JP2004283763A - 塗膜形成法 - Google Patents

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Masakazu Teramoto
正和 寺元
Tatsuya Kawamura
達矢 河村
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Kuboko Paint Co Ltd
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Abstract

【課題】塗装作業性や貯蔵安定性に優れ、且つ平滑でタレやワキ等のない優れた外観の塗膜を得ることのできる塗膜形成法を提供すること。
【解決手段】塗料用樹脂を含む粉体がスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に水に分散された水分散型粉体塗料を被塗物に塗装し、120℃以上の温度で焼付処理する。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水分散型粉体塗料を用いた塗膜形成法に関し、特に、塗装作業性や貯蔵安定性に優れ、且つ平滑でタレ(特に厚肉塗装してから乾燥するまでの間に、塗料が下方にタレ落ちる現象)やワキ(加熱乾燥時に、主として分散媒の急激な蒸発により塗膜が発泡し、或いはこれに起因してピンホールや小孔が発生する現象)等のない優れた外観の塗膜を得ることのできる水分散型粉体塗料を用いた塗膜形成法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塗料としては、従来より有機溶剤を用いた塗料が汎用されてきた。ところが有機溶剤を使用した塗料は、環境問題や火災発生の原因になり得ることから、有機溶剤を使用しない水性塗料や粉体塗料が注目されている。
【0003】
しかし、水性塗料では満足のいく塗膜性能が得られ難く、また廃水処理などの問題を有している。これに対し粉体塗料は塗膜性能に優れており、且つオーバースプレーした塗料は回収装置を利用して循環使用できるため塗料ロスが殆どなく、経済性にも極めて有用なものである。しかし、粉体塗装のために高価な塗装設備を必要とすることや、仕上り塗膜が粉体塗料特有のゆず肌となり、薄膜塗装が難しいという問題も指摘される。更に粉体塗料は、製造上多品種少量生産には不向きであり、また、異色の粉末や異物が混入するとそれらの除去が殆ど不可能であり、汎用化を妨げる大きな原因になっている。
【0004】
こうした粉体塗料の難点を克服する他のタイプの塗料として、粉体塗料成分を水に分散させた水分散型の粉体塗料が考えられており、例えば特許文献1〜3などが提案されている。これら水分散型粉体塗料の多くは、熱硬化性樹脂、またはこれと顔料成分を溶融温度以上、硬化温度未満の温度で溶融混合してから粗粉砕し、更に乾式で微粉砕してから分散剤などを用いて水に分散させる方法、或いは粗粉砕物を分散剤などと共に水に分散させてから湿式で微粉砕する方法、等によって製造される旨記載されている。
【0005】
前掲の公報を含めて、先行技術に開示されている水分散型粉体塗料の殆どは、貯蔵安定性や塗膜の均一性などを考慮して水分散型粉体塗料を構成する樹脂成分の粒径は小さいことが好ましいとされており、具体的には、平均粒径(D50)で10μm以下のものを推奨している。
【0006】
また水分散型の粉体塗料は、本来は水に不溶性の塗料樹脂粉末を水に分散させたものであるから貯蔵安定性が悪く、保管時に該粉末成分が沈降分離し易い。しかも加熱乾燥時にワキを起こし易く、平滑な塗膜が得られ難い。そのため、貯蔵安定性や塗膜性能を高めるための分散剤や界面活性剤などについても多くの研究がなされている。
【0007】
例えば特許文献4には、分散剤としてポリカルボン酸の金属塩やアミン塩、ポリオキシエチレンのアルキルエーテルやアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等を適量含有させることで、貯蔵安定性や塗膜性能を高める技術が開示されており、また特許文献5には、HLBが10以下のノニオン界面活性剤を流動性助剤として適量含有させることで、ワキやひび割れを抑える技術が開示されている。また前記特許文献3には、塗料粉体を構成する樹脂の種類や架橋剤などを特定すると共に、非イオン性増粘剤と、消泡剤や分散剤、保水剤などを含む水性成分を使用することで、特に自動車車体用として優れた性能の透明被覆を与える水分散性ラッカーが開示されている。
【0008】
ところが、特許文献4に記載された水分散性塗料の場合、記載の界面活性剤を使用すると、粉体粒子を微細化するにつれて塗料の流動性が悪くなるため塗装作業性が低下し、均一な塗膜が得られ難くなるだけでなく、分散工程で発熱し易くなり、粉体粒子同士が融着し易くなる。そこで、流動性を高めるために界面活性剤の量を増大させると、タレやワキが生じ易くなると共に塗膜の耐水性や光沢が低下する。或いは、流動性を確保するために塗料の固形分濃度を下げると、タレや素地の透けを生じ易くなる。
【0009】
また特許文献5に記載された水分散型塗料の場合、選択された界面活性剤を使用することで塗膜の耐水性は確保されるが、粉体粒子を微細化するにつれて塗料の流動性が悪くなり、界面活性剤を選択するだけでは満足のいく流動性を確保することができない。また、流動性を高めるべく界面活性剤の量を増大し、或いは塗料の固形分濃度を下げると、前記と同様にワキやタレが生じ易くなる。更に、低HLBのノニオン系界面活性剤を多量添加すると、粉体粒子同士が凝着するという重大な欠陥を招く。
【0010】
更に特許文献3に開示されている透明ラッカー水性分散体は、特定の塗料粉体を非イオン性増粘剤および界面活性剤や分散剤などの共存下で湿式分散することにより製造されるが、微粒化した塗料粉体の凝集が起こり易くて貯蔵安定性が悪く、更には塗膜の耐水性が劣るという欠点も指摘される。
【0011】
【特許文献1】
特開平7−196953号公報
【特許文献2】
特開平11−343432号公報
【特許文献3】
特表平11−503478号公報
【特許文献4】
特開昭58−191767号公報
【特許文献5】
特開昭58−1757号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、水分散型粉体塗料にみられる前掲の欠点を解消し、塗料としての貯蔵安定性や塗装作業性を改善すると共に、平滑性や光沢に優れ、且つタレやワキ等のない美麗な塗膜外観を与える塗膜形成法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した従来技術の問題点を解消すべく鋭意研究を重ねた結果、塗料用樹脂を含む粉体が、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に水に分散された水分散型粉体塗料を被塗物に塗装し、120℃以上の温度で焼付を行えば、平滑性や光沢に優れ、且つタレやワキ等のない美麗な外観の塗膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
従って本発明は、塗料用樹脂を含む粉体がスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に水に分散された水分散型粉体塗料を被塗物に塗装し、120℃以上の温度で焼付けるところに特徴を有している。
【0015】
本発明で用いる前記水分散型粉体塗料は、下塗り塗料、中塗り塗料、上塗り塗料の中から選ばれる少なくとも1つとして使用することができ、また該水分散型粉体塗料は、クリアー塗料および着色塗料のいずれであっても構わない。
【0016】
本発明の塗膜形成法が適用される代表的な被塗物としては、プラスチック類、金属類、無機材類が挙げられ、これらは単独素材からなるものはもとより、これらの2種以上が複合された複合部材からなる被塗物であってもよく、また、車両、家電、建築、容器、機械、船舶、輸送管、缶又は家具の用途に使用される被塗物が全て対象となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する水分散型粉体塗料は、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に、塗料用樹脂を含む粉体が水に分散されたものである。
【0018】
上記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物とは、スチレンと(無水)マレイン酸を共重合することによって得られる共重合体にアルキレンオキサイドが付加した化合物であり、例えば下記一般式で示される方法によって得られる共重合体である。
【0019】
【化1】
Figure 2004283763
【0020】
上記一般式において、rは1〜5、sは5〜20、tは1〜50の整数を表わし、Rは水素、炭素数1〜20のアルキルアルコール残基、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキルフェノール残基、炭素数8〜40の脂肪酸残基、炭素数8〜40の脂肪酸アミン残基、炭素数8〜40の脂肪酸アミド残基、グリセリンまたはグリセリンと脂肪酸のエステル残基、ソルビトールまたはソルビトールと脂肪酸のエステル残基、炭素数8〜40の脂肪酸アルカノールアミド残基等から選択される少なくとも1種の置換基を表わし、−AO−は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合鎖(ブロック、ランダムまたは交互共重合物を含む)を表わす。
【0021】
この付加物は、主鎖を構成するスチレン・マレイン酸骨格と、該骨格中に含まれるマレイン酸単位における未中和のカルボキシル基、および一方のカルボキシル基に付加したアルキレンオキサイド鎖、特に好ましくはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドが共付加した側鎖部、の存在により、後述する界面活性剤との共存とも相俟って、塗料用樹脂粉体に対して卓越した分散性を与え、水分散型塗料として卓越した貯蔵安定性と塗装作業性を保障しつつ、タレやワキがなく且つ耐水性や塗膜平滑性においても優れた性能を示す高品質の塗膜を与える。
【0022】
これらの諸機能をより有効に発揮させるには、上記付加物として、重量平均分子量が2,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000の範囲で、スチレン単位とマレイン酸単位のモル比率が前者1に対して後者0.2〜1、プロピレンオキサイドの共付加モル比がエチレンオキサイドに対して0.1〜0.5の範囲のものを使用するのがよい。
【0023】
重量平均分子量が小さ過ぎる場合は、粉体粒子に対する吸着比率(カルボキシル基比率)やアルキレンオキサイド鎖が小さいため、微細化された粉体粒子が凝集し易くなって貯蔵安定性が悪くなる傾向があり、逆に重量平均分子量が大き過ぎると、アルキレンオキサイド鎖も大きくなって貯蔵安定性は向上するが、耐水性が悪くなる傾向が生じてくる。
【0024】
また、アルキレンオキサイド鎖に含まれるエチレンオキサイドの比率が多くなり過ぎると、親水性が高くなって耐水性が低下傾向を示し、またプロピレンオキサイドの比率が多くなり過ぎると、疎水性が強くなり過ぎて水への溶解性が低下し、分散剤としての機能が有効に発揮され難くなる。また、主鎖部分を構成するスチレンの比率が多くなると、塗料の流動性は良くなって塗装作業性は向上するが、粉体粒子に対する吸着比率(カルボキシル基比率)やアルキレンオキサイド鎖が小さくなり、塗料粉体粒子が凝集し易くなって貯蔵安定性が低下してくる。またマレイン酸の比率が多くなり過ぎると、アルキレンオキサイド鎖も多くなって貯蔵安定性は向上するものの、耐水性不足になる傾向が生じてくる。
【0025】
これら好ましい要件を満たすスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物は、例えばビックケミー社製の商品名「Disperbyk−190」、或いは共栄社化学社製の商品名「フローレンTG−750W」などとして入手できる。
【0026】
また上記アルキレンオキサイド付加物と併用される界面活性剤の種類は特に制限されず、一般の水性塗料用として使用可能な様々の界面活性剤、例えばアニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系の各種界面活性剤を使用できる。
【0027】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、脂肪酸トリエタノールアミン塩、(直鎖)アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸(メチル)エステルアルカリ塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステルアルカリ塩、モノアルキルリン酸塩、ラウリル硫酸塩、アシル−N−メチルタウレート、カルボン酸のナトリウム塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩などが例示され、上記塩類としてはナトリウム塩やカリウム塩が好ましく使用される。
【0028】
カチオン系界面活性剤としては、例えばアンモニウムクロライド、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、トリアルキルアンモニウムクロライド、塩化セチルトリメチルアンモニウム等が、また両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤、リン酸エステル塩型両性界面活性剤などが例示される。
【0029】
非イオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルポリグルコシド、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどが例示される。
【0030】
上記の界面活性剤は、各々単独で使用し得る他、必要により任意の2種以上を適宜選択して併用することも可能である。しかし、多くの界面活性剤の中でも本発明で特に好ましく使用されるのは非イオン系の界面活性剤であり、中でもHLBが4〜13、より好ましくは4〜9の範囲のものである。尚、非イオン系界面活性剤のHLBは、「HLB=E/5(Eはポリエチレンオキサイド部分の質量%を表わす)」として求める。
【0031】
非イオン系界面活性剤の中でも特に好ましいのは、アルキンジオールのアルキレンオキサイド付加物、より具体的には、下記一般式で示されるテトラメチルデシンジオールのエチレンオキサイド付加物で、重量平均分子量が300〜3000、より好ましくは300〜1000の範囲のものである。
【0032】
【化2】
Figure 2004283763
【0033】
(式中、m,nは0〜6の整数で、少なくとも1方は1以上であり、
m+nは1〜12を表わす)
これらの要件を満たすアルキンジオールのアルキレンオキサイド付加物は、例えばエアープロダクツ社製の商品名「サーフィノール」シリーズ等として入手できる。
【0034】
本発明で使用する水分散型粉体塗料では、前述したスチレン・無水マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と上記界面活性剤を併用することが極めて重要であり、それら一方のみを使用したのでは、後記実施例でも具体的に示す通り、本発明で意図する様な総合的に優れた塗料性能を得ることができない。そして、両者の併用による優れた作用効果をより効果的に発揮させるには、前記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤を、塗料用樹脂粉体に対し固形分換算で各々0.1〜1質量%の範囲で含有させることが望ましく、また上記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の使用比率は、質量比で前者1に対し0.1〜5、より好ましくは0.5〜2の範囲とすることが望ましい。
【0035】
本発明で使用する水分散型粉体塗料は、上述したスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に、好ましくは熱硬化性樹脂からなる塗料用樹脂を含む粉体が水に分散されたもので、該粉体は平均粒径(D50)が1〜30μm、より好ましくは5〜15μmであり、しかも、50μm以上の粗粒物の占める比率が10質量%以下(より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは実質的にゼロ%)で、且つ0.5μm以下の微粒子の占める比率が10質量%以下(より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは実質的に0%)であることが望ましい。
【0036】
ちなみに平均粒径(D50)が1μm未満では、粒子が微細に過ぎるため構造粘性が高くなって流動性が低下し、スプレーガン等を用いた塗装作業性が低下したり、仕上り外観(塗膜の平滑性や均一性)などが低下する傾向が生じるからである。そこで、塗料の固形分濃度を下げることによって流動性を確保しようとすると、固形分濃度の低下に伴って、所謂“塗膜のやせ”や“透け”が問題になってくる。また本発明では、前述した様にスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の併用により流動性の向上を図っているが、それらを必要以上に添加しなければならなくなり、耐水性などの塗膜特性に悪影響を及ぼす恐れもでてくる。
【0037】
他方、平均粒径(D50)が30μmを超えて過度に粗大になると、保管時などに塗料中の粉体成分が沈降し易く、塗料の取扱い性が低下するばかりでなく、塗膜のきめが粗くなって平滑な塗膜外観が得られ難くなる。
【0038】
また該粉体の粒度分布は、塗膜の平滑性や、水分散型塗料を調製する際の濾過性、更には塗装作業性などに影響を及ぼし、固形成分(粉体)中に占める50μm以上の粒子の比率が10質量%以下で且つ0.5μm以下の粒子の占める比率が10質量%以下であることが望ましく、その結果として、0.5μm以上50μm以下の好適粒径範囲に納まる粒子の全体中に占める比率は80質量%以上であることが望ましい。
【0039】
ちなみに平均粒径(D50)が1〜30μmの範囲内であっても、粒度分布が広い水分散型粉体塗料では、凹凸間隔が短くて凹凸高低差の大きい塗膜となり、均一な仕上り塗膜が得られ難くなる。更に50μm以上の粗粒物が10質量%を超えると、塗料製造時の濾過工程でフィルターが目詰りを起こし易くなり、また、0.5μm以下の微粒物が10質量%を超えると塗料の流動性が低下し、塗装作業性が悪くなる傾向が見られる。
【0040】
しかし、平均粒径(D50)が1μm以上30μm以下で且つ50μm以上の粒子の占める比率が10質量%以下、0.5μm以下の粒子の占める比率が10質量%以下の水分散型粉体塗料では、塗料粘度が過度に高くなって塗装作業性や取扱い性が劣化するといった問題を生じることなく、しかも形成される塗膜は均一で平滑性の一段と優れた仕上り外観を有するものとなる。更に、塗料製造時の濾過工程でフィルターの目詰りを起こすことなく夾雑物のみを容易に除去することができる。
【0041】
本発明で使用する上記水分散型粉体塗料の固形分濃度も、塗装作業性や塗膜特性に影響を及ぼす要因であり、好ましくは30〜60質量%の範囲に調整することが望ましい。ちなみに、固形分濃度が30質量%未満の低濃度物では、濃度不足のため塗装時に前述した“塗膜のやせ”や“透け”が生じ易くなる。逆に60質量%を超えて過度に高濃度になると、塗料粘度が高くなって流動性が低下し、塗装時のレベリング性が悪くなり、仕上り塗膜の平滑性などに悪影響が生じてくる。この様なことから、水分散型粉体塗料の固形分濃度は30質量%以上、60質量%以下に調整するのがよい。
【0042】
本発明で使用する塗料用樹脂の種類には特に制限がなく、水分散型粉体塗料用として用いられる公知の樹脂、例えばエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキド系樹脂、アミノ・アルキド樹脂、フェノール・アルキド樹脂、ポリブタジエン系樹脂、シリコン系樹脂、イソシアネート系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂などを使用することができ、これらは各々単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜複合して使用することができる。
【0043】
上記塗料用樹脂の中でも特に好ましいのは、ガラス転移温度が30℃以上、より好ましくは40℃以上で、80℃以下、より好ましくは70℃以下の樹脂である。ちなみに、樹脂のガラス転移温度が30℃未満の場合は、貯蔵時や輸送時に塗料中の粉体粒子がブロッキングを起こす恐れが生じるだけでなく、機械粉砕時に融着を起こして微粒化し難くなることがあり、逆にガラス転移温度が高過ぎる場合は、焼付時の流動性が悪化して仕上り塗膜の平滑性が低下傾向を示す様になる。
【0044】
本発明で使用する塗料用樹脂において、例えば、上記したエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂などの樹脂に水酸基を公知の方法により導入した水酸基含有樹脂と該樹脂中の水酸基と反応する官能基を有する硬化剤を配合すれば、熱や紫外線などによる硬化型の塗料とすることができる。
【0045】
このような硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂(このものを配合した塗料をアミノ樹脂硬化型塗料と呼ぶことがある)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(このものを配合した塗料をイソシアネート硬化型塗料と呼ぶことがある)などが挙げられる。
【0046】
アミノ樹脂として、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素、ジシアンジアミドなどとホルムアルデヒドとの縮合又は共縮合によって得られるものがあげられ、更に、このものを炭素数1〜8のアルコール類で変性したものやカルボキシル基含有アミノ樹脂等も使用することができる。
【0047】
水酸基とアミノ樹脂の硬化触媒として、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などの酸、これらの酸のアミン中和物を配合することができる。
【0048】
ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、フリーのイソシアネート化合物をブロック化剤でブロック化したポリイソシアネート化合物である。
【0049】
フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、もしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、キシレンジイソシアネート、もしくはイソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類、トリレンジイソシアネートもしくは4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類等の有機ジイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ジイソシアネートの過剰量と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは前述した各有機ジイソシアネート同士の(共)重合体、更にはイソシアネート・ビゥレット体等が挙げられる。
【0050】
ブロック化剤としては、オキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、マロン酸エステル、メルカプタン等が挙げられる。
【0051】
また、ブロック化剤の解離触媒として、鉛系触媒(2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、オレイン酸鉛など)、錫系触媒(テトラブチル錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、酒石酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキシレート)、ジベンジル錫ジ(2−エチルヘキシレート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレエート、ジブチル錫スルフィド、ジブチル錫ジブトキシドなど)、亜鉛系触媒(ナフテン酸亜鉛など)、アンチモン系触媒(三塩化アンチモンなど)などを配合することができる。
【0052】
また、本発明で使用する塗料用樹脂において、例えば、上記したポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂などの樹脂に、カルボキシル基を公知の方法で導入したカルボキシル基含有樹脂と該樹脂中のカルボキシル基と反応する官能基を有する硬化剤を配合すれば、熱や紫外線などによる硬化型の塗料とすることができる。
【0053】
このような硬化剤としては、例えば、ポリエポキシ化合物(このものを配合した塗料をエポキシ硬化型塗料と呼ぶことがある)などが挙げられる。
【0054】
ポリエポキシ化合物とは、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、その代表的な例としては、エチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、グリセリン・ジグリシジルエーテル、グリセリン・トリグリシジルエーテル、ジグリセリン・トリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA・ジグリシジルエーテルまたはビスフェノールA・ジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのポリグリシジルエーテル、あるいは側鎖にエポキシ基を有するビニル系重合体などが挙げられる。
【0055】
カルボキシル基とエポキシ基との硬化触媒としては、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリメトキシブチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、テトラエトキシシラン、γ−N−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γーメルカプトプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物が挙げられる。
【0056】
また、本発明で使用する塗料用樹脂において、例えば、上述したエポキシ系樹脂[ビスフェノール型グリシジルエーテルタイプ、グリシジル(メタ)アクリレートを必須成分とする(メタ)アクリル系(共)重合体など]のエポキシ基をカチオン重合させるカチオン重合触媒や、エポキシ基と反応する官能基を有する硬化剤(このものを配合した塗料をエポキシ硬化型塗料と呼ぶことがある)を配合することにより、熱や紫外線による硬化型の塗料とすることができる。
【0057】
カチオン重合触媒としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩等が挙げられる。
【0058】
また、硬化剤としては、例えば、ポリカルボン酸樹脂(アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等)、フェノール樹脂(ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂など)、ポリカルボン酸化合物(例えば、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ドデカン2酸、フタール酸等)、アミド(ジシアンジアミド等)が挙げられる。
【0059】
なお必要によっては、上記塗料用樹脂に加えて、通常の粉体塗料に配合されることのある硬化剤、硬化促進剤、流動調整剤、発泡防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防錆剤などを配合し、塗膜特性を更に改善することも勿論可能である。
【0060】
尚、本発明で使用する水分散型塗料組成物においては、上記成分に加えて、例えばアクリル酸系共重合体(アクリル酸とアクリルエステルの共重合体)、セルロース系(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、プロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、ポリウレタン系(ポリエーテル変性ウレタン化合物など)、ポリアマイド系、クレー系(ベントナイト、ヘクトライト、サポナイトなど)の増粘剤や、ミネラルオイル系や鉱物系、シリコン系などの消泡剤、更には被塗装物である金属(特に鉄系合金など)に対して錆止め機能を与えるための防錆剤などを添加することも可能である。
【0061】
本発明で使用する水分散型粉体塗料は、上記の様に、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤および塗料用樹脂粉末を必須成分として含有するもので、実質的に塗料用樹脂のみからなる粉体を用いた場合は、所謂クリアー塗膜形成用の塗料となる。また塗料用樹脂と共に適量の顔料や染料を配合した粉末を使用すれば、当該顔料や染料の有する色調等に応じた色彩の着色塗料として得ることができる。
【0062】
ここで用いる顔料としては、着色顔料や防錆顔料などが包含され、着色顔料としては例えば、ベンガラなどの酸化鉄、酸化チタン、チタン黄、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、酸化アンチモン、コバルトブルー、カーボンブラックなどの無機系顔料や、キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、ハンザイエロー、インダンスレンブルー、ブリリアントファーストスカーレット、バリオゲンレッドなどの有機顔料が例示され、これらも単独で使用し得る他、必要により2種以上を組合せて使用できる。
【0063】
更に、体質顔料や艶消し剤として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、クレー、タルク、ケイソウ土、シリカ粉、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト等を使用したり、塗膜の光輝性向上を目的として配合される光輝性顔料として、パール顔料、アルミニウム粉やステンレス鋼粉などの金属粉や金属フレーク、ガラスビーズやガラスフレーク、雲母、リン片状酸化鉄(MIO)等を併用することも有効である。
【0064】
上記顔料の配合量には一切制限がなく、用いる顔料の種類や塗膜に求められる色調、明度、彩度などに応じて任意に選定すればよいが、標準的な配合量は、塗料用樹脂100質量部に対し1〜80質量部の範囲、より一般的には2〜70質量部の範囲である。なお、クリアー塗料とする場合に顔料の配合が省略されることは当然である。また必要によっては、顔料に加えて或いは顔料に代えて任意の染料を使用することも可能である。
【0065】
本発明で使用する塗料は、前記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤、および塗料用樹脂粉末を必須成分として含有する水性分散体であるが、スプレー塗装時に塗料のタレやワキ、透け等を生じることなく、レベリング性に優れ、より平滑性の高い塗膜を形成するには、該水分散型粉体塗料の23℃での粘度を100mPa・s以上、より好ましくは200mPa・s以上で、5000mPa・s以下、より好ましくは4000mPa・s以下に調整することが望ましい。
【0066】
ちなみに塗料粘度が低過ぎる場合は、塗装時のレベリング性は良好であるが、スプレー塗装時にタレを起したり加熱乾燥時にワキを生じ易くなって均質な塗膜が得られ難くなり、逆に塗料粘度が高過ぎると、タレ性は良好になるが、塗装作業性や塗装時のレベリング性が悪化し平滑な塗膜が得られ難くなる。
【0067】
次に、本発明で使用する水分散型粉体塗料の製法について説明する。
【0068】
上記水分散型粉体塗料は、原料となる塗料用樹脂またはこれと顔料や染料を溶融混合して冷却固化させ、適当なサイズ(通常は1mm以下)に粗粉砕してから適量の水に分散させ、該水分散体を循環型ビーズミル等で処理することによって、好ましい平均粒径(D50)と粒度分布を満たす様に微粉砕する。
【0069】
循環型ビーズミルとは、破砕用メディアとして鋼球やセラミックス球などが装入されたビーズミルと処理液タンクとの間で粗粉砕分散液を循環させ、分散液中の粉体の微細化を進める装置であり、微細化の進行状態は粉砕用メディアの材質、サイズ、充填量、アジテーターシャフトの回転数、分散液の循環流量などによって変わってくるが、何れにしても循環運転時間を調整することで微細化の程度を任意に調整できる。
【0070】
尚、ビーズミルを用いて微粉砕を行う際に、処理液温度が高温になると水分散液中の粉体同士がブロッキング(融着)を起こす恐れがあるが、循環型ビーズミルとして外付け型もしくは内臓型の冷却機構を備えたものを使用し、処理液温度を低目に抑えて微粉砕処理を行えば、微粒子同士がブロッキングを起こすことなく円滑に微細化できるので好ましい。この際、塗料粘度が高すぎると微粉砕時に昇温し易くなってブロッキングを起こす原因になるので、塗料粘度は常温で約5000mPa・s程度以下に抑えるのがよい。
【0071】
粗粉砕の後、循環型ビーズミルを使用し、粉砕用メディアの材質、サイズ、充填量、アジテーターシャフトの回転数、塗料の循環流量などに応じて循環時間を適宜調整すれば、前掲の好適粒度範囲と粒度分布を有する水分散型粉体塗料を容易に得ることができる。
【0072】
なお、該粉体塗料組成物中に必須成分として含有させる前記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物や界面活性剤、或いは更に他の水系添加剤は、塗料用樹脂粉末を製造する際に、その配合原料中に含有させたり、粗粉砕する際に水分散液中に添加してもよく、或いは循環型ビーズミルによる処理の前または処理途中で添加してもよく、更にはビーズミル処理後に添加しても構わない。
【0073】
かくして得られる微粉砕分散液を、最終工程で、必要により加圧、吸引あるいは超音波加振機構付のスクリーンに通して異物や夾雑物を濾別すると、本発明の水分散型粉体塗料を得ることができる。
【0074】
本発明において、上記水分散型粉体塗料が塗装される被塗物としては、140℃程度の温度で変形、変質、劣化などを起こさない被塗物であれば、従来から公知の被塗物を使用することができる。
【0075】
使用できる被塗物として、材質的には、例えば、プラスチック類、金属類、金属以外の無機類などが挙げられる。
【0076】
プラスチック類としては、透明、不透明の如何を問わず公知の種々のプラスチックが挙げられ、具体的には、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリカーボネートなどが挙げられる。これらプラスチック類の被塗物には、必要に応じて適宜の表面処理を施しておくことも可能である。
【0077】
金属類としては、例えば、鉄、銅、錫、アルミニウム、亜鉛、鉛等の金属もしくはこれの合金等が挙げられる。これらの金属にクロメート処理、燐酸塩処理又は複合酸化膜処理などの化成処理やめっき処理等の表面処理を施した金属材も勿論使用できる。
【0078】
金属以外の無機材類としては、例えば、コンクリート、モルタル、ガラスなどが挙げられ、これらの被塗物にも、必要に応じて適宜の表面処理を施しておくことができる。
【0079】
また本発明が適用される被塗物の用途例としては、車両、船舶、家電製品、建築材、各種容器、機械部品・部材、各種の管材、缶や家具などが制限なく例示される。
【0080】
本発明の塗膜形成法を実施するに当り、上記水分散型粉体塗料を被塗物に塗装したり印刷する手法にも全く制限がなく、従来から公知の方法、静電塗装(回転式、エア霧化式、エアレス式、エアアシスト式など)や、電着塗装、エアスプレー塗装、エアレス塗装、ナチュラルロールコーター塗装、リバースロールコーター塗装、カーテンフローコーター塗装、ローラーカーテン塗装、ダイコーター塗装、浸漬塗装、刷毛塗り、スクリーン印刷など、任意の方法を採用できる。
【0081】
焼付条件は、使用する塗料のタイプに応じて適宜決めればよいが、通常は120℃以上、特に140〜300℃で、焼付時間は1〜60分程度が一般的である。
【0082】
塗膜厚さは、塗膜に要求される性能や外観などに応じて適宜決めればよいが、通常は20〜500μm、特に30〜100μmが好ましい。
【0083】
本発明を実施するに当っては、上述した様な水分散型粉体塗料を被塗物に塗装し、120℃以上の温度で焼付けることにより塗膜形成が行われる。この焼付温度は極めて重要であり、120℃未満の低温で焼付を行うと、硬化反応(化学反応)が不十分となり、塗膜の付着性低下による剥離現象などの不具合が生じ易くなる。水分散性粉体塗料の塗膜性能を効果的に発揮させる上で好ましい焼付温度は120℃以上、更に好ましくは140℃以上である。
【0084】
なお本発明で使用する上記水分散型粉体塗料は、下塗り塗料、中塗り塗料あるいは上塗り塗料(例えば、着色塗料、着色ベース塗料/クリアー上塗り塗料などを包含する)として使用できる。
【0085】
下塗り塗料として使用する際には、上述した本発明で定める水分散型粉体塗料成分以外に、例えば、着色顔料、防食顔料、無機充填剤、可塑剤、上記以外の界面活性剤、消泡剤、或いは更に他の添加剤(防腐剤、溶媒など)等を特に制限なく配合することができる。下塗り塗料として使用する場合は、金属に対する付着性や防食性などの観点からエポキシ樹脂系硬化型塗料やポリエステル樹脂系硬化型塗料を使用することが好ましい。
【0086】
本発明で規定する上記水分散型粉体塗料を中塗り塗料として使用する際には、上述した水分散型粉体塗料成分以外に、例えば、着色顔料、無機充填剤、可塑剤、上記以外の界面活性剤、消泡剤、その他添加剤(防腐剤、溶媒等)などを配合することができる。中塗り塗料としては、上塗り塗膜又は下塗り塗膜に対する付着性、耐候性、仕上り性などの観点からポリエステル樹脂系硬化型塗料を使用することが好ましい。
【0087】
本発明で定める水分散型粉体塗料を上塗りタイプの着色塗料として使用する場合には、上述した水分散型粉体塗料成分以外に、例えば、着色顔料、無機充填剤、可塑剤、上記以外の界面活性剤、消泡剤、安定剤、その他の添加剤(艶消し剤、艶出し剤、防腐剤、擦り傷防止剤、溶媒等)などを配合することができる。上塗り塗料としては、耐候性、仕上り性などの観点からポリエステル樹脂系硬化型塗料やアクリル樹脂系硬化型塗料を使用することが好ましい。
【0088】
本発明で定める前記水分散型粉体塗料を上塗りタイプのクリアー塗料として使用する際には、上述した水分散型粉体塗料成分以外に、例えば、着色顔料(下地が完全に隠蔽しない程度)、無機充填剤、可塑剤、上記以外の界面活性剤、消泡剤、安定剤、その他の添加剤(艶消し剤、艶出し剤、防腐剤、擦り傷防止剤、溶媒等)などを配合することができる。
【0089】
次に、上述した下塗り塗料、中塗り塗料、あるいは上塗り塗料として使用する場合の具体的な塗膜形成法について、その具体例を以下に示す。
【0090】
▲1▼本発明で定める水分散型粉体塗料を下塗り塗料として用いる塗装例。
【0091】
この塗装例は、
1)金属などの素材表面に直接、前記水分散型粉体塗料を下塗り塗料として塗装し、
2)必要により焼付処理を行った後、
3)必要に応じて公知の硬化型塗料、もしくは前述した本発明で定める水分散型粉体塗料を中塗り塗料として塗装し、
4)必要により焼付処理した後、
5)公知の硬化型塗料、もしくは本発明で定める水分散型粉体塗料を上塗り塗料として塗装し、
6)最後に所定の焼付温度で上塗り塗膜を硬化させる(下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が未硬化の場合には同時に硬化させる)方法である。
【0092】
▲2▼本発明で定める水分散型粉体塗料を中塗り塗料として用いる塗装例。
【0093】
この塗装例は、
1)金属製などの素材表面に公知の硬化型塗料下塗り塗料として直接塗装し、
2)必要に応じて焼付けた後、
3)前記本発明で定める水分散型粉体塗料を中塗り塗料として塗装し、
4)必要に応じて焼付処理した後、
5)公知の硬化型塗料、もしくは前記本発明で定める水分散型粉体塗料を上塗り塗料として塗装し、
6)最後に所定温度で焼付処理を行って上塗り塗膜を硬化(下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が未硬化の場合は同時に硬化)させる方法である。
【0094】
▲3▼本発明で定める水分散型粉体塗料を上塗り塗料として用いる塗装例。
【0095】
この塗膜形成法は
1)金属などの素材表面に、公知の硬化型塗料を下塗り塗料として直接塗装し、
2)必要により焼付処理した後、
3)公知の硬化型塗料を中塗り塗料として塗装し、
4)必要に応じて焼付処理した後、
5)前述した本発明で定める水分散型粉体塗料を上塗り塗料として塗装し、
6)最後に所定の温度で焼付処理を行って上塗り塗膜を硬化(下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が未硬化の場合には同時に硬化)させる方法である。
【0096】
上記▲1▼〜▲3▼の各塗膜形成法を実施する際に使用する公知の硬化型塗料としては、例えば、アミノ硬化型樹脂塗料、イソシアネート硬化型樹脂塗料、酸エポキシ硬化型樹脂塗料、加水分解性シラン硬化型樹脂塗料、水酸基エポキシ基硬化型樹脂塗料、ヒドラジン硬化型樹脂塗料、酸化重合硬化型樹脂塗料、光(熱)ラジカル重合型樹脂塗料、光(熱)カチオン重合型樹脂塗料などの硬化型樹脂塗料が挙げられ、これらは各々単独で使用できる他、必要により任意の組合せで2種以上を併用することができる。
【0097】
これら公知の硬化型塗料には、必要に応じて従来から塗料に配合される添加剤、例えば、着色顔料、体質顔料、メタリック顔料、着色パール顔料、流動性調整剤、ハジキ防止剤、垂れ止め防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、艶消し剤、艶出し剤、防腐剤、硬化促進剤、硬化触媒、擦り傷防止剤、消泡剤、溶媒などを特に制限なしに含有させることができる。
【0098】
これら硬化性塗料の形態にも格別の制限はなく、粉体塗料、無溶剤型塗料、水性塗料、有機溶剤型塗料(非水分散型塗料も含む)等のいずれの形態であっても構わない。
【0099】
これら公知の硬化型塗料は、例えば静電塗装(回転式、エア霧化式、エアレス式、エアアシスト式など)や、エアスプレー塗装、エアレス塗装、刷毛塗り、ロール塗り、浸漬塗装など、任意の方法で塗装することができる。
【0100】
また、被塗物に水分散型粉体塗料を塗装して焼付乾燥する際には、1コート・1ベーク法を始めとして、被塗物に下塗り塗料を塗装し、焼付乾燥した後に水分散型塗料を塗り重ねてから焼付乾燥させる2コート・2ベーク法や、下塗り塗料を塗装し、加熱または焼付乾燥を行わずにウエット・オン・ウエットで水分散型粉体塗料を塗り重ねてから焼付乾燥する2コート・1ベーク法などを採用することができる。
【0101】
更に、トップコートをクリアー仕上げ等にする場合は、同様に3コート・3ベーク法や3コート・2ベーク法、3コート・1ベーク法等を採用することもできる。
【0102】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお下記実施例および比較例において、「部」および「%」とあるには、夫々「質量部」および「質量%」を表す。
塗料1製造例(ポリエステル系水分散型粉体塗料;実施例用)
a−1)ポリエステル樹脂系粗粉砕物の作製
原料を下記配合1に示す比率で使用し、高速ミキサーで均一に混合した後、溶融押出機を用いて熱溶融混練すると共に押出し、厚さ約1mmのシート状に押出して冷却固化させる。このシート状物を破砕機に通して粗粉砕した後、篩目が1.0mmのフィルターに通すことによりポリエステル樹脂系粗粉砕物を得る。
【0103】
配合1:
Figure 2004283763
(注1) 大日本インキ工業社製のポリエステル系樹脂
(注2) 住友バイエルウレタン社製のブロックイソシアネート樹脂
(注3) MIWON COMMERCIAL社製の脱ガス剤
(注4) 旭化成エポキシ社製のエポキシ樹脂
(注5) BASF社製の流動調整剤
(注6) 石原産業社製の酸化チタン。
【0104】
b−1)ポリエステル樹脂系水分散型粉体塗料1の作製
下記配合2に示す比率で用いた原料配合物10.0kgをディスパーによって混合し、この混合物を冷却機構内蔵型の湿式循環型ビーズミル[分散メディア;直径1.0mmのニッカトー社製ジルコニアボール「YTZ」を、ベッセル容積に対し80%(4.4kg)装入したもの]に連結した循環槽に投入し、アジテーターディスクを周速10m/sで回転させながら、循環流量2リットル/分で60分間循環させることによって微粉砕処理を行う。次いで、50μmフィルターに通して濾過することによりポリエステル樹脂系水分散型粉体塗料1を得る。得られた水分散型粉体塗料1の性状・特性を表1に示す。尚、該粉体塗料1中の粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは65℃であった。
【0105】
配合2:
Figure 2004283763
(注7) 上記配合1によって得たポリエステル樹脂系粗粉砕物(Tg;65℃)
(注8) 旭電化工業社製の粘度調整剤
(注9) エアープロダクツ社製の界面活性剤、HLB=4
(注10) ビックケミー社製の分散剤
【0106】
塗料2製造例(ポリエステル樹脂系水分散型粉体塗料;実施例用)
前記塗料1製造例において、配合2に代えて下記配合3を採用した以外は上記と同様にしてポリエステル樹脂系水分散型粉体塗料2を得た。
【0107】
配合3:
Figure 2004283763
(注11) 共栄社化学社製の防錆剤
(注7,8,9,10) 前記と同じ。
【0108】
塗料3製造例(エポキシ樹脂系水分散型粉体塗料;実施例用)
a−2)エポキシ樹脂系粗粉砕物の作製
原料を下記配合4に示す比率で使用した以外は、前記塗料1製造例のa−1)と同様にして、エポキシ樹脂系粗粉砕物を得る。
【0109】
配合4:
Figure 2004283763
(注12) 旭化成エポキシ社製のエポキシ樹脂
(注13) 大塚化学社製の硬化剤
(注3,4,6) 前記と同じ。
【0110】
b−2)エポキシ樹脂系水分散型粉体塗料3の作製
下記配合5に示す比率で用いた原料配合物を使用した以外は、前記塗料1製造例のb−1)と同様にしてエポキシ樹脂系水分散型粉体塗料3を作製し、得られた水分散型粉体塗料3の性状・特性を表1に示した。尚、得られた塗料3中に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは62℃であった。
【0111】
配合5:
Figure 2004283763
(注14) 前記配合4によって得たエポキシ樹脂系粗粉砕物(Tg;62℃)
(注8,9,10) 前記と同じ。
【0112】
塗料4製造例(エポキシ樹脂系水分散型粉体塗料;実施例用)
前記塗料3製造例において、配合5に代えて下記配合6を採用した以外は同様にしてエポキシ樹脂系水分散型粉体塗料4を製造した。
【0113】
配合:6
Figure 2004283763
(注8,9,10,11,14) 前記と同じ。
【0114】
塗料5製造例(アクリル樹脂系水分散型粉体塗料;実施例用)
a−3)アクリル樹脂系粗粉砕物の作製
原料を下記配合7に示す比率で使用した以外は、前記塗料1製造例のa−1)と同様にして、アクリル樹脂系粗粉砕物を得る。
【0115】
配合7:
Figure 2004283763
(注15) 三井化学社製のアクリル系樹脂
(注16) 宇部興産社製の硬化剤
(注3,5,6) 前記と同じ。
【0116】
b−3)アクリル樹脂系水分散型粉体塗料5の作製
下記配合8に示す比率の原料配合物を採用した以外は、前記塗料1製造例と同様の方法で、アクリル樹脂系水分散型粉体塗料5を得る。得られた水分散型粉体塗料5の性状、特性を表1に示す。該塗料中に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは60℃であった。
【0117】
配合8:
Figure 2004283763
(注17) 前記配合7によって得たアクリル樹脂系粗粉砕物(Tg;60℃)
(注8,9,10) 前記と同じ。
【0118】
塗料6製造例(アクリル樹脂系水分散型粉体塗料;実施例用)
上記b−3)に示したアクリル樹脂系水分散型粉体塗料5の作製における配合8で用いた「Disperbyk−190」に代えて「フローレンTG−750W」(共栄化学社製の分散剤)を使用した以外は、前記塗料5製造例と全く同様にして、アクリル樹脂系水分散型塗料6を作製した。該塗料6に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは60℃であった。
【0119】
塗料7製造例(アクリル樹脂系水分散型粉体塗料;実施例用)
表1に記載した配合を採用し、前記塗料1製造例と同様の方法でアクリル樹脂系水分散型粉体塗料7を製造した。該塗料7に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは60℃であった。
【0120】
塗料8製造例(アクリル樹脂系水分散型粉体塗料;実施例用)
前記塗料5製造例において、「酸化チタンCR97」を使用しなかった以外は同様にしてアクリル樹脂系水分散型粉体塗料8を製造した。該塗料8に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは58℃であった。
【0121】
塗料9製造例(ポリエステル樹脂系水分散型粉体塗料;比較例用)
表1に記載の配合を採用し、以下は前記塗料1製造例と同様にしてポリエステル樹脂系水分散型粉体塗料9を製造した。該塗料9に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは65℃であった。
【0122】
塗料10製造例(エポキシ樹脂系水分散型粉体塗料;比較例用)
表1に記載の配合を採用し、以下は前記塗料1製造例と同様にしてエポキシ樹脂系水分散型粉体塗料10を製造した。該塗料10に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは62℃であった。
【0123】
塗料11製造例(アクリル樹脂系系水分散型粉体塗料;比較例用)
表1に記載の配合を採用し、以下は前記塗料1製造例と同様にしてアクリル樹脂系水分散型粉体塗料11を製造した。該塗料11に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは60℃であった。
【0124】
得られた各水分散型粉体塗料1〜11の性状、特性を表1に示す。
【0125】
次に、上記水分散型粉体塗料1〜11と組合せて使用するその他の塗料について示す。
【0126】
塗料イ:「レタンPG−80メタリック」(関西ペイント社製のイソシアネ−ト硬化型アクリル樹脂塗料で、2液硬化型有機溶剤系の着色上塗り塗料として使用する。
【0127】
塗料ロ:「エレクロンGT−10グレー」(関西ペイント社製のブロックイソシアネート硬化型エポキシ樹脂カチオン電着塗料で、下塗り塗料として使用する。
【0128】
塗料ハ:固形分50%のアクリル樹脂中和水溶液(1※)140部と、「サイメル370」(三井サイテック社製の88%水溶性メラミン樹脂溶液)34部を混合し、次いで「アルミペースト891K」(東洋アルミニウム社製)25部を加えて分散し、脱イオン水で固形分35%に調整することにより着色ベース塗料としたもの。
【0129】
(1※)メタクリル酸メチル30部、アクリル酸エチル23部、アクリル酸ブチル30部、メタクリル酸ヒドロキシエチル12部、アクリル酸5部の共重合体からなり、酸価;40、水酸基価;52、数平均分子量;約10000のアクリル樹脂溶液(固形分60%)を作製し、この溶液にジメチルアミノエタノールを加えて中和し、次いでイソプロピルアルコールで固形分50%に希釈したもの。
【0130】
塗料ニ:固形分50%のアクリル樹脂中和溶液(上記1※と同じ)140部と「サイメル370」(三井サイテック社製の88%水溶性メラミン樹脂溶液)34部を混合し、脱イオン水で固形分35%に調整したもので、上塗りクリアー塗料として使用する。
【0131】
塗料ホ:固形分50%のアクリル樹脂中和溶液(上記1※と同じ)140部と「サイメル370」(三井サイテック社製の88%水溶性メラミン樹脂溶液)34部を混合し、これにチタン白55部とカーボンブラック2部を加えて分散した後、脱イオン水で固形分35%に調整したもので、着色上塗り塗料として使用する。
【0132】
塗料ヘ:「ネオアミラック#6000 ホワイト」(関西ペイント社製の有機溶剤系、アクリルメラミン硬化系の塗料で、着色上塗り塗料として使用する。
【0133】
塗料ト:ポリエステル樹脂(ネオペンチルグリコ−ル;756部、トリメチロ−ルプロパン;109部、ヘキサヒドロフタル酸;370部、アジピン酸;292部およびイソフタル酸;398部を反応容器に入れ、220℃で6時間反応させた後、無水トリメリット酸;45部添加し、170℃で30分反応させて得られるポリエステ樹脂で、数平均分子量;約8000、酸価;20mgKOH/g、水酸基価;95mgKOH/g)1000部(固形換算、以下同じ)、ジメチルアミノエタノ−ル;40部、硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネ−トの3量体のアダクト物をメチルエチルケトオキシムでブロックしたもの)410部、チタン白顔料(テイカ社製の「テイカJR806」)1400部及びカーボンブラック(三菱化学社製の「三菱カーボンブラックM−100」)2部を、脱イオン水1800部と共に混合分散したもので、中塗り塗料として使用する。
【0134】
実施例1
素材A(燐酸亜鉛処理鋼板)に、下塗り塗料として前記で得た「塗料4」を乾燥膜厚が40μmとなる様にスプレー塗装し、次いで180℃で30分間焼付処理した後、前記「塗料イ」を着色上塗り塗料として乾燥膜厚が80μmとなるようにスプレー塗装し、80℃で30分間加熱して硬化させた。
【0135】
得られる塗膜は、下塗り塗膜と着色上塗り塗膜との2層複層塗膜であり、塗装方式は「2コート2ベーク、塗装膜2、焼付2回」(2C2Bと略記する)である。本例は、エポキシ樹脂系水分散型粉体塗料を下塗りとして適用した本発明の実施例である。
【0136】
実施例2〜24
前記で得た「塗料1〜11」および「塗料イ〜ト」を使用し、下記表2〜4に示す塗料、塗装法、膜厚、乾燥、焼付条件の組合せで実施例2〜24の塗膜を形成した。
【0137】
なお、塗装法としてカチオン電着塗装(ED)を採用する場合は、電着浴の浴温を15〜35℃、負荷電圧を100〜400Vとし、膜厚が40μmになる様に被塗物と電極との間で通電してカチオン電着塗装を行った。電着塗装後、余分に付着した電着塗料を工業用水で水洗し、塗装物表面に電着塗料が残らない様にした。
【0138】
実施例1〜24で形成された各塗膜の構成と塗膜性能を、表1〜4にまとめて示す。尚、表2〜4において、「2C1B」は2コート1ベーク、「3C2B」は3コート2ベーク、「3C3B」は3コート3ベーク、「4C2B」は4コート2ベーク、「4C4B」は4コート4ベークをそれぞれ意味し、また、素材Aは「燐酸亜鉛処理鋼板」、素材Bは「溶融亜鉛メッキ鋼板」、素材Cは「燐酸処理アルミニウム板」を表す。塗装方法として示した「SP」はスプレー塗装、「ED」は電着塗装を意味する。また、平均粒径(D50)、粒度分布、Tg測定、塗料粘度の測定法、塗装作業性、塗膜性能の評価法は下記の通りとした。
【0139】
[平均粒径(D50)および粒度分布]
各水分散型粉体塗料を固形分濃度が5質量%以下となるまで水で希釈し、この希釈液を日本精機製作所社製の超音波分散機「超音波ホモジナイザー」で処理した後、日機装社製の粒度分布測定装置「マイクロトラック MT3300EL」を用いて粒度分布を測定し、その粒度分布曲線から累積50%粒径を平均粒径(D50)として求める。
【0140】
[Tg測定]
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量分析装置「DSC6200」を用いて、粉体粒子のガラス転移温度(Tg)を測定。
【0141】
[塗料粘度]
「JIS K 5600−2−3」に記載されているコーン・プレート粘度計法に従い、東機産業社製の粘度計「RE550H」を用いて水分散型粉体塗料の粘度を求める。塗料温度と測定温度は何れも23℃とし、ずり速度1(s−1)で測定した粘度を、供試塗料の粘度値とする。
【0142】
[塗装作業性]
アネスト岩田社製の重力式スプレーガン「W−100」(ノズル口径;1.3mm)を用いて、各水分散型粉体塗料を塗装したときの、ガンノズルからの塗料の噴出状態を観察し、塗装作業性に支障がないかどうかを下記の5段階で評価する。吹付け空気圧力は0.2MPaとする。
5:塗料の流動性が良好で、ガンノズルから塗料が均一に噴射する
4:塗料の流動性は良好であるが、噴出ムラを生じることがある
3:塗料の流動性がやや悪く、常時噴出ムラが観察される
2:塗料の流動性が悪くてガンノズルから塗料が噴出し難く、噴出が途切れる場合がある
1:塗料の流動性が著しく悪くてガンノズルから塗料が噴出せず、塗装できない。
【0143】
[タレ性]
被塗物を垂直に立て掛け、各水分散型粉体塗料の温度と塗装環境温度を20℃に設定しから、「JIS K 5600−1−1 3.3.7吹付け塗り」に記載されている塗装法に準拠して連続3回重ねてスプレー塗装し、20℃で10分間のセッティングタイムを取って焼付乾燥を行い、タレの状態を下記の基準で5段階評価する。尚、スプレーガンおよび吹付け空気圧力は、上記塗装作業性評価で採用したのと同じとする。
5:塗装時のタレが認められず、焼付後の塗膜にもタレ跡が全く認められない
4:塗装時のタレは認められないが、焼付後の塗膜にタレ跡が僅かに残る
3:塗装時にタレが僅かに認められ、焼付後の塗膜にもタレ跡が僅かに残る
2:塗装時のタレが著しく、焼付後の塗膜にもタレ跡が著しく残る
1:塗装時のタレが著しくて焼付後の塗膜が非常に薄くなり、素地の透けが著しい。
【0144】
[ワキ性]
上記タレ性評価と同じ方法で塗装を行い、得られた塗膜のワキの状態を下記の基準で5段階評価する。尚、スプレーガンおよび吹付け空気圧力は、上記塗装作業性評価で採用したのと同じとする。
5:ワキが全く認められない
4:ワキの部分が全塗膜面積の1/4未満
3:ワキを生じた部分が全塗膜面積の1/4以上、1/2未満
2:ワキを生じた部分が全塗膜面積の1/2以上、3/4未満
1:ワキを生じた部分が全塗膜面積の3/4以上。
【0145】
[平滑性]
被塗物を垂直に立て掛け、各水分散型粉体塗料の温度と塗装環境温度を20℃に設定してから、「JIS K 5600−1−1 3.3.7吹付け塗り」に記載されている塗装法に準拠して、乾燥膜厚が50μmとなる様にスプレー塗装し、焼付乾燥することによって得られる塗膜の平滑性を、下記の基準で5段階評価する。
5:オレンジピール等が認められず、塗膜が十分に平滑である
4:オレンジピールは認められないが、塗膜に微細な凹凸が認められる
3:オレンジピールは認められないが、塗膜に小さな凹凸が認められる
2:明らかなオレンジピールが観察されるが、その波長は小さい
1:明らかなオレンジピールが観察され、その波長が大きい。
【0146】
[耐水性]
焼付処理を終えた塗装板を40℃の水中に240時間浸漬し、浸漬後の塗膜外観を下記の基準で5段階評価する。
5:塗膜状態に変化が認められない
4:塗膜に僅かな艶引けが認められるが、フクレは観察されない
3:塗膜に僅かな艶引けが認められ、フクレも僅かに観察される
2:塗膜に著しい艶引けとフクレが観察される
1:塗膜の著しい剥離が認められる。
【0147】
【表1】
Figure 2004283763
【0148】
【表2】
Figure 2004283763
【0149】
【表3】
Figure 2004283763
【0150】
【表4】
Figure 2004283763
【0151】
【発明の効果】
本発明は、以上の様に構成されており、以下に示す多くに利点を享受できる。
【0152】
(1)本発明で使用するスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物は、飽和炭化水素結合で構成されているので、薬品、熱、光などの外的因子に対して主鎖が切断される恐れがなく、耐水性、耐候性などの性能に優れている。
【0153】
(2)マレイン酸に由来するカルボキシル基は極性が高いので、プラスチック類、金属類、無機材類などの被塗物に対する付着性に優れている。また、本発明の塗膜形成法において、例えば、本発明で規定する塗料以外の塗料を下塗り塗料として塗装・焼付を行い、次いで本発明で定める塗料を中塗りもしくは上塗り塗料として塗装し、次いで焼付を行って複層塗膜を形成させた場合には、マレイン酸に由来するカルボキシル基により、焼付下塗り塗膜や焼付中塗り塗膜に対する付着性が向上する。
【0154】
(3)アルキレンオキサイド付加物は、スチレン・マレイン酸共重合体主鎖から離れた親水性の側鎖として分子中に存在するので、主鎖との立体障害などが少なく親水基としての機能が十分に発揮される。そのため、例えば本発明で定める塗料を被塗物に塗装した直後の塗膜は、塗料粒子の表面が該親水基によって保護され焼付工程でも粒子表面で急激な水の蒸発が起こらないので、ワキやピンホールなどの塗膜欠陥を生じ難い。
【0155】
また本発明で定める水分散型粉体塗料同士、もしくは他の水性塗料等と組合せて重ね塗りと同時焼付を行った場合でも、本発明に係る塗膜成分の粒子表面から急激な水の蒸発が起こらない。よって、例えば本発明で定める塗膜を下塗り塗膜として使用した場合にも、中塗り塗膜や上塗り塗膜に対し水の揮発による悪影響を及ぼさないので、総合塗膜としてワキやピンホールなどの欠陥のない塗膜が得られる。
【0156】
(4)また、本発明で使用するスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物は、疎水性と親水性とのバランスがよいので、安定して優れた塗膜性能を発揮する。

Claims (7)

  1. 塗料用樹脂を含む粉体がスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に水に分散された水分散型粉体塗料を被塗物に塗装し、120℃以上の温度で焼付けることを特徴とする塗膜形成法。
  2. 前記水分散型粉体塗料を下塗り塗料として使用する請求項1に記載の塗膜形成法。
  3. 前記水分散型粉体塗料を中塗り塗料として使用する請求項1または2に記載の塗膜形成法。
  4. 前記水分散型粉体塗料を上塗り塗料として使用する請求項1〜3のいずれかに記載の塗膜形成法。
  5. 前記水分散型粉体塗料が、クリアー塗料または着色塗料である請求項1〜4のいずれかに記載の塗膜形成法。
  6. 前記被塗物が、プラスチック類、金属類、無機材類から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の塗膜形成法。
  7. 前記被塗物が、車両、家電、建築、容器、機械、船舶、輸送管、缶又は家具の用途に使用される被塗物である請求項1〜6のいずれか記載の塗膜形成法。
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