JP2004277256A - 磁器組成物、複合材料、酸素分離装置及び化学反応装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】実質的にペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物イオン混合伝導体であって、組成式「(BaxSr1−x)α(Co1−yFey)O(3−δ)」で表されることを特徴とする磁器組成物である。また、該磁器組成物を用いた多孔質支持体部及び/又は緻密質連続層を含む複合材料、並びに該磁器組成物及び/又は該複合材料を有する酸素分離装置と化学反応装置である。ここで、0.5≦x≦0.65、0.9≦α≦1.1、0.075≦y≦0.125、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素の工業的選択透過・分離プロセス又は炭化水素の部分酸化用隔膜リアクター等に応用される、酸化物イオン混合伝導体磁器組成物、複合材料、酸素分離装置及び化学反応装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、イオン伝導材料を薄膜化し、これを用いて工業的に特定成分の分離や精製を行うプロセスは、著しく進歩・発展している。中でも酸化物イオン伝導材料を用い、大気等の混合気体から酸素を選択的に透過させて分離・精製するプロセスは、医学用途のための小規模な酸素ポンプから、大規模な気体発生・精製プラントにまで適用が期待されている。また、最近では、酸化物イオン伝導材料の隔膜で酸素混合気体と炭化水素ガスとを隔絶し、酸素を選択的に透過させて炭化水素を部分酸化させる方法、いわゆる隔膜リアクターとしての使用も検討されている。
【0003】
この目的に利用できる酸化物イオン伝導性のセラミックス材料としては、酸素イオンのみを伝える酸化物イオン伝導体と、酸素イオンと電子又は正孔を同時に伝える酸化物イオン混合伝導体が知られている。中でも、酸化物イオン混合伝導体は、材料自体が電子又は正孔を伝えることができるため、酸素イオンの移動を持続させるために必要な電荷の補償を、外部電流回路の形成をしなくても行うことができる。このため、酸素分離の用途には、より好適であると考えられている。即ち、酸化物イオン混合伝導体によって酸素分離を行うためには、この混合伝導体の両側の酸素ポテンシャルを異なるようにするだけでよく、酸素分圧の高い側から低い側に向かって酸素のみが混合伝導体を透過し、それ以外のガス成分は混合伝導体を透過できず、酸素の選択的な透過・分離を行うことができる。
【0004】
このような酸素の選択的透過・分離プロセス又は隔膜リアクター等を実用化するためには、高い酸化物イオン伝導性を有する材料が必要であり、その条件を満たす材料としてペロブスカイト型構造を有する酸化物イオン混合伝導体が検討されている。ペロブスカイト型構造は、一般式ABO3(A及びBは金属イオン)で表され、アニオンの酸素が12個配位するサイト(Aサイト)と、6個配位するサイト(Bサイト)にそれぞれカチオンが占有している結晶構造である。そして、上記の目的で検討されている材料の多くは、BサイトにCo又はFeを含んでいる。例えば、特開昭56−92103号公報に開示されている{LaxSr(1−x)}CoO3−α(x=0.1〜0.9、α=0〜0.5)、及び特開昭61−21717号公報に開示されている{La(1−x)Srx}{Co(1−y)Fey}O3−δ(x=0.1〜1.0、y=0.05〜1.0、δ=0.5〜0)等の磁器組成物が有力な候補材料として知られている。
【0005】
この{La(1−x)Srx}{Co(1−y)Fey}O3−δ系については、xとyの値の変化による酸素透過速度の変化がY. Teraokaらによって検討され、x=1、y=0.2の組成、即ちSr{Co0.8Fe0.2}O3−δが最も高い酸素透過速度を示した事が報告されている(Chem. Lett., (1985) pp.1743〜1746)。この報告以降、Sr{Co0.8Fe0.2}O3−δについては、H. Kruidhofら(Solid State Ionics, vol.63−65 (1993) pp.816〜822)を初めとし、多くの研究がなされている。
【0006】
上記の他に、特開平6−206706号公報においては、AxBax’ByB’y’B”y”O3−z(AはICUPAによって採用される元素周期律表による1、2及び3族とf周期のランタノイド族からなる群から選択され、B、B’及びB”がd周期の遷移金属から選択され、さらに0≦x≦1、0<x’≦1、0<y≦1、0≦y’≦1、0≦y”≦1、x+x’=1、y+y’+y”=1であり、zは組成物の電荷が中性であるときに与えられる数値)なる、極めて広い組成範囲の酸化物イオン輸送透過膜が提案され、その具体例としてLa0.2Ba0.8Co0.8Fe0.2O2.6等が示されている。
【0007】
ところで、Y. Teraokaらは、Chemistry Letters,pp.503−506, 1988において、組成式La0.6A’0.4Co0.8Fe0.2O3−δで表されるペロブスカイト型酸化物の酸素透過速度を調べ、ペロブスカイト型構造のAサイトにBaを含むことによって酸素透過速度を向上できることを指摘している。この知見を拡張して考えるならば、混合伝導体のペロブスカイト型酸化物、例えばSr{Co0.8Fe0.2}O3−δのAサイトを占めるSrをBaで置換することにより、ペロブスカイト型混合伝導体酸化物の酸素透過速度の向上を図ることができると期待される。実際、中華人民共和国国家知識産権局の発明特許申請公開説明書の公告番号CN1277072においては、
「酸素透過特性の優れた混合導体型酸素透過膜であって、当該酸素透過膜の分子式が
(BaaSrb)(FecCodTieZrf)O3−δ
であり、ここに、0<a≦1、0≦b<1、a+b=1;
0<c≦1、0<d≦1、0≦e<1、0≦f<1、0.7<c+d+e+f<1.3、0<δ<1であることを特徴とする。」
なる発明が開示され、その実施例として、Ba(Ti0.2Co0.4Fe0.4)O3−δ、(Ba0.5Sr0.5)(Co0.6Fe0.4)O3−δ、及び(Ba0.5Sr0.5)(Co0.8Fe0.2)O3−δが挙げられている。
【0008】
また、Z. Shaoらは、Separation and Purification Tech., vol.25 (2001) pp.419〜429において、(BaxSr1−x)(Co0.8Fe0.2)O3−δ系のBa置換量による特性の変化の検討を行い、同文献の図8において、低温より酸素透過が安定し、なおかつ850℃以上で最も高い酸素透過速度を示すのは、(Ba0.3Sr0.7)(Fe0.2Co0.8)O3−δと(Ba0.5Sr0.5)(Fe0.2Co0.8)O3−δであり、両者の特性はほぼ同等であることを報告している。
【0009】
【特許文献1】
特開昭56−92103号公報
【特許文献2】
特開昭61−21717号公報
【特許文献3】
特開平6−206706号公報
【特許文献4】
中国特許第1277072号明細書
【非特許文献1】
テラオカ(Teraoka)著、「ケミストリー・レター(Chem. Lett.,)、1985年、p.1743−1746
【非特許文献2】
クルイドフ(H. Kuruidhof)著、「ソリッド・ステート・イオニクス(Solid State Ionics)、第63−65巻、1993年、p.816−822
【非特許文献3】
テラオカ(Teraoka)著、「ケミストリー・レター(Chem. Lett.,)、1988年、p.503−506
【非特許文献4】
シャオ(Z. Shao)著、「セパレーション・アンド・ピュリフィケーション・テクノロジー(Separation and Purification Tech.,)」、第25巻、2001年、419−429
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
一方、混合伝導体による酸素透過速度は、混合伝導体の両側の酸素ポテンシャルの差、具体的には酸素分圧の高圧側(入側)と低圧側(出側)の酸素分圧の比の対数に比例する。従って、この酸素ポテンシャルの差が大きく取れる用途として、例えば隔膜リアクターと比較すると、酸素の選択的透過・分離プロセスでは、<入側条件/出側条件>が、<高圧空気/1気圧酸素>又は<1気圧空気/ポンプによる減圧酸素>となり、酸素分圧の比の対数は数分の1になってしまう。このため、同じ混合伝導体の同じ膜厚条件であっても、酸素透過速度は極めて低いものとなる。
【0011】
即ち、酸素透過の原動力である酸素ポテンシャルの差が大きくとれない酸素の選択的透過・分離プロセスでの応用を考えると、(Ba0.5Sr0.5)(Fe0.2Co0.8)O3−δの酸素透過速度でもまだ不十分であり、より高い酸素透過速度を有し、なおかつ安定して酸素分離が行える材料が必要であった。
【0012】
本発明は、ペロブスカイト型の酸化物イオン混合伝導体において、安定して高い酸素透過速度を示す磁器組成物を提供すること、また、これを応用し、酸素透過速度の高いガス分離用の複合材料や、酸素分離装置及び化学反応装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酸素の選択的透過・分離プロセスでの応用を目的として、従来より高い酸素透過速度を有し、なおかつ安定して酸素分離が行える材料の探索を鋭意行った。
【0014】
本発明者らは、(BaxSr1−x)α(Co1−yFey)O(3−δ)系において、酸素透過特性がこれまでに検討・報告されてきた組成範囲、即ち0≦x≦1.0、y=0.2の範囲以外でも探索を行った結果、従来有効性が指摘されたことのない極めて限定された組成範囲において、従来の材料よりも酸素透過速度が大幅に向上し、かつ安定して酸素の選択的透過・分離が可能な材料が得られることを新たに見出した。
【0015】
即ち、上記本発明の提供する材料を大気中で焼成又は熱処理してXRD(X線回折)で構成相を調べると、主要な相はペロブスカイト型であるが、試料の作製条件によってはこの他に、d値で3.30近傍にピークを持つことを特徴とする低対称相を若干含む場合がある。従来の知見では、一般的に、このような低対称相を大気中の熱処理によって生じる材料は、材料が高圧空気から1気圧酸素、又は1気圧空気から減圧酸素の条件に晒される酸素の選択的透過・分離プロセスに供されると、酸素透過速度の経時劣化が生じるため、使用に耐えられないとされてきた。
【0016】
これに対し、本発明者らは、この第2相を含む材料を用いて、酸素の選択的透過・分離プロセスでの評価を行ったところ、経時劣化等の問題を生じない特異な材料であることを新たに見出した。
【0017】
前述の中華人民共和国国家知識産権局の発明特許申請公開説明書の公告番号CN1277072に開示されている磁器組成物と比較して、本発明に係る磁器組成物は、AサイトのBa/Sr比を限定し、Bサイトの構成元素をCo及びFeのみとし、なおかつCo/Fe比を限定している。このような限定によって、従来は酸素の選択的透過・分離プロセスや炭化水素の部分酸化プロセスとしては酸素透過速度の経時劣化が生じるため使用に耐えられないとされていた、大気中の熱処理により低対称相を生じる材料であっても、酸素の選択的透過・分離プロセスで使用可能としたものである。更に、本発明に係る磁器組成物は、従来のものよりも優れた酸素透過特性が得られるものであり、更に、公告番号CN1277072の実施例に示されている磁器組成物よりも、格段に優れた酸素透過性を示すものである。
【0018】
本発明者らが知る限りにおいて、本発明が提示する組成領域の磁器組成物が、酸素の選択的透過・分離プロセスや炭化水素の部分酸化プロセスで格段に優れた特性を示すとの事実は、先行技術において示唆・明示されたことはない。また、本発明に係る磁器組成物は、耐久性等の特性が従来のものよりも格段に優れており、更に、酸素分離装置や化学反応装置としての実用性や分離能も格段に優れている。
【0019】
本発明は、上記知見に基づくものであり、その要旨は次の通りである。
【0020】
本発明に係る磁器組成物は、実質的にペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物イオン混合伝導体であって、下記の組成式(式1)で表されることを特徴とする。
(BaxSr1−x)α(Co1−yFey)O(3−δ) (式1)
ここで、0.5≦x≦0.65、0.9≦α≦1.1、0.075≦y≦0.125、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。
【0021】
本発明に係る複合材料は、多孔質支持体部と該多孔質支持体部の上に形成された緻密質連続層を含む膜部から構成される複合材料であって、前記多孔質支持体部が気孔率20%以上80%以下の酸化物イオン混合伝導性多孔質酸化物を有して成り、前記緻密質連続層が厚さ10μm以上1mm以下の酸化物イオン混合伝導性酸化物であり、さらに、前記多孔質支持体部、又は前記緻密質連続層、あるいは前記多孔質支持体部と前記緻密質連続層の両方が、上記の磁器組成物を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る酸素分離装置は、上記の磁器組成物及び/又は上記の複合材料を有することを特徴とする。
【0023】
本発明に係る化学反応装置は、上記の磁器組成物及び/又は上記の複合材料を有することを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る磁器組成物、複合材料、酸素分離装置及び化学反応装置について、詳細に説明する。
【0025】
本発明に係る磁器組成物は、実質的にペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物イオン混合伝導体の磁器組成物であって、下記の組成式(式1)で表されることを特徴とする。
(BaxSr1−x)α(Co1−yFey)O(3−δ) (式1)
(ここで、0.5≦x≦0.65、0.075≦y≦0.125、0.9≦α≦1.1である。)
【0026】
即ち、本発明に係る磁器組成物は、一般式ABO3(A及びBは金属イオン)で表されるペロブスカイト型構造のBサイトにCoとFeを含み、Feの含有量yは従来検討が行われてきた組成範囲よりも少量であって、0.075≦y≦0.125に限定される。Feの含有量yが0.125を超えて多くなり、それに伴ってCoの含有量が0.875よりも減少すると、酸素透過速度が減少してしまう。また、Feの含有量yを0.075よりも少なくし、それに伴ってCoの含有量が0.925よりも大きくなると、酸素の選択的透過・分離プロセスの条件において十分なペロブスカイト相の安定性が確保できず、酸素透過速度の経時劣化等が起きてしまう。
【0027】
本発明に係る磁器組成物は、ペロブスカイト型構造のAサイトにBaとSrを含み、適切なBaの割合xは0.5≦x≦0.65に限定される。Baの含有量xが前記範囲であれば、大気中で焼成を行った試料のXRDに低対称相のピークが現れても、安定して酸素の選択的透過・分離プロセスを実行することが可能である。一方、Baの含有量xが0.65を超えて大きくなり、それに伴ってSrの含有量が0.35よりも減少すると、酸素の選択的透過・分離プロセスにおいて十分なペロブスカイト相の安定性が確保できず、酸素透過速度の経時劣化が起きてしまう。また、Baの含有量xが0.5よりも少なくなり、それに伴ってSrの含有量が0.5よりも大きくなると酸素透過速度が低下してしまう。
【0028】
AサイトとBサイトの比率αは0.9≦α≦1.1が好ましく、より好ましくは0.98≦α≦1.02の範囲内であり、αが前記範囲内にある場合では、材料の焼結性を制御することができる。しかし、AサイトとBサイトの比率がこの範囲を外れると、酸素透過速度が低下したり、酸素分離膜にリークが生じて酸素分離の選択性が低下したりする等の問題が生じる。また、酸素の欠損量δは、電荷中性条件を満たすように決まる値である。
【0029】
本発明に係る磁器組成物(酸化物イオン混合伝導体)は、多少の不純物を含んでも、特性に大きな劣化は見られない。但し、その許容量は元素のモル比にして全体の5%以下、望ましくは2%以下の程度である。この範囲を外れて不純物を含むと、異相が生成されたり、酸素透過速度が低下したりする等の問題が生じる。一方、本発明に係る磁器組成物(酸化物イオン混合伝導体)は第2相と複合化することが可能である。例えばAgやAg−Pd、Pt等の金属と複合化して複合材料とすれば、焼結性を向上したり、材料強度を向上させたりすることができる。
【0030】
本発明に係る磁器組成物は、酸素の選択的透過・分離プロセスに特に好適である。この用途のための複合材料において、多孔質支持体、緻密質連続層又は膜表面での酸素交換反応を促進するための触媒としても用いることができるが、材料の高い酸素透過速度を活かして緻密質連続層に用いるのが特に好ましい用途である。
【0031】
そして、本発明に係る複合材料において、多孔質支持体の気孔率は20%以上80%以下の範囲である必要がある。気孔率がこの範囲を外れると、酸素透過において大きな通気抵抗となってしまったり、支持体の機械的特性が大きく損なわれたりする等の問題が生じる。多孔質支持体の厚さの好ましい範囲は、装置の構成や運転条件によって異なるが、典型的には500μm以上10mm以下の範囲である。多孔質支持体の厚さがこの範囲を外れて厚くなると、酸素透過において通気抵抗が大きくなる問題が生じる。また、この範囲を外れて薄くなると、支持体の機械的特性が不十分になる問題が生じる。
【0032】
本発明に係る複合材料において、緻密質連続層の厚さは10μm以上1mm以下の範囲が適正である。緻密質連続層の厚みがこの範囲を外れると、リークガスの量が増えてしまったり、酸素透過速度が低下したりする等の問題が生じる。
【0033】
上述のような多孔質支持体は、例えば、セラミックス多孔体を製造するために通常用いられる方法を用いて製造することができる。その方法の一つとして、必要な元素を含む酸化物を原料とし、これを焼成する方法がある。また、原料として、酸化物の他に塩類、例えば炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物、水酸化物又はオキシハロゲン化物を用い、これらを所定の割合で混合して、焼成する方法もある。また、上記塩類の内で、水に可溶なものを所定の割合で水に溶解して蒸発乾燥する方法、フリーズドライ法やスプレードライ法によって乾燥した後、焼成する方法、水に可溶な塩類を水に溶解した後、アンモニア水等のアルカリ性溶液を添加して、水酸化物の沈殿とし焼成する共沈法、又は原料に金属アルコキシドを用い、これを加水分解してゲルを得て、焼成するゾルゲル法等も適用可能である。
【0034】
多孔質支持体の焼成は、仮焼及び本焼成(焼結)の2段階で行うのが一般的である。仮焼は400〜1100℃の温度範囲で、数時間から十数時間程度行い、仮焼粉を製造するのが通常である。この仮焼粉をそのまま成形して本焼成を行っても良いし、仮焼粉にポリビニルアルコール(PVA)等の樹脂を混合して成形、本焼成しても良い。本焼成の温度は組成等によって異なるが、通常700〜1300℃、好ましくは1000〜1250℃の範囲である。本焼成の時間は組成と焼成温度によって異なるが、通常、数時間以上を要する。本焼成の雰囲気は、一般には大気中で十分であるが、必要に応じて制御雰囲気下で焼成しても良い。また多孔質支持体の成形の手段としては、通常のバルクセラミックスの製造と同様に仮焼粉や混合粉をダイスに詰めて、加圧、成型してもよいし、泥漿鋳込み法や、押し出し成型法等を用いても良い。
【0035】
一方、緻密質連続膜は、セラミックス膜を製造するために通常用いられる方法により作製することができる。真空蒸着法等のPVDやCVDといった、いわゆる薄膜形成手法によって成膜しても良いが、より簡便で経済的には、多孔質支持体の上にスラリー状にした原料粉や仮焼粉を塗布し、焼成する方法が好ましい。緻密質連続膜の焼成温度は、膜がガスリークを起こさないように緻密化すると共に、この焼成過程で多孔質支持体の気孔率が大きく低下することのない条件を選択する必要がある。通常の焼成温度は700〜1300℃、好ましくは1000〜1250℃の範囲である。また焼成時間には、通常で数時間を要する。この緻密質連続膜の焼成は、多孔質支持体の本焼成の後に別々に行っても良いし、支持体の本焼成と同時に行っても良い。緻密質連続膜の密度は、ガスリークを起こさないために好ましくは85%以上、より好ましくは93%以上の範囲である。また、緻密質連続膜の表面に触媒層を付与する場合は、緻密質連続膜の焼成後、原料を分散したスラリー等を塗布し、緻密質連続膜の焼成温度よりも低温で焼き付けを行うことが好ましい。
【0036】
上記のプロセスで形成した複合材料によって、酸素を含有する混合気体から酸素の選択的透過・分離を行うためには、複合材料の両面の酸素ポテンシャルが異なるようにすればよい。大気から酸素を分離するためには、原料大気側を加圧するか、酸素の取り出し側を減圧すればよい。例えば、原料大気側を10〜30気圧に加圧し、透過酸素側を1気圧として酸素を製造することができる。また、原料大気側を1〜30気圧とし、透過酸素側をポンプで0.05気圧程度に減圧しても良い。また、酸素富化空気を製造するためには、原料大気側を10〜30気圧に加圧し、反対側に1気圧の大気を供給すればよい。この酸素分離の操業温度は、500〜1000℃、好ましくは650〜950℃の範囲である。
【0037】
このように、本発明に係る複合材料及び磁器組成物は、純酸素又は酸素富化空気の製造装置等に応用できる。更に、酸素分離以外の用途、特に酸化反応が関与する化学反応装置、例えば、メタンより一酸化炭素と水素からなる合成ガスを製造するメタンの部分酸化反応の反応装置にも利用はできる。但し、この用途においては、酸素透過速度の経時劣化等の問題が生じやすく、操業条件の範囲は限定される。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの内容に限定されるものではない。
【0039】
緻密質の焼結体試料を作成し、結晶構造及び酸素透過速度を評価した。
【0040】
試料の原料には、SrCO3、BaCO3、Fe2O3、Co3O4を用い、それぞれ所要量を秤量した後、イソプロピルアルコールを分散媒として、ジルコニアボールと共に24時間ボールミル混合を行った。得られたスラリーを乾燥、解砕し、MgO製の角さやに詰め、大気中で850℃で12時間仮焼を行った。次に、得られた仮焼粉を粉砕し、12mmφのダイスに詰めて錠剤状に一軸成形し、更に氷嚢に詰めてCIP成形を行った。その後、得られた成形体をMgO製の角さや内で、1000〜1250℃の範囲の焼結温度にて5時間焼成を行い、約10mmφの焼結体を得た。表1に、焼結体試料の組成を示す。但し、表1では、各試料の組成を、下記の組成式(式1)に従って表している。
(BaxSr1−x)α(Co1−yFey)O(3−δ) (式1)
【0041】
【表1】
【0042】
試料No.1〜3、7〜10、13、14は比較例、No.4〜6、11、12は本発明の実施例である。比較例のNo.1はyが本発明の範囲外であり、No.2、3、7〜10はxが本発明の範囲外である。
【0043】
この焼結体試料を厚さ1mmまで研磨し、Al2O3管の先端に接着して、管の外側は空気にさらし、その内側にはヘリウムをスイープガスとして流した。試料温度は850℃とした。次に、出側のヘリウムガス中の酸素分圧を測定し、酸素透過速度を求めた。酸素透過速度は、酸化物イオン混合伝導体の単位表面積当たり及び一分間当たりの、透過酸素の標準状態での体積で表示してあり、単位はcc/cm2/minである。
【0044】
焼結体試料を通してのガスのリークの有無は、出側のヘリウムスイープガス中の窒素の量をガスクロメーターを用いて調べた。その結果、本発明の範囲内にある試料に、ガスリークは認められなかった。
【0045】
上記表1に、焼結体の室温での粉末X線回折法による構成相の同定結果、酸素透過速度の測定値及び酸素透過速度の安定性を示す。
【0046】
粉末X線回折法による構成相の評価結果は、〇、△、×の3段階で示し、○は立方晶ペロブスカイト相単相であったことを示す。△及び×はBaNiO3型六方晶等の異相を含んでいたことを示すが、便宜的に、d値で2.8近傍に現れるペロブスカイト相のメインピークの強度が他のピークよりも高い場合を△、異相のピークの強度の方が高い場合を×として示す。
【0047】
また、酸素透過速度の安定性は、上記の酸素透過実験を1週間継続して行った結果を示すものである。評価は、〇、×の2段階で行い、酸素透過速度の変動幅が初期値の5%以内である場合を○、変動幅がそれよりも大きい場合を×として表した。
【0048】
表1から、本発明の範囲内の材料の酸素透過速度は、4cc/cm2/min以上を確保しており、従来の材料と比較して3割以上と大幅な向上が図られていることがわかる。材料の酸素透過速度は、酸素透過性能の安定性が確保されるならば高ければ高いほどより好ましいが、本発明の実施例に係る材料は従来の材料より十分に優位性を有する透過速度を有しているといえる。また、各実施例に係る材料は、粉末X線回折法による構成相の同定によると△程度の異相を含んでいるにも係わらず、試料の作成に特段問題を生じないばかりか、酸素透過性能にも悪影響が見られないという特徴がある。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、酸化物イオン混合伝導体による酸素の選択透過・分離プロセス等の技術分野おいて、優れた酸素透過特性を発揮する磁器組成物(酸化物イオン混合伝導体)を得ることができる。この磁器組成物は、酸素分離装置等に用いる複合材料の緻密質連続層としても、また、多孔質支持体としても好適である。これら本発明の提供する技術は、空気からの酸素分離装置の高性能化と低コスト化に資するところ大である。
Claims (4)
- 実質的にペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物イオン混合伝導体であって、下記の組成式(式1)で表されることを特徴とする磁器組成物。
(BaxSr1−x)α(Co1−yFey)O(3−δ) (式1)
ここで、0.5≦x≦0.65、0.9≦α≦1.1、0.075≦y≦0.125、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。 - 多孔質支持体部と該多孔質支持体部の上に形成された緻密質連続層を含む膜部から構成される複合材料であって、
前記多孔質支持体部が気孔率20%以上80%以下の酸化物イオン混合伝導性多孔質酸化物を有して成り、前記緻密質連続層が厚さ10μm以上1mm以下の酸化物イオン混合伝導性酸化物であり、
さらに、前記多孔質支持体部、又は前記緻密質連続層、あるいは前記多孔質支持体部と前記緻密質連続層の両方が、請求項1に記載の磁器組成物を含むことを特徴とする複合材料。 - 請求項1に記載の磁器組成物及び/又は請求項2に記載の複合材料を有することを特徴とする酸素分離装置。
- 請求項1に記載の磁器組成物及び/又は請求項2に記載の複合材料を有することを特徴とする化学反応装置。
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