JP2004277168A - 圧接ローラ、該圧接ローラを用いたウェブロール体の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】圧接ローラまたは巻取ロールまたはガイドローラに起因する不均一ニップを解消し、シワなどの欠点のないウェブロール体を製造できる圧接ローラおよびそれを用いたウェブロール体の製造方法並びに製造装置を提供する。
【解決手段】軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材と、その内側にあって、これと同軸に配置された中心軸を備えた圧接ローラの外筒部材が圧接相手の筒体と同じ方向にたわむように構成する。
【選択図】図2
【解決手段】軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材と、その内側にあって、これと同軸に配置された中心軸を備えた圧接ローラの外筒部材が圧接相手の筒体と同じ方向にたわむように構成する。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行する合成樹脂フィルム等のウェブを巻き取る際のコンタクトローラ、またはウェブを案内する際のガイドローラ上にウェブを圧接し把持するニップローラとして好適な圧接ローラ、およびこれを備えたウェブロール体の製造装置、およびこれを用いたウェブロール体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウェブロール体の代表例である一般的な合成樹脂フィルムロール体の製造装置の一例であるスリッターの概略断面図を図5に示す。
【0003】
図に示すように、該製造装置は4つの部位から構成される。すなわち、▲1▼原反18からフィルムウェブ10を巻き出す巻出部14、▲2▼フィルムウェブ10をスリットするスリッター部16、▲3▼スリッター部の前後に配置されフィルムウェブ10を搬送するガイドローラ部15、▲4▼スリットされたフィルムウェブ10を巻き取る巻取部17である。
【0004】
このうち、例えばスリッター部16後のガイドローラ部15においては、巻取部17の張力をスリッター部16に影響させないために張力分断用のニップローラ21が備えられている。このニップローラ21に使用される圧接ローラは、ガイドローラ19に対し幅方向において均一にニップし、フィルムウェブ10を把持するという機能が要求される。すなわち、均一ニップがなされなければ、スリット時にフィルムウェブ幅方向における張力分布が不均一になり、スリットされたフィルムウェブ10のエッジが幅方向(図5において紙面に垂直な方向)に蛇行するおそれがあるからである。
【0005】
また、巻取部17においては、コンタクトローラ23を巻取ロールに圧接し、巻き込み空気を抑制しつつ、フィルムウェブ10を巻き取る。
このコンタクトローラに用いられる圧接ローラには、通常以下に述べるような四つの点が要求されている。
【0006】
まず、第一には、圧接ローラはフィルム幅方向の全ての範囲にわたって密着すると共に、均一なニップ力で圧接することである。すなわち、圧接ローラの軸方向のいずれかの場所で均一ニップがなされていないと、ウェブ層間に巻き込まれる空気量に斑が生じ、種々の巻取欠点につながるからである。
【0007】
第二には、圧接ローラの外径は極力小径化することである。巻き取られたウェブ層間に巻き込まれる噛み込み空気量は、圧接ローラの外径が大きいほど増加するからである。しかし、小径化によって圧接ローラ自身の剛性も低下するので、従来のように軸のジャーナル部を巻取ロールに向かって押圧すると圧接ローラの中央部近傍が押圧方向とは反対方向に撓み、ますます中央部近傍の面圧が低下するという矛盾が新たに生じる。
【0008】
第三には、圧接ローラは、極力巻取ロールからの振動を吸収し得ることである。もし、振動が吸収できないと、断続的に巻取中のウェブとコンタクトローラとの間に生じる隙間から空気が巻き込まれ、巻取欠点につながるからである。
第四には圧接ローラの高速性能が優れていること、すなわちローラの固有振動数(許容速度)が高いことである。これは圧接ローラ自身が回転中に振動しないために必要である。
すなわち、上述した▲1▼均一ニップ、▲2▼小径化、▲3▼振動吸収、▲4▼高速性能の四点が、コンタクトローラに用いられる圧接ローラに要求される点である。
このような技術的課題の改善を目的とした従来の圧接ローラを図6〜8の概略断面図を用いて説明する。
図6に示す従来の圧接ローラは、外筒部材2と中心軸4を、外筒部材の軸方向中央部のみで連結固定し、外筒部材2と中心軸4の撓みを分離することで、外筒部材2の撓みを巻取ロールまたはガイドローラの撓みに沿わせ、均一ニップしようとしたものである。(例えば特許文献1参照)
また、図7に示す圧接ローラは、外筒部材内側に軸方向に一定の間隔を隔てて設けられた球面軸受によって外筒部材2と中心軸4を連結し外筒部材2と中心軸4の撓みを分離させ、その外筒部材全体を巻取ロールまたはガイドローラの撓みに沿わせ均一ニップしようとしたものである。(例えば特許文献2参照)
この2種類の圧接ローラは、図9に示すように中心軸と外筒部材のそれぞれの撓みを分離させて、外筒部材を巻取ロールまたはガイドローラといった筒体の撓みと同じ方向に撓ませてこれに沿わせ、均一ニップを得ようとするという点において類似した技術的思想であるといえる。
【0009】
このほか、図8に示す圧接ローラのように、外径をローラ軸方向中央から両端に向かって漸減させ、ローラの撓みを相殺し、均一ニップを得ようとしたものもある。(例えば特許文献3参照)
【0010】
【特許文献1】
実公平2−29076号公報
【0011】
【特許文献2】
特公平6−45410号公報
【0012】
【特許文献3】
実公昭61−62744号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6や図7に示した中心軸と外筒部材の撓みを分離させ、外筒部材を巻取ロールの撓みに沿わせる構造(以下撓み分離構造と称す)の圧接ローラは、広幅のウェブを巻取る際など圧接による巻取ロールまたはガイドローラの撓み量が大きい場合において均一ニップを得ようとすると、外筒部材の撓み量を大きく、すなわち外筒部材の曲げ剛性を低下させなければならず、その結果、強度と回転精度を確保出来なくなるという問題があった。
【0014】
また、外径を漸減させる形状(以下クラウン形状と称す)の圧接ローラは巻取ロールまたはガイドローラの撓み量が大きい場合において均一ニップを得ようとすると、軸方向中央部と両端部の外径の差を大きくしなければならない。そのため、軸方向中央部と両端部の周速差が大きくなり、ウェブの縦シワや蛇行の原因となる問題があった。
【0015】
本発明の目的は、これらの課題を解決し、圧接ローラまたはガイドローラ、または巻取ロールの撓み量に起因する、不均一ニップを解消し、振動吸収性、小径化を満足しながら、さらに高速性能に優れる、合成樹脂フィルム等のウェブ巻取ローラまたはガイドローラにウェブを介して圧接するといった目的に用いられる圧接ローラ、および該圧接ローラを用いたウェブロール体の製造方法並びに製造装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決する本発明の構成は以下の通りである。すなわち、
(1)軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材と、該外筒部材の内側にあってこれと同軸に配置された中心軸とを備えた圧接ローラであって、前記軸方向に軸方向を有する筒体に圧接されたときに、前記外筒部材が前記筒体と同じ方向に撓むよう構成されたことを特徴とする圧接ローラ。
(2)軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材と、該外筒部材の内側にあって、前記外筒部材の軸方向中央部において前記外筒部材と連結固定された中心軸とを備えたことを特徴とする圧接ローラ。
(3)軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材と、該外筒部材内側に軸方向に一定の間隔を隔てて設けられた球面軸受によって連結された中心軸とを備えたことを特徴とする圧接ローラ。
(4)外筒部材の最大外径Dと最小外径D0の差Cが、最大外径Dの0.05〜0.5%の範囲内にあり、かつ、外筒部材軸方向長さLの0.002〜0.03%の範囲内にあることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の圧接ローラ。(5)外筒部材の最大外径Dと最小外径D0の差Cと外筒部材軸方向長さLおよび外筒部材最大外径Dが、
1×10−6[mm]×(L/D)4<C<2×10−6[mm]×(L/D)4
の関係式を満たすことを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の圧接ローラ。(6)前記外筒部材の軸方向長さLと外筒部材の最大外径Dが、
0.03≦D/L≦0.1
の関係式を満たすことを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の圧接ローラ。(7)前記1〜6のいずれかに記載の圧接ローラを、コンタクトローラおよびニップローラの少なくとも一方の用途に使用することを特徴とするウェブロール体の製造方法。
(8)前記1〜6のいずれかに記載の圧接ローラを備えたことを特徴とするウェブロール体の製造装置。
【0017】
なお、本発明においてローラシェルとは中心軸に直接または軸受またはスリーブを介して嵌合される円筒部材をいい、ローラシェルおよびローラシェルにゴムまたはゴム状弾性体を被覆したものを外筒部材という。また、巻取ローラ上にウェブを巻き上げたものを巻取ロールといい、クラウン形状の外筒部材の最大外径と最小外径の差をクラウン量というものとする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて2つの実施形態例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
図1は、本発明の圧接ローラの第1の形態の概略縦断面図である。
【0020】
図2は、本発明の圧接ローラを用いたフィルムロール体の製造装置の一例を示す概略縦断面図である。
【0021】
図3は、図2のA−A矢視断面図である。
【0022】
図4は、本発明の圧接ローラの第2の形態の概略縦断面図である。
【0023】
図1に示すように、第1の形態の圧接ローラ1は軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材2と、該外筒部材2の内側にあって、前記外筒部材2の軸方向中央部において前記外筒部材2と連結固定された中心軸4とを備えている。
【0024】
また、図4に示すように軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材2と、該外筒部材内側に軸方向に一定の間隔を隔てて設けられた球面軸受11によって連結された中心軸とを備えた構造の第2の形態の圧接ローラによっても、図1に示す圧接ローラと同様の効果を得られるが、以下は図1の圧接ローラに関して説明する。
【0025】
これらの形態において、中心軸4およびローラシェル3の材質は、炭素鋼やアルミニウム合金などの一般の構造材がいずれも使用可能であるが、好ましくは炭素繊維強化樹脂、または炭素繊維強化金属を使用するとよい。これは、比弾性率(=引張弾性率/比重)の高い材料を使用することで、固有振動数を高め、小径化することが可能となり、さらにはローラ重量が軽量となりハンドリング性が向上するためである。炭素繊維強化樹脂および炭素繊維強化金属は表1に示すように、スチールやアルミニウムに比べ、比弾性率が数倍高い。
【0026】
【表1】
【0027】
中心軸4とローラシェル3の連結支持方法は、中心軸4を軸方向中央の連結部を太径としたテーパ状とし、嵌合、接着してもよいし、中心軸4をストレート状とし、円筒状の支持部材を中心軸4とローラシェル3の間に嵌め込み、接着してもよい。接着する場合は接着剤が中心軸4とローラシェル3との間にあって弾性変形しうる緩衝剤の役割を果たすことが出来るので好ましい。
【0028】
圧接ローラ外径は大きいほど圧接ローラの撓みを抑制することが出来るが、回転する接触した2本の円筒体間に巻き込まれる空気の量は、外径が大きいほど増加するため、極力小径であることが望ましく、また、ローラ(ウェブ幅)が長いほど、巻取後に製品ロール端部からの空気抜けが悪いため、小径であることが好ましい。しかし、小径化すると圧接ローラの撓み量が増加し、軸方向中央部近傍の面圧が下がり、巻き込まれる空気量が増加するため、圧接ローラの長さLとローラ最大外径Dが、0.03≦D/L≦0.1の関係式を満足することが望ましい。
ローラシェル3の外周上に被覆されるゴム5は40〜80Hs JIS Aの硬度を有することが好ましい。また、被覆されるゴムの厚みは任意に選択可能であるが、圧接ローラの小径化と均一ニップおよび振動吸収性の観点から1〜5mmの範囲であることが好ましい。すなわち、ゴム厚みが1mmより薄ければウェブの幅方向の凹凸や回転による振動をゴムが吸収しにくくなり、5mm以上であれば圧接ローラの径を太くせざるを得なくなってしまうからである。
クラウン量は任意の量を選択可能であるが、ウェブのシワや蛇行といった問題を解決するためには、ローラ外径の0.05〜0.5%、且つ外筒部材軸方向長さの0.002〜0.03%の範囲で選択することが望ましい。
【0029】
上述したように、一般にクラウン形状を有するローラは径の太い中央部と径の細い両端部の周速差により、ウェブ幅方向において張力差が生じ、縦ジワや蛇行を生じやすい。これらの欠点を抑制するためには、ウェブ幅方向の速度差、即ちローラ最大外径と最小外径の差を最大外径の0.5%以下に、コシのないウェブ(例えばポリプロピレンフィルム)や厚みの薄い(例えば10μm以下)ウェブにおいてはさらに小さくする方が好ましいこともある。さらにクラウン量が上記範囲内であっても、軸方向の単位長さあたりの減径量が大きいとシワを生じやすいため、クラウン量は上記条件に加えて、外筒部材軸方向長さの0.03%以下にすることが望ましい。
【0030】
また、均一ニップを得るためには、クラウン量を圧接ローラと圧接の相手となる巻取ローラまたはガイドローラ等の筒体の中央部における撓み量の差よりも大きくする必要がある。加えて、本発明の圧接ローラにおいては、ローラ外径Dおよび外筒部材軸方向長さLに対し、クラウン量Cを、
1×10−6[mm]×(L/D)4<C<2×10−6[mm]×(L/D)4
の範囲で設けると、軸方向における圧接ローラと筒体との圧接領域範囲内での最大面圧に対する最小面圧の比(均一ニップ性)をさらに向上させることが出来ることが、実験および解析により判った。これは、外筒部材(ローラシェル)の撓み量が(L/D)4に比例して増加するためである。条件式が示すクラウン量と均一ニップ性の関係を図10に示す。
【0031】
ここで、本発明の構成における撓み分離構造とクラウン形状の関係を詳しく説明する。撓み分離構造の圧接ローラにおいて、均一ニップと強度確保という2つの要求性能、すなわち、圧接力について与えられる巻取ロールやガイドローラの撓み量に基づいて定まる外筒部材の理想的な撓み量と、使用時およびゴム加硫時の圧力等に耐えうる強度を確保するための手段は、外筒部材の外径および肉厚の調整と材質の変更が挙げられる。しかし、前述したように外径は極力小径化されていなければならず、材質は圧接ローラの高速性能にも深く関係するため、ほぼ限定されており、実際には外筒部材の肉厚を調整するしか手段は無く、肉厚という一つのパラメータを調整して上記二つの要求性能を共に得ることは困難である。
【0032】
一方、クラウン形状のローラにおいても、均一ニップとシワを発生させないという二つの要求性能を、クラウン量という一つのパラメータだけで得られるとは限らない。しかし、シワを発生させないクラウン量の条件は、均一ニップのための条件のように、巻取ロールやガイドローラの撓み量によって一義に最適量が定まるものではなく、一定のクラウン量以下では常に成立する条件である。
【0033】
撓み分離構造とクラウン形状を組み合わせることで、要求される性能は、均一ニップ、強度、シワの防止の三つになり、それに対するパラメータは外筒部材の肉厚とクラウン量の二つになる。しかし、シワ防止の条件は、上記のように一定値以下ならば常に成り立つため、この条件を満たすまで巻取ロールやガイドロールと圧接ローラの撓み量の差を小さくすすれば、シワ防止の条件は無視することができ、均一ニップと強度の二つの要求性能を、外筒部材肉厚とクラウン量の二つのパラメータによって必ず両立させることが出来るようになる。そして、撓み分離構造は、巻取ロールやガイドローラと圧接ローラの撓み量の差を小さくするものであり、このことがシワ防止の条件を満たし、パラメータの数が十分となる範囲を著しく拡げるのである。
【0034】
よって、本発明の構成は、単に撓み分離構造とクラウン形状の効果を足し合わせているのではなく、それぞれの構造が抱える設計上の矛盾を解消し、かつ前述の圧接ローラに要求される四点を全て満足した理想的な圧接ローラを実現することを可能としているのである。
【0035】
本発明のウェブロール体の製造方法および製造装置の好ましい形態においては、上述した圧接ローラをコンタクトローラとして巻取ロールに圧接しつつウェブを巻き取る。また、ウェブ搬送における張力分断のためのニップローラやコーティング工程における塗布液のかき取り用ニップローラなど、均一ニップを要する他の用途に本発明の圧接ローラを用いても優れた効果を得られる。以下はその中から、巻取部に利用してフィルムウェブを巻き取る形態の一例について説明する。
【0036】
図2および図3において巻取ローラ9は図示しない駆動源によって回転駆動され、且つ両端を軸受12によって支持され、表面にフィルムウェブ10を巻き上げるようになっている。この巻取ローラ9に対し圧接ローラ1が圧接し、フィルムウェブ10が均一な巻取層を形成するようになっている。
【0037】
圧接ローラ1は本発明の圧接ローラで中心軸4の両端の軸受7に設けられた流体シリンダからなる押圧手段8によって巻取ローラ9側に押圧され、この押圧によって圧接ローラ1の外筒部材2と巻取ローラ9とが凹状に撓んでいる。
【0038】
巻取対象となるウェブ10の種類は特に制限されず、厚みについても特に制限されない。また、ウェブの幅についても特に制限されるものではないが、本発明の効果は2m以上の幅を持つウェブにおいて顕著である。
【0039】
一般に巻き取るウェブの幅が広くなればなるほど均一ニップは難しくなり、巻姿は悪化していく。これはウェブ層間への空気の噛み込みが多すぎることや幅方向に不均一に空気を噛み込んでいることに起因する。
【0040】
本発明においては、上述した圧接ローラを用いて、軸方向における圧接ローラと筒体との圧接範囲内における接圧力の最小値/最大値が0.5以上になる条件で巻き取ることが好ましく、10μm以下の薄いフィルムウェブでは最小値/最大値が0.7以上になる条件で巻き取ることがより好ましい。接圧力は感圧フィルムを用いた測定のほか、解析によっても得ることが出来る。また、巻き上がった製品ロールの硬度斑を測定することでも接圧力の均一性を得ることが出来る。
【0041】
巻取条件は適宜設定されるべきであるが、圧接ローラ1のクラウン量を定める際に、圧接ローラと巻取ロールまたはガイドローラ等対象ロールの撓みを計算し参考とした場合は、計算条件と同じ巻取条件で巻き取るのがよい。
【0042】
【実施例】
図2に示す装置において、図1に示す本発明の圧接ローラをコンタクトローラとして用いた場合を実施例、従来の圧接ローラを用いた場合を比較例とし、実施条件およびその結果を表2に示した。
【0043】
【表2】
【0044】
実施例1〜3はクラウン量Cが、
1×10−6[mm]×(L/D)4<C<2×10−6[mm]×(L/D)4
の条件を満たしている圧接ローラを用いた場合、実施例4および5は条件を満たしていない場合の実施条件および結果である。
【0045】
比較例1は図6に示す従来の圧接ローラを用いた場合、比較例2は図8に示す従来の圧接ローラを用いて均一ニップを得られるクラウン量を設けた場合の実施条件および結果である。
【0046】
表に示すように、本発明による実施例1〜3はフィルムロール幅方向の巻硬度斑が少なく、且つシワのない良好な巻姿を得ることが出来たが、実施例4および5と比較例1では均一ニップ性が実施例1〜3より劣るため硬度斑が生じ、特に比較例1では硬度斑が過大であったために、時間経過と共にフィルムロールにシワが生じた。また、比較例2では硬度斑は少ないものの、中央部と端部の速度差によるシワが圧接ローラ上に生じ、そのシワが巻取ロールに残った。
【0047】
これにより、本発明による実施例1〜5、その中でも実施例1〜3は特に均一ニップ性に優れ、高速性能を維持しつつ、速度差によるシワを抑制し、良好な巻姿を得ることが出来るのが判る。
【0048】
また、図4に示す本発明の圧接ローラを用いて実施した場合においても、実施例1〜5と同様の結果を得た。
【0049】
【発明の効果】
本発明は、上述した構成を有するので、以下に述べる優れた効果を奏する。
(イ)外筒部材が圧接対象の筒体と同じ方向に撓む構造により、圧接ローラと巻取ロールまたはガイドロールとの撓み量の差を小さくし、均一ニップに必要なクラウン量を小さくしたことで、均一ニップに適正なクラウン量を維持したまま、軸方向中央部と両端部の周速差を抑えることができ、縦ジワ、蛇行などの欠点を防止出来る。
(ロ)ローラ外径をクラウン形状としたことで、均一ニップに必要なローラシェルの撓み量が減少するため、巻取ロールまたはガイドローラなどの押圧対象ローラの撓みが大きい場合でもローラシェルの曲げ剛性を確保し、長寿命化を可能とする。
(ハ)ウェブ巻取工程のコンタクトローラに本発明の圧接ローラを用いることで、フィルム層間への空気の噛み込み量を幅方向に均一化し、かつ減少させることができ、シワの無い良好な巻姿のフィルムロール体を得ることを可能とする。
(ニ)ウェブロール体の製造工程において、均一ニップを要する工程に本発明の圧接ローラを用いることで、欠点を抑制し、不良品の発生を減少させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧接ローラの概略縦断面図である。
【図2】本発明の圧接ローラを用いたフィルムロール体の製造装置の一例を示す概略縦断面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】本発明の圧接ローラの一態様を示す概略縦断面図である。
【図5】一般的なフィルムロール体の製造装置の一例を示す概略断面図である。
【図6】外筒部材と軸を中央で嵌合するタイプの従来の圧接ローラの一例を示す概略縦断面図である。
【図7】外筒部材と軸を軸受で連結するタイプの従来の圧接ローラの一例を示す概略縦断面図である。
【図8】従来のクラウン形状圧接ローラの一例を示す概略縦断面図である。
【図9】撓み分離構造の圧接ローラの撓み状態の一例を示す概略縦断面図である。
【図10】請求項4の条件式が示すクラウン量と均一ニップ性の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:圧接ローラ
2:外筒部材
3:ローラシェル
4:軸
5:ゴム(ゴム状弾性体)
6:巻取ロール
7:軸受
8:押圧手段
9:巻取ローラ
10:フィルムウェブ
11:球面軸受
12:軸受
13:ジャーナル
14:巻出部
15:ガイドローラ部
16:スリッター部
17:巻取部
18:原反(巻出ロール)
19:ガイドローラ
20:受け刃ローラ
21:ニップローラ
22:上刃
23:コンタクトローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行する合成樹脂フィルム等のウェブを巻き取る際のコンタクトローラ、またはウェブを案内する際のガイドローラ上にウェブを圧接し把持するニップローラとして好適な圧接ローラ、およびこれを備えたウェブロール体の製造装置、およびこれを用いたウェブロール体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウェブロール体の代表例である一般的な合成樹脂フィルムロール体の製造装置の一例であるスリッターの概略断面図を図5に示す。
【0003】
図に示すように、該製造装置は4つの部位から構成される。すなわち、▲1▼原反18からフィルムウェブ10を巻き出す巻出部14、▲2▼フィルムウェブ10をスリットするスリッター部16、▲3▼スリッター部の前後に配置されフィルムウェブ10を搬送するガイドローラ部15、▲4▼スリットされたフィルムウェブ10を巻き取る巻取部17である。
【0004】
このうち、例えばスリッター部16後のガイドローラ部15においては、巻取部17の張力をスリッター部16に影響させないために張力分断用のニップローラ21が備えられている。このニップローラ21に使用される圧接ローラは、ガイドローラ19に対し幅方向において均一にニップし、フィルムウェブ10を把持するという機能が要求される。すなわち、均一ニップがなされなければ、スリット時にフィルムウェブ幅方向における張力分布が不均一になり、スリットされたフィルムウェブ10のエッジが幅方向(図5において紙面に垂直な方向)に蛇行するおそれがあるからである。
【0005】
また、巻取部17においては、コンタクトローラ23を巻取ロールに圧接し、巻き込み空気を抑制しつつ、フィルムウェブ10を巻き取る。
このコンタクトローラに用いられる圧接ローラには、通常以下に述べるような四つの点が要求されている。
【0006】
まず、第一には、圧接ローラはフィルム幅方向の全ての範囲にわたって密着すると共に、均一なニップ力で圧接することである。すなわち、圧接ローラの軸方向のいずれかの場所で均一ニップがなされていないと、ウェブ層間に巻き込まれる空気量に斑が生じ、種々の巻取欠点につながるからである。
【0007】
第二には、圧接ローラの外径は極力小径化することである。巻き取られたウェブ層間に巻き込まれる噛み込み空気量は、圧接ローラの外径が大きいほど増加するからである。しかし、小径化によって圧接ローラ自身の剛性も低下するので、従来のように軸のジャーナル部を巻取ロールに向かって押圧すると圧接ローラの中央部近傍が押圧方向とは反対方向に撓み、ますます中央部近傍の面圧が低下するという矛盾が新たに生じる。
【0008】
第三には、圧接ローラは、極力巻取ロールからの振動を吸収し得ることである。もし、振動が吸収できないと、断続的に巻取中のウェブとコンタクトローラとの間に生じる隙間から空気が巻き込まれ、巻取欠点につながるからである。
第四には圧接ローラの高速性能が優れていること、すなわちローラの固有振動数(許容速度)が高いことである。これは圧接ローラ自身が回転中に振動しないために必要である。
すなわち、上述した▲1▼均一ニップ、▲2▼小径化、▲3▼振動吸収、▲4▼高速性能の四点が、コンタクトローラに用いられる圧接ローラに要求される点である。
このような技術的課題の改善を目的とした従来の圧接ローラを図6〜8の概略断面図を用いて説明する。
図6に示す従来の圧接ローラは、外筒部材2と中心軸4を、外筒部材の軸方向中央部のみで連結固定し、外筒部材2と中心軸4の撓みを分離することで、外筒部材2の撓みを巻取ロールまたはガイドローラの撓みに沿わせ、均一ニップしようとしたものである。(例えば特許文献1参照)
また、図7に示す圧接ローラは、外筒部材内側に軸方向に一定の間隔を隔てて設けられた球面軸受によって外筒部材2と中心軸4を連結し外筒部材2と中心軸4の撓みを分離させ、その外筒部材全体を巻取ロールまたはガイドローラの撓みに沿わせ均一ニップしようとしたものである。(例えば特許文献2参照)
この2種類の圧接ローラは、図9に示すように中心軸と外筒部材のそれぞれの撓みを分離させて、外筒部材を巻取ロールまたはガイドローラといった筒体の撓みと同じ方向に撓ませてこれに沿わせ、均一ニップを得ようとするという点において類似した技術的思想であるといえる。
【0009】
このほか、図8に示す圧接ローラのように、外径をローラ軸方向中央から両端に向かって漸減させ、ローラの撓みを相殺し、均一ニップを得ようとしたものもある。(例えば特許文献3参照)
【0010】
【特許文献1】
実公平2−29076号公報
【0011】
【特許文献2】
特公平6−45410号公報
【0012】
【特許文献3】
実公昭61−62744号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6や図7に示した中心軸と外筒部材の撓みを分離させ、外筒部材を巻取ロールの撓みに沿わせる構造(以下撓み分離構造と称す)の圧接ローラは、広幅のウェブを巻取る際など圧接による巻取ロールまたはガイドローラの撓み量が大きい場合において均一ニップを得ようとすると、外筒部材の撓み量を大きく、すなわち外筒部材の曲げ剛性を低下させなければならず、その結果、強度と回転精度を確保出来なくなるという問題があった。
【0014】
また、外径を漸減させる形状(以下クラウン形状と称す)の圧接ローラは巻取ロールまたはガイドローラの撓み量が大きい場合において均一ニップを得ようとすると、軸方向中央部と両端部の外径の差を大きくしなければならない。そのため、軸方向中央部と両端部の周速差が大きくなり、ウェブの縦シワや蛇行の原因となる問題があった。
【0015】
本発明の目的は、これらの課題を解決し、圧接ローラまたはガイドローラ、または巻取ロールの撓み量に起因する、不均一ニップを解消し、振動吸収性、小径化を満足しながら、さらに高速性能に優れる、合成樹脂フィルム等のウェブ巻取ローラまたはガイドローラにウェブを介して圧接するといった目的に用いられる圧接ローラ、および該圧接ローラを用いたウェブロール体の製造方法並びに製造装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決する本発明の構成は以下の通りである。すなわち、
(1)軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材と、該外筒部材の内側にあってこれと同軸に配置された中心軸とを備えた圧接ローラであって、前記軸方向に軸方向を有する筒体に圧接されたときに、前記外筒部材が前記筒体と同じ方向に撓むよう構成されたことを特徴とする圧接ローラ。
(2)軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材と、該外筒部材の内側にあって、前記外筒部材の軸方向中央部において前記外筒部材と連結固定された中心軸とを備えたことを特徴とする圧接ローラ。
(3)軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材と、該外筒部材内側に軸方向に一定の間隔を隔てて設けられた球面軸受によって連結された中心軸とを備えたことを特徴とする圧接ローラ。
(4)外筒部材の最大外径Dと最小外径D0の差Cが、最大外径Dの0.05〜0.5%の範囲内にあり、かつ、外筒部材軸方向長さLの0.002〜0.03%の範囲内にあることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の圧接ローラ。(5)外筒部材の最大外径Dと最小外径D0の差Cと外筒部材軸方向長さLおよび外筒部材最大外径Dが、
1×10−6[mm]×(L/D)4<C<2×10−6[mm]×(L/D)4
の関係式を満たすことを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の圧接ローラ。(6)前記外筒部材の軸方向長さLと外筒部材の最大外径Dが、
0.03≦D/L≦0.1
の関係式を満たすことを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の圧接ローラ。(7)前記1〜6のいずれかに記載の圧接ローラを、コンタクトローラおよびニップローラの少なくとも一方の用途に使用することを特徴とするウェブロール体の製造方法。
(8)前記1〜6のいずれかに記載の圧接ローラを備えたことを特徴とするウェブロール体の製造装置。
【0017】
なお、本発明においてローラシェルとは中心軸に直接または軸受またはスリーブを介して嵌合される円筒部材をいい、ローラシェルおよびローラシェルにゴムまたはゴム状弾性体を被覆したものを外筒部材という。また、巻取ローラ上にウェブを巻き上げたものを巻取ロールといい、クラウン形状の外筒部材の最大外径と最小外径の差をクラウン量というものとする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて2つの実施形態例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
図1は、本発明の圧接ローラの第1の形態の概略縦断面図である。
【0020】
図2は、本発明の圧接ローラを用いたフィルムロール体の製造装置の一例を示す概略縦断面図である。
【0021】
図3は、図2のA−A矢視断面図である。
【0022】
図4は、本発明の圧接ローラの第2の形態の概略縦断面図である。
【0023】
図1に示すように、第1の形態の圧接ローラ1は軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材2と、該外筒部材2の内側にあって、前記外筒部材2の軸方向中央部において前記外筒部材2と連結固定された中心軸4とを備えている。
【0024】
また、図4に示すように軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材2と、該外筒部材内側に軸方向に一定の間隔を隔てて設けられた球面軸受11によって連結された中心軸とを備えた構造の第2の形態の圧接ローラによっても、図1に示す圧接ローラと同様の効果を得られるが、以下は図1の圧接ローラに関して説明する。
【0025】
これらの形態において、中心軸4およびローラシェル3の材質は、炭素鋼やアルミニウム合金などの一般の構造材がいずれも使用可能であるが、好ましくは炭素繊維強化樹脂、または炭素繊維強化金属を使用するとよい。これは、比弾性率(=引張弾性率/比重)の高い材料を使用することで、固有振動数を高め、小径化することが可能となり、さらにはローラ重量が軽量となりハンドリング性が向上するためである。炭素繊維強化樹脂および炭素繊維強化金属は表1に示すように、スチールやアルミニウムに比べ、比弾性率が数倍高い。
【0026】
【表1】
【0027】
中心軸4とローラシェル3の連結支持方法は、中心軸4を軸方向中央の連結部を太径としたテーパ状とし、嵌合、接着してもよいし、中心軸4をストレート状とし、円筒状の支持部材を中心軸4とローラシェル3の間に嵌め込み、接着してもよい。接着する場合は接着剤が中心軸4とローラシェル3との間にあって弾性変形しうる緩衝剤の役割を果たすことが出来るので好ましい。
【0028】
圧接ローラ外径は大きいほど圧接ローラの撓みを抑制することが出来るが、回転する接触した2本の円筒体間に巻き込まれる空気の量は、外径が大きいほど増加するため、極力小径であることが望ましく、また、ローラ(ウェブ幅)が長いほど、巻取後に製品ロール端部からの空気抜けが悪いため、小径であることが好ましい。しかし、小径化すると圧接ローラの撓み量が増加し、軸方向中央部近傍の面圧が下がり、巻き込まれる空気量が増加するため、圧接ローラの長さLとローラ最大外径Dが、0.03≦D/L≦0.1の関係式を満足することが望ましい。
ローラシェル3の外周上に被覆されるゴム5は40〜80Hs JIS Aの硬度を有することが好ましい。また、被覆されるゴムの厚みは任意に選択可能であるが、圧接ローラの小径化と均一ニップおよび振動吸収性の観点から1〜5mmの範囲であることが好ましい。すなわち、ゴム厚みが1mmより薄ければウェブの幅方向の凹凸や回転による振動をゴムが吸収しにくくなり、5mm以上であれば圧接ローラの径を太くせざるを得なくなってしまうからである。
クラウン量は任意の量を選択可能であるが、ウェブのシワや蛇行といった問題を解決するためには、ローラ外径の0.05〜0.5%、且つ外筒部材軸方向長さの0.002〜0.03%の範囲で選択することが望ましい。
【0029】
上述したように、一般にクラウン形状を有するローラは径の太い中央部と径の細い両端部の周速差により、ウェブ幅方向において張力差が生じ、縦ジワや蛇行を生じやすい。これらの欠点を抑制するためには、ウェブ幅方向の速度差、即ちローラ最大外径と最小外径の差を最大外径の0.5%以下に、コシのないウェブ(例えばポリプロピレンフィルム)や厚みの薄い(例えば10μm以下)ウェブにおいてはさらに小さくする方が好ましいこともある。さらにクラウン量が上記範囲内であっても、軸方向の単位長さあたりの減径量が大きいとシワを生じやすいため、クラウン量は上記条件に加えて、外筒部材軸方向長さの0.03%以下にすることが望ましい。
【0030】
また、均一ニップを得るためには、クラウン量を圧接ローラと圧接の相手となる巻取ローラまたはガイドローラ等の筒体の中央部における撓み量の差よりも大きくする必要がある。加えて、本発明の圧接ローラにおいては、ローラ外径Dおよび外筒部材軸方向長さLに対し、クラウン量Cを、
1×10−6[mm]×(L/D)4<C<2×10−6[mm]×(L/D)4
の範囲で設けると、軸方向における圧接ローラと筒体との圧接領域範囲内での最大面圧に対する最小面圧の比(均一ニップ性)をさらに向上させることが出来ることが、実験および解析により判った。これは、外筒部材(ローラシェル)の撓み量が(L/D)4に比例して増加するためである。条件式が示すクラウン量と均一ニップ性の関係を図10に示す。
【0031】
ここで、本発明の構成における撓み分離構造とクラウン形状の関係を詳しく説明する。撓み分離構造の圧接ローラにおいて、均一ニップと強度確保という2つの要求性能、すなわち、圧接力について与えられる巻取ロールやガイドローラの撓み量に基づいて定まる外筒部材の理想的な撓み量と、使用時およびゴム加硫時の圧力等に耐えうる強度を確保するための手段は、外筒部材の外径および肉厚の調整と材質の変更が挙げられる。しかし、前述したように外径は極力小径化されていなければならず、材質は圧接ローラの高速性能にも深く関係するため、ほぼ限定されており、実際には外筒部材の肉厚を調整するしか手段は無く、肉厚という一つのパラメータを調整して上記二つの要求性能を共に得ることは困難である。
【0032】
一方、クラウン形状のローラにおいても、均一ニップとシワを発生させないという二つの要求性能を、クラウン量という一つのパラメータだけで得られるとは限らない。しかし、シワを発生させないクラウン量の条件は、均一ニップのための条件のように、巻取ロールやガイドローラの撓み量によって一義に最適量が定まるものではなく、一定のクラウン量以下では常に成立する条件である。
【0033】
撓み分離構造とクラウン形状を組み合わせることで、要求される性能は、均一ニップ、強度、シワの防止の三つになり、それに対するパラメータは外筒部材の肉厚とクラウン量の二つになる。しかし、シワ防止の条件は、上記のように一定値以下ならば常に成り立つため、この条件を満たすまで巻取ロールやガイドロールと圧接ローラの撓み量の差を小さくすすれば、シワ防止の条件は無視することができ、均一ニップと強度の二つの要求性能を、外筒部材肉厚とクラウン量の二つのパラメータによって必ず両立させることが出来るようになる。そして、撓み分離構造は、巻取ロールやガイドローラと圧接ローラの撓み量の差を小さくするものであり、このことがシワ防止の条件を満たし、パラメータの数が十分となる範囲を著しく拡げるのである。
【0034】
よって、本発明の構成は、単に撓み分離構造とクラウン形状の効果を足し合わせているのではなく、それぞれの構造が抱える設計上の矛盾を解消し、かつ前述の圧接ローラに要求される四点を全て満足した理想的な圧接ローラを実現することを可能としているのである。
【0035】
本発明のウェブロール体の製造方法および製造装置の好ましい形態においては、上述した圧接ローラをコンタクトローラとして巻取ロールに圧接しつつウェブを巻き取る。また、ウェブ搬送における張力分断のためのニップローラやコーティング工程における塗布液のかき取り用ニップローラなど、均一ニップを要する他の用途に本発明の圧接ローラを用いても優れた効果を得られる。以下はその中から、巻取部に利用してフィルムウェブを巻き取る形態の一例について説明する。
【0036】
図2および図3において巻取ローラ9は図示しない駆動源によって回転駆動され、且つ両端を軸受12によって支持され、表面にフィルムウェブ10を巻き上げるようになっている。この巻取ローラ9に対し圧接ローラ1が圧接し、フィルムウェブ10が均一な巻取層を形成するようになっている。
【0037】
圧接ローラ1は本発明の圧接ローラで中心軸4の両端の軸受7に設けられた流体シリンダからなる押圧手段8によって巻取ローラ9側に押圧され、この押圧によって圧接ローラ1の外筒部材2と巻取ローラ9とが凹状に撓んでいる。
【0038】
巻取対象となるウェブ10の種類は特に制限されず、厚みについても特に制限されない。また、ウェブの幅についても特に制限されるものではないが、本発明の効果は2m以上の幅を持つウェブにおいて顕著である。
【0039】
一般に巻き取るウェブの幅が広くなればなるほど均一ニップは難しくなり、巻姿は悪化していく。これはウェブ層間への空気の噛み込みが多すぎることや幅方向に不均一に空気を噛み込んでいることに起因する。
【0040】
本発明においては、上述した圧接ローラを用いて、軸方向における圧接ローラと筒体との圧接範囲内における接圧力の最小値/最大値が0.5以上になる条件で巻き取ることが好ましく、10μm以下の薄いフィルムウェブでは最小値/最大値が0.7以上になる条件で巻き取ることがより好ましい。接圧力は感圧フィルムを用いた測定のほか、解析によっても得ることが出来る。また、巻き上がった製品ロールの硬度斑を測定することでも接圧力の均一性を得ることが出来る。
【0041】
巻取条件は適宜設定されるべきであるが、圧接ローラ1のクラウン量を定める際に、圧接ローラと巻取ロールまたはガイドローラ等対象ロールの撓みを計算し参考とした場合は、計算条件と同じ巻取条件で巻き取るのがよい。
【0042】
【実施例】
図2に示す装置において、図1に示す本発明の圧接ローラをコンタクトローラとして用いた場合を実施例、従来の圧接ローラを用いた場合を比較例とし、実施条件およびその結果を表2に示した。
【0043】
【表2】
【0044】
実施例1〜3はクラウン量Cが、
1×10−6[mm]×(L/D)4<C<2×10−6[mm]×(L/D)4
の条件を満たしている圧接ローラを用いた場合、実施例4および5は条件を満たしていない場合の実施条件および結果である。
【0045】
比較例1は図6に示す従来の圧接ローラを用いた場合、比較例2は図8に示す従来の圧接ローラを用いて均一ニップを得られるクラウン量を設けた場合の実施条件および結果である。
【0046】
表に示すように、本発明による実施例1〜3はフィルムロール幅方向の巻硬度斑が少なく、且つシワのない良好な巻姿を得ることが出来たが、実施例4および5と比較例1では均一ニップ性が実施例1〜3より劣るため硬度斑が生じ、特に比較例1では硬度斑が過大であったために、時間経過と共にフィルムロールにシワが生じた。また、比較例2では硬度斑は少ないものの、中央部と端部の速度差によるシワが圧接ローラ上に生じ、そのシワが巻取ロールに残った。
【0047】
これにより、本発明による実施例1〜5、その中でも実施例1〜3は特に均一ニップ性に優れ、高速性能を維持しつつ、速度差によるシワを抑制し、良好な巻姿を得ることが出来るのが判る。
【0048】
また、図4に示す本発明の圧接ローラを用いて実施した場合においても、実施例1〜5と同様の結果を得た。
【0049】
【発明の効果】
本発明は、上述した構成を有するので、以下に述べる優れた効果を奏する。
(イ)外筒部材が圧接対象の筒体と同じ方向に撓む構造により、圧接ローラと巻取ロールまたはガイドロールとの撓み量の差を小さくし、均一ニップに必要なクラウン量を小さくしたことで、均一ニップに適正なクラウン量を維持したまま、軸方向中央部と両端部の周速差を抑えることができ、縦ジワ、蛇行などの欠点を防止出来る。
(ロ)ローラ外径をクラウン形状としたことで、均一ニップに必要なローラシェルの撓み量が減少するため、巻取ロールまたはガイドローラなどの押圧対象ローラの撓みが大きい場合でもローラシェルの曲げ剛性を確保し、長寿命化を可能とする。
(ハ)ウェブ巻取工程のコンタクトローラに本発明の圧接ローラを用いることで、フィルム層間への空気の噛み込み量を幅方向に均一化し、かつ減少させることができ、シワの無い良好な巻姿のフィルムロール体を得ることを可能とする。
(ニ)ウェブロール体の製造工程において、均一ニップを要する工程に本発明の圧接ローラを用いることで、欠点を抑制し、不良品の発生を減少させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧接ローラの概略縦断面図である。
【図2】本発明の圧接ローラを用いたフィルムロール体の製造装置の一例を示す概略縦断面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】本発明の圧接ローラの一態様を示す概略縦断面図である。
【図5】一般的なフィルムロール体の製造装置の一例を示す概略断面図である。
【図6】外筒部材と軸を中央で嵌合するタイプの従来の圧接ローラの一例を示す概略縦断面図である。
【図7】外筒部材と軸を軸受で連結するタイプの従来の圧接ローラの一例を示す概略縦断面図である。
【図8】従来のクラウン形状圧接ローラの一例を示す概略縦断面図である。
【図9】撓み分離構造の圧接ローラの撓み状態の一例を示す概略縦断面図である。
【図10】請求項4の条件式が示すクラウン量と均一ニップ性の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:圧接ローラ
2:外筒部材
3:ローラシェル
4:軸
5:ゴム(ゴム状弾性体)
6:巻取ロール
7:軸受
8:押圧手段
9:巻取ローラ
10:フィルムウェブ
11:球面軸受
12:軸受
13:ジャーナル
14:巻出部
15:ガイドローラ部
16:スリッター部
17:巻取部
18:原反(巻出ロール)
19:ガイドローラ
20:受け刃ローラ
21:ニップローラ
22:上刃
23:コンタクトローラ
Claims (8)
- 軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材と、該外筒部材の内側にあってこれと同軸に配置された中心軸とを備えた圧接ローラであって、前記軸方向に軸方向を有する筒体に圧接されたときに、前記外筒部材が前記筒体と同じ方向に撓むよう構成されたことを特徴とする圧接ローラ。
- 軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材と、該外筒部材の内側にあって、前記外筒部材の軸方向中央部において前記外筒部材と連結固定された中心軸とを備えたことを特徴とする圧接ローラ。
- 軸方向中央部から両端部に向かって外径が漸減する中空円筒形状の外筒部材と、該外筒部材内側に軸方向に所定の間隔を隔てて設けられた球面軸受によって連結された中心軸とを備えたことを特徴とする圧接ローラ。
- 外筒部材の最大外径Dと最小外径D0の差Cが、最大外径Dの0.05〜0.5%の範囲内にあり、かつ、外筒部材軸方向長さLの0.002〜0.03%の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧接ローラ。
- 外筒部材の最大外径Dと最小外径D0の差Cと外筒部材軸方向長さLおよび外筒部材最大外径Dが、
1×10−6[mm]×(L/D)4<C<2×10−6[mm]×(L/D)4
の関係式を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧接ローラ。 - 前記外筒部材の軸方向長さLと外筒部材の最大外径Dが、
0.03≦D/L≦0.1
の関係式を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧接ローラ。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の圧接ローラを、コンタクトローラおよびニップローラの少なくとも一方の用途に使用することを特徴とするウェブロール体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の圧接ローラを備えたことを特徴とするウェブロール体の製造装置。
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