JP2004276581A - 伝動ベルトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】加硫ベルトスリーブのリブ部等の型付部の伝動面に直接短繊維を均一にしかも強く付着してベルト走行時の騒音を軽減した伝動ベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】外周面に可撓性ジャケット42を装着した内型41と、内周面に型部45を刻印した外型46との間に介在させた第1のスリーブ24を、膨張変形させて型部45に密着した予備成型体21を作製し、外型から離脱した内型の可撓性ジャケット42面に第2のスリーブ25を巻き付け、再度、上記内型41を外型46内に設置し、可撓性ジャケット42を膨張させて第2のスリーブ25を予備成型体21と一体的に加硫してベルトスリーブ51を作製し、上記ベルトスリーブ51の型付部表面62を研磨した後、上記ベルトスリーブ51を2軸に掛張して回転しながら型付部表面62に接着剤を塗布して接着層66を形成した後、この上に短繊維65を吹き付けて付着する。
【選択図】 図7
【解決手段】外周面に可撓性ジャケット42を装着した内型41と、内周面に型部45を刻印した外型46との間に介在させた第1のスリーブ24を、膨張変形させて型部45に密着した予備成型体21を作製し、外型から離脱した内型の可撓性ジャケット42面に第2のスリーブ25を巻き付け、再度、上記内型41を外型46内に設置し、可撓性ジャケット42を膨張させて第2のスリーブ25を予備成型体21と一体的に加硫してベルトスリーブ51を作製し、上記ベルトスリーブ51の型付部表面62を研磨した後、上記ベルトスリーブ51を2軸に掛張して回転しながら型付部表面62に接着剤を塗布して接着層66を形成した後、この上に短繊維65を吹き付けて付着する。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は伝動ベルトの製造方法に係り、詳しくはベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部の伝動面に短繊維を均一に付着してベルト走行時の騒音を軽減した伝動ベルトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の伝動ベルトの製造方法では、短繊維を含む圧延ゴムシートを、短繊維が幅方向に配向するように成形ドラムに巻き付けて得られたベルト成形体を加硫し、そしてグライダーホイールによってベルトスリーブ表面に複数のリブ部を研削し、リブ部表面に短繊維を突出させて走行時の騒音を軽減したベルトを製造していた。
【0003】
一方、このような研削方法により短繊維をリブ部表面に露出させる以外に、特許文献1には静電植毛によって動力伝動側及び被伝達面の少なくとも一方の伝達部接触表面に立毛を設け、走行時の騒音を軽減した動力伝動用部材が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ベルト表面にフロック加工されたファブリックを装着し、摩擦係数を増加させた駆動面を設けた伝動ベルトが開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−14361号公報
【特許文献2】
特開2001−82549号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リブ部を有する伝動ベルトの製造方法では、静電植毛によって直接リブ部の表面に立毛すると、V形状のリブ溝の入口付近では充分な植毛が出来ても、リブ溝に奥深い個所では植毛しにくく、また短繊維が抜けやすいといった問題があり、新たな製造方法の開発が望まれていた。一方、フロック加工されたファブリックを用いる場合には、不織布のようなファブリック(基体)に接着剤を塗布し、この上に短繊維フロックを機械的に、また静電気的に付着したものをベルトの製造に使用するものであり、フロック加工されたファブリックの端部をラップ接合したり、あるいは突合せ接合するため、ベルト成形後にはファブリックの接合部から剥離が起こる可能性があった。
【0007】
本発明はかかる問題に着目し、鋭意研究した結果、加硫ベルトスリーブのリブ部等の型付部の伝動面に直接短繊維を均一にしかも強く付着してベルト走行時の騒音を軽減した伝動ベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成すべく本願請求項1記載の発明は、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部が設けられる圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトの製造方法において、
型付部を有する加硫ベルトスリーブを作製した後、上記加硫ベルトスリーブを1軸に設置もしくは2軸に掛張して回転しながら型付部表面に接着剤を塗布して接着層を形成した後、該接着層の上に短繊維を吹き付けて付着する伝動ベルトの製造方法にあり、加硫ベルトスリーブの型付部の伝動面に直接短繊維を均一にしかも強く付着してベルト走行時の騒音を軽減することができる。
【0009】
本願請求項2記載の発明は、加硫ベルトスリーブの型付部表面に接着層を形成する前に、加硫ベルトスリーブの型付部表面を研磨により表面加工する伝動ベルトの製造方法にあり、短繊維をより強く型付部表面に付着することができる。
【0010】
本願請求項3記載の発明は、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部が設けられる圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトの製造方法において、
型付部を有する加硫ベルトスリーブを作製した後、上記加硫ベルトスリーブを1軸に設置もしくは2軸に掛張して回転しながら型付部表面に短繊維入り接着剤を塗布し、該短繊維を型付部表面の接着層に付着する伝動ベルトの製造方法にあり、接着層の形成と短繊維の付着を同時行うことができ、工数も低減できる。
【0011】
本願請求項4記載の発明は、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部が設けられる圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトの製造方法において、
型付部を有する加硫ベルトスリーブを作製した後、上記加硫ベルトスリーブを1軸に設置もしくは2軸に掛張して回転しながら型付部表面に接着剤を塗布して接着層を形成した後、短繊維を接着層に静電植毛する伝動ベルトの製造方法にあり、短繊維が型付部表面に形成した接着層から種々の角度で起毛した状態、あるいは寝た状態で混在しているが、型付部表面に強固に付着し、ベルト走行時の騒音を軽減する。
【0012】
本願請求項5記載の発明は、型付部を有する加硫ベルトスリーブの作製においては、第1のスリーブを外周面に可撓性ジャケットを装着した内型と、内周面にリブ型もしくはコグ型からなる型部を刻印した外型との間に介在させ、該第1のスリーブを、上記可撓性ジャケットを膨張させることによって外型の刻印した型部に密着するように未加硫の予備成型体を作製し、外型から離脱した内型の可撓性ジャケット面に少なくとも心線を巻き付て第2のスリーブを作製し、再度、上記内型を外型内に設置し、可撓性ジャケットを膨張させて第2のスリーブを外型に装着した予備成型体と一体的に加硫する伝動ベルトの製造方法にあり、上記構成によると、第1のスリーブを内周側から押圧して型付部を形成した予備成型体を作製し、更に第2のスリーブを外側へ伸張させて予備成型体と一体的に加硫するものであって、特に第2のスリーブの径方向への変形が少ないために、伸びの小さなベルトを成形することができ、更には型付部が正確に成形でき、そして型付部表面に付着した短繊維がベルト走行時の騒音を軽減できる。
【0013】
本願請求項6記載の発明は、第1のスリーブには幅方向に配向した短繊維が含まれている伝動ベルトの製造方法にあり、ベルト幅方向の剛性を高めることもできる。
【0014】
本願請求項7記載の発明は、加硫ベルトスリーブの型付部表面を研磨し、型付部表面の短繊維を起毛させる伝動ベルトの製造方法にあり、型付部表面の短繊維を確実に起毛させることができ、型付部表面の摩擦係数をより一層小さくすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施例を説明する。
本発明では、短繊維を幅方向に配向させた一枚のゴムシートを作製するが、その製造方法として押出方法やカレンダーによる圧延方法がある。無論、短繊維を含有させないゴムシートも使用することができる。繊維を幅方向に配向させたゴムシートを押出方法で作製する場合には、予めオープンロールによってポリマー100質量部に10〜40質量部の短繊維を投入して混練した後、混練したマスターバッチをいったん放出し、これを20〜50°Cまで冷却してゴムのスコーチを防止する。
【0016】
1〜10質量部の軟化剤を投入すると、短繊維とゴムのなじみが良くなり、ゴム中への分散が良くなるばかりか、短繊維自体が絡み合って綿状になるのを防ぐ効果がある。即ち、軟化剤が短繊維に浸透し、素繊維同士の絡み合いがほぐれるための潤滑剤としての役割をはたし、短繊維が綿状になるのを阻止し、かつ短繊維とゴムのなじみが良くなって短繊維の分散が良くなる
【0017】
続いて、押出機に拡張ダイを取り付けた押出装置を用いて短繊維を幅方向に配向させた一枚のゴムシートに仕上ることができる。ここでは図示していないが、マスターバッチを押出機におけるシリンダーの押出スクリューで混練りした後、短繊維混入ゴムをシリンダーと相対向した位置にあって同一の中心軸線上に配置した内ダイ間のゴム通路で流動阻害を受けず、かつ流れ方向を変えることなくスムーズに拡張ダイのゴム通路へ流し、そして該ゴム通路の中を通過させながら短繊維を円周方向に配向させた筒状成形体に押出成形する。
【0018】
その後、連続して押出成形されたウェルドラインのない筒状成形体は、短繊維が内層から外層にかけて円周方向に均一に配向した厚さ1〜10mmのものであり、切断手段によって1個所切開しながら一枚の短繊維配向ゴムシートにし、続いて該ゴムシートを所定間隔で切断する。
【0019】
ここで使用するゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー、エチレン−プロピレンゴム(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)からなるエチレン−α−オレフィンエラストマー等のゴム材の単独、またはこれらの混合物が使用される。ジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどが挙げることができる。
【0020】
上記ゴムには、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿等の繊維からなり繊維の長さは繊維の種類によって異なるが、1〜10mm程度の短繊維が用いられ、例えばアラミド繊維であると3〜5mm程度、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿であると5〜10mm程度のものが用いられる。その添加量はゴム100質量部に対して10〜40質量部である。
【0021】
更に、上記ゴムには、軟化剤、カーボンブラックからなる補強剤、充填剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫剤等が添加される。
【0022】
上記軟化剤としては、一般的なゴム用の可塑剤、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタレート系、ジオクチルアジペート(DOA)等のアジペート系、ジオクチルセバケート(DOS)等のセバケート系、トリクレジルホスフェート等のホスフェートなど、あるいは一般的な石油系の軟化剤が含まれる。
【0023】
次いで、ベルト加硫機40の内型41に装着された加硫ゴム製の可撓性ジャケット42の外周面に、離型紙あるいは樹脂フィルムからなる離型シート(図示せず)を巻き付けた後、接着ゴムシート16と繊維配向ゴムシート20を捲き付けてラップジョイントして第1のスリーブ24を作製する。
【0024】
そして、図1に示すように上記内型41を、外型46の内側に一定の空隙部を形成するよう基台上に載置する。内型41は別の成形工程より移動してくる関係上、媒体流通口Aと媒体送入排出路Bとは分離しており、内型41を基台に載置後、媒体流通口AをジョイントJでパイプと連結する。
【0025】
媒体送入機を作動して高圧空気等を媒体送入排出路B、媒体流通口Aを経て、可撓性ジャケット42の内部に送入する。可撓性ジャケット42は、その上下部が内型41上に密閉固定されているため、可撓性ジャケット42の内面と内型41の外面の間に空気が充満し、可撓性ジャケット42は次第に膨張する。そして、その外周面に装着されている短繊維配向ゴムシート20を半径方向に均一に膨張させ、加熱ヒーター若しくは高温蒸気で100〜160℃に加熱した外型46のリブ型45と30〜120秒間接触せしめる。
【0026】
このとき、可撓性ジャケット42の膨張押圧力により、上記短繊維配向ゴムシート20が外型46のリブ型からなる型部45に押圧され、図2のような表面に複数のV型突起を有する未加硫の予備成型体21を形成するに至る。
【0027】
その後は、バルブを真空ポンプの方へ切替えて、可撓性ジャケット42内に充満している空気を排気し、次いで吸引作用で可撓性ジャケット42を図1に示す元の位置に収縮復帰せしめる。
【0028】
そして、内型41を外型46から抜き取り、内型41の可撓性ジャケット42の外周面に補強布47およびコードからなる心線48を順次に捲き付けて第2のスリーブ25を作製する。その後、図3に示すようにこの内型41を外型46内へ設置した後、図4に示すように可撓性ジャケット42を膨張させ、第2のスリーブ25を半径方向に均一に膨張させ、加熱ヒーター若しくは高温蒸気で100〜180℃に加熱した外型46の型部45に装着した予備成型体21に密着して一体的に加硫し、ベルトスリーブ51を作製する。上記製造方法のように未加硫の予備成型体21を成型することにより、成形時に可撓性ジャケット42の膨張による心線48の伸張量を抑え、また心線48を平坦に配置でき、寸法安定性に優れたVリブドベルトを作製することができる。
【0029】
加硫後は、図5に示すように可撓性ジャケット42を収縮させ、内型41を外型46から抜き取った後、外型46に装着した加硫済みベルトスリーブ51を抜き取る。
【0030】
そして、図7に示すように加硫済みベルトスリーブ51を主軸60と従動軸61の2軸に掛張して1〜10cm/秒で回転しながら型付部表面62に接着剤塗布装置63から接着剤を吹き付けて膜厚50〜100μmに塗布して接着層66を形成し、続けて短繊維吹き付け装置64よって短繊維65を接着層66に吹き付けて植毛する。尚、接着剤を塗布する前にベルトスリーブ51の型付部表面62をアルコール拭きなどのクリーニング処理、プライマー処理等の前処理を行なうこともできる。また、加硫済みベルトスリーブ51を1軸に装着して回転させながら、接着層66を形成し、続けて短繊維65を接着層66に吹き付けて付着することもできる。
【0031】
接着剤としては、RFL(レゾリシン−ホルムアルデド−ラテックス)接着剤、ウレタン系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン系エマルジョン、未加硫ゴムを溶剤に溶かしたゴム糊、有機溶剤系接着剤等がある。好ましい接着剤としては、RFL液やゴム糊が好ましく、RFL液はレゾルシンとホルムアルデドとの初期縮合体をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBR、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体である。また、RFL液にイソシアネート化合物も添加することができる。
【0032】
接着剤としては、RFL(レゾリシン−ホルムアルデド−ラテックス)接着剤、ウレタン系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン系エマルジョン、未加硫ゴムを溶剤に溶かしたゴム糊、有機溶剤系接着剤等がある。好ましい接着剤としては、RFL液やゴム糊が好ましく、RFL液はレゾルシンとホルムアルデドとの初期縮合体をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBR、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体である。また、RFL液にイソシアネート化合物も添加することができる。
【0033】
使用する短繊維としては、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ビニロン、炭素繊維、ポリテトラフルオロエチレン、レーヨン、綿等などであり、上記接着剤100質量部に対して5〜50質量部に適量混合される。その長さは0.1〜5.0mmが好ましく、アスペクト比(長さLmm/太さ直径Dmmは30〜300である。また、型付部表面62における短繊維の密度は摩擦係数や走行時の音に寄与するものであり、今日使用されている伝動ベルトに近時するもので、10,000〜500,000本/cm2である。
【0034】
尚、短繊維を更に露出させるために、加硫済みベルトスリーブ51を別の1軸もしくは2軸ドラムに挿入して回転させながら、回転させたブラシを型付部に当接させながら、表面層を薄く研磨して短繊維を起毛させることができる。
【0035】
そして、型付部表面62に短繊維を付着した加硫済みベルトスリーブ51を1軸に装着もしくは主軸と従動軸の2軸に掛張して回転しながら円周方向に所定幅に切断し、軸より取出し反転することにより、周長が一定で、V形リブが正確に型付形成された複数のVリブドベルト1を得る。
【0036】
図8は得られたVリブドベルトの断面図である。Vリブドベルト100は、高強度で低伸度のコードよりなる心線102を接着ゴム層103中に埋設し、その下側に弾性体層である圧縮ゴム層104を有している。この圧縮ゴム層104にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブ部106が設けれ、リブ部の内層110に短繊維109が波状に配置してベルトの耐側圧性を向上させ、更にリブ部の表面層111に設けた接着層107に植毛短繊維108が分散し、リブ部表面に対してランダムに傾斜し、あるいは寝かされた状態になっている。
無論、本発明では、リブ部の内層110に短繊維109が存在しない場合も含まれる。
【0037】
接着ゴム層103に使用されるゴムとしては、短繊維を除いた圧縮ゴム層104のゴム配合物に類似している。無論、短繊維を含めてもよい。
【0038】
心線102としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維が使用され、中でもエチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維フィラメント群を撚り合わせた総デニール数が4,000〜8,000の接着処理したコードが、ベルトスリップ率を低く抑えることができ、ベルト寿命を延長させるために好ましい。また、心線102にはゴムとの接着性を改善する目的で接着処理が施される。このような接着処理としては繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液に浸漬後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成するのが一般的である。しかし、これに限ることなくエポキシ又はイソシアネート化合物で前処理を行なった後に、RFL液で処理する方法等もある。
【0039】
心線102は、スピニングピッチ、即ち心線の巻き付けピッチを0.9〜1.3mmにすることで、モジュラスの高いベルトに仕上げることができる。0.9mm未満になると、コードが隣接するコードに乗り上げて巻き付けができず、一方1.3mmを越えると、ベルトのモジュラスが徐々に低くなる。
【0040】
背面補強材105は、織物、編物、不織布の繊維材料あるいはゴム材料から選択されるが、より好ましいものは不織布である。構成する繊維素材としては、例えば綿、麻、レーヨン等の天然繊維や、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。上記帆布は公知技術に従ってRFL液に浸漬後、未加硫ゴムを背面補強材105に擦り込むフリクションを行い、またRFL液に浸漬後にゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理する。
【0041】
このようなVリブドベルトは、リブ部表面に均一に植毛短繊維108がベルト走行時の騒音を軽減し、更にリブ部表面からの亀裂も発生を阻止する。
【0042】
尚、以上説明した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。(1)加硫ベルトスリーブの型付部表面に接着層を形成する前に、加硫ベルトスリーブ51の型付部表面を研磨により表面加工することができる。図6に示すように該ベルトスリーブ51を主軸55と従動軸56の2軸に掛張して走行させながら、ダイヤモンドを電着した研磨ホイール57を当接しながら回転して型付部表面62を0.05〜0.1mmの薄皮のゴム層を除去する程度に研磨する。この表面加工によって、型付部表面62は肌の荒れた表面なり、また金型から移行されたリブ表面62の汚れや、金型と該ベルトスリーブ51とのの脱型のために金型に塗布されている離型剤がリブ表面62に付着して残っているのを、この表面処理で落とすことで接着剤乗りが良くなることで、後述する接着層が型付部表面62に強固に接着する。
【0043】
(2)また、加硫済みベルトスリーブを回転しながら型付部表面に吹き付け装置から短繊維を混合した接着剤を吹き付けて膜厚50〜100μmに塗布し、続けて乾燥装置で加熱乾燥して接着剤を硬化して、短繊維を接着層に付着することもできる。
(3)また、加硫済みベルトスリーブを前述と同様に主軸と従動軸の2軸に掛張して1〜10cm/秒で回転しながら型付部表面に接着剤塗布装置から接着剤を吹き付けて膜厚50〜100μmに塗布して接着層を形成し、続けて公知の静電植毛機を用いて、型付部表面に静電植毛を行う。植毛処理としては、主軸もしくは従動軸をアースとし、静電植毛機の電極に電圧を印加することにより電界を形成し、この電界内にレーヨン、綿、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ビニロン、炭素繊維、ポリテトラフルオロエチレン等などからなる表面を電着処理したパイルを供給し、飛翔させてベルトスリーブの接着層に向けて突き刺すことにより植毛糸を設け、植毛後、ベルトスリーブ4を自然または加熱乾燥する。
【0044】
上記パイルの長さは0.1〜5.0mmが好ましく、アスペクト比(長さLmm/太さ直径Dmmは30〜300である。また、植毛糸の密度は摩擦係数や走行時の音に寄与するものであり、今日使用されている伝動ベルトに近時するもので、10,000〜500,000本/cm2である。
(4)また、ゴムシートに短繊維を入れない代わりに、固体潤滑材を配合することができる。この固体潤滑材は六方晶系又は鱗片状のグラファイト、二流化モリブデン、そしてポリテトラフルオロエチレンから選ばれたものであり、その添加量は原料ゴム100質量部に対して10〜100質量部、好ましくは10〜60質量部であり、10質量部未満の場合にはベルト質量部を超えると、ゴム物性の伸びがちいさくなり、ベルト寿命が短くなる。
【0045】
【発明の効果】
以上のように本願請求項に係る発明では、型付部を有する加硫ベルトスリーブを作製した後、上記加硫ベルトスリーブを1軸に設置もしくは2軸に掛張して回転しながら型付部表面に接着剤を塗布して接着層を形成した後、該接着層の上に短繊維を吹き付けて付着する伝動ベルトの製造方法にあり、加硫ベルトスリーブの型付部の伝動面に短繊維を均一にしかも強く付着してベルト走行時の騒音を軽減することができ、更に加硫ベルトスリーブの型付部表面を研磨して表面加工することにより、短繊維をより強く型付部表面に付着することができる効果がある。
【0046】
また、加硫ベルトスリーブの型付部表面に短繊維入り接着剤を塗布し、該短繊維を型付部表面の接着層に付着することで、接着層の形成と短繊維の付着を同時行うことができ、工数も低減できる効果がある。
【0047】
また、型付部表面に接着剤を塗布して接着層を形成した後、短繊維を接着層に静電植毛すれば、短繊維が型付部表面に形成した接着層から種々の角度で起毛した状態、あるいは寝た状態で混在して型付部表面に強固に付着し、ベルト走行時の騒音を軽減できる効果がある。
【0048】
また、第1のスリーブを内周側から押圧して型付部を形成した予備成型体を作製し、更に第2のスリーブを外側へ伸張させて予備成型体と一体的に加硫するものであって、特に第2のスリーブの径方向への変形が少ないために、伸びの小さなベルトを成形することができ、更には型付部が正確に成形でき、そして型付部表面に付着した短繊維がベルト走行時の騒音を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】予備成型体を成形している状態の縦断図である。
【図2】予備成型体を作製した後状態の断面図である。
【図3】未加硫のベルトスリーブを作製する前状態の断面図である。
【図4】ベルトスリーブを加硫している状態の断面図である。
【図5】ベルトスリーブを加硫した後状態の断面図である。
【図6】加硫済みベルトスリーブの型付部表面を研磨により表面加工している状態を示す図である。
【図7】加硫済みベルトスリーブを回転させながら、短繊維を吹き付けて型付部表面の接着層に付着している状態を示す図である。
【図8】図7のA部拡大図である。
【図9】本発明の製造方法で得られたVリブドベルトの断面図である。
【符号の説明】
20 短繊維配向ゴムシート
21 予備成型体
24 第1のスリーブ
25 第2のスリーブ
41 内型
42 可撓性ジャケット
45 型部
46 外型
48 心線
51 ベルトスリーブ
62 型付部表面
63 接着剤塗布装置
64 短繊維吹き付け装置
65 短繊維
66 接着層
【発明の属する技術分野】
本発明は伝動ベルトの製造方法に係り、詳しくはベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部の伝動面に短繊維を均一に付着してベルト走行時の騒音を軽減した伝動ベルトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の伝動ベルトの製造方法では、短繊維を含む圧延ゴムシートを、短繊維が幅方向に配向するように成形ドラムに巻き付けて得られたベルト成形体を加硫し、そしてグライダーホイールによってベルトスリーブ表面に複数のリブ部を研削し、リブ部表面に短繊維を突出させて走行時の騒音を軽減したベルトを製造していた。
【0003】
一方、このような研削方法により短繊維をリブ部表面に露出させる以外に、特許文献1には静電植毛によって動力伝動側及び被伝達面の少なくとも一方の伝達部接触表面に立毛を設け、走行時の騒音を軽減した動力伝動用部材が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ベルト表面にフロック加工されたファブリックを装着し、摩擦係数を増加させた駆動面を設けた伝動ベルトが開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−14361号公報
【特許文献2】
特開2001−82549号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リブ部を有する伝動ベルトの製造方法では、静電植毛によって直接リブ部の表面に立毛すると、V形状のリブ溝の入口付近では充分な植毛が出来ても、リブ溝に奥深い個所では植毛しにくく、また短繊維が抜けやすいといった問題があり、新たな製造方法の開発が望まれていた。一方、フロック加工されたファブリックを用いる場合には、不織布のようなファブリック(基体)に接着剤を塗布し、この上に短繊維フロックを機械的に、また静電気的に付着したものをベルトの製造に使用するものであり、フロック加工されたファブリックの端部をラップ接合したり、あるいは突合せ接合するため、ベルト成形後にはファブリックの接合部から剥離が起こる可能性があった。
【0007】
本発明はかかる問題に着目し、鋭意研究した結果、加硫ベルトスリーブのリブ部等の型付部の伝動面に直接短繊維を均一にしかも強く付着してベルト走行時の騒音を軽減した伝動ベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成すべく本願請求項1記載の発明は、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部が設けられる圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトの製造方法において、
型付部を有する加硫ベルトスリーブを作製した後、上記加硫ベルトスリーブを1軸に設置もしくは2軸に掛張して回転しながら型付部表面に接着剤を塗布して接着層を形成した後、該接着層の上に短繊維を吹き付けて付着する伝動ベルトの製造方法にあり、加硫ベルトスリーブの型付部の伝動面に直接短繊維を均一にしかも強く付着してベルト走行時の騒音を軽減することができる。
【0009】
本願請求項2記載の発明は、加硫ベルトスリーブの型付部表面に接着層を形成する前に、加硫ベルトスリーブの型付部表面を研磨により表面加工する伝動ベルトの製造方法にあり、短繊維をより強く型付部表面に付着することができる。
【0010】
本願請求項3記載の発明は、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部が設けられる圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトの製造方法において、
型付部を有する加硫ベルトスリーブを作製した後、上記加硫ベルトスリーブを1軸に設置もしくは2軸に掛張して回転しながら型付部表面に短繊維入り接着剤を塗布し、該短繊維を型付部表面の接着層に付着する伝動ベルトの製造方法にあり、接着層の形成と短繊維の付着を同時行うことができ、工数も低減できる。
【0011】
本願請求項4記載の発明は、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部が設けられる圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトの製造方法において、
型付部を有する加硫ベルトスリーブを作製した後、上記加硫ベルトスリーブを1軸に設置もしくは2軸に掛張して回転しながら型付部表面に接着剤を塗布して接着層を形成した後、短繊維を接着層に静電植毛する伝動ベルトの製造方法にあり、短繊維が型付部表面に形成した接着層から種々の角度で起毛した状態、あるいは寝た状態で混在しているが、型付部表面に強固に付着し、ベルト走行時の騒音を軽減する。
【0012】
本願請求項5記載の発明は、型付部を有する加硫ベルトスリーブの作製においては、第1のスリーブを外周面に可撓性ジャケットを装着した内型と、内周面にリブ型もしくはコグ型からなる型部を刻印した外型との間に介在させ、該第1のスリーブを、上記可撓性ジャケットを膨張させることによって外型の刻印した型部に密着するように未加硫の予備成型体を作製し、外型から離脱した内型の可撓性ジャケット面に少なくとも心線を巻き付て第2のスリーブを作製し、再度、上記内型を外型内に設置し、可撓性ジャケットを膨張させて第2のスリーブを外型に装着した予備成型体と一体的に加硫する伝動ベルトの製造方法にあり、上記構成によると、第1のスリーブを内周側から押圧して型付部を形成した予備成型体を作製し、更に第2のスリーブを外側へ伸張させて予備成型体と一体的に加硫するものであって、特に第2のスリーブの径方向への変形が少ないために、伸びの小さなベルトを成形することができ、更には型付部が正確に成形でき、そして型付部表面に付着した短繊維がベルト走行時の騒音を軽減できる。
【0013】
本願請求項6記載の発明は、第1のスリーブには幅方向に配向した短繊維が含まれている伝動ベルトの製造方法にあり、ベルト幅方向の剛性を高めることもできる。
【0014】
本願請求項7記載の発明は、加硫ベルトスリーブの型付部表面を研磨し、型付部表面の短繊維を起毛させる伝動ベルトの製造方法にあり、型付部表面の短繊維を確実に起毛させることができ、型付部表面の摩擦係数をより一層小さくすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施例を説明する。
本発明では、短繊維を幅方向に配向させた一枚のゴムシートを作製するが、その製造方法として押出方法やカレンダーによる圧延方法がある。無論、短繊維を含有させないゴムシートも使用することができる。繊維を幅方向に配向させたゴムシートを押出方法で作製する場合には、予めオープンロールによってポリマー100質量部に10〜40質量部の短繊維を投入して混練した後、混練したマスターバッチをいったん放出し、これを20〜50°Cまで冷却してゴムのスコーチを防止する。
【0016】
1〜10質量部の軟化剤を投入すると、短繊維とゴムのなじみが良くなり、ゴム中への分散が良くなるばかりか、短繊維自体が絡み合って綿状になるのを防ぐ効果がある。即ち、軟化剤が短繊維に浸透し、素繊維同士の絡み合いがほぐれるための潤滑剤としての役割をはたし、短繊維が綿状になるのを阻止し、かつ短繊維とゴムのなじみが良くなって短繊維の分散が良くなる
【0017】
続いて、押出機に拡張ダイを取り付けた押出装置を用いて短繊維を幅方向に配向させた一枚のゴムシートに仕上ることができる。ここでは図示していないが、マスターバッチを押出機におけるシリンダーの押出スクリューで混練りした後、短繊維混入ゴムをシリンダーと相対向した位置にあって同一の中心軸線上に配置した内ダイ間のゴム通路で流動阻害を受けず、かつ流れ方向を変えることなくスムーズに拡張ダイのゴム通路へ流し、そして該ゴム通路の中を通過させながら短繊維を円周方向に配向させた筒状成形体に押出成形する。
【0018】
その後、連続して押出成形されたウェルドラインのない筒状成形体は、短繊維が内層から外層にかけて円周方向に均一に配向した厚さ1〜10mmのものであり、切断手段によって1個所切開しながら一枚の短繊維配向ゴムシートにし、続いて該ゴムシートを所定間隔で切断する。
【0019】
ここで使用するゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー、エチレン−プロピレンゴム(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)からなるエチレン−α−オレフィンエラストマー等のゴム材の単独、またはこれらの混合物が使用される。ジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどが挙げることができる。
【0020】
上記ゴムには、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿等の繊維からなり繊維の長さは繊維の種類によって異なるが、1〜10mm程度の短繊維が用いられ、例えばアラミド繊維であると3〜5mm程度、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿であると5〜10mm程度のものが用いられる。その添加量はゴム100質量部に対して10〜40質量部である。
【0021】
更に、上記ゴムには、軟化剤、カーボンブラックからなる補強剤、充填剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫剤等が添加される。
【0022】
上記軟化剤としては、一般的なゴム用の可塑剤、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタレート系、ジオクチルアジペート(DOA)等のアジペート系、ジオクチルセバケート(DOS)等のセバケート系、トリクレジルホスフェート等のホスフェートなど、あるいは一般的な石油系の軟化剤が含まれる。
【0023】
次いで、ベルト加硫機40の内型41に装着された加硫ゴム製の可撓性ジャケット42の外周面に、離型紙あるいは樹脂フィルムからなる離型シート(図示せず)を巻き付けた後、接着ゴムシート16と繊維配向ゴムシート20を捲き付けてラップジョイントして第1のスリーブ24を作製する。
【0024】
そして、図1に示すように上記内型41を、外型46の内側に一定の空隙部を形成するよう基台上に載置する。内型41は別の成形工程より移動してくる関係上、媒体流通口Aと媒体送入排出路Bとは分離しており、内型41を基台に載置後、媒体流通口AをジョイントJでパイプと連結する。
【0025】
媒体送入機を作動して高圧空気等を媒体送入排出路B、媒体流通口Aを経て、可撓性ジャケット42の内部に送入する。可撓性ジャケット42は、その上下部が内型41上に密閉固定されているため、可撓性ジャケット42の内面と内型41の外面の間に空気が充満し、可撓性ジャケット42は次第に膨張する。そして、その外周面に装着されている短繊維配向ゴムシート20を半径方向に均一に膨張させ、加熱ヒーター若しくは高温蒸気で100〜160℃に加熱した外型46のリブ型45と30〜120秒間接触せしめる。
【0026】
このとき、可撓性ジャケット42の膨張押圧力により、上記短繊維配向ゴムシート20が外型46のリブ型からなる型部45に押圧され、図2のような表面に複数のV型突起を有する未加硫の予備成型体21を形成するに至る。
【0027】
その後は、バルブを真空ポンプの方へ切替えて、可撓性ジャケット42内に充満している空気を排気し、次いで吸引作用で可撓性ジャケット42を図1に示す元の位置に収縮復帰せしめる。
【0028】
そして、内型41を外型46から抜き取り、内型41の可撓性ジャケット42の外周面に補強布47およびコードからなる心線48を順次に捲き付けて第2のスリーブ25を作製する。その後、図3に示すようにこの内型41を外型46内へ設置した後、図4に示すように可撓性ジャケット42を膨張させ、第2のスリーブ25を半径方向に均一に膨張させ、加熱ヒーター若しくは高温蒸気で100〜180℃に加熱した外型46の型部45に装着した予備成型体21に密着して一体的に加硫し、ベルトスリーブ51を作製する。上記製造方法のように未加硫の予備成型体21を成型することにより、成形時に可撓性ジャケット42の膨張による心線48の伸張量を抑え、また心線48を平坦に配置でき、寸法安定性に優れたVリブドベルトを作製することができる。
【0029】
加硫後は、図5に示すように可撓性ジャケット42を収縮させ、内型41を外型46から抜き取った後、外型46に装着した加硫済みベルトスリーブ51を抜き取る。
【0030】
そして、図7に示すように加硫済みベルトスリーブ51を主軸60と従動軸61の2軸に掛張して1〜10cm/秒で回転しながら型付部表面62に接着剤塗布装置63から接着剤を吹き付けて膜厚50〜100μmに塗布して接着層66を形成し、続けて短繊維吹き付け装置64よって短繊維65を接着層66に吹き付けて植毛する。尚、接着剤を塗布する前にベルトスリーブ51の型付部表面62をアルコール拭きなどのクリーニング処理、プライマー処理等の前処理を行なうこともできる。また、加硫済みベルトスリーブ51を1軸に装着して回転させながら、接着層66を形成し、続けて短繊維65を接着層66に吹き付けて付着することもできる。
【0031】
接着剤としては、RFL(レゾリシン−ホルムアルデド−ラテックス)接着剤、ウレタン系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン系エマルジョン、未加硫ゴムを溶剤に溶かしたゴム糊、有機溶剤系接着剤等がある。好ましい接着剤としては、RFL液やゴム糊が好ましく、RFL液はレゾルシンとホルムアルデドとの初期縮合体をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBR、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体である。また、RFL液にイソシアネート化合物も添加することができる。
【0032】
接着剤としては、RFL(レゾリシン−ホルムアルデド−ラテックス)接着剤、ウレタン系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン系エマルジョン、未加硫ゴムを溶剤に溶かしたゴム糊、有機溶剤系接着剤等がある。好ましい接着剤としては、RFL液やゴム糊が好ましく、RFL液はレゾルシンとホルムアルデドとの初期縮合体をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBR、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体である。また、RFL液にイソシアネート化合物も添加することができる。
【0033】
使用する短繊維としては、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ビニロン、炭素繊維、ポリテトラフルオロエチレン、レーヨン、綿等などであり、上記接着剤100質量部に対して5〜50質量部に適量混合される。その長さは0.1〜5.0mmが好ましく、アスペクト比(長さLmm/太さ直径Dmmは30〜300である。また、型付部表面62における短繊維の密度は摩擦係数や走行時の音に寄与するものであり、今日使用されている伝動ベルトに近時するもので、10,000〜500,000本/cm2である。
【0034】
尚、短繊維を更に露出させるために、加硫済みベルトスリーブ51を別の1軸もしくは2軸ドラムに挿入して回転させながら、回転させたブラシを型付部に当接させながら、表面層を薄く研磨して短繊維を起毛させることができる。
【0035】
そして、型付部表面62に短繊維を付着した加硫済みベルトスリーブ51を1軸に装着もしくは主軸と従動軸の2軸に掛張して回転しながら円周方向に所定幅に切断し、軸より取出し反転することにより、周長が一定で、V形リブが正確に型付形成された複数のVリブドベルト1を得る。
【0036】
図8は得られたVリブドベルトの断面図である。Vリブドベルト100は、高強度で低伸度のコードよりなる心線102を接着ゴム層103中に埋設し、その下側に弾性体層である圧縮ゴム層104を有している。この圧縮ゴム層104にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブ部106が設けれ、リブ部の内層110に短繊維109が波状に配置してベルトの耐側圧性を向上させ、更にリブ部の表面層111に設けた接着層107に植毛短繊維108が分散し、リブ部表面に対してランダムに傾斜し、あるいは寝かされた状態になっている。
無論、本発明では、リブ部の内層110に短繊維109が存在しない場合も含まれる。
【0037】
接着ゴム層103に使用されるゴムとしては、短繊維を除いた圧縮ゴム層104のゴム配合物に類似している。無論、短繊維を含めてもよい。
【0038】
心線102としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維が使用され、中でもエチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維フィラメント群を撚り合わせた総デニール数が4,000〜8,000の接着処理したコードが、ベルトスリップ率を低く抑えることができ、ベルト寿命を延長させるために好ましい。また、心線102にはゴムとの接着性を改善する目的で接着処理が施される。このような接着処理としては繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液に浸漬後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成するのが一般的である。しかし、これに限ることなくエポキシ又はイソシアネート化合物で前処理を行なった後に、RFL液で処理する方法等もある。
【0039】
心線102は、スピニングピッチ、即ち心線の巻き付けピッチを0.9〜1.3mmにすることで、モジュラスの高いベルトに仕上げることができる。0.9mm未満になると、コードが隣接するコードに乗り上げて巻き付けができず、一方1.3mmを越えると、ベルトのモジュラスが徐々に低くなる。
【0040】
背面補強材105は、織物、編物、不織布の繊維材料あるいはゴム材料から選択されるが、より好ましいものは不織布である。構成する繊維素材としては、例えば綿、麻、レーヨン等の天然繊維や、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。上記帆布は公知技術に従ってRFL液に浸漬後、未加硫ゴムを背面補強材105に擦り込むフリクションを行い、またRFL液に浸漬後にゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理する。
【0041】
このようなVリブドベルトは、リブ部表面に均一に植毛短繊維108がベルト走行時の騒音を軽減し、更にリブ部表面からの亀裂も発生を阻止する。
【0042】
尚、以上説明した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。(1)加硫ベルトスリーブの型付部表面に接着層を形成する前に、加硫ベルトスリーブ51の型付部表面を研磨により表面加工することができる。図6に示すように該ベルトスリーブ51を主軸55と従動軸56の2軸に掛張して走行させながら、ダイヤモンドを電着した研磨ホイール57を当接しながら回転して型付部表面62を0.05〜0.1mmの薄皮のゴム層を除去する程度に研磨する。この表面加工によって、型付部表面62は肌の荒れた表面なり、また金型から移行されたリブ表面62の汚れや、金型と該ベルトスリーブ51とのの脱型のために金型に塗布されている離型剤がリブ表面62に付着して残っているのを、この表面処理で落とすことで接着剤乗りが良くなることで、後述する接着層が型付部表面62に強固に接着する。
【0043】
(2)また、加硫済みベルトスリーブを回転しながら型付部表面に吹き付け装置から短繊維を混合した接着剤を吹き付けて膜厚50〜100μmに塗布し、続けて乾燥装置で加熱乾燥して接着剤を硬化して、短繊維を接着層に付着することもできる。
(3)また、加硫済みベルトスリーブを前述と同様に主軸と従動軸の2軸に掛張して1〜10cm/秒で回転しながら型付部表面に接着剤塗布装置から接着剤を吹き付けて膜厚50〜100μmに塗布して接着層を形成し、続けて公知の静電植毛機を用いて、型付部表面に静電植毛を行う。植毛処理としては、主軸もしくは従動軸をアースとし、静電植毛機の電極に電圧を印加することにより電界を形成し、この電界内にレーヨン、綿、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ビニロン、炭素繊維、ポリテトラフルオロエチレン等などからなる表面を電着処理したパイルを供給し、飛翔させてベルトスリーブの接着層に向けて突き刺すことにより植毛糸を設け、植毛後、ベルトスリーブ4を自然または加熱乾燥する。
【0044】
上記パイルの長さは0.1〜5.0mmが好ましく、アスペクト比(長さLmm/太さ直径Dmmは30〜300である。また、植毛糸の密度は摩擦係数や走行時の音に寄与するものであり、今日使用されている伝動ベルトに近時するもので、10,000〜500,000本/cm2である。
(4)また、ゴムシートに短繊維を入れない代わりに、固体潤滑材を配合することができる。この固体潤滑材は六方晶系又は鱗片状のグラファイト、二流化モリブデン、そしてポリテトラフルオロエチレンから選ばれたものであり、その添加量は原料ゴム100質量部に対して10〜100質量部、好ましくは10〜60質量部であり、10質量部未満の場合にはベルト質量部を超えると、ゴム物性の伸びがちいさくなり、ベルト寿命が短くなる。
【0045】
【発明の効果】
以上のように本願請求項に係る発明では、型付部を有する加硫ベルトスリーブを作製した後、上記加硫ベルトスリーブを1軸に設置もしくは2軸に掛張して回転しながら型付部表面に接着剤を塗布して接着層を形成した後、該接着層の上に短繊維を吹き付けて付着する伝動ベルトの製造方法にあり、加硫ベルトスリーブの型付部の伝動面に短繊維を均一にしかも強く付着してベルト走行時の騒音を軽減することができ、更に加硫ベルトスリーブの型付部表面を研磨して表面加工することにより、短繊維をより強く型付部表面に付着することができる効果がある。
【0046】
また、加硫ベルトスリーブの型付部表面に短繊維入り接着剤を塗布し、該短繊維を型付部表面の接着層に付着することで、接着層の形成と短繊維の付着を同時行うことができ、工数も低減できる効果がある。
【0047】
また、型付部表面に接着剤を塗布して接着層を形成した後、短繊維を接着層に静電植毛すれば、短繊維が型付部表面に形成した接着層から種々の角度で起毛した状態、あるいは寝た状態で混在して型付部表面に強固に付着し、ベルト走行時の騒音を軽減できる効果がある。
【0048】
また、第1のスリーブを内周側から押圧して型付部を形成した予備成型体を作製し、更に第2のスリーブを外側へ伸張させて予備成型体と一体的に加硫するものであって、特に第2のスリーブの径方向への変形が少ないために、伸びの小さなベルトを成形することができ、更には型付部が正確に成形でき、そして型付部表面に付着した短繊維がベルト走行時の騒音を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】予備成型体を成形している状態の縦断図である。
【図2】予備成型体を作製した後状態の断面図である。
【図3】未加硫のベルトスリーブを作製する前状態の断面図である。
【図4】ベルトスリーブを加硫している状態の断面図である。
【図5】ベルトスリーブを加硫した後状態の断面図である。
【図6】加硫済みベルトスリーブの型付部表面を研磨により表面加工している状態を示す図である。
【図7】加硫済みベルトスリーブを回転させながら、短繊維を吹き付けて型付部表面の接着層に付着している状態を示す図である。
【図8】図7のA部拡大図である。
【図9】本発明の製造方法で得られたVリブドベルトの断面図である。
【符号の説明】
20 短繊維配向ゴムシート
21 予備成型体
24 第1のスリーブ
25 第2のスリーブ
41 内型
42 可撓性ジャケット
45 型部
46 外型
48 心線
51 ベルトスリーブ
62 型付部表面
63 接着剤塗布装置
64 短繊維吹き付け装置
65 短繊維
66 接着層
Claims (7)
- ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部が設けられる圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトの製造方法において、
型付部を有する加硫ベルトスリーブを作製した後、上記加硫ベルトスリーブを1軸に設置もしくは2軸に掛張して回転しながら型付部表面に接着剤を塗布して接着層を形成した後、該接着層の上に短繊維を吹き付けて付着することを特徴とする伝動ベルトの製造方法。 - 加硫ベルトスリーブの型付部表面に接着層を形成する前に、加硫ベルトスリーブの型付部表面を研磨により表面加工する請求項1記載の伝動ベルトの製造方法。
- ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部が設けられる圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトの製造方法において、
型付部を有する加硫ベルトスリーブを作製した後、上記加硫ベルトスリーブを1軸に設置もしくは2軸に掛張して回転しながら型付部表面に短繊維入り接着剤を塗布し、該短繊維を型付部表面の接着層に付着することを特徴とする伝動ベルトの製造方法。 - ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部が設けられる圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトの製造方法において、
型付部を有する加硫ベルトスリーブを作製した後、上記加硫ベルトスリーブを1軸に設置もしくは2軸に掛張して回転しながら型付部表面に接着剤を塗布して接着層を形成した後、短繊維を接着層に静電植毛することを特徴とする伝動ベルトの製造方法。 - 型付部を有する加硫ベルトスリーブの作製においては、
第1のスリーブを外周面に可撓性ジャケットを装着した内型と、内周面にリブ型もしくはコグ型からなる型部を刻印した外型との間に介在させ、該第1のスリーブを、上記可撓性ジャケットを膨張させることによって外型の刻印した型部に密着するように未加硫の予備成型体を作製し、
外型から離脱した内型の可撓性ジャケット面に少なくとも心線を巻き付て第2のスリーブを作製し、
再度、上記内型を外型内に設置し、可撓性ジャケットを膨張させて第2のスリーブを外型に装着した予備成型体と一体的に加硫する請求項1〜4の何れかに記載の伝動ベルトの製造方法。 - 第1のスリーブには幅方向に配向した短繊維が含まれている請求項1〜5の何れかに記載の伝動ベルトの製造方法。
- 加硫ベルトスリーブの型付部表面に短繊維を付着させた後、型付部表面を研磨し、短繊維を起毛させる請求項1〜6の何れかに記載の伝動ベルトの製造方法。
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Cited By (4)
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---|---|---|---|---|
JP2006349002A (ja) * | 2005-06-14 | 2006-12-28 | Bando Chem Ind Ltd | 摩擦伝動ベルト及びそれを用いたベルト伝動装置 |
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2003
- 2003-06-18 JP JP2003173536A patent/JP2004276581A/ja not_active Abandoned
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DE112010003337B4 (de) * | 2009-05-20 | 2019-10-31 | Bando Chemical Industries, Ltd. | Keilrippenriemen, Riemenübertragungssystem und Verfahren zum Herstellen eines Keilrippenriemens |
KR20140092841A (ko) | 2011-10-28 | 2014-07-24 | 반도 카가쿠 가부시키가이샤 | 마찰 전동 벨트 및 그 제조방법 |
US9822842B2 (en) | 2011-10-28 | 2017-11-21 | Bando Chemical Industries, Ltd. | Friction drive belt and manufacturing method therefor |
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