JP2004279993A - 熱光学位相シフタ - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な回路で制御することができる熱光学位相シフタを提供する。
【解決手段】光導波路を加熱して該光導波路を通過する光の位相を変化させる熱光学位相シフタであって、その光導波路の加熱を、抵抗値80Ω以下もしくは抵抗率60μΩcm以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーター4、または抵抗値320Ω以下もしくは抵抗率240μΩcm以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーター4で行うことにより、上記課題を解決した。ヒーター材料としては、窒化チタンまたは窒化チタンを主成分とする材料が好ましい。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光導波回路装置に用いる熱光学位相シフタに関し、更に詳しくは、簡単な回路で制御することを可能とした熱光学位相シフタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光通信分野においては、波長分割多重(WDM)通信方式の出現により、多チャンネル化技術の研究開発が近年活発に行われている。こうした多チャンネル化技術において、各チャンネル毎の機能的な制御、例えば各チャンネルのパワーを一定に揃えるための制御やスイッチング制御等、を実現しようとすると、チャンネル数に応じた多数の光素子が必要となってくる。そのため、光通信分野においては、光スイッチなどに適用できるような高密度集積可能な小型光回路部品の必要性が高まっている。
【0003】
こうした中、熱光学位相シフタを利用した平面光波回路(PLC)型デバイスは、その作製プロセスに半導体回路作製技術を利用できるので作製が容易で集積性に優れるという利点があり、高密度集積可能な光スイッチとして広く検討されている。さらに、このPLC型デバイスは、位相シフト量を制御することにより可変光減衰器として動作させることが可能であることからその利用範囲が広く、デバイスの大規模化・高機能化に有利であるという特長をもっている。
【0004】
熱光学位相シフタの基本的な構成は、クラッド層とコアとからなる光導波路に沿って薄膜ヒーターが形成されてなるものである。そして、その動作原理は、薄膜ヒーターに電力を投入して光導波路のコアを加熱することにより、コアの屈折率が変化し、その結果、加熱前の導波路の長さに比べて実効的な導波路の長さが変化することにより、出力端での位相を任意の量だけシフトさせるというものである。
【0005】
従来の熱光学位相シフタとしては、光路長温度係数(1/(nL))d(nL)/dTが2×10−3/Kであるガラス導波路上に、抵抗温度係数が1×10−3/Kから3×10−3/Kの範囲内にある薄膜ヒーターを形成した熱光学位相シフタ(例えば、特許文献1を参照。)や、光導波路上に窒化タンタルからなる薄膜ヒーターを形成した熱光学位相シフタ(例えば、特許文献2を参照。)等が知られている。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−34924(段落番号0015〜0018)
【特許文献2】
特開平6−34925(段落番号0010〜0014)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
多チャンネル化に対応して多数の熱光学位相シフタを配置した小型光回路部品においては、個々の熱光学位相シフタにおける位相シフト量の制御、すなわち個々の熱光学位相シフタに設けられたヒーターの発熱量の制御、を正確に行う必要がある。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の熱光学位相シフタは、1×10−3/Kから3×10−3/Kと比較的大きな抵抗温度係数をもつ材料で薄膜ヒーターが形成されているので、薄膜ヒーターに電力を印加したときの発熱により薄膜ヒーター自体の抵抗値が動作中に変化してしまうという現象が起こり、光導波路の温度制御を正確に行うことができず、その結果、位相シフト量を正確に制御することができないという問題がある。従来こうした問題に対しては、個々の熱光学位相シフタごとに位相シフト量をモニターし、個々の熱光学位相シフタを構成するヒーターへの投入電力が常に一定になるようにする制御回路を設けることにより対応していた。そのため、1チャンネル毎に複雑な制御回路が必要となって全体の制御が困難になると共に量産化にも適さないという問題があった。
【0009】
一方、上記特許文献2に記載の熱光学位相シフタは、抵抗温度係数の小さい窒化タンタルで薄膜ヒーターが形成されているので、薄膜ヒーター自体の抵抗値が動作中に変化してしまうという現象は起きにくいが、窒化タンタルからなる薄膜ヒーターを有する熱光学位相シフタは、抵抗率が300μΩcm程度と大きいため、必要な発熱量を得るには14V以上の高電圧電源回路が必要であり、装置の大型化・複雑化や、それに伴う消費電力の増大といった看過できない問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡単な回路で制御することができる熱光学位相シフタを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための請求項1に記載の熱光学位相シフタは、光導波路を加熱して該光導波路を通過する光の位相を変化させる熱光学位相シフタであって、前記光導波路の加熱が、抵抗値80Ω以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターによりなされることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、抵抗値80Ω以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターにより光導波路が加熱されるので、動作中のヒーター自体の抵抗値の変化が極めて小さく、その結果、電流および電圧のいずれか一方のみをモニターするだけで光導波路の温度制御を正確に行うことができる。そのため、個々の熱光学位相シフタごとの位相シフト量のモニターやモニターされた位相シフト量を調節するための制御回路を必要としなくても、位相シフト量と光導波路の温度上昇量とヒーターの発熱量との間の相互の関係を一意に制御することができ、制御回路および制御プログラムの大幅な簡略化が可能になる。さらに、この熱光学位相シフタは、最大定格6V程度の電源で位相シフト量を可変できるので、電子回路で一般的に使用されている電源を使用でき、その結果、熱光学位相シフタを動作させる制御回路の単純化を図ることができるという極めて甚大な効果がある。
【0013】
上記目的を達成するための請求項2に記載の熱光学位相シフタは、光導波路を加熱して該光導波路を通過する光の位相を変化させる熱光学位相シフタであって、前記光導波路の加熱が、抵抗値320Ω以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターによりなされることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、抵抗値320Ω以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターで光導波路が加熱されるので、上述した請求項1の発明と同様の効果を奏するが、特に、通常のオペアンプ回路の駆動上限電圧である12V以下の電圧で位相シフト量を可変できるので、熱光学位相シフタを動作させる制御回路の単純化を図ることができるという効果がある。
【0015】
上記目的を達成するための請求項3に記載の熱光学位相シフタは、光導波路を加熱して該光導波路を通過する光の位相を変化させる熱光学位相シフタであって、前記光導波路の加熱が、抵抗率60μΩcm以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターによりなされることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、抵抗率60μΩcm以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターにより光導波路が加熱されるので、上述した請求項1の発明と同様の極めて甚大な効果がある。
【0017】
上記目的を達成するための請求項4に記載の熱光学位相シフタは、光導波路を加熱して該光導波路を通過する光の位相を変化させる熱光学位相シフタであって、前記光導波路の加熱が、抵抗率240μΩcm以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターによりなされることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、抵抗率240μΩcm以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターで光導波路が加熱されるので、上述した請求項2の発明と同様の効果がある。
【0019】
請求項5の発明は、熱光学位相シフタにおいて、光導波路を加熱するためのヒーターが、窒化チタンまたは窒化チタンを主成分とする材料で形成されていることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、窒化チタンまたは窒化チタンを主成分とする材料は上述した抵抗率と抵抗温度係数を満たすと共にエッチング性能に優れているので、多チャンネル化の場合において、各ヒーターの抵抗値を精度よく合致させることができ、電気特性の揃ったヒーターを容易に形成することができる。また、窒化チタンまたは窒化チタンを主成分とする材料は、大気中の酸素と反応しないなど化学的に安定であると共に熱履歴などによる抵抗率変化も小さいので、長期にわたって安定して動作させることができる優れた熱光学位相シフタを実現することができる。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタにおいて、前記光導波路が、基板上に設けられたクラッド層と、当該クラッド層内に設けられたコアとからなることを特徴とする。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタにおいて、前記ヒーターが、クラッド層内に設けられていることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、クラッド層上部に配線などを作製している最中に、ヒーターがエッチング液などにより変質するのを防ぐことができ、また、物理的な衝撃にも強くなることから、信頼性の高い熱光学位相シフタを作製することが可能となる。
【0024】
請求項8の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタにおいて、前記ヒーターがクラッド層の表面に設けられ、かつ、当該ヒーターが前記クラッド層とは異なる材料からなる保護層で覆われていることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、ヒーター上に形成された保護層によりヒーターと外部との接触を遮断できるので、配線作製時に使用するエッチング液などによりヒーターの変質が起きるのを防ぐことができる。その結果、信頼性の高い熱光学位相シフタを作製することが可能となる。また、この保護層はバッファ層としても作用するので、ヒーター上部に配線を配置することなどが可能になり、配線の自由度が高くなる。その結果、スペースを有効活用することができ、熱光学位相シフタのさらなる小型化が実現できる。
【0026】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタにおいて、前記クラッド層および前記コアが、石英ガラスまたは珪酸塩系ガラスにより形成されていることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、光導波路の伝搬損失が小さく、光学特性及び安定性に優れた熱光学位相シフタを作製することが可能となる。
【0028】
請求項10の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタにおいて、前記クラッド層および前記コアが、有機物により形成されていることを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、光導波路の作製期間が短く材料も安価で、大量生産性、コストパフォーマンスに優れ、さらには駆動電圧をガラス材料に比べて1/2以下に低減した熱光学位相シフタを作製することが可能となる。
【0030】
請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタにおいて、前記基板が、石英ガラス、珪酸塩系ガラスまたは半導体(シリコンや化合物半導体等)により形成されていることを特徴とする。
【0031】
この発明によれば、半導体プロセス技術を使用することができるので、本発明の熱光学位相シフタの作製が容易になる。このため、熱光学位相シフタの歩留り及び再現性を向上させることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱光学位相シフタについて図面を参照しつつ説明する。
【0033】
本発明の熱光学位相シフタは、光導波路を加熱して該光導波路を通過する光の位相を変化させるものであり、その熱光学位相シフタの構成および光導波路の構成については特に限定されないが、その特徴とするところは、光導波路の加熱を、抵抗値80Ω以下または320Ω以下、あるいは、抵抗率60μΩcm以下または240μΩcm以下で、抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターにより行うことにある。
【0034】
図1〜図3は、本発明の熱光学位相シフタの各例を示すものであり、各図において、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA1−A1’断面図である。なお、本発明の熱光学位相シフタがこれらの形態に限定されないことはいうまでもない。
【0035】
本発明の熱光学位相シフタは、例えば図1に示すように、基板1と、その基板1上に設けられたクラッド層2と、そのクラッド層2内に設けられたコア3と、そのクラッド層2及びコア3からなる光導波路の上部に且つその光導波路に沿った位置に設けられるヒーター4とから構成されている。
【0036】
基板1としては、石英ガラス、珪酸塩系ガラスまたはシリコンからなる基板を好ましく挙げることができるが、シリコン以外の半導体(例えば、InP、GaAs)等で形成されていてもよい。これらの基板1は、半導体プロセス技術を適用可能な基板材料であるので、その基板上に、半導体プロセス技術を適用したクラッド層、コアおよびヒーター等を容易に形成することができる。
【0037】
クラッド層2は、基板1上に設けられた下側クラッド層2aと、この下側クラッド層2a上に設けられた上側クラッド層2bとから構成される。下側クラッド層2a及び上側クラッド層2bは、石英ガラスまたは珪酸塩系ガラスにより形成することが好ましく、例えばシリカガラスにボロンとリンを添加したBPSG(ボロンリンシリカガラス)により形成することができる。また、クラッド層2は、例えば半導体又は、BPSG以外のガラスにより形成されていてもよい。
【0038】
クラッド層2を有機膜で形成することも好ましく、例えばポリイミド系材料、ポリベンズオキサゾール(PBO)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの保護材料やレジスト材料を用いて形成することができる。これらの材料は一般的に石英ガラス等に比べて熱による屈折率の変化量が5〜10倍以上と大きく、より小さい電圧で必要な位相シフト量を得ることができる。
【0039】
各クラッド層2a、2bの厚さは、通常、10〜20μm程度である。なお、上側クラッド層2bは、図1〜図3に示すように、下側クラッド層2aと、その下側クラッド層2a上に形成されたコア3とを覆うように設けられる。
【0040】
コア3は、上述したクラッド層2内に設けられる。具体的には、下側クラッド層2a上であって、基板表面に平行な方向に直線状及び/又は曲線状に設けられる。コア3の断面形状、すなわちコア3の長手方向に直交する断面形状は、通常、矩形状に形成される。コア3は、クラッド層2よりも屈折率が大きい材料で形成され、例えば、シリカガラスにゲルマニウムとリンを添加したGPSG(ガリウムリンシリカガラス)や、添加物量もしくは添加材料を調整した有機物を材料として形成される。有機物材料としては、例えばポリイミド系材料、ポリベンズオキサゾール(PBO)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの材料やレジスト材料を挙げることができる。このとき、コアの屈折率は、添加する元素(GPSGの場合は例えばゲルマニウムやリンなど)および量などにより調整される。コア3の屈折率とクラッド層2の屈折率との比屈折率差Δnは、任意に設計され、一例としては0.3〜1.5%の範囲となるように設定することが好ましい。
【0041】
クラッド層2の表面、すなわち上層クラッド層2bの表面には、所定の抵抗値または抵抗率と抵抗温度係数とを持つヒーター4が形成される。本発明においては、ヒーター4を、抵抗値が80Ω以下もしくは抵抗率が60μΩcm以下で抵抗温度係数が±1000ppm/Kのヒーター材料で形成すること、または、抵抗値が320Ω以下もしくは抵抗率が240μΩcm以下で抵抗温度係数が±1000ppm/Kのヒーター材料で形成している。
【0042】
抵抗温度係数が±1000ppm/K以下のヒーターは、ヒーター温度が50〜60℃上昇した時のヒーター自体の抵抗変化量が±5〜6%以内となるので、制御回路で調整可能な実用に耐え得る変動範囲に収めることができ、電流および電圧のいずれか一方のみをモニターするだけで光導波路の温度制御を正確に行うことができる。
【0043】
なお、ヒーターの抵抗温度係数は、±500ppm/K以下であることがより好ましく、±100ppm/K以下であることが特に好ましく、光導波路の温度制御をより正確に行うことができる。こうした抵抗温度係数を有するヒーターで光導波路を加熱することにより、個々の熱光学位相シフタごとの位相シフト量のモニターや、モニターされた位相シフト量を調節するための制御回路を必要としなくても、位相シフト量と光導波路の温度上昇量とヒーターの発熱量との間の関係を一意に制御することができる。
【0044】
さらに、光導波路を加熱するヒーターの抵抗値が80Ω以下または320Ω以下であるので、電子回路で一般的に使用されている3〜6V電源または12Vの上限電圧を有するオペアンプをヒーター用電源として用いて位相シフト量を変化させることができる。
【0045】
このような特徴を満たすヒーターとしては、上記の抵抗値と抵抗率と抵抗温度係数の範囲内にある材料で形成されたものであれば特に限定されないが、好ましいヒーター材料としては、窒化チタンまたは窒化チタンを主成分とする材料を挙げることができる。本願において、窒化チタンと、窒化チタンを主成分とする材料とを区別して標記しているのは、抵抗率や抵抗温度係数を所望の値に調整する元素や不可避不純物が窒化チタン中に含有する場合があるからであり、それらを包含するものとして「窒化チタンを主成分とする材料」としている。なお、以下において「窒化チタン」というときは、特に断らない限り「窒化チタンを主成分とする材料」を含む概念でいうものとする。
【0046】
ヒーターの抵抗値は、駆動電圧を直接決定する主要な値であり最も重要である。通常、石英ガラスで作製した熱光学位相シフタにおいて、最大位相シフト量πを得るのに必要な電力は450mW程度である。位相シフト量はヒーターでの消費電力量に比例するため、ヒーター抵抗値をR、ヒーターへの最大投入電力量をPとすると、最大必要な電圧値Vは、V=(P×R)1/2 と表される。本発明においては、ヒーターの抵抗値が80Ω以下であるので、上記計算式より、上述の3〜6V電源で位相シフト量を制御可能とすることができる。一方、ヒーターの抵抗値を320Ω以下とした場合においては、上記計算式より、上述の12Vを上限電圧とするオペアンプで位相シフト量を制御可能とすることができる。
【0047】
また、ヒーターの抵抗率や抵抗温度係数は、窒化チタン中の酸素等の含有量で変化させることができる。例えば、上述の3〜6V電源で位相シフト量を制御可能とするためには、窒化チタン中の酸素含有量を1.28重量%以下として抵抗率を60μΩcm以下に維持することが好ましく、上述の12Vを上限電圧とするオペアンプで位相シフト量を制御可能とするためには、窒化チタン中の酸素含有量を2.55重量%以下として抵抗率を240μΩcm以下に維持することが好ましい。
【0048】
また、窒化チタンはエッチング性能に優れているので、成膜した窒化チタンをエッチングすることにより、所定寸法のヒーターを精度よく形成できる。そのため、特に多くの熱光学位相シフタを備える多チャンネルの小型光学部品において、熱光学位相シフタを構成する各ヒーターの抵抗値を上記範囲内の所望の値に精度よく合致させることができ、電気特性の揃ったヒーターを形成することができる。
【0049】
窒化チタン中の酸素等の含有量は、成膜条件を変化させることにより調整することができ、膜の抵抗特性を調節してヒーター形状及び周辺回路構成に適した値とすることができる。その結果、電源回路の簡略化や、モジュールの小型化等を図ることができ、デバイスの一層の小型化・大規模化が可能となる。また、窒化チタンは安定性に優れるので、実際に熱光学位相シフタとして動作させた場合にも、化学的要因や熱履歴による抵抗値変化は±0.5%以内で全く問題とならないレベルであり、信頼性に優れた熱光学位相シフタが作製可能である。
【0050】
ヒーター4の膜厚は、所望の抵抗値となるように設計されるものであり、通常0.1〜0.5μm程度の一般的な厚さとすることができる。ヒーター4は、図1等に示すように、その両端部の電極部4a、4aと、その電極部間のヒーター部4bとから構成される。電極部4aの形状としては、例えば一辺が500μm程度の正方形とすることができ、また、ヒーター部4bの形状としては、例えば幅が30μm程度で長さが2mm程度の矩形状の細線形態とすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
以上の構成からなる本発明の熱光学位相シフタのヒーター上には、図2に示すように、ヒーター4が形成されたクラッド層2上に、さらにクラッド層6(以下、第2の上側クラッド層6という。)を設けることができる。この第2のクラッド層6は、例えばAP−CVDにより形成することができる。この第2の上側クラッド層6には、薄膜ヒーター4の電極部分4aに電力を供給するためのビア7が設けられる。電極用ビア7は、フォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチング(RIE)により形成することができる。その電極用ビア7への給電用配線(図示せず)は、光導波路および薄膜ヒーター4が全て形成された後に改めて成膜・パターニングして形成される。
【0052】
こうした組成からなる熱光学位相シフタは、図2に示すように、薄膜ヒーター4が絶縁物である第2の上側クラッド層6により覆われていることから、配線の自由度が高くなると同時に、薄膜ヒーター4を後工程で生じ得る変質から防ぎ、熱光学位相シフタの長期信頼性を確保することができる。なお、薄膜ヒーター4を埋め込む位置は上側クラッド層2b内部に限らず、光学的特性に影響を与えない場所であれば下側クラッド層2a内部でも構わない。
【0053】
さらに、本発明の熱光学位相シフタにおいては、図3に示すように、ヒーター4が形成されたクラッド層2上に、さらに保護層として絶縁膜8を成膜してもよい。その絶縁膜8としては、例えばSiO膜、Si、PSGなどの半導体プロセスにおいてパッシベーション膜として用いられる絶縁膜を挙げることができる他、ポリイミド系材料、PBO、PMMAや、フォトレジスト材料等の有機保護層も適用することができる。なお、上記のSiO膜、Si、PSGなどは、スパッタリング法などの成膜手段により形成される。こうした絶縁膜8を形成することにより、成膜工程の大幅な短時間化が可能となると共に、長期安定性に優れた熱光学位相シフタを作製することが可能である。
【0054】
絶縁膜8の成膜法としては、スパッタリング法の他に、低圧化学気相成長法(LP−CVD)、プラズマCVD法などの化学的気相成長法やEB蒸着など、ヒーター、例えば窒化チタン膜がダメージを受けない方法を利用できる。
【0055】
なお、図1〜図3に示す熱光学位相シフタにおいては、光導波路が埋め込み型導波路である場合について説明したが、本発明の熱光学位相シフタにおける光導波路の構造はこれらに限定されず、例えばリッジ型の導波路においても本発明の効果が十分に期待できる。また、薄膜ヒーターの形状も1本の直線状の形状に制限されるものではなく、複数の直線を組み合わせた形状又は曲線形状であってもよく、光導波路のコアを所望の温度に上昇させることで屈折率変化を誘起できる熱を発生させるものであればよい。
【0056】
次に、熱光学位相シフタの製造方法について図4の例を参照しつつ説明する。
【0057】
先ず、例えばシリコン基板上に、常圧化学気相成長法(AP−CVD)等でBPSGからなる下側クラッド層2aを所定の厚さに成膜し、さらにその下側クラッド層2a上に、常圧化学気相成長法(AP−CVD)等で下側クラッド層2aよりも屈折率の大きい材料で所定厚のコア用薄膜3aを成膜する(図4(a))。
【0058】
次に、フォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチング(RIE)によりコア用薄膜3aをパターニングして、基板1の表面に平行な方向に延び且つその方向に直行する断面が矩形状であるコア3を形成する。次に、コア3が形成された下側クラッド2a上に、そのコア3を埋め込むように上側クラッド層2bを成膜する。上側クラッド層2bは、例えばAP−CVDにより形成される。こうして、埋め込み型の光導波路を作製する(図4(b))。
【0059】
次に、光導波路上に(すなわち上側クラッド層2bの表面に)、薄膜ヒーター用材料をスパッタリング法等により所定膜厚で形成し、その後エッチング等により、光導波路上方に且つその光導波路に沿うように(すなわち上側クラッド層2bの表面で且つコア3の形成位置に沿うように)、所定形状の薄膜ヒーター4を形成する(図4(c))。なお、薄膜ヒーター材料として窒化チタンを用いた場合、その窒化チタン薄膜は、AP−CVDで成膜した上側クラッド層2bであるガラス膜との密着性やフォトレジストとの密着性に優れているので、密着膜としての薄い金属膜(例えばチタン薄膜やクロム薄膜など)を成膜する必要が無く、ウェットエッチングの制御性が非常に高いという利点がある。そのため、例えば窒化チタン薄膜をフォトリソグラフィおよびウェットエッチングで精度よくパターニングすることができ、電気的特性のそろった薄膜ヒーター4を形成することができる。
【0060】
この熱光学位相シフタの製造方法において、ヒーターの形成方法を窒化チタンを例にして詳細に説明する。
【0061】
窒化チタン薄膜は、チタンターゲットとプロセスガスとしての窒素ガスと酸素元素を含むガスとを少なくとも含有する混合ガスを用いた反応性スパッタリング法で好ましく成膜することができる。スパッタリング法としては、DCマグネトロンスパッタとRFスパッタが好適である。酸素元素を含むガスとしては酸素ガスや水蒸気が好適である。また、アルゴンガスを加えることにより、成膜速度を大きくすることができる。
【0062】
窒化チタン中への酸素等の含有量の調整は、各ガスの流量と共にスパッタ時ガス圧、基板温度、スパッタ電力の制御により行うことができる。特に、スパッタ時のガス圧と基板温度は、窒化チタンの膜質や残留応力にも大きく影響するので重要である。それぞれ限定はされないが、ガス圧としては1から10mTorr、基板温度としては500℃以下、特に100から250℃が好適である。また、ガス流量の代わりに酸素を含有するガスの分圧を制御することも好適である。
【0063】
窒化チタン薄膜の他の形成方法として、チタンターゲットと少なくとも窒素ガスを含むプロセスガスと水を吸着した基板を用いた反応性スパッタも好適である。スパッタ方法、スパッタ時のガス圧、基板温度、スパッタ電力の制御については、上述した方法と同様であり、水蒸気分圧の制御により窒化チタン中への他の元素の含有量を制御できる。また、スパッタチャンバー内に水の吸着がある場合には、基板に水を吸着させる必要はなく、水蒸気分圧のみ制御すればよい。いずれの方法においても、窒化チタン中の酸素等の元素の含有量を制御することにより、窒化チタンで作製されたヒーターの抵抗率や抵抗温度係数を制御することが可能となる。
【0064】
なお、抵抗率は、シリコン酸化膜上に窒化チタン薄膜を成膜した試料を用いて四端子法により測定し、算出した。また、抵抗温度係数は、実際に利用した薄膜ヒーター形状の一つである幅30μm・長さ2mm・厚さ0.5μmの構造の薄膜抵抗内蔵基板を作製し、高温槽中で温度を変えて(温度範囲は室温〜200℃程度)、それぞれの温度における直流抵抗を測定することにより算出した。
【0065】
次に、熱光学位相シフタの動作について説明する。
【0066】
本発明の熱光学位相シフタにおいては、薄膜ヒーター4への投入電源として、3〜6V程度の電源または上限電圧が12V程度のオペアンプからなる外部電源を用いることができる。薄膜ヒーター4の両電極部に電力が投入されると、薄膜ヒーター4が発熱し、光導波路の温度を上昇させることでその屈折率が変化する。屈折率が変化した光導波路は、その実効長が変化し、その結果、入力端(図示せず)から光導波路に入射された光の出力端(図示せず)における位相を変化させることができる。特に本発明の熱光学位相シフタにおいては、抵抗温度係数が小さい薄膜ヒーター4が使用されるので、加温前後の抵抗値の変化を非常に小さく抑えることができる。
【0067】
次に、本発明の熱光学位相シフタを動作させる回路について説明する。
【0068】
図5は、本発明に係るヒーターを形成した本発明の熱光学位相シフタを動作させる回路の一例を示すブロック図である。なお、図5中の破線は、窒化タンタルでヒーターを形成した従来タイプの熱光学位相シフタを動作させる回路の場合に必須となる電源を表している。
【0069】
本発明の熱光学位相シフタは、抵抗率60μΩcm以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターで光導波路を加熱し、その光導波路を通過する光の位相を変化させているので、抵抗率の大きい窒化タンタルを用いた従来の熱光学位相シフタとは異なり、最大電圧13V以上の電源が不要になり、5〜6Vの通常のDC電源のみで動作させることができるという特徴がある。しかも、そのヒーターは抵抗温度係数が小さいので、位相シフト量のモニターやモニターされた位相シフト量を調節するための制御回路を必要としなくても、位相シフト量と光導波路の温度上昇量とヒーターの発熱量との間の相互の関係を、V1電圧をモニターすることによって一意に制御することができる。その結果、制御回路および制御プログラムの大幅な簡略化が可能になると共に、制御回路の単純化を図ることができる。
【0070】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【0071】
(実施例1)
図1に示す態様の熱光学位相シフタを作製した。先ず、厚さ0.8mmのシリコン基板を準備し、そのシリコン基板上に、下側クラッド層2aとして膜厚15μmのBPSG(ボロンリンシリカガラス)を常圧化学気相成長法により形成した。次に、その下側クラッド層2a上に、クラッド層2(下側クラッド層2aおよび上側クラッド層2b)よりも屈折率が大きいGPSG(ゲルマニウムリンシリカガラス)からなるコア用薄膜を常圧化学気相成長法により5.5μm厚で形成し、引き続いてそのコア用薄膜をフォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチング(RIE)を行い、直線状に形成したコアの長手方向に直交する断面高さが5.5μmで幅が5.5μmの矩形状のコア3を形成した。次に、このコア3を含む下側クラッド層2a上に、上側クラッド層2bとして膜厚13μmのBPSG(ボロンリンシリカガラス)を常圧化学気相成長法により形成した。このとき、コア3とクラッド層2との比屈折率差Δは約0.65%とした。クラッドおよびコアに有機物材料を用いる場合においても、成膜にスピンコート法など異なる方法を用いる以外は、ほぼ同一の工程および設計となる。
【0072】
次いで、上側クラッド層2bの表面に、窒化チタンからなる幅30μm×長さ2mm×厚さ0.5μmの薄膜ヒーター4を形成し、その薄膜ヒーターの両端部には、一辺500μmの正方形状からなる電極部分4aを形成した。この薄膜ヒーターは、厚さ100nmの窒化チタン膜をスパッタリング法により成膜した後、エッチングして形成した。
【0073】
なお、窒化チタンからなるヒーターは、抵抗率が60μΩcmで抵抗温度係数が±100ppm/Kとなるように形成した。そうしたヒーター用窒化チタン膜の成膜は、スパッタアップタイプのインラインDCマグネトロンスパッタ装置でチタンターゲットに窒素ガスを導入した反応性スパッタにより、窒化チタン膜を成膜した。スパッタ装置のチャンバー内圧力は、9.9×10−7Torr以下に真空排気後、成膜時はチャンバー内に窒素を50sccm導入しながらオリフィス絞りを制御してチャンバー内圧力を3mTorrにした。基板温度は150℃、ターゲット上の基板移動速度は100mm/min、スパッタ電力は2.0kWにした。
【0074】
こうして作製した実施例1の熱光学位相シフタは、ヒーターの長さを2mmとしたため、入射光として波長が1550nmの光を使用すると、位相シフト量を半波長分とするのに必要なヒーターの温度変化量は約60℃となる。その温度範囲において、本実施例で用いた窒化チタンヒーターの抵抗温度係数は、実測した結果約100ppm/Kであった。したがって、60℃の温度変化での抵抗値変化の割合は0.6%となり、非常に小さな変動に抑えることができた。一方、比較例として、抵抗温度係数値が大きい材料、例えば約3×10−3/Kの白金薄膜を用いた場合、60℃の温度上昇における抵抗値変化は18%に達し、ヒーターとして利用する場合には大きな問題となった。
【0075】
図6は、窒化チタンからなるヒーターと白金からなるヒーターの温度に対する抵抗値変化を示したものである。抵抗温度係数の違いにより、100℃の温度変化後の抵抗値は大きく異なり、明らかに窒化チタンの方が抵抗値が一定しているため、外部回路により容易に投入電力量を制御可能であることがわかる。
【0076】
実施例1の熱光学位相シフタは、抵抗率と抵抗温度係数が小さく、作製が容易な窒化チタンでヒーターを形成しているので、電源回路の簡略化等、モジュールの小型化を図ることができ、デバイスの一層の小型化・大規模化が可能となる。また、窒化チタンは安定性にも優れているので、動作中の化学的要因や熱履歴による抵抗値変化が±0.5%以内と小さく、信頼性に優れた熱光学位相シフタが作製できた。
【0077】
(実施例2)
図2に示す態様の熱光学位相シフタを作製した。上記実施例1の熱光学位相シフタは、薄膜ヒーター4が上側クラッド層2bの表面に形成されているが、この実施例2の熱光学位相シフタは、実施例1で作製された熱光学位相シフタの薄膜ヒーター4を覆うように厚さ1.0μmの第2の上側クラッド層6をAP−CVD法により形成し、さらに、第2の上側クラッド層6には、薄膜ヒーター4の電極部分4aに電力を供給するためのビア7を設けたものである。なお、AP−CVD法でPSGからなる第2の上側クラッド層6を形成できたのは、第2の上側クラッド層6が900℃以下の低温プロセスで成膜・アニール工程を行うことができることと、窒化チタンがこの温度に耐えられることにより可能となったためである。電極用ビア7の形成は、フォトリソグラフィ及びRIEにより行った。その後、給電用配線(図示せず)を成膜・パターニングし、実施例2の熱光学位相シフタを製造した。
【0078】
(実施例3)
図3に示す態様の熱光学位相シフタを作製した。上記実施例2の熱光学位相シフタは、薄膜ヒーター4を第2の上側クラッド層6で覆っているが、この実施例3の熱光学位相シフタは、実施例1で作製された熱光学位相シフタの薄膜ヒーター4を覆うように、保護層またはバッファ層として作用する厚さ1μmのSiO膜(絶縁膜8)をスパッタリング法で成膜したものである。なお、ヒーターを構成する窒化チタンは化学的に安定であるので、SiO膜に物理的な保護層として、また絶縁層として、またはバッファ層としての役目を問題なく持たせることができる。
【0079】
こうして作製された熱光学位相シフタは、実施例2と同様に、給電用配線の配置自由度が高く、薄膜ヒーター4を後工程で生じ得る変質から防ぐことができ、小型で長期安定性に優れた熱光学位相シフタを作製することができた。また、アニール工程も必要無く、成膜工程の大幅な短時間化が可能となった。
【0080】
(実施例4)
図7は、所定形状の薄膜ヒーターを用いた際の印加電圧と位相シフト量との関係を示すグラフである。このグラフは、実施例1の熱光学位相シフタを用いた場合であって、(a)は、抵抗値80Ωで抵抗温度係数±500ppm/Kに調整した薄膜ヒーター、あるいは抵抗率60μΩcmで抵抗温度係数±500ppm/Kに調節した窒化チタン(酸素含有量:1.28重量%)からなる薄膜ヒーター(厚さ0.5μm×幅30μm×長さ2mm)を形成したものを使用し、(b)は、抵抗値320Ωで抵抗温度係数±500ppm/Kに調整した薄膜ヒーター、あるいは抵抗率240μΩcmで抵抗温度係数±500ppm/Kに調節した窒化チタン(酸素含有量:2.55重量%)からなる薄膜ヒーター(厚さ0.5μm×幅30μm×長さ2mm)を形成したものを使用した。なお、このとき導波光波長1.55μmの位相シフトπに必要な薄膜ヒーターへの最大投入電力は450mWであった。
【0081】
図7より明らかなように、(a)の曲線に該当する薄膜ヒーターは、5〜6V電源で位相シフト量を可変でき、(b)の曲線に該当する薄膜ヒーターは、上限電圧12Vのオペアンプで位相シフト量を可変できた。なお、φを位相シフト量(πで規格化)、aを係数、Eをヒーターに印加する電圧(V)とすると、(a)の曲線は、φ=a×E、a≧0.028、の関係を示しており、(b)の曲線は、φ=a×E、a≧0.0069、の関係を示している。
【0082】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の熱光学位相シフタによれば、抵抗値もしくは抵抗率と抵抗温度係数が所定値以下のヒーターにより光導波路が加熱されるので、動作中のヒーター自体の抵抗値の変化が極めて小さく、その結果、電流および電圧のいずれか一方のみをモニターするだけで光導波路の温度制御を正確に行うことができる。そのため、個々の熱光学位相シフタごとの位相シフト量のモニターやモニターされた位相シフト量を調節するための制御回路を必要としなくても、位相シフト量と光導波路の温度上昇量とヒーターの発熱量との間の相互の関係を一意に制御することができ、制御回路および制御プログラムの大幅な簡略化が可能になる。さらに、この熱光学位相シフタは、3〜6V程度の電圧で位相シフト量を可変できるので、電子回路で一般的に使用されている電源を使用でき、その結果、熱光学位相シフタを動作させる制御回路の単純化を図ることができるという極めて甚大な効果がある。
【0083】
また、本発明によれば、窒化チタンまたは窒化チタンを主成分とする材料は上述した抵抗率と抵抗温度係数を満たすと共にエッチング性能に優れているので、多チャンネル化の場合において、各ヒーターの抵抗値を精度よく合致させることができ、電気特性の揃ったヒーターを容易に形成することができる。また、窒化チタンまたは窒化チタンを主成分とする材料は、大気中の酸素と反応しないなど化学的に安定であると共に熱履歴などによる抵抗率変化も小さいので、長期にわたって安定して動作させることができる優れた熱光学位相シフタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱光学位相シフタの一例を示す平面図(a)およびA1−A1’断面図(b)である。
【図2】本発明の熱光学位相シフタの他の一例を示す平面図(a)およびA1−A1’断面図(b)である。
【図3】本発明の熱光学位相シフタのさらに他の一例を示す平面図(a)およびA1−A1’断面図(b)である。
【図4】本発明の熱光学位相シフタの製造方法の工程順を一例を説明図である。
【図5】本発明に係るヒーターを形成した本発明の熱光学位相シフタを動作させる回路の一例を示すブロック図である。
【図6】窒化チタンからなるヒーターと白金からなるヒーターの温度に対する抵抗値変化を示したものである。
【図7】所定形状の薄膜ヒーターを用いた際の印加電圧と位相シフト量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板
2 クラッド層
2a 下側クラッド層
2b 上側クラッド層
3 コア
3a 薄膜
4 薄膜ヒーター
4a 電極部分
4b ヒーター部分
5 第1の上側クラッド層
6 第2の上側クラッド層
7 ビア
8 絶縁膜

Claims (11)

  1. 光導波路を加熱して該光導波路を通過する光の位相を変化させる熱光学位相シフタであって、
    前記光導波路の加熱が、抵抗値80Ω以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターによりなされることを特徴とする熱光学位相シフタ。
  2. 光導波路を加熱して該光導波路を通過する光の位相を変化させる熱光学位相シフタであって、
    前記光導波路の加熱が、抵抗値320Ω以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターによりなされることを特徴とする熱光学位相シフタ。
  3. 光導波路を加熱して該光導波路を通過する光の位相を変化させる熱光学位相シフタであって、
    前記光導波路の加熱が、抵抗率60μΩcm以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターによりなされることを特徴とする熱光学位相シフタ。
  4. 光導波路を加熱して該光導波路を通過する光の位相を変化させる熱光学位相シフタであって、
    前記光導波路の加熱が、抵抗率240μΩcm以下で抵抗温度係数±1000ppm/K以下のヒーターによりなされることを特徴とする熱光学位相シフタ。
  5. 光導波路を加熱して該光導波路を通過する光の位相を変化させる熱光学位相シフタであって、
    前記光導波路を加熱するヒーターが、窒化チタンまたは窒化チタンを主成分とする材料で形成されていることを特徴とする熱光学位相シフタ。
  6. 前記光導波路が、基板上に設けられたクラッド層と、当該クラッド層内に設けられたコアとからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタ。
  7. 前記ヒーターが、クラッド層内に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタ。
  8. 前記ヒーターがクラッド層の表面に設けられ、かつ、当該ヒーターが前記クラッド層とは異なる材料からなる保護層で覆われていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタ。
  9. 前記クラッド層および前記コアが、石英ガラスまたは珪酸塩系ガラスにより形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタ。
  10. 前記クラッド層および前記コアが、有機物により形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタ。
  11. 前記基板が、石英ガラス、珪酸塩系ガラスまたは半導体により形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱光学位相シフタ。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2010098295A1 (ja) * 2009-02-25 2010-09-02 日本電気株式会社 光導波路、光導波回路、および光導波回路の製造方法
WO2015157963A1 (zh) * 2014-04-17 2015-10-22 华为技术有限公司 热光移相器

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