JP2004283330A

JP2004283330A - イオン泳動式治療装置

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Publication number: JP2004283330A
Application number: JP2003078236A
Authority: JP
Inventors: Nobuyoshi Karashima; 宣美辛島
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Priority date: 2003-03-20
Filing date: 2003-03-20
Publication date: 2004-10-14
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Abstract

【課題】患部への薬液の供給量を増加して治療時間を短縮し、患部の治療効果が高まるとともに、治療時における両電極部の取り扱い性も高まるイオン泳動式治療装置を提供する。
【解決手段】正電極部１２に、塩化ベンザルコニウムの水溶液を多量に保持可能な筆毛３３を設け、負電極部１３に塩化ナトリウム水溶液を多量に保持可能なスポンジ４６を設けた。これにより、患部に対する塩化ベンザルコニウムの水溶液の供給量が増えるとともに、患部への通電性が高まる。よって、治療時間の短縮が図れるとともに、患部の治療効果も高まる。また、正電極部１２と負電極部１３とをハンドリング可能な棒形状としたので、治療時における両電極部１２，１３の取り扱い性も高めることができる。
【選択図】図１

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、殺菌治療装置、詳しくは例えば病原体に感染した患部を、イオン泳動により患部に浸透された薬液により治療する殺菌治療装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
病原体に感染した歯牙を、イオン泳動を利用して殺菌治療する従来のイオン泳動式治療装置として、例えば特許文献１のようなものが知られている。
従来のイオン泳動式治療装置は、電圧発生装置および電流が供給される適用装置を有する電気回路と、正電極部および負電極部とを有し、正電極部は針形状を有して歯牙の管路に深く挿入され、負電極部は患者の身体の一部分に直接取り付けられる。そして、電圧発生装置は直流電流を送出し、電気回路は電気回路のインピーダンスが変化する間、直流電流を一定に保持する装置を有し、インピーダンスは電流が通過する患者の身体の部分によって決定される構成を備えていた。
歯牙の殺菌治療時には、針形状の正電極部に塗布された薬液を歯牙の管路に挿入するとともに、負電極部を患者の身体の一部分（例えば手首）に取り付けて通電する。これにより、電源、電気回路、両電極部および歯牙から患者の身体の一部分までの間で電気的な閉回路が形成され、薬液がイオン遊動により歯牙の管路の深層まで浸透し、患部を殺菌して治療する。
【０００３】
【特許文献１】特開２００１−２９３０１６号公報（第１頁、図１）
【０００４】
従来、イオン泳動式治療装置による治療で患部に浸透される薬液としては、フッ素、ヨウ素、塩素などのハロゲン元素を含む薬液が採用されていた。また、銀、亜鉛などの金属元素を含む薬液も採用されていた。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のイオン泳動式治療装置では、前述したように患部に対して直接当接される正電極部が、針形状を有していた。これにより、患部に一度に供給することができる薬液の量は少なかった。そのため、所定の治療効果を得るには、何度も治療を中断して正電極部に薬液を塗り直さなければならず、治療時間が長くなっていた。
【０００６】
また、従来のイオン泳動式治療装置によると、この負電極部は患部から大きく離れた身体の一部分、例えば手首などに装着されるようになっていた。そのため、負電極部と正電極部との距離は長くなり、イオン泳動による患部の治療効果が十分に得られなかった。
しかも、負電極部は、手首などに装着可能な大きさを有していなければならなかった。また、負電極部を手首などに着脱自在とするため、ばね式の挟持構造、ベルトによる締結構造などのような、わずらわしい装着操作や取り外し操作を伴う着脱自在構造を採用しなければならなかった。その結果、治療時における両電極部の取り扱い性が低下していた。
さらにまた、従来の薬液は、ハロゲン元素を含む薬液、金属元素を含む薬液に限定されていた。これらの薬液を使用したイオン泳動法による殺菌効果は低く、何れも十分に殺菌治療することができなかった。しかも、これらの薬液は高価なものが多かった。
【０００７】
そこで発明者は、鋭意研究の結果、正電極および負電極をなるべく近接させて患部を鋏み、通電する回路を狭い範囲に限定し、回路の電気抵抗を小さくすれば、低電圧でも治療に必要な電流値を流せることを知見した。
これにより、薬剤イオンの供給を患部の必要範囲に限定したイオン泳動が可能となり、その結果、必要部位以外の細胞および組織に薬剤イオンが浸透し、刺戟などによる副作用を最小限度に抑えることができることを見出し、この発明を完成させた。しかも、できるだけ低電圧で使用すれば、神経に対する電気刺戟も抑えられることを見出した。
【０００８】
【発明の目的】
この発明は、患部への薬液の供給量を増加して治療時間を短縮することができ、これにより患部の治療効果を高め、しかも治療時における正電極部および負電極部の取り扱い性も高めることができるイオン泳動式治療装置を提供することを、その目的としている。
また、この発明は、患部の位置および患部の状態に適合した治療を行うことができるイオン泳動式治療装置を提供することを、その目的としている。
この発明は、イオン泳動作用を利用した患部への高い殺菌効果を、低コストで得ることができるイオン泳動式治療装置を提供することを、その目的としている。
この発明は、安全性が高い殺菌治療を行うことができるイオン泳動式治療装置を提供することを、その目的としている。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
請求項１に記載の発明は、薬液を保持可能な正電極部と、溶液を保持可能な負電極部とを備え、前記正電極部および負電極部間に通電することで、イオン遊動作用により薬液を患部に浸透させるイオン泳動式治療装置において、前記正電極部と負電極部とはハンドリング可能な形状を有し、前記正電極部には、前記薬液を保持して患部に当接される薬液保持体が設けられ、前記負電極部には、前記溶液を保持して患部付近の身体の一部分に当接される溶液保持体が設けられたイオン泳動式治療装置である。
【００１０】
イオン泳動式治療装置における治療の対象は人間または動物である。患部としては、正電極部の当接が可能な人体の一部分であれば限定されない。
正電極部および負電極部の大きさおよび形状は、ハンドリングが可能な大きさおよび形状であれば限定されない。形状としては、例えばスティック（棒）状でもよい。
薬液とは、所定量の薬品（薬剤）を水に溶解した溶液である。薬剤の種類は限定されない。例えば、フッ素、ヨウ素、塩素などのハロゲン元素でもよい。また、銀、亜鉛などの金属元素でもよい。さらに、カチオン界面活性剤でもよい。
また、その他の抗菌剤、抗生物質などでも、水溶液となり、イオンとして電離できる化合物（薬剤）であれば使用可能である。
薬液を正電極部に保持する方法および溶液を負電極部に保持する方法は限定されない。また、薬液または溶液を正電極部に多量に供給し、過剰分の薬液または溶液を患部に供給するようにしてもよい。そのときの供給は連続的でもよいし、間欠的でもよい。
【００１１】
溶液の種類は限定されない。ただし、導電性を高める溶液が好ましい。例えば塩化ナトリウム溶液（食塩水）、塩化カリウム水溶液、明礬液、塩化カルシウム液などを採用することができる。
薬液保持体の素材、形状、大きさは、薬液を保持できれば限定されない。正電極部における薬液保持体の取り付け位置は限定されない。例えば、正電極部の先端である。
溶液保持体の素材、形状、大きさは、溶液を保持できれば限定されない。負電極部における薬液保持体の取り付け位置は限定させない。例えば、負電極部の先端である。
【００１２】
電源は、直流用電源でもよいし、交流用電源でもよい。
通電時の電圧値は５Ｖ以下、電流値は４０μＡ以下、通電時間は８〜３０秒間が好ましい。具体的には、例えば歯髄を殺菌治療する場合には、電圧値１．５Ｖ、電流値２０μＡ、通電時間は１０秒未満が安全である。ただし、電流値および通電時間は、対象とする身体の局所の状態などを考慮し、決定されるべきである。
【００１３】
請求項２に記載の発明は、前記薬液保持体および前記溶液保持体は、刷毛、スポンジ、綿、布帛のうちの何れかである請求項１に記載のイオン泳動式治療装置である。
刷毛の素材は限定されない。例えば、合成樹脂毛、動物毛、植物毛などを採用することができる。スポンジの素材も限定されない。例えば、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを採用することができる。布帛とは、織布、不織布または網布である。このうち、薬液保持体としては、刷毛が最も好ましい。溶液保持体としては、綿花またはスポンジが最適である。これは、操作性が良く、治療現場において、最も身近にその材料を補充することができるためである。
【００１４】
請求項３に記載の発明は、前記正電極部および負電極部に電源から供給される電流と、その通電時間とを制御する制御部を有している請求項１または請求項２に記載のイオン泳動式治療装置である。
電流の大きさは４０μＡ以下、好ましくは２０〜４０μＡである。４０μＡを超えると、薬剤による障害（副作用）が対象組織に発生するおそれが大きくなる。また、対象組織に応じた電流値をその対象組織毎に略一定値にすれば、その後は通電時間を調整するだけで、薬液イオンの作用を制御することができる。その結果、より簡単な操作で患部の治療を行うことができる。
通電時間は８〜３０秒間、好ましくは１５〜２０秒間である。８秒間未満では治療効果が不十分である。また、３０秒間を超えると、薬剤による刺戟で対象組織に障害が発生するおそれがある。ただし、歯随に対しては電流値および通電時間は、より小さくした方が好ましい。
【００１５】
請求項４に記載の発明は、前記薬液中の主剤は、カチオン界面活性剤である請求項１〜請求項３のうち、何れか１項に記載のイオン泳動式治療装置である。
カチオン界面活性剤としては、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化カチオンセチルピリジニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなどが挙げられる。
【００１６】
請求項５に記載の発明は、前記カチオン界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムである請求項４に記載のイオン泳動式治療装置である。
塩化ベンザルコニウムとは、別名アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩と称し、脂肪族第４級アンモニウム塩の一種で、安価に入手が可能な日本薬局方に収載された殺菌消毒剤の一種である。性状は無色または淡黄色の水溶液で、アルキルジメチルアミンとベンジルクロライドを反応させて得られる。
塩化ベンゼトニウムとは、別名ベンジルジメチル｛２−〔２−（ｐ−１，１，３，３−テトラメチルブチルフェノオキシ）エトオキシ〕エチル｝アンモニウムクロライドと称し、日本薬局方に収載された殺菌消毒剤の一種である。細菌、カビ類に広く抗菌性を有しており、性状作用、角質溶解作用、乳化作用なども有している。
【００１７】
請求項６に記載の発明は、前記患部は、歯周組織、歯牙、歯髄、根管などの口腔内の疾患部分、または、身体の表在性の疾患部分である請求項１〜請求項５のうち、何れか１項に記載のイオン泳動式治療装置である。
歯科的な疾患部分としては、歯周疾患、歯髄炎、感染根管などが挙げられる。他の身体の表在性の疾患部分としては、例えばカンジダ症、白癬などを発症した皮膚などが挙げられる。
【００１８】
【作用】
この発明によれば、例えば医者が正電極部を一方の手で握り、薬液が保持された薬液保持体を患部に当接する。また、負電極部を他方の手で握り、溶液が保持された溶液保持体を患部またはその近辺の身体の一部分に当接する。これにより、電源、両電極部および患部（その近辺を含む）との間で電気的な閉回路が形成される。この状態で、電源から低電流を流すと、イオン泳動作用により薬液が患部の深層まで浸透する。このとき、正電極部には薬液保持体に保持された多量の薬液が存在するとともに、負電極部には溶液保持体に保持された多量の溶液が存在する。これにより、イオン泳動効果が従来よりも高まる。そのため、薬液を塗るだけでは処置し難い深層部分を含め、患部の治療を行うことができる。
このように、薬液保持体に薬液を多量に保持できるため、従来の針形状を有する正電極部の場合より、患部に対する薬液の供給量を増やすことができる。これにより、治療時間を短縮することができるとともに、患部の治療効果も高まる。また、両電極部をハンドリング可能な形状としたので、治療時における両電極部の取り扱い性も高めることができる。
【００１９】
また、このイオン泳動作用による殺菌効果の他にも、水溶液に電界を加えることで、電界そのものの殺菌作用が発生する。水に含まれる微小な電解質が、生物、ウイルスなどのヌクレオチド上に存在するリン酸基の解離に基づく負の電荷に結合または衝突して核酸を破壊し、殺菌効果が発生する。水に含まれる微小な電解質とは、塩化ナトリウムなどの電解により生成したヒドロニウムイオンによるＨ_３Ｏ^＋またはＨ_９Ｏ^＋などの正の電荷を有するイオンである。
【００２０】
特に、請求項３に記載の発明によれば、電気回路に供給される電流と通電時間とを、制御部により制御するので、患部の位置および患部の状態に適した治療を行うことができる。
【００２１】
請求項４に記載の発明によれば、カチオン界面活性剤は、ハロゲン元素または金属元素といった従来の薬剤よりも殺菌効果が高い。その結果、カチオン界面活性剤が浸透した患部が良好に殺菌される。
このように、イオン泳動法に利用される薬液として、カチオン界面活性剤を主剤としたものを採用したので、イオン泳動を利用した患部への高い殺菌効果を、低コストで得ることができる。
【００２２】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
図１および図４において、１０はこの発明の一実施例に係るイオン泳動式治療装置で、このイオン泳動式治療装置１０は、装置本体１１と、装置本体１１に接続され、殺菌作用を有する薬剤が溶解した薬液を保持可能な棒形状の正電極部１２と、装置本体１１に接続され、導電性を高める溶液を保持可能な棒形状の負電極部１３と、電源１４に対して、正電極部１２および負電極部１３をそれぞれ接続する電気回路１５とを備えている。
【００２３】
装置本体１１は、直方体の装置ボックス１６を有している。装置ボックス１６の上板には、ヒューズ１７、電源スイッチ１８、正電極用接続端子１９および負電極用接続端子２０が配設されている。また、装置ボックス１６の前板には、電圧計２１、パイロットランプ２２、電流計２３、電圧調整用摘まみ２４、装置ボックス１６に内蔵されたブザー（アラーム）が鳴る時間を変更するブザー用摘まみ２５、連続通電とタイマー制御とを切り換える出力切り替えスイッチ２６、通電時間を切り換える通電時間用摘まみ２７およびタイマスタートスイッチ２８が配設されている。
正電極用接続端子１９には、リード線２９を介して正電極部１２が接続される。また、負電極用接続端子２０には、リード線２９を介して負電極部１３が接続される。電源１４は家庭用の１００Ｖの交流電気で、これをコンバータにより直流電気（６Ｖ）に変換して使用する。
【００２４】
ブザー用摘まみ２５は、所定の通電時間（殺菌治療時間）が経過したことを知らせるブザーを鳴らす間隔を調整する摘まみである。ブザー間の時間は２秒、４秒、６秒、８秒の４つから任意に選択可能である。
通電時間用摘まみ２７は、通電と通電停止とを切り換える時間的な間隔を調整する摘まみである。通電と通電停止とは２秒間隔、３秒間隔、６秒間隔の３つから任意に選択可能である。
【００２５】
次に、図２および図３を参照して、正電極部１２と負電極部１３とを詳細に説明する。
図２に示す正電極部１２は、主に、絶縁性を有するプラスチック製の細管である柄部３０と、柄部３０の先端に着脱自在に連結され、柄部３０の略半分の長さを有する絶縁性のプラスチックからなる細管である中間部３１と、中間部３１の先端に着脱自在に連結され、先部が略４５度に屈曲した黄銅製の口金部３２と、口金部３２の先端に固定された獣毛製の筆毛（薬液保持体）３３とを備えている。
【００２６】
柄部３０内の管路には、前記正電極用接続端子１９から延びるリード線２９に接続された洋銀線３４が挿着されている。柄部３０の先端面からは、洋銀線３４の先端部が突出している。中間部３１の元側の管内には細い洋銀筒３５が内嵌されている。中間部３１の他の管内部分には、洋銀筒３５に連結した洋銀線３６が挿入されている。柄部３０に中間部３１を連結したとき、柄部３０側の洋銀線３４の先端部が洋銀筒３５の元部に嵌着される。中間部３１の先端面からは、洋銀線３６の金メッキ３７された先部が突出している。口金部３２の管内壁には、先端部分が前記筆毛３３と接触する金メッキ３８が施されている。筆毛３３には、塩化ベンザルコニウムの水溶液が浸されている。中間部３１に口金部３２を連結すると、中間部３１側の洋銀線３６の先部が口金部３２の元部に挿着される。このように、柄部３０と、中間部３１と、口金部３２とをそれぞれ連結することで、装置本体１１の正電極用接続端子１９と、筆毛３３とが電気的に接続される。
【００２７】
図３に示す負電極部１３は、主に、絶縁性を有するプラスチック製の細管である柄部３９と、柄部３９の先端に着脱自在に連結され、短尺な絶縁性を有するプラスチック製の細管である中間部４０と、中間部４０の先端に固着された短尺な円柱ヘッド４１とを備えている。
柄部３９内の管路には、前記負電極用接続端子２０から延びるリード線２９に接続された洋銀線４２が挿着されている。柄部３９の先端面からは、洋銀線４２の先端部が突出している。中間部４０の元側の管内には細い洋銀筒４３が内嵌され、中間部４０の他の管内部分には、洋銀筒４３に連結した洋銀線４４が挿入されている。柄部３９に中間部４０を連結したとき、柄部３９側の洋銀線４２の先端部が洋銀筒４３の元部に挿着される。中間部４０側の洋銀線４４は、その先端部が金メッキ４５されて円柱ヘッド４１内まで延長されている。円柱ヘッド４１はポリプロピレン製で、ヘッド頭部にスポンジ（溶液保持体）４６が着脱自在に装着されている。スポンジ４６には、導電性を高める３％の塩化ナトリウム水溶液が含浸されている。このように、柄部３９と、円柱ヘッド４１が装着された中間部４０とを連結することで、装置本体１１の負電極用接続端子２０と、スポンジ４６とが電気的に接続される。
【００２８】
ここで、図４を参照してイオン泳動式治療装置１０の制御部４７を説明する。
図４に示すように、制御部４７にあっては１００Ｖの交流電気を、整流器を内蔵した定電圧回路４８により直流６Ｖに変換するとともに、トランスおよび整流器を内蔵した定電圧回路４９により直流０〜５Ｖに変換する。定電圧回路４８は、ブザー５１を作動させる間欠タイマ回路５０用の直流電気を供給する。間欠タイマ回路５０には、直接、ブザー５１が接続されている。定電圧回路４９は、通電用のタイマ回路５２に直流電気を供給する。タイマ回路５２には電流制限回路５３が接続されている。電流制限回路５３には、前記正電極用接続端子１９と負電極用接続端子２０とがそれぞれ接続されている。
【００２９】
次に、図１、図５〜図８を参照して、イオン泳動式治療装置１０を用いた歯牙または歯肉の殺菌治療方法を説明する。
まず、３％の塩化ベンザルコニウムの水溶液を筆毛３３に浸すとともに、３％の塩化ナトリウム水溶液をスポンジ４６に含浸させる。その後、電源スイッチ１８を入れ、電圧調整用摘まみ２４を回動して電圧を１．５Ｖに設定する。また、出力切り替えスイッチ２６を傾倒操作して、連続通電による殺菌治療か、ブザー５１を利用した通電時間の制御または自動ＯＮ／ＯＦＦ切り替えによる通電時間を制御することでの殺菌治療かを、任意に選択する。このとき、ブザー制御または通電時間制御を選択した場合には、対応するブザー用摘まみ２５または通電時間用摘まみ２７を回動させ、ブザー５１が鳴るまでの時間、または、患部への通電と通電停止とを切り換える間隔を設定する。
【００３０】
それから、正電極部１２の塩化ベンザルコニウムの水溶液を保持した筆毛３３を、病原体に感染した歯牙または歯肉患部に接触させる（図５、図６（ａ）、図７、図８）。しかも、その歯牙または歯肉患部の近傍の口腔組織に、負電極部１３の塩化ナトリウム水溶液を含浸させたスポンジ４６を接触させる（図５、図６（ｂ）、図７、図８）。これにより、定電圧回路４９、電流制限回路５３、両電極部１２，１３および歯牙または歯肉患部およびその近傍の口腔組織との間で電気的な閉回路が形成される。この状態を保持して、タイマスタートスイッチ２８を入れ、定電圧回路４９から電流制限回路５３を通して４０μＡの低電流を流す。すると、イオン泳動作用により、塩化ベンザルコニウムが歯牙の深層までイオンとして浸透する。このとき、正電極部１２には、筆毛３３に保持された多量の塩化ベンザルコニウムの水溶液が存在するとともに、負電極部１３にはスポンジ４６に保持された多量の塩化ナトリウム水溶液が存在する。これにより、イオン泳動効果が従来の針形状の電極部を有するものより高まる。しかも、塩化ベンザルコニウムは、ハロゲン元素または金属元素といった従来の殺菌作用を有する薬剤よりも殺菌効果が高い。その結果、塩化ベンザルコニウムが深層まで浸透した歯牙が良好に殺菌される。これらの電流値および通電時間は、対象とする患部の位置およびその状態などを考慮し、適宜決定するものとする。
また、イオン泳動作用による殺菌効果の他にも、水溶液に電界を加えることで、電界そのものの殺菌作用が生じる。水に含まれる微小な電解質、すなわち塩化ナトリウムなどの電解により生成したヒドロニウムイオンによるＨ_３Ｏ^＋またはＨ_９Ｏ^＋などの正の電荷を有するイオンが、生物、ウイルスなどのヌクレオチド上に存在するリン酸基の解離に基づく負の電荷に結合または衝突し、核酸を破壊して殺菌効果を発生させる。
【００３１】
このように、筆毛３３に塩化ベンザルコニウムの水溶液を多量に保持できるため、従来の針形状を有する正電極部に比べて、患部に対する薬液の供給量を増やすことができる。これにより、治療時間が短縮し、患部の治療効果も高まる。また、両電極部１２，１３をハンドリング可能な形状としたので、治療時における両電極部１２，１３の取り扱い性を高めることができる。
また、イオン泳動法に利用される溶液として、塩化ベンザルコニウムを主剤に含むものを採用したので、イオン泳動を利用した歯牙または歯肉患部の高い殺菌効果を、低コストで得ることができる。
さらに、制御部４７により電流と通電時間とを制御するので、患部の位置および患部の状態に適した治療を行うことができる。
【００３２】
【発明の効果】
この発明によれば、このように正電極部に、薬液を多量に保持できる薬液保持体を設けたので、従来の針形状を有する正電極部を採用したものに比べて、患部に対する薬液の供給量を増加させることができる。これにより、治療時間の短縮化が図れるとともに、患部の治療効果も高めることができる。また、両電極部をハンドリング可能な形状としたので、治療時における両電極部の取り扱い性も高めることができる。
【００３３】
特に、請求項３に記載の発明によれば、電気回路に供給される電流と通電時間とを制御するので、患部の位置および患部の状態に適合した殺菌治療を施すことができる。
【００３４】
また、請求項４および請求項５に記載の発明によれば、イオン泳動作用を利用した治療用の薬液として、カチオン界面活性剤を主剤とした薬液を採用したので、患部に対する高い殺菌効果を低コストで得ることができる。特に、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムはさらに経済的となる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の一実施例に係るイオン泳動式治療装置の全体斜視図である。
【図２】（ａ）は、この発明の一実施例に係るイオン泳動式治療装置に適用される正電極部の断面図である。
（ｂ）は、この発明の一実施例に係るイオン泳動式治療装置に適用される正電極部の分解断面図である。
【図３】（ａ）は、この発明の一実施例に係るイオン泳動式治療装置に適用される負電極部の断面図である。
（ｂ）は、この発明の一実施例に係るイオン泳動式治療装置に適用される負電極部の分解断面図である。
【図４】この発明の一実施例に係るイオン泳動式治療装置の制御部の電気回路図である。
【図５】この発明の一実施例に係るイオン泳動式治療装置による奥歯付近の殺菌治療状態を示す平面図である。
【図６】（ａ）は、奥歯付近における正電極部の使用方法を説明する側面図である。
（ｂ）は、奥歯付近における負電極部の使用方法を説明する側面図である。
【図７】この発明の一実施例に係るイオン泳動式治療装置による奥歯の殺菌治療状態を示す断面図である。
【図８】この発明の一実施例に係るイオン泳動式治療装置による前歯の殺菌治療状態を示す断面図である。
【符号の説明】
１０イオン泳動式治療装置、
１２正電極部、
１３負電極部、
１４電源、
３３筆毛（薬液保持体）、
４６スポンジ（溶液保持体）、
４７制御部。

Claims

薬液を保持可能な正電極部と、溶液を保持可能な負電極部とを備え、前記正電極部および負電極部間に通電することで、イオン遊動作用により薬液を患部に浸透させるイオン泳動式治療装置において、
前記正電極部と負電極部とはハンドリング可能な形状を有し、
前記正電極部には、前記薬液を保持して患部に当接される薬液保持体が設けられ、
前記負電極部には、前記溶液を保持して患部付近の身体の一部分に当接される溶液保持体が設けられたイオン泳動式治療装置。
前記薬液保持体および前記溶液保持体は、刷毛、スポンジ、綿、布帛のうちの何れかである請求項１に記載のイオン泳動式治療装置。
前記正電極部および負電極部に電源から供給される電流と、その通電時間とを制御する制御部を有している請求項１または請求項２に記載のイオン泳動式治療装置。
前記薬液中の主剤は、カチオン界面活性剤である請求項１〜請求項３のうち、何れか１項に記載のイオン泳動式治療装置。
前記カチオン界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムである請求項４に記載のイオン泳動式治療装置。
前記患部は、歯周組織、歯牙、歯髄、根管などの口腔内の疾患部分、または、身体の表在性の疾患部分である請求項１〜請求項５のうち、何れか１項に記載のイオン泳動式治療装置。