JP2004277930A - ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な均一性を保ち、かつ口金面汚れおよび特にハウジング内および周辺の析出物を防止し、作業性の向上、製糸性の安定化を図ったポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも10%がポリトリメチレンテレフタレートで構成されるポリエステル繊維の製造方法において、紡糸口金から溶融吐出されるポリマーを紡糸冷却するに際し、冷却装置対面から下記式を満足する吸引装置により吸引を施す。
(1)30≦L≦200
ただし、L:吸引装置吸引口〜走行糸条最外周までの距離(mm)
(2)1≦X≦20
ただし、X:吸引装置の吸引口における単位糸条当たりの吸引風量(m3/h)
(3)T≧100
ただし、T:紡糸パックから前述吸引装置まで各部位における表面温度(℃)
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも10%がポリトリメチレンテレフタレートで構成されるポリエステル繊維の製造方法において、紡糸口金から溶融吐出されるポリマーを紡糸冷却するに際し、冷却装置対面から下記式を満足する吸引装置により吸引を施す。
(1)30≦L≦200
ただし、L:吸引装置吸引口〜走行糸条最外周までの距離(mm)
(2)1≦X≦20
ただし、X:吸引装置の吸引口における単位糸条当たりの吸引風量(m3/h)
(3)T≧100
ただし、T:紡糸パックから前述吸引装置まで各部位における表面温度(℃)
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維の製造方法に関する。さらに詳しくは、口金面から冷却チムニー間の汚れを抑制し、品位の良好なPTT繊維を得るための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PTT繊維は、ヤング率が低く、伸長弾性回復率が優れ、化学的にも安定していることから、衣料や産業資材に用いるべく着目されてきた。
【0003】
しかしながら、PTTは、熱分解しやすいために溶融紡糸工程において、口金から紡出された直後の糸条からポリマーの低重合物、すなわちモノマー、オリゴマーのガス等の有害ガスが多量に発生するため、口金面の汚れが著しく、また口金面下のハウジング内およびその周辺にモノマー、オリゴマーが析出して糸切れを引き起こすため、長時間の連続紡糸が行えず、頻繁に口金およびその周辺の清掃作業を行う必要があり、作業性の低下を招くとともに、得られた繊維の品質も安定性にかけるものであった。
【0004】
また、PTTとポリエチレンテレフタレートをサイドバイサイド型に貼り合わせることにより良好なストレッチ性能を有する複合繊維が得られる技術が提案されている(特許文献1参照)。該技術では、PTTよりも融点の高いポリエチレンテレフタレートとの複合紡糸において機械的強度を保つために紡糸温度を高くする必要があり、PTTの熱分解が著しいものであった。
【0005】
かかる問題を解決するため、例えばオリゴマーの含有量を低下させた樹脂について開示されている(特許文献2参照)。確かに該技術によってオリゴマーの析出をある程度抑制することは可能であるが、長時間の紡糸では依然として口金面の汚れ、ハウジング周辺の析出物を低減することはできなかった。
【0006】
また、口金面から冷却装置の間に吸引装置を設置し適正な吸引装置設置位置および吸引風速でモノマー、オリゴマーを低減する製法が開示されている(特許文献3参照)。該技術にて口金面の汚れをある程度抑制することは可能であるが、ハウジング内および周辺の析出物を十分に減少させるには吸引装置の吸引口を糸条に対して近接させる、あるいは吸引風速を高くする必要がある。吸引風速を高くしすぎると、糸条の均一冷却性に悪影響を及ぼし品位の低下を伴う。また、吸引口を糸条に対して近接させた場合、吸引ファンを含めた装置そのものの吸引風速が変動することによる糸条に対する影響が大きく、吐出・冷却の状態が不安定となり、製糸性および品位の悪化が生じてしまうという欠点があった。
【0007】
かかる吸引装置において、吸引風速を安定させようとする場合、例えば排気口付近でフィルター等により静圧を安定させる手段が考えられるが、フィルター部分でのモノマー、オリゴマーの析出によるフィルター目詰まり等の問題が生じる。 吸引風速の安定化を目的としたものとしては、例えば吸引口形状を工夫することにより整流化を図る装置が開示されているが(特許文献4参照)、装置として煩雑なものである上に吸引装置そのものの風速変動は抑制できるものではないため効果は不十分であった。
【0008】
また口金真下の雰囲気温度により吸引ファンの回転数を制御する装置および方法が開示されているが(特許文献5参照)、雰囲気温度測定箇所へのモノマー、オリゴマー析出により測定誤差が生じてしまい目的を達成することができないという問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−55634号公報(特許請求の範囲)
【0010】
【特許文献2】
特開平8−311177号公報(特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献3】
特開2001−348730号公報(特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献4】
実公昭50−13924号公報(実用新案登録請求の範囲)
【0013】
【特許文献5】
特開平9−250022号公報(特許請求の範囲)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解消せんとするものであり、PTT繊維の製造において、良好な均一性を保ち、かつ口金面汚れおよび特にハウジング内および周辺の析出物を防止し、作業性の向上、製糸性の安定化を図ったPTT繊維の製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する本発明のPTT繊維の製造方法は、紡糸口金から溶融吐出されるポリマーを紡糸冷却するに際し、冷却装置対面から下記式を満足する吸引装置により吸引を施すことを特徴とする。
(1)30≦L≦200
ただし、L:吸引装置吸引口〜走行糸条最外周までの距離(mm)
(2)1≦X≦20
ただし、X:吸引装置の吸引口における単位糸条当たりの吸引風量(m3/h)(3)T≧100
ただし、T:紡糸パックから前述吸引装置まで各部位における表面温度(℃)
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明のPTTとは、1,3−プロパンジオール成分とテレフタル酸成分からなるものであるが、その特性を損なわない範囲でエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールスルホン、ビスフェノールAのEO付加物、ビスフェノールスルホンのEO付加物、1,4−ブタンジオール、ε−カプロラクトン、イソフタル酸、無水フタル酸、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸リチウム、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−リチウムスルホイソフタル酸ジメチルなどが共重合されても良い。
【0018】
また、艶消し剤として、二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤として、ヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを必要に応じて添加することができる。
【0019】
本発明のPTTとは少なくとも10モル%以上が上記PTTから構成されるものであり、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、あるいはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミドが複合またはブレンドされていても良い。
【0020】
本発明についてはPTTの熱劣化がより顕著となるPTTよりも溶融温度の高いポリエチレンテレフタレート等との複合繊維において、あるいは口金吐出時の粘度差による吐出曲がりにより吐出状態が不安定であるサイドバイサイド型複合繊維において、その効果を発揮する。
【0021】
本発明のPTT繊維の製造方法は、紡糸口金から溶融吐出されるポリマーを紡糸冷却するに際し、冷却装置対面から吸引装置により吸引を施すものである。吸引風速の変動等による糸条の均一冷却性、吐出安定性に悪影響を及ぼさない範囲で、口金から紡出された直後の糸条から発生するポリマーの低重合物、すなわちモノマー、オリゴマーの吸引をし、口金面、口金面下のハウジングへの析出を防止することができる。例えば、吸引装置を紡糸バック、ハウジングに対して環状に設置する場合、吸引口が糸条に接近しすぎるため吸引風速の変動等による走行糸条への影響が大きく、吐出不安定による糸切れ等の問題が発生してしまう。
【0022】
本発明のPTT繊維の製造方法の実施の一形態を図1に示す。冷却装置3対面から吸引装置4により吸引を施すことにより、紡糸口金1から紡出された直後の糸条Yから発生するモノマー、オリゴマーを吸引し、口金面、口金面下のハウジングへの析出を防止するものである。
【0023】
この際、吸引風速の変動による走行糸条に対する悪影響を防ぎ、かつ十分な吸引効果を得るためには、吸引装置吸引口から走行糸条最外周までの距離Lが30mm以上200mm以下であることが必要である。Lが30mm未満の場合、吸引風速の変動による影響が大きく製糸性、品位の不安定な繊維となってしまい、200mmを越すと吸引効果が不十分のため吸引装置を設置した意味がなくなってしまう。十分な吸引効果と吐出安定性、良好な品位を両立するには、Lが50mm以上150mm以下であることがより好ましい。
【0024】
吸引口から走行糸条最外周までの距離Lとは、図1に示す通り、口金吐出面における吐出孔の吸引装置側の最外周から垂直方向への延長線と吸引口との距離をあらわすものである。
【0025】
また本発明では吸引装置の吸引口における単位糸条当たりの吸引風量Xが1m3/h以上20m3/h以下である必要がある。Xが1m3/h未満では十分な吸引効果が得られず、20m3/hを超えると糸条に対する吸引の影響が生じてしまい冷却均一性が損なわれてしまう。十分な吸引効果と吐出安定性、良好な品位を両立するには、Xが3m3/h以上10m3/h以下であることがより好ましい。
【0026】
さらに本発明では紡糸バックから吸引装置までの各部位(図1の斜線部分α)における表面温度Tが100℃以上であることが必要である。100℃未満では、紡糸口金から紡出された直後の糸条から発生するモノマー、オリゴマーの口金面下のハウジングおよび吸引装置吸引口の手前の部位への析出が促進され、均一冷却性が損なわれるまで吸引風量を高くしないと析出物が増大し、糸条への接触による糸切れが発生してしまう。モノマー、オリゴマーの析出をより低減させるためにはTは150℃以上であることが好ましい。また該表面温度TはPTTの劣化を防止するという点で300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。なお、該α部分での表面温度Tを所定温度以上とするには、紡糸スピンブロックの下部断熱材等の構成により達成することが可能であるが、スピンブロックの温度設定と切り離した形の電熱鋳込ヒーターブロック等をスピンブロック下面と吸引装置間に設置することが好ましい。
【0027】
また、吸引装置の吸引口の厚みは吸引効果を十分発揮する上で10mm以上であることが好ましく、また効率の点から80mm以下であることが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳述するが、これら実施例のみに本発明の範囲が限定されるものではない。なお、実施例中の各特性値は次の方法により求めた。
A.ウスター斑(%)
Zellweger社製 USTER TESTER 1 ModelCを使用し、25m/分の速度で糸を給糸しながらハーフモードで測定を行った。◎、○が本発明の目標レベルである。
◎ : 0.8%未満
○ : 0.8〜1.5%
× : 1.5%超
B.モノマー、オリゴマー析出状態
合計1000kgのポリマーを実施例記載の方法で得た際、部位αに析出したモノマー、オリゴマー析出部の最大厚みをはかった。◎、○が本発明の目標レベルである。
◎ : 3mm未満
○ : 3〜5mm
× : 5mm超
C.製糸安定性
合計500kgのポリマーを実施例記載の方法で得た際の糸切れ回数で示した。◎、○が本発明の目標レベルである。
◎ : 糸切れ1回以下
○ : 糸切れ2〜5回
× : 糸切れ5回以上。
【0029】
実施例1〜9
極限粘度[η]が1.40のポリトリメチレンテレフタレートと極限粘度[η]が0.51のポリエチレンテレフタレートを50:50の重量比率で、紡糸温度280℃、各ポリマー吐出量11g/分、引取速度1000m/分、延伸速度4000m/分の条件で図1に示した吸引装置(吸引口厚み20mm)を用い、吸引条件を変更して紡糸を行った。各吸引条件と得られたウスター斑、析出状態、製糸性評価の結果を表1示す。
【0030】
比較例1〜5
実施例1と同様の紡糸条件、吸引装置を用い、吸引条件のみを変更して紡糸を行った。結果を表1に示す。
【0031】
比較例6
実施例1と同様の紡糸条件で、環状吸引装置を用いて紡糸を行った。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の要件を満足する実施例1〜9はウスター斑、モノマー・オリゴマー析出状態、製糸性がいずれも良好であった。
【0034】
これに対し、吸引口〜糸条距離が30mm未満である比較例1および吸引風量が20m3/hを超える比較例4では、吸引による糸条への悪影響が生じウスター斑、製糸性が悪い結果となった。また、吸引口〜糸条距離が200mmを超える比較例2および吸引風量が1m3/h未満の比較例3では吸引効果が不十分となるためにモノマー・オリゴマーの析出量が多く、製糸性も悪いという結果であった。
【0035】
α部分の表面温度が100℃未満である比較例5においても、モノマー・オリゴマーの析出が促進され、製糸性も悪いという結果であった。
【0036】
さらに吸引装置を環状タイプとし、吸引口〜糸条距離が30mm未満である比較例6においても、吸引による糸条への悪影響が生じ、ウスター斑および製糸性が悪い結果となった。
【0037】
【発明の効果】
PTT繊維の製造において、良好な均一性を保ち、かつ口金面汚れおよび特にハウジング内および周辺の析出物を防止し、作業性の向上、製糸性の安定化を図ったPTT繊維の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の具体例を示す図面である。
【符号の説明】
1:紡糸口金
2:紡糸パック
3:冷却チムニー
4:吸引装置
Y:紡出糸条
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維の製造方法に関する。さらに詳しくは、口金面から冷却チムニー間の汚れを抑制し、品位の良好なPTT繊維を得るための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PTT繊維は、ヤング率が低く、伸長弾性回復率が優れ、化学的にも安定していることから、衣料や産業資材に用いるべく着目されてきた。
【0003】
しかしながら、PTTは、熱分解しやすいために溶融紡糸工程において、口金から紡出された直後の糸条からポリマーの低重合物、すなわちモノマー、オリゴマーのガス等の有害ガスが多量に発生するため、口金面の汚れが著しく、また口金面下のハウジング内およびその周辺にモノマー、オリゴマーが析出して糸切れを引き起こすため、長時間の連続紡糸が行えず、頻繁に口金およびその周辺の清掃作業を行う必要があり、作業性の低下を招くとともに、得られた繊維の品質も安定性にかけるものであった。
【0004】
また、PTTとポリエチレンテレフタレートをサイドバイサイド型に貼り合わせることにより良好なストレッチ性能を有する複合繊維が得られる技術が提案されている(特許文献1参照)。該技術では、PTTよりも融点の高いポリエチレンテレフタレートとの複合紡糸において機械的強度を保つために紡糸温度を高くする必要があり、PTTの熱分解が著しいものであった。
【0005】
かかる問題を解決するため、例えばオリゴマーの含有量を低下させた樹脂について開示されている(特許文献2参照)。確かに該技術によってオリゴマーの析出をある程度抑制することは可能であるが、長時間の紡糸では依然として口金面の汚れ、ハウジング周辺の析出物を低減することはできなかった。
【0006】
また、口金面から冷却装置の間に吸引装置を設置し適正な吸引装置設置位置および吸引風速でモノマー、オリゴマーを低減する製法が開示されている(特許文献3参照)。該技術にて口金面の汚れをある程度抑制することは可能であるが、ハウジング内および周辺の析出物を十分に減少させるには吸引装置の吸引口を糸条に対して近接させる、あるいは吸引風速を高くする必要がある。吸引風速を高くしすぎると、糸条の均一冷却性に悪影響を及ぼし品位の低下を伴う。また、吸引口を糸条に対して近接させた場合、吸引ファンを含めた装置そのものの吸引風速が変動することによる糸条に対する影響が大きく、吐出・冷却の状態が不安定となり、製糸性および品位の悪化が生じてしまうという欠点があった。
【0007】
かかる吸引装置において、吸引風速を安定させようとする場合、例えば排気口付近でフィルター等により静圧を安定させる手段が考えられるが、フィルター部分でのモノマー、オリゴマーの析出によるフィルター目詰まり等の問題が生じる。 吸引風速の安定化を目的としたものとしては、例えば吸引口形状を工夫することにより整流化を図る装置が開示されているが(特許文献4参照)、装置として煩雑なものである上に吸引装置そのものの風速変動は抑制できるものではないため効果は不十分であった。
【0008】
また口金真下の雰囲気温度により吸引ファンの回転数を制御する装置および方法が開示されているが(特許文献5参照)、雰囲気温度測定箇所へのモノマー、オリゴマー析出により測定誤差が生じてしまい目的を達成することができないという問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−55634号公報(特許請求の範囲)
【0010】
【特許文献2】
特開平8−311177号公報(特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献3】
特開2001−348730号公報(特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献4】
実公昭50−13924号公報(実用新案登録請求の範囲)
【0013】
【特許文献5】
特開平9−250022号公報(特許請求の範囲)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解消せんとするものであり、PTT繊維の製造において、良好な均一性を保ち、かつ口金面汚れおよび特にハウジング内および周辺の析出物を防止し、作業性の向上、製糸性の安定化を図ったPTT繊維の製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する本発明のPTT繊維の製造方法は、紡糸口金から溶融吐出されるポリマーを紡糸冷却するに際し、冷却装置対面から下記式を満足する吸引装置により吸引を施すことを特徴とする。
(1)30≦L≦200
ただし、L:吸引装置吸引口〜走行糸条最外周までの距離(mm)
(2)1≦X≦20
ただし、X:吸引装置の吸引口における単位糸条当たりの吸引風量(m3/h)(3)T≧100
ただし、T:紡糸パックから前述吸引装置まで各部位における表面温度(℃)
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明のPTTとは、1,3−プロパンジオール成分とテレフタル酸成分からなるものであるが、その特性を損なわない範囲でエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールスルホン、ビスフェノールAのEO付加物、ビスフェノールスルホンのEO付加物、1,4−ブタンジオール、ε−カプロラクトン、イソフタル酸、無水フタル酸、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸リチウム、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−リチウムスルホイソフタル酸ジメチルなどが共重合されても良い。
【0018】
また、艶消し剤として、二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤として、ヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを必要に応じて添加することができる。
【0019】
本発明のPTTとは少なくとも10モル%以上が上記PTTから構成されるものであり、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、あるいはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミドが複合またはブレンドされていても良い。
【0020】
本発明についてはPTTの熱劣化がより顕著となるPTTよりも溶融温度の高いポリエチレンテレフタレート等との複合繊維において、あるいは口金吐出時の粘度差による吐出曲がりにより吐出状態が不安定であるサイドバイサイド型複合繊維において、その効果を発揮する。
【0021】
本発明のPTT繊維の製造方法は、紡糸口金から溶融吐出されるポリマーを紡糸冷却するに際し、冷却装置対面から吸引装置により吸引を施すものである。吸引風速の変動等による糸条の均一冷却性、吐出安定性に悪影響を及ぼさない範囲で、口金から紡出された直後の糸条から発生するポリマーの低重合物、すなわちモノマー、オリゴマーの吸引をし、口金面、口金面下のハウジングへの析出を防止することができる。例えば、吸引装置を紡糸バック、ハウジングに対して環状に設置する場合、吸引口が糸条に接近しすぎるため吸引風速の変動等による走行糸条への影響が大きく、吐出不安定による糸切れ等の問題が発生してしまう。
【0022】
本発明のPTT繊維の製造方法の実施の一形態を図1に示す。冷却装置3対面から吸引装置4により吸引を施すことにより、紡糸口金1から紡出された直後の糸条Yから発生するモノマー、オリゴマーを吸引し、口金面、口金面下のハウジングへの析出を防止するものである。
【0023】
この際、吸引風速の変動による走行糸条に対する悪影響を防ぎ、かつ十分な吸引効果を得るためには、吸引装置吸引口から走行糸条最外周までの距離Lが30mm以上200mm以下であることが必要である。Lが30mm未満の場合、吸引風速の変動による影響が大きく製糸性、品位の不安定な繊維となってしまい、200mmを越すと吸引効果が不十分のため吸引装置を設置した意味がなくなってしまう。十分な吸引効果と吐出安定性、良好な品位を両立するには、Lが50mm以上150mm以下であることがより好ましい。
【0024】
吸引口から走行糸条最外周までの距離Lとは、図1に示す通り、口金吐出面における吐出孔の吸引装置側の最外周から垂直方向への延長線と吸引口との距離をあらわすものである。
【0025】
また本発明では吸引装置の吸引口における単位糸条当たりの吸引風量Xが1m3/h以上20m3/h以下である必要がある。Xが1m3/h未満では十分な吸引効果が得られず、20m3/hを超えると糸条に対する吸引の影響が生じてしまい冷却均一性が損なわれてしまう。十分な吸引効果と吐出安定性、良好な品位を両立するには、Xが3m3/h以上10m3/h以下であることがより好ましい。
【0026】
さらに本発明では紡糸バックから吸引装置までの各部位(図1の斜線部分α)における表面温度Tが100℃以上であることが必要である。100℃未満では、紡糸口金から紡出された直後の糸条から発生するモノマー、オリゴマーの口金面下のハウジングおよび吸引装置吸引口の手前の部位への析出が促進され、均一冷却性が損なわれるまで吸引風量を高くしないと析出物が増大し、糸条への接触による糸切れが発生してしまう。モノマー、オリゴマーの析出をより低減させるためにはTは150℃以上であることが好ましい。また該表面温度TはPTTの劣化を防止するという点で300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。なお、該α部分での表面温度Tを所定温度以上とするには、紡糸スピンブロックの下部断熱材等の構成により達成することが可能であるが、スピンブロックの温度設定と切り離した形の電熱鋳込ヒーターブロック等をスピンブロック下面と吸引装置間に設置することが好ましい。
【0027】
また、吸引装置の吸引口の厚みは吸引効果を十分発揮する上で10mm以上であることが好ましく、また効率の点から80mm以下であることが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳述するが、これら実施例のみに本発明の範囲が限定されるものではない。なお、実施例中の各特性値は次の方法により求めた。
A.ウスター斑(%)
Zellweger社製 USTER TESTER 1 ModelCを使用し、25m/分の速度で糸を給糸しながらハーフモードで測定を行った。◎、○が本発明の目標レベルである。
◎ : 0.8%未満
○ : 0.8〜1.5%
× : 1.5%超
B.モノマー、オリゴマー析出状態
合計1000kgのポリマーを実施例記載の方法で得た際、部位αに析出したモノマー、オリゴマー析出部の最大厚みをはかった。◎、○が本発明の目標レベルである。
◎ : 3mm未満
○ : 3〜5mm
× : 5mm超
C.製糸安定性
合計500kgのポリマーを実施例記載の方法で得た際の糸切れ回数で示した。◎、○が本発明の目標レベルである。
◎ : 糸切れ1回以下
○ : 糸切れ2〜5回
× : 糸切れ5回以上。
【0029】
実施例1〜9
極限粘度[η]が1.40のポリトリメチレンテレフタレートと極限粘度[η]が0.51のポリエチレンテレフタレートを50:50の重量比率で、紡糸温度280℃、各ポリマー吐出量11g/分、引取速度1000m/分、延伸速度4000m/分の条件で図1に示した吸引装置(吸引口厚み20mm)を用い、吸引条件を変更して紡糸を行った。各吸引条件と得られたウスター斑、析出状態、製糸性評価の結果を表1示す。
【0030】
比較例1〜5
実施例1と同様の紡糸条件、吸引装置を用い、吸引条件のみを変更して紡糸を行った。結果を表1に示す。
【0031】
比較例6
実施例1と同様の紡糸条件で、環状吸引装置を用いて紡糸を行った。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の要件を満足する実施例1〜9はウスター斑、モノマー・オリゴマー析出状態、製糸性がいずれも良好であった。
【0034】
これに対し、吸引口〜糸条距離が30mm未満である比較例1および吸引風量が20m3/hを超える比較例4では、吸引による糸条への悪影響が生じウスター斑、製糸性が悪い結果となった。また、吸引口〜糸条距離が200mmを超える比較例2および吸引風量が1m3/h未満の比較例3では吸引効果が不十分となるためにモノマー・オリゴマーの析出量が多く、製糸性も悪いという結果であった。
【0035】
α部分の表面温度が100℃未満である比較例5においても、モノマー・オリゴマーの析出が促進され、製糸性も悪いという結果であった。
【0036】
さらに吸引装置を環状タイプとし、吸引口〜糸条距離が30mm未満である比較例6においても、吸引による糸条への悪影響が生じ、ウスター斑および製糸性が悪い結果となった。
【0037】
【発明の効果】
PTT繊維の製造において、良好な均一性を保ち、かつ口金面汚れおよび特にハウジング内および周辺の析出物を防止し、作業性の向上、製糸性の安定化を図ったPTT繊維の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の具体例を示す図面である。
【符号の説明】
1:紡糸口金
2:紡糸パック
3:冷却チムニー
4:吸引装置
Y:紡出糸条
Claims (1)
- 少なくとも10モル%がポリトリメチレンテレフタレートで構成されるポリエステル繊維の製造方法において、紡糸口金から溶融吐出されるポリマーを紡糸冷却するに際し、冷却装置対面から下記式を満足する吸引装置により吸引を施すことを特徴とするポリエステル繊維の製造方法。
(1)30≦L≦200
ただし、L:吸引装置吸引口〜走行糸条最外周までの距離(mm)
(2)1≦X≦20
ただし、X:吸引装置の吸引口における単位糸条当たりの吸引風量(m3/h)
(3)T≧100
ただし、T:紡糸パックから前述吸引装置まで各部位における表面温度(℃)
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20190135412A (ko) * | 2018-05-28 | 2019-12-06 | 라이펜호이저 게엠베하 운트 코. 카게 마쉬넨파브릭 | 연속적인 필라멘트들로 스펀본드식 부직포를 제조하기 위한 장치 및 방법 |
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-
2003
- 2003-03-17 JP JP2003071466A patent/JP2004277930A/ja active Pending
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