JP2004277832A - 成膜方法および成膜装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低エネルギーかつ低コストで環境負荷を低減しながら簡単かつ確実に成膜することができる成膜方法および成膜装置を提供すること。
【解決手段】成膜対象物20の表面21に対して膜を形成する成膜方法であり、金属微粒子48を溶媒49に分散させた塗布液45を表面21に塗布する塗布ステップと、塗布液45に対して、光照射部33から短パルスで光強度の高い光を77照射することにより塗布液45と表面21の加熱をして、溶媒49を蒸発させて金属微粒子48を溶融して金属膜90を形成する光照射ステップとを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】成膜対象物20の表面21に対して膜を形成する成膜方法であり、金属微粒子48を溶媒49に分散させた塗布液45を表面21に塗布する塗布ステップと、塗布液45に対して、光照射部33から短パルスで光強度の高い光を77照射することにより塗布液45と表面21の加熱をして、溶媒49を蒸発させて金属微粒子48を溶融して金属膜90を形成する光照射ステップとを有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板のような成膜対象物の表面に対して膜を形成する成膜方法および成膜装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
たとえば基板に対して膜を成膜するための成膜方法としては、一般的にスパッタ法、CVD法(化学気相成長法)等がある。
このような成膜を行なう際に原料としての各種のガスが用いられて、電磁波を照射することにより成膜する方法が提案されている(たとえば特許文献1。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−134654号公報(第1頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来の成膜方法では、大規模な装置が必要であるばかりでなく、原料としての各種のガスが必要である。このことから、成膜時間が長く、装置が高価であり、しかも高温処理が必要である。このためにエネルギーの消費が大きい。
またCVD法を用いると、安全性対策や環境対策の必要な有機金属ガスやシラン等のガスが使用される。このことから装置が大掛かりになるばかりでなく、安全性対策や環境対策を十分にとらなければならない。
そこで本発明は上記課題を解消し、低エネルギーかつ低コストで環境負荷を低減しながら簡単かつ確実に成膜することができる成膜方法および成膜装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の成膜方法は、成膜対象物の表面に対して膜を形成する成膜方法であり、膜材料を含有する塗布液を前記表面に塗布する塗布ステップと、前記塗布液に対して、光照射部から短パルスで光強度の高い光を照射することにより前記塗布液と前記表面の加熱をして、前記塗布液中の溶媒を蒸発させ、前記膜材料を析出させて、析出した前記膜材料を焼結または溶融して薄膜を形成する光照射ステップと、を有することを特徴とする。
【0006】
この発明では、塗布ステップにおいて、膜材料を含有する塗布液を表面に塗布する。
光照射ステップでは、塗布液に対して、光照射部から短パルスで光強度の高い光を照射することで、塗布液と表面の加熱をして塗布液中に含まれている溶媒を蒸発させて膜材料を析出させるとともに、焼結または溶融して薄膜を形成する。
これにより、ガスを用いる必要もなく大規模な装置も用いずに、膜が成膜対象物の表面に対して簡単かつ確実に形成できる。
【0007】
光照射部は、短パルスで光強度の高い光を塗布液と表面に対して照射するだけであるので、たとえばレーザー装置のように大掛かりな装置に比べて非常に簡便で、かつ消費エネルギーも小さくできる。しかもこのような成膜方法は、通常の大気圧または大気圧近傍の圧力下で常温において行なうことができるので、成膜対象物自体を高温に保つ必要もなく、低コストで行なえる。
【0008】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属微粒子を含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とすることが望ましい。
このような構成によれば、金属膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易に行うことができるようになる。
【0009】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属酸化膜微粒子を含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とすることが望ましい。
このような構成によれば、金属酸化膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易に行うことができるようになる。
【0010】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属イオンを含有する有機金属溶液を含む膜材料であることを特徴とすることが望ましい。
このような構成によれば、金属膜または金属化合膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易に行うことができるようになる。
【0011】
本発明の成膜装置は、成膜対象物の表面に対して膜を形成する成膜装置であり、膜材料を含有する塗布液を前記表面に塗布する塗布部と、前記塗布液を前記表面に塗布した成膜対象物を保持する保持部と、前記塗布液に対して、短パルスで光強度の高い光を照射することにより前記塗布液と前記表面の加熱をして、前記塗布液中の溶媒を蒸発させ、前記膜材料を析出させて、析出した前記膜材料を焼結または溶融して薄膜を形成する光照射部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明では、塗布部は、膜材料を含有させた塗布液を、表面に塗布するようになっている。保持部は、塗布液を表面に塗布した成膜対象物を保持する。
光照射部は、塗布液に対して、短パルスで光強度の高い光を照射することにより、塗布液と表面の加熱をして、溶媒を蒸発させて析出した膜材料を溶融して薄膜を形成する。
これにより、ガスを用いる必要もなく大規模な装置も用いずに、膜が成膜対象物の表面に対して簡単かつ確実に形成できる。
【0013】
光照射部は、短パルスで光強度の高い光を塗布液と表面に対して照射するだけであるので、たとえばレーザー装置のように大掛かりな装置に比べて非常に簡便で、かつ消費エネルギーも小さくできる。しかもこのような成膜方法は、通常の大気圧または大気圧近傍の圧力下で常温において行なうことができるので、成膜対象物自体を高温に保つ必要もなく、低コストで行なえる。
【0014】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属微粒子を含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とする。
このような構成によれば、金属膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易に行うことができるようになる。
【0015】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属酸化物微粒子含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とすることが望ましい。
このような構成によれば、金属酸化膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易になる。
【0016】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属イオンを含有する有機金属溶液を含む膜材料であることを特徴とする。
このような構成によれば、金属膜または金属化合膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易に行うことができるようになる。
【0017】
上記構成において、蒸発した溶媒にドライエアーを供給するドライエアー供給部と、蒸発した前記溶媒と前記ドライエアーを外部に排出する排気部とを備えることを特徴とすることが望ましい。
このような構成によれば、ドライエアー供給部は、蒸発した溶媒にドライエアーを供給する。排気部は、蒸発した溶媒とドライエアーを外部に排出するようになっている。
これにより、蒸発した溶媒はドライエアーとともに排気部の動作により確実に外部に排出することができる。したがって、蒸発した溶媒が、成膜対象物の表面に再付着するのを確実に防ぐことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
第1の実施形態
図1は、本発明の成膜装置の好ましい第1の実施形態を示している。
図1に示す成膜装置10は、成膜対象物20の表面21に対して、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、金属の膜を簡単かつ確実に形成することができる装置である。成膜対象物20の表面21は、被成膜面とも呼んでいる。
【0019】
図1の成膜装置10は、塗布液供給部30、保持部としてのテーブル31、光照射部33、ドライエアー供給部35、排気部37、そして制御部100を備えている。
塗布液供給部30は、塗布液収容部41とノズル43を有している。塗布液収容部41の中には、塗布液45が収容されている。この塗布液45は、金属微粒子を液相に分散させた懸濁液である。
この金属微粒子は、微粒子材料の一種であり、金属材料としては、たとえばAgパウダーを用いる。金属微粒子の直径が、成膜エリア(線幅)以下の小さい微粒子であれば用いることができる。この金属微粒子はいわゆるナノ粒子と呼ばれているものである。
【0020】
上述した液相は、水やアルコールなどの液材料が用いられる。微粒子が均一に分散されるためには、市販の分散液を添加してもよい。分散液としては、たとえば界面活性剤を用いることもできる。
【0021】
図2は成膜方法の手順を具体的に図示している。
図2(A)には、成膜対象物20の基板23と塗布液45が図示されている。塗布液45は、球状の金属微粒子48と、この金属微粒子48が分散された溶媒49を示している。
この塗布液45は、図2(A)のノズル43から基板23の表面21に対して、たとえばスピンコート法により成膜されている。しかし塗布液45の成膜方法は、これ以外にスリットを通して塗布液45を表面21に塗布するスリット形成法や、基板23をディップ(Dip)槽に漬けて形成するディップ形成法、またはインクジェットヘッドを用いた形成法であってもよい。
【0022】
上述した溶媒49の分散液は、金属微粒子48を液中に分散できる性質を持っていることが必要である。分散液(たとえば界面活性剤等)が溶媒に添加されていれば、金属微粒子48が液中に分散されやすくなる。したがって、市販されている分散液があれば用いることができる。
【0023】
ナノ粒子のコロイド結晶化のように、自己組織化現象(自然に結晶配列化する現象)を用いなくても、金属微粒子48が、図2(A)のようにある程度配列されていれば、金属微粒子48は、光照射部33のランプ70の照射光77を用いて、瞬時に溶融させて再結晶化を行なうことができる。
ナノ粒子ではなくて、もっと粗い線幅に成膜する場合には、大きな粒子(たとえば直径が数十μm乃至数百μm)のものの金属微粒子であっても、本発明では用いることができる。ある程度の金属微粒子48の配列がされていれば、上述した照射光77を照射することにより、金属微粒子48は瞬時に溶融して、再結晶化を行なうことができる。
【0024】
次に、図1の光照射部33の構造について説明する。
光照射部33は、複数本のランプ70と、反射材71および電源回路部72を有している。
反射材71は、複数本のランプ70が発生する照射光77を、塗布液45側に効率よく反射して供給するための部材である。
【0025】
ランプ70は、たとえば図1の紙面において垂直方向に長くなっている棒状のランプを使用することができる。図1の例では、ランプ70は7本図示されているが、7本に限らず、1本または2本以上の複数本あるいは8本以上の複数本であっても勿論構わない。
各ランプ70は電源回路部72により点灯される。電源回路部72は、制御部100の指令により動作が制御される。
【0026】
ランプ70について説明する。
ランプ70は、短パルスでかつ光強度の高い光を発生するランプである。ランプ70の種類としては、たとえばフラッシュランプである。フラッシュランプの種類としては、たとえばキセノンランプであり、その波長域は近紫外線乃至可視光、そして近赤外線領域までを有している。
ランプ70は、電源回路部72から高圧パルスを印加すると、ランプ内部に封入されたキセノン気体が一瞬にして絶縁破壊を起こす。この破壊が、コンデンサに蓄積された電気エネルギーを極めて短い時間の間にランプ内に一挙に放出し、この時、照射光77が生じる。このとき、その光強度波形は、尖頭波形であっても、矩形波形であってもかまわない。
【0027】
このランプ70が発生する光のパルス幅(半値全幅)は、たとえばmsec(ミリ秒)オーダのパルス幅の光を発生する。
フラッシュランプの種類としては、キセノンランプ、メタルハライドランプ、クリプトンランプ、キセノン―水銀ランプ等である。
このランプ70が、たとえばキセノンフラッシュランプである場合には、その光の照射時間は、たとえば上述したようにmsec(ミリ秒)オーダであり、このランプ70の照射光77は、好ましくは図示していないフロスト板により散乱されて均一化された後に、図1に示す成膜対象物20の塗布液45に照射するようになっている。
【0028】
図1に示すテーブル31は、好ましくは操作部39によりX方向に沿って移動可能になっている。テーブル31の搭載面60の上には、基板23の下面61が着脱可能に搭載される。
テーブル31は、制御部100の指令による操作部39の動作により、X方向に移動して、ノズル43と光照射部33に対してそれぞれ位置決めできる。つまりテーブル31に搭載されている成膜対象物20は、ノズル43に対面させ、その後に成膜対象物20は光照射部33に対面させる。
図1に示すドライエアー供給部35は、ドライエアー66を、光照射部33と成膜対象物20の間に供給する。排気部37は、ドライエアー66とともに塗布液45の蒸発した溶媒を外部に排出させることができる。ドライエアー供給部35と排気部37は制御部100によりその動作が制御される。
ドライエアー供給部35と排気部37は、省略してもよい。
【0029】
次に、図2と図3を参照しながら、本発明の成膜方法について説明する。
図2(A)は、成膜対象物20の基板23の表面21に対して塗布液45を塗布している状態を示している。図2(B)は、ランプ70から照射光77を塗布液45側へ照射している様子を示している。図2(C)は、塗布液45の内の溶媒49が蒸発して、金属微粒子48が溶融されかつ薄膜化して、膜90が表面21に形成された状態を示している。
【0030】
図3は、成膜方法の手順を示しているフロー図である。
まず図3の塗布ステップST1では、図2(A)に示すようにテーブル31とともに成膜対象物20がノズル43に対面した位置に位置決めされる。そして塗布液45が、塗布液収容部41からノズル43を通じて、基板23の表面21に対して供給される。この状態では表面21の塗布液45が皮膜状に形成されるが、溶媒49の中では金属微粒子48がほぼ規則正しく配列されている。
【0031】
このようにして、金属微粒子48を溶媒49に分散させた塗布液45が、表面21に塗布されて膜状に形成される。
塗布ステップST1では、塗布液45を表面21に形成する場合には、必要とする所定のパターニングが行なわれる。このパターニングは、たとえば印刷やたとえばインクジェット等を用いて任意に形成する。
【0032】
次に、図3の光照射ステップST2では、図2(B)に示すようにランプ70が照射光77を塗布液45に照射する。この照射光77は、短パルスでかつ光強度の高い光であり、その波形は尖頭波形もしくは矩形波形を示している。この照射光77は、塗布液45および基板23の表面21を瞬時に加熱することにより、低融点の溶媒49を蒸発させるとともに、金属微粒子48を溶融する。これにより溶融した金属微粒子48が図2(C)に示すように膜90を表面21に形成する。
【0033】
このようにして、照射光77は、塗布液45と表面21を加熱することにより、低融点の溶媒49は蒸発し、金属微粒子のみが溶融して膜90を作る。短パルスで光強度の高い照射光77を用いることにより、熱分散による流動現象がほとんどなく、塗布によるパターニングを行なった後のパターンの崩れを生じることなく、膜90が形成可能である。
【0034】
図2(B)において、照射光77により溶媒49が蒸発するが、この蒸発した溶媒49Aは、ドライエアー供給部35からのドライエアー66とともに排気部37の動作により外部に排出することができる。すなわち蒸発した溶媒49Aが、ランプ70と基板23の間から確実に外部に排出させることができる。
これによって、蒸発した溶媒49Aが、再び基板23の表面21や図2(C)に示す膜90に再付着するのを確実に防ぐことができる。このため品質の高い金属の膜90の成膜ができる。
【0035】
第2の実施形態
次に、図4と図5を参照して、本発明の成膜方法の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態の成膜方法は、図1に示す成膜装置10を用いて同様にして行なうことができる。
【0036】
第2の実施形態の成膜方法が、第1の実施形態の成膜方法と異なるのは、使用する微粒子が、Agパウダーに代えて、金属酸化物であるITO(Indium
Tin Oxide)パウダーである点である。
この金属酸化物微粒子は、金属材料と酸化物材料を混ぜたものである。金属微粒子の直径が、成膜エリア(線幅)以下の小さい微粒子であれば用いることができる。この金属酸化物微粒子はいわゆるナノ粒子と呼ばれているものである。
【0037】
上述した溶媒は、水やアルコールなどの液材料が用いられる。微粒子が均一に分散されるためには、市販の分散液を添加してもよい。分散液としては、たとえば界面活性剤を用いることができる。
図4(A)に示す成膜対象物120は、基板23と塗布液45を有している。この塗布液45は、溶媒49とその溶媒に分散された金属酸化物微粒子148を有している。
【0038】
このように金属酸化物微粒子148としてITOパウダーを用いた場合の成膜方法について図5を参照しながら説明する。
塗布ステップST1では、所定のパターニングを行ないながら図4(A)に示すようにノズル43から塗布液45が基板23の表面21に供給して塗布される。
その後図5の光照射ステップST2において、ランプ70は照射光77を塗布液45側に照射する。この照射光77は、塗布液45と表面21を瞬時に加熱することにより、低融点の溶媒49が蒸発し、金属微粒子148は瞬時に焼結されて、図4(C)のように膜190として薄膜形成される。しかも、膜190は、結晶化も起きるために、室温にて低抵抗の膜として形成される。
このように短パルスで高い光強度を有する照射光77を用いることにより、熱拡散による膜190の流動現象がほとんどなく、塗布によりパターニングを行なった後の膜190のパターン崩れがなく形成できる。
【0039】
この場合にも、図4(B)に示すドライエアー供給部35からドライエアー66が供給されるので、ドライエアー66と蒸発した溶媒49Aは、排気部37の動作により、ランプ70と基板23の間から外部に確実に排出させることができる。したがって蒸発した溶媒49が、基板23の表面や図4(C)に示す膜190に再付着するのを防ぐことができる。
【0040】
上述した実施形態では、塗布液45の金属微粒子としては、たとえばAgパウダーを用いているが、これに限らずたとえばAuパウダーや、Cuパウダー等の他の種類の導電性を有する金属パウダーを用いることも勿論可能である。
また金属酸化物微粒子としては、たとえばITOに限らず、SiO2,TiOxや、Ta2O5等を用いることも勿論可能である。
また、上述した実施形態では、微粒子を分散させたコロイド溶液を用いているが、金属イオンを含有する有機金属溶液を塗布し、乾燥後、上述の実施形態と同様にして光を照射しても同様な成膜が可能である。
また、コロイド溶液と有機金属溶液を混合させた塗布液を用いてもかまわない。
また、塗布液は、コロイド溶液や有機金属溶液のみならず、有機薄膜材料であってもかまわない。
また、短パルスで光強度の高い照射光は、1パルスだけの照射のみならず、複数回照射してもかまわない。
【0041】
本発明の成膜方法および装置を用いることにより、次のようなメリットがある。
図1に示す成膜装置10により膜を成膜する場合には、大気圧または大気圧近傍の圧力下で使用することができ、特別にガスを用いる必要もないので装置全体の小型化およびコストダウンが図れる。
ヒータ等の別の加熱手段を設ける必要がないので、無駄なエネルギーロスがなくプロセス処理が行なえる。
成膜対象物20の表面21に対して、直接塗布液45を塗布して皮膜状に形成すればよいので、塗布液のような薬液の使用量が大幅に削減できるので、環境負荷を削減できる。
【0042】
照射光77は、短パルスで高い光強度を有しているので、塗布液45に対して短時間で急峻な熱変化を与え、かつ表面21の熱容量のみを変えることができる。このために、成膜対象物20の基板23の全体が加熱される訳ではなく、成膜装置10の全体も加熱される訳ではないので、成膜装置10および成膜対象物20を外部から冷却する必要が全くない。
【0043】
照射光77は、成膜処理をする時に短時間照射するだけなので、処理の待機時にはそのエネルギーを使う必要がない。
短パルスで光強度の高い照射光77を用いるので、瞬時に溶媒(溶剤ともいう)を揮発させて、金属微粒子を用いて薄膜化させるとともに、結晶化も可能になる。このために高品位の膜が表面21に形成できる。また金属微粒子は、瞬時に焼結または溶融するために、金属微粒子の流動現象が起きずに、得られた膜のパターニング精度に変化が生じにくく、パターニング精度を向上させることができる。
【0044】
このように本発明の成膜装置および成膜方法を用いることにより、低エネルギーで、低コストかつ高品位な膜の形成が可能であり、高いスループットで成膜を行なうことができる。
成膜対象物は、たとえば表示体の基板として用いることができる。しかしこの成膜対象物は、それ以外に各種の電子機器あるいはその他の分野の装置の基板として用いることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成膜装置の好ましい第1の実施形態を示す図。
【図2】図1の成膜装置により行なわれる成膜方法の第1の実施形態を示す図。
【図3】本発明の第1の実施形態の成膜方法を示すフロー図。
【図4】本発明の成膜方法の第2の実施形態を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態の成膜方法を示すフロー図。
【符号の説明】
10・・・成膜装置、20・・・成膜対象物、21・・・成膜対象物の表面、23・・・成膜対象物の基板、30・・・塗布液供給部、31・・・テーブル(保持部)、33・・・光照射部、35・・・ドライエアー供給部、37・・・排気部、45・・・塗布液、48・・・金属微粒子、49・・・溶媒、66・・・ドライエアー、70・・・ランプ、77・・・照射光、90・・・膜(金属膜)
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板のような成膜対象物の表面に対して膜を形成する成膜方法および成膜装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
たとえば基板に対して膜を成膜するための成膜方法としては、一般的にスパッタ法、CVD法(化学気相成長法)等がある。
このような成膜を行なう際に原料としての各種のガスが用いられて、電磁波を照射することにより成膜する方法が提案されている(たとえば特許文献1。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−134654号公報(第1頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来の成膜方法では、大規模な装置が必要であるばかりでなく、原料としての各種のガスが必要である。このことから、成膜時間が長く、装置が高価であり、しかも高温処理が必要である。このためにエネルギーの消費が大きい。
またCVD法を用いると、安全性対策や環境対策の必要な有機金属ガスやシラン等のガスが使用される。このことから装置が大掛かりになるばかりでなく、安全性対策や環境対策を十分にとらなければならない。
そこで本発明は上記課題を解消し、低エネルギーかつ低コストで環境負荷を低減しながら簡単かつ確実に成膜することができる成膜方法および成膜装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の成膜方法は、成膜対象物の表面に対して膜を形成する成膜方法であり、膜材料を含有する塗布液を前記表面に塗布する塗布ステップと、前記塗布液に対して、光照射部から短パルスで光強度の高い光を照射することにより前記塗布液と前記表面の加熱をして、前記塗布液中の溶媒を蒸発させ、前記膜材料を析出させて、析出した前記膜材料を焼結または溶融して薄膜を形成する光照射ステップと、を有することを特徴とする。
【0006】
この発明では、塗布ステップにおいて、膜材料を含有する塗布液を表面に塗布する。
光照射ステップでは、塗布液に対して、光照射部から短パルスで光強度の高い光を照射することで、塗布液と表面の加熱をして塗布液中に含まれている溶媒を蒸発させて膜材料を析出させるとともに、焼結または溶融して薄膜を形成する。
これにより、ガスを用いる必要もなく大規模な装置も用いずに、膜が成膜対象物の表面に対して簡単かつ確実に形成できる。
【0007】
光照射部は、短パルスで光強度の高い光を塗布液と表面に対して照射するだけであるので、たとえばレーザー装置のように大掛かりな装置に比べて非常に簡便で、かつ消費エネルギーも小さくできる。しかもこのような成膜方法は、通常の大気圧または大気圧近傍の圧力下で常温において行なうことができるので、成膜対象物自体を高温に保つ必要もなく、低コストで行なえる。
【0008】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属微粒子を含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とすることが望ましい。
このような構成によれば、金属膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易に行うことができるようになる。
【0009】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属酸化膜微粒子を含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とすることが望ましい。
このような構成によれば、金属酸化膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易に行うことができるようになる。
【0010】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属イオンを含有する有機金属溶液を含む膜材料であることを特徴とすることが望ましい。
このような構成によれば、金属膜または金属化合膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易に行うことができるようになる。
【0011】
本発明の成膜装置は、成膜対象物の表面に対して膜を形成する成膜装置であり、膜材料を含有する塗布液を前記表面に塗布する塗布部と、前記塗布液を前記表面に塗布した成膜対象物を保持する保持部と、前記塗布液に対して、短パルスで光強度の高い光を照射することにより前記塗布液と前記表面の加熱をして、前記塗布液中の溶媒を蒸発させ、前記膜材料を析出させて、析出した前記膜材料を焼結または溶融して薄膜を形成する光照射部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明では、塗布部は、膜材料を含有させた塗布液を、表面に塗布するようになっている。保持部は、塗布液を表面に塗布した成膜対象物を保持する。
光照射部は、塗布液に対して、短パルスで光強度の高い光を照射することにより、塗布液と表面の加熱をして、溶媒を蒸発させて析出した膜材料を溶融して薄膜を形成する。
これにより、ガスを用いる必要もなく大規模な装置も用いずに、膜が成膜対象物の表面に対して簡単かつ確実に形成できる。
【0013】
光照射部は、短パルスで光強度の高い光を塗布液と表面に対して照射するだけであるので、たとえばレーザー装置のように大掛かりな装置に比べて非常に簡便で、かつ消費エネルギーも小さくできる。しかもこのような成膜方法は、通常の大気圧または大気圧近傍の圧力下で常温において行なうことができるので、成膜対象物自体を高温に保つ必要もなく、低コストで行なえる。
【0014】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属微粒子を含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とする。
このような構成によれば、金属膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易に行うことができるようになる。
【0015】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属酸化物微粒子含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とすることが望ましい。
このような構成によれば、金属酸化膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易になる。
【0016】
上記構成において、前記塗布液は、少なくとも金属イオンを含有する有機金属溶液を含む膜材料であることを特徴とする。
このような構成によれば、金属膜または金属化合膜を塗布により成膜することが可能になり、大掛かりな成膜装置が不要となり、安全性対策や環境対策が容易に行うことができるようになる。
【0017】
上記構成において、蒸発した溶媒にドライエアーを供給するドライエアー供給部と、蒸発した前記溶媒と前記ドライエアーを外部に排出する排気部とを備えることを特徴とすることが望ましい。
このような構成によれば、ドライエアー供給部は、蒸発した溶媒にドライエアーを供給する。排気部は、蒸発した溶媒とドライエアーを外部に排出するようになっている。
これにより、蒸発した溶媒はドライエアーとともに排気部の動作により確実に外部に排出することができる。したがって、蒸発した溶媒が、成膜対象物の表面に再付着するのを確実に防ぐことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
第1の実施形態
図1は、本発明の成膜装置の好ましい第1の実施形態を示している。
図1に示す成膜装置10は、成膜対象物20の表面21に対して、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、金属の膜を簡単かつ確実に形成することができる装置である。成膜対象物20の表面21は、被成膜面とも呼んでいる。
【0019】
図1の成膜装置10は、塗布液供給部30、保持部としてのテーブル31、光照射部33、ドライエアー供給部35、排気部37、そして制御部100を備えている。
塗布液供給部30は、塗布液収容部41とノズル43を有している。塗布液収容部41の中には、塗布液45が収容されている。この塗布液45は、金属微粒子を液相に分散させた懸濁液である。
この金属微粒子は、微粒子材料の一種であり、金属材料としては、たとえばAgパウダーを用いる。金属微粒子の直径が、成膜エリア(線幅)以下の小さい微粒子であれば用いることができる。この金属微粒子はいわゆるナノ粒子と呼ばれているものである。
【0020】
上述した液相は、水やアルコールなどの液材料が用いられる。微粒子が均一に分散されるためには、市販の分散液を添加してもよい。分散液としては、たとえば界面活性剤を用いることもできる。
【0021】
図2は成膜方法の手順を具体的に図示している。
図2(A)には、成膜対象物20の基板23と塗布液45が図示されている。塗布液45は、球状の金属微粒子48と、この金属微粒子48が分散された溶媒49を示している。
この塗布液45は、図2(A)のノズル43から基板23の表面21に対して、たとえばスピンコート法により成膜されている。しかし塗布液45の成膜方法は、これ以外にスリットを通して塗布液45を表面21に塗布するスリット形成法や、基板23をディップ(Dip)槽に漬けて形成するディップ形成法、またはインクジェットヘッドを用いた形成法であってもよい。
【0022】
上述した溶媒49の分散液は、金属微粒子48を液中に分散できる性質を持っていることが必要である。分散液(たとえば界面活性剤等)が溶媒に添加されていれば、金属微粒子48が液中に分散されやすくなる。したがって、市販されている分散液があれば用いることができる。
【0023】
ナノ粒子のコロイド結晶化のように、自己組織化現象(自然に結晶配列化する現象)を用いなくても、金属微粒子48が、図2(A)のようにある程度配列されていれば、金属微粒子48は、光照射部33のランプ70の照射光77を用いて、瞬時に溶融させて再結晶化を行なうことができる。
ナノ粒子ではなくて、もっと粗い線幅に成膜する場合には、大きな粒子(たとえば直径が数十μm乃至数百μm)のものの金属微粒子であっても、本発明では用いることができる。ある程度の金属微粒子48の配列がされていれば、上述した照射光77を照射することにより、金属微粒子48は瞬時に溶融して、再結晶化を行なうことができる。
【0024】
次に、図1の光照射部33の構造について説明する。
光照射部33は、複数本のランプ70と、反射材71および電源回路部72を有している。
反射材71は、複数本のランプ70が発生する照射光77を、塗布液45側に効率よく反射して供給するための部材である。
【0025】
ランプ70は、たとえば図1の紙面において垂直方向に長くなっている棒状のランプを使用することができる。図1の例では、ランプ70は7本図示されているが、7本に限らず、1本または2本以上の複数本あるいは8本以上の複数本であっても勿論構わない。
各ランプ70は電源回路部72により点灯される。電源回路部72は、制御部100の指令により動作が制御される。
【0026】
ランプ70について説明する。
ランプ70は、短パルスでかつ光強度の高い光を発生するランプである。ランプ70の種類としては、たとえばフラッシュランプである。フラッシュランプの種類としては、たとえばキセノンランプであり、その波長域は近紫外線乃至可視光、そして近赤外線領域までを有している。
ランプ70は、電源回路部72から高圧パルスを印加すると、ランプ内部に封入されたキセノン気体が一瞬にして絶縁破壊を起こす。この破壊が、コンデンサに蓄積された電気エネルギーを極めて短い時間の間にランプ内に一挙に放出し、この時、照射光77が生じる。このとき、その光強度波形は、尖頭波形であっても、矩形波形であってもかまわない。
【0027】
このランプ70が発生する光のパルス幅(半値全幅)は、たとえばmsec(ミリ秒)オーダのパルス幅の光を発生する。
フラッシュランプの種類としては、キセノンランプ、メタルハライドランプ、クリプトンランプ、キセノン―水銀ランプ等である。
このランプ70が、たとえばキセノンフラッシュランプである場合には、その光の照射時間は、たとえば上述したようにmsec(ミリ秒)オーダであり、このランプ70の照射光77は、好ましくは図示していないフロスト板により散乱されて均一化された後に、図1に示す成膜対象物20の塗布液45に照射するようになっている。
【0028】
図1に示すテーブル31は、好ましくは操作部39によりX方向に沿って移動可能になっている。テーブル31の搭載面60の上には、基板23の下面61が着脱可能に搭載される。
テーブル31は、制御部100の指令による操作部39の動作により、X方向に移動して、ノズル43と光照射部33に対してそれぞれ位置決めできる。つまりテーブル31に搭載されている成膜対象物20は、ノズル43に対面させ、その後に成膜対象物20は光照射部33に対面させる。
図1に示すドライエアー供給部35は、ドライエアー66を、光照射部33と成膜対象物20の間に供給する。排気部37は、ドライエアー66とともに塗布液45の蒸発した溶媒を外部に排出させることができる。ドライエアー供給部35と排気部37は制御部100によりその動作が制御される。
ドライエアー供給部35と排気部37は、省略してもよい。
【0029】
次に、図2と図3を参照しながら、本発明の成膜方法について説明する。
図2(A)は、成膜対象物20の基板23の表面21に対して塗布液45を塗布している状態を示している。図2(B)は、ランプ70から照射光77を塗布液45側へ照射している様子を示している。図2(C)は、塗布液45の内の溶媒49が蒸発して、金属微粒子48が溶融されかつ薄膜化して、膜90が表面21に形成された状態を示している。
【0030】
図3は、成膜方法の手順を示しているフロー図である。
まず図3の塗布ステップST1では、図2(A)に示すようにテーブル31とともに成膜対象物20がノズル43に対面した位置に位置決めされる。そして塗布液45が、塗布液収容部41からノズル43を通じて、基板23の表面21に対して供給される。この状態では表面21の塗布液45が皮膜状に形成されるが、溶媒49の中では金属微粒子48がほぼ規則正しく配列されている。
【0031】
このようにして、金属微粒子48を溶媒49に分散させた塗布液45が、表面21に塗布されて膜状に形成される。
塗布ステップST1では、塗布液45を表面21に形成する場合には、必要とする所定のパターニングが行なわれる。このパターニングは、たとえば印刷やたとえばインクジェット等を用いて任意に形成する。
【0032】
次に、図3の光照射ステップST2では、図2(B)に示すようにランプ70が照射光77を塗布液45に照射する。この照射光77は、短パルスでかつ光強度の高い光であり、その波形は尖頭波形もしくは矩形波形を示している。この照射光77は、塗布液45および基板23の表面21を瞬時に加熱することにより、低融点の溶媒49を蒸発させるとともに、金属微粒子48を溶融する。これにより溶融した金属微粒子48が図2(C)に示すように膜90を表面21に形成する。
【0033】
このようにして、照射光77は、塗布液45と表面21を加熱することにより、低融点の溶媒49は蒸発し、金属微粒子のみが溶融して膜90を作る。短パルスで光強度の高い照射光77を用いることにより、熱分散による流動現象がほとんどなく、塗布によるパターニングを行なった後のパターンの崩れを生じることなく、膜90が形成可能である。
【0034】
図2(B)において、照射光77により溶媒49が蒸発するが、この蒸発した溶媒49Aは、ドライエアー供給部35からのドライエアー66とともに排気部37の動作により外部に排出することができる。すなわち蒸発した溶媒49Aが、ランプ70と基板23の間から確実に外部に排出させることができる。
これによって、蒸発した溶媒49Aが、再び基板23の表面21や図2(C)に示す膜90に再付着するのを確実に防ぐことができる。このため品質の高い金属の膜90の成膜ができる。
【0035】
第2の実施形態
次に、図4と図5を参照して、本発明の成膜方法の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態の成膜方法は、図1に示す成膜装置10を用いて同様にして行なうことができる。
【0036】
第2の実施形態の成膜方法が、第1の実施形態の成膜方法と異なるのは、使用する微粒子が、Agパウダーに代えて、金属酸化物であるITO(Indium
Tin Oxide)パウダーである点である。
この金属酸化物微粒子は、金属材料と酸化物材料を混ぜたものである。金属微粒子の直径が、成膜エリア(線幅)以下の小さい微粒子であれば用いることができる。この金属酸化物微粒子はいわゆるナノ粒子と呼ばれているものである。
【0037】
上述した溶媒は、水やアルコールなどの液材料が用いられる。微粒子が均一に分散されるためには、市販の分散液を添加してもよい。分散液としては、たとえば界面活性剤を用いることができる。
図4(A)に示す成膜対象物120は、基板23と塗布液45を有している。この塗布液45は、溶媒49とその溶媒に分散された金属酸化物微粒子148を有している。
【0038】
このように金属酸化物微粒子148としてITOパウダーを用いた場合の成膜方法について図5を参照しながら説明する。
塗布ステップST1では、所定のパターニングを行ないながら図4(A)に示すようにノズル43から塗布液45が基板23の表面21に供給して塗布される。
その後図5の光照射ステップST2において、ランプ70は照射光77を塗布液45側に照射する。この照射光77は、塗布液45と表面21を瞬時に加熱することにより、低融点の溶媒49が蒸発し、金属微粒子148は瞬時に焼結されて、図4(C)のように膜190として薄膜形成される。しかも、膜190は、結晶化も起きるために、室温にて低抵抗の膜として形成される。
このように短パルスで高い光強度を有する照射光77を用いることにより、熱拡散による膜190の流動現象がほとんどなく、塗布によりパターニングを行なった後の膜190のパターン崩れがなく形成できる。
【0039】
この場合にも、図4(B)に示すドライエアー供給部35からドライエアー66が供給されるので、ドライエアー66と蒸発した溶媒49Aは、排気部37の動作により、ランプ70と基板23の間から外部に確実に排出させることができる。したがって蒸発した溶媒49が、基板23の表面や図4(C)に示す膜190に再付着するのを防ぐことができる。
【0040】
上述した実施形態では、塗布液45の金属微粒子としては、たとえばAgパウダーを用いているが、これに限らずたとえばAuパウダーや、Cuパウダー等の他の種類の導電性を有する金属パウダーを用いることも勿論可能である。
また金属酸化物微粒子としては、たとえばITOに限らず、SiO2,TiOxや、Ta2O5等を用いることも勿論可能である。
また、上述した実施形態では、微粒子を分散させたコロイド溶液を用いているが、金属イオンを含有する有機金属溶液を塗布し、乾燥後、上述の実施形態と同様にして光を照射しても同様な成膜が可能である。
また、コロイド溶液と有機金属溶液を混合させた塗布液を用いてもかまわない。
また、塗布液は、コロイド溶液や有機金属溶液のみならず、有機薄膜材料であってもかまわない。
また、短パルスで光強度の高い照射光は、1パルスだけの照射のみならず、複数回照射してもかまわない。
【0041】
本発明の成膜方法および装置を用いることにより、次のようなメリットがある。
図1に示す成膜装置10により膜を成膜する場合には、大気圧または大気圧近傍の圧力下で使用することができ、特別にガスを用いる必要もないので装置全体の小型化およびコストダウンが図れる。
ヒータ等の別の加熱手段を設ける必要がないので、無駄なエネルギーロスがなくプロセス処理が行なえる。
成膜対象物20の表面21に対して、直接塗布液45を塗布して皮膜状に形成すればよいので、塗布液のような薬液の使用量が大幅に削減できるので、環境負荷を削減できる。
【0042】
照射光77は、短パルスで高い光強度を有しているので、塗布液45に対して短時間で急峻な熱変化を与え、かつ表面21の熱容量のみを変えることができる。このために、成膜対象物20の基板23の全体が加熱される訳ではなく、成膜装置10の全体も加熱される訳ではないので、成膜装置10および成膜対象物20を外部から冷却する必要が全くない。
【0043】
照射光77は、成膜処理をする時に短時間照射するだけなので、処理の待機時にはそのエネルギーを使う必要がない。
短パルスで光強度の高い照射光77を用いるので、瞬時に溶媒(溶剤ともいう)を揮発させて、金属微粒子を用いて薄膜化させるとともに、結晶化も可能になる。このために高品位の膜が表面21に形成できる。また金属微粒子は、瞬時に焼結または溶融するために、金属微粒子の流動現象が起きずに、得られた膜のパターニング精度に変化が生じにくく、パターニング精度を向上させることができる。
【0044】
このように本発明の成膜装置および成膜方法を用いることにより、低エネルギーで、低コストかつ高品位な膜の形成が可能であり、高いスループットで成膜を行なうことができる。
成膜対象物は、たとえば表示体の基板として用いることができる。しかしこの成膜対象物は、それ以外に各種の電子機器あるいはその他の分野の装置の基板として用いることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成膜装置の好ましい第1の実施形態を示す図。
【図2】図1の成膜装置により行なわれる成膜方法の第1の実施形態を示す図。
【図3】本発明の第1の実施形態の成膜方法を示すフロー図。
【図4】本発明の成膜方法の第2の実施形態を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態の成膜方法を示すフロー図。
【符号の説明】
10・・・成膜装置、20・・・成膜対象物、21・・・成膜対象物の表面、23・・・成膜対象物の基板、30・・・塗布液供給部、31・・・テーブル(保持部)、33・・・光照射部、35・・・ドライエアー供給部、37・・・排気部、45・・・塗布液、48・・・金属微粒子、49・・・溶媒、66・・・ドライエアー、70・・・ランプ、77・・・照射光、90・・・膜(金属膜)
Claims (9)
- 成膜対象物の表面に対して膜を形成する成膜方法であり、
膜材料を含有する塗布液を前記表面に塗布する塗布ステップと、
前記塗布液に対して、光照射部から短パルスで光強度の高い光を照射することにより前記塗布液と前記表面の加熱をして、前記塗布液中の溶媒を蒸発させ、前記膜材料を析出させて、析出した前記膜材料を焼結または溶融して薄膜を形成する光照射ステップと、
を有することを特徴とする成膜方法。 - 前記塗布液は、少なくとも金属微粒子を含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
- 前記塗布液は、少なくとも金属酸化物微粒子を含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
- 前記塗布液は、少なくとも金属イオンを含有する有機金属溶液を含有する膜材料であることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
- 成膜対象物の表面に対して膜を形成する成膜装置であり、
膜材料を含有する塗布液を前記表面に塗布する塗布部と、
前記塗布液を前記表面に塗布した成膜対象物を保持する保持部と、
前記塗布液に対して、短パルスで光強度の高い光を照射することにより前記塗布液と前記表面の加熱をして、前記塗布液中の溶媒を蒸発させ、前記膜材料を析出させて、析出した前記膜材料を焼結または溶融して薄膜を形成する光照射部と、
を備えることを特徴とする成膜装置。 - 前記塗布液は、少なくとも金属微粒子を含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
- 前記塗布液は、少なくとも金属酸化物微粒子を含む膜材料を液相に分散させた溶液であることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
- 前記塗布液は、少なくとも金属イオンを含有する有機金属溶液を含む膜材料であることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
- 蒸発した溶媒にドライエアーを供給するドライエアー供給部と、蒸発した前記溶媒と前記ドライエアーを外部に排出する排気部とを備えることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
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