JP2004279484A - 位相シフトマスク - Google Patents
位相シフトマスク Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004279484A JP2004279484A JP2003067224A JP2003067224A JP2004279484A JP 2004279484 A JP2004279484 A JP 2004279484A JP 2003067224 A JP2003067224 A JP 2003067224A JP 2003067224 A JP2003067224 A JP 2003067224A JP 2004279484 A JP2004279484 A JP 2004279484A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- region
- phase shift
- transmittance
- light
- shift mask
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Preparing Plates And Mask In Photomechanical Process (AREA)
Abstract
【課題】本発明は、用いる透過率調整部を透過する透過光の位相のシフト量および透過率の調整が容易であり、かつ容易に製造が可能であることから最終的に低コストで製造することができる位相シフトマスクを提供することを主目的とするものである。
【解決手段】本発明は、上記目的を達成するために、透明基板と、上記透明基板上に形成された光透過領域と、上記光透過領域に対し透過光の位相が実質上反転する位相シフト領域と、上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相であり、上記光透過領域と光透過率が異なるように調整する透過率調整領域とを有し、上記透過率調整領域がタンタルを主成分とする透過率調整部を透明基板上に配置してなる領域であることを特徴とする位相シフトマスクを提供する。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明は、上記目的を達成するために、透明基板と、上記透明基板上に形成された光透過領域と、上記光透過領域に対し透過光の位相が実質上反転する位相シフト領域と、上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相であり、上記光透過領域と光透過率が異なるように調整する透過率調整領域とを有し、上記透過率調整領域がタンタルを主成分とする透過率調整部を透明基板上に配置してなる領域であることを特徴とする位相シフトマスクを提供する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体デバイス製造に用いられるフォトマスクに係わり、特に、ウエーハ上に微細なパターンを高密度に投影形成する、位相シフトマスクとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の半導体集積回路素子の微細化に伴い、リソグラフィ工程での露光波長の短波長化とともに、位相シフトマスク(位相シフトフォトマスクあるいは位相シフトレチクルともいう)を用いた位相シフト露光法が広く使われるようになってきている。位相シフトマスクには位相シフターが設けられており、ウエーハへの転写露光時に位相シフターを通り位相が変わった光と、位相シフターを通らずに位相が変わっていない光との干渉を利用して、解像力を向上させることができる。
【0003】
このような位相シフトマスクについては、特許文献1および特許文献2にすでに基本的な考え、原理は記載されている。位相シフトマスクを用いた露光法は、同じ投影露光装置を使用しても、マスクを従来のフォトマスクから位相シフトマスクに代えることにより、マスクからウエーハに転写されるデバイスパターンの解像度を上げることができると共に、焦点深度を深くすることができるという大きな特徴を有する。
【0004】
位相シフトマスクにはレベンソン型、ハーフトーン型、クロムレス型、アウトライン型等の各種方式があり、さらにそれぞれの方式において、位相シフターが遮光膜パターンを介して合成石英ガラス等の透明基板の上側に設ける構造(シフター上置き型)と透明基板をエッチングにより彫り込んで位相シフター部とする構造(基板彫り込み型)等がある。
【0005】
レベンソン型位相シフトマスクは、大きな解像度向上効果を示すが、適用できるパターン配置に制約がある。半導体素子の集積度が高くなるにつれて、位相シフトマスクと共にトリムマスクを使って縮小した長さを有するゲートが製造されている。トリムマスクとは、位相シフトマスクを通った光のうちウエーハに達してはならない光を遮断するマスクを言う。所望の転写パターンを得るために位相シフトマスクと相補関係を持つトリムマスクによる2回の露光が必要となるため、工程増加によりスループットが低くなることが問題であった。
【0006】
ハーフトーン型位相シフトマスクは、遮光部に相当する吸収体が一部光を透過し、この透過光と主パターンの光とは位相が反転しているため、境界部では位相反転効果による光強度低下が起こり光強度分布の裾の広がりを抑えることができる。しかしながら、他の方式の位相シフトマスクに比べると解像度向上効果は低い上、疎密パターン依存性があることが問題であった。
【0007】
アウトライン型位相シフトマスクは、ハーフトーン膜と位相シフターを組み合わせた方式で、解像度向上効果が大きく、疎密パターンの依存性は小さいという利点がある。例えば、このようなハーフトーン膜を用いるアウトライン型位相シフトマスクの例は、非特許文献1に示されている。
【0008】
また、クロムレス型位相シフトマスクは、開口部に位相シフターのエッジがあるとその部分では位相が0度から180度まで急激に変化しているため、転写結像面に光強度零のラインができることになる。
【0009】
従来のクロムレス型位相シフトマスクにおいては、位相シフターのエッジにおける光干渉を利用しているため、いずれの部分においても同一の線幅のパターンしか形成できないという問題があった。すなわち、露光量により線幅を変化させることは可能であるが、パターン毎に線幅を変えることができず、パターン形成の自由度が低いという問題がある。
【0010】
これらの問題に対応するもので、任意のパターン幅でかつ少ない工程で所望のパターンの転写を可能にする方法としては、特許文献3にクロムレス型位相シフトマスクにクロム遮光膜からなる補助パターンを設けた方法が記載されている。
【0011】
さらに、特許文献4にはクロムレス型位相シフトマスクに低透過率ハーフトーンパターンを設けた方法が記載されている。
【0012】
しかしながら、ハーフトーン層を用いる場合、スパッタ等の成膜方法で露光光の透過に対して上記の条件を満たした上で所望の透過率に制御することが困難で、製造工程が煩雑になるためマスク製造コストが高くなり、またピンホール欠陥が増大する欠点がある。
【0013】
このようなハーフトーン層の例としては、特許文献5で示される金属や金属シリサイドの酸化膜、窒化膜などが一般的に使用される。しかしながら、このような位相シフトマスクは一般的に製造工程が複雑でコストが高いという問題点があった。
【0014】
例えば、図7および図8に示される従来のアウトライン型の位相シフトマスクにおいては、光透過領域1の周囲に位相シフト領域2が形成されており、この光透過領域1と位相シフト領域2との透過光の位相が実質反転するように設けられている。そして、さらに上記位相シフト領域2上には、上記位相シフト領域2の表面に形成された透過率調整部4を有する透過率調整領域3が形成されている。そして、この透過率調整領域3の透過光は、上記位相シフト領域2から透過した光とその位相が実質的に反転するように形成されている。このようなアウトライン型の位相シフトマスクは、光透過領域1と位相シフト領域2と透過率調整領域3との複合的な光強度により転写像が形成される。
【0015】
このようなアウトライン型の位相シフトマスクに用いられる透過率調整部は、通常透過率と位相のシフトの両者を調整する必要があり、設計的に困難な場合がある。また、これらを調整するために多層化したものもあるが、コストおよび工程面で問題となる場合がある。
【0016】
また、図9はクロムレス型の位相シフトマスクを示すものであり、このクロムレス型の位相シフトマスクは、光透過領域1と位相シフト領域2との境界部分の光透過領域1側に透過率調整部4が形成されて透過率調整領域3とされている。
【0017】
このようなクロムレス型の位相シフトマスクは光透過領域1と位相シフト領域2と透過率調整領域3との複合的な光強度により転写像が形成されるものであるが、この場合の透過率調整部も上記アウトライン型の場合と同様の問題点を有するものである。
【0018】
【特許文献1】
特開昭58−173744号
【特許文献2】
特公昭62−59296号
【特許文献3】
特開2001−358070号
【特許文献4】
特開2001−356466号
【特許文献5】
特許第3262302号
【非特許文献1】
2002 Symposium On VLSI Technology Digest of Technical Papers, p.200−201, A.Misaka et al., ”Super−resolution enhancement method with phase−shifting mask available for random patterns”
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、用いる透過率調整部を透過する透過光の位相のシフト量および透過率の調整が容易であり、かつ容易に製造が可能であることから最終的に低コストで製造することができる位相シフトマスクを提供することを主目的とするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、透明基板と、上記透明基板上に形成された光透過領域と、上記光透過領域に対し透過光の位相が実質上反転する位相シフト領域と、上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相であり、上記光透過領域と光透過率が異なるように調整する透過率調整領域とを有し、上記透過率調整領域がタンタルを主成分とする透過率調整部を透明基板上に配置してなる領域であることを特徴とする位相シフトマスクを提供する。
【0021】
タンタルを主成分とする透過率調整部は、膜厚等を変化させて透過率を変化させた場合でも、光透過領域の透過光位相と実質上同位相の透過光を得ることができる領域を有する。したがって、光透過領域と、この光透過領域に対し透過光の位相が実質上反転する位相シフト領域と、上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相であり、上記光透過領域と光透過率が異なるように調整する透過率調整領域とを所定の設計により配置させた種々の位相シフトマスクを簡便にかつ低コストで提供することが可能となる。
【0022】
このような本発明の位相シフトマスクの一例としては、上記光透過領域と上記位相シフト領域との境界部分に転写像を形成する位相シフトマスクであって、上記透過率調整領域が上記境界部分の光透過領域側に形成されていることを特徴とするいわゆるクロムレス型の位相シフトマスクや、上記位相シフト領域に沿って転写像を形成する位相シフトマスクであって、上記位相シフト領域に沿って存在する上記位相シフト領域と他の領域との二つの境界部分の内の少なくとも一方の境界部分の他の領域側に上記透過率調整領域が形成されていることを特徴とするいわゆるアウトライン型の位相シフトマスクを挙げることができ、本発明においては、上述したタンタルを主成分とする透過率調整部が配置されてなる透過率調整領域の利点を活かすことができる点から、これらクロムレス型の位相シフトマスクおよびアウトライン型の位相シフトマスクとすることが好ましい。
【0023】
また、本発明においては、上記透過率調整領域の透過率が、上記光透過領域の透過率を100とした場合に1〜60の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相とすることが比較的容易にできるからである。
【0024】
さらに、上記本発明においては、上記透過率調整部が、タンタルとクロムとの合金を主成分とするものであることが好ましい。タンタルとクロムとの合金を主成分とすることにより、安定して広い透過率の範囲で上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相とすることが可能となるからである。
【0025】
本発明はまた、以下に示す二つの位相シフトマスクの製造方法を提供する。
【0026】
第1の製造方法は、透明基板上にタンタルを主成分とし、光透過率を調整する透過率調整層を形成する透過率調整層形成工程と、上記透過率調整層上に第1のレジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、上記第1レジスト層に対しエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分の透過率調整層と透明基材とをエッチングして、位相シフト領域を形成する位相シフト領域形成工程と、上記位相シフト領域が形成された基板上に第2レジスト層を形成する第2レジスト層形成工程と、上記第2レジスト層に対してエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、光透過領域に相当する部分の透過率調整層をエッチングして、光透過領域を形成する光透過領域形成工程とを有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法である。
【0027】
また、第2の製造方法は、透明基板上にタンタルを主成分とし、光透過率を調整する透過率調整層を形成する透過率調整層形成工程と、上記透過率調整層上に第1のレジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、上記第1レジスト層に対しエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分および光透過領域に相当する部分の透過率調整層をエッチングする光透過領域形成工程と、上記光透過領域が形成された基板上に第2レジスト層を形成する第2レジスト層形成工程と、上記第2レジスト層に対してエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分の透明基板をエッチングして、位相シフト領域を形成する位相シフト領域形成工程とを有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法である。
【0028】
いずれの製造方法も、上述した本発明の位相シフトマスクを効率的に製造することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の位相シフトマスクおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0030】
A.位相シフトマスク
まず、本発明の位相シフトマスクについて説明する。本発明の位相シフトマスクは、透明基板と、上記透明基板上に形成された光透過領域と、上記光透過領域に対し透過光の位相が実質上反転する位相シフト領域と、上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相であり、上記光透過領域と光透過率が異なるように調整する透過率調整領域とを有し、上記透過率調整領域がタンタルを主成分とする透過率調整部が透明基板上に形成されてなる領域であることを特徴とするものである。
【0031】
従来用いられているような位相シフトマスクのハーフトーン膜等と称される透過率調整部は、位相シフトマスクの設計上、所定の位相シフトが生じかつ所定の透過率である必要があった。しかしながら、このような条件を満たすようにスパッタリング等の成膜方法により成膜することは非常に難しく、製造工程が煩雑になるため最終的に得られる位相シフトマスクの製造コストが高くなってしまうといった問題があった。
【0032】
本発明者等は、上記問題を解決すべく種々検討した結果、タンタルを主成分とする金属薄膜層からなる透過率調整部が配置されてなる透過率調整領域は、透過率の低い領域から高い領域までの広い範囲の領域にわたり、透過率調整領域の透過光の位相が、光透過領域の透過光位相と実質的に同位相であるという新たな知見を得、この知見に基づき本発明を完成させるに至ったものである。
【0033】
図1は、クロムを3重量%含むタンタル−クロム合金を用い、膜厚を変えて成膜して、その波長193nmの光に対する透過率と位相差との関係を示すものである。図1に示すように、このようなタンタルを主成分とする金属薄膜は、透過率の高い領域から低い領域にわたる広い領域で、位相差が実質的に0近辺の領域となる。これは、所定の範囲で透過率を変化させても位相の変化が起こらないことを示すものである。なお、測定は、レーザーテック社製、位相差透過率測定装置MPM−193により測定した値である。
【0034】
すなわち、このようなタンタルを主成分とする透過率調整部は、透過率調整領域の透過光の位相が、光透過領域の透過光位相と実質的に同位相になるような調整が容易であることから、位相シフトマスクの構造を複雑にすること無く、境界部の位相反転による光強度低下効果が大きく、解像度と焦点深度が良好な位相シフトマスクが製造できるのである。
【0035】
以下、このような本発明の位相シフトマスクについて、透過率調整領域、光透過領域、および位相シフト領域に分けて説明する。
【0036】
1.透過率調整領域
本発明における透過率調整領域は、透明基板上にタンタルを主成分とする透過率調整部が配置されてなり、光透過領域の透過光位相と実質上同位相であり、かつ光透過領域と光透過率が異なるように調整された領域である。
【0037】
(透過率調整部)
本発明に用いられる透過率調整部は、タンタルを主成分とする金属薄膜により構成されるものである。
【0038】
ここで、タンタルを主成分とするとは、上述したような特性を有する程度にタンタルが含まれていることを示すものであり、具体的にはタンタルを少なくとも70重量%以上含有することことが好ましい。
【0039】
タンタル以外に含まれる金属としては、クロムを含むものであることが好ましい。クロムを含有させることにより、タンタルを主成分とする膜のエッチングをクロムに近い条件でエッチングすることが可能である。また、フォトマスクに使用される遮光膜や透過率調整膜の主流はクロムであるため、従来あるエッチングシステムで対応可能であるという利点を有する。好ましいクロムの含有率としては、クロムを30重量%以下の含有とすることが好ましい。
【0040】
また、必要に応じて他の材料を含有させることも可能である。具体的には、アルミニウム、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、シリコン等が含有される。
【0041】
本発明に用いられる透過率調整部の製造方法としては、特に限定されるものではないが、PVD法、中でもスパッタリング法により上記タンタルを主成分とする金属薄膜である透過率調整層を形成し、これをフォトリソグラフィ法によりパターニングすることによりパターン状の透過率調整部とされる。
【0042】
(透明基板)
本発明においては、上記透過率調整部が透明基板上に配置されて透過率調整領域とされる。この透明基板としては、通常のフォトマスクや位相シフトマスクに使用される合成石英基板や単結晶ホワイトサファイア、短波長紫外線の透過率が高いフッ化カルシウムやフッ化マグネシウム等の材料が使用される。
【0043】
(透過率調整領域)
本発明における透過率調整領域は、上記透明基板上に上述した透過率調整部が配置されてなるものである。この透過率調整領域における光の透過率は、特に限定されるものではないが、後述する光透過領域における光の透過率を100とした場合に1〜60の範囲内であることが好ましく、特に3〜50の範囲内であることが好ましい。この範囲内が透過率調整領域として必要とされる可能性が高い範囲であり、かつ後述する光透過領域の透過光位相と実質的に同一の位相とするのが容易な範囲であるからである。
【0044】
なお、上記光の透過率は、本発明の位相シフトマスクが用いられる光の波長におけるものであり、例えば、g線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)等の光に対するものである。
【0045】
本発明において、後述する光透過領域の透過光位相と実質上同位相とは、転写像を形成できる程度に同位相となっていればよいのであり、具体的には±10°の範囲内、好ましくは±3°の範囲内である。
【0046】
(その他)
本発明に用いられる透過光調整領域の透過光調整部表面には、必要に応じてさらにクロムやクロム化合物からなる遮光膜や反射防止膜、珪素酸化物やSOGからなるエッチングストッパーや位相シフト層等を設けることも可能である。
【0047】
2.光透過領域
本発明における光透過領域は、透過光が上記透明基板の透過光と同位相となる領域であれば特に限定されるものではないが、通常は透明基板をそのまま用いて光透過領域とされる。
【0048】
透明基板については、上記透過率調整領域において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0049】
3.位相シフト領域
本発明における位相シフト領域とは、上記光透過領域に対し透過光の位相が実質上反転する領域である。具体的には、透明基板が露光光の位相差180°分彫り込まれた領域や、露光光の位相差180°の位相シフト部が透明基板上に配置された領域である。このような位相シフト部としては、例えば露光光の波長の半分の光路差が生じる厚みを有する透過性膜等を用いて作成することができる。
【0050】
ここで、実質上反転するとは、上記光透過領域の透過光に対して位相が反転することにより、転写像が形成できる程度の範囲内であれば特に限定されるものではないが、具体的には180°±10°の範囲内、特に180°±3°の範囲で光透過領域の透過光に対して位相がシフトしている状態を示すものである。
【0051】
4.具体的態様
本発明の位相シフトマスクは、上述した透過光調整領域、光透過領域、および位相シフト領域がパターン状に形成されることにより所定の転写像が被露光材料表面に得られるものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、本発明の位相シフトマスクの利点を十分に発揮することができる点から、いわゆるアウトライン型の位相シフトマスクおよびのいわゆるクロムレス型位相シフトマスクであることが好ましい。以下、それぞれの位相シフトマスクについて説明する。
【0052】
(1)アウトライン型位相シフトマスク
本発明におけるアウトライン型位相シフトマスクは、上記光透過領域と上記位相シフト領域と上記透過率調整領域との複合的な光強度により転写像を形成する位相シフトマスクであって、上記位相シフト領域に沿って存在する上記位相シフト領域と他の領域との二つの境界部分の内の少なくとも一方の境界部分の他の領域側に上記透過率調整領域が形成されていることを特徴とするものである。
【0053】
このような本発明におけるアウトライン型位相シフトマスクの一例について図2を用いて具体的に説明する。透明基板5の中央部には、透明基板5表面が露出した光透過領域1が形成されている。この光透過領域1の周囲を囲うように位相シフト領域2が形成されている。この例における位相シフト領域2は、透明基板5が光透過領域1の透過光に対して位相差が180°となるように彫り込まれて形成されている。そして、この位相シフト領域2の外側にはタンタルを主成分とする金属薄膜で形成されている透過率調整部4が形成され、透過率調整領域3とされている。
【0054】
この例は、位相差シフト領域2と他の領域との境界部分の内の一方の境界部分に透過率調整領域が形成された例であるが、図3は、位相シフト領域2の両側の境界部分に透過率調整部4が形成された例を示すものである。この例においても、透明基板5の中央部には、透明基板5表面が露出した略正方形状の光透過領域1が形成されている。この光透過領域1の各4辺の外側には各辺と同程度の長さの位相シフト領域2が形成されている。この位相シフト領域2も上記例と同様に透明基板5が光透過領域1の透過光に対して位相差が180°となるように彫り込まれて形成されている。そして、この位相シフト領域に沿って存在する二つの他の領域との境界部分にはタンタルを主成分とする薄膜からなる透過率調整部4が形成され、透過率調整領域3とされている。この例では、透過率調整領域は、光透過領域1および位相シフト領域2を除く全て領域に形成されているが、本発明においては、特にこれに限定されるものではなく、境界部分から被露光材料表面に転写像を形成するのに必要な範囲で形成されていればよい。
【0055】
(2)クロムレス型位相シフトマスク
本発明におけるクロムレス型位相シフトマスクは、上記光透過領域と上記位相シフト領域と上記透過率調整領域との複合的な光強度により転写像を形成する位相シフトマスクであって、上記透過率調整領域が光透過領域と位相シフト領域との境界部分の光透過領域側に形成されていることを特徴とするものである。
【0056】
このようなクロムレス型位相シフトマスクについて、図4を用いて具体的に説明する。この例のクロムレス型位相シフトマスクは、中央部に光透過領域1の透過光に対して位相差が180°となるように透明基板5が彫り込まれて形成された位相シフト領域2が設けられており、その周囲の光透過領域1との境界部分の光透過領域1側にはタンタルを主成分とする薄膜からなる透過率調整部4が形成され、透過率調整領域3とされている。
【0057】
この場合の透過率調整部4の幅も、境界部分から被露光材料表面に転写像を形成するのに必要な範囲で形成されていればよい。
【0058】
B.位相シフトマスクの製造方法
次に、本発明の位相シフトマスクの製造方法について説明する。本発明の位相シフトマスクの製造方法には、二つの態様がある。以下、それぞれについて説明する。
【0059】
1.第1実施態様
本発明の位相シフトマスクの製造方法の第1実施態様は、透明基板上にタンタルを主成分とし、光透過率を調整する透過率調整層を形成する透過率調整層形成工程と、上記透過率調整層上に第1のレジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、上記第1レジスト層に対しエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分の透過率調整層と透明基材とをエッチングして、位相シフト領域を形成する位相シフト領域形成工程と、上記位相シフト領域が形成された基板上に第2レジスト層を形成する第2レジスト層形成工程と、上記第2レジスト層に対してエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、光透過領域に相当する部分の透過率調整層をエッチングして、光透過領域を形成する光透過領域形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0060】
以下、図面を用いて本実施態様の位相シフトマスクの製造方法について、具体的に説明する。
【0061】
図5は、本実施態様の位相シフトマスクの製造方法の一例を示すものである。本実施態様においては、まず透明基板10上にタンタルを主成分とする透過率調整層11を形成する透過率調整層形成工程が行われる(図5A参照)。透過率調整層11の形成方法は、特に限定されるものではないが、通常はスパッタリング法等のPVD法が用いられる。
【0062】
なお、この際用いられるタンタルを主成分とする透過率調整層の材料や透明基板の材料等については、上記「A.位相シフトマスク」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0063】
次に、図5Bに示すように、上記透過率調整層11の表面に第1レジスト層12が形成され(第1レジスト層形成工程)、その後位相シフト領域が形成される部分に対して、パターン状に露光が行われる。ここで用いられるレジストは、特に限定されるものではないが、電子線レジストが好適に用いられ、中でも化学増幅型レジストが特に好適に用いられる。露光は、用いるレジストに応じた種類のエネルギー線により行われるが、上述したように電子線レジストが好ましいことから、露光も電子線により行われることが好ましい。
【0064】
次いで、アルカリ現像液等により現像し、レジストパターンを形成し(図5C参照)、次いで透過率調整層11をエッチングした後、透明基板10をエッチングすることにより、位相シフト領域13を形成する位相シフト領域形成工程を行う(図5D参照)。
【0065】
この位相シフト領域形成工程で行うエッチングは、特に限定されるものではないが、ドライエッチングが好ましく、通常透過率調整層11をエッチングする場合は塩素ガスを主成分とするエッチングガスにてドライエッチングを行い、透明基板のエッチングはフルオロカーボン系ガスを主成分とするエッチングガスを用いてエッチングを行うことが好ましい。
【0066】
次いで、第1レジスト層を除去した後(図5E参照)、第2レジスト層14を形成する第2レジスト塗布工程を行う。この際用いられる第2レジストは特に限定されるものではないが、紫外線硬化型のレジストが好適に用いられる。そして用いたレジストに応じたエネルギー線により露光が行われる(図5F参照)。
【0067】
そして第2レジスト層14を現像した後(図5G)、さらに塩素ガスを主成分とするエッチングガス等でドライエッチングを行うことにより露出している透過率調整層11を除去して光透過領域16が形成される光透過領域形成工程がおこなわれ(図5H参照)、残った第2レジスト層14を除去して、最終的に透過率調整部15が位相シフト領域13の両側に形成された位相シフトマスクが得られる(図5I参照)。
【0068】
2.第2実施態様
次に、本発明の位相シフトマスクの製造方法の第2実施態様について説明する。本発明の第2実施態様は、透明基板上にタンタルを主成分とし、光透過率を調整する透過率調整層を形成する透過率調整層形成工程と、上記透過率調整層上に第1のレジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、上記第1レジスト層に対しエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分および光透過領域に相当する部分の透過率調整層をエッチングする光透過領域形成工程と、上記光透過領域が形成された基板上に第2レジスト層を形成する第2レジスト層形成工程と、上記第2レジスト層に対してエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分の透明基板をエッチングして、位相シフト領域を形成する位相シフト領域形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0069】
この第2実施態様について、図6を用いて具体的に説明する。本実施態様が、上記第1実施態様と異なるのは、上記第1実施態様がまず位相シフト領域を形成するものであるのに対し、本実施態様はまず光透過領域を形成する点にある。その他用いる材料や露光方法等に関しては、第1実施態様と同様であるので、ここでは形成順序のみ説明する。
【0070】
まず、図6Aに示すように、透明基板10上に透過率調整層11を形成し(透過率調整工程)、次いで、第1レジスト層12を形成し(第1レジスト層形成工程)、位相シフト領域および光透過領域に相当する部分に対して露光を行う(図6B)。第1レジスト層12を現像した後(図6C)、ドライエッチングにより透過率調整層11をエッチングして、光透過領域16を形成すると共に、位相シフト領域13の透過率調整層を除去する(光透過領域形成工程、図6D参照)。
【0071】
次いで、残った第1レジスト層12を除去した後(図6E参照)、第2レジスト層14を全面に形成する(第2レジスト層形成工程)。そして、位相シフト領域13を形成する部分に露光を行う(図6F参照)。
【0072】
第2レジスト層14を現像した後(図6G参照)、透明基板10をエッチングすることにより(図6H参照)、位相シフト領域13が形成される(位相シフト領域形成工程)。そして、最後に残った第2レジスト層14を除去することにより位相シフトマスクを得ることができる(図6I参照)。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0074】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。本実施例は、上記図5にしめすような本発明の位相シフトマスクの製造方法の第1実施態様により位相シフトマスクを製造したものであり、図3に示すような位相シフトマスクを得たものである。
【0075】
まず、光学研磨された6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板上に、タンタルとクロムの合金からなる薄膜を透過率約9%かつ位相差ほぼ0度となるようにスパッタ法で成膜し、透過率調整層を形成したマスクブランクス(A)を形成した。
【0076】
次に、上記のマスクブランクス(A)上に、電子線レジストとして化学増幅型レジスト(東京応化工業(株)製CAP209)をスピンコーティング法により塗布し、130℃で20分間の塗布後ベーク(プリベーク)し、厚さ0.3μmの均一な第1レジスト層51を得た。次に、上記の基板に常法に従って、電子線露光装置((株)日立製作所製HL−800M)によりパターン描画を行なった(図5(B))。露光時の加速電圧は20kVで、露光量は2.0μC/cm2で露光した。
【0077】
続いて、130℃にて20分間の露光後ベーク(PEB)を行なった後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを主成分とするアルカリ水溶液で現像し、純水にてリンスして、図5(C)に示すように、レジストパターンを形成した。
【0078】
続いて、レジストパターンの開口部より露出した透過率調整層を、塩素ガスを主成分とするエッチングガスにてドライエッチングし、次にフルオロカーボン系ガスを主成分とするエッチングガスにてドライエッチングし、KrFエキシマレーザーを使用する場合において180°位相をシフトさせるため、ガラス基板エッチング深さを約244nmとして位相シフターを形成し、これを位相シフト領域とした(図5(D))。ドライエッチング装置は、アルバック成膜(株)製MEPS−6025を使用した。
【0079】
続いて、残存するレジストを酸素プラズマにより灰化除去し、位相シフト領域パターンを有するレチクルを形成した(図5(E))。
【0080】
続いてこのレチクルを検査し、必要によってはパターンに修正を加え、洗浄した後、透過率調整層を含む基板上に、i線レジスト(東京応化工業(株)製THMR−iP3500)をスピンコーティング法により塗布し、90℃で30分加熱処理して、厚さ約0.4μmの均一な第2レジスト層を得た。次に、上記のレジスト塗布レチクルのパターンとの位置合わせを行なった後、常法に従ってレーザー露光装置(ETECシステムズ(アプライドマテリアルグループ)製ALTA−3000)により第2層目パターンである光透過領域パターンの描画を行なった。この際の露光量は100mJ/cm2で露光した(図5(F))。
【0081】
続いて、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを主成分とするアルカリ水溶液で現像し、純水にてリンスして、図6(G)に示すように、レジストパターンを形成した。
【0082】
続いて、レジストパターンの開口部より露出した透過率調整層を、塩素ガスを主成分とするエッチングガスにてドライエッチングし、これを光透過領域とした(図5(H))。ドライエッチング装置は、アルバック成膜(株)製MEPS−6025を使用した。
【0083】
続いて、残存するレジストを酸素プラズマにより灰化除去し、光透過領域と位相シフト領域と透過率調整領域を有する位相シフトマスクを完成させた(図5(I))。
【0084】
この位相シフトマスクは、KrF露光用のシフター彫り込み型で、透過率調整領域の透過率約9%かつ位相差ほぼ0度であった。
【0085】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の位相シフトマスクは、透過率調整領域がタンタルを主成分とする合金薄膜からなるため、従来のハーフトーン膜に比べ低コストの製造が可能となる。本発明は、近年、超LSIの集積度向上のため、より微細な線幅で集積回路を形成するリソグラフィ技術が求められてきており、露光光源の短波長化が進められている中、境界部の位相反転による光強度低下効果が大きく、解像度と焦点深度が良好で、比較的低コストで製造できる位相シフトマスクの提供を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に用いられる透過光調整部における膜厚と位相差との関係を示すグラフである。
【図2】図2Aは、本発明の位相シフトマスクの一例を示す概略平面図、図2BはそのA−A’断面図である。
【図3】図3Aは、本発明の位相シフトマスクの他の例を示す概略平面図、図3BはそのB−B’断面図である。
【図4】図4Aは、本発明の位相シフトマスクの一例を示す概略平面図、図4BはそのC−C’断面図である。
【図5】図5は、本発明の位相シフトマスクの製造方法の一例を示す工程図である。
【図6】図6は、本発明の位相シフトマスクの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図7】図7は、従来の位相シフトマスクを示す概略断面図である。
【図8】図8は、従来の位相シフトマスクを示す概略断面図である。
【図9】図9は、従来の位相シフトマスクを示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 ・・・ 光透過領域
2 ・・・ 位相シフト領域
3 ・・・ 透過率調整領域
4 ・・・ 透過率調整部
5 ・・・ 基板
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体デバイス製造に用いられるフォトマスクに係わり、特に、ウエーハ上に微細なパターンを高密度に投影形成する、位相シフトマスクとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の半導体集積回路素子の微細化に伴い、リソグラフィ工程での露光波長の短波長化とともに、位相シフトマスク(位相シフトフォトマスクあるいは位相シフトレチクルともいう)を用いた位相シフト露光法が広く使われるようになってきている。位相シフトマスクには位相シフターが設けられており、ウエーハへの転写露光時に位相シフターを通り位相が変わった光と、位相シフターを通らずに位相が変わっていない光との干渉を利用して、解像力を向上させることができる。
【0003】
このような位相シフトマスクについては、特許文献1および特許文献2にすでに基本的な考え、原理は記載されている。位相シフトマスクを用いた露光法は、同じ投影露光装置を使用しても、マスクを従来のフォトマスクから位相シフトマスクに代えることにより、マスクからウエーハに転写されるデバイスパターンの解像度を上げることができると共に、焦点深度を深くすることができるという大きな特徴を有する。
【0004】
位相シフトマスクにはレベンソン型、ハーフトーン型、クロムレス型、アウトライン型等の各種方式があり、さらにそれぞれの方式において、位相シフターが遮光膜パターンを介して合成石英ガラス等の透明基板の上側に設ける構造(シフター上置き型)と透明基板をエッチングにより彫り込んで位相シフター部とする構造(基板彫り込み型)等がある。
【0005】
レベンソン型位相シフトマスクは、大きな解像度向上効果を示すが、適用できるパターン配置に制約がある。半導体素子の集積度が高くなるにつれて、位相シフトマスクと共にトリムマスクを使って縮小した長さを有するゲートが製造されている。トリムマスクとは、位相シフトマスクを通った光のうちウエーハに達してはならない光を遮断するマスクを言う。所望の転写パターンを得るために位相シフトマスクと相補関係を持つトリムマスクによる2回の露光が必要となるため、工程増加によりスループットが低くなることが問題であった。
【0006】
ハーフトーン型位相シフトマスクは、遮光部に相当する吸収体が一部光を透過し、この透過光と主パターンの光とは位相が反転しているため、境界部では位相反転効果による光強度低下が起こり光強度分布の裾の広がりを抑えることができる。しかしながら、他の方式の位相シフトマスクに比べると解像度向上効果は低い上、疎密パターン依存性があることが問題であった。
【0007】
アウトライン型位相シフトマスクは、ハーフトーン膜と位相シフターを組み合わせた方式で、解像度向上効果が大きく、疎密パターンの依存性は小さいという利点がある。例えば、このようなハーフトーン膜を用いるアウトライン型位相シフトマスクの例は、非特許文献1に示されている。
【0008】
また、クロムレス型位相シフトマスクは、開口部に位相シフターのエッジがあるとその部分では位相が0度から180度まで急激に変化しているため、転写結像面に光強度零のラインができることになる。
【0009】
従来のクロムレス型位相シフトマスクにおいては、位相シフターのエッジにおける光干渉を利用しているため、いずれの部分においても同一の線幅のパターンしか形成できないという問題があった。すなわち、露光量により線幅を変化させることは可能であるが、パターン毎に線幅を変えることができず、パターン形成の自由度が低いという問題がある。
【0010】
これらの問題に対応するもので、任意のパターン幅でかつ少ない工程で所望のパターンの転写を可能にする方法としては、特許文献3にクロムレス型位相シフトマスクにクロム遮光膜からなる補助パターンを設けた方法が記載されている。
【0011】
さらに、特許文献4にはクロムレス型位相シフトマスクに低透過率ハーフトーンパターンを設けた方法が記載されている。
【0012】
しかしながら、ハーフトーン層を用いる場合、スパッタ等の成膜方法で露光光の透過に対して上記の条件を満たした上で所望の透過率に制御することが困難で、製造工程が煩雑になるためマスク製造コストが高くなり、またピンホール欠陥が増大する欠点がある。
【0013】
このようなハーフトーン層の例としては、特許文献5で示される金属や金属シリサイドの酸化膜、窒化膜などが一般的に使用される。しかしながら、このような位相シフトマスクは一般的に製造工程が複雑でコストが高いという問題点があった。
【0014】
例えば、図7および図8に示される従来のアウトライン型の位相シフトマスクにおいては、光透過領域1の周囲に位相シフト領域2が形成されており、この光透過領域1と位相シフト領域2との透過光の位相が実質反転するように設けられている。そして、さらに上記位相シフト領域2上には、上記位相シフト領域2の表面に形成された透過率調整部4を有する透過率調整領域3が形成されている。そして、この透過率調整領域3の透過光は、上記位相シフト領域2から透過した光とその位相が実質的に反転するように形成されている。このようなアウトライン型の位相シフトマスクは、光透過領域1と位相シフト領域2と透過率調整領域3との複合的な光強度により転写像が形成される。
【0015】
このようなアウトライン型の位相シフトマスクに用いられる透過率調整部は、通常透過率と位相のシフトの両者を調整する必要があり、設計的に困難な場合がある。また、これらを調整するために多層化したものもあるが、コストおよび工程面で問題となる場合がある。
【0016】
また、図9はクロムレス型の位相シフトマスクを示すものであり、このクロムレス型の位相シフトマスクは、光透過領域1と位相シフト領域2との境界部分の光透過領域1側に透過率調整部4が形成されて透過率調整領域3とされている。
【0017】
このようなクロムレス型の位相シフトマスクは光透過領域1と位相シフト領域2と透過率調整領域3との複合的な光強度により転写像が形成されるものであるが、この場合の透過率調整部も上記アウトライン型の場合と同様の問題点を有するものである。
【0018】
【特許文献1】
特開昭58−173744号
【特許文献2】
特公昭62−59296号
【特許文献3】
特開2001−358070号
【特許文献4】
特開2001−356466号
【特許文献5】
特許第3262302号
【非特許文献1】
2002 Symposium On VLSI Technology Digest of Technical Papers, p.200−201, A.Misaka et al., ”Super−resolution enhancement method with phase−shifting mask available for random patterns”
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、用いる透過率調整部を透過する透過光の位相のシフト量および透過率の調整が容易であり、かつ容易に製造が可能であることから最終的に低コストで製造することができる位相シフトマスクを提供することを主目的とするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、透明基板と、上記透明基板上に形成された光透過領域と、上記光透過領域に対し透過光の位相が実質上反転する位相シフト領域と、上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相であり、上記光透過領域と光透過率が異なるように調整する透過率調整領域とを有し、上記透過率調整領域がタンタルを主成分とする透過率調整部を透明基板上に配置してなる領域であることを特徴とする位相シフトマスクを提供する。
【0021】
タンタルを主成分とする透過率調整部は、膜厚等を変化させて透過率を変化させた場合でも、光透過領域の透過光位相と実質上同位相の透過光を得ることができる領域を有する。したがって、光透過領域と、この光透過領域に対し透過光の位相が実質上反転する位相シフト領域と、上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相であり、上記光透過領域と光透過率が異なるように調整する透過率調整領域とを所定の設計により配置させた種々の位相シフトマスクを簡便にかつ低コストで提供することが可能となる。
【0022】
このような本発明の位相シフトマスクの一例としては、上記光透過領域と上記位相シフト領域との境界部分に転写像を形成する位相シフトマスクであって、上記透過率調整領域が上記境界部分の光透過領域側に形成されていることを特徴とするいわゆるクロムレス型の位相シフトマスクや、上記位相シフト領域に沿って転写像を形成する位相シフトマスクであって、上記位相シフト領域に沿って存在する上記位相シフト領域と他の領域との二つの境界部分の内の少なくとも一方の境界部分の他の領域側に上記透過率調整領域が形成されていることを特徴とするいわゆるアウトライン型の位相シフトマスクを挙げることができ、本発明においては、上述したタンタルを主成分とする透過率調整部が配置されてなる透過率調整領域の利点を活かすことができる点から、これらクロムレス型の位相シフトマスクおよびアウトライン型の位相シフトマスクとすることが好ましい。
【0023】
また、本発明においては、上記透過率調整領域の透過率が、上記光透過領域の透過率を100とした場合に1〜60の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相とすることが比較的容易にできるからである。
【0024】
さらに、上記本発明においては、上記透過率調整部が、タンタルとクロムとの合金を主成分とするものであることが好ましい。タンタルとクロムとの合金を主成分とすることにより、安定して広い透過率の範囲で上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相とすることが可能となるからである。
【0025】
本発明はまた、以下に示す二つの位相シフトマスクの製造方法を提供する。
【0026】
第1の製造方法は、透明基板上にタンタルを主成分とし、光透過率を調整する透過率調整層を形成する透過率調整層形成工程と、上記透過率調整層上に第1のレジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、上記第1レジスト層に対しエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分の透過率調整層と透明基材とをエッチングして、位相シフト領域を形成する位相シフト領域形成工程と、上記位相シフト領域が形成された基板上に第2レジスト層を形成する第2レジスト層形成工程と、上記第2レジスト層に対してエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、光透過領域に相当する部分の透過率調整層をエッチングして、光透過領域を形成する光透過領域形成工程とを有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法である。
【0027】
また、第2の製造方法は、透明基板上にタンタルを主成分とし、光透過率を調整する透過率調整層を形成する透過率調整層形成工程と、上記透過率調整層上に第1のレジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、上記第1レジスト層に対しエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分および光透過領域に相当する部分の透過率調整層をエッチングする光透過領域形成工程と、上記光透過領域が形成された基板上に第2レジスト層を形成する第2レジスト層形成工程と、上記第2レジスト層に対してエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分の透明基板をエッチングして、位相シフト領域を形成する位相シフト領域形成工程とを有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法である。
【0028】
いずれの製造方法も、上述した本発明の位相シフトマスクを効率的に製造することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の位相シフトマスクおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0030】
A.位相シフトマスク
まず、本発明の位相シフトマスクについて説明する。本発明の位相シフトマスクは、透明基板と、上記透明基板上に形成された光透過領域と、上記光透過領域に対し透過光の位相が実質上反転する位相シフト領域と、上記光透過領域の透過光位相と実質上同位相であり、上記光透過領域と光透過率が異なるように調整する透過率調整領域とを有し、上記透過率調整領域がタンタルを主成分とする透過率調整部が透明基板上に形成されてなる領域であることを特徴とするものである。
【0031】
従来用いられているような位相シフトマスクのハーフトーン膜等と称される透過率調整部は、位相シフトマスクの設計上、所定の位相シフトが生じかつ所定の透過率である必要があった。しかしながら、このような条件を満たすようにスパッタリング等の成膜方法により成膜することは非常に難しく、製造工程が煩雑になるため最終的に得られる位相シフトマスクの製造コストが高くなってしまうといった問題があった。
【0032】
本発明者等は、上記問題を解決すべく種々検討した結果、タンタルを主成分とする金属薄膜層からなる透過率調整部が配置されてなる透過率調整領域は、透過率の低い領域から高い領域までの広い範囲の領域にわたり、透過率調整領域の透過光の位相が、光透過領域の透過光位相と実質的に同位相であるという新たな知見を得、この知見に基づき本発明を完成させるに至ったものである。
【0033】
図1は、クロムを3重量%含むタンタル−クロム合金を用い、膜厚を変えて成膜して、その波長193nmの光に対する透過率と位相差との関係を示すものである。図1に示すように、このようなタンタルを主成分とする金属薄膜は、透過率の高い領域から低い領域にわたる広い領域で、位相差が実質的に0近辺の領域となる。これは、所定の範囲で透過率を変化させても位相の変化が起こらないことを示すものである。なお、測定は、レーザーテック社製、位相差透過率測定装置MPM−193により測定した値である。
【0034】
すなわち、このようなタンタルを主成分とする透過率調整部は、透過率調整領域の透過光の位相が、光透過領域の透過光位相と実質的に同位相になるような調整が容易であることから、位相シフトマスクの構造を複雑にすること無く、境界部の位相反転による光強度低下効果が大きく、解像度と焦点深度が良好な位相シフトマスクが製造できるのである。
【0035】
以下、このような本発明の位相シフトマスクについて、透過率調整領域、光透過領域、および位相シフト領域に分けて説明する。
【0036】
1.透過率調整領域
本発明における透過率調整領域は、透明基板上にタンタルを主成分とする透過率調整部が配置されてなり、光透過領域の透過光位相と実質上同位相であり、かつ光透過領域と光透過率が異なるように調整された領域である。
【0037】
(透過率調整部)
本発明に用いられる透過率調整部は、タンタルを主成分とする金属薄膜により構成されるものである。
【0038】
ここで、タンタルを主成分とするとは、上述したような特性を有する程度にタンタルが含まれていることを示すものであり、具体的にはタンタルを少なくとも70重量%以上含有することことが好ましい。
【0039】
タンタル以外に含まれる金属としては、クロムを含むものであることが好ましい。クロムを含有させることにより、タンタルを主成分とする膜のエッチングをクロムに近い条件でエッチングすることが可能である。また、フォトマスクに使用される遮光膜や透過率調整膜の主流はクロムであるため、従来あるエッチングシステムで対応可能であるという利点を有する。好ましいクロムの含有率としては、クロムを30重量%以下の含有とすることが好ましい。
【0040】
また、必要に応じて他の材料を含有させることも可能である。具体的には、アルミニウム、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、シリコン等が含有される。
【0041】
本発明に用いられる透過率調整部の製造方法としては、特に限定されるものではないが、PVD法、中でもスパッタリング法により上記タンタルを主成分とする金属薄膜である透過率調整層を形成し、これをフォトリソグラフィ法によりパターニングすることによりパターン状の透過率調整部とされる。
【0042】
(透明基板)
本発明においては、上記透過率調整部が透明基板上に配置されて透過率調整領域とされる。この透明基板としては、通常のフォトマスクや位相シフトマスクに使用される合成石英基板や単結晶ホワイトサファイア、短波長紫外線の透過率が高いフッ化カルシウムやフッ化マグネシウム等の材料が使用される。
【0043】
(透過率調整領域)
本発明における透過率調整領域は、上記透明基板上に上述した透過率調整部が配置されてなるものである。この透過率調整領域における光の透過率は、特に限定されるものではないが、後述する光透過領域における光の透過率を100とした場合に1〜60の範囲内であることが好ましく、特に3〜50の範囲内であることが好ましい。この範囲内が透過率調整領域として必要とされる可能性が高い範囲であり、かつ後述する光透過領域の透過光位相と実質的に同一の位相とするのが容易な範囲であるからである。
【0044】
なお、上記光の透過率は、本発明の位相シフトマスクが用いられる光の波長におけるものであり、例えば、g線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)等の光に対するものである。
【0045】
本発明において、後述する光透過領域の透過光位相と実質上同位相とは、転写像を形成できる程度に同位相となっていればよいのであり、具体的には±10°の範囲内、好ましくは±3°の範囲内である。
【0046】
(その他)
本発明に用いられる透過光調整領域の透過光調整部表面には、必要に応じてさらにクロムやクロム化合物からなる遮光膜や反射防止膜、珪素酸化物やSOGからなるエッチングストッパーや位相シフト層等を設けることも可能である。
【0047】
2.光透過領域
本発明における光透過領域は、透過光が上記透明基板の透過光と同位相となる領域であれば特に限定されるものではないが、通常は透明基板をそのまま用いて光透過領域とされる。
【0048】
透明基板については、上記透過率調整領域において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0049】
3.位相シフト領域
本発明における位相シフト領域とは、上記光透過領域に対し透過光の位相が実質上反転する領域である。具体的には、透明基板が露光光の位相差180°分彫り込まれた領域や、露光光の位相差180°の位相シフト部が透明基板上に配置された領域である。このような位相シフト部としては、例えば露光光の波長の半分の光路差が生じる厚みを有する透過性膜等を用いて作成することができる。
【0050】
ここで、実質上反転するとは、上記光透過領域の透過光に対して位相が反転することにより、転写像が形成できる程度の範囲内であれば特に限定されるものではないが、具体的には180°±10°の範囲内、特に180°±3°の範囲で光透過領域の透過光に対して位相がシフトしている状態を示すものである。
【0051】
4.具体的態様
本発明の位相シフトマスクは、上述した透過光調整領域、光透過領域、および位相シフト領域がパターン状に形成されることにより所定の転写像が被露光材料表面に得られるものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、本発明の位相シフトマスクの利点を十分に発揮することができる点から、いわゆるアウトライン型の位相シフトマスクおよびのいわゆるクロムレス型位相シフトマスクであることが好ましい。以下、それぞれの位相シフトマスクについて説明する。
【0052】
(1)アウトライン型位相シフトマスク
本発明におけるアウトライン型位相シフトマスクは、上記光透過領域と上記位相シフト領域と上記透過率調整領域との複合的な光強度により転写像を形成する位相シフトマスクであって、上記位相シフト領域に沿って存在する上記位相シフト領域と他の領域との二つの境界部分の内の少なくとも一方の境界部分の他の領域側に上記透過率調整領域が形成されていることを特徴とするものである。
【0053】
このような本発明におけるアウトライン型位相シフトマスクの一例について図2を用いて具体的に説明する。透明基板5の中央部には、透明基板5表面が露出した光透過領域1が形成されている。この光透過領域1の周囲を囲うように位相シフト領域2が形成されている。この例における位相シフト領域2は、透明基板5が光透過領域1の透過光に対して位相差が180°となるように彫り込まれて形成されている。そして、この位相シフト領域2の外側にはタンタルを主成分とする金属薄膜で形成されている透過率調整部4が形成され、透過率調整領域3とされている。
【0054】
この例は、位相差シフト領域2と他の領域との境界部分の内の一方の境界部分に透過率調整領域が形成された例であるが、図3は、位相シフト領域2の両側の境界部分に透過率調整部4が形成された例を示すものである。この例においても、透明基板5の中央部には、透明基板5表面が露出した略正方形状の光透過領域1が形成されている。この光透過領域1の各4辺の外側には各辺と同程度の長さの位相シフト領域2が形成されている。この位相シフト領域2も上記例と同様に透明基板5が光透過領域1の透過光に対して位相差が180°となるように彫り込まれて形成されている。そして、この位相シフト領域に沿って存在する二つの他の領域との境界部分にはタンタルを主成分とする薄膜からなる透過率調整部4が形成され、透過率調整領域3とされている。この例では、透過率調整領域は、光透過領域1および位相シフト領域2を除く全て領域に形成されているが、本発明においては、特にこれに限定されるものではなく、境界部分から被露光材料表面に転写像を形成するのに必要な範囲で形成されていればよい。
【0055】
(2)クロムレス型位相シフトマスク
本発明におけるクロムレス型位相シフトマスクは、上記光透過領域と上記位相シフト領域と上記透過率調整領域との複合的な光強度により転写像を形成する位相シフトマスクであって、上記透過率調整領域が光透過領域と位相シフト領域との境界部分の光透過領域側に形成されていることを特徴とするものである。
【0056】
このようなクロムレス型位相シフトマスクについて、図4を用いて具体的に説明する。この例のクロムレス型位相シフトマスクは、中央部に光透過領域1の透過光に対して位相差が180°となるように透明基板5が彫り込まれて形成された位相シフト領域2が設けられており、その周囲の光透過領域1との境界部分の光透過領域1側にはタンタルを主成分とする薄膜からなる透過率調整部4が形成され、透過率調整領域3とされている。
【0057】
この場合の透過率調整部4の幅も、境界部分から被露光材料表面に転写像を形成するのに必要な範囲で形成されていればよい。
【0058】
B.位相シフトマスクの製造方法
次に、本発明の位相シフトマスクの製造方法について説明する。本発明の位相シフトマスクの製造方法には、二つの態様がある。以下、それぞれについて説明する。
【0059】
1.第1実施態様
本発明の位相シフトマスクの製造方法の第1実施態様は、透明基板上にタンタルを主成分とし、光透過率を調整する透過率調整層を形成する透過率調整層形成工程と、上記透過率調整層上に第1のレジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、上記第1レジスト層に対しエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分の透過率調整層と透明基材とをエッチングして、位相シフト領域を形成する位相シフト領域形成工程と、上記位相シフト領域が形成された基板上に第2レジスト層を形成する第2レジスト層形成工程と、上記第2レジスト層に対してエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、光透過領域に相当する部分の透過率調整層をエッチングして、光透過領域を形成する光透過領域形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0060】
以下、図面を用いて本実施態様の位相シフトマスクの製造方法について、具体的に説明する。
【0061】
図5は、本実施態様の位相シフトマスクの製造方法の一例を示すものである。本実施態様においては、まず透明基板10上にタンタルを主成分とする透過率調整層11を形成する透過率調整層形成工程が行われる(図5A参照)。透過率調整層11の形成方法は、特に限定されるものではないが、通常はスパッタリング法等のPVD法が用いられる。
【0062】
なお、この際用いられるタンタルを主成分とする透過率調整層の材料や透明基板の材料等については、上記「A.位相シフトマスク」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0063】
次に、図5Bに示すように、上記透過率調整層11の表面に第1レジスト層12が形成され(第1レジスト層形成工程)、その後位相シフト領域が形成される部分に対して、パターン状に露光が行われる。ここで用いられるレジストは、特に限定されるものではないが、電子線レジストが好適に用いられ、中でも化学増幅型レジストが特に好適に用いられる。露光は、用いるレジストに応じた種類のエネルギー線により行われるが、上述したように電子線レジストが好ましいことから、露光も電子線により行われることが好ましい。
【0064】
次いで、アルカリ現像液等により現像し、レジストパターンを形成し(図5C参照)、次いで透過率調整層11をエッチングした後、透明基板10をエッチングすることにより、位相シフト領域13を形成する位相シフト領域形成工程を行う(図5D参照)。
【0065】
この位相シフト領域形成工程で行うエッチングは、特に限定されるものではないが、ドライエッチングが好ましく、通常透過率調整層11をエッチングする場合は塩素ガスを主成分とするエッチングガスにてドライエッチングを行い、透明基板のエッチングはフルオロカーボン系ガスを主成分とするエッチングガスを用いてエッチングを行うことが好ましい。
【0066】
次いで、第1レジスト層を除去した後(図5E参照)、第2レジスト層14を形成する第2レジスト塗布工程を行う。この際用いられる第2レジストは特に限定されるものではないが、紫外線硬化型のレジストが好適に用いられる。そして用いたレジストに応じたエネルギー線により露光が行われる(図5F参照)。
【0067】
そして第2レジスト層14を現像した後(図5G)、さらに塩素ガスを主成分とするエッチングガス等でドライエッチングを行うことにより露出している透過率調整層11を除去して光透過領域16が形成される光透過領域形成工程がおこなわれ(図5H参照)、残った第2レジスト層14を除去して、最終的に透過率調整部15が位相シフト領域13の両側に形成された位相シフトマスクが得られる(図5I参照)。
【0068】
2.第2実施態様
次に、本発明の位相シフトマスクの製造方法の第2実施態様について説明する。本発明の第2実施態様は、透明基板上にタンタルを主成分とし、光透過率を調整する透過率調整層を形成する透過率調整層形成工程と、上記透過率調整層上に第1のレジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、上記第1レジスト層に対しエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分および光透過領域に相当する部分の透過率調整層をエッチングする光透過領域形成工程と、上記光透過領域が形成された基板上に第2レジスト層を形成する第2レジスト層形成工程と、上記第2レジスト層に対してエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分の透明基板をエッチングして、位相シフト領域を形成する位相シフト領域形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0069】
この第2実施態様について、図6を用いて具体的に説明する。本実施態様が、上記第1実施態様と異なるのは、上記第1実施態様がまず位相シフト領域を形成するものであるのに対し、本実施態様はまず光透過領域を形成する点にある。その他用いる材料や露光方法等に関しては、第1実施態様と同様であるので、ここでは形成順序のみ説明する。
【0070】
まず、図6Aに示すように、透明基板10上に透過率調整層11を形成し(透過率調整工程)、次いで、第1レジスト層12を形成し(第1レジスト層形成工程)、位相シフト領域および光透過領域に相当する部分に対して露光を行う(図6B)。第1レジスト層12を現像した後(図6C)、ドライエッチングにより透過率調整層11をエッチングして、光透過領域16を形成すると共に、位相シフト領域13の透過率調整層を除去する(光透過領域形成工程、図6D参照)。
【0071】
次いで、残った第1レジスト層12を除去した後(図6E参照)、第2レジスト層14を全面に形成する(第2レジスト層形成工程)。そして、位相シフト領域13を形成する部分に露光を行う(図6F参照)。
【0072】
第2レジスト層14を現像した後(図6G参照)、透明基板10をエッチングすることにより(図6H参照)、位相シフト領域13が形成される(位相シフト領域形成工程)。そして、最後に残った第2レジスト層14を除去することにより位相シフトマスクを得ることができる(図6I参照)。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0074】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。本実施例は、上記図5にしめすような本発明の位相シフトマスクの製造方法の第1実施態様により位相シフトマスクを製造したものであり、図3に示すような位相シフトマスクを得たものである。
【0075】
まず、光学研磨された6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板上に、タンタルとクロムの合金からなる薄膜を透過率約9%かつ位相差ほぼ0度となるようにスパッタ法で成膜し、透過率調整層を形成したマスクブランクス(A)を形成した。
【0076】
次に、上記のマスクブランクス(A)上に、電子線レジストとして化学増幅型レジスト(東京応化工業(株)製CAP209)をスピンコーティング法により塗布し、130℃で20分間の塗布後ベーク(プリベーク)し、厚さ0.3μmの均一な第1レジスト層51を得た。次に、上記の基板に常法に従って、電子線露光装置((株)日立製作所製HL−800M)によりパターン描画を行なった(図5(B))。露光時の加速電圧は20kVで、露光量は2.0μC/cm2で露光した。
【0077】
続いて、130℃にて20分間の露光後ベーク(PEB)を行なった後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを主成分とするアルカリ水溶液で現像し、純水にてリンスして、図5(C)に示すように、レジストパターンを形成した。
【0078】
続いて、レジストパターンの開口部より露出した透過率調整層を、塩素ガスを主成分とするエッチングガスにてドライエッチングし、次にフルオロカーボン系ガスを主成分とするエッチングガスにてドライエッチングし、KrFエキシマレーザーを使用する場合において180°位相をシフトさせるため、ガラス基板エッチング深さを約244nmとして位相シフターを形成し、これを位相シフト領域とした(図5(D))。ドライエッチング装置は、アルバック成膜(株)製MEPS−6025を使用した。
【0079】
続いて、残存するレジストを酸素プラズマにより灰化除去し、位相シフト領域パターンを有するレチクルを形成した(図5(E))。
【0080】
続いてこのレチクルを検査し、必要によってはパターンに修正を加え、洗浄した後、透過率調整層を含む基板上に、i線レジスト(東京応化工業(株)製THMR−iP3500)をスピンコーティング法により塗布し、90℃で30分加熱処理して、厚さ約0.4μmの均一な第2レジスト層を得た。次に、上記のレジスト塗布レチクルのパターンとの位置合わせを行なった後、常法に従ってレーザー露光装置(ETECシステムズ(アプライドマテリアルグループ)製ALTA−3000)により第2層目パターンである光透過領域パターンの描画を行なった。この際の露光量は100mJ/cm2で露光した(図5(F))。
【0081】
続いて、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを主成分とするアルカリ水溶液で現像し、純水にてリンスして、図6(G)に示すように、レジストパターンを形成した。
【0082】
続いて、レジストパターンの開口部より露出した透過率調整層を、塩素ガスを主成分とするエッチングガスにてドライエッチングし、これを光透過領域とした(図5(H))。ドライエッチング装置は、アルバック成膜(株)製MEPS−6025を使用した。
【0083】
続いて、残存するレジストを酸素プラズマにより灰化除去し、光透過領域と位相シフト領域と透過率調整領域を有する位相シフトマスクを完成させた(図5(I))。
【0084】
この位相シフトマスクは、KrF露光用のシフター彫り込み型で、透過率調整領域の透過率約9%かつ位相差ほぼ0度であった。
【0085】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の位相シフトマスクは、透過率調整領域がタンタルを主成分とする合金薄膜からなるため、従来のハーフトーン膜に比べ低コストの製造が可能となる。本発明は、近年、超LSIの集積度向上のため、より微細な線幅で集積回路を形成するリソグラフィ技術が求められてきており、露光光源の短波長化が進められている中、境界部の位相反転による光強度低下効果が大きく、解像度と焦点深度が良好で、比較的低コストで製造できる位相シフトマスクの提供を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に用いられる透過光調整部における膜厚と位相差との関係を示すグラフである。
【図2】図2Aは、本発明の位相シフトマスクの一例を示す概略平面図、図2BはそのA−A’断面図である。
【図3】図3Aは、本発明の位相シフトマスクの他の例を示す概略平面図、図3BはそのB−B’断面図である。
【図4】図4Aは、本発明の位相シフトマスクの一例を示す概略平面図、図4BはそのC−C’断面図である。
【図5】図5は、本発明の位相シフトマスクの製造方法の一例を示す工程図である。
【図6】図6は、本発明の位相シフトマスクの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図7】図7は、従来の位相シフトマスクを示す概略断面図である。
【図8】図8は、従来の位相シフトマスクを示す概略断面図である。
【図9】図9は、従来の位相シフトマスクを示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 ・・・ 光透過領域
2 ・・・ 位相シフト領域
3 ・・・ 透過率調整領域
4 ・・・ 透過率調整部
5 ・・・ 基板
Claims (7)
- 透明基板と、前記透明基板上に形成された光透過領域と、前記光透過領域に対し透過光の位相が実質上反転する位相シフト領域と、前記光透過領域の透過光位相と実質上同位相であり、前記光透過領域と光透過率が異なるように調整する透過率調整領域とを有し、前記透過率調整領域がタンタルを主成分とする透過率調整部が透明基板上に形成されてなる領域であることを特徴とする位相シフトマスク。
- 前記光透過領域と前記位相シフト領域との境界部分に転写像を形成する位相シフトマスクであって、前記透過率調整領域が前記境界部分の光透過領域側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の位相シフトマスク。
- 前記位相シフト領域に沿って転写像を形成する位相シフトマスクであって、前記位相シフト領域に沿って存在する前記位相シフト領域と他の領域との二つの境界部分の内の少なくとも一方の境界部分の他の領域側に前記透過率調整領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の位相シフトマスク。
- 前記透過率調整領域の透過率が、前記光透過領域の透過率を100とした場合に1〜60の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の位相シフトマスク。
- 前記透過率調整部が、タンタルとクロムとの合金を主成分とするものであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の位相シフトマスク。
- 透明基板上にタンタルを主成分とし、光透過率を調整する透過率調整層を形成する透過率調整層形成工程と、
前記透過率調整層上に第1のレジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、
前記第1レジスト層に対しエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分の透過率調整層と透明基材とをエッチングして、位相シフト領域を形成する位相シフト領域形成工程と、
前記位相シフト領域が形成された基板上に第2レジスト層を形成する第2レジスト層形成工程と、
前記第2レジスト層に対してエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、光透過領域に相当する部分の透過率調整層をエッチングして、光透過領域を形成する光透過領域形成工程とを有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。 - 透明基板上にタンタルを主成分とし、光透過率を調整する透過率調整層を形成する透過率調整層形成工程と、
前記透過率調整層上に第1のレジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、
前記第1レジスト層に対しエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分および光透過領域に相当する部分の透過率調整層をエッチングする光透過領域形成工程と、
前記光透過領域が形成された基板上に第2レジスト層を形成する第2レジスト層形成工程と、
前記第2レジスト層に対してエネルギーをパターン状に照射した後、現像することにより、位相シフト領域に相当する部分の透明基板をエッチングして、位相シフト領域を形成する位相シフト領域形成工程とを有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003067224A JP2004279484A (ja) | 2003-03-12 | 2003-03-12 | 位相シフトマスク |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003067224A JP2004279484A (ja) | 2003-03-12 | 2003-03-12 | 位相シフトマスク |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004279484A true JP2004279484A (ja) | 2004-10-07 |
Family
ID=33284900
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003067224A Pending JP2004279484A (ja) | 2003-03-12 | 2003-03-12 | 位相シフトマスク |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004279484A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005275138A (ja) * | 2004-03-25 | 2005-10-06 | Renesas Technology Corp | 位相シフトマスクおよび、これを用いたパターン露光方法 |
JP2013238775A (ja) * | 2012-05-16 | 2013-11-28 | Shin Etsu Chem Co Ltd | フォトマスクブランクの製造方法、フォトマスクブランク、フォトマスク、および、パターン転写方法 |
JP2013250478A (ja) * | 2012-06-01 | 2013-12-12 | Hoya Corp | フォトマスク、フォトマスクの製造方法及びパターンの転写方法 |
JP2017010059A (ja) * | 2016-10-05 | 2017-01-12 | Hoya株式会社 | フォトマスク、フォトマスクの製造方法及びパターンの転写方法 |
-
2003
- 2003-03-12 JP JP2003067224A patent/JP2004279484A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005275138A (ja) * | 2004-03-25 | 2005-10-06 | Renesas Technology Corp | 位相シフトマスクおよび、これを用いたパターン露光方法 |
JP2013238775A (ja) * | 2012-05-16 | 2013-11-28 | Shin Etsu Chem Co Ltd | フォトマスクブランクの製造方法、フォトマスクブランク、フォトマスク、および、パターン転写方法 |
US9689066B2 (en) | 2012-05-16 | 2017-06-27 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Photomask blank manufacturing method, photomask blank, photomask, and pattern transfer method |
JP2013250478A (ja) * | 2012-06-01 | 2013-12-12 | Hoya Corp | フォトマスク、フォトマスクの製造方法及びパターンの転写方法 |
JP2017010059A (ja) * | 2016-10-05 | 2017-01-12 | Hoya株式会社 | フォトマスク、フォトマスクの製造方法及びパターンの転写方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP0653679B1 (en) | Mask, mask producing method and pattern forming method using mask | |
JP2004069841A (ja) | マスクパターンおよびそれを用いたレジストパターンの形成方法 | |
KR101076886B1 (ko) | 극자외선 리소그래피를 위한 마스크 및 이를 이용한 노광방법 | |
TWI695220B (zh) | 相位移光罩、無鉻的相位移光罩及積體電路的製作方法 | |
JP2004207593A (ja) | 極限紫外線露光用マスク及びブランク並びにパターン転写方法 | |
JPH10123692A (ja) | フォトマスクおよびその製造方法 | |
JPH1083065A (ja) | 位相シフトマスク及びその製造方法 | |
JPH06289589A (ja) | 位相シフトマスクとその製造方法そしてそれに用いるブランク | |
JP2924804B2 (ja) | フォトマスク及びその製造方法、フォトマスクブランクス | |
JP2002062638A (ja) | マスクブランクス、フォトマスク、パターン形成方法および半導体装置の製造方法 | |
JP2004279484A (ja) | 位相シフトマスク | |
JPH07253649A (ja) | 露光用マスク及び投影露光方法 | |
US6277528B1 (en) | Method to change transmittance of attenuated phase-shifting masks | |
JPH03191347A (ja) | 位相シフトマスク,位相シフトマスクの製造方法,及び位相シフトマスクを用いた半導体装置の製造方法 | |
JPH09288346A (ja) | フォトマスク | |
JPH05257264A (ja) | 露光用マスク及びその製造方法 | |
JPH0961990A (ja) | 位相シフト・マスクおよびその製造方法ならびにこれを用いた露光方法 | |
JPH09160221A (ja) | 位相シフトマスクのシフター欠陥修正方法 | |
JPH08106151A (ja) | 位相シフト・マスクおよびその製造方法 | |
JP3065063B1 (ja) | パタ―ン形成方法及び位相シフトマスク | |
US20090226823A1 (en) | Reticles including assistant structures, methods of forming such reticles, and methods of utilizing such reticles | |
JP3320062B2 (ja) | マスク及びマスクを用いたパターン形成方法 | |
JP2681610B2 (ja) | リソグラフイマスクの製造方法 | |
JP3270881B2 (ja) | ハーフトーン方式位相シフトマスクの作製方法 | |
KR100523646B1 (ko) | 보조 패턴을 갖는 위상 반전 마스크 및 그 제조 방법 |