JP2004224833A - 水分散型粉体塗料組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来技術に開示された水分散型粉体塗料に見られる欠点を解消し、塗料としての貯蔵安定性や塗装作業性が良好で、タレやワキ等の欠陥のない平滑で優れた塗膜外観を与える水分散型粉体塗料とその製法を提供すること。
【解決手段】塗料用樹脂を含む粉体が水に分散された水分散型の粉体塗料であって、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤(中でも、HLBが4〜13の範囲の非イオン系界面活性剤)の共存下に、塗料用樹脂粉体を水に分散せしめた水分散型粉体塗料組成物を開示する。
【解決手段】塗料用樹脂を含む粉体が水に分散された水分散型の粉体塗料であって、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤(中でも、HLBが4〜13の範囲の非イオン系界面活性剤)の共存下に、塗料用樹脂粉体を水に分散せしめた水分散型粉体塗料組成物を開示する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水分散型粉体塗料組成物に関し、特に、塗装作業性や貯蔵安定性に優れ、且つ平滑でタレ(特に厚肉塗装してから乾燥するまでの間に、塗料が下方にタレ落ちる現象)やワキ(加熱乾燥時に、主として分散媒の急激な蒸発により塗膜が発泡し、或いはこれに起因してピンホールや小孔が発生する現象)のない優れた外観の塗膜を与える水分散タイプの粉体塗料組成物とその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塗料としては、従来より有機溶剤を用いた塗料が汎用されてきた。ところが有機溶剤を使用した塗料は、環境問題や火災発生の原因になり得ることから、有機溶剤を使用しない水性塗料や粉体塗料が注目されている。
【0003】
しかし、水性塗料は十分な塗膜性能が得られ難く、また廃水処理などの問題を有している。これに対し粉体塗料は塗膜性能に優れており、且つオーバースプレーした塗料は回収装置を利用して循環使用できるため塗料ロスが殆どなく、経済性にも極めて有用なものである。しかし、粉体塗装のために高価な塗装設備を必要とすることや、仕上り塗膜が粉体塗料特有のゆず肌となり、薄膜塗装が難しいという問題も指摘される。更に粉体塗料は、製造上多品種少量生産には不向きであり、また、異色の粉末や異物が混入するとそれらの除去が殆ど不可能であり、汎用化を妨げる大きな原因になっている。
【0004】
こうした粉体塗料の難点を克服する他のタイプの塗料として、粉体塗料成分を水に分散させた水分散型の粉体塗料が考えられており、例えば特許文献1〜3などが提案されている。これら水分散型粉体塗料の多くは、熱硬化性樹脂、またはこれと顔料成分を溶融温度以上、硬化温度未満の温度で溶融混合してから粗粉砕し、更に乾式で微粉砕してから分散剤などを用いて水に分散させる方法、或いは粗粉砕物を分散剤などと共に水に分散させてから湿式で微粉砕する方法、等によって製造される旨記載されている。
【0005】
前掲の公報を含めて、先行技術に開示されている水分散型粉体塗料の殆どは、貯蔵安定性や塗膜の均一性などを考慮して水分散型粉体塗料を構成する樹脂成分の粒径は小さいことが好ましいとされており、具体的には、平均粒径(D50)で10μm以下のものを推奨している。
【0006】
また水分散型の粉体塗料は、本来は水に不溶性の塗料樹脂粉末を水に分散させたものであるから貯蔵安定性が悪く、保管時に該粉末成分が沈降分離し易い。しかも加熱乾燥時にワキを起こし易く、平滑な塗膜が得られ難い。そのため、貯蔵安定性や塗膜性能を高めるための分散剤や界面活性剤などについても多くの研究がなされている。
【0007】
例えば特許文献4には、分散剤としてポリカルボン酸の金属塩やアミン塩、ポリオキシエチレンのアルキルエーテルやアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等を適量含有させることで、貯蔵安定性や塗膜性能を高める技術が開示されており、また特許文献5には、HLBが10以下のノニオン界面活性剤を流動性助剤として適量含有させることで、ワキやひび割れを抑える技術が開示されている。また前記特許文献3には、塗料粉体を構成する樹脂の種類や架橋剤などを特定すると共に、非イオン性増粘剤と、消泡剤や分散剤、保水剤などとを含む水性成分を使用することで、特に自動車車体用として優れた性能の透明被覆を与える水分散性ラッカーが開示されている。
【0008】
ところが、特許文献4に記載された水分散性塗料の場合、記載の界面活性剤を使用すると、粉体粒子を微細化するにつれて塗料の流動性が悪くなるため塗装作業性が低下し、均一な塗膜が得られ難くなるだけでなく、分散工程で発熱し易くなり、粉体粒子同士が融着し易くなる。そこで、流動性を高めるために界面活性剤の量を増大させると、タレやワキが生じ易くなると共に塗膜の耐水性や光沢が低下する。或いは、流動性を確保するために塗料の固形分濃度を下げると、タレや素地の透けを生じ易くなる。
【0009】
また特許文献5に記載された水分散型塗料の場合、選択された界面活性剤を使用することで塗膜の耐水性は確保されるが、粉体粒子を微細化するにつれて塗料の流動性が悪くなり、界面活性剤を選択するだけでは満足のいく流動性を確保することができない。また、流動性を高めるべく界面活性剤量を増大し、或いは塗料の固形分濃度を下げると、前記と同様にワキやタレが生じ易くなる。更に、低HLBのノニオン系界面活性剤を多量添加すると、粉体粒子同士が凝着するという重大な欠陥を招く。
【0010】
更に特許文献3に開示されている透明ラッカー水性分散体は、特定の塗料粉体を非イオン性増粘剤および界面活性剤や分散剤などの共存下で湿式分散することにより製造されるが、微粒化した塗料粉体の凝集が起こり易くて貯蔵安定性が悪く、更には塗膜の耐水性が劣るという欠点も指摘される。
【0011】
【特許文献1】
特開平7−196953号公報
【特許文献2】
特開平11−343432号公報
【特許文献3】
特表平11−503478号公報
【特許文献4】
特開昭58−191767号公報
【特許文献5】
特開昭58−1757号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、水分散型粉体塗料に見られる前掲の欠点を解消し、塗料としての貯蔵安定性や塗装作業性を改善すると共に、平滑性や光沢に優れ、且つタレやワキ等のない美麗な塗膜外観を与える水分散型粉体塗料組成物を提供すると共に、その様な水分散型粉体塗料組成物を効率よく製造することのできる方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明にかかる水分散型粉体塗料組成物は、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に、塗料用樹脂を含む粉体が水に分散されたものである。
【0014】
本発明で使用する上記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共付加物が好ましい。また、上記界面活性剤として好ましいのは非イオン系界面活性剤で、好ましいHLBは4〜13、より好ましくは4〜9の範囲である。該界面活性剤のより好ましい具体例は、アルキンジオールのアルキレンオキサイド付加物、更に具体的には、テトラメチルデシンジオールのエチレンオキサイド付加物であり、重量平均分子量が300〜3000の範囲、より好ましくは300〜1000の範囲のものが好適である。
【0015】
上記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物の好ましい含有量は、塗料用樹脂粉体に対し固形分換算で0.1〜1質量%であり、上記界面活性剤の好ましい含有量は、塗料用樹脂粉体に対し固形分換算で0.1〜1質量%である。
【0016】
この他、塗料用樹脂を含む粉体の好ましい粒度構成は、平均粒径で1〜30μm、より好ましくは5〜15μmの範囲で、該粉体のうち、粒径が50μm以上である粗粒物の占める比率が10質量%以下で、且つ0.5μm以下である微粒子の占める比率は10質量%以下であることが望ましい。
【0017】
本発明に係る水分散型粉体塗料組成物は、固形分濃度が30〜60質量%の範囲のものが好ましく、また好ましい粘度は、23℃における水分散体として100〜5000mPa・sの範囲である。
【0018】
また上記粉体は、ガラス転移温度が30〜80℃の範囲のものが好ましく、好ましい樹脂の種類としては、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。そして本発明の塗料組成物は、顔料なしのクリアー塗料として有効に使用できるが、需要者の要求に応じて任意の顔料を配合すれば、着色塗料としても有効に活用できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは前述したような課題の下で、貯蔵安定性や塗装作業性が良好で且つタレやワキのない優れた外観・性状の塗膜を与える水分散型粉体塗料組成物の開発を期して研究を進めてきた。その結果、上記の様にスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に、塗料用樹脂を含む粉体を水に分散させたものは、従来の水分散型粉体塗料にみられる前掲の欠点が解消され、優れた品質の水分散型粉体塗料組成物となり得ることを知り、上記本発明に想到したものである。
【0020】
本発明で使用する上記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物とは、スチレンと(無水)マレイン酸を共重合することによって得られる共重合体にアルキレンオキサイドが付加した化合物であり、例えば下記一般式で示される方法によって得られる共重合体である。
【0021】
【化1】
【0022】
上記一般式において、rは1〜5、sは5〜20、tは1〜50の整数を表わし、Rは水素、炭素数1〜20のアルキルアルコール残基、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキルフェノール残基、炭素数8〜40の脂肪酸残基、炭素数8〜40の脂肪酸アミン残基、炭素数8〜40の脂肪酸アミド残基、グリセリンまたはグリセリンと脂肪酸のエステル残基、ソルビトールまたはソルビトールと脂肪酸のエステル残基、炭素数8〜40の脂肪酸アルカノールアミド残基等から選択される少なくとも1種の置換基を表わし、−AO−は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合鎖(ブロック、ランダムまたは交互共重合物を含む)を表わす。
【0023】
この付加物は、主鎖を構成するスチレン・マレイン酸骨格と、該骨格中に含まれるマレイン酸単位における未中和のカルボキシル基、および一方のカルボキシル基に付加したアルキレンオキサイド鎖、特に好ましくはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドが共付加した側鎖部、の存在により、後述する界面活性剤との共存とも相俟って、塗料用樹脂粉体に対して卓越した分散性を与え、水分散型塗料として卓越した貯蔵安定性と塗装作業性を保障しつつ、タレやワキがなく且つ耐水性や塗膜の平滑性においても優れた性能を示す高品質の塗膜を与える。
【0024】
これらの諸機能をより有効に発揮させるには、上記付加物として、重量平均分子量が2,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000の範囲で、スチレン単位とマレイン酸単位のモル比率が前者1に対して後者0.2〜1、プロピレンオキサイドの共付加モル比がエチレンオキサイドに対して0.1〜0.5の範囲のものである。
【0025】
重量平均分子量が小さ過ぎる場合は、粉体粒子に対する吸着比率(カルボキシル基比率)やアルキレンオキサイド鎖が小さいため、微細化された粉体粒子が凝集し易くなって貯蔵安定性が悪くなる傾向があり、逆に重量平均分子量が大き過ぎると、アルキレンオキサイド鎖も大きくなって貯蔵安定性は向上するが、耐水性が悪くなる傾向が生じてくる。
【0026】
また、アルキレンオキサイド鎖に含まれるエチレンオキサイドの比率が多くなり過ぎると、親水性が高くなって耐水性が低下傾向を示し、またプロピレンオキサイドの比率が多くなり過ぎると、疎水性が強くなり過ぎて水への溶解性が低下し、分散剤としての機能が有効に発揮され難くなる。また、主鎖部分を構成するスチレンの比率が多くなると、塗料の流動性は良くなって塗装作業性は向上するが、粉体粒子に対する吸着比率(カルボキシル基比率)やアルキレンオキサイド鎖が小さくなり、塗料粉体粒子が凝集し易くなって貯蔵安定性が低下してくる。またマレイン酸の比率が多くなり過ぎると、アルキレンオキサイド鎖も多くなって貯蔵安定性は向上するものの、耐水性不足になる傾向が生じてくる。
【0027】
これら好ましい要件を満たすスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物は、例えばビックケミー社製の商品名「Disperbyk−190」、或いは共栄社化学社製の商品名「フローレンTG−750W」などとして入手できる。
【0028】
また上記アルキレンオキサイド付加物と併用される界面活性剤の種類は特に制限されず、一般の水性塗料用として使用可能な様々の界面活性剤、例えばアニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系の界面活性剤を使用できる。
【0029】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、脂肪酸トリエタノールアミン塩、(直鎖)アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸(メチル)エステルアルカリ塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステルアルカリ塩、モノアルキルリン酸塩、ラウリル硫酸塩、アシル−N−メチルタウレート、カルボン酸のナトリウム塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩などが例示され、上記塩類としてはナトリウム塩やカリウム塩が好ましく使用される。
【0030】
カチオン系界面活性剤としては、例えばアンモニウムクロライド、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、トリアルキルアンモニウムクロライド、塩化セチルトリメチルアンモニウム等が、また両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤、リン酸エステル塩型両性界面活性剤などが例示される。
【0031】
非イオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルポリグルコシド、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどが例示される。
【0032】
上記の界面活性剤は、各々単独で使用し得る他、必要により任意の2種以上を適宜選択して併用することも可能である。しかし、多くの界面活性剤の中でも本発明で特に好ましく使用されるのは非イオン系の界面活性剤であり、中でもHLBが4〜13、より好ましくは4〜9の範囲のものである。尚、非イオン系界面活性剤のHLBは、「HLB=E/5(Eはポリエチレンオキサイド部分の質量%を表わす)」として求める。
【0033】
非イオン系界面活性剤の中でも特に好ましいのは、アルキンジオールのアルキレンオキサイド付加物、より具体的には、下記一般式で示されるテトラメチルデシンジオールのエチレンオキサイド付加物で、重量平均分子量が300〜3000、より好ましくは300〜1000の範囲のものである。
【0034】
【化2】
【0035】
(式中、m,nは0〜6の整数で、少なくとも1方は1以上であり、m+nは1〜12を表わす)
これらの要件を満たすアルキンジオールのアルキレンオキサイド付加物は、例えばエアープロダクツ社製の商品名「サーフィノール」シリーズ等として入手できる。
【0036】
本発明では、前述したスチレン・無水マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と上記界面活性剤を併用することが極めて重要であり、それら一方のみを使用したのでは、後記実施例の項でも具体的に示す通り、本発明で意図する様な総合的に優れた塗料性能を得ることができない。そして、両者の併用による優れた作用効果をより効果的に発揮させるには、前記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤を、塗料用樹脂粉体に対し固形分換算で各々0.1〜1質量%の範囲で添加することが望ましく、また上記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の添加比率を質量比で前者1に対して0.1〜5、より好ましくは0.5〜2の範囲で併用することが望ましい。
【0037】
本発明の水分散型粉体塗料組成物は、上述したスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に、好ましくは熱硬化性樹脂からなる塗料用樹脂を含む粉体が水に分散されたもので、該粉体は平均粒径(D50)が1〜30μm、より好ましくは5〜15μmであり、しかも、50μm以上の粗粒物の占める比率が10質量%以下(より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは実質的にゼロ%)で、且つ0.5μm以下の微粒子の占める比率が10質量%以下(より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは実質的にゼロ%)であることが望ましい。
【0038】
ちなみに平均粒径(D50)が1μm未満では、粒子が微細に過ぎるため構造粘性が高くなって流動性が低下し、スプレーガン等を用いた塗装作業性が低下したり、仕上り外観(塗膜の平滑性や均一性)などが低下する傾向がみられるからである。そこで、塗料の固形分濃度を下げることによって流動性を確保しようとすると、固形分濃度の低下に伴って、所謂“塗膜のやせ”や“透け”が問題になってくる。また本発明では、前述した様にスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の併用により流動性の向上を図っているが、それらを必要以上に添加しなければならなくなり、耐水性などの塗膜特性に悪影響を及ぼす恐れも出てくる。
【0039】
他方、平均粒径(D50)が30μmを超えて過度に粗大になると、保管時などに塗料中の粉体成分が沈降し易く、塗料の取扱い性が低下するばかりでなく、塗膜のきめが荒くなって平滑な塗膜外観が得られ難くなる。
【0040】
また該粉体の粒度分布は、塗膜の平滑性や、水分散型塗料を調製する際の濾過性、更には塗装作業性などに影響を及ぼし、固形成分(粉体)中に占める50μm以上の粒子の比率が10質量%以下で且つ0.5μm以下の粒子の占める比率が10質量%以下であることが望ましく、その結果として、0.5μm以上50μm以下の好適粒径範囲に納まる粒子の全体中に占める比率は80質量%以上であることが望ましい。
【0041】
ちなみに平均粒径(D50)が1〜30μmの範囲内であっても、粒度分布が広い水分散型粉体塗料では、凹凸間隔が短くて凹凸高低差の大きい塗膜となり、均一な仕上り塗膜が得られ難くなる。更に50μm以上の粗粒物が10質量%を超えると、塗料製造の濾過工程でフィルターが目詰りを起こし易くなり、また、0.5μm以下の微粒物が10質量%を超えると塗料の流動性が低下し、塗装作業性が悪くなる傾向が見られる。
【0042】
しかし、平均粒径(D50)が1μm以上30μm以下で且つ50μm以上の粒子の占める比率が10質量%以下、0.5μm以下の粒子の占める比率が10質量%以下の水分散型粉体塗料では、塗料粘度が過度に高くなって塗装作業性や取扱い性が劣化するといった問題を生じることなく、しかも形成される塗膜は均一で一段と平滑性に優れた仕上り外観を有するものとなる。更に、塗料製造時の濾過工程でフィルターの目詰りを起こすことなく夾雑物のみを容易に除去することができる。
【0043】
本発明にかかる上記塗料組成物の固形分濃度も、塗装作業性や塗膜特性に影響を及ぼす要因であり、好ましくは30〜60質量%の範囲内に設定することが望ましい。ちなみに、固形分濃度が30質量%未満の低濃度物では、濃度不足のため塗装時に前述した“塗膜のやせ”や“透け”が生じ易くなる。逆に60質量%を超えて過度に高濃度になると、塗料粘度が高くなって流動性が低下し、塗装時のレベリング性が悪くなり、仕上り塗膜の平滑性などに悪影響が生じてくる。この様なことから、水分散型粉体塗料の固形分濃度は30質量%以上、60質量%以下に調整するのがよい。
【0044】
本発明で使用する塗料用樹脂の種類には特に制限がなく、水分散型粉体塗料用として用いられる公知の樹脂、例えばエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキド系樹脂、アミノ・アルキド樹脂、フェノール・アルキド樹脂、ポリブタジエン系樹脂、シリコン系樹脂、イソシアネート系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂などを使用することができ、これらは各々単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜複合して使用することができる。これらの樹脂の中でも特に好ましいのは、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂である。
【0045】
なお必要によっては、上記塗料用樹脂に加えて、通常の粉体塗料に配合されることのある硬化剤、硬化促進剤、流動調整剤、発泡防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防錆剤などを配合し、塗膜特性を更に改善することも勿論可能である。
【0046】
上記塗料用樹脂の中でも特に好ましいのは、ガラス転移温度が30℃以上、より好ましくは40℃以上で、80℃以下、より好ましくは70℃以下の樹脂である。ちなみに、樹脂のガラス転移温度が30℃未満の場合は、貯蔵時や輸送時に塗料中の粉体粒子がブロッキングを起こす恐れが生じるだけでなく、機械粉砕時に融着を起こして微粒化し難くなることがあり、逆にガラス転移温度が高すぎる場合は、焼付時の流動性が悪化して仕上り塗膜の平滑性が低下傾向を示す様になる。
【0047】
本発明の塗料は、前記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤、および塗料用樹脂粉末を必須成分として含有する水性分散体であるが、スプレー塗装時に塗料のタレやワキ、透け等を生じることなく、レベリング性に優れ、より平滑性の高い塗膜を形成するには、該水分散型粉体塗料組成物の23℃での粘度を100mPa・s以上、より好ましくは200mPa・s以上で、5000mPa・s以下、より好ましくは4000mPa・s以下に調整することが望ましい。
【0048】
ちなみに塗料粘度が低過ぎる場合は、塗装時のレベリング性は良好であるが、スプレー塗装時にタレを起こしたり加熱乾燥時にワキを生じ易くなって均質な塗膜が得られ難くなり、逆に塗料粘度が高過ぎると、タレ性は良好になるが、塗装作業性や塗装時のレベリング性が悪化し平滑な塗膜が得られ難くなる。
【0049】
塗膜の膜厚は、用途や需要者の要望に応じて任意に選定するのがよいが、一般的なのは5〜200μm、より一般的には30〜100μmの範囲であり、厚塗りを行う場合は2回塗りや3階塗りなど多層塗りを採用することも勿論有効である。
【0050】
尚、本発明の水分散型塗料組成物においては、上記成分に加えて、例えばアクリル酸系共重合体(アクリル酸とアクリルエステルの共重合体)、セルロース系(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、プロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、ポリウレタン系(ポリエーテル変性ウレタン化合物など)、ポリアマイド系、クレー系(ベントナイト、ヘクトライト、サポナイトなど)の増粘剤や、ミネラルオイル系や鉱物系、シリコン系などの消泡剤、更には被塗装物である金属(特に鉄系合金など)に対して錆止め機能を与えるための防錆剤などを添加することも可能である。
【0051】
本発明の水分散型粉体塗料組成物は、上記の様に、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤および塗料用樹脂粉末を必須成分として含有するもので、実質的に塗料用樹脂のみからなる粉体を用いた場合は、所謂クリアー塗膜形成用の塗料組成物となる。また塗料用樹脂と共に適量の顔料や染料を配合した粉末を使用すれば、当該顔料や染料の有する色調等に応じた色彩の着色塗料として得ることができる。
【0052】
ここで用いる顔料としては、着色顔料や防錆顔料などが包含され、着色顔料としては例えば、ベンガラなどの酸化鉄、酸化チタン、チタン黄、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、酸化アンチモン、コバルトブルー、カーボンブラックなどの無機系顔料や、キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、ハンザイエロー、インダンスレンブルー、ブリリアントファーストスカーレット、バリオゲンレッドなどの有機顔料が例示され、これらも単独で使用し得る他、必要により2種以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
更に、体質顔料や艶消し剤として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、クレー、タルク、ケイソウ土、シリカ粉、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト等を使用したり、塗膜の光輝性向上を目的として配合される光輝性顔料として、パール顔料、アルミニウム粉やステンレス鋼粉などの金属粉や金属フレーク、ガラスビーズやガラスフレーク、雲母、リン片状酸化鉄(MIO)等を併用することも有効である。
【0054】
上記顔料の配合量には一切制限がなく、用いる顔料の種類や塗膜に求められる色調、明度、彩度などに応じて任意に選定すればよいが、標準的な配合量は、塗料用樹脂100質量部に対し1〜80質量部の範囲、より一般的には2〜70の範囲である。なお、クリアー塗料とする場合に顔料の配合が省略されることは当然である。また必要によっては、顔料に加えて或いは顔料に代えて任意の染料を使用することも可能である。
【0055】
次に、上記水分散型粉体塗料の製法について説明する。
【0056】
上記水分散型粉体塗料組成物は、その原料となる塗料用樹脂またはこれと顔料や染料を溶融混合して冷却固化させ、適当なサイズ(通常は1mm以下)に粗粉砕してから適量の水に分散させ、該水分散体を循環型ビーズミル等で処理することによって、好ましい平均粒径(D50)と粒度分布を満たす様に微粉砕する。
【0057】
循環型ビーズミルとは、破砕用メディアとして鋼球やセラミックス球などが装入されたビーズミルと処理液タンクとの間で粗粉砕分散液を循環させ、分散液中の粉体の微細化を進める装置であり、微細化の進行状態は粉砕用メディアの材質、サイズ、充填量、アジテーターシャフトの回転数、分散液の循環流量などによって変わってくるが、何れにしても循環運転時間を調整することで微細化の程度を任意に調整できる。
【0058】
また、ビーズミルを用いて微粉砕を行う際に、処理液温度が高温になると水分散液中の粉体同士がブロッキング(融着)を起こす恐れがあるが、循環型ビーズミルとして外付け型もしくは内臓型の冷却機構を備えたものを使用し、処理液温度を低目に抑えて微粉砕処理を行えば、微粒子同士がブロッキングを起こすことなく円滑に微細化できるので好ましい。この際、塗料粘度が高すぎると微粉砕時に昇温し易くなってブロッキングを起こす原因になるので、塗料粘度は常温で約5000mPa・s程度以下に抑えるのがよい。
【0059】
図1は、循環型ビーズミルで微細化処理を行う際の循環運転時間と水分散液中の粉体の粒径との関係を示したグラフであり、循環運転時間を適宜調整することで目標とする粒度構成の水分散液を容易に得ることができる。これに対し、粗粉砕水分散液の微細化にビーズミルを使用したとしても、多パス運転法を採用した場合は、例えば図2に示す如く粒径がパス回数毎に段階的に変化するだけであり、所望する粒径範囲に調整することが困難になる。よって、前述した好ましい平均粒径(D50)と粒度分布を得るには、循環型ビーズミルを使用することが望ましい。
【0060】
なお、循環型ビーズミルにかける粗粉砕水分散液の粒度構成は特に制限的でなく、前述した如く塗料用樹脂と必要により配合される顔料の溶融混合物を適当に粗粉砕したものを使用すればよいが、循環型ビーズミルによる微細化処理後の粒径範囲を極力狭くして粒度分布を狭めるには、粗粉砕物の粒径範囲もできるだけ狭くしておくことが望ましく、そのためには、前記溶融混合物を適当な厚さ(好ましくは1mm前後)のシート状に加工してから破砕した粗粉砕物を使用することが望ましい。しかして、シート状にしてから破砕すると、塊状物を破砕したものに較べて粗粉砕物の粒径が相対的に均一となって粒度分布の狭い粗粉砕物が得られ易くなり、ひいては、循環型ビーズミルで処理することによって得られる微粉砕物の粒度構成もより均一になるからである。
【0061】
そして、この様な粗粉砕の後、循環型ビーズミルを使用し、粉砕用メディアの材質、サイズ、充填量、アジテーターシャフトの回転数、塗料の循環流量などに応じて循環時間を適宜調整すれば、前掲の好適粒度範囲と粒度分布を有する水分散型粉体塗料を容易に得ることができる。
【0062】
なお、該粉体塗料組成物中に必須成分として含有させる前記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物や界面活性剤、或いは更に他の水系添加剤は、塗料用樹脂粉末を製造する際に、その原料配合組成中に含有させたり、粗粉砕する際に水分散液中に添加してもよく、或いは循環型ビーズミルによる処理の前または処理途中で添加してもよく、更にはビーズミル処理後に添加しても構わない。
【0063】
かくして得られる微粉砕分散液を、最終工程で、必要により加圧、吸引あるいは超音波加振機構付のスクリーンに通して異物や夾雑物を濾別すると、本発明の水分散型粉体塗料を得ることができる。
【0064】
本発明に係る上記水分散型粉体塗料は、例えば静電塗装(回転式、エア霧化式、エアレス式、エアアシスト式など)や、エアスプレー塗装、エアレス塗装、刷毛塗り、ロール塗り、浸漬塗装など、任意の方法で様々の部材に塗装でき、また、被塗物に水分散型粉体塗料を塗装して焼付乾燥させる1コート・1ベーク法を始めとして、被塗物に下塗り塗料を塗装し、加熱または焼付乾燥した後に水分散型塗料を塗り重ねてから焼付乾燥させる2コート・2ベーク法や、下塗り塗料を塗装し、加熱または焼付乾燥を行わずにウエット・オン・ウエットで水分散型粉体塗料を塗り重ねてから焼付乾燥する2コート・1ベーク法などを採用することができる。
【0065】
更に、トップコートをクリアー仕上げ等にする場合は、同様に3コート・3ベーク法や3コート・2ベーク法、3コート・1ベーク法等を採用することもできる。ここで下塗り塗料とは、電着塗料、水性塗料、溶剤型塗料、粉体塗料、水分散型粉体塗料などが含まれる。
【0066】
塗装対象となる被塗物の種類も一切制限されず、例えば自動車、船舶、電車などに用いる素材や部品、外板材、家電製品や事務機器などの構成素材や外殻体として用いる各種の金属部材やプラスチック部材などの塗装に幅広く適用することができる。金属としては、最も汎用性の高い鋼や合金鋼などの鉄基金属材を始めとして、アルミニウムやチタン、真鍮などの非鉄金属や合金など、更には、亜鉛めっき鋼材や錫めっき鋼材などのめっき金属材;クロメート処理やリン酸塩処理を施した表面処理鋼材;陽極酸化処理や陰極酸化処理、封孔処理などの施されたアルミニウム又はアルミニウム合金材、などに制限なく適用できる。
【0067】
また本発明の水分散型粉体塗料は、耐水性や耐薬品性、耐候性、耐傷付き性などを高めるため、塗料用樹脂として熱硬化性樹脂を使用することが多いため、塗装後は大抵の場合焼付け処理されるが、該焼付けには、例えば電気熱風乾燥炉、ガス熱風乾燥炉(間接熱風、直接熱風)、遠赤外乾燥炉、ジェットヒーター乾燥炉など任意の乾燥炉を使用し、例えば130〜350℃、より一般的には140〜250℃で10秒〜60分、より一般的には5分〜40分程度で加熱乾燥すればよい。上記加熱乾燥に先立って、予備乾燥しておくことも有効である。
【0068】
更に本発明の水分散型粉体塗料は、前述した如く、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に、塗料用樹脂粉体を均一且つ安定に微分散させたもので、特にスプレー塗装法を採用した場合は、被塗物以外に塗料成分がオーバースプレーするが、これらは加熱処理しない限り水への再分散性は良好であるので、これらオーバースプレーした粉体塗料は随時粉体として捕集し、或いは水洗等により水分散体として捕集することで、回収することも可能である。
【0069】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に包含される。
【0070】
尚、下記実験で採用した平均粒径(D50)および粒度分布、Tg測定、塗料粘度の測定法および塗装作業性、塗膜性能の評価法は下記の通りとした。
【0071】
[平均粒径(D50)および粒度分布]
各水分散型粉体塗料を固形分濃度が5質量%以下となるまで水で希釈し、この希釈液を日本精機製作所社製の超音波分散機「超音波ホモジナイザー」で処理した後、日機装社製の粒度分布測定装置「マイクロトラック MT3300EL」を用いて粒度分布を測定し、その粒度分布曲線から累積50%粒径を平均粒径(D50)として求める。
【0072】
[Tg測定]
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量分析装置「DSC6200」を用いて、粉体粒子のガラス転移温度(Tg)を測定。
【0073】
[塗料粘度]
「JIS K 5600−2−3」に記載されているコーン・プレート粘度計法に従い、東機産業社製の粘度計「RE550H」を用いて水分散型粉体塗料の粘度を求める。塗料温度と測定温度は何れも23℃に調整し、ずり速度1(s−1)で測定した粘度を、供試塗料の粘度値とする。
【0074】
[塗装作業性]
水分散型粉体塗料をアネスト岩田社製の重力式スプレーガン「W−100」(ガンノズル口径;1.3mm)で塗装したときの、ガンノズルからの塗料の噴出状態を観察し、塗装作業性に支障がないかどうかを下記の5段階で評価する。吹き付け空気圧力は0.2MPaとする。
5:塗料の流動性が良好で、ガンノズルから塗料が均一に噴射する。
4:塗料の流動性は良好であるが、噴出ムラを生じることがある。
3:塗料の流動性がやや悪く、常時噴出ムラが観察される。
2:塗料の流動性が悪くてガンノズルから塗料が噴出し難く、噴出が途切れる場合がある。
1:塗料の流動性が著しく悪くてガンノズルから塗料が噴出せず、塗装できない。
【0075】
[タレ性]
日本テストパネル社製のリン酸亜鉛化成処理鋼板「SPCC−SD PB−3118」(0.8mm×150mm×300mm)を垂直に立て掛け、各水分散型粉体塗料の温度と塗装環境温度を20℃に設定し、「JIS K 5600−1−1 3.3.7吹付け塗り」に記載されている塗り方で連続3回重ねてスプレー塗装し、20℃で10分間のセッティングタイムを取って焼付け乾燥を行い、タレの状態を下記の基準で5段階評価する。尚、スプレーガンおよび吹付け空気圧力は、上記塗装作業性評価で採用したのと同じとする。
5:塗装時のタレが認められず、焼付け後の塗膜にもタレ跡が全く認められない。
4:塗装時のタレは認められないが、焼付け後の塗膜にタレ跡が僅かに残る。
3:塗装時にタレが僅かに認められ、焼付け後の塗膜にもタレ跡が僅かに残る。
2:塗装時のタレが著しく、焼付け後の塗膜にもタレ跡が著しく残る。
1:塗装時のタレが著しくて焼付け後の塗膜が非常に薄くなり、素地の透けが著しい。
【0076】
[ワキ性]
上記タレ性評価と同じ方法で塗装を行い、得られた塗膜のワキの状態を下記の基準で5段階評価する。尚、スプレーガンおよび吹付け空気圧力は、上記塗装作業性評価で採用したのと同じとする。
5:ワキが全く認められない。
4:ワキの部分が全塗膜面積の1/4未満。
3:ワキを生じた部分が全塗膜面積の1/4以上、1/2未満。
2:ワキを生じた部分が全塗膜面積の1/2以上、3/4未満。
1:ワキを生じた部分が全塗膜面積の3/4以上。
【0077】
[平滑性]
日本テストパネル社製のリン酸亜鉛化成処理鋼板「SPCC−SD PB−3118」(0.8mm×150mm×300mm)を垂直に立て掛け、各水分散型粉体塗料の温度と塗装環境温度を20℃に設定し、「JIS K 5600−1−1 3.3.7吹付け塗り」に記載されている塗り方で、乾燥膜厚が50μmとなる様にスプレー塗装し、焼付け乾燥することによって得られる塗膜の平滑性を下記の基準で5段階評価する。
5:オレンジピール等が認められず、塗膜が十分に平滑である。
4:オレンジピールは認められないが、塗膜に微小な凹凸が認められる。
3:オレンジピールは認められないが、塗膜に小さな凹凸が認められる。
2:明らかなオレンジピールが観察されるが、その波長が小さい。
1:明らかなオレンジピールが観察され、その波長が大きい。
【0078】
[塗料の貯蔵安定性]
「JIS K 5600−2−7 加温安定性」に記載されている試験法に従って、各水分散型粉体塗料を密封可能な容器に入れ、35℃で90日間静置状態で貯蔵した後に室温に戻し、貯蔵前と比べて「塗料の状態」、「塗装作業性」および「塗膜の外観」の変化を5段階で総合評価する。
5:貯蔵前と比べて変化が認められず、非常に安定である。
4:僅かに凝集が認められるが簡単に解れ、塗装作業性や塗膜外観に変化は見られない。
3:著しい凝集が認められるが、ディスパー等の撹拌機で撹拌することにより貯蔵前の状態に戻る。
2:硬い沈殿物が認められ、撹拌しても貯蔵前の状態に戻らず、塗装作業性および塗膜外観が明らかに劣化する。
1:硬い沈殿物が認められ、撹拌しても塗装可能な状態に戻らない。
【0079】
[耐水性]
日本テストパネル社製のリン酸亜鉛化成処理鋼板「SPCC−SD PB−3118」(0.8mm×150mm×300mm)を垂直に立て掛け、各水分散型粉体塗料を乾燥膜厚が50μmとなる様にスプレー塗装し、焼付け乾燥した後、得られる塗板を40℃の水中に240時間浸漬し、浸漬後の塗膜の外観を下記の基準で5段階評価する。
5:塗膜状態に変化が認められない。
4:塗膜に僅かな艶引けが認められるが、フクレは観察されない。
3:塗膜に僅かな艶引けが認められ、フクレも僅かに観察される。
2:塗膜に著しい艶引けとフクレが観察される。
1:塗膜の著しい剥離が認められる。
【0080】
[焼付け乾燥条件]
上記のタレ性、ワキ性、平滑性、耐水性の各試験を行う際に、後述する実施例および比較例の各水分散型粉体塗料を用いた時の焼付け乾燥条件は、ポリエステル樹脂系水分散型塗料(実施例1〜8、比較例1〜4)を用いた場合は、190℃で20分間、エポキシ樹脂系水分散型塗料(実施例9、比較例5)およびアクリル樹脂系水分散型塗料(実施例10、比較例6)を用いた場合は、何れも180℃で20分間とした。
【0081】
実施例1
a−1)ポリエステル樹脂系粗粉砕物の作成
原料を下記配合1に示す比率で使用し、高速ミキサーで均一に混合した後、溶融押出機を用いて熱溶融混練すると共に押出し、厚さ約1mmのシート状に冷却固化させる。このシート状物を破砕機に通して粗粉砕した後、篩目が1.0mmのフィルターに通して粗粉砕物を得る。
【0082】
【0083】
b−1)ポリエステル樹脂系水分散型粉体塗料の作製
下記配合2に示す比率で用いた原料配合物10.0kgをディスパーによって混合し、この混合物を冷却機構内蔵型の湿式循環型ビーズミル[分散メディア;直径1.0mmのニッカトー社製ジルコニアボール「YTZ」を、ベッセル容積に対して80%(4.4kg)装入したもの]に連結した循環槽に投入し、アジテーターディスクを周速10m/sで回転させながら、循環流量2リットル/分で60分間循環させることによって微粉砕処理を行う。次いで、50μmフィルターを通して濾過することによって水分散型粉体塗料を得る。得られた水分散型粉体塗料の性状・特性を表1に示す。尚、該粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは65℃であった。
【0084】
実施例2〜8および比較例1〜4
実施例1において、上記配合2で用いた界面活性剤「サーフィノール420」に代えて表1に示す界面活性剤を使用し、或いは、前記配合1の「Disperbyk−190」に代えて「フローレンTG−750W」(共栄化学社製の分散剤)を使用した以外は、前記実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂系水分散型粉体塗料を作製した。各水分散型粉体塗料の平均粒径(D50)や粒度分布および固形分濃度は、何れも実施例1と同じになる様に調整した。
【0085】
ここで用いた界面活性剤は下記の通り、
「サーフィノール440」:エアープロダクツ社製の非イオン界面活性剤、HLB=8、
「サーフィノール465」:エアープロダクツ社製の非イオン界面活性剤、HLB=13、
「サーフィノール485」:エアープロダクツ社製の非イオン界面活性剤、HLB=17、
「タージトールTMN−3」:ダウケミカル社製の非イオン界面活性剤、HLB=8、
「タージトールTMN−6」:ダウケミカル社製の非イオン界面活性剤、HLB=12、
「SNウエット970」サンノプコ社製のアニオン系界面活性剤。
【0086】
実施例9
a−2)エポキシ樹脂系粗粉砕物の作成
原料を下記配合3に示す比率で使用した以外は、前記実施例1のa−1)と同様にして、エポキシ樹脂系粗粉砕物を得る。
【0087】
b−2)エポキシ樹脂系水分散型粉体塗料の作製
下記配合4に示す比率で用いた原料配合物を使用した以外は、前記実施例1のb−1)と同様にして水分散型粉体塗料を作製し、得られた水分散型粉体塗料の性状・特性を表1に示した。尚、得られた粉体塗料中に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは62℃であった。
【0088】
比較例5
上記実施例9において、配合4で用いた「Disperbyk−190」に代えて「オロタン731DP」(ローム・アンド・ハース社製の分散剤)を使用した以外は、前記実施例9と同様にして水分散型粉体塗料を作製し、得られた水分散型粉体塗料の性状・特性を表1に示した。尚、得られた粉体塗料中に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは62℃であった。
【0089】
実施例10
a−3)アクリル樹脂系粗粉砕物の作成
原料を下記配合5に示す比率で使用した以外は、前記実施例1のa−1)と同様にして、アクリル樹脂系の粗粉砕物を得る。
【0090】
【0091】
b−3)アクリル樹脂系水分散型粉体塗料の作製
下記配合6に示す比率の原料配合物を採用した以外は、前記実施例1と同様の方法で、アクリル樹脂系の水分散型粉体塗料を得る。得られた水分散型粉体塗料の性状・特性を表1に示す。尚、該粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が2.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは60℃であった。
【0092】
【0093】
比較例6
上記b−3)に示したアクリル樹脂系水分散型粉体塗料の作製における配合6で用いた「Disperbyk−190」に代えて「オロタン731DP」(同前)を使用した以外は、上記実施例10と全く同様にして、アクリル樹脂系水分散型塗料を作製した。
【0094】
得られた水分散型粉体塗料の性状・特性を表1に示す。尚、該粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは60℃であった。
【0095】
【表1】
【0096】
得られた各水分散型粉体塗料を使用し、アネスト岩田社製のスプレーガン「W−100」(ノズル口径1.3mm)を用いて、「SPCC−SD PB−3118」鋼板(同前)にスプレー塗装した後、熱風乾燥機内へ装入し所定の条件で焼付処理してから塗膜性能を評価し、下記表2に示す結果を得た。
【0097】
【表2】
【0098】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤(中でも、HLBが4〜13の範囲の非イオン系界面活性剤)の共存下に、好ましくは平均粒径が1〜30μmの範囲に入る塗料用樹脂粉体を水に均一分散させることによって、塗装作業性や貯蔵安定性に優れ、且つタレやワキ等の欠陥がなく平滑で優れた外観を呈し、更には耐水性等にも優れた塗膜を与える水分散タイプの粉体塗料組成物を提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】循環型ビーズミルを用いた場合の粒度と循環時間の関係を示すグラフである。
【図2】多パス運転型ビーズミルを使用したときのパス回数と粒度の関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は水分散型粉体塗料組成物に関し、特に、塗装作業性や貯蔵安定性に優れ、且つ平滑でタレ(特に厚肉塗装してから乾燥するまでの間に、塗料が下方にタレ落ちる現象)やワキ(加熱乾燥時に、主として分散媒の急激な蒸発により塗膜が発泡し、或いはこれに起因してピンホールや小孔が発生する現象)のない優れた外観の塗膜を与える水分散タイプの粉体塗料組成物とその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塗料としては、従来より有機溶剤を用いた塗料が汎用されてきた。ところが有機溶剤を使用した塗料は、環境問題や火災発生の原因になり得ることから、有機溶剤を使用しない水性塗料や粉体塗料が注目されている。
【0003】
しかし、水性塗料は十分な塗膜性能が得られ難く、また廃水処理などの問題を有している。これに対し粉体塗料は塗膜性能に優れており、且つオーバースプレーした塗料は回収装置を利用して循環使用できるため塗料ロスが殆どなく、経済性にも極めて有用なものである。しかし、粉体塗装のために高価な塗装設備を必要とすることや、仕上り塗膜が粉体塗料特有のゆず肌となり、薄膜塗装が難しいという問題も指摘される。更に粉体塗料は、製造上多品種少量生産には不向きであり、また、異色の粉末や異物が混入するとそれらの除去が殆ど不可能であり、汎用化を妨げる大きな原因になっている。
【0004】
こうした粉体塗料の難点を克服する他のタイプの塗料として、粉体塗料成分を水に分散させた水分散型の粉体塗料が考えられており、例えば特許文献1〜3などが提案されている。これら水分散型粉体塗料の多くは、熱硬化性樹脂、またはこれと顔料成分を溶融温度以上、硬化温度未満の温度で溶融混合してから粗粉砕し、更に乾式で微粉砕してから分散剤などを用いて水に分散させる方法、或いは粗粉砕物を分散剤などと共に水に分散させてから湿式で微粉砕する方法、等によって製造される旨記載されている。
【0005】
前掲の公報を含めて、先行技術に開示されている水分散型粉体塗料の殆どは、貯蔵安定性や塗膜の均一性などを考慮して水分散型粉体塗料を構成する樹脂成分の粒径は小さいことが好ましいとされており、具体的には、平均粒径(D50)で10μm以下のものを推奨している。
【0006】
また水分散型の粉体塗料は、本来は水に不溶性の塗料樹脂粉末を水に分散させたものであるから貯蔵安定性が悪く、保管時に該粉末成分が沈降分離し易い。しかも加熱乾燥時にワキを起こし易く、平滑な塗膜が得られ難い。そのため、貯蔵安定性や塗膜性能を高めるための分散剤や界面活性剤などについても多くの研究がなされている。
【0007】
例えば特許文献4には、分散剤としてポリカルボン酸の金属塩やアミン塩、ポリオキシエチレンのアルキルエーテルやアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等を適量含有させることで、貯蔵安定性や塗膜性能を高める技術が開示されており、また特許文献5には、HLBが10以下のノニオン界面活性剤を流動性助剤として適量含有させることで、ワキやひび割れを抑える技術が開示されている。また前記特許文献3には、塗料粉体を構成する樹脂の種類や架橋剤などを特定すると共に、非イオン性増粘剤と、消泡剤や分散剤、保水剤などとを含む水性成分を使用することで、特に自動車車体用として優れた性能の透明被覆を与える水分散性ラッカーが開示されている。
【0008】
ところが、特許文献4に記載された水分散性塗料の場合、記載の界面活性剤を使用すると、粉体粒子を微細化するにつれて塗料の流動性が悪くなるため塗装作業性が低下し、均一な塗膜が得られ難くなるだけでなく、分散工程で発熱し易くなり、粉体粒子同士が融着し易くなる。そこで、流動性を高めるために界面活性剤の量を増大させると、タレやワキが生じ易くなると共に塗膜の耐水性や光沢が低下する。或いは、流動性を確保するために塗料の固形分濃度を下げると、タレや素地の透けを生じ易くなる。
【0009】
また特許文献5に記載された水分散型塗料の場合、選択された界面活性剤を使用することで塗膜の耐水性は確保されるが、粉体粒子を微細化するにつれて塗料の流動性が悪くなり、界面活性剤を選択するだけでは満足のいく流動性を確保することができない。また、流動性を高めるべく界面活性剤量を増大し、或いは塗料の固形分濃度を下げると、前記と同様にワキやタレが生じ易くなる。更に、低HLBのノニオン系界面活性剤を多量添加すると、粉体粒子同士が凝着するという重大な欠陥を招く。
【0010】
更に特許文献3に開示されている透明ラッカー水性分散体は、特定の塗料粉体を非イオン性増粘剤および界面活性剤や分散剤などの共存下で湿式分散することにより製造されるが、微粒化した塗料粉体の凝集が起こり易くて貯蔵安定性が悪く、更には塗膜の耐水性が劣るという欠点も指摘される。
【0011】
【特許文献1】
特開平7−196953号公報
【特許文献2】
特開平11−343432号公報
【特許文献3】
特表平11−503478号公報
【特許文献4】
特開昭58−191767号公報
【特許文献5】
特開昭58−1757号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、水分散型粉体塗料に見られる前掲の欠点を解消し、塗料としての貯蔵安定性や塗装作業性を改善すると共に、平滑性や光沢に優れ、且つタレやワキ等のない美麗な塗膜外観を与える水分散型粉体塗料組成物を提供すると共に、その様な水分散型粉体塗料組成物を効率よく製造することのできる方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明にかかる水分散型粉体塗料組成物は、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に、塗料用樹脂を含む粉体が水に分散されたものである。
【0014】
本発明で使用する上記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共付加物が好ましい。また、上記界面活性剤として好ましいのは非イオン系界面活性剤で、好ましいHLBは4〜13、より好ましくは4〜9の範囲である。該界面活性剤のより好ましい具体例は、アルキンジオールのアルキレンオキサイド付加物、更に具体的には、テトラメチルデシンジオールのエチレンオキサイド付加物であり、重量平均分子量が300〜3000の範囲、より好ましくは300〜1000の範囲のものが好適である。
【0015】
上記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物の好ましい含有量は、塗料用樹脂粉体に対し固形分換算で0.1〜1質量%であり、上記界面活性剤の好ましい含有量は、塗料用樹脂粉体に対し固形分換算で0.1〜1質量%である。
【0016】
この他、塗料用樹脂を含む粉体の好ましい粒度構成は、平均粒径で1〜30μm、より好ましくは5〜15μmの範囲で、該粉体のうち、粒径が50μm以上である粗粒物の占める比率が10質量%以下で、且つ0.5μm以下である微粒子の占める比率は10質量%以下であることが望ましい。
【0017】
本発明に係る水分散型粉体塗料組成物は、固形分濃度が30〜60質量%の範囲のものが好ましく、また好ましい粘度は、23℃における水分散体として100〜5000mPa・sの範囲である。
【0018】
また上記粉体は、ガラス転移温度が30〜80℃の範囲のものが好ましく、好ましい樹脂の種類としては、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。そして本発明の塗料組成物は、顔料なしのクリアー塗料として有効に使用できるが、需要者の要求に応じて任意の顔料を配合すれば、着色塗料としても有効に活用できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは前述したような課題の下で、貯蔵安定性や塗装作業性が良好で且つタレやワキのない優れた外観・性状の塗膜を与える水分散型粉体塗料組成物の開発を期して研究を進めてきた。その結果、上記の様にスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に、塗料用樹脂を含む粉体を水に分散させたものは、従来の水分散型粉体塗料にみられる前掲の欠点が解消され、優れた品質の水分散型粉体塗料組成物となり得ることを知り、上記本発明に想到したものである。
【0020】
本発明で使用する上記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物とは、スチレンと(無水)マレイン酸を共重合することによって得られる共重合体にアルキレンオキサイドが付加した化合物であり、例えば下記一般式で示される方法によって得られる共重合体である。
【0021】
【化1】
【0022】
上記一般式において、rは1〜5、sは5〜20、tは1〜50の整数を表わし、Rは水素、炭素数1〜20のアルキルアルコール残基、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキルフェノール残基、炭素数8〜40の脂肪酸残基、炭素数8〜40の脂肪酸アミン残基、炭素数8〜40の脂肪酸アミド残基、グリセリンまたはグリセリンと脂肪酸のエステル残基、ソルビトールまたはソルビトールと脂肪酸のエステル残基、炭素数8〜40の脂肪酸アルカノールアミド残基等から選択される少なくとも1種の置換基を表わし、−AO−は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合鎖(ブロック、ランダムまたは交互共重合物を含む)を表わす。
【0023】
この付加物は、主鎖を構成するスチレン・マレイン酸骨格と、該骨格中に含まれるマレイン酸単位における未中和のカルボキシル基、および一方のカルボキシル基に付加したアルキレンオキサイド鎖、特に好ましくはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドが共付加した側鎖部、の存在により、後述する界面活性剤との共存とも相俟って、塗料用樹脂粉体に対して卓越した分散性を与え、水分散型塗料として卓越した貯蔵安定性と塗装作業性を保障しつつ、タレやワキがなく且つ耐水性や塗膜の平滑性においても優れた性能を示す高品質の塗膜を与える。
【0024】
これらの諸機能をより有効に発揮させるには、上記付加物として、重量平均分子量が2,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000の範囲で、スチレン単位とマレイン酸単位のモル比率が前者1に対して後者0.2〜1、プロピレンオキサイドの共付加モル比がエチレンオキサイドに対して0.1〜0.5の範囲のものである。
【0025】
重量平均分子量が小さ過ぎる場合は、粉体粒子に対する吸着比率(カルボキシル基比率)やアルキレンオキサイド鎖が小さいため、微細化された粉体粒子が凝集し易くなって貯蔵安定性が悪くなる傾向があり、逆に重量平均分子量が大き過ぎると、アルキレンオキサイド鎖も大きくなって貯蔵安定性は向上するが、耐水性が悪くなる傾向が生じてくる。
【0026】
また、アルキレンオキサイド鎖に含まれるエチレンオキサイドの比率が多くなり過ぎると、親水性が高くなって耐水性が低下傾向を示し、またプロピレンオキサイドの比率が多くなり過ぎると、疎水性が強くなり過ぎて水への溶解性が低下し、分散剤としての機能が有効に発揮され難くなる。また、主鎖部分を構成するスチレンの比率が多くなると、塗料の流動性は良くなって塗装作業性は向上するが、粉体粒子に対する吸着比率(カルボキシル基比率)やアルキレンオキサイド鎖が小さくなり、塗料粉体粒子が凝集し易くなって貯蔵安定性が低下してくる。またマレイン酸の比率が多くなり過ぎると、アルキレンオキサイド鎖も多くなって貯蔵安定性は向上するものの、耐水性不足になる傾向が生じてくる。
【0027】
これら好ましい要件を満たすスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物は、例えばビックケミー社製の商品名「Disperbyk−190」、或いは共栄社化学社製の商品名「フローレンTG−750W」などとして入手できる。
【0028】
また上記アルキレンオキサイド付加物と併用される界面活性剤の種類は特に制限されず、一般の水性塗料用として使用可能な様々の界面活性剤、例えばアニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系の界面活性剤を使用できる。
【0029】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、脂肪酸トリエタノールアミン塩、(直鎖)アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸(メチル)エステルアルカリ塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステルアルカリ塩、モノアルキルリン酸塩、ラウリル硫酸塩、アシル−N−メチルタウレート、カルボン酸のナトリウム塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩などが例示され、上記塩類としてはナトリウム塩やカリウム塩が好ましく使用される。
【0030】
カチオン系界面活性剤としては、例えばアンモニウムクロライド、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、トリアルキルアンモニウムクロライド、塩化セチルトリメチルアンモニウム等が、また両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤、リン酸エステル塩型両性界面活性剤などが例示される。
【0031】
非イオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルポリグルコシド、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどが例示される。
【0032】
上記の界面活性剤は、各々単独で使用し得る他、必要により任意の2種以上を適宜選択して併用することも可能である。しかし、多くの界面活性剤の中でも本発明で特に好ましく使用されるのは非イオン系の界面活性剤であり、中でもHLBが4〜13、より好ましくは4〜9の範囲のものである。尚、非イオン系界面活性剤のHLBは、「HLB=E/5(Eはポリエチレンオキサイド部分の質量%を表わす)」として求める。
【0033】
非イオン系界面活性剤の中でも特に好ましいのは、アルキンジオールのアルキレンオキサイド付加物、より具体的には、下記一般式で示されるテトラメチルデシンジオールのエチレンオキサイド付加物で、重量平均分子量が300〜3000、より好ましくは300〜1000の範囲のものである。
【0034】
【化2】
【0035】
(式中、m,nは0〜6の整数で、少なくとも1方は1以上であり、m+nは1〜12を表わす)
これらの要件を満たすアルキンジオールのアルキレンオキサイド付加物は、例えばエアープロダクツ社製の商品名「サーフィノール」シリーズ等として入手できる。
【0036】
本発明では、前述したスチレン・無水マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と上記界面活性剤を併用することが極めて重要であり、それら一方のみを使用したのでは、後記実施例の項でも具体的に示す通り、本発明で意図する様な総合的に優れた塗料性能を得ることができない。そして、両者の併用による優れた作用効果をより効果的に発揮させるには、前記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤を、塗料用樹脂粉体に対し固形分換算で各々0.1〜1質量%の範囲で添加することが望ましく、また上記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の添加比率を質量比で前者1に対して0.1〜5、より好ましくは0.5〜2の範囲で併用することが望ましい。
【0037】
本発明の水分散型粉体塗料組成物は、上述したスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に、好ましくは熱硬化性樹脂からなる塗料用樹脂を含む粉体が水に分散されたもので、該粉体は平均粒径(D50)が1〜30μm、より好ましくは5〜15μmであり、しかも、50μm以上の粗粒物の占める比率が10質量%以下(より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは実質的にゼロ%)で、且つ0.5μm以下の微粒子の占める比率が10質量%以下(より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは実質的にゼロ%)であることが望ましい。
【0038】
ちなみに平均粒径(D50)が1μm未満では、粒子が微細に過ぎるため構造粘性が高くなって流動性が低下し、スプレーガン等を用いた塗装作業性が低下したり、仕上り外観(塗膜の平滑性や均一性)などが低下する傾向がみられるからである。そこで、塗料の固形分濃度を下げることによって流動性を確保しようとすると、固形分濃度の低下に伴って、所謂“塗膜のやせ”や“透け”が問題になってくる。また本発明では、前述した様にスチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の併用により流動性の向上を図っているが、それらを必要以上に添加しなければならなくなり、耐水性などの塗膜特性に悪影響を及ぼす恐れも出てくる。
【0039】
他方、平均粒径(D50)が30μmを超えて過度に粗大になると、保管時などに塗料中の粉体成分が沈降し易く、塗料の取扱い性が低下するばかりでなく、塗膜のきめが荒くなって平滑な塗膜外観が得られ難くなる。
【0040】
また該粉体の粒度分布は、塗膜の平滑性や、水分散型塗料を調製する際の濾過性、更には塗装作業性などに影響を及ぼし、固形成分(粉体)中に占める50μm以上の粒子の比率が10質量%以下で且つ0.5μm以下の粒子の占める比率が10質量%以下であることが望ましく、その結果として、0.5μm以上50μm以下の好適粒径範囲に納まる粒子の全体中に占める比率は80質量%以上であることが望ましい。
【0041】
ちなみに平均粒径(D50)が1〜30μmの範囲内であっても、粒度分布が広い水分散型粉体塗料では、凹凸間隔が短くて凹凸高低差の大きい塗膜となり、均一な仕上り塗膜が得られ難くなる。更に50μm以上の粗粒物が10質量%を超えると、塗料製造の濾過工程でフィルターが目詰りを起こし易くなり、また、0.5μm以下の微粒物が10質量%を超えると塗料の流動性が低下し、塗装作業性が悪くなる傾向が見られる。
【0042】
しかし、平均粒径(D50)が1μm以上30μm以下で且つ50μm以上の粒子の占める比率が10質量%以下、0.5μm以下の粒子の占める比率が10質量%以下の水分散型粉体塗料では、塗料粘度が過度に高くなって塗装作業性や取扱い性が劣化するといった問題を生じることなく、しかも形成される塗膜は均一で一段と平滑性に優れた仕上り外観を有するものとなる。更に、塗料製造時の濾過工程でフィルターの目詰りを起こすことなく夾雑物のみを容易に除去することができる。
【0043】
本発明にかかる上記塗料組成物の固形分濃度も、塗装作業性や塗膜特性に影響を及ぼす要因であり、好ましくは30〜60質量%の範囲内に設定することが望ましい。ちなみに、固形分濃度が30質量%未満の低濃度物では、濃度不足のため塗装時に前述した“塗膜のやせ”や“透け”が生じ易くなる。逆に60質量%を超えて過度に高濃度になると、塗料粘度が高くなって流動性が低下し、塗装時のレベリング性が悪くなり、仕上り塗膜の平滑性などに悪影響が生じてくる。この様なことから、水分散型粉体塗料の固形分濃度は30質量%以上、60質量%以下に調整するのがよい。
【0044】
本発明で使用する塗料用樹脂の種類には特に制限がなく、水分散型粉体塗料用として用いられる公知の樹脂、例えばエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキド系樹脂、アミノ・アルキド樹脂、フェノール・アルキド樹脂、ポリブタジエン系樹脂、シリコン系樹脂、イソシアネート系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂などを使用することができ、これらは各々単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜複合して使用することができる。これらの樹脂の中でも特に好ましいのは、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂である。
【0045】
なお必要によっては、上記塗料用樹脂に加えて、通常の粉体塗料に配合されることのある硬化剤、硬化促進剤、流動調整剤、発泡防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防錆剤などを配合し、塗膜特性を更に改善することも勿論可能である。
【0046】
上記塗料用樹脂の中でも特に好ましいのは、ガラス転移温度が30℃以上、より好ましくは40℃以上で、80℃以下、より好ましくは70℃以下の樹脂である。ちなみに、樹脂のガラス転移温度が30℃未満の場合は、貯蔵時や輸送時に塗料中の粉体粒子がブロッキングを起こす恐れが生じるだけでなく、機械粉砕時に融着を起こして微粒化し難くなることがあり、逆にガラス転移温度が高すぎる場合は、焼付時の流動性が悪化して仕上り塗膜の平滑性が低下傾向を示す様になる。
【0047】
本発明の塗料は、前記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤、および塗料用樹脂粉末を必須成分として含有する水性分散体であるが、スプレー塗装時に塗料のタレやワキ、透け等を生じることなく、レベリング性に優れ、より平滑性の高い塗膜を形成するには、該水分散型粉体塗料組成物の23℃での粘度を100mPa・s以上、より好ましくは200mPa・s以上で、5000mPa・s以下、より好ましくは4000mPa・s以下に調整することが望ましい。
【0048】
ちなみに塗料粘度が低過ぎる場合は、塗装時のレベリング性は良好であるが、スプレー塗装時にタレを起こしたり加熱乾燥時にワキを生じ易くなって均質な塗膜が得られ難くなり、逆に塗料粘度が高過ぎると、タレ性は良好になるが、塗装作業性や塗装時のレベリング性が悪化し平滑な塗膜が得られ難くなる。
【0049】
塗膜の膜厚は、用途や需要者の要望に応じて任意に選定するのがよいが、一般的なのは5〜200μm、より一般的には30〜100μmの範囲であり、厚塗りを行う場合は2回塗りや3階塗りなど多層塗りを採用することも勿論有効である。
【0050】
尚、本発明の水分散型塗料組成物においては、上記成分に加えて、例えばアクリル酸系共重合体(アクリル酸とアクリルエステルの共重合体)、セルロース系(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、プロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、ポリウレタン系(ポリエーテル変性ウレタン化合物など)、ポリアマイド系、クレー系(ベントナイト、ヘクトライト、サポナイトなど)の増粘剤や、ミネラルオイル系や鉱物系、シリコン系などの消泡剤、更には被塗装物である金属(特に鉄系合金など)に対して錆止め機能を与えるための防錆剤などを添加することも可能である。
【0051】
本発明の水分散型粉体塗料組成物は、上記の様に、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤および塗料用樹脂粉末を必須成分として含有するもので、実質的に塗料用樹脂のみからなる粉体を用いた場合は、所謂クリアー塗膜形成用の塗料組成物となる。また塗料用樹脂と共に適量の顔料や染料を配合した粉末を使用すれば、当該顔料や染料の有する色調等に応じた色彩の着色塗料として得ることができる。
【0052】
ここで用いる顔料としては、着色顔料や防錆顔料などが包含され、着色顔料としては例えば、ベンガラなどの酸化鉄、酸化チタン、チタン黄、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、酸化アンチモン、コバルトブルー、カーボンブラックなどの無機系顔料や、キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、ハンザイエロー、インダンスレンブルー、ブリリアントファーストスカーレット、バリオゲンレッドなどの有機顔料が例示され、これらも単独で使用し得る他、必要により2種以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
更に、体質顔料や艶消し剤として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、クレー、タルク、ケイソウ土、シリカ粉、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト等を使用したり、塗膜の光輝性向上を目的として配合される光輝性顔料として、パール顔料、アルミニウム粉やステンレス鋼粉などの金属粉や金属フレーク、ガラスビーズやガラスフレーク、雲母、リン片状酸化鉄(MIO)等を併用することも有効である。
【0054】
上記顔料の配合量には一切制限がなく、用いる顔料の種類や塗膜に求められる色調、明度、彩度などに応じて任意に選定すればよいが、標準的な配合量は、塗料用樹脂100質量部に対し1〜80質量部の範囲、より一般的には2〜70の範囲である。なお、クリアー塗料とする場合に顔料の配合が省略されることは当然である。また必要によっては、顔料に加えて或いは顔料に代えて任意の染料を使用することも可能である。
【0055】
次に、上記水分散型粉体塗料の製法について説明する。
【0056】
上記水分散型粉体塗料組成物は、その原料となる塗料用樹脂またはこれと顔料や染料を溶融混合して冷却固化させ、適当なサイズ(通常は1mm以下)に粗粉砕してから適量の水に分散させ、該水分散体を循環型ビーズミル等で処理することによって、好ましい平均粒径(D50)と粒度分布を満たす様に微粉砕する。
【0057】
循環型ビーズミルとは、破砕用メディアとして鋼球やセラミックス球などが装入されたビーズミルと処理液タンクとの間で粗粉砕分散液を循環させ、分散液中の粉体の微細化を進める装置であり、微細化の進行状態は粉砕用メディアの材質、サイズ、充填量、アジテーターシャフトの回転数、分散液の循環流量などによって変わってくるが、何れにしても循環運転時間を調整することで微細化の程度を任意に調整できる。
【0058】
また、ビーズミルを用いて微粉砕を行う際に、処理液温度が高温になると水分散液中の粉体同士がブロッキング(融着)を起こす恐れがあるが、循環型ビーズミルとして外付け型もしくは内臓型の冷却機構を備えたものを使用し、処理液温度を低目に抑えて微粉砕処理を行えば、微粒子同士がブロッキングを起こすことなく円滑に微細化できるので好ましい。この際、塗料粘度が高すぎると微粉砕時に昇温し易くなってブロッキングを起こす原因になるので、塗料粘度は常温で約5000mPa・s程度以下に抑えるのがよい。
【0059】
図1は、循環型ビーズミルで微細化処理を行う際の循環運転時間と水分散液中の粉体の粒径との関係を示したグラフであり、循環運転時間を適宜調整することで目標とする粒度構成の水分散液を容易に得ることができる。これに対し、粗粉砕水分散液の微細化にビーズミルを使用したとしても、多パス運転法を採用した場合は、例えば図2に示す如く粒径がパス回数毎に段階的に変化するだけであり、所望する粒径範囲に調整することが困難になる。よって、前述した好ましい平均粒径(D50)と粒度分布を得るには、循環型ビーズミルを使用することが望ましい。
【0060】
なお、循環型ビーズミルにかける粗粉砕水分散液の粒度構成は特に制限的でなく、前述した如く塗料用樹脂と必要により配合される顔料の溶融混合物を適当に粗粉砕したものを使用すればよいが、循環型ビーズミルによる微細化処理後の粒径範囲を極力狭くして粒度分布を狭めるには、粗粉砕物の粒径範囲もできるだけ狭くしておくことが望ましく、そのためには、前記溶融混合物を適当な厚さ(好ましくは1mm前後)のシート状に加工してから破砕した粗粉砕物を使用することが望ましい。しかして、シート状にしてから破砕すると、塊状物を破砕したものに較べて粗粉砕物の粒径が相対的に均一となって粒度分布の狭い粗粉砕物が得られ易くなり、ひいては、循環型ビーズミルで処理することによって得られる微粉砕物の粒度構成もより均一になるからである。
【0061】
そして、この様な粗粉砕の後、循環型ビーズミルを使用し、粉砕用メディアの材質、サイズ、充填量、アジテーターシャフトの回転数、塗料の循環流量などに応じて循環時間を適宜調整すれば、前掲の好適粒度範囲と粒度分布を有する水分散型粉体塗料を容易に得ることができる。
【0062】
なお、該粉体塗料組成物中に必須成分として含有させる前記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物や界面活性剤、或いは更に他の水系添加剤は、塗料用樹脂粉末を製造する際に、その原料配合組成中に含有させたり、粗粉砕する際に水分散液中に添加してもよく、或いは循環型ビーズミルによる処理の前または処理途中で添加してもよく、更にはビーズミル処理後に添加しても構わない。
【0063】
かくして得られる微粉砕分散液を、最終工程で、必要により加圧、吸引あるいは超音波加振機構付のスクリーンに通して異物や夾雑物を濾別すると、本発明の水分散型粉体塗料を得ることができる。
【0064】
本発明に係る上記水分散型粉体塗料は、例えば静電塗装(回転式、エア霧化式、エアレス式、エアアシスト式など)や、エアスプレー塗装、エアレス塗装、刷毛塗り、ロール塗り、浸漬塗装など、任意の方法で様々の部材に塗装でき、また、被塗物に水分散型粉体塗料を塗装して焼付乾燥させる1コート・1ベーク法を始めとして、被塗物に下塗り塗料を塗装し、加熱または焼付乾燥した後に水分散型塗料を塗り重ねてから焼付乾燥させる2コート・2ベーク法や、下塗り塗料を塗装し、加熱または焼付乾燥を行わずにウエット・オン・ウエットで水分散型粉体塗料を塗り重ねてから焼付乾燥する2コート・1ベーク法などを採用することができる。
【0065】
更に、トップコートをクリアー仕上げ等にする場合は、同様に3コート・3ベーク法や3コート・2ベーク法、3コート・1ベーク法等を採用することもできる。ここで下塗り塗料とは、電着塗料、水性塗料、溶剤型塗料、粉体塗料、水分散型粉体塗料などが含まれる。
【0066】
塗装対象となる被塗物の種類も一切制限されず、例えば自動車、船舶、電車などに用いる素材や部品、外板材、家電製品や事務機器などの構成素材や外殻体として用いる各種の金属部材やプラスチック部材などの塗装に幅広く適用することができる。金属としては、最も汎用性の高い鋼や合金鋼などの鉄基金属材を始めとして、アルミニウムやチタン、真鍮などの非鉄金属や合金など、更には、亜鉛めっき鋼材や錫めっき鋼材などのめっき金属材;クロメート処理やリン酸塩処理を施した表面処理鋼材;陽極酸化処理や陰極酸化処理、封孔処理などの施されたアルミニウム又はアルミニウム合金材、などに制限なく適用できる。
【0067】
また本発明の水分散型粉体塗料は、耐水性や耐薬品性、耐候性、耐傷付き性などを高めるため、塗料用樹脂として熱硬化性樹脂を使用することが多いため、塗装後は大抵の場合焼付け処理されるが、該焼付けには、例えば電気熱風乾燥炉、ガス熱風乾燥炉(間接熱風、直接熱風)、遠赤外乾燥炉、ジェットヒーター乾燥炉など任意の乾燥炉を使用し、例えば130〜350℃、より一般的には140〜250℃で10秒〜60分、より一般的には5分〜40分程度で加熱乾燥すればよい。上記加熱乾燥に先立って、予備乾燥しておくことも有効である。
【0068】
更に本発明の水分散型粉体塗料は、前述した如く、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に、塗料用樹脂粉体を均一且つ安定に微分散させたもので、特にスプレー塗装法を採用した場合は、被塗物以外に塗料成分がオーバースプレーするが、これらは加熱処理しない限り水への再分散性は良好であるので、これらオーバースプレーした粉体塗料は随時粉体として捕集し、或いは水洗等により水分散体として捕集することで、回収することも可能である。
【0069】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に包含される。
【0070】
尚、下記実験で採用した平均粒径(D50)および粒度分布、Tg測定、塗料粘度の測定法および塗装作業性、塗膜性能の評価法は下記の通りとした。
【0071】
[平均粒径(D50)および粒度分布]
各水分散型粉体塗料を固形分濃度が5質量%以下となるまで水で希釈し、この希釈液を日本精機製作所社製の超音波分散機「超音波ホモジナイザー」で処理した後、日機装社製の粒度分布測定装置「マイクロトラック MT3300EL」を用いて粒度分布を測定し、その粒度分布曲線から累積50%粒径を平均粒径(D50)として求める。
【0072】
[Tg測定]
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量分析装置「DSC6200」を用いて、粉体粒子のガラス転移温度(Tg)を測定。
【0073】
[塗料粘度]
「JIS K 5600−2−3」に記載されているコーン・プレート粘度計法に従い、東機産業社製の粘度計「RE550H」を用いて水分散型粉体塗料の粘度を求める。塗料温度と測定温度は何れも23℃に調整し、ずり速度1(s−1)で測定した粘度を、供試塗料の粘度値とする。
【0074】
[塗装作業性]
水分散型粉体塗料をアネスト岩田社製の重力式スプレーガン「W−100」(ガンノズル口径;1.3mm)で塗装したときの、ガンノズルからの塗料の噴出状態を観察し、塗装作業性に支障がないかどうかを下記の5段階で評価する。吹き付け空気圧力は0.2MPaとする。
5:塗料の流動性が良好で、ガンノズルから塗料が均一に噴射する。
4:塗料の流動性は良好であるが、噴出ムラを生じることがある。
3:塗料の流動性がやや悪く、常時噴出ムラが観察される。
2:塗料の流動性が悪くてガンノズルから塗料が噴出し難く、噴出が途切れる場合がある。
1:塗料の流動性が著しく悪くてガンノズルから塗料が噴出せず、塗装できない。
【0075】
[タレ性]
日本テストパネル社製のリン酸亜鉛化成処理鋼板「SPCC−SD PB−3118」(0.8mm×150mm×300mm)を垂直に立て掛け、各水分散型粉体塗料の温度と塗装環境温度を20℃に設定し、「JIS K 5600−1−1 3.3.7吹付け塗り」に記載されている塗り方で連続3回重ねてスプレー塗装し、20℃で10分間のセッティングタイムを取って焼付け乾燥を行い、タレの状態を下記の基準で5段階評価する。尚、スプレーガンおよび吹付け空気圧力は、上記塗装作業性評価で採用したのと同じとする。
5:塗装時のタレが認められず、焼付け後の塗膜にもタレ跡が全く認められない。
4:塗装時のタレは認められないが、焼付け後の塗膜にタレ跡が僅かに残る。
3:塗装時にタレが僅かに認められ、焼付け後の塗膜にもタレ跡が僅かに残る。
2:塗装時のタレが著しく、焼付け後の塗膜にもタレ跡が著しく残る。
1:塗装時のタレが著しくて焼付け後の塗膜が非常に薄くなり、素地の透けが著しい。
【0076】
[ワキ性]
上記タレ性評価と同じ方法で塗装を行い、得られた塗膜のワキの状態を下記の基準で5段階評価する。尚、スプレーガンおよび吹付け空気圧力は、上記塗装作業性評価で採用したのと同じとする。
5:ワキが全く認められない。
4:ワキの部分が全塗膜面積の1/4未満。
3:ワキを生じた部分が全塗膜面積の1/4以上、1/2未満。
2:ワキを生じた部分が全塗膜面積の1/2以上、3/4未満。
1:ワキを生じた部分が全塗膜面積の3/4以上。
【0077】
[平滑性]
日本テストパネル社製のリン酸亜鉛化成処理鋼板「SPCC−SD PB−3118」(0.8mm×150mm×300mm)を垂直に立て掛け、各水分散型粉体塗料の温度と塗装環境温度を20℃に設定し、「JIS K 5600−1−1 3.3.7吹付け塗り」に記載されている塗り方で、乾燥膜厚が50μmとなる様にスプレー塗装し、焼付け乾燥することによって得られる塗膜の平滑性を下記の基準で5段階評価する。
5:オレンジピール等が認められず、塗膜が十分に平滑である。
4:オレンジピールは認められないが、塗膜に微小な凹凸が認められる。
3:オレンジピールは認められないが、塗膜に小さな凹凸が認められる。
2:明らかなオレンジピールが観察されるが、その波長が小さい。
1:明らかなオレンジピールが観察され、その波長が大きい。
【0078】
[塗料の貯蔵安定性]
「JIS K 5600−2−7 加温安定性」に記載されている試験法に従って、各水分散型粉体塗料を密封可能な容器に入れ、35℃で90日間静置状態で貯蔵した後に室温に戻し、貯蔵前と比べて「塗料の状態」、「塗装作業性」および「塗膜の外観」の変化を5段階で総合評価する。
5:貯蔵前と比べて変化が認められず、非常に安定である。
4:僅かに凝集が認められるが簡単に解れ、塗装作業性や塗膜外観に変化は見られない。
3:著しい凝集が認められるが、ディスパー等の撹拌機で撹拌することにより貯蔵前の状態に戻る。
2:硬い沈殿物が認められ、撹拌しても貯蔵前の状態に戻らず、塗装作業性および塗膜外観が明らかに劣化する。
1:硬い沈殿物が認められ、撹拌しても塗装可能な状態に戻らない。
【0079】
[耐水性]
日本テストパネル社製のリン酸亜鉛化成処理鋼板「SPCC−SD PB−3118」(0.8mm×150mm×300mm)を垂直に立て掛け、各水分散型粉体塗料を乾燥膜厚が50μmとなる様にスプレー塗装し、焼付け乾燥した後、得られる塗板を40℃の水中に240時間浸漬し、浸漬後の塗膜の外観を下記の基準で5段階評価する。
5:塗膜状態に変化が認められない。
4:塗膜に僅かな艶引けが認められるが、フクレは観察されない。
3:塗膜に僅かな艶引けが認められ、フクレも僅かに観察される。
2:塗膜に著しい艶引けとフクレが観察される。
1:塗膜の著しい剥離が認められる。
【0080】
[焼付け乾燥条件]
上記のタレ性、ワキ性、平滑性、耐水性の各試験を行う際に、後述する実施例および比較例の各水分散型粉体塗料を用いた時の焼付け乾燥条件は、ポリエステル樹脂系水分散型塗料(実施例1〜8、比較例1〜4)を用いた場合は、190℃で20分間、エポキシ樹脂系水分散型塗料(実施例9、比較例5)およびアクリル樹脂系水分散型塗料(実施例10、比較例6)を用いた場合は、何れも180℃で20分間とした。
【0081】
実施例1
a−1)ポリエステル樹脂系粗粉砕物の作成
原料を下記配合1に示す比率で使用し、高速ミキサーで均一に混合した後、溶融押出機を用いて熱溶融混練すると共に押出し、厚さ約1mmのシート状に冷却固化させる。このシート状物を破砕機に通して粗粉砕した後、篩目が1.0mmのフィルターに通して粗粉砕物を得る。
【0082】
【0083】
b−1)ポリエステル樹脂系水分散型粉体塗料の作製
下記配合2に示す比率で用いた原料配合物10.0kgをディスパーによって混合し、この混合物を冷却機構内蔵型の湿式循環型ビーズミル[分散メディア;直径1.0mmのニッカトー社製ジルコニアボール「YTZ」を、ベッセル容積に対して80%(4.4kg)装入したもの]に連結した循環槽に投入し、アジテーターディスクを周速10m/sで回転させながら、循環流量2リットル/分で60分間循環させることによって微粉砕処理を行う。次いで、50μmフィルターを通して濾過することによって水分散型粉体塗料を得る。得られた水分散型粉体塗料の性状・特性を表1に示す。尚、該粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは65℃であった。
【0084】
実施例2〜8および比較例1〜4
実施例1において、上記配合2で用いた界面活性剤「サーフィノール420」に代えて表1に示す界面活性剤を使用し、或いは、前記配合1の「Disperbyk−190」に代えて「フローレンTG−750W」(共栄化学社製の分散剤)を使用した以外は、前記実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂系水分散型粉体塗料を作製した。各水分散型粉体塗料の平均粒径(D50)や粒度分布および固形分濃度は、何れも実施例1と同じになる様に調整した。
【0085】
ここで用いた界面活性剤は下記の通り、
「サーフィノール440」:エアープロダクツ社製の非イオン界面活性剤、HLB=8、
「サーフィノール465」:エアープロダクツ社製の非イオン界面活性剤、HLB=13、
「サーフィノール485」:エアープロダクツ社製の非イオン界面活性剤、HLB=17、
「タージトールTMN−3」:ダウケミカル社製の非イオン界面活性剤、HLB=8、
「タージトールTMN−6」:ダウケミカル社製の非イオン界面活性剤、HLB=12、
「SNウエット970」サンノプコ社製のアニオン系界面活性剤。
【0086】
実施例9
a−2)エポキシ樹脂系粗粉砕物の作成
原料を下記配合3に示す比率で使用した以外は、前記実施例1のa−1)と同様にして、エポキシ樹脂系粗粉砕物を得る。
【0087】
b−2)エポキシ樹脂系水分散型粉体塗料の作製
下記配合4に示す比率で用いた原料配合物を使用した以外は、前記実施例1のb−1)と同様にして水分散型粉体塗料を作製し、得られた水分散型粉体塗料の性状・特性を表1に示した。尚、得られた粉体塗料中に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは62℃であった。
【0088】
比較例5
上記実施例9において、配合4で用いた「Disperbyk−190」に代えて「オロタン731DP」(ローム・アンド・ハース社製の分散剤)を使用した以外は、前記実施例9と同様にして水分散型粉体塗料を作製し、得られた水分散型粉体塗料の性状・特性を表1に示した。尚、得られた粉体塗料中に含まれる粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは62℃であった。
【0089】
実施例10
a−3)アクリル樹脂系粗粉砕物の作成
原料を下記配合5に示す比率で使用した以外は、前記実施例1のa−1)と同様にして、アクリル樹脂系の粗粉砕物を得る。
【0090】
【0091】
b−3)アクリル樹脂系水分散型粉体塗料の作製
下記配合6に示す比率の原料配合物を採用した以外は、前記実施例1と同様の方法で、アクリル樹脂系の水分散型粉体塗料を得る。得られた水分散型粉体塗料の性状・特性を表1に示す。尚、該粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が2.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは60℃であった。
【0092】
【0093】
比較例6
上記b−3)に示したアクリル樹脂系水分散型粉体塗料の作製における配合6で用いた「Disperbyk−190」に代えて「オロタン731DP」(同前)を使用した以外は、上記実施例10と全く同様にして、アクリル樹脂系水分散型塗料を作製した。
【0094】
得られた水分散型粉体塗料の性状・特性を表1に示す。尚、該粉体粒子の平均粒径(D50)は13μmであり、粒径が50μm以上の粗粒物および粒径が0.5μm以下の微粒物の含有量は何れも0%であった。また該粉体粒子のTgは60℃であった。
【0095】
【表1】
【0096】
得られた各水分散型粉体塗料を使用し、アネスト岩田社製のスプレーガン「W−100」(ノズル口径1.3mm)を用いて、「SPCC−SD PB−3118」鋼板(同前)にスプレー塗装した後、熱風乾燥機内へ装入し所定の条件で焼付処理してから塗膜性能を評価し、下記表2に示す結果を得た。
【0097】
【表2】
【0098】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤(中でも、HLBが4〜13の範囲の非イオン系界面活性剤)の共存下に、好ましくは平均粒径が1〜30μmの範囲に入る塗料用樹脂粉体を水に均一分散させることによって、塗装作業性や貯蔵安定性に優れ、且つタレやワキ等の欠陥がなく平滑で優れた外観を呈し、更には耐水性等にも優れた塗膜を与える水分散タイプの粉体塗料組成物を提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】循環型ビーズミルを用いた場合の粒度と循環時間の関係を示すグラフである。
【図2】多パス運転型ビーズミルを使用したときのパス回数と粒度の関係を示すグラフである。
Claims (15)
- スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物と界面活性剤の共存下に、塗料用樹脂を含む粉体が水に分散されたものであることを特徴とする水分散型粉体塗料組成物。
- 前記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物が、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共付加物である請求項1に記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 前記界面活性剤が非イオン系界面活性剤である請求項1または2に記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 前記界面活性剤が、HLB:4〜13の界面活性剤である請求項1〜3のいずれかに記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 前記界面活性剤が、アルキンジオールのアルキレンオキサイド付加物からなり、重量平均分子量が300〜3000である請求項1〜4のいずれかに記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 前記アルキンジオールのアルキレンオキサイド付加物が、テトラメチルデシンジオールのエチレンオキサイド付加物である請求項5に記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 前記スチレン・マレイン酸共重合体のアルキレンオキサイド付加物の含有量が、塗料用樹脂粉体に対し固形分換算で0.1〜1質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 前記界面活性剤の含有量が、塗料用樹脂粉体に対し固形分換算で0.1〜1質量%である請求項1〜7のいずれかに記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 塗料用樹脂を含む粉体の平均粒径が1〜30μmである請求項1〜8のいずれかに記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 前記粉体のうち、粒径が50μm以上である粒子の占める比率が10質量%以下であり、且つ0.5μm以下である粒子の占める比率が10質量%以下である請求項9に記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 固形分濃度が30〜60質量%である請求項1〜10のいずれかに記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 23℃における水分散体の粘度が100〜5000mPa・sである請求項1〜11のいずれかに記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 前記粉体のガラス転移温度が30〜80℃である請求項1〜12のいずれかに記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 前記塗料用樹脂がエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜13のいずれかに記載の水分散型粉体塗料組成物。
- 前記粉体が、塗料用樹脂と共に顔料を含むものである請求項1〜14のいずれかに記載の水分散型粉体塗料組成物。
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