷凝縮器を通して冷却水を循環させる冷却水循環サイクルとを備えている。
【0003】
圧縮機から吐出される高温高圧のガス冷媒が水冷凝縮器へと導かれ、水冷凝縮器に流入したガス冷媒は同水冷凝縮器に流入する冷却水に熱を奪われて液化する。水冷凝縮器から流出する液冷媒は膨張弁で減圧された後、低温低圧の液・ガス混合冷媒となり、蒸発器(室内熱交換器)へと導かれる。蒸発器ではこの液・ガス冷媒が室内空気から熱を奪って気化する。このガス冷媒が圧縮機に吸い込まれ、以下、同様のサイクルが繰り返される。
【0004】
水冷凝縮器を経た冷却水は冷却塔に導かれ、その冷却塔において冷却水の熱(ガス冷媒から奪った熱)が大気に放出される。この放熱によって温度低下した冷却水が冷却水循環ポンプによって再び水冷凝縮器に供給される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
年間冷房型空調機のように、年間にわたり冷房運転が継続されるものでは、運転電力の低減、ひいては運転効率の向上が強く望まれる状況にある。
【0006】
この発明は上記の事情を考慮したもので、その目的とするところは、十分な冷房能力を確保しながら運転電力の低減を図ることができ、これにより運転効率の大幅な向上が図れる省エネルギ性にすぐれた空調機とその制御方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明の空調機は、圧縮機、水冷凝縮器、膨張弁、および室内熱交換器を通して冷媒を循環させる冷凍サイクルと、上記室内熱交換器に室内空気を通す室内送風機と、冷却水循環ポンプ、冷却塔、および上記水冷凝縮器を通して冷却水を循環させる冷却水循環サイクルと、室内温度を検知する室内温度検知手段と、外気温度を検知する外気温度検知手段と、上記室内温度検知手段の検知温度が所定値以上のとき、最大の冷房能力が得られるよう、上記冷却塔の冷却量を増大し、かつ上記冷却水循環ポンプの送水量を増大し、これに合わせ、上記圧縮機の回転数を増大し、上記室内送風機の風量を増大し、かつ上記膨張弁の開度を制御する第1制御手段と、制御モードとして、上記冷凍サイクルの機器を低負荷で運転し前記冷却水循環サイクルの機器を高負荷で運転する第1の制御、前記冷却水循環サイクルの機器を低負荷で運転し前記冷凍サイクルの機器を高負荷で運転する第2の制御、前記冷却水循環サイクルの一部の機器を低負荷で運転し前記冷却水循環サイクルの残りの機器および前記冷凍サイクルの機器を高負荷で運転する第3の制御、前記冷却水循環サイクルの一部の機器および前記冷凍サイクルの機器を低負荷で運転し前記冷却水循環サイクルの残りの機器を高負荷で運転する第4の制御を有し、これら制御ごとに各機器の個々の運転電力を室内温度および外気温度をパラメータとして決定するための運転電力決定条件をそれぞれ定め、上記室内温度検知手段の検知温度が所定値未満のとき、極力小さい電力で、必要とされる電力が得られるよう、上記室内温度検知手段の検知温度および上記外気温度検知手段の検知温度に基づいて各運転電力決定条件を参照し第1,第2,第3,第4の制御における各機器の決定すべき運転電力の合計値をそれぞれ求め、第1,第2,第3,第4の制御のうち最も小さい合計値となる制御を実行する第2制御手段と、を備える。
【0012】
【発明の実施の形態】
[1]以下、この発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、圧縮機1の冷媒吐出口にガス側冷媒配管2を介して水冷凝縮器3の熱交換器3aが接続されている。この熱交換器3aに凝縮圧力調節弁4、液側冷媒配管5、および減圧器たとえば開度可変の膨張弁6を介して室内熱交換器(蒸発器)7が接続され、その室内熱交換器7に圧縮機1の冷媒吸込口が接続されている。すなわち、圧縮機1、水冷凝縮器3、凝縮圧力調節弁4、液側冷媒配管5、膨張弁6、および室内熱交換器7に通して冷媒を循環させる冷凍サイクルが構成されている。
【0013】
凝縮圧力調節弁4はいわゆる三方弁であり、この凝縮圧力調節弁4と上記熱交換器3aの冷媒流入側との間にバイパス配管2aが設けられている。凝縮圧力調節弁4は、熱交換器3aを通る冷媒の量と、バイパス配管2aを通る冷媒の量とを、開度変化によって相対的に増減し、これにより熱交換器3aにおける冷媒の凝縮圧力を調節する。
【0014】
室内熱交換器7の近傍に室内送風機8が配設されている。室内送風機8は、室内の空気を吸い込んで室内熱交換器7に通し、その室内熱交換器7を経た空気(冷気)を室内に吹き出す働きをする。
【0015】
一方、冷却水循環ポンプ11の水吐出口に水管12を介して冷却塔13の熱交換器14が接続されている。冷却塔13は、熱交換器14のほかに、この熱交換器14に冷却用水をかける散水器15、塔内の底部に溜まる冷却用水を散水器15に供給する散水ポンプ16、冷却用水を冷やすために外気を導入する冷却塔送風機17などを備える。
【0016】
この冷却塔13の熱交換器14に水管18を介して上記水冷凝縮器3の熱交換器3bが接続され、その熱交換器3bに冷却水循環ポンプ11の水吸込口が接続されている。すなわち、冷却水循環ポンプ11、冷却塔13、水冷凝縮器3を通して冷却水を循環させる冷却水循環サイクルが構成されている。
【0017】
上記圧縮機1は、回転数可変のモータを有している。この圧縮機1の駆動用として圧縮機駆動部21が設けられている。圧縮機駆動部21は、圧縮機1のモータに対する駆動電圧を出力するとともに、その駆動電圧の周波数を変化させる機能を有する。この周波数変化により圧縮機1のモータの回転数が変化し、それに伴い、圧縮機1の能力(容量とも称す)が変化する。
【0018】
上記室内送風機8に送風機駆動部22が接続されている。送風機駆動部22は、室内送風機8のモータに対する駆動電圧を出力するとともに、その駆動電圧の周波数を変化させる機能を有する。この周波数変化により、室内送風機8の送風量が変化する。
【0019】
上記冷却水循環ポンプ11にポンプ駆動部23が接続されている。ポンプ駆動部23は、冷却水循環ポンプ11のモータに対する駆動電圧を出力するとともに、その駆動電圧の周波数を変化させる機能を有する。この周波数変化により、冷却水循環ポンプ11の送水量が変化する。
【0020】
被空調室内の所定個所に、室内空気の温度Trを検知する室内温度センサ(室内温度検知手段)31が設けられている。室内送風機8の運転に基づく室内空気の吸い込み風路に、吸い込み空気の温度Tiを検知する吸い込み温度センサ(室内温度検知手段)32が設けられている。室内送風機8の運転に基づく空調用空気(冷風)の吹き出し風路に、吹き出し空気の温度Toを検知する吹き出し温度センサ(室内温度検知手段)33が設けられている。
【0021】
冷却塔13が設置されている室外に、外気温度Txを検知する外気温度センサ(外気温度検知手段)34が設けられている。
【0022】
40は当該空調機の全体を制御する制御部である。この制御部40に、上記凝縮圧力調節弁4、膨張弁6、散水ポンプ16、冷却塔送風機17、圧縮機駆動部21、送風機駆動部22、ポンプ駆動部23、室内温度センサ31、吸い込み温度センサ32、吹き出し温度センサ33、外気温度センサ34、および操作部41が接続されている。
【0023】
制御部40は、主要な機能として次の(1)(2)の手段を備える。
(1)室内温度(室内温度センサ31,32,33の検知温度のいずれか)が操作部41で予め定められた設定値Tsを含む所定温度域[(Ts−α)以上、(Ts+β)以下]より高い場合、最大の冷房能力が得られる状態に冷凍サイクルの運転および冷却水循環サイクルの運転を制御する制御手段。
【0024】
(2)室内温度が上記所定温度域[(Ts−α)以上、(Ts+β)以下]内に存する場合、極力小さい運転電力で、必要とされる冷房能力が得られる状態、要するに運転効率{=冷房能力(kW)/運転電力(kW)}が最大となる状態に、冷凍サイクルの運転および冷却水循環サイクルの運転を制御する制御手段。
【0025】
つぎに、上記の構成の作用を図2および図3を参照しながら説明する。
操作部41で運転の開始操作が行われると(ステップ101のYES)、室内温度センサ31の検知温度Tr、吸い込み温度センサ32の検知温度Ti、および吹き出し温度センサ33の検知温度Toのうち、いずれか1つが室内温度として取り込まれる(ステップ102)。
【0026】
この室内温度が操作部41で予め定められた設定値Tsを含む所定温度域[(Ts−α)以上、(Ts+β)以下]より高い状態にあれば、サーモオン要求ありとの判断の下に(ステップ103のYES)、冷房運転が実行される(ステップ104)。
【0027】
すなわち、圧縮機1は、圧縮機駆動部21の出力により動作し、高温高圧のガス冷媒を吐出する。このガス冷媒は、ガス側冷媒配管2により水冷凝縮器3の熱交換器3aに導かれ、熱交換器3bを通る冷却水と熱交換して凝縮し、液冷媒となる。この液冷媒は、液側冷媒配管5により膨張弁6に導かれ、そこで減圧され、低温低圧の液ガス混合冷媒となる。さらに、この液ガス混合冷媒は、室内熱交換器(蒸発器)7に導かれ、室内送風機8の運転により吸い込まれた室内空気と熱交換することで蒸発し、低圧ガスとなって再び圧縮機1に吸入される。室内熱交換器7を経た空気は冷房用空気として室内に吹き出される。
【0028】
水冷凝縮器3の熱交換器3bを経た冷却水は、冷却水循環ポンプ11により冷却塔13に導かれ、外気と熱交換した後、再び水冷凝縮器3に至る。
【0029】
この冷房運転時、室内温度が上記所定温度域より高い場合、現状の冷房能力が必要冷房能力を満足していないとの判断の下に(ステップ105のNO)、能力最大制御モードの運転が実行される(ステップ106)。
能力最大制御モードでは、発揮し得る最大の冷房能力が得られる状態に、圧縮機1の回転数(圧縮機駆動部21の出力周波数)、冷却水循環ポンプ11の送水量(ポンプ駆動部23の出力周波数)、および冷却塔13の冷却量(散水ポンプ16の運転/停止、冷却塔送風機17の風量)が制御される。
すなわち、冷却塔13の冷却塔送風機17が最大風量で運転され、冷却塔13の冷却量が最大限に増大され、さらに、冷却水循環ポンプ11が最大回転数で運転されて送水量が増大されることにより水冷凝縮器3における熱伝達作用が促進される。これに合わせ、圧縮機1の回転数が増大されるとともに、室内側送風機8の風量が増大され、かつ膨張弁6の開度が制御される。こうして、能力最大制御モードの運転が実行されることにより、室内温度が設定値Tsに向け速やかに変化する。
【0030】
室内温度が上記所定温度域内に存する場合、現状の冷房能力が必要冷房能力を満足しているとの判断の下に(ステップ105のYES)、あるいは冷房能力の微少な増減で設定値Tsの環境を維持できるとの判断の下に、最大COP制御モードの運転が実行される(ステップ107)。
最大COP制御モードでは、極力小さい運転電力(消費電力)で、必要とされる冷房能力が得られる状態、要するに運転効率{=冷房能力(kW)/運転電力(kW)}が最大となる状態に、圧縮機1の回転数(圧縮機駆動部21の出力周波数)、凝縮圧力調節弁4の開度(水冷凝縮器3における冷媒の凝縮圧力)、冷却水循環ポンプ11の送水量(ポンプ駆動部23の出力周波数)、および冷却塔13の冷却量(散水ポンプ16の運転/停止、冷却塔送風機17の風量)が制御される。
【0031】
この最大COP制御モードの運転には、例えば、次のような方法がある。
冷却塔13の散水ポンプ16を運転オンし、かつ冷却塔送風機17を定格電力で運転し、冷却水循環ポンプ11の回転数を上げて送水量を多くすることで、水冷凝縮器3における冷媒の凝縮圧力を低くすることができる。冷媒の凝縮圧力が低くなると、圧縮機1にかかる負荷が小さくなり、必要とされる冷房能力を維持したまま圧縮機1での消費電力を抑えることができる。すなわち、これは、冷凍サイクルの機器を低負荷で運転し、その代わりに冷却水循環サイクルの機器を高負荷で運転しながら、必要な冷房能力を維持する制御である。
【0032】
このように、冷凍サイクルの構成要素である圧縮機1を低負荷で運転し、その代わりに冷却水循環サイクルの構成要素である冷却水循環ポンプ11、散水ポンプ16、冷却塔送風機17を高負荷で運転しながら、必要な冷房能力を維持する制御について、第1の運転電力決定条件が定められている。この第1の運転電力決定条件は、各機器の個々の運転電力(消費電力)を現時点の室内温度および外気温度をパラメータとして決定するためのもので、制御部41のメモリに記憶されている。
【0033】
一方で、冷却塔13の散水ポンプ16と冷却塔送風機17の両方、またはどちらかの運転を停止、もしくは定格電力以下で運転した場合には、冷却塔13の冷却能力が低下し、水冷凝縮器3を通過する冷却水の温度が高くなる。この場合、水冷凝縮器3における冷媒の凝縮圧力の上昇につながるが、圧縮機1の運転状態(回転数)に余裕があれば、圧縮機1の回転数を上げ、圧縮比を高くすれば、必要とされる冷房能力を維持することができる。すなわち、これは、冷却水循環サイクルの機器を低負荷で運転し、その代わりに冷凍サイクルの機器を高負荷で運転しながら、必要な冷房能力を維持する制御である。
【0034】
このように、冷却水循環サイクルの構成要素である冷却水循環ポンプ11、散水ポンプ16、冷却塔送風機17を低負荷で運転し、その代わりに冷凍サイクルの構成要素である圧縮機1を高負荷で運転しながら、必要な冷房能力を維持する制御について、第2の運転電力決定条件が定められている。この第2の運転電力決定条件も、各機器の個々の運転電力を現時点の室内温度および外気温度をパラメータとして決定するためのもので、制御部41のメモリに記憶されている。
【0035】
なお、冷却水循環サイクルの一部の機器を低負荷で運転し、その代わりに同冷却水循環サイクルの残りの機器および冷凍サイクルの機器を高負荷で運転しながら、必要な冷房能力を維持する制御もある。たとえば、冷却水循環サイクルの冷却塔送風機17を低負荷で運転し、その代わりに同冷却水循環サイクルの冷却水循環ポンプ11、散水ポンプ16および冷凍サイクルの圧縮機1を高負荷で運転しながら、必要な冷房能力を維持する制御である。この制御について、第3の運転電力決定条件が定められている。
【0036】
冷却水循環サイクルの一部の機器および冷凍サイクルの機器を低負荷で運転し、その代わりに冷却水循環サイクルの残りの機器を高負荷で運転しながら、必要な冷房能力を維持する制御もある。たとえば、冷却水循環サイクルの冷却塔送風機17および冷凍サイクルの圧縮機1を低負荷で運転し、その代わりに冷却水循環サイクルの冷却水循環ポンプ11、散水ポンプ16を高負荷で運転しながら、必要な冷房能力を維持する制御である。この制御について、第4の運転電力決定条件が定められている。
【0037】
これら第3および第4の運転電力決定条件についても、各機器の個々の運転電力を現時点の室内温度および外気温度をパラメータとして決定するためのもので、制御部41のメモリに記憶されている。
【0038】
その他、任意の機器を低負荷で運転し、その代わりに他の機器を高負荷で運転しながら、必要な冷房負荷を維持する制御が複数種用意されている。そして、これら制御ごとに第5、第6…の運転電力決定条件が定められ、これら運転電力決定条件が制御部41のメモリに記憶されている。
【0039】
運転中、室内温度(室内温度センサ31,32,33の検知温度のいずれか)および外気温度Tx(外気温度センサ34の検知温度)に基づいて、制御部41のメモリ内の第1の運転電力決定条件が参照され、各機器の決定すべき運転電力が求められるとともに、その運転電力の合計値が求められる。同様に、残りの全ての運転電力決定条件が参照され、各機器の決定すべき運転電力が求められるとともに、その運転電力の合計値が求められる。そして、求められた各合計値が互いに比較される。
【0040】
各合計値のうち、たとえば、第1の運転電力決定条件の参照により求められた運転電力の合計値が最も小さければ、その第1の運転電力決定条件の参照により求められた運転電力となるよう、各機器の運転が制御される。第2の運転電力決定条件の参照により求められた運転電力の合計値が最も小さければ、その第2の運転電力決定条件の参照により求められた運転電力となるよう、各機器の運転が制御される。
【0041】
こうして、運転効率が最大となる運転を実行することができる。
【0042】
また、最大COP制御モードの運転では、上記所定温度域の高温側において圧縮機1の回転数を増大方向に微増する運転が実行され、設定値Tsおよびその付近において圧縮機1の回転数を維持する運転が実行され、低温側において圧縮機1の回転数を減少方向に微減する運転が実行される。
【0043】
室内温度が上記所定温度域より低くなると、サーモオフ要求ありとの判断の下に(ステップ103のNO)、冷房運転が中断される(ステップ108)。
【0044】
操作部41で運転の停止操作が行われた場合(ステップ109のYES)、冷房運転が停止される(ステップ110)。
【0045】
以上のように、室内温度が所定値以上の場合は最大の冷房能力が得られる状態に冷凍サイクルの運転および冷却水循環サイクルの運転を制御し、室内温度が所定値未満の場合は運転効率が最大となる状態に冷凍サイクルの運転および冷却水循環サイクルの運転を制御することにより、十分な冷房能力を確保しながら運転電力の低減を図ることができて、運転効率の大幅な向上が図れる。よって、省エネルギ性にすぐれた空調機となる。
【0046】
単に冷房能力を確保するためだけの冷凍サイクルの運転および冷却水循環サイクルの運転では、運転電力が過剰に消費される事態が生じることがあるが、運転効率が最大となる状態に冷凍サイクルの運転および冷却水循環サイクルの運転を制御することにより、十分な冷房能力を確保しながら、運転電力の消費を最小限に抑えることができる。
【0047】
[2]第2の実施形態について説明する。
制御部40は、主要な機能として次の(1)(2)の手段を備える。
(1)室内温度(室内温度センサ31,32,33の検知温度のいずれか)と設定値Tsとの差に応じて圧縮機1の回転数(圧縮機駆動部21の出力周波数)を制御する制御手段。
【0048】
(2)極力小さい運転電力(消費電力)で必要とされる冷房能力が得られる状態、要するに運転効率{=冷房能力(kW)/運転電力(kW)}が最大となる状態に、冷凍サイクルの運転および冷却水循環サイクルの運転を制御する制御手段。
他の構成は第1の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
【0049】
つぎに、上記の構成の作用を説明する。
冷房運転時、室内の検知温度(室内温度センサ31,32,33の検知温度のいずれか)と設定値Tsとの差に応じて圧縮機1の回転数(圧縮機駆動部21の出力周波数)が制御される。この際、設定値Tsに対してある一定の差βを越えた温度が検出された場合、すなわち、検知温度>Ts+βの場合、制御部40は速やかに室内を冷却する必要があると判断し、能力最大制御モードの運転が実行される。
【0050】
能力最大制御モードの運転の具体的な制御については、第1の実施形態と同じなので、その説明は省略する。
【0051】
次に、設定値Tsに対して一定の幅をもった温度が検出された場合、すなわち、Ts+β≧検知温度≧Ts−αの場合、制御部40は当該空調機が所定の能力をほぼ満足していると判断し、最大COP制御モードの運転が実行される。
【0052】
最大COP制御モードの運転の具体的な制御については、第1の実施形態と同じなので、その説明は省略する。
【0053】
なお、この最大COP制御モードの運転が実行されている場合に、室内温度が設定値Tsよりも高ければ、すなわち、Ts+β≧検知温度≧Tsであれば、圧縮機1の回転数を微減させる運転が併せて行われ、室内温度が設定値Tsよりも低ければ、すなわち、Ts≧検知温度≧Ts−αであれば、圧縮機1の回転数を微増させる運転が併せて行われる。
【0054】
以上のような制御を行うことにより、空調負荷に見合う十分な冷房能力を確保しながら運転電力の低減を図ることができて、運転効率の大幅な向上が図れる。よって、省エネルギ性にすぐれた空調機となる。
【0055】
なお、この発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、要旨を変えない範囲で種々変形実施可能である。
【0056】
【発明の効果】
以上述べたようにこの発明によれば、十分な冷房能力を確保しながら運転電力の低減を図ることができ、これにより運転効率の大幅な向上が図れる省エネルギ性にすぐれた空調機とその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各実施形態の構成を示す図。
【図2】第1の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【図3】第1の実施形態における室内温度変化と運転制御との関係を示す図。
【符号の説明】
1…圧縮機、2…ガス側冷媒配管、3…水冷凝縮器、3a,3b…熱交換器、4…凝縮圧力調節弁、5…液側冷媒配管、6…膨張弁、7…室内熱交換器(蒸発器)、8…室内送風機、11…冷却水循環ポンプ、12…水管、13…冷却塔、14…熱交換器、15…散水器、16…散水ポンプ、17…冷却塔送風機、18…水管、21…圧縮機駆動部、22…送風機駆動部、23…ポンプ駆動部、31…室内温度センサ(室内温度検知手段)、32…吸い込み温度センサ(室内温度検知手段)、33…吹き出し温度センサ(室内温度検知手段)、34…外気温度センサ(外気温度検知手段)、40…制御部、41…操作部。
Claims (5)
- 圧縮機、水冷凝縮器、膨張弁、および室内熱交換器を通して冷媒を循環させる冷凍サイクルと、
前記室内熱交換器に室内空気を通す室内送風機と、
冷却水循環ポンプ、冷却塔、および前記水冷凝縮器を通して冷却水を循環させる冷却水循環サイクルと、
室内温度を検知する室内温度検知手段と、
外気温度を検知する外気温度検知手段と、
前記室内温度検知手段の検知温度が所定値以上のとき、最大の冷房能力が得られるよう、前記冷却塔の冷却量を増大し、かつ前記冷却水循環ポンプの送水量を増大し、これに合わせ、前記圧縮機の回転数を増大し、前記室内送風機の風量を増大し、かつ前記膨張弁の開度を制御する第1制御手段と、
制御モードとして、前記冷凍サイクルの機器を低負荷で運転し前記冷却水循環サイクルの機器を高負荷で運転する第1の制御、前記冷却水循環サイクルの機器を低負荷で運転し前記冷凍サイクルの機器を高負荷で運転する第2の制御、前記冷却水循環サイクルの一部の機器を低負荷で運転し前記冷却水循環サイクルの残りの機器および前記冷凍サイクルの機器を高負荷で運転する第3の制御、前記冷却水循環サイクルの一部の機器および前記冷凍サイクルの機器を低負荷で運転し前記冷却水循環サイクルの残りの機器を高負荷で運転する第4の制御を有し、これら制御ごとに各機器の個々の運転電力を室内温度および外気温度をパラメータとして決定するための運転電力決定条件をそれぞれ定め、前記室内温度検知手段の検知温度が所定値未満のとき、極力小さい電力で、必要とされる電力が得られるよう、前記室内温度検知手段の検知温度および前記外気温度検知手段の検知温度に基づいて各運転電力決定条件を参照し第1,第2,第3,第4の制御における各機器の決定すべき運転電力の合計値をそれぞれ求め、第1,第2,第3,第4の制御のうち最も小さい合計値となる制御を実行する第2制御手段と、
を具備したことを特徴とする空調機。 - 請求項1に記載の空調機において、
前記室内温度検知手段は、室内温度として、室内の所定個所の温度、または室内からの吸い込み空気温度、または室内への吹き出し空気の温度を検知することを特徴とする空調機。 - 請求項1に記載の空調機において、
前記第1制御手段における前記室内温度検知手段の検知温度が所定値以上は、前記室内温度検知手段の検知温度が予め定められた設定値を含む所定温度域より高い場合のことであり、
前記第2制御手段における前記室内温度検知手段の検知温度が所定値未満は、前記室内温度検知手段の検知温度が前記所定温度域内に存する場合のことである、
ことを特徴とする空調機。 - 請求項1に記載の空調機において、
前記冷却塔は、熱交換器、この熱交換器に冷却用水をかける散水器、底部に溜まる冷却用水を前記散水器に供給する散水ポンプ、冷却用水を冷やすために外気を導入する冷却塔送風機を有し、
前記第2制御手段の冷凍サイクルの機器を低負荷で運転し冷却水循環サイクルの機器を高負荷で運転する第1の制御は、前記散水ポンプを運転し、前記冷却塔送風機を定格電力で運転し、前記冷却水循環ポンプの送水量を多くして、前記圧縮機を低負荷で運転する制御であり、
前記第2制御手段の冷却水循環サイクルの機器を低負荷で運転し冷凍サイクルの機器を高負荷で運転する第2の制御は、前記散水ポンプと前記冷却塔送風機の両方またはどちらかの運転を停止もしくは定格電力以下で運転して、前記圧縮機の回転数を上げる制御であり、
前記第2制御手段の冷却水循環サイクルの一部の機器を低負荷で運転し冷却水循環サイクルの残りの機器および冷凍サイクルの機器を高負荷で運転する第3の制御は、前記冷却塔送風機を低負荷で運転し、前記冷却水循環ポンプ、前記散水ポンプ、および前記圧縮機を高負荷で運転する制御であり、
前記第2制御手段の冷却水循環サイクルの一部の機器および冷凍サイクルの機器を低負荷で運転し冷却水循環サイクルの残りの機器を高負荷で運転する第4の制御は、前記冷却塔送風機および前記圧縮機を低負荷で運転し、前記冷却水循環ポンプおよび前記散水ポンプを高負荷で運転する制御である、
ことを特徴とする空調機。 - 圧縮機、水冷凝縮器、膨張弁、および室内熱交換器を通して冷媒を循環させる冷凍サイクルと、冷却水循環ポンプ、冷却塔、および前記水冷凝縮器を通して冷却水を循環させる冷却水循環サイクルとを備えた空調機において、
室内温度が所定値以上のとき、最大の冷房能力が得られるよう、前記冷却塔の冷却量を増大し、かつ前記冷却水循環ポンプの送水量を増大し、これに合わせ、前記圧縮機の回転数を増大し、前記室内送風機の風量を増大し、かつ前記膨張弁の開度を制御するステップと、
制御モードとして、前記冷凍サイクルの機器を低負荷で運転し前記冷却水循環サイクルの機器を高負荷で運転する第1の制御、前記冷却水循環サイクルの機器を低負荷で運転し前記冷凍サイクルの機器を高負荷で運転する第2の制御、前記冷却水循環サイクルの一部の機器を低負荷で運転し前記冷却水循環サイクルの残りの機器および前記冷凍サイクルの機器を高負荷で運転する第3の制御、前記冷却水循環サイクルの一部の機器および前記冷凍サイクルの機器を低負荷で運転し前記冷却水循環サイクルの残りの機器を高負荷で運転する第4の制御を有し、これら制御ごとに各機器の個々の運転電力を室内温度および外気温度をパラメータとして決定するための運転電力決定条件をそれぞれ定め、室内温度が所定値未満のとき、極力小さい電力で、必要とされる電力が得られるよう、室内温度および外気温度に基づいて各運転電力決定条件を参照し第1,第2,第3,第4の制御における各機器の決定すべき運転電力の合計値をそれぞれ求め、第1,第2,第3,第4の制御のうち最も小さい合計値となる制御を実行するステップと、
を備えることを特徴とする空調機の制御方法。
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