JP2004283767A - 地熱水処理方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】地熱水の処理において、シリカを効率よく除去することができ、しかも砒素などの有害物質を効率よく低コストで除去することが可能となる処理方法および装置を提供することを目的とする。
【解決手段】地熱水を、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤に接触させることにより砒素を吸着除去する砒素吸着工程と、砒素が除去された地熱水に、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を添加して、該地熱水中に沈殿を生成させる沈殿物生成工程と、生成した沈殿物を分離除去する沈殿物分離工程と、沈殿物が分離除去された地熱水を硼素吸着剤に接触させて硼素を吸着させる硼素吸着工程とを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】地熱水を、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤に接触させることにより砒素を吸着除去する砒素吸着工程と、砒素が除去された地熱水に、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を添加して、該地熱水中に沈殿を生成させる沈殿物生成工程と、生成した沈殿物を分離除去する沈殿物分離工程と、沈殿物が分離除去された地熱水を硼素吸着剤に接触させて硼素を吸着させる硼素吸着工程とを有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地熱発電等に用いられる地熱水を処理する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、地熱水中のシリカを除去する方法としては、地熱水に無機系凝集剤や有機系凝集剤を添加し、凝集物を沈降分離などにより分離する方法がある(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−301460号公報
【特許文献2】
特開平11−342613号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
分離したシリカは、工業原料などとして資源化することが試みられているが、砒素などの有害物質が含まれることがあるため利用価値が低く、コスト面で不利であった。
このため、砒素などの有害物質を除去することが検討されているが、低コストで効率の高い除去処理は難しいのが現状である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、地熱水の処理において、シリカを効率よく除去することができ、しかも砒素などの有害物質を効率よく低コストで除去することが可能となる処理方法および装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の地熱水処理方法は、地熱水を、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤に接触させることにより砒素を吸着除去する砒素吸着工程と、砒素が除去された地熱水に、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を添加して、該地熱水中に沈殿を生成させる沈殿物生成工程と、生成した沈殿物を分離除去する沈殿物分離工程と、沈殿物が分離除去された地熱水を硼素吸着剤に接触させて硼素を吸着させる硼素吸着工程とを有することを特徴とする。
硫酸鉄化合物としては、シュベルトマナイトが好ましく、炭酸マグネシウム化合物としては、ハイドロタルサイトが好ましい。
本発明の地熱水処理方法では、砒素吸着工程で砒素が吸着された砒素吸着剤をアルカリ処理し、砒素を溶離させ回収することができる。
本発明では、地熱水として、地熱発電用水または排水を挙げることができる。
地熱水としては、温泉水を挙げることもできる。
【0006】
本発明の地熱水処理装置は、地熱水を、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤に接触させることにより砒素を吸着除去する砒素吸着手段と、砒素が除去された地熱水に、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を添加するカルシウム化合物添加手段と、該添加手段によるカルシウム化合物の添加により地熱水中に沈殿物を生成させる反応槽と、生成した沈殿物を地熱水から分離する分離手段と、沈殿物が分離除去された地熱水中の硼素を吸着除去する硼素吸着手段とを備えていることを特徴とする。
本発明の地熱発電設備は、上記地熱水処理装置を有することを特徴とする。
本発明の温泉水利用設備は、上記地熱水処理装置を有することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の地熱水処理方法の一実施形態を示す工程図である。ここに示す処理方法は、次に示す工程を有する。
(1)砒素吸着工程
地熱水を、反応槽内で、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤に接触させることにより砒素を吸着除去する(図中「砒素除去」を参照)。
この工程における地熱水の温度は、60℃以上(通常は70℃以上)とすることができる。地熱水のpHは、通常、中性領域(5.5〜8.5)である。
上記硫酸鉄化合物は、硫酸基を含む鉄化合物であり、各種鉄鉱物が使用できる。例えば、硫酸基と水酸基とを含む鉄化合物が使用できる。
硫酸鉄化合物としては、シュベルトマナイトが好ましい。シュベルトマナイトとしては、次の式で表されるものを挙げることができる。
Fe8O8(OH)8−2x(SO4)x(1<x<1.75)
上記炭酸マグネシウム化合物は、炭酸基を含むマグネシウム化合物であり、各種マグネシウム鉱物が使用できる。例えば、炭酸基と水酸基を含むマグネシウム化合物が使用できる。
炭酸マグネシウム化合物としては、ハイドロタルサイトが好ましい。ハイドロタルサイトとしては、次の式で表されるものを挙げることができる。
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O
【0008】
(2)砒素溶離工程
砒素吸着工程で砒素が吸着された砒素吸着剤をアルカリ処理し、砒素を溶離させる(図中「アルカリ化」を参照)。
アルカリ処理にあたっては、生石灰(CaO)、ドロマイト、CaO2、CaO・ZrO2、消石灰(Ca(OH)2)、Ca(OCl)2・nCa(OH)2、NaOH、KOHなどをアルカリ剤として添加することができる。
アルカリ処理では、地熱水のpHを9以上とするのが望ましく、10以上とすることが好ましい。このpHは11以上にすることがより好ましく、12以上とすることがさらに好ましい。pHをこの範囲とすることによって、砒素溶離効率を高めることができる。
溶離した砒素を公知の方法で精製することによって、砒素を回収することができる(図中「砒素回収」を参照)。回収した砒素は、半導体原料、ガラス脱色剤等として資源化できる。
砒素が溶離した吸着剤は、この工程で再利用することができる。
【0009】
(3)沈殿物生成工程
砒素吸着工程で砒素が除去された地熱水に、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を添加する。以下、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を、カルシウム化合物という。
カルシウムを含む酸化物としては、カルシウムの酸化物を含むもの、例えば生石灰(CaO)、ドロマイト、CaO2、CaO・ZrO2等を用いることができ、これらの中では、沈殿物生成効率が高く、しかも安価な生石灰を用いることが好ましい。
カルシウムを含む水酸化物としては、カルシウムの水酸化物を含むもの、例えば消石灰(Ca(OH)2)、Ca(OCl)2・nCa(OH)2等を用いることができ、これらの中では、沈殿物生成効率が高く、しかも安価な消石灰を用いることが好ましい。
カルシウム化合物は、溶液または懸濁液(以下、カルシウム液という)として地熱水に添加されることが好ましい。カルシウム液を用いることにより、沈殿物生成効率を高めることができる。
カルシウム液中のカルシウム化合物の濃度は0.5〜50g/リットルであることが好ましい。カルシウム液中のカルシウム化合物量がその溶解度を上回る場合はカルシウム化合物がカルシウム液中で溶解しにくくなる。
カルシウム化合物の添加量は、地熱水に溶存しているシリカ量にもよるが、地熱水1リットルあたり1〜10gとすることが好ましい。
【0010】
カルシウム液を地熱水に添加すると、地熱水中のシリカなどがカルシウム化合物と反応して沈殿物が生成する(図中「反応領域」および「カルシウム化合物添加」を参照)。
例えば、カルシウム化合物として生石灰を用いた場合は、以下のような反応が進行する。
2CaO+SiO2 → 2CaO・SiO2
または
3CaO+SiO2 → 3CaO・SiO2
また、カルシウム化合物として消石灰を用いた場合は、以下のような反応が進行する。
2Ca(OH)2+SiO2 → 2CaO・SiO2+2H2O
または
3Ca(OH)2+SiO2 → 3CaO・SiO2+3H2O
この沈殿物(CaO・SiO2など)の生成によって、地熱水の中のシリカ濃度が大幅に低下する。
地熱水中に硫酸イオンが含まれる場合には、硫酸イオンはカルシウム化合物と反応して石膏として沈殿除去される。また、地熱水中に鉄、砒素、アルミニウムが含まれる場合には、これらの水酸化物やカルシウム塩が沈殿物に吸着され沈殿する。
【0011】
この沈殿物生成工程では、含窒素カチオン化合物を凝集剤として地熱水に添加することができる。含窒素カチオン化合物としては、次式(1)に示すものが好ましい。
凝集剤の添加量は、地熱水に対して50mg/kg以上(好ましくは100mg/kg以上)とするのが好ましい。凝集剤の添加によって、シリカの一部は荷電中和されるとともに架橋されて凝集する。
【0012】
【化1】
【0013】
この沈殿物生成工程においては、地熱水の温度を60℃以上とするのが望ましく、90℃以上とすることがより好ましく、100℃以上とすることが更に好ましい。この温度が上記範囲未満であると、沈殿物生成効率が低下する傾向にある。
これは、温度が高くなるほど水酸化カルシウムの溶解度が低くなることに起因する。カルシウム液が高温の地熱水中に供給されるとカルシウム化合物の溶解度が低下し、カルシウム化合物が関与する沈殿物生成反応が起こりやすくなるため、地熱水の温度が高いほど沈殿物生成効率が高くなるものと考えられる。
また、沈殿物生成工程においては、地熱水のpHを8以上とするのが望ましく、10以上とすることが好ましい。このpHは11以上にすることがより好ましく、12以上とすることがさらに好ましい。このpHを上記範囲とすることによって、沈殿物の生成効率を高めることができる。
これは、地熱水のpHが上記範囲にあると、沈殿物表面のゼータ電位が0に近づくため、沈殿物どうしの反発が小さくなり、これらが凝集し、粗大粒子化しやすくなるためであると考えられる。
pHの調整には、前記カルシウム液、例えば消石灰の溶液または懸濁液をpH調整剤として用いてもよく、NaOH、KOHなどの溶液をpH調整剤として用いてもよい。
【0014】
(4)沈殿物分離工程
生成した沈殿物を含む地熱水は、この工程において沈殿物と、沈殿物を分離除去された地熱水に分けられる(図中「沈降領域」および「沈殿領域」を参照)。
沈殿物分離工程で分離された沈殿物の一部を、沈殿物生成工程に返送すると、返送された沈殿物は、沈殿物生成工程において、2CaO・SiO2、3CaO・SiO2等の沈殿物の結晶が成長する際の核(シード)として機能するため、沈殿物生成を促進する(図中「殿物分離領域」を参照)。
また、沈殿物を分離除去された地熱水を、未処理の地熱水に添加混合し、得られた混合水を沈殿物生成工程に供してもよい(図中「循環」を参照)。こうすると、沈殿物を分離除去された地熱水中に溶解残存するカルシウム化合物が沈殿生成に寄与するので、カルシウム化合物の必要添加量を少なくすることができ、処理コスト低減を図ることができる。
沈殿物分離工程では、沈降分離と濾過の組み合わせを好ましい例として例示できるが、沈殿物分離に用いられる方法であれば、これに限定されず、膜分離、遠心分離等、どのような装置も用いることができる。
【0015】
得られた沈殿物はフィルタープレスなどにより脱水し、脱水ケーキとする(図中「殿物抜き出し」および「フィルタープレス」を参照)。
この脱水ケーキは例えば噴霧乾燥法により造粒し、得られた粒状体をセメント混合材(シリカヒューム)として有効利用することができる(図中「噴霧乾燥造粒」および「シリカヒューム」を参照)。
フィルタープレスで得られた水は、沈殿物を分離除去された地熱水に併せて、次の工程に送られる。
【0016】
(5)硼素吸着工程
この地熱水中の硼素をイオン交換樹脂などの硼素吸着剤に吸着させる(図中「イオン交換樹脂塔」を参照)。
イオン交換樹脂としてはアニオン交換樹脂が用いられる。アニオン交換樹脂としてはいずれのタイプのイオン交換樹脂を用いることができるが、OH型アニオン交換樹脂を用いるのが好ましく、N−メチルグルカン型のアニオン交換樹脂が硼素の選択吸収性の点から好ましい。このようなイオン交換樹脂の例として、アンバーライトIRA−743T(オルガノ社製)、ダイヤイオンCRB−20(三菱化学社製)、デュオライトES−371N(住友化学社製)、ユニセレックUR−3500(ユニチカ社製)等を例示できる。
沈殿物を分離除去された地熱水がpHが10よりアルカリ側になっている場合は、例えば、硫酸等によりpHを7〜10、好ましくは8〜9に調整するのが好適である。
これは、イオン交換樹脂の硼素吸着能力が上記pH範囲内にある場合に最も高くなるためである。
硼素を吸着除去した地熱水は、地中に還元してもよい。
【0017】
(6)硼素回収工程
硼素を吸着した硼素吸着剤は、好ましくは水で洗浄して表面に付着した非吸着物を除去した後、塩酸などの鉱酸からなる脱着用薬剤を通液して硼素を溶離脱着させて回収する。硼素吸着剤がOH型アニオン交換樹脂である場合は、イオン交換樹脂に水酸化ナトリウム含有液等のアルカリを通液してOH型に再生する(図中「硼素回収」を参照)。
溶離回収した硼素含有水溶液は、必要に応じて各種イオン等の不純物を除去し、蒸発濃縮、結晶化により濃縮、固形化し硼酸を得ることができる(図中「濃縮・固形化」および「硼酸」を参照)。
回収された硼素化合物は、ガラス工業用、医薬用、化粧品原料、石鹸、電気メッキ、水処理剤などとして資源化できる。
【0018】
次に、本発明の地熱水処理方法の具体例について説明する。
図2は、本発明を地熱発電設備に適用した例を示す概念図であり、図3は、本発明を温泉水利用設備に適用した例を示す概念図である。
図2に示す地熱発電設備は、砒素吸着手段を備えた砒素除去回収設備;カルシウム化合物添加手段と反応槽と分離手段とを備えたシリカ除去回収設備;地熱発電所;硼素吸着手段を備えた硼素除去回収設備を備えている。
熱水井により汲み上げられた地熱水は、地熱発電用水として、砒素除去回収設備で砒素を除去し、次いで、シリカ除去回収設備でシリカの大部分を除いた後、地熱発電所において用いられる。発電後の地熱発電排水につき、硼素除去回収設備において硼素を吸着除去し、この地熱発電排水を地中に戻す(熱水還元)。
【0019】
図3に示すように、この温泉水利用設備は、砒素吸着手段を備えた砒素除去回収設備;カルシウム化合物添加手段と反応槽と分離手段とを備えたシリカ除去回収設備;硼素吸着手段を備えた硼素除去回収設備;温泉利用設備を備えている。
自噴あるいは温泉井により汲み上げられた温泉水は、砒素除去回収設備で砒素を除去し、次いでシリカ除去回収設備でシリカを除去し、硼素除去回収設備で硼素を吸着除去した後、温泉利用設備において使用される。
使用済みの温泉水は必要に応じて中和した後、河川に放流することができる。使用済みの温泉水に高濃度のCODやBODが含まれる場合には、河川放流に先だって生物学的処理を行ってもよい。使用済み温泉水は、地中に還元することもできる。
地熱発電設備、温泉水利用設備のいずれにおいても、副生した沈殿物は埋め立て等で処理することができる。回収された砒素、シリカ、硼素は工業的に利用することもできる。
【0020】
図4は本発明の地熱水処理装置の一実施形態例を示すものである。
この装置は、地熱水供給手段である地熱水供給経路1と、地熱水中の砒素を吸着除去する砒素吸着手段である砒素吸着槽20と、カルシウム化合物を添加するカルシウム化合物添加手段2と、凝集剤を添加する凝集剤添加手段25と、カルシウム化合物および凝集剤の添加により地熱水中に沈殿物を形成させる反応槽3と、生成した沈殿物を地熱水から分離する分離手段である沈殿槽4と、沈殿槽4において分離された沈殿物の一部を反応槽3内に返送する返送経路5と、沈殿物を分離除去された地熱水のpHを調整するpH調整槽6と、該地熱水中の硼素を吸着する硼素吸着手段であるイオン交換樹脂装置7と、硼素を吸着したイオン交換樹脂装置7から硼素を溶離脱着回収する回収手段である鉱酸供給経路8と、溶離液導出経路9と、地熱水排出経路19とを備えて構成されている。
上記各槽および各供給経路は、内部圧力を常圧を超える値に設定できるように構成するのが好ましい。
【0021】
地熱水供給経路1は、砒素吸着槽20に接続されている。砒素吸着槽20は、上記硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤が充填されている。
カルシウム化合物添加手段2は、地熱水中のシリカなどを沈殿させるカルシウム化合物を供給するためのもので、該カルシウム化合物をカルシウム液として貯留する貯留槽10と、貯留槽10からのカルシウム化合物を反応槽3に供給するカルシウム化合物供給経路11を備えている。
貯留槽10は、攪拌機10aを備えており、内部のカルシウム液を攪拌できるようになっている。
凝集剤添加手段25は、上記含窒素カチオン化合物などの凝集剤を貯留する凝集剤貯留槽26と、凝集剤を反応槽3に供給する供給経路27とを備えている。
【0022】
沈殿槽4は、円筒状の胴部4aと、逆円錐状に形成された円錐状下部4bを備えており、槽内の沈殿物を沈降させ、円錐状下部4bの下端部(先端部)付近に集めることができるようになっている。
円錐状下部4bの下端部には、槽内の沈殿物を槽外に排出する沈殿物排出経路12が接続されており、沈殿槽4内で集められた沈殿物を排出経路12を経由してフィルタープレス13に送り込んで脱水し、脱水ケーキとして取り出すことができるようになっている。
【0023】
沈殿物排出経路12には、返送経路5の一端が分岐接続されている。
返送経路5の他端は、地熱水供給経路1に分岐接続されており、沈殿槽4から排出経路12を通して排出された沈殿物の一部を、供給経路1を経て反応槽3内に返送できるようになっている。
沈殿槽の最上部には越流水を排出する越流水排出部14が設けられており、越流水排出部14は、越流水導出経路15を経由してpH調整槽6に接続している。
【0024】
反応槽3は円筒状の胴部3aと、逆円錐状に形成された円錐状下部3bを備えており、反応槽3は沈殿槽内に収容されている。
円錐状下部3bの下端部には、地熱水供給経路1から送り込まれた地熱水を反応槽3内に噴出するエジェクター16が設けられている。
反応槽3は、攪拌機3cを備えており、カルシウム液と地熱水がよく混合するよう攪拌可能となっている。
円筒状の胴部3aの上端は水面近傍の水面下にあり、円筒状胴部3aの外側に円筒17が設けられている。円筒17の上端は水面上に突き出しており、下端は円筒17内部と沈殿槽4内の円筒外部につながるよう開口している。
この構造をとることにより、カルシウム化合物を添加された地熱水は、円筒状胴部3aの上端を超えて円筒状胴部3aと円筒17の間を通って下方に向かい、円筒17の下端から沈殿槽の下部に出る。沈殿槽下部に出た地熱水はゆっくりと沈殿槽上部に向かい、その間に形成された沈殿物は沈降して沈殿槽下部にたまり、沈殿物が除かれた地熱水が越流水排出部14、越流水導出経路15を通って、pH調整槽6に送られる。
【0025】
pH調整槽6は、地熱水供給経路18を経由して、イオン交換樹脂装置7に接続している。
イオン交換樹脂装置7は2系列のイオン交換樹脂塔7a、7bから構成されている。これは、地熱水を、イオン交換樹脂塔7a、7bのいずれかへ導入して、一方で吸着処理を行っている間、他方から硼素を溶離脱着してイオン交換樹脂塔を再生処理し、一方の吸着能が低下したら切り替えて他方で吸着を開始し、その間に吸着処理を終了したイオン交換樹脂塔から硼素を溶離脱着し、イオン交換樹脂の再生を行うことにより、常時吸着処理を行えるようにするためである。
イオン交換樹脂塔7a、7bには、硼素吸着剤であるイオン交換樹脂が充填されている。
pH調整槽6からイオン交換樹脂塔7a、7bへ地熱水を導く地熱水供給経路18は途中で供給経路18a、18bに分岐し、それぞれイオン交換樹脂塔7a、7bの頂部に接続している。イオン交換樹脂塔7a、7bで硼素を吸着除去された地熱水は、イオン交換樹脂塔7a、7bの底部から地熱水排出経路19a、19bを通り、合流して地熱水排出経路19となり、地熱水を排出する。
【0026】
鉱酸槽21には鉱酸供給経路8が接続しており、鉱酸供給経路8は途中で8a、8bに分岐してそれぞれイオン交換樹脂塔7a、7bの頂部に接続している。
イオン交換樹脂塔7a、7bの底部は、それぞれ硼素を溶離した溶離液を導出する溶離液導出経路9a、9bに接続しており、溶離液導出経路9a、9bは途中で合流して溶離液導出経路9となり、溶離液槽(図示せず)に接続している。
アルカリ槽22はアルカリ供給経路23を経て、アルカリ供給経路23a、23bに分岐してそれぞれイオン交換樹脂塔7a、7bの頂部に接続している。
イオン交換樹脂塔7a、7bの底部からはアルカリ廃液を導出するアルカリ廃液導出経路24a、24bが接続しており、アルカリ廃液導出経路24a、24bは途中で合流してアルカリ廃液導出経路24となって、アルカリ廃液を排出する。
イオン交換樹脂塔7a、7bには、吸着処理後、該イオン交換樹脂塔内を水で洗浄するための洗浄水経路(図示せず)が設けられていることが好ましい。
【0027】
一方のイオン交換樹脂塔7aで地熱水中の硼素の吸着処理を行う場合は、鉱酸供給経路8a、溶離液導出経路9a、アルカリ供給経路23a、アルカリ廃液導出経路24aのバルブを閉めて、地熱水供給経路18a、地熱水排出経路19aのバルブを開けてイオン交換樹脂塔7aに流して吸着処理を行う。
イオン交換樹脂塔7aの吸着容量が飽和に達して吸着速度が低下したら、地熱水供給経路18a、地熱水排出経路19aのバルブを閉め、地熱水供給経路18b、地熱水排出経路19bのバルブを開けて地熱水をイオン交換樹脂塔7bに流して吸着処理を開始する。
同時に、鉱酸供給経路8a、溶離液導出経路9aのバルブを開けて、溶離用薬液をイオン交換樹脂塔7aに流して吸着している硼素を溶離する。
溶離が終了したら、鉱酸供給経路8a、溶離液導出経路9aのバルブを閉め、アルカリ供給経路23a、アルカリ廃液導出経路24aのバルブを開けて、イオン交換樹脂をOH型に再生する。
イオン交換樹脂塔7bの吸着容量が飽和に達したら、上記でイオン交換樹脂塔7aに対して行った操作をイオン交換樹脂塔7bに対して行い、イオン交換樹脂塔7bに対して行った操作をイオン交換樹脂塔7aに対して行えばよい。
【0028】
本発明の地熱水処理方法によれば、地熱水にカルシウム化合物を添加し沈殿を生成させるに先だって、砒素吸着剤を用いて砒素を除去するので、砒素をほとんど含まない回収物(シリカ、硼素など)を得ることができる。
従って、回収物、例えばセメント混合材等に利用できるシリカや、ガラス工業用に利用できる硼素などの工業的な利用価値を高めることができ、コスト面で有利である。また、回収物の安全性を高めることができる。
さらには、回収した砒素を、半導体原料、ガラス脱色剤等として資源化できるため、コスト面でさらに有利となる。
【0029】
また、地熱水にカルシウム化合物を添加し沈殿を生成させるので、シリカを効率よく除去することができる。
【0030】
上記地熱水処理方法では、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤を用いるので、地熱水から効率よく砒素を除去することができる。従って、吸着剤使用量を抑え、低コスト化を図ることができる。
これに対し、シリカ処理のためカルシウム化合物を添加した後に砒素吸着剤を添加する場合には、地熱水のpHが高くなるため砒素吸着剤の吸着能が低下し、砒素除去効率が低くなる。
また、通常、地熱水は温度が高く、Mg、Alなどが多く含まれるため、砒素を効率よく吸着除去するのは難しいが、上記吸着剤の使用により、砒素を選択的に吸着し、除去効率を高めることができる。
【0031】
【実施例】
<実施例1>
表1に示す組成の地熱水サンプル(砒素濃度14mg/l)を、砒素吸着剤とともに反応槽に導入し、処理水中の砒素濃度を測定した。温度条件は25℃とし、pHは無調整とした。反応槽の滞留時間は0.5時間とした。
砒素吸着剤としては、株式会社ソフィア製のシュベルトマナイトを使用した。試験結果を図5に示す。
【0032】
<実施例2>
反応槽の滞留時間を43時間に設定すること以外は実施例1と同様の試験を行った。試験結果を図5に示す。
【0033】
<実施例3>
表1に示す組成の地熱水サンプルを、図4に示す装置を用いて処理した。
地熱水通水量:10リットル/min
生石灰添加量: (生石灰15g+水0.11リットル)/min
沈殿槽からの返送量:沈殿槽から排出された沈殿物の4/5
反応槽におけるpH:10〜13
pH調整槽でのpH:8.5
イオン交換樹脂装置:6.9リットルのN−メチルグルカミン基を有する硼素選択吸着樹脂を充填したイオン交換樹脂塔2系列、切替2時間毎で硼素吸着処理を行った。なお、硼素を吸着したイオン交換樹脂塔は、硼素の溶離脱着前に、イオン交換樹脂に付着している非吸着物を水で洗浄して除いた後、塩酸で溶離脱着処理を行った。得られた処理水、溶離液の組成を表1に示す。
【0034】
<比較例1>
実施例で用いたと同様の地熱水サンプルを用い、生石灰添加による沈殿分離処理を行わず、pH8.5としてイオン交換樹脂装置で硼素吸着、硫酸による溶離処理を行った。得られた溶離液の組成を表1の未処理水溶離液の欄に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から、実施例の方法によれば、硼素を高度に吸着分離、回収できることがわかる。
これに対して、シリカ等を予め沈殿除去しない場合はイオン交換樹脂にシリカが大量に吸着して、硼素の回収が不充分であり、ここから更に硼素とシリカを分離しなければならず、硼素分離回収法としては不充分なことがわかる。
【0037】
【発明の効果】
本発明の地熱水処理方法によれば、地熱水にカルシウム化合物を添加し沈殿を生成させるに先だって、砒素吸着剤を用いて砒素を除去するので、砒素をほとんど含まない回収物(シリカ、硼素など)を得ることができる。
従って、回収物、例えばセメント混合材等に利用できるシリカや、ガラス工業用に利用できる硼素などの工業的な利用価値を高めることができ、コスト面で有利である。また、回収物の安全性を高めることができる。
さらには、回収した砒素を、半導体原料、ガラス脱色剤等として資源化できるため、コスト面でさらに有利となる。
また、地熱水にカルシウム化合物を添加し沈殿を生成させるので、シリカを効率よく除去することができる。
【0038】
上記地熱水処理方法では、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤を用いるので、地熱水から効率よく砒素を除去することができる。従って、吸着剤使用量を抑え、低コスト化を図ることができる。
これに対し、シリカ処理のためカルシウム化合物を添加した後に砒素吸着剤を添加する場合には、地熱水のpHが高くなるため砒素吸着剤の吸着能が低下し、砒素除去効率が低くなる。
また、通常、地熱水は温度が高く、Mg、Alなどが多く含まれるため、砒素を効率よく吸着除去するのは難しいが、上記吸着剤の使用により、砒素を選択的に吸着し、除去効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の地熱水処理方法の一実施形態の工程を示す図である。
【図2】本発明の地熱水処理装置を地熱発電設備に適用した一例を示す概念図である。
【図3】本発明の地熱水処理装置を温泉水利用設備に適用した一例を示す概念図である。
【図4】本発明の地熱水処理装置の一実施形態である。
【図5】試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・地熱水供給経路、2・・・カルシウム化合物添加手段、3・・・反応槽、4・・・沈殿槽(分離手段)、7・・・イオン交換樹脂装置(硼素吸着手段)、20・・・砒素吸着槽(砒素吸着手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、地熱発電等に用いられる地熱水を処理する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、地熱水中のシリカを除去する方法としては、地熱水に無機系凝集剤や有機系凝集剤を添加し、凝集物を沈降分離などにより分離する方法がある(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−301460号公報
【特許文献2】
特開平11−342613号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
分離したシリカは、工業原料などとして資源化することが試みられているが、砒素などの有害物質が含まれることがあるため利用価値が低く、コスト面で不利であった。
このため、砒素などの有害物質を除去することが検討されているが、低コストで効率の高い除去処理は難しいのが現状である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、地熱水の処理において、シリカを効率よく除去することができ、しかも砒素などの有害物質を効率よく低コストで除去することが可能となる処理方法および装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の地熱水処理方法は、地熱水を、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤に接触させることにより砒素を吸着除去する砒素吸着工程と、砒素が除去された地熱水に、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を添加して、該地熱水中に沈殿を生成させる沈殿物生成工程と、生成した沈殿物を分離除去する沈殿物分離工程と、沈殿物が分離除去された地熱水を硼素吸着剤に接触させて硼素を吸着させる硼素吸着工程とを有することを特徴とする。
硫酸鉄化合物としては、シュベルトマナイトが好ましく、炭酸マグネシウム化合物としては、ハイドロタルサイトが好ましい。
本発明の地熱水処理方法では、砒素吸着工程で砒素が吸着された砒素吸着剤をアルカリ処理し、砒素を溶離させ回収することができる。
本発明では、地熱水として、地熱発電用水または排水を挙げることができる。
地熱水としては、温泉水を挙げることもできる。
【0006】
本発明の地熱水処理装置は、地熱水を、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤に接触させることにより砒素を吸着除去する砒素吸着手段と、砒素が除去された地熱水に、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を添加するカルシウム化合物添加手段と、該添加手段によるカルシウム化合物の添加により地熱水中に沈殿物を生成させる反応槽と、生成した沈殿物を地熱水から分離する分離手段と、沈殿物が分離除去された地熱水中の硼素を吸着除去する硼素吸着手段とを備えていることを特徴とする。
本発明の地熱発電設備は、上記地熱水処理装置を有することを特徴とする。
本発明の温泉水利用設備は、上記地熱水処理装置を有することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の地熱水処理方法の一実施形態を示す工程図である。ここに示す処理方法は、次に示す工程を有する。
(1)砒素吸着工程
地熱水を、反応槽内で、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤に接触させることにより砒素を吸着除去する(図中「砒素除去」を参照)。
この工程における地熱水の温度は、60℃以上(通常は70℃以上)とすることができる。地熱水のpHは、通常、中性領域(5.5〜8.5)である。
上記硫酸鉄化合物は、硫酸基を含む鉄化合物であり、各種鉄鉱物が使用できる。例えば、硫酸基と水酸基とを含む鉄化合物が使用できる。
硫酸鉄化合物としては、シュベルトマナイトが好ましい。シュベルトマナイトとしては、次の式で表されるものを挙げることができる。
Fe8O8(OH)8−2x(SO4)x(1<x<1.75)
上記炭酸マグネシウム化合物は、炭酸基を含むマグネシウム化合物であり、各種マグネシウム鉱物が使用できる。例えば、炭酸基と水酸基を含むマグネシウム化合物が使用できる。
炭酸マグネシウム化合物としては、ハイドロタルサイトが好ましい。ハイドロタルサイトとしては、次の式で表されるものを挙げることができる。
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O
【0008】
(2)砒素溶離工程
砒素吸着工程で砒素が吸着された砒素吸着剤をアルカリ処理し、砒素を溶離させる(図中「アルカリ化」を参照)。
アルカリ処理にあたっては、生石灰(CaO)、ドロマイト、CaO2、CaO・ZrO2、消石灰(Ca(OH)2)、Ca(OCl)2・nCa(OH)2、NaOH、KOHなどをアルカリ剤として添加することができる。
アルカリ処理では、地熱水のpHを9以上とするのが望ましく、10以上とすることが好ましい。このpHは11以上にすることがより好ましく、12以上とすることがさらに好ましい。pHをこの範囲とすることによって、砒素溶離効率を高めることができる。
溶離した砒素を公知の方法で精製することによって、砒素を回収することができる(図中「砒素回収」を参照)。回収した砒素は、半導体原料、ガラス脱色剤等として資源化できる。
砒素が溶離した吸着剤は、この工程で再利用することができる。
【0009】
(3)沈殿物生成工程
砒素吸着工程で砒素が除去された地熱水に、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を添加する。以下、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を、カルシウム化合物という。
カルシウムを含む酸化物としては、カルシウムの酸化物を含むもの、例えば生石灰(CaO)、ドロマイト、CaO2、CaO・ZrO2等を用いることができ、これらの中では、沈殿物生成効率が高く、しかも安価な生石灰を用いることが好ましい。
カルシウムを含む水酸化物としては、カルシウムの水酸化物を含むもの、例えば消石灰(Ca(OH)2)、Ca(OCl)2・nCa(OH)2等を用いることができ、これらの中では、沈殿物生成効率が高く、しかも安価な消石灰を用いることが好ましい。
カルシウム化合物は、溶液または懸濁液(以下、カルシウム液という)として地熱水に添加されることが好ましい。カルシウム液を用いることにより、沈殿物生成効率を高めることができる。
カルシウム液中のカルシウム化合物の濃度は0.5〜50g/リットルであることが好ましい。カルシウム液中のカルシウム化合物量がその溶解度を上回る場合はカルシウム化合物がカルシウム液中で溶解しにくくなる。
カルシウム化合物の添加量は、地熱水に溶存しているシリカ量にもよるが、地熱水1リットルあたり1〜10gとすることが好ましい。
【0010】
カルシウム液を地熱水に添加すると、地熱水中のシリカなどがカルシウム化合物と反応して沈殿物が生成する(図中「反応領域」および「カルシウム化合物添加」を参照)。
例えば、カルシウム化合物として生石灰を用いた場合は、以下のような反応が進行する。
2CaO+SiO2 → 2CaO・SiO2
または
3CaO+SiO2 → 3CaO・SiO2
また、カルシウム化合物として消石灰を用いた場合は、以下のような反応が進行する。
2Ca(OH)2+SiO2 → 2CaO・SiO2+2H2O
または
3Ca(OH)2+SiO2 → 3CaO・SiO2+3H2O
この沈殿物(CaO・SiO2など)の生成によって、地熱水の中のシリカ濃度が大幅に低下する。
地熱水中に硫酸イオンが含まれる場合には、硫酸イオンはカルシウム化合物と反応して石膏として沈殿除去される。また、地熱水中に鉄、砒素、アルミニウムが含まれる場合には、これらの水酸化物やカルシウム塩が沈殿物に吸着され沈殿する。
【0011】
この沈殿物生成工程では、含窒素カチオン化合物を凝集剤として地熱水に添加することができる。含窒素カチオン化合物としては、次式(1)に示すものが好ましい。
凝集剤の添加量は、地熱水に対して50mg/kg以上(好ましくは100mg/kg以上)とするのが好ましい。凝集剤の添加によって、シリカの一部は荷電中和されるとともに架橋されて凝集する。
【0012】
【化1】
【0013】
この沈殿物生成工程においては、地熱水の温度を60℃以上とするのが望ましく、90℃以上とすることがより好ましく、100℃以上とすることが更に好ましい。この温度が上記範囲未満であると、沈殿物生成効率が低下する傾向にある。
これは、温度が高くなるほど水酸化カルシウムの溶解度が低くなることに起因する。カルシウム液が高温の地熱水中に供給されるとカルシウム化合物の溶解度が低下し、カルシウム化合物が関与する沈殿物生成反応が起こりやすくなるため、地熱水の温度が高いほど沈殿物生成効率が高くなるものと考えられる。
また、沈殿物生成工程においては、地熱水のpHを8以上とするのが望ましく、10以上とすることが好ましい。このpHは11以上にすることがより好ましく、12以上とすることがさらに好ましい。このpHを上記範囲とすることによって、沈殿物の生成効率を高めることができる。
これは、地熱水のpHが上記範囲にあると、沈殿物表面のゼータ電位が0に近づくため、沈殿物どうしの反発が小さくなり、これらが凝集し、粗大粒子化しやすくなるためであると考えられる。
pHの調整には、前記カルシウム液、例えば消石灰の溶液または懸濁液をpH調整剤として用いてもよく、NaOH、KOHなどの溶液をpH調整剤として用いてもよい。
【0014】
(4)沈殿物分離工程
生成した沈殿物を含む地熱水は、この工程において沈殿物と、沈殿物を分離除去された地熱水に分けられる(図中「沈降領域」および「沈殿領域」を参照)。
沈殿物分離工程で分離された沈殿物の一部を、沈殿物生成工程に返送すると、返送された沈殿物は、沈殿物生成工程において、2CaO・SiO2、3CaO・SiO2等の沈殿物の結晶が成長する際の核(シード)として機能するため、沈殿物生成を促進する(図中「殿物分離領域」を参照)。
また、沈殿物を分離除去された地熱水を、未処理の地熱水に添加混合し、得られた混合水を沈殿物生成工程に供してもよい(図中「循環」を参照)。こうすると、沈殿物を分離除去された地熱水中に溶解残存するカルシウム化合物が沈殿生成に寄与するので、カルシウム化合物の必要添加量を少なくすることができ、処理コスト低減を図ることができる。
沈殿物分離工程では、沈降分離と濾過の組み合わせを好ましい例として例示できるが、沈殿物分離に用いられる方法であれば、これに限定されず、膜分離、遠心分離等、どのような装置も用いることができる。
【0015】
得られた沈殿物はフィルタープレスなどにより脱水し、脱水ケーキとする(図中「殿物抜き出し」および「フィルタープレス」を参照)。
この脱水ケーキは例えば噴霧乾燥法により造粒し、得られた粒状体をセメント混合材(シリカヒューム)として有効利用することができる(図中「噴霧乾燥造粒」および「シリカヒューム」を参照)。
フィルタープレスで得られた水は、沈殿物を分離除去された地熱水に併せて、次の工程に送られる。
【0016】
(5)硼素吸着工程
この地熱水中の硼素をイオン交換樹脂などの硼素吸着剤に吸着させる(図中「イオン交換樹脂塔」を参照)。
イオン交換樹脂としてはアニオン交換樹脂が用いられる。アニオン交換樹脂としてはいずれのタイプのイオン交換樹脂を用いることができるが、OH型アニオン交換樹脂を用いるのが好ましく、N−メチルグルカン型のアニオン交換樹脂が硼素の選択吸収性の点から好ましい。このようなイオン交換樹脂の例として、アンバーライトIRA−743T(オルガノ社製)、ダイヤイオンCRB−20(三菱化学社製)、デュオライトES−371N(住友化学社製)、ユニセレックUR−3500(ユニチカ社製)等を例示できる。
沈殿物を分離除去された地熱水がpHが10よりアルカリ側になっている場合は、例えば、硫酸等によりpHを7〜10、好ましくは8〜9に調整するのが好適である。
これは、イオン交換樹脂の硼素吸着能力が上記pH範囲内にある場合に最も高くなるためである。
硼素を吸着除去した地熱水は、地中に還元してもよい。
【0017】
(6)硼素回収工程
硼素を吸着した硼素吸着剤は、好ましくは水で洗浄して表面に付着した非吸着物を除去した後、塩酸などの鉱酸からなる脱着用薬剤を通液して硼素を溶離脱着させて回収する。硼素吸着剤がOH型アニオン交換樹脂である場合は、イオン交換樹脂に水酸化ナトリウム含有液等のアルカリを通液してOH型に再生する(図中「硼素回収」を参照)。
溶離回収した硼素含有水溶液は、必要に応じて各種イオン等の不純物を除去し、蒸発濃縮、結晶化により濃縮、固形化し硼酸を得ることができる(図中「濃縮・固形化」および「硼酸」を参照)。
回収された硼素化合物は、ガラス工業用、医薬用、化粧品原料、石鹸、電気メッキ、水処理剤などとして資源化できる。
【0018】
次に、本発明の地熱水処理方法の具体例について説明する。
図2は、本発明を地熱発電設備に適用した例を示す概念図であり、図3は、本発明を温泉水利用設備に適用した例を示す概念図である。
図2に示す地熱発電設備は、砒素吸着手段を備えた砒素除去回収設備;カルシウム化合物添加手段と反応槽と分離手段とを備えたシリカ除去回収設備;地熱発電所;硼素吸着手段を備えた硼素除去回収設備を備えている。
熱水井により汲み上げられた地熱水は、地熱発電用水として、砒素除去回収設備で砒素を除去し、次いで、シリカ除去回収設備でシリカの大部分を除いた後、地熱発電所において用いられる。発電後の地熱発電排水につき、硼素除去回収設備において硼素を吸着除去し、この地熱発電排水を地中に戻す(熱水還元)。
【0019】
図3に示すように、この温泉水利用設備は、砒素吸着手段を備えた砒素除去回収設備;カルシウム化合物添加手段と反応槽と分離手段とを備えたシリカ除去回収設備;硼素吸着手段を備えた硼素除去回収設備;温泉利用設備を備えている。
自噴あるいは温泉井により汲み上げられた温泉水は、砒素除去回収設備で砒素を除去し、次いでシリカ除去回収設備でシリカを除去し、硼素除去回収設備で硼素を吸着除去した後、温泉利用設備において使用される。
使用済みの温泉水は必要に応じて中和した後、河川に放流することができる。使用済みの温泉水に高濃度のCODやBODが含まれる場合には、河川放流に先だって生物学的処理を行ってもよい。使用済み温泉水は、地中に還元することもできる。
地熱発電設備、温泉水利用設備のいずれにおいても、副生した沈殿物は埋め立て等で処理することができる。回収された砒素、シリカ、硼素は工業的に利用することもできる。
【0020】
図4は本発明の地熱水処理装置の一実施形態例を示すものである。
この装置は、地熱水供給手段である地熱水供給経路1と、地熱水中の砒素を吸着除去する砒素吸着手段である砒素吸着槽20と、カルシウム化合物を添加するカルシウム化合物添加手段2と、凝集剤を添加する凝集剤添加手段25と、カルシウム化合物および凝集剤の添加により地熱水中に沈殿物を形成させる反応槽3と、生成した沈殿物を地熱水から分離する分離手段である沈殿槽4と、沈殿槽4において分離された沈殿物の一部を反応槽3内に返送する返送経路5と、沈殿物を分離除去された地熱水のpHを調整するpH調整槽6と、該地熱水中の硼素を吸着する硼素吸着手段であるイオン交換樹脂装置7と、硼素を吸着したイオン交換樹脂装置7から硼素を溶離脱着回収する回収手段である鉱酸供給経路8と、溶離液導出経路9と、地熱水排出経路19とを備えて構成されている。
上記各槽および各供給経路は、内部圧力を常圧を超える値に設定できるように構成するのが好ましい。
【0021】
地熱水供給経路1は、砒素吸着槽20に接続されている。砒素吸着槽20は、上記硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤が充填されている。
カルシウム化合物添加手段2は、地熱水中のシリカなどを沈殿させるカルシウム化合物を供給するためのもので、該カルシウム化合物をカルシウム液として貯留する貯留槽10と、貯留槽10からのカルシウム化合物を反応槽3に供給するカルシウム化合物供給経路11を備えている。
貯留槽10は、攪拌機10aを備えており、内部のカルシウム液を攪拌できるようになっている。
凝集剤添加手段25は、上記含窒素カチオン化合物などの凝集剤を貯留する凝集剤貯留槽26と、凝集剤を反応槽3に供給する供給経路27とを備えている。
【0022】
沈殿槽4は、円筒状の胴部4aと、逆円錐状に形成された円錐状下部4bを備えており、槽内の沈殿物を沈降させ、円錐状下部4bの下端部(先端部)付近に集めることができるようになっている。
円錐状下部4bの下端部には、槽内の沈殿物を槽外に排出する沈殿物排出経路12が接続されており、沈殿槽4内で集められた沈殿物を排出経路12を経由してフィルタープレス13に送り込んで脱水し、脱水ケーキとして取り出すことができるようになっている。
【0023】
沈殿物排出経路12には、返送経路5の一端が分岐接続されている。
返送経路5の他端は、地熱水供給経路1に分岐接続されており、沈殿槽4から排出経路12を通して排出された沈殿物の一部を、供給経路1を経て反応槽3内に返送できるようになっている。
沈殿槽の最上部には越流水を排出する越流水排出部14が設けられており、越流水排出部14は、越流水導出経路15を経由してpH調整槽6に接続している。
【0024】
反応槽3は円筒状の胴部3aと、逆円錐状に形成された円錐状下部3bを備えており、反応槽3は沈殿槽内に収容されている。
円錐状下部3bの下端部には、地熱水供給経路1から送り込まれた地熱水を反応槽3内に噴出するエジェクター16が設けられている。
反応槽3は、攪拌機3cを備えており、カルシウム液と地熱水がよく混合するよう攪拌可能となっている。
円筒状の胴部3aの上端は水面近傍の水面下にあり、円筒状胴部3aの外側に円筒17が設けられている。円筒17の上端は水面上に突き出しており、下端は円筒17内部と沈殿槽4内の円筒外部につながるよう開口している。
この構造をとることにより、カルシウム化合物を添加された地熱水は、円筒状胴部3aの上端を超えて円筒状胴部3aと円筒17の間を通って下方に向かい、円筒17の下端から沈殿槽の下部に出る。沈殿槽下部に出た地熱水はゆっくりと沈殿槽上部に向かい、その間に形成された沈殿物は沈降して沈殿槽下部にたまり、沈殿物が除かれた地熱水が越流水排出部14、越流水導出経路15を通って、pH調整槽6に送られる。
【0025】
pH調整槽6は、地熱水供給経路18を経由して、イオン交換樹脂装置7に接続している。
イオン交換樹脂装置7は2系列のイオン交換樹脂塔7a、7bから構成されている。これは、地熱水を、イオン交換樹脂塔7a、7bのいずれかへ導入して、一方で吸着処理を行っている間、他方から硼素を溶離脱着してイオン交換樹脂塔を再生処理し、一方の吸着能が低下したら切り替えて他方で吸着を開始し、その間に吸着処理を終了したイオン交換樹脂塔から硼素を溶離脱着し、イオン交換樹脂の再生を行うことにより、常時吸着処理を行えるようにするためである。
イオン交換樹脂塔7a、7bには、硼素吸着剤であるイオン交換樹脂が充填されている。
pH調整槽6からイオン交換樹脂塔7a、7bへ地熱水を導く地熱水供給経路18は途中で供給経路18a、18bに分岐し、それぞれイオン交換樹脂塔7a、7bの頂部に接続している。イオン交換樹脂塔7a、7bで硼素を吸着除去された地熱水は、イオン交換樹脂塔7a、7bの底部から地熱水排出経路19a、19bを通り、合流して地熱水排出経路19となり、地熱水を排出する。
【0026】
鉱酸槽21には鉱酸供給経路8が接続しており、鉱酸供給経路8は途中で8a、8bに分岐してそれぞれイオン交換樹脂塔7a、7bの頂部に接続している。
イオン交換樹脂塔7a、7bの底部は、それぞれ硼素を溶離した溶離液を導出する溶離液導出経路9a、9bに接続しており、溶離液導出経路9a、9bは途中で合流して溶離液導出経路9となり、溶離液槽(図示せず)に接続している。
アルカリ槽22はアルカリ供給経路23を経て、アルカリ供給経路23a、23bに分岐してそれぞれイオン交換樹脂塔7a、7bの頂部に接続している。
イオン交換樹脂塔7a、7bの底部からはアルカリ廃液を導出するアルカリ廃液導出経路24a、24bが接続しており、アルカリ廃液導出経路24a、24bは途中で合流してアルカリ廃液導出経路24となって、アルカリ廃液を排出する。
イオン交換樹脂塔7a、7bには、吸着処理後、該イオン交換樹脂塔内を水で洗浄するための洗浄水経路(図示せず)が設けられていることが好ましい。
【0027】
一方のイオン交換樹脂塔7aで地熱水中の硼素の吸着処理を行う場合は、鉱酸供給経路8a、溶離液導出経路9a、アルカリ供給経路23a、アルカリ廃液導出経路24aのバルブを閉めて、地熱水供給経路18a、地熱水排出経路19aのバルブを開けてイオン交換樹脂塔7aに流して吸着処理を行う。
イオン交換樹脂塔7aの吸着容量が飽和に達して吸着速度が低下したら、地熱水供給経路18a、地熱水排出経路19aのバルブを閉め、地熱水供給経路18b、地熱水排出経路19bのバルブを開けて地熱水をイオン交換樹脂塔7bに流して吸着処理を開始する。
同時に、鉱酸供給経路8a、溶離液導出経路9aのバルブを開けて、溶離用薬液をイオン交換樹脂塔7aに流して吸着している硼素を溶離する。
溶離が終了したら、鉱酸供給経路8a、溶離液導出経路9aのバルブを閉め、アルカリ供給経路23a、アルカリ廃液導出経路24aのバルブを開けて、イオン交換樹脂をOH型に再生する。
イオン交換樹脂塔7bの吸着容量が飽和に達したら、上記でイオン交換樹脂塔7aに対して行った操作をイオン交換樹脂塔7bに対して行い、イオン交換樹脂塔7bに対して行った操作をイオン交換樹脂塔7aに対して行えばよい。
【0028】
本発明の地熱水処理方法によれば、地熱水にカルシウム化合物を添加し沈殿を生成させるに先だって、砒素吸着剤を用いて砒素を除去するので、砒素をほとんど含まない回収物(シリカ、硼素など)を得ることができる。
従って、回収物、例えばセメント混合材等に利用できるシリカや、ガラス工業用に利用できる硼素などの工業的な利用価値を高めることができ、コスト面で有利である。また、回収物の安全性を高めることができる。
さらには、回収した砒素を、半導体原料、ガラス脱色剤等として資源化できるため、コスト面でさらに有利となる。
【0029】
また、地熱水にカルシウム化合物を添加し沈殿を生成させるので、シリカを効率よく除去することができる。
【0030】
上記地熱水処理方法では、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤を用いるので、地熱水から効率よく砒素を除去することができる。従って、吸着剤使用量を抑え、低コスト化を図ることができる。
これに対し、シリカ処理のためカルシウム化合物を添加した後に砒素吸着剤を添加する場合には、地熱水のpHが高くなるため砒素吸着剤の吸着能が低下し、砒素除去効率が低くなる。
また、通常、地熱水は温度が高く、Mg、Alなどが多く含まれるため、砒素を効率よく吸着除去するのは難しいが、上記吸着剤の使用により、砒素を選択的に吸着し、除去効率を高めることができる。
【0031】
【実施例】
<実施例1>
表1に示す組成の地熱水サンプル(砒素濃度14mg/l)を、砒素吸着剤とともに反応槽に導入し、処理水中の砒素濃度を測定した。温度条件は25℃とし、pHは無調整とした。反応槽の滞留時間は0.5時間とした。
砒素吸着剤としては、株式会社ソフィア製のシュベルトマナイトを使用した。試験結果を図5に示す。
【0032】
<実施例2>
反応槽の滞留時間を43時間に設定すること以外は実施例1と同様の試験を行った。試験結果を図5に示す。
【0033】
<実施例3>
表1に示す組成の地熱水サンプルを、図4に示す装置を用いて処理した。
地熱水通水量:10リットル/min
生石灰添加量: (生石灰15g+水0.11リットル)/min
沈殿槽からの返送量:沈殿槽から排出された沈殿物の4/5
反応槽におけるpH:10〜13
pH調整槽でのpH:8.5
イオン交換樹脂装置:6.9リットルのN−メチルグルカミン基を有する硼素選択吸着樹脂を充填したイオン交換樹脂塔2系列、切替2時間毎で硼素吸着処理を行った。なお、硼素を吸着したイオン交換樹脂塔は、硼素の溶離脱着前に、イオン交換樹脂に付着している非吸着物を水で洗浄して除いた後、塩酸で溶離脱着処理を行った。得られた処理水、溶離液の組成を表1に示す。
【0034】
<比較例1>
実施例で用いたと同様の地熱水サンプルを用い、生石灰添加による沈殿分離処理を行わず、pH8.5としてイオン交換樹脂装置で硼素吸着、硫酸による溶離処理を行った。得られた溶離液の組成を表1の未処理水溶離液の欄に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から、実施例の方法によれば、硼素を高度に吸着分離、回収できることがわかる。
これに対して、シリカ等を予め沈殿除去しない場合はイオン交換樹脂にシリカが大量に吸着して、硼素の回収が不充分であり、ここから更に硼素とシリカを分離しなければならず、硼素分離回収法としては不充分なことがわかる。
【0037】
【発明の効果】
本発明の地熱水処理方法によれば、地熱水にカルシウム化合物を添加し沈殿を生成させるに先だって、砒素吸着剤を用いて砒素を除去するので、砒素をほとんど含まない回収物(シリカ、硼素など)を得ることができる。
従って、回収物、例えばセメント混合材等に利用できるシリカや、ガラス工業用に利用できる硼素などの工業的な利用価値を高めることができ、コスト面で有利である。また、回収物の安全性を高めることができる。
さらには、回収した砒素を、半導体原料、ガラス脱色剤等として資源化できるため、コスト面でさらに有利となる。
また、地熱水にカルシウム化合物を添加し沈殿を生成させるので、シリカを効率よく除去することができる。
【0038】
上記地熱水処理方法では、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤を用いるので、地熱水から効率よく砒素を除去することができる。従って、吸着剤使用量を抑え、低コスト化を図ることができる。
これに対し、シリカ処理のためカルシウム化合物を添加した後に砒素吸着剤を添加する場合には、地熱水のpHが高くなるため砒素吸着剤の吸着能が低下し、砒素除去効率が低くなる。
また、通常、地熱水は温度が高く、Mg、Alなどが多く含まれるため、砒素を効率よく吸着除去するのは難しいが、上記吸着剤の使用により、砒素を選択的に吸着し、除去効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の地熱水処理方法の一実施形態の工程を示す図である。
【図2】本発明の地熱水処理装置を地熱発電設備に適用した一例を示す概念図である。
【図3】本発明の地熱水処理装置を温泉水利用設備に適用した一例を示す概念図である。
【図4】本発明の地熱水処理装置の一実施形態である。
【図5】試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・地熱水供給経路、2・・・カルシウム化合物添加手段、3・・・反応槽、4・・・沈殿槽(分離手段)、7・・・イオン交換樹脂装置(硼素吸着手段)、20・・・砒素吸着槽(砒素吸着手段)
Claims (8)
- 地熱水を、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤に接触させることにより砒素を吸着除去する砒素吸着工程と、
砒素が除去された地熱水に、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を添加して、該地熱水中に沈殿を生成させる沈殿物生成工程と、
生成した沈殿物を分離除去する沈殿物分離工程と、
沈殿物が分離除去された地熱水を硼素吸着剤に接触させて硼素を吸着させる硼素吸着工程とを有することを特徴とする地熱水処理方法。 - 硫酸鉄化合物がシュベルトマナイトであり、炭酸マグネシウム化合物がハイドロタルサイトであることを特徴とする請求項1に記載の地熱水処理方法。
- 砒素吸着工程で砒素が吸着された砒素吸着剤をアルカリ処理し、砒素を溶離させ回収することを特徴とする請求項1または2に記載の地熱水処理方法。
- 地熱水が、地熱発電用水または排水であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の地熱水処理方法。
- 地熱水が、温泉水であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の地熱水処理方法。
- 地熱水を、硫酸鉄化合物と炭酸マグネシウム化合物のうち一方または両方を含む砒素吸着剤に接触させることにより砒素を吸着除去する砒素吸着手段と、
砒素が除去された地熱水に、カルシウムを含む酸化物および/または水酸化物を添加するカルシウム化合物添加手段と、
該添加手段によるカルシウム化合物の添加により地熱水中に沈殿物を生成させる反応槽と、
生成した沈殿物を地熱水から分離する分離手段と、
沈殿物が分離除去された地熱水中の硼素を吸着除去する硼素吸着手段とを備えたことを特徴とする地熱水処理装置。 - 請求項6に記載の地熱水処理装置を有することを特徴とする地熱発電設備。
- 請求項6に記載の地熱水処理装置を有することを特徴とする温泉水利用設備。
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JP2016209793A (ja) * | 2015-05-01 | 2016-12-15 | 裕泰 吉川 | 有害成分吸着材料及びその製造方法 |
TWI727504B (zh) * | 2019-11-15 | 2021-05-11 | 財團法人工業技術研究院 | 量測地熱流體潛能的設備 |
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