JP2004275278A - エンボス付おしぼり用原紙及びエンボス方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回転ローラとなるワークの軸線に20度の角度で傾斜し、相互に交差した第1及び第2の方向D1, D2において平行に離間した多数の直線に沿ってV断面形状溝を形成する。これにより、円周面上における直線の交差部にワーク軸線方向に扁平化された菱形断面の角錐台状突起部32−1, 32−1を有した回転ローラ32, 34が得られる。回転ローラ32, 34間を連続紙を通過させることにより連続紙に幅方向の密度が長さ方向のそれより粗くなるようにエンボスが付される。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
この発明はおしぼり用原紙及びその加工方法に関するものである。
【0002】
【発明の属する技術分野】
おしぼり用原紙の製造に際しては原反ロールからの紙は外周面の全面に多数の突起部を有した回転ローラ間を通過されることにより紙の全面にエンボスが付される(特許文献1参照)。エンボスが付されたおしぼり用原紙は二つ折りとかC字折りとか適宜折り畳まれることによりおしぼり原紙となる。このようにして得られたエンボス付おしぼり用原紙は薬液を含浸の上更に折り畳まれるか、ロール巻きされ、プラスチックフィルム袋に封入されることにより折りおしぼり又は巻きおしぼりとされる(折りおしぼりについて特許文献2参照)。
【0003】
回転ローラの外周面の突起部はホブカッタによって2段階の操作により形成される。即ち、第1段階の切削工程においてワークの外周面上に軸線に対して45°又はそれ以上の角度で傾斜した第1の平行線に沿って所定幅の螺旋溝を切削形成し、第2段階の切削工程においては第1の平行線に同一角度で交差した第2の平行線に沿って同一幅の螺旋溝を切削形成する。そのため、ワークの外周面上には第1段階及び第2段階のいずれの加工においてもホブカッタに当たらなかった交差部位に菱状断面の突起部が斜紋方向に残る。そのため、回転ローラ間を連続紙を移動させることにより連続紙の面状に突起部の断面形状に準じたエンボス模様が付される。
【0004】
原反としては不織布が多用されてきたが、コストの観点から紙を主体とするものが多くなってきている。そして、拭い取り性や肌触りの良さ及びボリューム感の観点から坪量で20gm2といった薄手の紙を2枚重ねとしかつその間に熱接着性シートを介在させ、これら3層を熱接着させたものをロール状に巻き取って原反としていた。しかしながら、このような3層構造の構造では薄紙使用のため紙自体のコストが嵩むし、熱接着性シートの使用もコスト増の要因となっている。また、熱接着性シート(プラスチック)を使用しているため、再利用のための処理がしにくい。そこで、坪量で20〜40 gm2といった比較的に厚手の紙(例えば衛生紙)1枚を素材としたおしぼりも使用されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭47−32127号公報
【特許文献2】特開平10−179444号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
紙を素材とする場合、おしぼり用に水分を付与することを考慮すると、強度上どうしても長繊維パルプから抄紙されたものを使用することになる。この場合に抄紙方向に繊維が並ぶため長さ方向におけるエンボス後も紙の強度は充分であるが幅方向には強度が足りなくなり、エンボスを付した場合に幅方向の強度の低下が著しくなり、おしぼりを開いた場合に破れてしまい易くなる。即ち、エンボス加工においては、全周面に突起部を多数有した回転ローラ間に紙を通過させることにより紙面の全面に凹凸模様を付しているが、突起部によって個々の繊維が屈曲せしめられる。そして、従来のエンボス加工においては突起部の斜紋方向が特許文献1に示すように軸線方向に対して45°又はそれ以上と大きいため、横方向での屈曲が大きく横方向での繊維の散けが生じやすく、これが横方向強度の大幅低下を惹起させるのである。
【0007】
この発明は以上述べた問題点に鑑みなされたものであり、一枚の紙を素材としているにも係わらず強度を確保しうるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、連続紙の全面に、第1の方向に沿った多数の平行直線と第1の方向に交差する第2の方向に沿った多数の平行直線の交差部にエンボス模様を付したおしぼり用原紙において、前記第1の方向及び第2の方向は紙面の長さ方向に対する角度より紙面の幅方向に対する角度が小さくされたことを特徴とするエンボス付おしぼり用原紙が提供される。
【0009】
請求項1の発明の作用・効果を説明すると、第1の方向及び第1の方向に交差する第2の方向は長さ方向に対する角度より幅方向に対する角度が小さくされている。そのため、幅方向における凹凸(エンボス模様)の数が相対的に少なくなるためそれに応じて紙の屈曲も少なくなり、幅方向の強度低下を抑制することができる。他方、長手方向においては凹凸の数は相対的に増大されるため必要なエンボス効果は維持することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記第1の方向及び第2の方向が紙面の幅方向に対してなす角度は20〜30度の範囲にあることを特徴とするエンボス付おしぼり用原紙が提供される。
【0011】
請求項2の発明の作用・効果を説明すると、前記第1の方向及び第2の方向が紙の幅方向に対してなす角度を20〜30度の範囲とすることにより幅方向の強度低下の抑制を得つつ幅方向にも適当なエンボス効果を得ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1若しくは2に記載の発明において、素材となる紙は縦方向の折線によって折り曲げられており、前記エンボスは縦方向の折線によって折り曲げられた後の上下層が重ねられた紙に付されていることを特徴とするエンボス付おしぼり用原紙が提供される。
【0013】
請求項3の発明の作用・効果を説明すると、素材となる紙へのエンボスは縦方向の折線によって折り曲げられた後の上下層が重ねられた状態において付されていることから、エンボスローラの突起部が上下層に同時に作用し、上下層のエンボスの凹凸が完全に重なり(上下層間でエンボスの凹凸が相互に嵌り合い)、綺麗なエンボスを付すことができ、見栄えのよいしかも拭き取り性の良好なおしぼりとすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、回転ローラとなるワークの軸線に傾斜した第1の方向において平行に離間して多数のV断面形状溝を形成し、次いでワークの軸線に対して傾斜し、第1の方向と交差する第2の方向において平行に離間して多数のV断面形状溝を形成することにより、第1の方向と第2の方向との交点に断面が菱形の多数の突起部を形成し、多数の等間隔平行溝の形成を行う前記第1及び第2の方向は回転ローラの円周方向に対する角度より回転ローラの軸線方向に対する角度が小さくなるように選択し、少なくとも一方に前記突起部を有した一対の回転ローラ間に連続紙を通過させることにより連続紙の全面にエンボス模様を形成することを特徴とするおしぼり用原紙のエンボス方法が提供される。
【0015】
請求項4の発明の作用・効果を説明すると、第1段階での溝切削時の第1の方向及び第2段階での溝切削時の第1の方向に交差する第2の方向は長さ方向に対する角度より幅方向に対する角度が小さくされている。そのため、回転ローラ間を連続紙を通過させることによりエンボスを付した際において、紙の幅方向における凹凸(エンボス模様)の数が相対的に少なくなるためそれに応じて紙の屈曲も少なくなり、幅方向の強度低下を抑制することができる。他方、長手方向においては凹凸の数は相対的に増大されるためエンボス効果は維持することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明において、前記一対の回転ローラ間を通過せしめられるに先立って原反ロールから繰り出される連続紙は回転ローラ長手方向の折線にて上下層間で折り重ねられ、折り重ねられた連続紙に前記一対の回転ローラ間でエンボスが付されることを特徴とするおしぼり用原紙の加工方法が提供される。
【0017】
請求項5の発明の作用・効果を説明すると、素材となる紙へのエンボスは縦方向の折線によって折り曲げられた後の上下層が重ねられた紙に付されていることから、エンボスローラの突起部が上下層に同時に作用し、上下層のエンボスの凹凸が完全に重なり(上下層間でエンボスの凹凸が相互に嵌り合い)、綺麗なエンボスを付すことができ、見栄えのよいしかも拭き取り性の良好なおしぼりとすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下この発明による 図1及び図2はこの発明の実施形態におけるおしぼり用原紙の加工ラインを示しており、原反ロール10と、スリッタ12と、ガイドローラ14と、折舟16と、給水装置18と、エンボスユニット20と、巻取ユニット22とを備えている。
【0019】
原反ロール10は連続紙Sを巻芯24上に巻回して構成される。連続紙の素材はこの発明においてはリサイクルが容易という観点から紙としており、また、紙としては坪量で40〜70 gm2といった比較的に厚手の紙(例えば衛生紙)が好ましい。そして、紙としてはその原料調整工程において湿潤強度剤を添加した所謂内添式の耐水紙であることが更に好ましい。即ち、内添式の耐水紙においては原料パルプの調整過程においてメラミン系や尿素系の湿潤強度付与剤(大抵は樹脂)が添加され、おしぼり製造時の水分付与時の強度低下が少なく、エンボスによる凹凸の崩れが少ない利点があり、また、おしぼりにしたときのボリューム感及びソフト感を確保できる。エンボスの併用は湿潤強度剤の使用量を軽減できるためコスト的に有利であり、また、湿潤強度剤の使用量を軽減はリサイクルにおいても有利となる。
【0020】
図1及び図2においてスリッタ12は回転刃26と受けロール28とを対面配置して構成される。原反ロール10からの紙などの連続紙Sは回転刃26と受けロール28との間に供給され、図1に示すように連続紙Sは長手方向に沿って二つの部分S1に分割される。
【0021】
図1に示すように折舟16は二つ並んで設けられ、連続紙Sにおける二つに分割された部分S1をそれぞれがC折りにする。即ち、折舟16は連続紙を長手方向の折線によって折り重ねられた上下層を得るもので、1枚もののおしぼり用原紙と比較して全体強度を強くすることを意図したものある。そして、この発明はC折りだけでなく、二つ折り若しくは他の長手方向折線に沿って折り重ねられた連続紙(例えば三つ折り、四つ折り、Z折り)に応用することが可能である。図3は連続紙を二つ折りにする折舟を模式的に示しており、折舟は矢印のように折舟に入ってくる分割後の連続紙S1を受ける下向き傾斜底面16−1と、連続紙S1が徐々に二つ折りとなるように巾を窄めてゆく狭窄面16−2と、巾狭窄された連続紙を受ける水平底面16−3と、連続紙S1を最終的に上下層S1’, S1”より成る二つ折り形状にする上面16−4とからなる。C折りのための折舟も構造的には同様であり、巾方向に対称形状となっている点のみ相違するだけである。
【0022】
給水装置18はパイプ状ダクト29と、連続紙に対向したダクト29の下面に連続紙の幅方向に間隔をおいて形成される複数のノズル(図示せず)とから構成される。ノズルからのWの如き水散布により紙全面に満遍なく給水することができる。紙やエアーレイ不織布などの連続紙に給水することによりそれを構成するセルロース若しくは合成繊維の流動性を高め、後述のエンボスによる上下層の密着性を高めることができる。実施例のように折舟16により完全に折り畳まれたの連続紙に給水装置18のノズルを対向させる代りに、ノズルを折舟16の入口部(図3の面16−1, 16−2の間)に設け、折り畳み中の連続紙の中間において水散布を行い、折り畳み中の連続紙に上下対向内面側から給水するようにしてもよい。
【0023】
エンボスユニット20は一対の回転ローラ32, 34から構成され、回転ローラ32, 34はその外周面に後述のエンボス用突起部を有しており、紙Sが回転ローラ32, 34間を通過されることにより紙にエンボスが付され、巻き取りユニット22により巻き取られる。即ち、巻取ユニット22は一対の支持ローラ40, 42とプレスローラ44とからなり、エンボスされたC折りなどの長手方向折線に沿って折り重ねられた連続紙は巻取ユニット22において小分けされた、巻きおしぼり装置用の素材供給ロール46として巻き取られる。周知のようにロール46に巻き取られたおしぼり用紙は巻きおしぼりや折りおしぼりの製造装置に送られ、所定長さに切断され、薬液を含む水分を付与後に、ロールに巻くことにより巻きおしぼりとされるか、折り畳むことにより折りおしぼりとされる。
【0024】
次に、エンボスユニット20を構成する回転ローラ32, 34により連続紙に付されるエンボスパターンについて説明すると、図4に示すように回転ローラ32, 34はその外周面に多数の突起部32−1, 34−1を形成している。図5(イ)は従来の回転ローラ32の周面の展開図であり、全面に突起部32−1が形成される。図中、Wは紙幅方向(回転ローラ32の軸線方向に対応する)を表し、Lは紙の長さ方向(回転ローラ32の回転方向に対応する)を表す。図5及び6に示すように各突起部32−1は正方形断面の錐体形状をなし、回転ローラ32の外周面においてその軸線(紙幅方向W)に対して角度45°で傾斜した方向A1の等間隔平行直線と同じく角度45°で反対方向A2に傾斜した等間隔平行直線の交差部に形成される。即ち、突起部32−1, 34−1は方向A1, A2に並ぶように配置されるが、突起部32−1, 34−1が並ぶこの方向A1, A2をこの明細書では斜紋方向と称するものとする。
【0025】
図5に示すような突起部32−1及び 34−1の斜紋状配置は突起部32−1及び 34−1を傾斜方向が反対になるようにホブカッタ(軸線に対する傾斜角度45度)によって2段階にて切削を行うことに由来するものである。即ち、回転ローラ32の切削加工について説明すると、第1段階の切削工程においてホブカッタをワークとしての回転ローラ32の軸線(紙幅方向W)に対して方向A1に傾斜させて切削を行うことによりワークの外周面上に方向A1に延びる多数の等間隔溝(=d)が形成される。この溝の形状は図6において32Aに示すようにV字断面形状をなしており、従って、その谷部32A−1が図5においてA1の方向と平行に等間隔に延びている。そして、第2段階の切削においてはホブカッタによりワークとしての回転ローラ32の軸線(紙幅方向W)に対して反対方向A2に傾斜した同様のV字断面形状の等間隔溝がワークの外周面に切削され、この溝の谷部32B−1は図5においてA2の方向と平行に等間隔に延びることになる。そのため、ワークの外周面上には第1段階及び第2段階のいずれの加工においてもホブカッタに当たらなかった交差部位を平坦面状頂点32A−3として図5及び図6に示すように正方形断面の錐台状突起部32−1として残るのである。回転ローラ34についてもホブカッタにより同様に交差方向の斜め溝の2段階の切削加工が行われ、第1段階及び第2段階のいずれにおいてもホブカッタが当たらなかった交差部位を平坦面状頂点32A−3として、ワークとしての回転ローラ34の周面状に正方形断面の錐台状の突起部34−1が形成される。
【0026】
図4に示すように回転ローラ32, 34の突起部32−1, 34−1は回転ローラ32, 34の回転Rによって歯車様に噛合う。即ち、上部回転ローラ32の一つの突起部32−1が下部回転ローラ34の一対の突起部34−1間の隙間に入り込み、下部回転ローラ34の一つの突起部34−1が上部ローラ32の一対の突起部32−1間の隙間に入り込むような構造になっている。そして、図5(ロ)は上下の回転ローラ32, 34の外周面に設けた突起部32−1, 34−1の噛合状態を展開図にて示したものである。
【0027】
従来技術においては回転ローラ32, 34上の突起部32−1, 34−1の切削加工時にホブカッタによる切削は軸線に対して45°の方向A1, A2に実施され、突起部32−1, 34−1は図5及び図6に示すように正方形断面の錐体を呈し、幅方向W及び長さ方向Lにおける単位長さあたりのエンボス密度(突起部32−1, 34−1の幅方向間隔WB, 長さ方向間隔LB)は同一である。そのため回転ローラ32, 34間を通過される連続紙にはその全面に幅方向及び長さ方向同一密度でエンボス模様が形成される。図7は図5のように突起部32−1, 34−1を配置した場合に回転ローラ32, 34によるエンボス加工により紙面上に得られるエンボス模様を模式的に示す。回転ローラ32の突起部32−1の先端により図7の紙面の下向きにエンボス突起(実線の丸印)が形成され、回転ローラ34の突起部34−1の先端により図7の紙面の上向きにエンボス突起(破線の丸印)が形成される。エンボス部の形状はもとより突起部32−1, 34−1の断面形状(正方形)に順ずる(又は多少角のとれた形状となる)が図7では簡明のため円形にて図示している。従来技術においては幅方向W及び長さ方向Lにおいて突起部32−1, 34−1の密度が同一(図5の間隔WB, LBが同一)であったため、回転ローラ32, 34の軸線方向、即ち、紙の幅方向Wにおける強度が足りなくなり、使用時にユーザがおしぼりを開いて引っ張った場合などに簡単に破けてしまう問題が生じやすかった。即ち、紙は長さ方向Lに繊維が揃っているため、紙の長さ方向Lにおいてはエンボスによる繊維の屈曲に係わらず強度低下は実質的に起こらない。しかしながら、紙の幅方向Wにおいては、繊維は幅方向に並んでいるだけであるため、エンボスによる繊維の屈曲が多いことにより繊維の横方向に散けやすく、どうしても強度低下があったのである。
【0028】
図8(イ)はこの発明の実施形態における回転ローラ32上の突起部32−1の配置を示している。切削時のホブカッタの方向はD1, D2にて示しており、そのため、方向D1, D2に平行な等間隔直線の交差部に突起部32−1, 34−1が形成される。ホブカッタによりワーク上に形成される溝幅dは従来(図5)と同一である。この実施形態においては方向D1, D2が紙幅方向W(回転ローラ32, 34の軸線方向)に対してなす角度αは20度であり、他方、紙の長さ方向Lに対してなす角度βは70度となる。即ち、一般的化すると、この発明では方向D1, D2が紙幅方向Wに対してなす角度αは紙の長さ方向Lに対してなす角度βより小さい。そのため、図8(イ)及び図9に突起部32−1について示すように突起部は紙幅方向Wに延びた菱形断面の錐台状をなす。即ち、ホブカッタに当たらなかった上面32A−3は平坦であるが、そこから谷部32A−1までの溝部32Aの断面形状は幅方向Wにおいて、より拡開したV断面形状をなしている。逆に、長さ方向Lについては図10に示すように溝部32Aはより狭まったV字断面形状をなしており、換言すれば、谷部32A−1までの溝部32Aの傾斜はより急峻である。回転ローラ34についても、その周面上に形成される突起部34−1は紙幅方向Wに延び長さ方向Lに縮んだ菱形断面形状の錐台をなしている。図8(ロ)は上下の回転ローラ32, 34の突起部32−1, 34−1が噛合った状態を展開図にて示す。
【0029】
図8に示すこの発明の回転ローラ32, 34においては切削時のワーク軸線に対するホブカッタの傾斜角度αが20度と小さいため突起部32−1, 34−1の断面形状は幅方向Wにおいて扁平となっており、換言すれば、幅方向Wにおける突起部32−1, 34−1の密度は図5に示すようにホブカッタの傾斜角度=45度の場合より少なくなる。即ち、この発明では突起部32−1, 34−1の間隔WAは図5の間隔WBより拡開されている。図11は図8の回転ローラ32, 34に紙を通したとき得られるエンボス模様を模式的に示しており、実線の○印が回転ローラ32の突起部32−1の先端により図面下向き付されるエンボス模様を模式的に示し、破線○印は回転ローラ34の突起部34−1の先端により図面上向き付されるエンボス模様を模式的に示す。図11を図7と比較すれば明らかなように、この発明(図11)では従来(図7)との比較で幅方向Wにおけるエンボス密度は小さくなっている(幅方向における突起部の間隔は広げられている)。他方、他方、長さ方向においてはこの発明における突起部の密度が従来より大きくなっている。即ち、この発明における突起部32−1, 34−1の間隔(図8のLA)は図5の従来の長さ方向における突起部32−1, 34−1の間隔LBより狭められている。
【0030】
図8に示す従来のエンボスパターンでは回転ローラ32, 34における幅方向及び長さ方向突起部32−1,34−1の間隔及び溝底までの突起部の傾斜角度(溝のV角度)は同一である。即ち、回転ローラ32, 34により連続紙にエンボス加工を施したときのエンボス密度は幅方向Wも長さ方向Lも同一であり、エンボスにより幅方向Wにおいて紙に加わる屈曲は長さ方向Lのそれと同一であったが、これは幅方向Wにおいては過大であり(細かすぎ)、そのため、繊維が平行に並ぶ方向である紙の幅方向に繊維が散けやすいため、おしぼりを広げて引っ張った場合に紙が破けやすかった。これに対して、この発明では突起部32−1,34−1は紙の幅方向Wにおいては間隔が広げられかつ傾斜角度も緩められている(図9参照)ためエンボスによる幅方向Wにおける紙の屈曲は粗くかつ緩くなる。そのため、紙の幅方向における繊維相互の交絡を維持することができ、エンボスに伴う紙の屈曲に由来する幅方向における紙強度の低下を少なくすることができる。
【0031】
この発明により紙の幅方向のエンボス密度は小さくなるが、図10に示すように紙の長さ方向Lについては突起部32−1,34−1の間隔は狭まり(長さ方向の突起部間隔はLB(図8)からLA(図5)に短縮している)、エンボス密度はかえって増加する。そのため、紙の幅及び長さの全体からするとエンボス密度を実質的にそれほど減少させることなく維持することができ、実質的に遜色ないエンボス効果を得ることができる。
【0032】
図8では切削時のホブカッタによるワークの溝切削方向D1, D2を軸線に対してα=20度(長さ方向に対して角度β=70度)であるが、この発明はこの角度に限定されず、方向D1, D2が軸線に対してなす角度αが長さ方向に対してなす角度βより小さい場合はこの発明に包含される。しかしながら、角度αとしては20〜30度が好ましい。
【0033】
本発明によれば、以上の説明のように切削時のホブカッタによるワークの溝切削方向D1, D2が軸線に対してなす角度αが長さ方向に対してなす角度βより小さくすることによりエンボスに伴う紙の幅方向の強度低下を緩和させるものであるが、これに加えこの発明では回転ローラ32, 34間でのエンボスは、原反10からの紙を長手方向の折線によってC折りなどとすることにより上下層を重ねた状態で行っているためエンボス部(浅エンボス部も含む)により綺麗なエンボスを付すことができる。即ち、図12において連続紙S1はC折りによって上層S1’と下層S1”との2重層をなしているが(図3も参照)、この2重層が回転ローラ32, 34間を矢印のように通されるため、上下の回転ローラ32, 34の突起部32−1, 3401は2重層における下層S1”と上層S1’とに同時に作用する。即ち、上部回転ローラ32の突起部32−1が2重層の上層S1’を図の下向き突出させ、この下向きに突出された上層S1’の部分により下層S1”が突起部34−1の間において下向きに突出せしめられる。また、下部回転ローラ34の1つの突起部34−1が2重層の下層S1”を図の上向き突出させ、この上向きに突出された下層S1”の部分により上層S1’が突起部32−1の間において上向きに突出せしめられる。そのため、上下層S1’, S1”は密着状態を維持しつつ回転ローラ32, 34の周面の突起部32−1, 34−1に応じた凹凸が付刻される。従って、上下層S1’, S1”には完全に同一位相のエンボスによる凹凸模様が形成せしめられ、長手方向における折線の部位を含めた全面においても上下層の良好な密着性を得ることができる。そのため、綺麗なエンボス状態を得ることができる。また、上下層の密着性が良好なため、ロール34として巻回状態においてストレートな肩部が得られ、綺麗な巻き姿することができ、巻きおしぼりの原紙として使用した場合において繰り出し時の引っかかりなどのトラブルを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はC折りエンボスシートのロール巻き装置の平面図である。
【図2】図2は図1の装置の側面図である。
【図3】図3は二つ折り用の折舟の模式的斜視図である。
【図4】図4はエンボスユニットの模式的拡大断面図を示す。
【図5】図5は従来における45°方向の突起部を有した回転ローラの周面展開図であり、(イ)は上部回転ローラのみ示し、(ロ)は上下の回転ローラの双方を示すものである。
【図6】図6は図5のV−V線に沿った矢視断面図であり、従来における回転ローラ上の突起部の断面形状を示している。
【図7】図7は図5(ロ)の突起部配置の回転ローラにより紙面付されるエンボスパターンを模式的に示す図である。
【図8】図8はこの発明によりローラ切削加工時のホブカッタの角度を軸線に対して20度に設定した場合であり、(イ)は上部回転ローラのみ示し、(ロ)は上下の回転ローラの双方を示すものである。
【図9】図9は図8のIX−IX線に沿った矢視断面図であり、この発明における幅方向における回転ローラ上の突起部の断面形状を示している。
【図10】図10は図8のX−X線に沿った矢視断面図であり、この発明における長さ方向における回転ローラ上の突起部の断面形状を示している。
【図11】図11は図8の突起部配置の回転ローラにより紙面に付されるエンボスパターンを模式的に示す図である。
【図12】図12はC折りされた紙に対するこの発明の上下層同時エンボス工程を模式的に説明する図である。
【符号の説明】
10…原反ロール
12…スリッタ
14…ガイドローラ
16…折舟
18…給水装置
20…エンボスユニット
22…巻取ユニット
32, 34…回転ローラ
32−1, 34−1…突起部
Claims (5)
- 連続紙の全面に、第1の方向に沿った多数の平行直線と第1の方向に交差する第2の方向に沿った多数の平行直線の交差部にエンボス模様を付したおしぼり用原紙において、前記第1の方向及び第2の方向は紙面の長さ方向に対する角度より紙面の幅方向に対する角度が小さくされたことを特徴とするエンボス付おしぼり用原紙。
- 請求項1に記載の発明において、前記第1の方向及び第2の方向が紙面の幅方向に対してなす角度は20〜30度の範囲にあることを特徴とするエンボス付おしぼり用原紙。
- 請求項1若しくは2に記載の発明において、素材となる紙は縦方向の折線によって折り曲げられており、前記エンボスは縦方向の折線によって折り曲げられた後の上下層が重ねられた紙に付されていることを特徴とするエンボス付おしぼり用原紙。
- 回転ローラとなるワークの軸線に傾斜した第1の方向において平行に離間して多数のV断面形状溝を形成し、次いでワークの軸線に傾斜し、第1の方向と交差する第2の方向において平行に離間して多数のV断面形状溝を形成することにより、第1の方向と第2の方向との交点に断面が菱形の多数の突起部を形成し、多数の等間隔平行溝の形成を行う前記第1及び第2の方向は回転ローラの円周方向に対する角度より回転ローラの軸線方向に対する角度が小さくなるように選択し、少なくとも一方に前記突起部を有した一対の回転ローラ間に連続紙を通過させることにより連続紙の全面にエンボス模様を形成することを特徴とするおしぼり用原紙のエンボス方法。
- 請求項4に記載の発明において、前記一対の回転ローラ間を通過せしめられるに先立って原反ロールから繰り出される連続紙は回転ローラ長手方向の折線にて上下層間で折り重ねられ、折り重ねられた連続紙に前記一対の回転ローラ間でエンボスが付されることを特徴とするおしぼり用原紙の加工方法。
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---|---|---|---|
JP2003068204A JP2004275278A (ja) | 2003-03-13 | 2003-03-13 | エンボス付おしぼり用原紙及びエンボス方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010188690A (ja) * | 2009-02-20 | 2010-09-02 | Oji Nepia Co Ltd | ロール状衛生用紙及びその製造方法 |
CN102154951A (zh) * | 2011-01-31 | 2011-08-17 | 金红叶纸业集团有限公司 | 一种压花生活用纸及对该生活用纸压花的压花辊 |
-
2003
- 2003-03-13 JP JP2003068204A patent/JP2004275278A/ja active Pending
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CN102154951A (zh) * | 2011-01-31 | 2011-08-17 | 金红叶纸业集团有限公司 | 一种压花生活用纸及对该生活用纸压花的压花辊 |
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