JP2004286207A - ロール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セラミックスからなり、軸方向に貫通孔6aを有する円筒体6に、金属からなるシャフト2を接合してなるロール1であって、上記シャフト2は円筒体6に固定する嵌合部2aと、該嵌合部2aに接続する支持部2bとを有し、且つ上記円筒体6の熱膨張係数に対する嵌合部2aの熱膨張係数を0.5〜1.55の範囲とする。
【選択図】図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅または銅合金等の鋼板を圧延、搬送するセラミック製のロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、図6に示すように、ロール101に組み込まれている金属製のシャフト102の両側にベアリングを装着して支持し、一方の金属製のシャフト102にキー溝を加工して、その部分と駆動部130を固定することにより回転させていた。
【0003】
このロール101を用いて圧延、搬送する際には、図5に示すように複数本のロール101を回転させて銅箔120等を上下に繰り返し移動させて送り、次々に液槽に浸すことで表面処理を行うものである。銅箔120等は、下側に配置されたロール101に移動した際に、液槽中の薬液中に浸されるようになっている。この液槽は酸性やその他の薬品からなり、順次様々な液に浸し、乾燥する工程が繰り返される。
【0004】
このようなロール101は、種々の温度雰囲気に曝されたり、液槽中に繰り返し浸漬されるとともに、高温に加熱された鋼材等が接触するため、高い耐摩耗性、熱伝導性、耐久性が要求される。
【0005】
そこで、図3に示すように高温耐熱性のセラミックスからなる円筒体106と、その軸となる金属製のシャフト102とからなり、該シャフト102は、高強度炭素材からなるとともに、円筒体106との保持部に嵌合部107が形成されていることから、強固に連結でき、高温炉内で長期間に亘って耐久性を保持できるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、上記円筒体106の外周面は、銅箔120等の鋼板を圧延するために、その表面粗さをRa0.4μm以下としていた(特許文献2参照)。
【0007】
また、図4に示すように、金属製のシャフト102上に円筒体106としてカーボン層106a、金属層106b、結合用金属層106c、セラミックスからなる最表層106dを順に形成することによって、雰囲気温度より低い鋼材が円筒体106の外周面に接触しても、円筒体106の外周面における温度分布を均一として、耐摩耗性、高熱伝導性を有するものが提案されている(特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−183260号公報
【特許文献2】
特開平9−287614号公報
【特許文献3】
特開2002−13526号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に示すようなロールは、シャフト102に嵌合部108が形成されているものの、嵌合部108の材質はシャフト102と同じ高強度炭素材からなるため、セラミック製の円筒体106と熱膨張係数が異なり、嵌合部107を密着させる構造にした場合に高強度炭素材との熱膨張の差を吸収する隙間がないため、円筒体106を破損させるという問題を有していた。
【0010】
特に、高温の液槽内で使用される場合、シャフト102の嵌合部108が膨張し、円筒体106を内側から押す応力が作用し、破損しやすいという問題を有していた。
【0011】
また、特許文献2に示すようなロール101は、金属製のシャフト102上に、円筒体106としてカーボン層106a、金属層106b、結合用金属層106c、セラミックスからなる最表層106dを順に焼き嵌めによって固定されているため、ロール101の両端面が液体を遮断できる構造となっていないため、液槽中に浸漬すると、各層106a〜106dの端面から腐食を発生しやすく、耐久性に劣るという問題を有していた。
【0012】
また、特許文献3に示すように、円筒体106の外周面の面粗さは高精度に加工されていたが、シャフト102と端面の面粗さ精度を重要視せずにRa1.0μm以上に粗くなった場合、金属シャフトの腐食を防止するために、円筒体106の端部の嵌合部とシャフト102の嵌合部をシールする構造などとしていても、面が粗いために十分なシール性を上げることが出来なかった。
【0013】
本発明は、上述した問題に鑑みなされたものであって、その目的はセラミック製の円筒体の割れ等を防ぐことにあり、更にロールのエッジ部または凸部を有効に保護し、応力集中発生箇所を無くすることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のロールは、セラミックスからなり、軸方向に貫通孔を有する円筒体に、金属からなるシャフトを接合してなるロールであって、上記シャフトは円筒体に固定する嵌合部と、該嵌合部に接続する支持部とを有し、且つ上記円筒体の熱膨張係数に対する嵌合部の熱膨張係数が0.5〜1.55の範囲であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のロールは、上記嵌合部に凸部を、支持部に凹部をそれぞれ形成し、各凹部、凸部が合致するように固定することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明のロールは、上記嵌合部に凸部を、支持部に凹部をそれぞれ形成し、各凹部、凸部が合致するように固定することを特徴とする。
【0017】
またさらに、本発明のロールは、上記シャフトが、嵌合部に固定され、円筒体の貫通孔内に挿通する軸芯部を有することを特徴とする。
【0018】
さらにまた、本発明のロールは、上記支持部が耐食性金属からなることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のロールは、上記円筒体の端部に上記嵌合部を保持する段部を形成したことを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明のロールは、上記円筒体の端面における表面粗さがRa0.4μm以下、平坦度が0.05mm以下であることを特徴とする。
【0021】
またさらに、本発明のロールは、上記支持部の端面が円筒体の端面より軸方向に1〜5mm内側に位置することを特徴とする。
【0022】
さらにまた、本発明のロールは、酸性の液槽に浸漬されることを特徴とする。
【0023】
本発明のロールによれば、上記シャフトは円筒体に固定する嵌合部と、該嵌合部に接続する支持部とを有し、円筒体の熱膨張係数に対する嵌合部の熱膨張係数が0.5〜1.55の範囲であることから、ロールを高温雰囲気で用いてもセラミックスからなる円筒体と金属からなるシャフトの熱膨張が近い値となるため、熱膨張による伸び量が同等となり、円筒体に割れやクラックが生じるのを有効に防止できるとともに、嵌合部が円筒体の端面と接触して強固に保持することができるため、液槽中で使用される場合においても、金属製のシャフトが腐食で溶け出すことはなく、銅箔等の鋼材の品質を劣化させることを防止できる。
【0024】
また、本発明のロールによれば、上記嵌合部の熱膨張係数が3.0×10−6/℃〜13.5×10−6/℃であることから、高い温度環境下でもセラミックスからなる円筒体が破損することなく耐久性の高いものとなる。
【0025】
さらに、本発明のロールによれば、上記嵌合部に凸部を、支持部に凹部をそれぞれ形成し、各凹部、凸部が合致するように固定することから、嵌合部が液槽中に露出することはないため、腐食によって銅箔等の品質の劣化を防止することができる。
【0026】
またさらに、本発明のロールによれば、上記シャフトは、嵌合部に固定され、円筒体の貫通孔内に挿通する軸芯部を有することから、嵌合部を円筒体の端部に合わせて固定し、さらに嵌合部に軸芯部を中心にしてねじ込むことでより強固に位置精度良く固定することができる。
【0027】
さらにまた、本発明のロールによれば、上記支持部は耐食性金属からなることから、液槽中に浸漬しても、支持部の金属が腐食して溶け出すことはなく、銅箔等の鋼材の品質を劣化させるということを防止できる。
【0028】
また、本発明のロールによれば、上記円筒体の端部に上記嵌合部を保持する段部を形成したことにより、長期間の使用においても嵌合部を強固に固定して耐久性の高いロールを得ることができる。
【0029】
さらに、本発明のロールによれば、上記円筒体の端面における表面粗さがRa0.4μm以下、平坦度が0.05mm以下であることから、そのシール構造において、十分なシール性を有することができる。
【0030】
またさらに、本発明のロールは、上記支持部の端面が円筒体の端面より軸方向に1〜5mm内側に位置することから、薬液が進入しても、嵌合部が直接薬液に触れることが無いため、腐食を防止できる。
【0031】
さらにまた、本発明のロールは、酸性の液槽に浸漬されることから、金属部分に十分なシールを施しているため、その腐食を防止することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について図を用いて説明する。
【0033】
図1、2(a)、(b)はそれぞれ本発明のロールの一実施形態を示す部分斜視図、部分断面図であり、セラミックスからなり、軸方向に貫通孔6aを有する円筒体6に、金属からなるシャフト2を接合してなる。
【0034】
上記円筒体6を形成するセラミックスとしては、用途によりアルミナ(Al2O3)、窒化ケイ素(Si3N4)、ジルコニア(ZrO2)、炭化ケイ素(SiC)等を主成分とし、それぞれ公知の焼結助剤などを含むセラミックスからなっている。
【0035】
上記アルミナは耐薬品性が強く被圧延材の影響を受けにくいため、広く使用され、被圧延材の温度が高いものに対しては、耐熱衝撃性の高い窒化ケイ素を、圧延荷重が大きい使用に対しては機械的強度が最も大きなジルコニアが使用され、さらに軽量化、熱伝導効率を上げるために、比重が小さく、熱伝導率が大きな炭化ケイ素が使用される。
【0036】
ここで、アルミナについては、アルミナ原料粉末に有機バインダーを加えて混合攪拌し、成形したあと1700℃前後で焼成する。
【0037】
窒化ケイ素については、80重量%以上の窒化珪素を主成分とし、焼結助剤としてアルミナ、イットリア(Y2O3)などを含む組成からなる窒化ケイ素質セラミックス原料を所定の形状に成形し、1800℃前後で焼成する。
【0038】
ジルコニアについては、ジルコニア原料粉末に有機バインダーを加えて混合・攪拌し成形したあと、約1400℃の温度で焼成する。
【0039】
炭化ケイ素については、炭化ケイ素粉末にアルミナ粉末を1〜7重量%、イットリア粉末やセリア粉末等の周期率表第3a元素酸化物を1〜5重量%添加混合して原料粉末を調整して、所定の形状に成形したあと、1800〜2200℃の温度で焼成する。
【0040】
このようにして得られた円筒体6には、その貫通孔6aにシャフト2が挿通される。
【0041】
本発明では、シャフト2が円筒体6を固定する嵌合部2aと、該嵌合部2aに接続する支持部2bとを有し、上記円筒体6の熱膨張係数に対する嵌合部2aの熱膨張係数が0.5〜1.55の範囲とすることが重要である。
【0042】
これによって、ロール1を高温雰囲気で用いてもセラミックスからなる円筒体6と金属からなるシャフト2の熱膨張係数が近い値であるため、熱膨張による伸び量が同等となり、円筒体6に割れやクラックが生じるのを有効に防止できるとともに、嵌合部2aが円筒体6の端面と接触して強固に保持することができるため、液槽中で使用される場合においても、金属製のシャフト2が腐食で溶け出すことはなく、銅箔等の鋼材の品質を劣化させることを防止できる。
【0043】
なお、上記円筒体6の熱膨張係数に対する嵌合部2aの熱膨張係数が0.5未満、1.55を越えると、ロール1に作用した熱によって径方向に応力が作用し、円筒体6を構成するセラミックスと嵌合部2aを構成する金属との熱膨張係数の差に起因して円筒体6に割れやクラックが生じる。
【0044】
特に、液槽中で使用される場合、金属製のシャフト2が液槽に浸された時に金属が腐食で溶け出し、金属成分が液槽に散乱して銅箔等の表面に付着するため、その品質を劣化させるということになる。
【0045】
なお、上記円筒体6の熱膨張係数に対する嵌合部2aの熱膨張係数が0.8〜1.2の範囲とすることがより好ましい。
【0046】
また、上記嵌合部2aの熱膨張係数は、3.0×10−6/℃〜13.5×10−6/℃とすることが好ましく、上記円筒体6との熱膨張係数の比を満たす範囲で、嵌合部2aの熱膨張係数を3.0×10−6/℃〜13.5×10−6/℃とすることによって、特に高温中で使用する場合、シャフト2の嵌合部2aの熱膨張係数とセラミックスからなる円筒体6の熱膨張係数がほぼ同じになり内側から径方向に押す応力が小さくなり円筒体6の割れや破損を防止することができる。
【0047】
なお、円筒体6がアルミナからなる場合には、上記嵌合部2aとしてステンレス(SUS430)、高硬度鋼を、また円筒体6が窒化ケイ素、炭化ケイ素からなる場合にはコバールを使用することで熱膨張係数の違いによる円筒体6の破損や割れを防止することができる。
【0048】
また、上記嵌合部2aを円筒体6に固定するために、円筒体6の端部の内周側に段部6bを形成することが好ましく、円筒体6とシャフト2の固定部分がその外周面全体で接触して固定されることになり、回転時の応力が1箇所に集中することはなく、円筒体6の欠けや破損を防ぐことができる。
【0049】
上記段部6bの軸方向の長さは、5〜100mmとすることが好ましく、5mm未満のときは、使用時に荷重がかかった場合、重なり部分が少ないために金具がズレて嵌合部2aが円筒体6から外れやすく、100mmを超えると、シャフト2の精度と円筒体6との加工精度の兼ね合いが悪くなり挿入が難しくなる。さらに強引にねじ込むと円筒体6の割れを招くこととなる。
【0050】
また、円筒体6の段部6bと嵌合部2aとの間は接着剤8にて補強することが好ましく、段部6bを小さく加工すれば良いため、応力集中の発生箇所を無くすことができる。また、回転トルクを円筒体6の接着面全体で受けることができるため、円筒体6に発生する応力はより小さくすることができる。
【0051】
なお、円筒体6の段部6bの形状は、通常の円筒形状に限定すること無く、一部に平面を有する形状等、他の形状においても実施可能であるが、これらの場合にも円筒体6に応力集中が発生せず、割れを防止してシャフト2を固定することができる。
【0052】
また、上記嵌合部2aには、ロール1を回転させる駆動部と連結する支持部2bが接続されている。
【0053】
上記支持部2bは、耐食性金属からなり、液槽内に繰り返し、長時間浸漬させても、腐食が進み液槽中に不純物が混入して、銅箔等の表面に付着して品質を劣化させることを有効に防止することができる。
【0054】
ここで、上記耐食性金属とは、濃度5%の硫酸の液に1日浸漬し、浸漬後の重量減少量が104(mg/dm2・day)以下の特性を持つ金属を示し、1日あたりの一定の比表面積(dm2=100cm2)においてどのくらいの重量が減少したかを示す。このような耐食性金属としては、ステンレス(SUS304、SUS316、SUS317等)や、合金工具鋼等を用いることができる。
【0055】
また、支持部2bの熱膨張係数は、15.0×10−6/℃〜18.0×10−6/℃である金属を使用することが好ましく、嵌合部2aとの熱膨張係数の差が大きくなり過ぎることなく、稼動中に嵌合部2aとの熱膨張係数の差から外れることを防止することができる。
【0056】
また、上記嵌合部2aと支持部2bとの連結構造としては、嵌合部2aに凸部4を、支持部2bに凹部3をそれぞれ形成し、各凹部3、凸部4が合致するように焼きばめ等によって固定することが好ましい。
【0057】
これは、嵌合部2aを成す金属は支持部2bを成す金属より熱膨張係数が小さいため、一般的に腐食されやすい金属となる。そのため、支持部2bの凹部3によって嵌合部2aの凸部4を完全に被覆し、液槽中に嵌合部2aが露出するのを防止でき、また簡単な構造で両者を強固に固定することができる。
【0058】
また、嵌合部2aと支持部2bの凹部3、凸部4が合致した部分には、その外周に金属製のナット9をねじ込み接着することにより、軸方向に押さえられている状態になるため、より強固に支持部2bを接合できる。
【0059】
さらに、上記凹部3の径方向の厚みt3と凸部4の径方向の厚みt4は、その比が1:1〜1:4(t3:t4)の範囲にすることが好ましく、凹部3、凸部4の焼きばめ力が不足して外れたり、逆に金属同士の極端な熱膨張係数の差で隙間が発生し剥離する可能性が出てくるのを防止して強固に固定できる。
【0060】
なお、厚みt3、t4の比は1:1とすることがより好ましい。また、軸方向の長さはシャフト2と円筒体6との重なり部が小さい場合には、引っかかり部分が少ないためロール1自体の重量や稼動中の荷重、また、軸方向への金属の熱膨張によって外れる可能性が発生してくるため5mm以上に設定することが好ましい。
【0061】
また、図2(c)に示すように、上記円筒体6の端面60における表面粗さがRa0.4μm以下、平坦度が0.05mm以下であることが好ましい。
【0062】
これによって、円筒体6の端面60と接触する部材との密着性を向上させ、
液槽中で使用した際に薬液が円筒体6の内部に進入することを防ぐことが可能である。特に、ナット9との間にシール部材10介する場合には、シール部材10との円筒体6の端面60との密着性をより向上させ、平坦度を0.05mm以下にすることでOリング等のシール部材10を円筒体6の端面60とナット9の間で均等に押しつぶすことができるため、より確実にシール性を保持することができる。
【0063】
一方、円筒体6の端面60がRa0.4μmを越えると、粗い部分とシール部材10との間に隙間が生じ、薬液が進入し腐食の原因となる。また、平坦度が0.05mmを超えると、シール部材10を円筒体6の端面60と金属製のナット9の間で均等に押しつぶすことができないため、シール性が不安定となり、薬液の進入により嵌合部2aが腐食してしまう可能性がある。
【0064】
なお、このような円筒体6を得るには、焼成によって得られた焼結体に機械加工を施し、その後、粒径50μm以下のダイヤモンドパウダーとセラミックや鋳鉄製定盤を使用して仕上げ加工を施すことにより、端面60の表面粗さ及び平坦度を向上させることができる。
【0065】
また、上記表面粗さは、JIS B 0601に規定される表面粗さの中心線平均粗さRaにて測定し、平坦度は3次元測定器にて測定した。
【0066】
さらに、図2(c)に示すように、上記支持部2bの端面20が円筒体6の端面60より軸方向に距離Xが1〜5mmとなるようにすることが好ましい。
【0067】
これによって、薬液が進入してきても、嵌合部2aが直接薬液に触れることがないため、腐食を防止することができる。上記距離Xが1mmより小さいと、薬液が進入した場合、低熱膨張の金属からなる軸芯部2cが薬液と接触するため、腐食が進み不純物が析出する恐れがある。一方、距離Xが5mmより大きいと、高温になった場合、耐食性金属等の金属からなる支持部2bが熱膨張し、セラミックスからなる円筒体6を破損させる恐れがある。また、上記距離Xは2〜4mmとすることがより好ましい。
【0068】
なお、このような構造のロールを作製するためには、予め、嵌合部2aを図2(c)のように1〜5mm短くして、支持部2bの端面20を長くして作製する。
【0069】
またさらに、上記シャフト2は、円筒体6の内部の貫通孔6a内に挿通する軸芯部2cを別体として有することが好ましく、嵌合部2aを円筒体6の端部に合わせて固定し、さらに嵌合部2aに軸芯部2cを中心にしてねじ込むことでより強固に位置精度良く固定することができる。また、シャフト2を作製する際、長尺の素材を準備することなく各部材を効率良く準備できるためコストを抑えられる。なお、軸芯部2は嵌合部2aと同材質からなることが好ましい。
【0070】
また、軸芯部2cと円筒体6との間には空間5を設けることが好ましく、ロール1の軽量化とともに、円筒体6との接触部を小さくして円筒体6の破損を有効に防止できる。
【0071】
さらに、上記軸芯部2cは、図2(a)に示すように嵌合部2aとネジ構造によって接合されていてもよく、図2(b)に示すように接着剤によって接合されていてもよい。
【0072】
【実施例】
(実施例1)
図1、図2に示すようなロール試料を得るため、先ず、アルミナ(Al2O3)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)、ジルコニア(ZrO2)からなる円筒体を作製した。
【0073】
次いで、シャフトとして、嵌合部を鉄(S45C)、ステンレス(SUS430)、ステンレス(SUS304)、コバールのそれぞれで作製し、支持部をステンレス(SUS304)、ステンレス(SUS430)からなる材質で作製した。
【0074】
上記嵌合部及び支持部にはそれぞれ凹部、凸部を形成して焼きばめによって固定した。
【0075】
そして、各材質の円筒体の両端の開口部から、シャフトを挿入しネジ止め接着して固定し、各試料を20個ずつ作製した。
【0076】
各材質のロール試料を80℃まで温度を上げた硫酸(5%)の液槽に2日間浸漬する。次にこのロールを回転数15m/minで回転させ、円筒体に1000Nの圧力がかかるように、別のロールを押しつけて回転させ、耐食性、強度試験を施した。
【0077】
試験終了後、各ロール試料の円筒体にクラックが発生しているかどうかの観察を行ない、発生箇所の数と最大進展クラック長さを測定した。また、支持部から一定面積のテストピースを取り出し、重量計にて重量減少量を測定し、1日あたりの一定の比表面積(dm2=100cm2)においてどのくらいの重量が減少したか(mg/dm2・day)を算出した。
【0078】
結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1から、明らかなように、円筒体の熱膨張係数に対する嵌合部の熱膨張係数の比が0.5〜1.55の範囲にした試料(No.1〜3、5、10、15〜19)は、円筒体にはクラックが発生することはなく、また、支持部として耐食性金属を用いた試料(No.1、2、5、10、15〜17、19)は、支持部の重量減少量も0.11×104(mg/dm2/day)以下と非常に耐食性が高いものであった。
【0081】
これに対し、円筒体の熱膨張係数に対する嵌合部の熱膨張係数の比を0.5未満及び1.55を越える試料(No.4、6〜9、11〜14、20)は、円筒体に1〜4ヶ所のクラックが発生し、その最大進展長さも6〜19mmと大きなものであった。
【0082】
(実施例2)
上述の実施例1と同様の方法にて、表1の試料No.2の材質(円筒体の材質はアルミナ、嵌合部の材質はステンレス(SUS430)、支持部の材質はステンレス(SUS304))を用いて、図2(c)に示すようなロール試料を20個ずつ作製した。
【0083】
なお、嵌合部及び支持部にはそれぞれ凹部、凸部を形成して焼きばめによって固定し、各材質の円筒体の両端の開口部から、シャフトを挿入しネジ止め接着して固定した。また、円筒体とシャフトは、シール部材としてJIS B 2401に規定されているISO一般工業用の1Aと呼ばれるニトリルゴム相当、耐鉱物油用でタイプAデュロメータ硬さA70とされている固定用Oリングを使用し、ナットにて締結固定した。
【0084】
また、円筒体の端面における表面粗さRaは、加工するダイヤモンド砥石の粒度を#120、#200、#300と細かくし、Ra0.2μm以下はダイヤ遊離砥粒を使用したラップ加工を施すことで、それぞれ異なる表面粗さのものを製作した。この表面粗さは、表面粗さ計にて中心線平均粗さRaを測定した。
【0085】
さらに、平坦度は、万能研削盤で研削加工する際の切り込み速さをF20〜F2まで変えることで表1に示す如く値の平坦度とした。この平坦度の測定は、3次元測定器にて、一面当り全周を中心基準で、30°ずらしながら12ポイント測定し、平坦度を測定した。
【0086】
またさらに、上記支持部の端面が円筒体の端面より軸方向に距離Xが0.5〜7.0mmとなるようにかみ合わせを調整した試料を作製した。
【0087】
そして、各試料に対して、長期間使用することにより、シール部材が劣化して薬液が進入することで、嵌合部が腐食される問題を解決するために、下記評価を実施した。
【0088】
各ロール試料を90℃まで温度を上げた硫酸(5%)の液槽に4日間浸漬する。次にこのロール試料を回転数15m/minで回転させ、円筒体に1000Nの圧力がかかるように、別のロールを押しつけて回転させ、100時間の稼動後にナット部を緩めてこのシール部を開放し、円筒体の内部への薬液の漏れの有無を支持部の外周表面の状態を観察することにより実施した。
薬液が円筒体の内部へ進入した試料が0個の場合を○、薬液の進入した試料個数が3個以下のものを△、薬液が円筒体の内部へ進入した試料個数が4個以上の場合を×とした。
また、嵌合部の表面の変色の有無を観察することによって、腐食が発生した試料が0個の場合を○、腐食が発生した試料個数が3個以下のものを△、腐食が発生した試料個数が4個以上の場合を×とした。
【0089】
また、各試料の円筒体のクラックの発生個数を確認した。
【0090】
結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2に示すように、円筒体の端面の表面粗さがRa0.4μm以下、平坦度が0.05mm以下である試料(No.21〜29、31)は、円筒体の内部への薬液の漏れはほとんど無く、嵌合部の表面には変色などの腐食は無かった。
【0093】
特に、支持部の端面の位置と、円筒体の端面との位置関係を示す距離Xが1〜5mmの試料(21〜23、25〜27、29、31)は、薬液の漏れによる腐食が全くなく、クラックの発生も無かった。
【0094】
これに対し、円筒体の端面の表面粗さがRa0.5μm以上、平坦度が0.05mm以下である試料(No.32、33)は、支持部の外周面の表面に薬液の漏れが確認でき、嵌合部の表面にも変色による腐食が確認された。
【0095】
また、円筒体の端面の表面粗さRa0.4μm以下、平坦度が0.06mm以上である試料(No.30)についても、支持部の外周面の表面に薬液の漏れが確認でき、嵌合部の表面にも変色による腐食が確認された。
【0096】
また、支持部の端面の位置と、円筒体の端面との位置関係を示す距離Xが6.0mmの試料(No.28)は、セラミックスからなる円筒体の内側の段部に、支持部の熱膨張によると見られるクラックが確認された。
【0097】
【発明の効果】
本発明のロールによれば、上記シャフトは円筒体に固定する嵌合部と、該嵌合部に接続する支持部とを有し、円筒体の熱膨張係数に対する嵌合部の熱膨張係数が0.5〜1.55の範囲であることから、ロールを高温雰囲気で用いてもセラミックスからなる円筒体と金属からなるシャフトの熱膨張係数が近い値となるため、熱膨張による伸び量が同等となり、円筒体に割れやクラックが生じるのを有効に防止できるとともに、嵌合部が円筒体の端面と接触して強固に保持することができるため、液槽中で使用される場合においても、金属製のシャフトが腐食で溶け出すことはなく、銅箔等の鋼材の品質の劣化を防止できる。
【0098】
また、本発明のロールによれば、上記嵌合部の熱膨張係数が3.0×10−6/℃〜13.5×10−6/℃であることから、高い温度雰囲気でもセラミックスからなる円筒体が破損することなく耐久性の高いものとなる。
【0099】
さらに、本発明のロールによれば、上記嵌合部に凸部を、支持部に凹部をそれぞれ形成し、各凹部、凸部が合致するように固定することから、嵌合部が液槽中に露出することはないため、腐食によって銅箔等の品質の劣化を防止することができる。
【0100】
またさらに、本発明のロールによれば、上記シャフトは、嵌合部に固定され、円筒体の貫通孔内に挿通する軸芯部を有することから、嵌合部を円筒体の端部に合わせて固定し、さらに嵌合部に軸芯部を中心にしてねじ込むことでより強固に位置精度良く固定することができる。
【0101】
さらにまた、本発明のロールによれば、上記支持部は耐食性金属からなることから、液槽中に浸漬しても、支持部の金属が腐食して溶け出すことはなく、銅箔等の鋼材の品質を劣化させるということを防止できる。
【0102】
また、本発明のロールによれば、上記円筒体の端部に上記嵌合部を保持する段部を形成したことにより、長期間の使用においても嵌合部を強固に固定して耐久性の高いロールを得ることができる。
【0103】
さらに、本発明のロールによれば、円筒体の端面の表面粗さをRa0.4μm以下、平坦度を0.05mm以下とすることによってシール性を向上させることができ、薬液の進入を確実に防止することができる。
【0104】
またさらに、本発明のロールによれば、上記支持部の端面が円筒体の端面より軸方向に1〜5mm内側に位置することから、薬液が進入してきても、嵌合部が直接薬液に触れることがないため、腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のロールの一実施形態を示す部分斜視図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は本発明のロールの一実施形態を示す部分断面図である。
【図3】従来のロールを示す部分断面図である。
【図4】従来のロールを示す部分断面図である。
【図5】ロールを用いて搬送を行う状態を示す概略斜視図である。
【図6】銅箔製造ラインの搬送用ロールの駆動を示す概略図である。
【符号の説明】
1:ロール
2:シャフト
2a:嵌合部
2b:支持部
2c:軸芯部
20:端面
3:凹部
4:凸部
5:空間
6:円筒体
6a:貫通孔
6b:段部
60:端面
7:キー溝
8:接着層
9:ナット
10:シール部材
101:ロール
102:シャフト
106:円筒体
107:嵌合部
108:嵌合部
120:銅箔
130:駆動部
Claims (9)
- セラミックスからなり、軸方向に貫通孔を有する円筒体に、金属からなるシャフトを接合してなるロールであって、上記シャフトは円筒体に固定する嵌合部と、該嵌合部に接続する支持部とを有し、且つ上記円筒体の熱膨張係数に対する嵌合部の熱膨張係数が0.5〜1.55の範囲であることを特徴とするロール。
- 上記嵌合部の熱膨張係数が3.0×10−6/℃〜13.5×10−6/℃であることを特徴とする請求項1に記載のロール。
- 上記嵌合部に凸部を、支持部に凹部をそれぞれ形成し、各凹部、凸部が合致するように固定することを特徴とする請求項1または2に記載のロール。
- 上記シャフトは、嵌合部に固定され、円筒体の貫通孔内に挿通する軸芯部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のロール。
- 上記支持部は、耐食性金属からなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のロール。
- 上記円筒体の端部に上記嵌合部を保持する段部を形成したことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のロール。
- 上記円筒体の端面における表面粗さがRa0.4μm以下、平坦度が0.05mm以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のロール。
- 上記支持部の端面が円筒体の端面より軸方向に1〜5mm内側に位置することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のロール。
- 上記ロールが酸性の液槽に浸漬されることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のロール。
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