JP2004277953A - 多孔シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】微細な孔を高密度かつ均一に有する多孔シートを提供する。
【解決手段】織組織または編組織の繊維が融着した交錯点よりなる35,000μm2以下の孔を有する多孔シート。一孔あたりの平均面積を有する円の直径が200μm以下である多孔シート。織組織または編組織の交錯点にある繊維を融着し、35,000μm2以下の孔を形成する多孔シートの製造方法。織組織または編組織の交錯点にある繊維を融着し、一孔あたりの平均面積を有する円の直径が200μm以下の孔を形成する多孔シートの製造方法。
【選択図】図2
【解決手段】織組織または編組織の繊維が融着した交錯点よりなる35,000μm2以下の孔を有する多孔シート。一孔あたりの平均面積を有する円の直径が200μm以下である多孔シート。織組織または編組織の交錯点にある繊維を融着し、35,000μm2以下の孔を形成する多孔シートの製造方法。織組織または編組織の交錯点にある繊維を融着し、一孔あたりの平均面積を有する円の直径が200μm以下の孔を形成する多孔シートの製造方法。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレクトロニス、医療、バイオ、環境、工業資材、分析などの分野に用いられる多孔シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
多孔シートは、孔の大きさによって微粒子、蛋白質、病原菌、微生物を分離したり除去することができるものである。各分野における高精度化によって、精密電子製造用の空気フィルター、水の分離用フィルター、バイオ用フィルターにしても、高精度なフィルターが要求されている。
【0003】
従来の高分子多孔シートは、(1)無機物や有機物を混合、溶融した樹脂をシート状に冷却固化した後、無機物や有機物を薬剤や溶媒で除去する方法(例えば、特許文献1参照)、(2)フィラーを混合した樹脂を溶融し、シート状に冷却固化した後、延伸する方法(例えば、特許文献2参照)、(3)樹脂を有機溶剤に溶解して粘性溶液とした後、シート状に成型加工し、その後に溶媒を風乾(又は乾燥)除去したり、又は、粘性溶液を凝固浴に入れて脱溶媒しながらシート化したりする脱溶媒による多孔化方法(例えば、特許文献3参照)、(4)相分離のよる方法や延伸との併用方法(例えば、特許文献4〜7参照)などの方法により作られていた。
【0004】
しかし、これら(1)〜(4)の従来法では、次に示す孔面積のバラツキ係数αが大きく、精密度を満足できないものである。
【0005】
多孔シートにおいて平均孔面積(Am)は、顕微鏡や電子顕微鏡で多孔シート試料の中で、平均孔面積に相当する円の直径(φm)の約10倍の大きさの領域のn個の孔を観察することによって示される。
【0006】
Am=ΣAi/n (i=1,n) ・・・(式1)
φm=(4×Am/π)1/2 ・・・(式2)
その大きい側の5個の平均面積をALとし小さい側の5個の平均面積をASとするとバラツキ(α)は次式で示される。
【0007】
α=AL/AS ・・・(式3)
試料の任意の場所を5カ所取り、そのバラツキの平均値(αm)をもってバラツキ係数(αm)とする。
【0008】
αm=Σαi(i=1,5) ・・・(式4)
前記(1)〜(4)の従来の方法では、バラツキは大きく、10以上になる場合もあり、また、通常でも3以上になり易いく不均一な孔からなる高分子多孔シートがほとんどであった。
【0009】
これに対し、孔面積のバラツキを均一にする方法として、(5)レーザーによる多孔化(例えば、特許文献8〜10参照)があるが、装置が高価であること、また孔径がが50μm以下の孔を高密度に開けることは容易でなかった。例えば、1mm2当たりに数10個の孔を開けるのにレーザー照射1秒でできるとしても、1m2の多孔シートを得るには278時間もかかり、実用的には通常25cm2以下のような小さな多孔シートしか得られなかったり、100個/cm2以下のような低孔密度(低開孔率)の多孔シートしか得られなかった。
【0010】
さらに、高密度に孔面積のバラツキが小さい均一な多孔シートを広面積で製造する効率的な方法はなかった。
【0011】
織物や編物は多孔性ではあるが、織編組織をミクロに見ると、繊維自身の直径を超えて屈曲した凹凸を有しており、平面性に劣る。また、繊維の交錯点が固定されていないので、自由度が高く柔軟性に富むが、その一方で繊維で形成される孔は固定されてないので孔径が安定しないという欠点があった。
【0012】
従来の織物として知られるスクリーン紗は、その形態を安定化するために、熱セットをすることがあるが(例えば特許文献資料11参照)、この熱セットは、布としての形態を安定化することを目的としており、自由度および柔軟性を保持されるために、熱セットを短時間で行うことから、繊維の交錯点は融着されておらず、孔は固定されておらず孔径も安定していない。このスクリーン紗からは単繊維を容易に取り出したり、分離することができるのである。
【0013】
【特許文献1】
特開昭55−131028号公報
【0014】
【特許文献2】
特開昭57−59727号公報
【0015】
【特許文献3】
特開平9−309968号公報
【0016】
【特許文献4】
特開昭60−242035号公報
【0017】
【特許文献5】
特開平1−113442号公報
【0018】
【特許文献6】
特開平 3−64334号公報
【0019】
【特許文献7】
特開平5−279251号公報
【0020】
【特許文献8】
特開昭62−216297号公報
【0021】
【特許文献9】
特開平2−129938号公報
【0022】
【特許文献10】
特開平3−165594号公報
【0023】
【特許文献11】
特開平7−299966公報
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、微細な孔を高密度かつ均一に有する多孔シートを提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次の構成を有する。
【0026】
本発明の一態様は、織組織または編組織の繊維が融着した交錯点よりなる35,000μm2以下の孔を有することを特徴とする多孔シートである。
【0027】
本発明の他の態様は、一孔あたりの平均面積を有する円の直径が200μm以下であることを特徴とする多孔シートである。
【0028】
本発明のさらに他の態様は、織組織または編組織の交錯点にある繊維を融着し、35,000μm2以下の孔を形成することを特徴とする多孔シートの製造方法である。
【0029】
本発明のさらにまた他の態様は、織組織または編組織の交錯点にある繊維を融着し、一孔あたりの平均面積を有する円の直径が200μm以下の孔を形成することを特徴とする多孔シートの製造方法である。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の多孔シートは、構成要素として繊維を用いるものである。その繊維は、織組織または編組織によって布状の規則的な形態を有する繊維構造体、すなわち織物、編物、レース、網などを形成している。織組織または編組織を有さず、繊維の交錯形態が不規則である不織布は含まれない。
【0031】
繊維と繊維が交錯または交差しているところ(以下、交錯点と称する)においては、繊維が融着している。この交錯点は、円状または楕円状の平坦面を有することが好ましい。交錯点が融着していることにより、孔が固定され、孔の形態が安定したものとなる。この孔は、その大きさが35,000μm2以下であることを特徴とする。あるいは、一孔あたりの平均面積を有する円(平均孔面積に相当する円)の直径が200μm以下とすることを特徴とする。この直径は前述の式2で求められるφmに等しい。このような大きさであることにより、微粒子、蛋白質、病原菌、微生物等を分離したり除去することができる高精度のフィルターとして用いることができる。
【0032】
また、本発明の多孔シートに用いられる繊維は、精度をより高くする観点から、直径が100μm以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の多孔シートを構成する繊維は、特に限定されないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系高分子、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリビニールアルコール、ポリ乳酸またはセルロースなどを用いることができる。繊維の形態は、モノフィラメントあるいはマルチフィラメントのいずれでもよいが、フィルター用途に用いる場合は濾過効果を良くする観点から、マルチフィラメントであることが好ましい。
【0034】
本発明の多孔シートは、高精度のフィルター用途に用いるために、孔の面積のバラツキ系数αが3以下であることが好ましく、2以下が更に好ましい。また、前述した式4で表されるバラツキ係数αの平均値αmは3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。このように、孔を均一にすることによって、物を分離、区画する精度が向上し、例えば、エレクトロニクスやメディカル、バイオなどの分野で使用する水、薬品の不純物の濾過や同分野のクリーン室用の空気中の微細奮迅でも、本発明の多孔シートを使用することによって高精度な分離や除去が可能になる。また、粒度分布を持つ、薬剤、樹脂微粒子、微生物、蛋白などの分離・精製や分析にも、本発明の多孔シートを使用することによって精度良く定量的に行うことができる。
【0035】
また、本発明の多孔シートの厚さは、通常厚みが5mm以下で用いられるが、多孔シートを構成する繊維の直径の1.5倍以下であることが好ましく、1.35倍以下であることがより好ましい。ここで繊維の直径とは、多孔シートの樹脂部の平均断面積を求め、その平均断面積に相当する円の面積から後述する式9によって求められる相当直径をいう。
【0036】
また、孔の密度は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。ここでいう孔の密度は、一辺がS(cm)で厚みがt(cm)の正方形の多孔シートサンプルの重さをWgとし、真比重をρとするとき、孔の密度ρh(%)は次式で示される。
【0037】
ρh(%)=100×(1−W/(S2×t×ρ)) ・・・(式5)
本発明の多孔シートは、シートの強度を高くするため、平均孔面積に相当する円の直径が繊維直径よりも小さいことが好ましい。特に、繊維直径が70μm以下のような細い繊維は強力が低いので、孔形成時の繊維強力の低下を少なくするため、平均孔面積に相当する円の直径に相当する繊維間の間隙が繊維直径よりも小さいことが好ましい。また、この間隙を小さくすることによって、孔の均一性を向上できる。
【0038】
次に、本発明の多孔シートの製造方法を説明する。
【0039】
本発明の多孔シートは、織組織または編組織を有する繊維構造体の交錯点を融着する方法で得ることができる。ここでいう繊維構造体には、織物、編物、レース、網などが含まれる。なかでも織物を用いることが好ましいが、目的に応じて編地、レース、網などを使用することができる。例えば編地を用いた場合は、伸縮が可能で、筒編みした後に熱セットしたりテープで固定したりして編目の孔の形を変形することができる。
【0040】
繊維の直径は、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましい。孔の直径が70μm以下の多孔シートを製造する場合には、70μm以下の繊維を用いることが好ましい。繊維が細い方が、シートを形成したときに可撓性の良好なものが得られ、取扱いや加工性に優れる。更に、細い繊維を使用することによって、70μm以下の孔の場合、孔の均一性も向上する。
【0041】
多孔シートの繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系高分子、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリビニールアルコール、ポリ乳酸、セルロースが好ましく用いられる。なかでも溶融性高分子が好ましい。ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテルには、芳香環を含有する高分子も含まれる。
【0042】
繊維の交錯点を融着するには、織物等の繊維構造体を熱プレス板や熱カレンダーで加熱しながら、圧力をかければよい。
【0043】
図面を参照して説明すると、未処理の織物(図1)は、加熱、加圧することによって、多孔シート(図2)になる。加熱プレスによって繊維の交錯点表面上に楕円状の平坦面が現れ、プレスされるに従ってその平坦面が大きくなる(図3はかなりプレスされた後を示す。)。この楕円状の平坦面が大きくなった頃には、融着がかなり進んだ状態になる。この状態の時、多孔シートの厚み方向の断面は図4、図5のようになり、繊維は繊維径と同じくらいまで厚さ方向にプレスされて融着している。また、更に加熱プレスすると、この楕円状の平坦面は、隣接する交錯点の楕円状平坦面と連続するようになる。ここまで加熱プレスすると、繊維の交錯点の突出が無くなるのでシートの厚さが均一化できるが、使用目的により加熱プレスする程度は選定すればよく、必ずしもここまで加熱プレスする必要はない。繊維の交錯点における楕円状平坦面はないか、少ないことが好ましいが、用途によっては楕円状平坦面を有する多孔シートを用いることができる。
【0044】
繊維の交錯点は、熱プレスにより繊維が溶融されると繊維軸方向に流れ、繊維が交錯し屈曲して形成された谷間を埋めるので、図2のようにプレスされても4角形の孔は小さくなるが、孔形状は保持しながら圧縮成型される。このため、孔周辺にバリは発生せず輪郭がはっきりした形状で、孔径のバラツキが極めて小さい、シート全体として均一な多孔シートが形成される。
【0045】
また、交錯点の繊維が溶融して繊維間の谷間を埋めるので、繊維から構成されたものが、図2からもわかるように、フィルム状に変化する。この結果、加熱プレス以前の織物(図1)は、容易に織物中の単繊維1本や数本が容易に引き抜いたり、分けたりすることができるが、交錯点が融着した多孔シート(図2〜5)では単繊維を引き抜いたり、分けたりすることが困難である。本発明の方法によって、孔径、厚みが均一で、孔径が微小でありながら高密度な多孔シートを容易に得ることが可能になった。また、楕円状平坦面の大きさ、変形度によって、多孔シートの加熱プレス状況を知ることが可能になり、用途によって楕円状平坦面の大きさ、変形度を適切に選択したり、生産時の加熱プレス状態の管理にも適用することができる。
【0046】
加熱プレスの温度は、繊維の融点以上にすると孔が不均一に形成され易いため、繊維の融点以下の温度とすることが好ましい。融点以下の温度でも、適切な圧力をかけることによって融着することは可能である。融点〜融点−40℃の温度範囲が好ましく、融点〜融点−20℃の温度範囲で融着することがより好ましい。織物を加熱プレスすることによって織物が収縮したり、プレスやカレンダーによって一方向や両方向に伸びたりし、孔形状が変形する。また、織物の繊維の交錯点部分が融着することによって、交錯点部分が圧縮変形され孔部分にはみ出し、孔は小さくなる。また、交錯点部分以外の繊維も収縮や圧縮によって扁平化され、その部分もやはり孔部分にはみ出し孔を小さくする。しかし、このはみ出し部分は、融着温度や圧力などの条件を一定にすると、ほぼ一定となり、孔径のバラツキが小さい高分子多孔シートが得られる。
【0047】
なお、本発明の多孔シートは、繊維交錯点の融着によって、構成繊維を1本ずつ離脱し難くなっており、離脱可能な平均繊維長は好ましくは5mm以下、より好ましくは2mm以下となる。
【0048】
得られる多孔シートの孔は、面積が35,000μm2以下とする。好ましくは面積が30,000μm2以下、より好ましくは25,000μm2以下、さらに好ましくは20,000μm2以下、さらにより好ましくは15,000μm2以下、最も好ましくは10,000μm2以下とする。また、孔がほぼ正方形の時の一辺の長さが200μm以下とすることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、75μm以下であることがさらにより好ましく、50μm以下であることが最も好ましい。また、平均孔面積に相当する円の直径(以下、孔径(φ)と表示する)が、200μm以下とすることが好ましい。平織、朱子織、綾織、変化織などの織物組織の種類、編物組織の種類、レースおよび網などの繊維構造体の種類は、孔の形成方法や孔配列の目的によって適宜選択できるが、その中でも平織の織物が好ましい。
【0049】
平織織物の場合、織物の目開き部分の孔径(φ)は、縦、横の単位(inch)当たりの繊維本数ny、nxと繊維の太さd(μm)によって次式のように決まる。
【0050】
φ=(4×(25400/nx−d)×(25400/ny−d)/π)1/2 ・・・(式6)
例えば、φが200μm、dが100μm、nx=nyのとき、上式によればnxとnyは92本である。また、nxとnyが450本で、dが35μmのとき、φは約24μmとなる。
【0051】
織物の繊維本数を更に多くすれば、φは更に小さくすることが可能で、ほとんど隙間がない程度まで調節が可能である。多孔シートの孔精度を均一にするにはモノフィラメントを用いることが好ましい。一方、マルチフィラメントを用いることが好ましい場合としては、バイオやメディカル用材料で、孔部分にゲル材や薬剤を塗布する際、マルチフィラメントの乱れによって孔へはみ出る単繊維のひげ状部分が塗布材を補強する効果があり、塗布材の脱落防止として有効である。また、細胞用基材の場合には、多孔シート上のマルチフィラメントのひげ(単繊維のはみ出し)が細胞の足場になり、細胞培養が容易になる。
【0052】
成型後の多孔シートの孔面積(A)は、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定できる。測定データと前述(1)(2)式から孔の平均相当直径φmが得られる。本発明の多孔シートのφmは、200μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましい。一方、下限値は特に限定されないが、成型の容易性からすると、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
【0053】
多孔シートの重量は、融着による変形が大きくなければ、同じ面積を有する元の織物の重量に概略等しいため、およそ織物の開口率に等しい。このため、本発明の多孔シートの孔密度は、従来のレーザーによる孔形成方法とは異なり、高孔密度が容易にできる。孔密度が70%以上のもの可能である。孔密度の高い多孔シートはフィルター効率が良好で、圧損が少ないため、従来のレーザーでは容易ではなかった孔径(φ)が70μm以下のもので、孔密度が10%以上のものも製造することができる。
【0054】
本発明の多孔シートの製造方法は、織物等の繊維構造体を加熱プレスして融着すればよいので、従来のレーザー法のように高価な装置が不要なだけでなく、実施例で示した400cm2(20cm×20cm)のプレス装置よりも大型の装置を使用すれば1m2の大きさの多孔シートであっても、10分以内でシート化が容易に達成できる。レーザー法に比較して非常に効率的に多孔シートを製造することができるのである。また、ローラ型プレス機を用いてシート化すれば、平型プレス機よりもさらに容易で効率的な製造が可能になる。なお、本発明の多孔シートは、孔の均一性がレーザー法と差がない精度である。また、多孔シートの孔密度は、レーザーに比較して高くすることができる。高い孔密度を達成できる従来の発泡樹脂法に比較しても、孔のバラツキが少なく、孔径を任意に選択し、再現性良く制御できる点で本発明は優れている。レーザーの場合、製造効率が悪いので孔密度を高くした場合、試料の大きさを大きくとれなかったり、単位面積当たりの加工費が高価になるのに比較し、本発明の多孔シートの製造方法は、大きな試料でも高い孔密度のものを容易に安価に提供できる。
【0055】
本発明の多孔シートは、エレクトロニス、医療、バイオ、環境、工業資材、分析などの分野の高分子多孔シートに関し、精密電子部品、各種フィルター、セパレータ、吸着材、各種担持体などに用いられる。また、エレクロニクス分野では高精度な多孔シートを利用した配線基板やシート、電池関係の各種セパレータ、医療では細胞培養基材や分析用基材にも利用できる。
【0056】
さらに、均一な孔を持つ本発明の多孔シートは、前述の用途ばかりでなく電子材料やレンズ、液晶板などの研磨材料用の多孔シートやエレクトロニクス用の基板材料用の多孔シート、電池用のセパレータ用の多孔シート、建築用のハウスラップ用の多孔シート、各種マスク用の多孔シート、空気清浄機や浄水用フィルターなどの多孔シートなど他の分野でも使用することができる。
【0057】
【実施例】
実施例中で用いた評価法は、次のとおりである。
【0058】
1.多孔シートの一孔の平均面積及(Am)び直径(φm)
平均孔面積(Am)は、光学顕微鏡や電子顕微鏡で高分子多孔シート試料の中で平均孔面積と相当円の直径(φm)の約10倍の大きさの領域のn個の孔を観察することによって示される。
【0059】
Am=ΣAi/n (i=1,n) ・・・(式1)
φm=(4×Am/π)1/2 ・・・(式2)
2.多孔シートの孔のバラツキ係数(αm)
大きい側の5個の平均面積をALとし小さい側の5個の平均面積をASとすると次式のバラツキ係数(α)は次式で示される。
【0060】
α=AL/φS ・・・(式3)
また、試料の任意の場所を5カ所取り、そのバラツキの平均値(αm)をもってバラツキ係数とする。
【0061】
αm=Σαi (i=1,5) ・・・(式4)
3.多孔シートの孔密度(ρh)
1辺がS(cm)で厚みがt(cm)の正方形の該高分子多孔シートサンプルの重さをW(g)とし、真比重をρ(g/cm3)とする時、高分子多孔シート密度ρh(%)は次式で示される。
【0062】
ρh(%)=100×(1−W/(S2×t×ρ)) ・・・(式5)
4.織物の目開き部分の孔径(φ)
織物の目開き部分の孔径(φ)は、孔の前駆体部分であり、織物の平織りの場合、縦、横の単位(inch)当たりの繊維本数ny、nxと繊維の太さd(μm)によっておよそ決まる。
【0063】
φ=(4×(25400/nx−d)×(25400/ny−d)/π)1/2 ・・・(式6)
5.多孔シートの比重(ρ)
50℃の真空乾燥機で24時間乾燥した高分子多孔シートの試料をWx(g)とる。次に、比重瓶(蓋付)を比重ρvの溶媒で満たした後の重量をWa(g)、この比重瓶に該分子多孔シートを入れ蓋をし全重量Wb(g)を測定する。
【0064】
ρ=ρv×Wx/(Wb−Wa) ・・・(式7)
6.多孔シートに用いた繊維の直径d
光学顕微鏡や電子顕微鏡で高分子多孔シートの孔周辺の繊維相当樹脂部分の断面を観察し、10個の断面積(Aj)を測定する。マルチフィラメントの場合は、はみ出した細い繊維部分の樹脂を含めた総断面積(Aj)を10個測定する。その断面積の平均値Adに相当する円の面積から式9により求める。
【0065】
Ad=ΣAj/n (j=1,10) ・・・(式8)
d=(4×Ad/π)1/2 ・・・(式9)
7.多孔シートの厚み(t)
厚みによって、ノギス、マイクロメータ、厚み計、光学顕微鏡や電子顕微鏡などの方法で測定する。
【0066】
実施例1,2
ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融紡糸し、直径90μmのモノフィラメント繊維を得た。これを織布し、縦糸および横糸の密度が100本/inchの平織物(実施例1)、および縦糸および横糸の密度が150本/inchの平織物(実施例2)を得た。
【0067】
式6から計算した孔の相当半径(φ)は各々186μm、90μmであった。この織物を20cm角に切断し、シリコーン系離型剤を塗布した1.5mmのステンレス板に挟み、235℃の温度に調節したプレスで45kg/cm2の圧力で10分間加工して織物の交錯点を融着し、多孔シートを得た。
【0068】
得られた多孔シートの厚みは、各々116μm、120μm、光学顕微鏡で観察した孔の平均面積(Am)は24217μm2、5673μm2、その面積から計算された相当平均面積の孔径(φm)は各々176μm,85μmであった。
【0069】
また、孔径の大きい上位5個の平均値ALは27362μm2、小さい上位5個の平均値ASは22467μm2であり、その結果から得られるバラツキ係数αmは各々1.21〜1.33と非常に均一な孔径を有する多孔シートが得られた。
【0070】
また、各々の孔密度は、個数密度1422個/cm2、3245個/cm2、重量孔密度52.8%、22.7%と共に高密度である。
【0071】
以上のごとく、直径100μm以下の繊維の織物を高温、高圧力下でプレスすることによって、孔の直径が90μm、175μm、孔径のバラツキ比が1.4以下の非常に均一な孔径で、かつ厚みが100μm以上と非常に厚みのある多孔シートが得られた。いずれの多孔シート(20cm×20cm)も共に1時間に4枚作製することができた。後述する比較例のドリル法やレーザ法に比べ、面積の大きな試料を非常に効率よく作製することができた。
【0072】
実施例3,4
実施例1と同様に、ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融紡糸し、直径150μm(実施例3)、40μm(実施例4)のモノフィラメント繊維を得た。これら繊維を織布し、縦糸および横糸の密度が100本/inchの平織物(実施例3)、および縦糸および横糸の密度が350本/inchの平織物(実施例4)を得た。
【0073】
式6から計算した孔の相当半径(φ)は、各々117、37μmであった。この織物を20cm角に切断し、シリコーン系離型剤を塗布した1.5mmのステンレス板に挟み、235℃の温度に調節したプレスで45kg/cm2の圧力で10分間加工して織物の交錯点を融着し、多孔シートを得た。
【0074】
得られた多孔シートの厚みは、各々214μm、56μm、光学顕微鏡で観察した各孔の平均面積(Am)は9783μm2、961μm2、その面積から計算された相当平均面積の孔径(φm)は各々115μm、35μmであった。
【0075】
また、孔径の大きい上位5個の平均値ALは12266μm2、1127μm2、小さい上位5個の平均値ASは9518μm2、874μm2であり、その結果から得られるバラツキ係数αmは各々1.29、1.29と非常に均一な孔径を有する多孔シートが得られた。
【0076】
また、各々の孔密度は、個数密度1352個/cm2、17848個/cm2、重量孔密度15.1%、24.4%と共に高密度である。
【0077】
以上のごとく、繊維直径や織物密度を変更することによって、多孔シートの孔径を変更することができた。また、実施例3のごとく繊維直径が150μm以上であっても織物密度を調節することによって孔径200μm以下の多孔シートが得られた。また、実施例4のごとく繊維径が数10μmを使用して織物の縦、横糸密度を調節することによって、孔径が数10μmの均一な微小径であって、かつ高密度の多孔シートを容易に得ることができた。両方の多孔シート(20cm×20cm)共に、1時間に4枚作製することができた。後述する比較例のドリル法やレーザ法に比べ、面積の大きな試料を非常に効率よく作製することができた。
【0078】
実施例5〜9
ナイロン6(実施例5)、ポリプロピレン(実施例6)、ポリスチレン(実施例7)、ポリ乳酸(実施例8)、ポリフッカブニリデン(実施例9)の溶融系高分子をそれぞれ溶融紡糸し、各々繊維直径が41μm、38μm、95μm、70μm、95μmのモノフィラメント繊維を得た。各々の繊維を織布し、縦糸および横糸の密度がそれぞれ350本/inch、350本/inch、150本/inch、200本/inch、150本/inchの平織物を得た。
【0079】
式6から計算した孔の相当半径(φ)は各々36μm、39μm、84μm、64μm、84μmである。この織物を20cm角に切断し、シリコーン系離型剤を塗布した1.5mmのステンレス板に挟み、各々185℃、140℃、120℃、150℃、145℃の温度に調節したプレスで実施例5は45kg/cm2、実施例6〜9は20kg/cm2の圧力で10分間加工し織物の交錯点を融着し、多孔シートを得た。
【0080】
得られた多孔シートの厚みは、各々65μm、51μm、123μm、96μm、127μm、光学顕微鏡で観察した各孔の平均面積(Am)は各々898μm2、1073μm2、4968μm2、2973μm2、4984μm2、その面積から計算された相当平均面積の孔径(φm)は各々34μm、37μm、80μm、62μm、80μmであった。
【0081】
また、孔径の大きい上位5個の平均値ALは1163μm2、1288μm2、5665μm2、3267μm2、5676μm2、小さい上位5個の平均値ASは各々817μm2、913μm2、33857μm2、2433μm2、4647μm2であり、その結果から得られるバラツキ係数αmも各々1.42、1.41、1.47、1.34、1.22と非常に均一な孔径を有する多孔シートが得られた。
【0082】
また、各々の孔密度は、個数密度17327個/cm2、18446個/cm2、3326個/cm2、6133個/cm2、3374個/cm2、重量孔密度28.9、20.1、18.4、20.9、16.2%と共に高密度である。
【0083】
このように各種類の溶融系高分子であっても、孔径が数10〜100μmと微少な孔径が可能であり、孔径のバラツキ比が1.5以下の非常に均一な孔径で高密度でかつ厚みが50μm以上と非常に厚みのある多孔シートが得られた。全ての多孔シート(20cm×20cm)は共に1時間に4枚作製することができた。後述する比較例のドリル法やレーザ法に比べ、大きな試料を非常に効率よく作製することができた。
【0084】
実施例10
ポリビニールアルコール(PVA)を湿式紡糸し、直径65μmの繊維を得た。この繊維を縦糸および横糸の密度が200本/inchの平織物を得た。
【0085】
式6から計算した孔の相当半径(φ)は70μmであった。この織物を20cm角に切断し、シリコーン系離型剤を塗布した1.5mmのステンレス板に挟み、110℃以下の温度に調節したプレスで20kg/cm2の圧力で10分間加工して織物の交錯点を融着し、多孔シートを得た。
【0086】
得られた多孔シートの厚みは82μmであり、光学顕微鏡で観察した孔の平均面積(Am)は3472μm2、その面積から計算された相当平均面積の孔径(φm)は66μmである。
【0087】
また、孔径の大きい上位5個の平均値ALは3752μm2、小さい上位5個の平均値ASは2776μm2であり、その結果から得られるバラツキ係数αmは1.35と非常に均一な孔径を有する多孔シートが得られた。
【0088】
また、孔密度は、個数密度6162個/cm2、重量孔密度23.0%と高密度である。
【0089】
以上のごとく、湿式紡糸により得られたPVA繊維であっても、熱可塑性のある繊維であれば、孔径82μmという小径で均一な微多孔のシートを容易に得ることができた。この多孔シート(20cm×20cm)は1時間に4枚作製することができた。後述する比較例のドリル法やレーザ法に比べ、大きな試料を非常に効率よく作製することができた。
【0090】
比較例1
ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融成形して、厚みが120μm、60μm、30μm、15μmの4種類のフィルムを得た。
【0091】
上記4種類のPETフィルムを厚み1mmのボール紙を10枚重ねた上にセロファンテープで固定後、更にそのボール紙全体の周辺部分を厚み5mm金属板にボルトで固定し、その金属板をボール盤の高精度の試料台に固定する。この試料台はXY軸に高精度で位置を予め自動設定した後、位置を確認しながら試料の移動が可能である。直径0.10mmのドリル刃を取付け、約300rpmで孔開け加工を行った。
【0092】
厚みが120μmのフィルムには孔が開いたが、他の薄いフィルムは孔が開くよりもドリル刃によって破れたり、裂けたりして円形の孔にはならなかった。
【0093】
厚み120μmのフィルムの孔は、比較的良好なものが20%程度しかなく、孔周辺に削り残りのフィルム片や溶けたフィルムのバリが多く残り孔周辺の仕上がり精度が非常に悪く、実用的な多孔シートは得られなかった。この孔周辺の現象は、孔開けを開始した直後はあまりひどくはないが、ドリルの使用時間経るにつれて加熱されるとひどくなるため、ドリル刃を交換したり、冷却したりする必要もあった。また、孔密度は400個/cm2と少なかった。
【0094】
孔開け、孔周辺のバリ、ゴミ除去で少なくとも5秒、試料の移動、位置確認で少なくとも5秒必要であるため、合計1個当たり少なくとも10秒、1cm2当たり少なくとも4000秒の加工時間がかかった。20cm×20cmの試料を得るには444時間以上を要するので、面積の大きな試料を作製することは無理であった。実用的な加工時間を1時間程度とすると1cm×1cm程度の試料しか作製できず、20cm××20cmの試料を1時間で加工すると0.9個/cm2程度の低孔密度の試料しか得られなかった。
【0095】
比較例2
ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融成形して、厚みが120μm、60μm、30μm、15μmの4種類のフィルムを得た。
【0096】
Nd−YAGレーザー装置を使用し、発振周波数200Hz、発振波長266nm、出力100mWの条件で、上記4種のPETフィルムを取付け、フィルムの40mm×40mm部分に25μmφ孔を加工孔間ピッチは200μmを等間隔に全面(全孔数40000個)に加工を行った。レーザーの孔加工条件は、1孔あたりのレーザーのショット数は、フィルムの厚みが120μmの場合30回、フィルムの厚みが60μmの場合20回、フィルムの厚みが15μmの場合10回であり、同時に加工可能な孔数は15個であった。
【0097】
フィルム厚みが120μmと60μmでは良好な孔の加工ができなかった。フィルム厚み30μmの場合は孔はできたが、孔周辺のバリが大きく、孔中にもゴミなどがあり実用的に良好な多孔シートは得られなかった。フィルム厚み15μmのシートは平均孔径が21μm、バラツキ係数は1.11、孔密度は2500個/cm2であった。
【0098】
しかし、加工時間は2.83時間であり、20cm×20cmの試料を得るには70.8時間もかかるために面積の大きな試料を作製することは無理であった。実用的な加工時間を1時間程度とすると2.4cm×2.4cm程度の試料しか作製できず、20cm××20cmの試料を1時間で加工すると35個/cm2程度の低孔密度の試料しか得られなかった。
【0099】
比較例3
ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融成形して、厚みが120μm、60μm、30μm、15μmの4種類のフィルムを得た。
【0100】
Nd−YAGレーザー装置を使用し、発振周波数200Hz、発振波長266nm、出力を100mWの条件で、上記4種のPETフィルムを取付け、フィルムの40mm×40mm部分に50μmφ孔を加工孔間ピッチは200μmを等間隔に全面(全孔数40000個)に加工を行った。レーザーの孔加工条件は、1孔あたりのレーザーのショット数は、フィルムの厚みが120μmの場合は30回、フィルムの厚みが60μmの場合は20回、フィルムの厚みが15μmの場合は10回であり、同時に加工可能な孔数は15個であった。
【0101】
フィルム厚みが120μmでは良好な孔の加工ができなかった。フィルム厚みが15μmでは熱による孔周辺のバリ、孔中にもゴミなどがあり実用的に良好な多孔シートは得られなかった。フィルム厚みが60μmおよび30μmのものは、良好な孔が得られ、平均孔径は各々62μm、32μm、またバラツキ係数も各々1.11、1.08、孔密度は2500個/cm2であった。
【0102】
しかし、加工時間はフィルム厚みが60μmおよび30μmのもの共に3.83時間であり、20cm×20cmの試料を得るには95.8時間もかかるために面積の大きな試料を作製することは無理であった。実用的な加工時間を1時間程度とすると各々2cm×2cm程度の試料しか作製できず、20cm×20cmの試料を1時間で加工すると26個/cm2程度の低孔密度の試料しか得られなかった。
【0103】
比較例4
ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融成形して、厚みが120μm、60μm、30μm、15μmの4種類のフィルムを得た。
【0104】
Nd−YAGレーザー装置を使用し、発振周波数200Hz、発振波長266nm、出力を300mWの条件で、上記4種のPETフィルムを取付け、フィルムの40mm×40mm部分に100μmφ孔を加工孔間ピッチは200μmを等間隔に全面(全孔数40000個)に加工を行った。レーザーの孔加工条件は、1孔あたりのレーザーのショット数は、フィルムの厚みが120μmの場合は30回、フィルムの厚みが60μmの場合は20回、フィルムの厚みが15μmの場合は10回であり、同時に加工可能な孔数は15個であった。フィルム厚み120μmと60μmのものは良好な孔が形成されたが、30μmおよび15μmのものでは、熱による孔周辺のバリ、孔中にもゴミなどがあり実用的に良好な多孔シートは得られなかった。また、フィルム厚みが30μmおよび15μmのものは、シート全体が平坦でなく厚み方向にゆがみが生じた。フィルム厚みが120μm、60μmの場合、平均孔径は各々102μm、103μmであり、またバラツキ係数も各々1.11、1.08であり、孔密度は両者とも2500個/cm2であった。
【0105】
しかし、加工時間はフィルム厚み120μmの場合で4.83時間、フィルム厚み60μmの場合で3.83時間であり、20cm×20cmの試料ではフィルム厚み120μmの場合で121時間、60μmの場合で95.8時間を必要とするため、面積の大きな試料を作製することは無理であった。実用的な加工時間を1時間程度とするとフィルム厚み120μmの場合で1.8cm×1.8cm、60μmの場合で2cm××2cm程度の試料しか作製できず、20cm××20cmの試料を1時間で加工するとフィルム厚みが120μmの場合で20個/cm2、60μmの場合で26個/cm2程度の低孔密度の試料しか得られなかった。
【0106】
【発明の効果】
本発明によれば、35,000μm2以下の均一な微細な孔を高密度に有する多孔シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱プレスされる前の織物の一例
【図2】本発明に係る多孔シートの一例
【図3】図2の多孔シート表面を拡大した例
【図4】本発明に係る多孔シート断面の一例
【図5】図4の多孔シート断面を拡大した例
【符号の説明】
1:加熱プレスされる前の縦糸
2:加熱プレスされる前の横糸
3:交錯点
4:孔
5:楕円状平坦面
6:加熱プレスされた縦糸
7:加熱プレスされた横糸
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレクトロニス、医療、バイオ、環境、工業資材、分析などの分野に用いられる多孔シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
多孔シートは、孔の大きさによって微粒子、蛋白質、病原菌、微生物を分離したり除去することができるものである。各分野における高精度化によって、精密電子製造用の空気フィルター、水の分離用フィルター、バイオ用フィルターにしても、高精度なフィルターが要求されている。
【0003】
従来の高分子多孔シートは、(1)無機物や有機物を混合、溶融した樹脂をシート状に冷却固化した後、無機物や有機物を薬剤や溶媒で除去する方法(例えば、特許文献1参照)、(2)フィラーを混合した樹脂を溶融し、シート状に冷却固化した後、延伸する方法(例えば、特許文献2参照)、(3)樹脂を有機溶剤に溶解して粘性溶液とした後、シート状に成型加工し、その後に溶媒を風乾(又は乾燥)除去したり、又は、粘性溶液を凝固浴に入れて脱溶媒しながらシート化したりする脱溶媒による多孔化方法(例えば、特許文献3参照)、(4)相分離のよる方法や延伸との併用方法(例えば、特許文献4〜7参照)などの方法により作られていた。
【0004】
しかし、これら(1)〜(4)の従来法では、次に示す孔面積のバラツキ係数αが大きく、精密度を満足できないものである。
【0005】
多孔シートにおいて平均孔面積(Am)は、顕微鏡や電子顕微鏡で多孔シート試料の中で、平均孔面積に相当する円の直径(φm)の約10倍の大きさの領域のn個の孔を観察することによって示される。
【0006】
Am=ΣAi/n (i=1,n) ・・・(式1)
φm=(4×Am/π)1/2 ・・・(式2)
その大きい側の5個の平均面積をALとし小さい側の5個の平均面積をASとするとバラツキ(α)は次式で示される。
【0007】
α=AL/AS ・・・(式3)
試料の任意の場所を5カ所取り、そのバラツキの平均値(αm)をもってバラツキ係数(αm)とする。
【0008】
αm=Σαi(i=1,5) ・・・(式4)
前記(1)〜(4)の従来の方法では、バラツキは大きく、10以上になる場合もあり、また、通常でも3以上になり易いく不均一な孔からなる高分子多孔シートがほとんどであった。
【0009】
これに対し、孔面積のバラツキを均一にする方法として、(5)レーザーによる多孔化(例えば、特許文献8〜10参照)があるが、装置が高価であること、また孔径がが50μm以下の孔を高密度に開けることは容易でなかった。例えば、1mm2当たりに数10個の孔を開けるのにレーザー照射1秒でできるとしても、1m2の多孔シートを得るには278時間もかかり、実用的には通常25cm2以下のような小さな多孔シートしか得られなかったり、100個/cm2以下のような低孔密度(低開孔率)の多孔シートしか得られなかった。
【0010】
さらに、高密度に孔面積のバラツキが小さい均一な多孔シートを広面積で製造する効率的な方法はなかった。
【0011】
織物や編物は多孔性ではあるが、織編組織をミクロに見ると、繊維自身の直径を超えて屈曲した凹凸を有しており、平面性に劣る。また、繊維の交錯点が固定されていないので、自由度が高く柔軟性に富むが、その一方で繊維で形成される孔は固定されてないので孔径が安定しないという欠点があった。
【0012】
従来の織物として知られるスクリーン紗は、その形態を安定化するために、熱セットをすることがあるが(例えば特許文献資料11参照)、この熱セットは、布としての形態を安定化することを目的としており、自由度および柔軟性を保持されるために、熱セットを短時間で行うことから、繊維の交錯点は融着されておらず、孔は固定されておらず孔径も安定していない。このスクリーン紗からは単繊維を容易に取り出したり、分離することができるのである。
【0013】
【特許文献1】
特開昭55−131028号公報
【0014】
【特許文献2】
特開昭57−59727号公報
【0015】
【特許文献3】
特開平9−309968号公報
【0016】
【特許文献4】
特開昭60−242035号公報
【0017】
【特許文献5】
特開平1−113442号公報
【0018】
【特許文献6】
特開平 3−64334号公報
【0019】
【特許文献7】
特開平5−279251号公報
【0020】
【特許文献8】
特開昭62−216297号公報
【0021】
【特許文献9】
特開平2−129938号公報
【0022】
【特許文献10】
特開平3−165594号公報
【0023】
【特許文献11】
特開平7−299966公報
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、微細な孔を高密度かつ均一に有する多孔シートを提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次の構成を有する。
【0026】
本発明の一態様は、織組織または編組織の繊維が融着した交錯点よりなる35,000μm2以下の孔を有することを特徴とする多孔シートである。
【0027】
本発明の他の態様は、一孔あたりの平均面積を有する円の直径が200μm以下であることを特徴とする多孔シートである。
【0028】
本発明のさらに他の態様は、織組織または編組織の交錯点にある繊維を融着し、35,000μm2以下の孔を形成することを特徴とする多孔シートの製造方法である。
【0029】
本発明のさらにまた他の態様は、織組織または編組織の交錯点にある繊維を融着し、一孔あたりの平均面積を有する円の直径が200μm以下の孔を形成することを特徴とする多孔シートの製造方法である。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の多孔シートは、構成要素として繊維を用いるものである。その繊維は、織組織または編組織によって布状の規則的な形態を有する繊維構造体、すなわち織物、編物、レース、網などを形成している。織組織または編組織を有さず、繊維の交錯形態が不規則である不織布は含まれない。
【0031】
繊維と繊維が交錯または交差しているところ(以下、交錯点と称する)においては、繊維が融着している。この交錯点は、円状または楕円状の平坦面を有することが好ましい。交錯点が融着していることにより、孔が固定され、孔の形態が安定したものとなる。この孔は、その大きさが35,000μm2以下であることを特徴とする。あるいは、一孔あたりの平均面積を有する円(平均孔面積に相当する円)の直径が200μm以下とすることを特徴とする。この直径は前述の式2で求められるφmに等しい。このような大きさであることにより、微粒子、蛋白質、病原菌、微生物等を分離したり除去することができる高精度のフィルターとして用いることができる。
【0032】
また、本発明の多孔シートに用いられる繊維は、精度をより高くする観点から、直径が100μm以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の多孔シートを構成する繊維は、特に限定されないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系高分子、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリビニールアルコール、ポリ乳酸またはセルロースなどを用いることができる。繊維の形態は、モノフィラメントあるいはマルチフィラメントのいずれでもよいが、フィルター用途に用いる場合は濾過効果を良くする観点から、マルチフィラメントであることが好ましい。
【0034】
本発明の多孔シートは、高精度のフィルター用途に用いるために、孔の面積のバラツキ系数αが3以下であることが好ましく、2以下が更に好ましい。また、前述した式4で表されるバラツキ係数αの平均値αmは3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。このように、孔を均一にすることによって、物を分離、区画する精度が向上し、例えば、エレクトロニクスやメディカル、バイオなどの分野で使用する水、薬品の不純物の濾過や同分野のクリーン室用の空気中の微細奮迅でも、本発明の多孔シートを使用することによって高精度な分離や除去が可能になる。また、粒度分布を持つ、薬剤、樹脂微粒子、微生物、蛋白などの分離・精製や分析にも、本発明の多孔シートを使用することによって精度良く定量的に行うことができる。
【0035】
また、本発明の多孔シートの厚さは、通常厚みが5mm以下で用いられるが、多孔シートを構成する繊維の直径の1.5倍以下であることが好ましく、1.35倍以下であることがより好ましい。ここで繊維の直径とは、多孔シートの樹脂部の平均断面積を求め、その平均断面積に相当する円の面積から後述する式9によって求められる相当直径をいう。
【0036】
また、孔の密度は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。ここでいう孔の密度は、一辺がS(cm)で厚みがt(cm)の正方形の多孔シートサンプルの重さをWgとし、真比重をρとするとき、孔の密度ρh(%)は次式で示される。
【0037】
ρh(%)=100×(1−W/(S2×t×ρ)) ・・・(式5)
本発明の多孔シートは、シートの強度を高くするため、平均孔面積に相当する円の直径が繊維直径よりも小さいことが好ましい。特に、繊維直径が70μm以下のような細い繊維は強力が低いので、孔形成時の繊維強力の低下を少なくするため、平均孔面積に相当する円の直径に相当する繊維間の間隙が繊維直径よりも小さいことが好ましい。また、この間隙を小さくすることによって、孔の均一性を向上できる。
【0038】
次に、本発明の多孔シートの製造方法を説明する。
【0039】
本発明の多孔シートは、織組織または編組織を有する繊維構造体の交錯点を融着する方法で得ることができる。ここでいう繊維構造体には、織物、編物、レース、網などが含まれる。なかでも織物を用いることが好ましいが、目的に応じて編地、レース、網などを使用することができる。例えば編地を用いた場合は、伸縮が可能で、筒編みした後に熱セットしたりテープで固定したりして編目の孔の形を変形することができる。
【0040】
繊維の直径は、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましい。孔の直径が70μm以下の多孔シートを製造する場合には、70μm以下の繊維を用いることが好ましい。繊維が細い方が、シートを形成したときに可撓性の良好なものが得られ、取扱いや加工性に優れる。更に、細い繊維を使用することによって、70μm以下の孔の場合、孔の均一性も向上する。
【0041】
多孔シートの繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系高分子、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリビニールアルコール、ポリ乳酸、セルロースが好ましく用いられる。なかでも溶融性高分子が好ましい。ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテルには、芳香環を含有する高分子も含まれる。
【0042】
繊維の交錯点を融着するには、織物等の繊維構造体を熱プレス板や熱カレンダーで加熱しながら、圧力をかければよい。
【0043】
図面を参照して説明すると、未処理の織物(図1)は、加熱、加圧することによって、多孔シート(図2)になる。加熱プレスによって繊維の交錯点表面上に楕円状の平坦面が現れ、プレスされるに従ってその平坦面が大きくなる(図3はかなりプレスされた後を示す。)。この楕円状の平坦面が大きくなった頃には、融着がかなり進んだ状態になる。この状態の時、多孔シートの厚み方向の断面は図4、図5のようになり、繊維は繊維径と同じくらいまで厚さ方向にプレスされて融着している。また、更に加熱プレスすると、この楕円状の平坦面は、隣接する交錯点の楕円状平坦面と連続するようになる。ここまで加熱プレスすると、繊維の交錯点の突出が無くなるのでシートの厚さが均一化できるが、使用目的により加熱プレスする程度は選定すればよく、必ずしもここまで加熱プレスする必要はない。繊維の交錯点における楕円状平坦面はないか、少ないことが好ましいが、用途によっては楕円状平坦面を有する多孔シートを用いることができる。
【0044】
繊維の交錯点は、熱プレスにより繊維が溶融されると繊維軸方向に流れ、繊維が交錯し屈曲して形成された谷間を埋めるので、図2のようにプレスされても4角形の孔は小さくなるが、孔形状は保持しながら圧縮成型される。このため、孔周辺にバリは発生せず輪郭がはっきりした形状で、孔径のバラツキが極めて小さい、シート全体として均一な多孔シートが形成される。
【0045】
また、交錯点の繊維が溶融して繊維間の谷間を埋めるので、繊維から構成されたものが、図2からもわかるように、フィルム状に変化する。この結果、加熱プレス以前の織物(図1)は、容易に織物中の単繊維1本や数本が容易に引き抜いたり、分けたりすることができるが、交錯点が融着した多孔シート(図2〜5)では単繊維を引き抜いたり、分けたりすることが困難である。本発明の方法によって、孔径、厚みが均一で、孔径が微小でありながら高密度な多孔シートを容易に得ることが可能になった。また、楕円状平坦面の大きさ、変形度によって、多孔シートの加熱プレス状況を知ることが可能になり、用途によって楕円状平坦面の大きさ、変形度を適切に選択したり、生産時の加熱プレス状態の管理にも適用することができる。
【0046】
加熱プレスの温度は、繊維の融点以上にすると孔が不均一に形成され易いため、繊維の融点以下の温度とすることが好ましい。融点以下の温度でも、適切な圧力をかけることによって融着することは可能である。融点〜融点−40℃の温度範囲が好ましく、融点〜融点−20℃の温度範囲で融着することがより好ましい。織物を加熱プレスすることによって織物が収縮したり、プレスやカレンダーによって一方向や両方向に伸びたりし、孔形状が変形する。また、織物の繊維の交錯点部分が融着することによって、交錯点部分が圧縮変形され孔部分にはみ出し、孔は小さくなる。また、交錯点部分以外の繊維も収縮や圧縮によって扁平化され、その部分もやはり孔部分にはみ出し孔を小さくする。しかし、このはみ出し部分は、融着温度や圧力などの条件を一定にすると、ほぼ一定となり、孔径のバラツキが小さい高分子多孔シートが得られる。
【0047】
なお、本発明の多孔シートは、繊維交錯点の融着によって、構成繊維を1本ずつ離脱し難くなっており、離脱可能な平均繊維長は好ましくは5mm以下、より好ましくは2mm以下となる。
【0048】
得られる多孔シートの孔は、面積が35,000μm2以下とする。好ましくは面積が30,000μm2以下、より好ましくは25,000μm2以下、さらに好ましくは20,000μm2以下、さらにより好ましくは15,000μm2以下、最も好ましくは10,000μm2以下とする。また、孔がほぼ正方形の時の一辺の長さが200μm以下とすることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、75μm以下であることがさらにより好ましく、50μm以下であることが最も好ましい。また、平均孔面積に相当する円の直径(以下、孔径(φ)と表示する)が、200μm以下とすることが好ましい。平織、朱子織、綾織、変化織などの織物組織の種類、編物組織の種類、レースおよび網などの繊維構造体の種類は、孔の形成方法や孔配列の目的によって適宜選択できるが、その中でも平織の織物が好ましい。
【0049】
平織織物の場合、織物の目開き部分の孔径(φ)は、縦、横の単位(inch)当たりの繊維本数ny、nxと繊維の太さd(μm)によって次式のように決まる。
【0050】
φ=(4×(25400/nx−d)×(25400/ny−d)/π)1/2 ・・・(式6)
例えば、φが200μm、dが100μm、nx=nyのとき、上式によればnxとnyは92本である。また、nxとnyが450本で、dが35μmのとき、φは約24μmとなる。
【0051】
織物の繊維本数を更に多くすれば、φは更に小さくすることが可能で、ほとんど隙間がない程度まで調節が可能である。多孔シートの孔精度を均一にするにはモノフィラメントを用いることが好ましい。一方、マルチフィラメントを用いることが好ましい場合としては、バイオやメディカル用材料で、孔部分にゲル材や薬剤を塗布する際、マルチフィラメントの乱れによって孔へはみ出る単繊維のひげ状部分が塗布材を補強する効果があり、塗布材の脱落防止として有効である。また、細胞用基材の場合には、多孔シート上のマルチフィラメントのひげ(単繊維のはみ出し)が細胞の足場になり、細胞培養が容易になる。
【0052】
成型後の多孔シートの孔面積(A)は、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定できる。測定データと前述(1)(2)式から孔の平均相当直径φmが得られる。本発明の多孔シートのφmは、200μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましい。一方、下限値は特に限定されないが、成型の容易性からすると、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
【0053】
多孔シートの重量は、融着による変形が大きくなければ、同じ面積を有する元の織物の重量に概略等しいため、およそ織物の開口率に等しい。このため、本発明の多孔シートの孔密度は、従来のレーザーによる孔形成方法とは異なり、高孔密度が容易にできる。孔密度が70%以上のもの可能である。孔密度の高い多孔シートはフィルター効率が良好で、圧損が少ないため、従来のレーザーでは容易ではなかった孔径(φ)が70μm以下のもので、孔密度が10%以上のものも製造することができる。
【0054】
本発明の多孔シートの製造方法は、織物等の繊維構造体を加熱プレスして融着すればよいので、従来のレーザー法のように高価な装置が不要なだけでなく、実施例で示した400cm2(20cm×20cm)のプレス装置よりも大型の装置を使用すれば1m2の大きさの多孔シートであっても、10分以内でシート化が容易に達成できる。レーザー法に比較して非常に効率的に多孔シートを製造することができるのである。また、ローラ型プレス機を用いてシート化すれば、平型プレス機よりもさらに容易で効率的な製造が可能になる。なお、本発明の多孔シートは、孔の均一性がレーザー法と差がない精度である。また、多孔シートの孔密度は、レーザーに比較して高くすることができる。高い孔密度を達成できる従来の発泡樹脂法に比較しても、孔のバラツキが少なく、孔径を任意に選択し、再現性良く制御できる点で本発明は優れている。レーザーの場合、製造効率が悪いので孔密度を高くした場合、試料の大きさを大きくとれなかったり、単位面積当たりの加工費が高価になるのに比較し、本発明の多孔シートの製造方法は、大きな試料でも高い孔密度のものを容易に安価に提供できる。
【0055】
本発明の多孔シートは、エレクトロニス、医療、バイオ、環境、工業資材、分析などの分野の高分子多孔シートに関し、精密電子部品、各種フィルター、セパレータ、吸着材、各種担持体などに用いられる。また、エレクロニクス分野では高精度な多孔シートを利用した配線基板やシート、電池関係の各種セパレータ、医療では細胞培養基材や分析用基材にも利用できる。
【0056】
さらに、均一な孔を持つ本発明の多孔シートは、前述の用途ばかりでなく電子材料やレンズ、液晶板などの研磨材料用の多孔シートやエレクトロニクス用の基板材料用の多孔シート、電池用のセパレータ用の多孔シート、建築用のハウスラップ用の多孔シート、各種マスク用の多孔シート、空気清浄機や浄水用フィルターなどの多孔シートなど他の分野でも使用することができる。
【0057】
【実施例】
実施例中で用いた評価法は、次のとおりである。
【0058】
1.多孔シートの一孔の平均面積及(Am)び直径(φm)
平均孔面積(Am)は、光学顕微鏡や電子顕微鏡で高分子多孔シート試料の中で平均孔面積と相当円の直径(φm)の約10倍の大きさの領域のn個の孔を観察することによって示される。
【0059】
Am=ΣAi/n (i=1,n) ・・・(式1)
φm=(4×Am/π)1/2 ・・・(式2)
2.多孔シートの孔のバラツキ係数(αm)
大きい側の5個の平均面積をALとし小さい側の5個の平均面積をASとすると次式のバラツキ係数(α)は次式で示される。
【0060】
α=AL/φS ・・・(式3)
また、試料の任意の場所を5カ所取り、そのバラツキの平均値(αm)をもってバラツキ係数とする。
【0061】
αm=Σαi (i=1,5) ・・・(式4)
3.多孔シートの孔密度(ρh)
1辺がS(cm)で厚みがt(cm)の正方形の該高分子多孔シートサンプルの重さをW(g)とし、真比重をρ(g/cm3)とする時、高分子多孔シート密度ρh(%)は次式で示される。
【0062】
ρh(%)=100×(1−W/(S2×t×ρ)) ・・・(式5)
4.織物の目開き部分の孔径(φ)
織物の目開き部分の孔径(φ)は、孔の前駆体部分であり、織物の平織りの場合、縦、横の単位(inch)当たりの繊維本数ny、nxと繊維の太さd(μm)によっておよそ決まる。
【0063】
φ=(4×(25400/nx−d)×(25400/ny−d)/π)1/2 ・・・(式6)
5.多孔シートの比重(ρ)
50℃の真空乾燥機で24時間乾燥した高分子多孔シートの試料をWx(g)とる。次に、比重瓶(蓋付)を比重ρvの溶媒で満たした後の重量をWa(g)、この比重瓶に該分子多孔シートを入れ蓋をし全重量Wb(g)を測定する。
【0064】
ρ=ρv×Wx/(Wb−Wa) ・・・(式7)
6.多孔シートに用いた繊維の直径d
光学顕微鏡や電子顕微鏡で高分子多孔シートの孔周辺の繊維相当樹脂部分の断面を観察し、10個の断面積(Aj)を測定する。マルチフィラメントの場合は、はみ出した細い繊維部分の樹脂を含めた総断面積(Aj)を10個測定する。その断面積の平均値Adに相当する円の面積から式9により求める。
【0065】
Ad=ΣAj/n (j=1,10) ・・・(式8)
d=(4×Ad/π)1/2 ・・・(式9)
7.多孔シートの厚み(t)
厚みによって、ノギス、マイクロメータ、厚み計、光学顕微鏡や電子顕微鏡などの方法で測定する。
【0066】
実施例1,2
ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融紡糸し、直径90μmのモノフィラメント繊維を得た。これを織布し、縦糸および横糸の密度が100本/inchの平織物(実施例1)、および縦糸および横糸の密度が150本/inchの平織物(実施例2)を得た。
【0067】
式6から計算した孔の相当半径(φ)は各々186μm、90μmであった。この織物を20cm角に切断し、シリコーン系離型剤を塗布した1.5mmのステンレス板に挟み、235℃の温度に調節したプレスで45kg/cm2の圧力で10分間加工して織物の交錯点を融着し、多孔シートを得た。
【0068】
得られた多孔シートの厚みは、各々116μm、120μm、光学顕微鏡で観察した孔の平均面積(Am)は24217μm2、5673μm2、その面積から計算された相当平均面積の孔径(φm)は各々176μm,85μmであった。
【0069】
また、孔径の大きい上位5個の平均値ALは27362μm2、小さい上位5個の平均値ASは22467μm2であり、その結果から得られるバラツキ係数αmは各々1.21〜1.33と非常に均一な孔径を有する多孔シートが得られた。
【0070】
また、各々の孔密度は、個数密度1422個/cm2、3245個/cm2、重量孔密度52.8%、22.7%と共に高密度である。
【0071】
以上のごとく、直径100μm以下の繊維の織物を高温、高圧力下でプレスすることによって、孔の直径が90μm、175μm、孔径のバラツキ比が1.4以下の非常に均一な孔径で、かつ厚みが100μm以上と非常に厚みのある多孔シートが得られた。いずれの多孔シート(20cm×20cm)も共に1時間に4枚作製することができた。後述する比較例のドリル法やレーザ法に比べ、面積の大きな試料を非常に効率よく作製することができた。
【0072】
実施例3,4
実施例1と同様に、ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融紡糸し、直径150μm(実施例3)、40μm(実施例4)のモノフィラメント繊維を得た。これら繊維を織布し、縦糸および横糸の密度が100本/inchの平織物(実施例3)、および縦糸および横糸の密度が350本/inchの平織物(実施例4)を得た。
【0073】
式6から計算した孔の相当半径(φ)は、各々117、37μmであった。この織物を20cm角に切断し、シリコーン系離型剤を塗布した1.5mmのステンレス板に挟み、235℃の温度に調節したプレスで45kg/cm2の圧力で10分間加工して織物の交錯点を融着し、多孔シートを得た。
【0074】
得られた多孔シートの厚みは、各々214μm、56μm、光学顕微鏡で観察した各孔の平均面積(Am)は9783μm2、961μm2、その面積から計算された相当平均面積の孔径(φm)は各々115μm、35μmであった。
【0075】
また、孔径の大きい上位5個の平均値ALは12266μm2、1127μm2、小さい上位5個の平均値ASは9518μm2、874μm2であり、その結果から得られるバラツキ係数αmは各々1.29、1.29と非常に均一な孔径を有する多孔シートが得られた。
【0076】
また、各々の孔密度は、個数密度1352個/cm2、17848個/cm2、重量孔密度15.1%、24.4%と共に高密度である。
【0077】
以上のごとく、繊維直径や織物密度を変更することによって、多孔シートの孔径を変更することができた。また、実施例3のごとく繊維直径が150μm以上であっても織物密度を調節することによって孔径200μm以下の多孔シートが得られた。また、実施例4のごとく繊維径が数10μmを使用して織物の縦、横糸密度を調節することによって、孔径が数10μmの均一な微小径であって、かつ高密度の多孔シートを容易に得ることができた。両方の多孔シート(20cm×20cm)共に、1時間に4枚作製することができた。後述する比較例のドリル法やレーザ法に比べ、面積の大きな試料を非常に効率よく作製することができた。
【0078】
実施例5〜9
ナイロン6(実施例5)、ポリプロピレン(実施例6)、ポリスチレン(実施例7)、ポリ乳酸(実施例8)、ポリフッカブニリデン(実施例9)の溶融系高分子をそれぞれ溶融紡糸し、各々繊維直径が41μm、38μm、95μm、70μm、95μmのモノフィラメント繊維を得た。各々の繊維を織布し、縦糸および横糸の密度がそれぞれ350本/inch、350本/inch、150本/inch、200本/inch、150本/inchの平織物を得た。
【0079】
式6から計算した孔の相当半径(φ)は各々36μm、39μm、84μm、64μm、84μmである。この織物を20cm角に切断し、シリコーン系離型剤を塗布した1.5mmのステンレス板に挟み、各々185℃、140℃、120℃、150℃、145℃の温度に調節したプレスで実施例5は45kg/cm2、実施例6〜9は20kg/cm2の圧力で10分間加工し織物の交錯点を融着し、多孔シートを得た。
【0080】
得られた多孔シートの厚みは、各々65μm、51μm、123μm、96μm、127μm、光学顕微鏡で観察した各孔の平均面積(Am)は各々898μm2、1073μm2、4968μm2、2973μm2、4984μm2、その面積から計算された相当平均面積の孔径(φm)は各々34μm、37μm、80μm、62μm、80μmであった。
【0081】
また、孔径の大きい上位5個の平均値ALは1163μm2、1288μm2、5665μm2、3267μm2、5676μm2、小さい上位5個の平均値ASは各々817μm2、913μm2、33857μm2、2433μm2、4647μm2であり、その結果から得られるバラツキ係数αmも各々1.42、1.41、1.47、1.34、1.22と非常に均一な孔径を有する多孔シートが得られた。
【0082】
また、各々の孔密度は、個数密度17327個/cm2、18446個/cm2、3326個/cm2、6133個/cm2、3374個/cm2、重量孔密度28.9、20.1、18.4、20.9、16.2%と共に高密度である。
【0083】
このように各種類の溶融系高分子であっても、孔径が数10〜100μmと微少な孔径が可能であり、孔径のバラツキ比が1.5以下の非常に均一な孔径で高密度でかつ厚みが50μm以上と非常に厚みのある多孔シートが得られた。全ての多孔シート(20cm×20cm)は共に1時間に4枚作製することができた。後述する比較例のドリル法やレーザ法に比べ、大きな試料を非常に効率よく作製することができた。
【0084】
実施例10
ポリビニールアルコール(PVA)を湿式紡糸し、直径65μmの繊維を得た。この繊維を縦糸および横糸の密度が200本/inchの平織物を得た。
【0085】
式6から計算した孔の相当半径(φ)は70μmであった。この織物を20cm角に切断し、シリコーン系離型剤を塗布した1.5mmのステンレス板に挟み、110℃以下の温度に調節したプレスで20kg/cm2の圧力で10分間加工して織物の交錯点を融着し、多孔シートを得た。
【0086】
得られた多孔シートの厚みは82μmであり、光学顕微鏡で観察した孔の平均面積(Am)は3472μm2、その面積から計算された相当平均面積の孔径(φm)は66μmである。
【0087】
また、孔径の大きい上位5個の平均値ALは3752μm2、小さい上位5個の平均値ASは2776μm2であり、その結果から得られるバラツキ係数αmは1.35と非常に均一な孔径を有する多孔シートが得られた。
【0088】
また、孔密度は、個数密度6162個/cm2、重量孔密度23.0%と高密度である。
【0089】
以上のごとく、湿式紡糸により得られたPVA繊維であっても、熱可塑性のある繊維であれば、孔径82μmという小径で均一な微多孔のシートを容易に得ることができた。この多孔シート(20cm×20cm)は1時間に4枚作製することができた。後述する比較例のドリル法やレーザ法に比べ、大きな試料を非常に効率よく作製することができた。
【0090】
比較例1
ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融成形して、厚みが120μm、60μm、30μm、15μmの4種類のフィルムを得た。
【0091】
上記4種類のPETフィルムを厚み1mmのボール紙を10枚重ねた上にセロファンテープで固定後、更にそのボール紙全体の周辺部分を厚み5mm金属板にボルトで固定し、その金属板をボール盤の高精度の試料台に固定する。この試料台はXY軸に高精度で位置を予め自動設定した後、位置を確認しながら試料の移動が可能である。直径0.10mmのドリル刃を取付け、約300rpmで孔開け加工を行った。
【0092】
厚みが120μmのフィルムには孔が開いたが、他の薄いフィルムは孔が開くよりもドリル刃によって破れたり、裂けたりして円形の孔にはならなかった。
【0093】
厚み120μmのフィルムの孔は、比較的良好なものが20%程度しかなく、孔周辺に削り残りのフィルム片や溶けたフィルムのバリが多く残り孔周辺の仕上がり精度が非常に悪く、実用的な多孔シートは得られなかった。この孔周辺の現象は、孔開けを開始した直後はあまりひどくはないが、ドリルの使用時間経るにつれて加熱されるとひどくなるため、ドリル刃を交換したり、冷却したりする必要もあった。また、孔密度は400個/cm2と少なかった。
【0094】
孔開け、孔周辺のバリ、ゴミ除去で少なくとも5秒、試料の移動、位置確認で少なくとも5秒必要であるため、合計1個当たり少なくとも10秒、1cm2当たり少なくとも4000秒の加工時間がかかった。20cm×20cmの試料を得るには444時間以上を要するので、面積の大きな試料を作製することは無理であった。実用的な加工時間を1時間程度とすると1cm×1cm程度の試料しか作製できず、20cm××20cmの試料を1時間で加工すると0.9個/cm2程度の低孔密度の試料しか得られなかった。
【0095】
比較例2
ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融成形して、厚みが120μm、60μm、30μm、15μmの4種類のフィルムを得た。
【0096】
Nd−YAGレーザー装置を使用し、発振周波数200Hz、発振波長266nm、出力100mWの条件で、上記4種のPETフィルムを取付け、フィルムの40mm×40mm部分に25μmφ孔を加工孔間ピッチは200μmを等間隔に全面(全孔数40000個)に加工を行った。レーザーの孔加工条件は、1孔あたりのレーザーのショット数は、フィルムの厚みが120μmの場合30回、フィルムの厚みが60μmの場合20回、フィルムの厚みが15μmの場合10回であり、同時に加工可能な孔数は15個であった。
【0097】
フィルム厚みが120μmと60μmでは良好な孔の加工ができなかった。フィルム厚み30μmの場合は孔はできたが、孔周辺のバリが大きく、孔中にもゴミなどがあり実用的に良好な多孔シートは得られなかった。フィルム厚み15μmのシートは平均孔径が21μm、バラツキ係数は1.11、孔密度は2500個/cm2であった。
【0098】
しかし、加工時間は2.83時間であり、20cm×20cmの試料を得るには70.8時間もかかるために面積の大きな試料を作製することは無理であった。実用的な加工時間を1時間程度とすると2.4cm×2.4cm程度の試料しか作製できず、20cm××20cmの試料を1時間で加工すると35個/cm2程度の低孔密度の試料しか得られなかった。
【0099】
比較例3
ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融成形して、厚みが120μm、60μm、30μm、15μmの4種類のフィルムを得た。
【0100】
Nd−YAGレーザー装置を使用し、発振周波数200Hz、発振波長266nm、出力を100mWの条件で、上記4種のPETフィルムを取付け、フィルムの40mm×40mm部分に50μmφ孔を加工孔間ピッチは200μmを等間隔に全面(全孔数40000個)に加工を行った。レーザーの孔加工条件は、1孔あたりのレーザーのショット数は、フィルムの厚みが120μmの場合は30回、フィルムの厚みが60μmの場合は20回、フィルムの厚みが15μmの場合は10回であり、同時に加工可能な孔数は15個であった。
【0101】
フィルム厚みが120μmでは良好な孔の加工ができなかった。フィルム厚みが15μmでは熱による孔周辺のバリ、孔中にもゴミなどがあり実用的に良好な多孔シートは得られなかった。フィルム厚みが60μmおよび30μmのものは、良好な孔が得られ、平均孔径は各々62μm、32μm、またバラツキ係数も各々1.11、1.08、孔密度は2500個/cm2であった。
【0102】
しかし、加工時間はフィルム厚みが60μmおよび30μmのもの共に3.83時間であり、20cm×20cmの試料を得るには95.8時間もかかるために面積の大きな試料を作製することは無理であった。実用的な加工時間を1時間程度とすると各々2cm×2cm程度の試料しか作製できず、20cm×20cmの試料を1時間で加工すると26個/cm2程度の低孔密度の試料しか得られなかった。
【0103】
比較例4
ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融成形して、厚みが120μm、60μm、30μm、15μmの4種類のフィルムを得た。
【0104】
Nd−YAGレーザー装置を使用し、発振周波数200Hz、発振波長266nm、出力を300mWの条件で、上記4種のPETフィルムを取付け、フィルムの40mm×40mm部分に100μmφ孔を加工孔間ピッチは200μmを等間隔に全面(全孔数40000個)に加工を行った。レーザーの孔加工条件は、1孔あたりのレーザーのショット数は、フィルムの厚みが120μmの場合は30回、フィルムの厚みが60μmの場合は20回、フィルムの厚みが15μmの場合は10回であり、同時に加工可能な孔数は15個であった。フィルム厚み120μmと60μmのものは良好な孔が形成されたが、30μmおよび15μmのものでは、熱による孔周辺のバリ、孔中にもゴミなどがあり実用的に良好な多孔シートは得られなかった。また、フィルム厚みが30μmおよび15μmのものは、シート全体が平坦でなく厚み方向にゆがみが生じた。フィルム厚みが120μm、60μmの場合、平均孔径は各々102μm、103μmであり、またバラツキ係数も各々1.11、1.08であり、孔密度は両者とも2500個/cm2であった。
【0105】
しかし、加工時間はフィルム厚み120μmの場合で4.83時間、フィルム厚み60μmの場合で3.83時間であり、20cm×20cmの試料ではフィルム厚み120μmの場合で121時間、60μmの場合で95.8時間を必要とするため、面積の大きな試料を作製することは無理であった。実用的な加工時間を1時間程度とするとフィルム厚み120μmの場合で1.8cm×1.8cm、60μmの場合で2cm××2cm程度の試料しか作製できず、20cm××20cmの試料を1時間で加工するとフィルム厚みが120μmの場合で20個/cm2、60μmの場合で26個/cm2程度の低孔密度の試料しか得られなかった。
【0106】
【発明の効果】
本発明によれば、35,000μm2以下の均一な微細な孔を高密度に有する多孔シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱プレスされる前の織物の一例
【図2】本発明に係る多孔シートの一例
【図3】図2の多孔シート表面を拡大した例
【図4】本発明に係る多孔シート断面の一例
【図5】図4の多孔シート断面を拡大した例
【符号の説明】
1:加熱プレスされる前の縦糸
2:加熱プレスされる前の横糸
3:交錯点
4:孔
5:楕円状平坦面
6:加熱プレスされた縦糸
7:加熱プレスされた横糸
Claims (14)
- 織組織または編組織の繊維が融着した交錯点よりなる35,000μm2以下の孔を有することを特徴とする多孔シート。
- 一孔あたりの平均面積を有する円の直径が200μm以下であることを特徴とする多孔シート。
- 繊維の直径が100μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔シート。
- 繊維が、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系高分子、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリビニールアルコール、ポリ乳酸またはセルロースからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔シート。
- 孔面積のバラツキ系数が3以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多孔シート。
- 繊維直径の1.5倍以下の厚さを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多孔シート。
- 孔の密度が10%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずかに記載の多孔シート。
- 繊維がマルチフィラメントからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多孔シート。
- 一孔あたりの平均面積を有する円の直径が繊維直径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の多孔シート。
- 繊維の交錯点に円状または楕円状の平坦面を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の多孔シート。
- 織組織または編組織の交錯点にある繊維を融着し、35,000μm2以下の孔を形成することを特徴とする多孔シートの製造方法。
- 織組織または編組織の交錯点にある繊維を融着し、一孔あたりの平均面積を有する円の直径が200μm以下の孔を形成することを特徴とする多孔シートの製造方法。
- 繊維直径が100μm以下であることを特徴とする請求項11または12に記載の多孔シートの製造方法。
- 厚さを繊維直径の1.5倍以下にすることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の多孔シートの製造方法。
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