JP4383112B2 - ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅や銅合金等の鋼材を圧延や搬送するのに用いるセラミック製のロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、図6に示すように、ロール101に組み込まれている金属製のシャフト102の両側にベアリングを装着して支持し、一方の金属製のシャフト102にキー溝を加工して、その部分と駆動部130を固定することにより回転させていた。
【0003】
そして、図5に示すように複数本のロール101を回転させることによって銅箔120を搬送し、不図示の液槽中の酸性やその他の薬品からなる薬液に浸した後に乾燥する工程を繰り返すことにより、銅箔120の表面処理が行なわれている。
【0004】
このようなロール101は、種々の温度雰囲気に曝されたり、薬液に繰り返し浸漬されるとともに、高温に加熱された鋼材等が接触するため、高い耐摩耗性、熱伝導性、耐久性が要求される。
【0005】
そこで、図3に示すように高温耐熱性のセラミックス材からなる円筒体106と、高強度炭素材からなるシャフト102とから構成され、円筒体106に形成された嵌合部107とシャフト102に形成された嵌合部108とが連結されていることから、強固に連結でき、高温炉内で長期間に亘って耐久性を保持できるロールが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、図4に示すように、金属製のシャフト102上に円筒体106としてカーボン層106a、金属層106b、結合用金属層106c、セラミックスからなる最表層106dを順に形成することによって、高温の雰囲気中で用いられているときに低温の鋼材が円筒体106の外周面に接触しても、円筒体106の外周面における温度分布を均一として、耐摩耗性、高熱伝導性を有するロールが提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−183260号公報
【特許文献2】
特開平9−287614号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載されたロールは、円筒体106に形成された嵌合部107とシャフト102に形成された嵌合部108とが強固に連結されているものの、嵌合部108の材質はシャフト102と同じ高強度炭素材からなるため、セラミックス材からなる円筒体106と熱膨張係数が異なり、特に、高温の液槽内で使用される場合、シャフト102に形成された嵌合部108が膨張し、円筒体106を内側から押す応力が作用し、破損しやすいという問題を有していた。
【0009】
また、特許文献2に記載されたロールは、金属製のシャフト102上に、円筒体106としてカーボン層106a、金属層106b、結合用金属層106c、セラミックスからなる最表層106dを順に形成されているため、耐摩耗性および高熱伝導性を有しているものの、ロールの両端面が薬液を遮断できる構造となっていないため、液槽中に浸漬すると、各層106a〜106dの端面から腐食を発生しやすく、耐久性に劣るという問題を有していた。
【0010】
本発明は、上述した問題に鑑みなされたものであって、その目的はセラミック製の円筒体の割れ等を防ぐとともに、ロールを薬液に浸漬して用いたときに、ロールを構成する金属からなるシャフトが腐食することが少なく、銅箔等の鋼材の品質の劣化を少なくすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のロールは、セラミックスからなり、軸方向に貫通孔を有する円筒体に、金属からなるシャフトを接合してなるロールであって、上記シャフトは上記円筒体に固定された嵌合部と、該嵌合部に接続された支持部とを有し、上記嵌合部の固定部分が外周面全体で上記円筒体の内周面に接触して固定されるとともに、上記支持部に形成された凹部に上記嵌合部が合致するように固定されて、上記支持部と上記円筒体とで上記嵌合部を完全に被覆しており、且つ上記円筒体の熱膨張係数に対する上記嵌合部の熱膨張係数が0.5〜1.55の範囲であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のロールは、上記構成において、上記嵌合部に凸部を形成し、上記支持部の上記凹部と上記嵌合部の上記凸部とが合致するように固定していることを特徴とする。
【0013】
またさらに、本発明のロールは、上記各構成において、上記シャフトが、嵌合部に固定された、上記円筒体の貫通孔内に挿通する軸芯部を有することを特徴とする。
【0014】
さらにまた、本発明のロールは、上記各構成において、上記支持部が耐食性金属からなることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のロールは、上記各構成において、上記円筒体の端部に上記嵌合部を保持する段部を形成したことを特徴とする。
【0016】
さらにまた、本発明のロールは、上記各構成において、酸性の薬液に浸漬されることを特徴とする。
【0017】
本発明のロールによれば、セラミックスからなり、軸方向に貫通孔を有する円筒体に、金属からなるシャフトを接合してなるロールであって、上記シャフトは上記円筒体に固定された嵌合部と、該嵌合部に接続された支持部とを有し、上記嵌合部の固定部分が外周面全体で上記円筒体の内周面に接触して固定されるとともに、上記支持部に形成された凹部に上記嵌合部が合致するように固定されて、上記支持部と上記円筒体とで上記嵌合部を完全に被覆しており、且つ上記円筒体の熱膨張係数に対する上記嵌合部の熱膨張係数が0.5〜1.55の範囲であることから、ロールを高温雰囲気で用いたときにセラミックスからなる上記円筒体と上記円筒体の内周面に接触する上記嵌合部との熱膨張係数が近い値となり、熱膨張による伸び量が同等となるため、上記円筒体に割れやクラックが生じるのを有効に防止することができる。また、セラミックスからなる上記円筒体の熱膨張係数に近づけるために、熱膨張係数が小さく一般的に腐食しやすい金属で上記嵌合部を構成したとしても、上記支持部と上記円筒体とで上記嵌合部を完全に被覆しているので、液槽中の薬液に浸漬して使用される場合において、腐食されやすい金属からなる上記嵌合部が腐食して溶け出すことはなく、銅箔等の鋼材の品質の劣化を少なくすることができる。
【0018】
さらに、本発明のロールによれば、上記嵌合部に凸部を形成し、上記支持部の上記凹部と上記嵌合部の上記凸部とが合致するように固定しているときには、上記嵌合部と上記支持部とを強固に固定することができる。
【0019】
またさらに、本発明のロールによれば、上記シャフトは、上記嵌合部に固定された、上記円筒体の貫通孔内に挿通する軸芯部を有するときには、上記嵌合部を上記円筒体の端部に合わせて固定し、さらに上記嵌合部に上記軸芯部を中心にしてねじ込むことでより強固に位置精度良く固定することができる。
【0020】
さらにまた、本発明のロールによれば、上記支持部は耐食性金属からなるときには、液槽中の薬液に浸漬しても、上記支持部の金属が腐食して溶け出すことは少なく、銅箔等の鋼材の品質の劣化を少なくすることができる。
【0021】
また、本発明のロールによれば、上記円筒体の端部に上記嵌合部を保持する段部を形成したときには、長期間の使用においても上記円筒体と上記嵌合部の固定部分とが強固に固定されて耐久性の高いロールを得ることができる。
【0022】
さらにまた、本発明のロールによれば、酸性の薬液に浸漬されて用いられても、上記支持部と上記円筒体とで上記嵌合部を完全に被覆しているときには、薬液が上記嵌合部に触れることは少ないので、上記嵌合部の腐食を抑制することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について図を用いて説明する。
【0024】
図1、2はそれぞれ本発明のロールの一実施形態を示す部分斜視図、部分断面図である。このロール1は、セラミックスからなり、軸方向に貫通孔6aを有する円筒体6に、金属からなるシャフト2を接合してなる。
【0025】
円筒体6を形成するセラミックスとしては、用途によりアルミナ(Al2O3)、窒化ケイ素(Si3N4)、ジルコニア(ZrO2)、炭化ケイ素(SiC)等を主成分とし、それぞれ公知の焼結助剤などを含むセラミックスからなっている。
【0026】
上記アルミナは耐薬品性が強く被圧延材の影響を受けにくいため、広く使用され、被圧延材の温度が高いものに対しては、耐熱衝撃性の高い窒化ケイ素を、圧延荷重が大きい使用に対しては機械的強度が最も大きなジルコニアが使用され、さらに軽量化、熱伝導効率を上げるために、比重が小さく、熱伝導率が大きな炭化ケイ素が使用される。
【0027】
ここで、アルミナについては、アルミナ原料粉末に有機バインダーを加えて混合して攪拌し、成形した後に1700℃前後の温度で焼成する。
【0028】
窒化ケイ素については、80重量%以上の窒化珪素を主成分とし、焼結助剤としてアルミナ、イットリア(Y2O3)などを含む組成からなる窒化ケイ素質セラミックス原料を所定の形状に成形し、1800℃前後の温度で焼成する。
【0029】
ジルコニアについては、ジルコニア原料粉末に有機バインダーを加えて混合して攪拌し、成形した後に約1400℃の温度で焼成する。
【0030】
炭化ケイ素については、炭化ケイ素粉末にアルミナ粉末を1〜7重量%、イットリア粉末やセリア粉末等の周期率表第3a族元素酸化物を1〜5重量%添加混合して原料粉末を調整して、所定の形状に成形した後に、1800〜2200℃の温度で焼成する。
【0031】
このようにして得られた円筒体6に金属からなるシャフト2を接合して本発明のロール1となる。
【0032】
本発明では、シャフト2が円筒体6に固定された嵌合部2aと、嵌合部2aに接続された支持部2bとを有し、嵌合部2aの固定部分が外周面全体で円筒体6の内周面に接触して固定されるとともに、支持部2bに形成された凹部3に嵌合部2aが合致するように固定されて、支持部2bと円筒体6とで嵌合部2aを完全に被覆しており、且つ円筒体6の熱膨張係数に対する嵌合部2aの熱膨張係数が0.5〜1.55の範囲であることが重要である。
【0033】
これによって、ロール1を高温雰囲気で用いたときにセラミックスからなる円筒体6と円筒体6の内周面に接触する嵌合部2aとの熱膨張係数が近い値となり、熱膨張による伸び量が同等となるため、上記円筒体に割れやクラックが生じるのを有効に防止することができる。また、セラミックスからなる円筒体6の熱膨張係数に近づけるために、熱膨張係数が小さく一般的に腐食しやすい金属で嵌合部2aを構成したとしても、支持部2bと円筒体6とで嵌合部2aを完全に被覆しているので、液槽中に浸漬して使用される場合において、腐食しやすい金属からなる嵌合部2aが腐食して溶け出すことはなく、銅箔等の鋼材の品質の劣化を少なくすることができる。
【0034】
なお、円筒体6の熱膨張係数に対する嵌合部2aの熱膨張係数の比が0.5〜1.55の範囲であることが重要であり、この範囲であることにより、ロール1に作用した熱によって径方向に応力が作用し、円筒体6を構成するセラミックスと嵌合部2aを構成する金属との熱膨張係数の差に起因して円筒体6に割れやクラックが生じるのを少なくすることができる。
【0035】
また、酸性やその他の薬品からなる薬液の入った液槽中で使用される場合、ロール1が液槽中の薬液に浸されたときに腐食しやすい金属からなる嵌合部2aが露出していると腐食して溶け出し、溶け出した金属成分が液槽中の薬液に散乱して銅箔等の表面に付着するため、その品質を劣化させるということになる。
【0036】
なお、円筒体6がアルミナからなる場合には、嵌合部2aとして高硬度鋼であるステンレス(SUS430)を使用することが好ましく、円筒体6が窒化ケイ素や炭化ケイ素からなる場合にはコバール(登録商標)を使用することで熱膨張係数の違いによる円筒体6の破損や割れを防止することができる。
【0037】
また、嵌合部2aを円筒体6に固定するために、円筒体6の端部の内周面に段部6bを形成することが好ましく、嵌合部2aの固定部分が外周面全体で円筒体6の内周面の段部6bに接触して強固に固定されることになり、回転時の応力が1箇所に集中することはなく、円筒体6の欠けや破損を防ぐことができる。
【0038】
段部6bの軸方向の長さは、5〜100mmとすることが好ましく、5mm未満のときは、使用時に荷重がかかった場合、重なり部分が少ないために嵌合部2aが円筒体6から外れやすく、100mmを超えると、嵌合部2aの加工精度と円筒体6との加工精度の兼ね合いが悪くなり挿入が難しくなる。さらに強引にねじ込むと円筒体6の割れを招くこととなる。
【0039】
また、円筒体6の段部6bと嵌合部2aとの間は接着剤にて補強することが好ましく、これにより回転トルクにより円筒体6の段部6bと嵌合部2aとの間にかかる応力をより小さくすることができる。
【0040】
なお、円筒体6の段部6bの形状は、通常の円筒形状に限定すること無く、一部に平面を有する形状等、他の形状においても実施可能であるが、これらの場合にも円筒体6に応力集中が発生せず、割れを防止して嵌合部2aを固定することができる。
【0041】
また、嵌合部2aには、ロール1を回転させる駆動部と連結する支持部2bが接続されている。
【0042】
支持部2bは、耐食性金属からなることが好ましく、液槽中の薬液に繰り返しまたは長時間浸漬させても、支持部2bの金属が腐食して溶け出すことは少なく、銅箔等の表面に付着して品質の劣化を少なくすることができる。
【0043】
ここで耐食性金属とは、濃度5%の硫酸の液に1日浸漬し、1日あたりの一定の比表面積(dm 2 =100cm 2 )においてどのくらいの重量が減少したかを示す、浸漬後の重量減少量が104(mg/dm2・day)以下の特性を持つ金属のことである。このような耐食性金属としては、ステンレス(SUS304、SUS316、SUS317等)や、合金工具鋼等がある。
【0044】
また、支持部2bを構成する金属の熱膨張係数は、15.0×10−6/℃〜18.0×10−6/℃であることが好ましく、嵌合部2aとの熱膨張係数の差が大きくなり過ぎることなく、稼働中に嵌合部2aとの熱膨張係数の差から外れることを防止することができる。
【0045】
また、嵌合部2aと支持部2bとの連結構造としては、支持部2bに凹部3を形成し、凹部3に嵌合部2aが合致するように焼きばめ等によって固定することが好ましい。さらに、図2に示すように、嵌合部2aに凸部4を形成し、支持部2bの凹部3と嵌合部2aの凸部4とが合致することで、より強固に固定することができる。
【0046】
これにより、セラミックスからなる円筒体6の熱膨張係数に近い金属である、熱膨張係数が小さく一般的に腐食されやすい金属からなる嵌合部2aを、支持部2bと円筒体6とで完全に被覆していることにより、嵌合部2aが露出していないので液槽中の薬液に浸漬しても嵌合部2aは腐食して溶け出すことはないため、銅箔等の鋼材の品質の劣化を少なくすることができる。
【0047】
また、嵌合部2aの凸部4と支持部2bの凹部3とが合致した部分には、その外周に金属製のナット9をねじ込み接着することにより、軸方向に押さえられている状態になるため、より強固に支持部2bを固定できる。
【0048】
さらに、図2に示す支持部2bの凹部3の径方向の厚みt3と嵌合部2aの凸部4の径方向の厚みt4とは、その比が1:1〜1:4(t3:t4)の範囲にすることが好ましく、凹部3と凸部4との焼きばめ力が不足して外れたり、嵌合部2aと支持部2bとの熱膨張係数の差で隙間が生じて外れたりすることなく強固に固定することができる。
【0049】
なお、厚みt3、t4の比は1:1とすることがより好ましい。また、嵌合部2aの固定部分の軸方向の長さは、嵌合部2aの固定部分と円筒体6との接触する部分が小さい場合には、ロール1自体の重量や稼動中の荷重、また、軸方向への金属からなる嵌合部2aの熱膨張によって外れる可能性が発生してくるため5mm以上に設定することが好ましい。
【0050】
また、円筒体6の端面における表面粗さがRa0.4μm以下、平坦度が0.05mm以下であることが好ましい。
【0051】
これによって、円筒体6の端面と接触する部材との密着性を向上させ、液槽中の薬液に浸漬したときにロール1の内部に薬液が進入することをさらに抑制することが可能である。特に、ナット9との間にOリング等のシール部材10を介する場合には、円筒体6の端面の平坦度が0.05mm以下であることによって、シール部材10と円筒体6の端面との密着性がより向上し、シール部材10を円筒体6の端面とナット9との間で均等に押しつぶすことができるため、より確実にシールすることができる。
【0052】
一方、円筒体6の端面の表面粗さがRa0.4μmを越えると、粗い部分とシール部材10との間に隙間が生じ、薬液が進入し腐食の原因となるおそれがある。また、円筒体6の端面の平坦度が0.05mmを超えると、シール部材10を円筒体6の端面と金属製のナット9との間で均等に押しつぶすことができないため、シールが不十分となり、薬液の進入により嵌合部2aが腐食してしまうおそれがある。
【0053】
なお、このような表面状態の円筒体6の端面を得るには、焼成によって得られた焼結体に機械加工を施し、その後、粒径が50μm以下のダイヤモンドパウダーとセラミックや鋳鉄製定盤を使用して仕上げ加工を施すことにより、円筒体6の端面の表面粗さおよび平坦度を向上させることができる。
【0054】
また、上記表面粗さは、JIS B 0601に規定される中心線平均粗さRaのことであり、表面粗さ計にて測定することができる。また、平坦度は3次元測定器にて測定することができる。
【0055】
またさらに、シャフト2は、円筒体6の貫通孔6a内に挿通する軸芯部2cを別体として有することが好ましく、嵌合部2aの固定部分が外周面全体で円筒体6の内周面に接触して固定されるとともに、さらに嵌合部2aに軸芯部2cを中心にしてねじ込むことでより強固に位置精度良く固定することができる。なお、軸芯部2cは嵌合部2aと同材質からなることが好ましい。
【0056】
また、軸芯部2cと円筒体6との間には空間5を設けることが好ましく、ロール1の軽量化とともに、円筒体6との接触部を小さくして円筒体6の破損を有効に防止できる。
【0057】
さらに、軸芯部2cは、嵌合部2aとネジ構造によって接合されていてもよく、接着剤によって接合されていてもよい。
【0058】
【実施例】
図1に示す形状のロールを得るため、先ず、アルミナ(Al2O3)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)、ジルコニア(ZrO2)からなる円筒体6を作製した。
【0059】
次いで、シャフト2として、嵌合部2aを鉄(S45C)、ステンレス(SUS430)、ステンレス(SUS304)、コバール(登録商標)のそれぞれで作製し、支持部2bをステンレス(SUS304)、ステンレス(SUS430)からなる材質で作製した。
【0060】
嵌合部2aおよび支持部2bには、それぞれ凹部3および凸部4を形成して焼きばめによって固定してシャフト2を得た。
【0061】
そして、各材質の円筒体6の両端の開口部から、シャフト2を挿入しネジ止め接着して固定し、各材質からなる試料No.1〜20のロールを20個ずつ得た。
【0062】
次に、試料No.1〜20のロールを80℃まで温度を上げた硫酸(5%)の液槽に2日間浸漬した。次に、このロールを回転数15m/minで回転させ、円筒体6に1000Nの圧力がかかるように、別のロールを押しつけて回転させた。
【0063】
その後、試料No.1〜20のロールの円筒体6にクラックが発生しているかどうかの観察を行ない、発生箇所の数とクラックの最大長さを測定した。また、支持部2bから一定面積のテストピースを取り出し、重量計にて重量減少量を測定し、1日あたりの一定の比表面積(dm2=100cm2)においてどのくらいの重量が減少したか(mg/dm2・day)を算出した。
【0064】
結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示す結果から、明らかなように、円筒体6の熱膨張係数に対する嵌合部2aの熱膨張係数の比が0.5〜1.55の範囲にした試料(No.1〜3、5、10、15〜19)は、円筒体6にはクラックが発生することはなく、さらにこれらの試料の中でも、支持部2bとして耐食性金属を用いた試料(No.1、2、5、10、15〜17、19)は、支持部2bの重量減少量が0.11×104(mg/dm2 ・day)以下と非常に耐食性が高いものであった。
【0067】
これに対し、円筒体6の熱膨張係数に対する嵌合部2aの熱膨張係数の比が0.5未満または1.55を超える試料(No.4、6〜9、11〜14、20)は、円筒体6に1〜5ヶ所のクラックが発生し、その最大長さが6〜20mmと大きなものであった。
【0068】
【発明の効果】
本発明のロールによれば、セラミックスからなり、軸方向に貫通孔を有する円筒体に、金属からなるシャフトを接合してなるロールであって、上記シャフトは上記円筒体に固定された嵌合部と、該嵌合部に接続された支持部とを有し、上記嵌合部の固定部分が外周面全体で上記円筒体の内周面に接触して固定されるとともに、上記支持部に形成された凹部に上記嵌合部が合致するように固定されて、上記支持部と上記円筒体とで上記嵌合部を完全に被覆しており、且つ上記円筒体の熱膨張係数に対する上記嵌合部の熱膨張係数が0.5〜1.55の範囲であることから、ロールを高温雰囲気で用いたときにセラミックスからなる上記円筒体と上記円筒体の内周面に接触する上記嵌合部との熱膨張係数が近い値となり、熱膨張による伸び量が同等となるため、上記円筒体に割れやクラックが生じるのを有効に防止することができる。また、セラミックスからなる上記円筒体の熱膨張係数に近づけるために、熱膨張係数が小さく一般的に腐食しやすい金属で上記嵌合部を構成したとしても、上記支持部と上記円筒体とで上記嵌合部を完全に被覆しているので、液槽中の薬液に浸漬して使用される場合において、腐食されやすい金属からなる上記嵌合部が腐食して溶け出すことはなく、銅箔等の鋼材の品質の劣化を少なくすることができる。
【0069】
さらに、本発明のロールによれば、上記嵌合部に凸部を形成し、上記支持部の上記凹部と上記嵌合部の上記凸部とが合致するように固定しているときには、上記嵌合部と上記支持部とを強固に固定することができる。
【0070】
またさらに、本発明のロールによれば、上記シャフトは、嵌合部に固定された、上記円筒体の貫通孔内に挿通する軸芯部を有するときには、上記嵌合部を上記円筒体の端部に合わせて固定し、さらに上記嵌合部に上記軸芯部を中心にしてねじ込むことでより強固に位置精度良く固定することができる。
【0071】
さらにまた、本発明のロールによれば、上記支持部は耐食性金属からなるときには、液槽中の薬液に浸漬しても、上記支持部の金属が腐食して溶け出すことは少なく、銅箔等の鋼材の品質の劣化を少なくすることができる。
【0072】
また、本発明のロールによれば、上記円筒体の端部に上記嵌合部を保持する段部を形成したときには、長期間の使用においても上記円筒体と上記嵌合部の固定部分とが強固に固定されて耐久性の高いロールを得ることができる。
【0073】
またさらに、本発明のロールによれば、酸性の液槽に浸漬されて用いられても、上記支持部と上記円筒体とで上記嵌合部を完全に被覆していることから、薬液が上記嵌合部に触れることは少ないので、上記嵌合部の腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のロールの一実施形態を示す部分斜視図である。
【図2】 本発明のロールの一実施形態を示す部分断面図である。
【図3】 従来のロールを示す部分断面図である。
【図4】 従来のロールを示す部分断面図である。
【図5】 ロールを用いて搬送を行なう状態を示す概略斜視図である。
【図6】 銅箔製造ラインの搬送用ロールの駆動を示す概略図である。
【符号の説明】
1:ロール
2:シャフト
2a:嵌合部
2b:支持部
2c:軸芯部
3:凹部
4:凸部
5:空間
6:円筒体
6a:貫通孔
6b:段部
7:キー溝
8:接着層
9:ナット
10:シール部材
101:ロール
102:シャフト
106:円筒体
107:嵌合部
108:嵌合部
120:銅箔
130:駆動部
Claims (6)
- セラミックスからなり、軸方向に貫通孔を有する円筒体に、金属からなるシャフトを接合してなるロールであって、上記シャフトは上記円筒体に固定された嵌合部と、該嵌合部に接続された支持部とを有し、上記嵌合部の固定部分が外周面全体で上記円筒体の内周面に接触して固定されるとともに、上記支持部に形成された凹部に上記嵌合部が合致するように固定されて、上記支持部と上記円筒体とで上記嵌合部を完全に被覆しており、且つ上記円筒体の熱膨張係数に対する上記嵌合部の熱膨張係数が0.5〜1.55の範囲であることを特徴とするロール。
- 上記嵌合部に凸部を形成し、上記支持部の上記凹部と上記嵌合部の上記凸部とが合致するように固定していることを特徴とする請求項1に記載のロール。
- 上記シャフトは、上記嵌合部に固定された、上記円筒体の貫通孔内に挿通する軸芯部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロール。
- 上記支持部は、耐食性金属からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のロール。
- 上記円筒体の端部に上記嵌合部を保持する段部を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のロール。
- 酸性の薬液に浸漬されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のロール。
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