JP2004271655A - トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】定着器の構成に関わらず低温定着が可能であり、耐オフセット性に優れ、高かい現像性を安定的に得ることができ、また保存性に優れたトナーを供給すること。
【解決手段】結着樹脂と着色剤を少なくとも含有するトナーであって、該結着樹脂が(1)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基を有するビニル樹脂の混合物、(2)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基を有するビニル樹脂、及び(3)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基とが反応したビニル樹脂を含むグループから選択される1種以上の樹脂を含有する結着樹脂を含むことを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷、トナージェットのごとき画像形成方法に使用されるトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式、静電記録方式などに用いられるトナーでは結着樹脂に着色剤を含有させた構成のものが広く用いられている。中でもその結着樹脂には電子写真方式や静電記録方式において未定着トナー像を担持した記録材上のトナーを互いに圧接し回転する定着プロセスのニップ部を通過させることにより溶融させ記録材上に定着させるローラー加熱方式が用いられている。
【0003】
また、最近、熱ローラーにかわり、加熱体に対向圧接し、かつ、フィルムを介して記録材を該加熱体に密着させる加圧部材を含む定着装置が実用化されており、熱効率的にも有利になっているが、トナー表面を溶融するためオフセット現象はさらに生じやすくなり、これを防止することがより必要となっている。定着工程においても、ウェイト時間が短く低消費電力である定着方法を実現するために、トナーとしては、より低温定着を実現できる設計が求められる。
【0004】
このような定着プロセスにおけるトナーとしての溶融挙動は(1)低温における溶融性が高く、且つ(2)高温においても離型性が高いという特性を持ち合わせたトナーの開発が望まれ、数多くの研究がなされている。
【0005】
溶融特性の指標として挙げられる物性に溶融粘度があるが、理想的な溶融粘度の特性としては(1)溶融開始温度が低いこと(2)溶融粘度が高温まで適度な値で一定に維持されること等がある。ローラー加熱方式を用いる印刷機において前者(1)の特性は省エネルギー化、印刷スタンバイまでの時間短縮のため、またローラー加熱方式を用いる電子写真、静電印刷などの装置周辺の環境への影響などの面で、また後者(2)の特性は定着ローラーからの離型性を高温においても十分に保ち、定着ローラーへの未定着トナーの付着による印刷物の汚れ(オフセット現象)を防ぐという面で両者は重要な要素となる。
【0006】
低温溶融特性に優れる樹脂としてはポリエステル系の樹脂が挙げられるが、溶融特性として溶融開始温度が低い一方で、高温における溶融粘度の低下開始温度が低く、高温定着時における離型性において多様な離型剤を用いることが必要となる。
【0007】
たとえば、特許文献1に提案されているが、トナーとしての粉体特性である流動性、凝集性などの面で不具合を生じ易い。また、粉砕工程を伴う製法においてポリエステル樹脂は粉砕されにくく生産性の面で不利になる。
【0008】
一方、高温における離型性に優れる樹脂としてはビニル系の樹脂が挙げられるが、溶融特性として溶融粘度低下の開始温度が比較的高いという高離型性を得やすい特性をもつが、溶融開始温度が比較的高い。このため低温における定着性能を得るために結着樹脂の分子量分布を低分子化させ、溶融粘度の低下開始温度を低くすると必要な離型効果を得られない結果となる。低温定着を図るため低分子化されたビニル系樹脂に離型剤を用いても溶融した樹脂自体の粘度が低くなりすぎ、必要な離型効果を得ることは難しい。
【0009】
また、オフセット防止の提案の一つとして、架橋剤を添加させた系についての提案が多くなされている。
【0010】
特許文献2には、架橋剤と分子量調整剤を加え、適度に架橋されたビニル重合体を含むトナーが提案されている。特許文献3には、α,β不飽和エチレン系単量体を構成単位とした、重量平均分子量と数平均分子量との比が3.5〜4.0となるように分子量分布を広くしたトナーが提案されている。
【0011】
これらのトナーは、分子量分布の狭い単一の樹脂を含むトナーに比べて、定着下限温度(定着可能な最も低い温度)とオフセット温度(オフセットが発生しはじめる温度)の間の定着可能温度範囲は広がっている。一方で、十分なオフセット防止性能を付与するように架橋反応を進行させると、その定着下限温度の上昇を余儀なくされ十分な低温定着性を得るのが難しい。反対に低温定着性を重視すると、オフセット防止性能が不十分となるという問題が存在していた。
【0012】
また、特許文献4では、反応性ポリエステル樹脂の存在下でビニル単量体を重合し、重合の過程で架橋反応、付加反応、グラフト化反応を介して高分子化させた樹脂を用いたトナーが提案されている。更には、特許文献5には前記のようなポリエステル樹脂とビニル単量体の共重合体とポリエステル樹脂の両者とからなるトナー用樹脂組成物も提案されている。
【0013】
このような架橋反応で得られたビニル系重合体やゲル分をトナー中に含有するトナーは、オフセット防止性能の良化を望むことができる。しかし、トナー原材料としてこのような架橋反応により得られたビニル重合体を用いるとトナー製造時の溶融混練時に、重合体へのせん断力が粘弾性の高さにより大きくなる。このために分子鎖の切断が促進し、溶融粘度の低下による定着時のオフセット防止性能が低下する。また、分子鎖の切断による発熱により溶融混練時の重合体自体の温度上昇がおこり、トナーに含有される成分の良好な分散状態を十分に得られないという問題をはらんでいる。
【0014】
分子量分布の観点からすでに発明されている技術には、たとえば特許文献6、特許文献7のような低分子量と高分子量の2群に分かれたピークに調整された分子量分布を形成し、グリシジル基含有ビニル樹脂を架橋剤としてカルボキシル基含有ビニル樹脂より構成される樹脂組成物を結着樹脂とするトナーが提案されている。
【0015】
このような分子量分布を形成する手段として従来の技術としては低分子量に重合された低分子成分と高分子量に重合された高分子成分の2種の樹脂をブレンドするという手法を用いている。この様にして得られた樹脂を用いることはシャープな1つのピークを持つ分子量分布を形成しているビニル樹脂から架橋反応を経て得られた樹脂よりも定着可能温度範囲を広げるのに有効な手段となる。一方で十分な定着可能温度範囲を得られる2つのピーク分子量の重合体をブレンドすると両者の溶融粘度が大きく異なり、混練溶融工程を経て得られるトナーとしては溶融混練時に低分子成分の溶融物の中に高分子成分塊が浮遊している状態を形成してしまう。このような状態から最終的に得られたトナーでは低温定着性能に対してやや有利になる一方で、高分子成分の単離現象が起こり易く、現像時の帯電不良や高分子単離物による印刷機内の汚染などが問題となり易い。また低分子成分の溶融物中への高分子成分塊の浮遊状態を避けるために溶融混練工程の温度を低温化する手法も有る。これにより溶融混練時の低分子成分の過剰な低粘度化を回避でき高分子成分への剪断効果を強め高分子塊を減らすことが可能となるが、重合体内部摩擦の上昇による分子鎖の切断効果が過剰になり高分子成分の低分子量側へのシフトが起こって十分なオフセット防止効果を得ることが困難となり更なる改善が望まれる。
【0016】
また、特許文献8のようなトナー分子量分布が3群に分かれたピークに調整された分子量分布を形成するトナーや特許文献9のようなトナーのTHF可溶分のGPCにより測定される分子量分布に3つのピークを持つように調整されたトナーも提案されている。
【0017】
このような分子量分布を有することによる定着性能や装置内での耐ブロッキング性、保存性などへの効果はある。しかし、印刷装置の高速化と省スペース化により機内温度の上昇は上昇傾向にあり、またトナー輸送時についても高温環境にさらされる傾向もあることから更なる耐ブロッキング性の改良が望まれる。更には高速、且つより省エネルギー化された簡便な定着のプロセスにおいては十分な低温定着性能や耐高温オフセット性能にも更なる改良の必要性がある。
【0018】
【特許文献1】
特開昭57−208559号公報
【特許文献2】
特公昭51−23354号公報
【特許文献3】
特公昭55−6805号公報
【特許文献4】
特開昭56−116043号公報
【特許文献5】
特許第2962809号
【特許文献6】
特開平10−087837号公報
【特許文献7】
特許第3118341号
【特許文献8】
特開平3−243958号公報
【特許文献9】
特開平5−48467号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記問題点を解消したトナーを提供することにある。
【0020】
すなわち本発明は、定着器の構成に関わらず低温定着が可能であり、耐オフセット性に優れ、高い現像性を安定的に得ることができ、また保存性に優れたトナーを供給することを課題とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は定着器の構成に関わらず良好な定着性と耐オフセット性を両立し、高い現像性を安定的に得ることができ、また保存性に優れたトナーを供給する。
【0022】
すなわち本発明は、結着樹脂と着色剤を少なくとも含有するトナーであって、該結着樹脂が(1)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基を有するビニル樹脂の混合物、(2)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基を有するビニル樹脂、及び(3)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基とが反応したビニル樹脂を含むグループから選択される1種以上の樹脂を含有する結着樹脂を含み、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分に含まれる分子量分布が100,000を超え、10,000,000未満の領域に少なくとも1つのピーク(PMw(H))を有する高分子体(H)とピーク分子量の異なる2種の低分子体(6,000≦L1ピーク分子量(PMw(L1))≦100,000、3,000≦L2ピーク分子量(PMw(L2))≦20,000、PMw(L1)>PMw(L2))の混合物を含むことを特徴とするトナーを提供する。
【0023】
【発明実施の形態】
本発明のトナーは結着樹脂と着色剤を少なくとも含有しており、
該結着樹脂が(1)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基を有するビニル樹脂の混合物、(2)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基を有するビニル樹脂、及び(3)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基とが反応したビニル樹脂を含むグループから選択される1種以上の樹脂を含有する結着樹脂を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明のトナーにおける該結着樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分に含まれる分子量分布が100,000を超え、10,000,000未満の領域に少なくとも1つのピーク(PMw(H))を有する高分子体(H)とピーク分子量の異なる2種の低分子体(6,000≦L1ピーク分子量(PMw(L1))≦100,000、3,000≦L2ピーク分子量(PMw(L2))≦20,000、PMw(L1)>PMw(L2))の混合物を含む。
【0025】
上記トナーを定着器の構成に関わらず定着電子写真、静電印刷などの記録材上の未定着トナー画像に用いることにより、優れた低温定着性、耐高温オフセット性、現像性を達成することが可能となり保存性においても有利となる。
【0026】
また、本発明のトナーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分に含まれる分子量分布において高分子体(H)は分子量分布において100,000を超え、10,000,000未満に少なくとも一つのピーク(PMw(H))を有することが好ましく、120,000乃至350,000の範囲にあることが更に好ましく、150,000乃至250,000の範囲にあることが特に好ましい。本発明のトナーは、上記の範囲にピーク分子量がある高分子体を用いることが、定着性と耐高温オフセット性のバランスを付加する上で好ましい。
【0027】
PMw(H)が100,000未満の場合には耐高温オフセット性が悪化し易く、10,000,000を超える場合は十分な定着性能を損なう場合がある。
【0028】
本発明のトナーは、GPCにより測定されるTHF可溶分に含まれる分子量分布において低分子体(L1)のピーク分子量(PMw(L1))が6,000乃至100,000の範囲にあることが好ましく、12,000乃至80,000の範囲にあることが更に好ましく、30,000乃至70,000の範囲にあることが特に好ましい。本発明のトナーは、上記のPMw(L1)であり低分子体(L2)のピーク分子量がPMw(L1)>PMw(L2)の関係にあることが、耐高温オフセット性を向上させる上で好ましく、且つ高分子体と低分子体(L1及びL2)の相互の分散状態を良好にする上で好ましい。
【0029】
低分子体(L1)のピーク分子量(PMw(L1))が6,000未満の保存性が悪化しやすく高分子体と低分子体の相互分散状態を良好に保ち難い。12,000未満の場合、または30,000未満の場合、ピーク分子量(L1)の低分子化に従いPMw(L1)>PMw(L2)の関係にあるL2とともに用いることで生み出される耐高温オフセット性や分散性などへの作用効果が薄れ、十分な耐高温オフセット性を向上させる効果を得ることが難しい。また、100,000を超える場合、低温定着性が悪化しやすく、トナーとしての帯電は過剰になりすぎる傾向(チャージアップ現象)が現れ易く良好な現像性能を得ることが難しくなる。
【0030】
本発明のトナーは、GPCにより測定されるTHF可溶分に含まれる分子量分布において、L1よりピーク分子量の低い低分子体(L2)のピーク分子量PMw(L2)が3,000乃至20,000の範囲にあることが好ましく、6,000乃至18,000の範囲にあることが更に好ましく、10,000乃至15,000の範囲にあることが特に好ましい。本発明のトナーは、上記のピーク分子量である低分子体(L2)を高分子体及びPMw(L1)>PMw(L2)の関係にある低分子体(L1)とともに用いることが、より低温における定着を可能にさせ、且つ十分な定着性能を得る上で好ましい。
【0031】
低分子体(L2)のピーク分子量PMw(L2)が3,000未満の場合、保存性の悪化が顕著になり、十分な耐高温オフセット性能を得ることが難しい。また、20,000を超える場合、低温定着性が悪化傾向にあり、十分な低温定着性能を発揮できないという問題が生じる。
【0032】
すなわち、本発明において低分子体L1及びL2のピーク分子量がPMw(L1)>PMw(L2)の関係にあるということは、定着可能温度範囲をより広くする上で非常に有効な手段である。また高分子体と低分子体として2種の樹脂を混合した系において定着可能温度範囲を広げるために高分子と低分子のピーク分子量の差を大きくすることが考えられるが、高分子体とピーク分子量の異なる2種の低分子体(L1及びL2)を用いた本発明の系ではピーク分子量の異なる高分子成分や低分子成分などの各樹脂成分の相互的な分散状態が良好になるため、高分子体のピーク分子量(PMw(H))をより高く、且つ低分子体(L2)のピーク分子量(PMw(L2))をより低く設計することが可能になる。従って低温定着性や耐高温オフセット性または現像性を損なわずにトナー設計の幅を大きく広げることができる。
【0033】
PMw(L1)>PMw(L2)の関係にある低分子体L1及びL2のピーク分子量の差(ΔPMw(L))は3,000乃至80,000の範囲にあることが好ましく、8,000乃至60,000の範囲にあることが更に好ましく、30,000乃至50,000の範囲にあることがL1とL2をともに含むことにより生じる耐高温オフセット性を良化させる効果を強める上で特に好ましい。ΔPMw(L)が3,000未満の場合、L1とL2を同時に用いることで生じる定着可能温度範囲を広げる効果を得ることが難しいと同時にH、L1、L2の各成分の相互的な分散状態が悪化するという問題が生じ易く十分な耐高温オフセット性を得ることは難しくなる。また、ΔPMw(L)が80,000を超える場合は、ΔPMw(L)が拡大するに従って十分な低温定着性能を得ることが難しくなる。
【0034】
本発明のトナーはグリシジル基含有のビニル樹脂を含み、高分子体及び分子量の異なる2種類低分子体を含むことが保存性向上の上で効果がある。
【0035】
グリシジル基を含有させた樹脂において高分子成分(H)と低分子成分(L1)または高分子成分(H)と低分子成分(L2)の2種の樹脂を用いると十分な定着可能温度領域を確保できなくなる。また、定着可能温度範囲を広げるようにピーク分子量の差を大きくした2種類の樹脂を用いると低ピーク分子量の樹脂成分が保存性を悪化させるという問題が生じる。更にはグリシジル基を含有させた単一のピーク分子量の樹脂を用いると十分な定着可能温度範囲が確保できない。また、グリシジル基を含有させずに高分子成分(H)及び分子量の異なる2種類の低分子成分(L1及びL2)を含む樹脂を用いると他の架橋成分(金属架橋剤など)を用いた場合においても適度な架橋反応が得られ難く、低温定着性と耐高温オフセット性をバランスよく達成することが困難となり、保存性を損なうという問題が生じ易い。
【0036】
本発明のトナーは高分子体(H)、分子量の異なる2種の低分子体(L1及びL2)を含むが各成分の質量配合比(R(H)/R(L1)/R(L2))は、樹脂全体を100質量部としてR(H)を10乃至50質量部、R(L1)を10乃至50質量部、またはR(L2)を20乃至80質量部の範囲で含有することが低温定着性及び耐高温オフセット性のバランスを良化する上で好ましい。
【0037】
本発明のトナーに用いる結着樹脂として樹脂全体を100質量部としたときにR(H)が10質量部未満の場合、十分な耐高温オフセット性を得ることが難しい。またR(H)が50質量部を超える場合、低温域における定着性能は急激に悪化する。R(L1)が10質量部未満の場合、L2とともに用いることにより生じる相乗効果である樹脂同士の相互分散性の良化は望めなくなる。またR(L2)が50質量部を超えた場合、定着可能温度範囲が狭まり低温定着性と耐高温オフセット性の両者の性能を損なう結果となる。R(L2)が20質量部未満の場合、十分な低温定着性は望めない。またR(L2)が80質量部を超えた場合、耐高温オフセット性の悪化が問題となる。
【0038】
本発明のトナーは、含まれる結着樹脂の酸価(Av)が0.1乃至50mgKOH/gであることが好ましく、2乃至20mgKOH/gであることが更に好ましく、3乃至10mgKOH/gであることが現像性を安定させる上で特に好ましい。本発明において樹脂酸価は、架橋反応による高分子量化及びグリシジル基やカルボキシル基の未反応官能基を制御していると考えられ、スリーブ融着を防止する効果と、またトナーの帯電性能を安定的にも影響していると推察される。
【0039】
樹脂酸価(Av)が0.1mgKOH/g未満の場合はスリーブへのトナー融着の悪化が問題なとなる。これはグリシジル基とカルボキシル基との未反応官能基が多くなり、帯電能が局部的に強く発生することに起因すると推察される。また、高温高湿環境下での帯電量を十分に得られないことがあり現像性を損なう問題が生じ易い。また50mgKOH/gを超えた場合、低温低湿環境下での帯電量が過剰になり現像耐久試験の進行に従い現像性が下がる傾向がある。更には低温低湿環境においてベタ白画像にトナーが飛翔する所謂カブリが発生し易い。
【0040】
本発明のトナーはTHF不溶分を1乃至30質量%含有することが好ましく、1乃至15質量%含有することが更に好ましく、3乃至12質量%含有することが特に好ましい。
【0041】
THF不溶分が1質量%未満の場合、耐高温オフセット性能を満足できなくなり、30質量%を超えた場合、低温定着性能を損なうという問題が生じ易い。
【0042】
本発明において、原料結着樹脂のTHF不溶分及びトナー中の樹脂成分のTHF不溶分は以下のようにして測定される。
【0043】
<THF不溶分の測定>
結着樹脂及びトナー0.5〜1.0gを秤量し(W1(g))、円筒濾紙(例えば東洋濾紙社製No.86R)を入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて10時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分溶液をエバポレートした後、100℃で数時間真空乾燥し、THF可溶樹脂成分量を秤量する(W2(g))。トナー中の燃焼残灰分の重さを求める(W3(g))。
【0044】
燃焼残灰分は以下の手順で求められる。予め精秤した30mlの磁性るつぼに約2.0gの試料を入れ精秤し、試料の質量(Wa(g))を精秤する。るつぼを電気炉に入れ約900℃で3時間加熱し、電気炉中で放冷し、常温下でデシケーター中に一時間以上放冷させた後、るつぼ質量を精秤する。ここから燃焼残灰分(Wb(g))を求める。
(Wb/Wa)×100=燃焼残灰分含有率(質量%)
【0045】
この含有率から試料中の燃焼残灰分の重さが求められる。THF不溶分は下記式から求められる。
【0046】
【数1】
Figure 2004271655
【0047】
結着樹脂の場合、燃焼残灰分がほとんど無いことからTHF不溶分を簡便な下記式から求めても良い。
【0048】
【数2】
Figure 2004271655
【0049】
本発明のトナーは、ガラス転移温度(Tg)が50〜70℃であることが好ましい。Tgが50℃未満の場合、耐ブロッキング性が悪化しやすく、70℃を超える場合は定着性が低下しやすい。
【0050】
本発明に用いられる結着樹脂の、GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布を測定することができる測定方法の具体例を以下に示す。
【0051】
<GPCによる分子量分布の測定>
試料は以下のようにして作製する。
【0052】
測定対象となる結着樹脂をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分振とうし、測定対象物の合一体がなくなるまでTHFとよく混ぜ、さらに12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)等が使用できる。)を通過させ、得られた溶液をGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が、0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0053】
検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合わせを挙げることができる。
【0054】
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、前記THF試料溶液を約100μl注入して測定する。
【0055】
分子量測定に当たっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製あるいは昭和電工社製の、分子量が10〜10程度のものを用い、少なくとも十点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。
【0056】
本発明における結着樹脂のTHF可溶成分の酸価を測定することができる測定方法の具体例を以下に示す。この測定例における基本操作はJIS K−0070に準ずる。また以下の測定例は結着樹脂を測定対象とする方法であるが、同様にしてトナーのTHF可溶成分の酸価を測定することができる。
【0057】
<酸価の測定>
試料0.5〜2.0(g)を精秤する。試料には必要に応じて粉砕品を用いる。また試料は、着色剤、結着樹脂中の不溶分等のTHF不溶成分を予め除去して使用するか、THF不溶成分の含有量を予め求めておく。精秤した試料中のTHF可溶成分の重さをW(g)とする。
【0058】
300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。この溶液に、電位差滴定装置を用いて0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を滴定する。より具体的には、例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定が利用できる。
【0059】
この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とする。得られた結果から次式により酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
【0060】
本発明のトナーのガラス転移温度を測定することができる測定方法の具体例を以下に示す。
【0061】
<ガラス転移温度の測定>
トナーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)や他機種を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定する。
【0062】
測定試科は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。この昇温過程で、温度40〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、本発明におけるトナーのガラス転移温度Tgとする。
【0063】
本発明のトナーは結着樹脂を含有し、結着樹脂はグリシジル基と反応する官能基とグリシジル基を有するビニル樹脂の混合物、グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基を有するビニル樹脂、及びグリシジル基と反応する官能基とグリシジル基とが反応したビニル樹脂を含むグループから選択される1種以上の樹脂を含有する。
【0064】
前記ビニル樹脂の混合物は、カルボキシル基を有するビニル樹脂とグリシジル基を有するビニル樹脂とを用意し、これらを混合することによって得られる。前記カルボキシル基とグリシジル基を有するビニル樹脂は、例えばカルボキシル基を有するビニル系モノマーと、グリシジル基を有するビニル系モノマーとを共重合することによって得られる。前記カルボキシル基とグリシジル基とが反応したビニル樹脂は、例えばカルボキシル基を有するビニル樹脂のカルボキシル基と、グリシジル基を有するビニル樹脂のグリシジル基とを、グリシジル基の環状エーテルが少なくとも開環する適当な条件下で反応させることによって得られる。
【0065】
前記カルボキシル基を有するビニル樹脂は、カルボキシル基を有するモノマーの一種又は二種以上を用いて、ビニル系モノマーと公知の重合方法により共重合させることにより得られる。カルボキシル基を有するビニル樹脂を構成する、カルボキシル基を有するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
【0066】
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、チグリン酸及びアンゲリカ酸等の不飽和モノカルボン酸、及びこれらのα−或いはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和ジカルボン酸、そのモノエステル誘導体、無水物及びα−あるいはβ−アルキル誘導体が挙げられる。
【0067】
以上のようなカルボキシル基を有するモノマーは、結着樹脂を構成する全モノマー100質量部に対し0.1〜50質量部、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.2〜15質量部添加すればよい。
【0068】
前記カルボキシル基を有するビニル樹脂のうち、高分子量成分の合成方法として本発明に用いることのできる重合法としては、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
【0069】
このうち、乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤で小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では反応熱の調節が容易であり、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と水相とが別であるから停止反応速度が小さく、その結果重合速度が大きく、高重合度のものが得られる。さらに、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナーの製造において、着色剤及び荷電制御剤等の、その他の添加物との混合が容易であること等の理由から、トナー用結着樹脂の製造方法として有利な点がある。
【0070】
しかし、添加した乳化剤のため重合体が不純になり易く、重合体を取り出すには塩析等の操作が必要で、この不便を避けるためには懸濁重合法が好都合である。
【0071】
懸濁重合法においては、水系溶媒100質量部に対して、モノマー100質量部以下(好ましくは10〜90質量部)で行うことが好ましい。使用可能な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、リン酸カルシウム等が挙げられ、一般に水系溶媒100質量部に対して0.05〜1質量部で用いられる。重合温度は50〜95℃が適当であるが、使用する開始剤、目的とするポリマーによって適宜選択される。
【0072】
前記高分子量成分は、本発明の目的を達成する為に、以下に例示するような多官能性重合開始剤の一種又は二種以上の使用、又は多官能性重合開始剤と単官能性重合開始剤との併用によって生成することが好ましい。
【0073】
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイドのように、パーオキサイド基等の重合開始機能を一分子内に二つ以上有する官能基を有する多官能性重合開始剤、及び、ジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレートのように、パーオキサイド基等の重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基との両方を一分子内に有する多官能性重合開始剤等が挙げられる。
【0074】
これらの内、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
【0075】
これらの多官能性重合開始剤は、二官能又は単官能性重合開始剤と併用されることが、トナー用結着樹脂として要求される種々の性能を満足する上で好ましい。特に、半減期10時間を得る為の分解温度において、前記多官能性重合開始剤よりも低い分解温度の重合開始剤と前記多官能性重合開始剤とを併用することが好ましい。
【0076】
前記二官能又は単官能性重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾ及びジアゾ化合物が挙げられる。
【0077】
これらの重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、前記多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において前記多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加することが好ましい。またこれらの重合開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.01〜10質量部で用いるのが好ましい。
【0078】
前記カルボキシル基を有するビニル樹脂のうち、低分子量成分の合成方法としては、公知の方法を用いることができる。しかしながら、塊状重合法では、高温で重合させて停止反応速度を速めることで、低分子量の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくいという問題点がある。その点、溶液重合法では、溶媒による、ラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで、低分子量重合体を温和な条件で容易に得ることができ、前記低分子量成分を得る上で好ましい。
【0079】
溶液重合で用いる溶媒として、キシレン、トルエン、クメン、酢酸セロソルブ、イソプロピルアルコール又はベンゼンが用いられる。スチレンモノマーを使用する場合、キシレン、トルエン又はクメンが好ましい。重合するポリマーによって溶媒は適宜選択される。反応温度としては、使用する溶媒、重合開始剤、重合するポリマーによって異なるが、通常70〜230℃で行うことが好ましい。溶液重合においては、溶媒100質量部に対してモノマー30質量部〜400質量部で行うことが好ましい。さらに、重合終了時に溶液中で他の重合体を混合することも好ましく、このような操作を行うことにより、数種の重合体を混合できる。
【0080】
グリシジル基を有するビニル樹脂は、グリシジル基を有するモノマーの一種又は二種以上と、ビニル系モノマーとを用いて、公知の重合方法により共重合させることにより得られる。
【0081】
前記グリシジル基を有するモノマーとしては、ビニル基とエポキサイドを有する化合物であれば良く、例えば、グリシジルアルコールと不飽和カルボン酸のエステル、不飽和グリシジルエーテル等が挙げられ、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸−β−メチルグリシジル、メタクリル酸−β−メチルグリシジル、アリルグリシジルエーテル、アリル−β−メチルグリシジルエーテル等が挙げられる。特に、下記一般式(1)で表されるグリシジルモノマーが好ましく用いられる。
【0082】
【化1】
Figure 2004271655
【0083】
グリシジル基を有するビニル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が2,000乃至100,000であることが好ましく、2,000乃至50,000であることがより好ましく、3,000乃至40,000であることがさらに好ましい。Mwが2,000未満の場合では、結着樹脂中の架橋反応において分子量が増大しても混練工程においての分子鎖切断が多く、耐オフセット性への効果が少なくなる場合がある。Mwが100,000を超える場合には、定着性に影響を及ぼすようになる場合がある。
【0084】
グリシジル基を有するビニル樹脂は、エポキシ価が0.01乃至5.0eq/kgであることが好ましく、0.01乃至3.0eq/kgの範囲であることが更に好ましく、0.05乃至1.0eq/kgの範囲であることが特に好ましい。0.01eq/kg未満の場合では、架橋反応が起こりにくく、高分子量成分やTHF不溶分の生成量が少なく、耐オフセット性への効果が減少する。5.0eq/kgを超える場合では、架橋反応は起こりやすくなる反面、混練工程においての分子鎖切断が多く、耐オフセット性への効果が減少する。
【0085】
グリシジル基を有するビニル樹脂のエポキシ価を測定することができる具体的な測定例を以下に示す。前記エポキシ価の測定における基本操作はJIS K−7236に準ずる。
【0086】
<エポキシ価の測定>
試料を0.5〜2.0(g)を精秤する。グリシジル基を有するビニル樹脂の重さをW(g)とする。精秤した試料を300mlのビーカーに入れ、クロロホルム10ml及び酢酸20mlに溶解する。この溶液に、臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mlを加える。0.1mol/lの過塩素酸酢酸溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。この滴定には、例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットとを用いての自動滴定が利用できる。この滴定による過塩素酸酢酸溶液の使用量をS(ml)とする。一方でブランクを測定し、この時の過塩素酸酢酸溶液の使用量をB(ml)とする。これらの結果から下記式によりエポキシ価を計算する。fは過塩素酸酢酸溶液のファクターである。
エポキシ価(eq/kg)=0.1×f×(S−B)/W
【0087】
混合すること又は反応させることを目的に、前述した両ビニル樹脂を用いる場合では、グリシジル基を有するビニル樹脂は、カルボキシル基を有するビニル樹脂中のカルボキシル基1当量に対して、グリシジル基が0.01乃至100.0当量、好ましくは0.03乃至10.0当量、さらに好ましくは0.05乃至5.0当量の混合比率で用いられることが好ましい。グリシジル基が0.01当量未満の場合は、結着樹脂中において、架橋点が少なくなり、耐オフセット性等の架橋反応による効果が発現しにくくなる。また、100当量を超えると、架橋反応は起こりやすくなる反面、現像性への影響が出る場合がある。
【0088】
本発明のトナーは、結着樹脂成分中のカルボキシル基とグリシジル基が製造工程における混練工程等の加熱工程において、架橋反応を施しても良い。この架橋性成分は、耐オフセット性の向上と現像性、耐久性に対して有利に働いている。
【0089】
カルボキシル基を有するモノマー、及びグリシジル基を有するモノマーと共重合させる前記ビニル系モノマーとしては、例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン及びp−n−ドデシルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン及びイソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ステアリル、アクリル酸(2−クロルエチル)、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸誘導体若しくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。これらのビニル系モノマーは、一種又は二種以上が用いられる。
【0090】
これらの中でもスチレン系共重合体及びスチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましく、この場合、少なくともスチレン系共重合体成分又はスチレン−アクリル系共重合体成分を60質量%以上含有することが定着性や混合性の点で好ましい。
【0091】
本発明のトナーに使用される結着樹脂としては、その他、下記の重合体の使用も可能である。
【0092】
このような重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
【0093】
本発明に用いられる着色剤には、磁性体や非磁性の染料や顔料等、種々の公知の着色剤を用いることが可能である。本発明のトナーを磁性一成分トナーに適用する場合には、トナーに磁性体が含有される。
【0094】
本発明において用いられる磁性体としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物が用いられ、その磁性体表面或いは内部に非鉄元素を含有するものが好ましい。さらに本発明のトナーは、結着樹脂100質量部に対して磁性体を30〜200質量部含有する磁性トナーであることが好ましい。この場合、磁性体によって十分な着色効果が得られる。
【0095】
本発明に用いられる磁性体としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属あるいはこれらの金属と、アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が用いられ、磁性体表面あるいは内部に非鉄元素を含有するものが好ましい。
【0096】
本発明に用いられる磁性体は、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄及びその混合物が好ましく用いられる。中でもリチウム、ベリリウム、ボロン、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、錫、鉛、亜鉛、カルシウム、バリウム、スカンジウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ニッケル、ガリウム、カドミウム、インジウム、銀、パラジウム、金、水銀、白金、タングステン、モリブデン、ニオブ、オスミウム、ストロンチウム、イットリウム、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、ビスマスから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を含有する磁性酸化鉄であることが好ましい。特にリチウム、ベリリウム、ボロン、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、第4周期の遷移金属元素が好ましい元素である。
【0097】
これらの元素は酸化鉄結晶格子の中に取り込まれても良いし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれても良いし、表面に酸化物あるいは水酸化物として存在しても良い。これらの形態の中でも、酸化物として含有されているのが好ましい形態である。
【0098】
また、場合により、本発明のトナーに用いられる磁性酸化鉄は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、チタネート、アミノシラン等で処理しても良い。
【0099】
これらの磁性酸化鉄は、種類によっても異なるが、着色力と現像性や搬送性に係る磁性とを両立させる観点から、結着樹脂100質量部に対し20〜200質量部で好ましく用いられる。より好ましくは40〜150質量部で用いられる。
【0100】
本発明に用いられる着色剤としては、上記磁性酸化鉄の他、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。例えば顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等が挙げられる。これらは、定着画像の光学濃度を維持するために必要十分な量が用いられ、その配合量は種類等によって異なるが、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。
【0101】
また、同様の目的で、さらに染料が用いられる。染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料が挙げられ、その配合量は種類等によって異なるが、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部であることが好ましく、0.3〜10質量部であることがより好ましい。
【0102】
本発明のトナーは、磁性トナーとしても非磁性トナーとしもいずれにも用いられるが、重量平均径が2.5〜10μmであることが、帯電均一性を促進し、トナーの凝集性を軽減し、画像濃度を向上させ、及びカブリの改善等により現像性を向上させる上で好ましい。特に、重量平均径が2.5〜6.0μmのトナーにおいてはその効果は顕著であり、極めて高精細な画像が得られる。重量平均径は2.5μm以上である方が十分な画像濃度が得られて好ましい。重量平均径は、トナーの製造方法及び製造条件や、分級作業等によって調整することが可能である。
【0103】
本発明のトナーの重量平均径及び粒度分布は、コールター法を用いて測定することができ、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。この測定法では電解液が使用されるが、この電解液には、例えば1級塩化ナトリウムを用いて調製された1%NaCl水溶液や、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
【0104】
測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。これを超音波分散器で約1〜3分間分散処理して試料を分散し、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用い、前記測定装置により2.00μm以上のトナー粒子の体積、個数を測定し、体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均径(D4)を算出する。
【0105】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
【0106】
本発明のトナーは、ワックスを含有してもよい。本発明に用いられるワックスには、例えばパラフィンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス及びその誘導体等が挙げられる。誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、及びグラフト変性物を含む。
【0107】
本発明のトナーにおいては、これらのワックス総含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜15質量部であることが好ましく、0.5〜12質量部であることがより好ましい。また、複数種類のワックスを併用してもよい。
【0108】
本発明のトナーは、荷電制御剤を含有することが好ましい。トナーを負荷電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、その他にも、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類等が挙げられる。また、トナーを負帯電性に制御する荷電制御剤としては、下記一般式(2)で表されるアゾ系金属錯体が好ましい。
【0109】
【化2】
Figure 2004271655
【0110】
上記一般式(2)で表される荷電制御剤では、特に、中心金属としてはFe又はCrが好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基、アニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。またカウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
【0111】
またトナーを負帯電性に制御する荷電制御剤としては、下記一般式(3)で表される塩基性有機酸金属錯体も挙げられる。
【0112】
【化3】
Figure 2004271655
【0113】
上記一般式(3)で表される荷電制御剤では、特に、中心金属としてはFe、Cr、Si、Zn、Alが好ましく、置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基、ハロゲンが好ましく、カウンターイオンは水素、アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。
【0114】
上記一般式(3)で表される荷電制御剤の中でもアゾ系金属錯体がより好ましく、さらには下記一般式(4)で表されるアゾ系鉄錯体が最も好ましい。
【0115】
【化4】
Figure 2004271655
【0116】
上記一般式(4)で表されるアゾ系金属錯体の具体例を下記構造式(5)〜(10)を以下に示す。
【0117】
【化5】
Figure 2004271655
【0118】
【化6】
Figure 2004271655
【0119】
【化7】
Figure 2004271655
【0120】
【化8】
Figure 2004271655
【0121】
【化9】
Figure 2004271655
【0122】
【化10】
Figure 2004271655
【0123】
本発明のトナーを正帯電性に制御するものとしては、例えばニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
【0124】
また、下記一般式(11)で表されるモノマーの単重合体;前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合これらの荷電制御剤は、結着樹脂(の全部又は一部)としての作用をも有する。
【0125】
【化11】
Figure 2004271655
【0126】
前記正帯電性の荷電制御剤としては、特に下記一般式(12)で表される化合物が好ましい。
【0127】
【化12】
Figure 2004271655
【0128】
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
【0129】
本発明のトナーは、結着樹脂や着色剤を少なくとも含有するトナー粒子に、粒径の小さな粒子を外添剤として外添することが好ましい。このような外添剤としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン等の無機酸化物や、カーボンブラック、フッ化カーボンの如き粒径の細かい粒子等が挙げられる。
【0130】
シリカ、アルミナ及び酸化チタン微粉体は、トナー粒子表面に分散させたときに細かい粒子となる物が、トナーの流動性を向上させる上で好ましい。このような観点から、前記無機酸化物の粒子は、個数平均粒径が5〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。
【0131】
また前記無機酸化物の粒子は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m/g以上であることが好ましく、60〜400m/gであることがより好ましい。また前記無機酸化物の粒子は、表面を疎水化処理して用いても良く、このような表面処理された無機酸化物の粒子の前記比表面積は、20m/g以上であることが好ましく、40〜300m/gであることがより好ましい。
【0132】
前記無機酸化物の粒子の適用量は、トナー粒子100質量部に対して0.03〜5質量部であることが、トナー粒子の表面を前記粒子で適度に被覆する上で好ましい。
【0133】
前記無機酸化物の粒子は、疎水化度がメタノールウェッタビリティーで30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。好ましい疎水化処理剤としては、含ケイ素表面処理剤であるシラン化合物、及びシリコーンオイルが挙げられる。
【0134】
前記シラン化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシランや、ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジビニルクロルシラン、ジメチルビニルクロルシラン等のシラン化合物が挙げられる。またシリコーンオイルとしては、公知のものを使用することができる。シラン化合物及びシリコーンオイルは併用することも可能である。
【0135】
また、本発明のトナーには、トナーの現像性、耐久性を向上させる観点から、他の無機粉体を外添剤として添加することも好ましい。このような無機粉体としては、例えばマグネシウム、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、クロム、マンガン、ストロンチウム、錫、アンチモン等の金属酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の複合金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム等の金属塩;カオリン等の粘土鉱物;アパタイト等のリン酸化合物;炭化ケイ素、窒化ケイ素等のケイ素化合物;カーボンブラックやグラファイト等の炭素粉末が挙げられる。中でも、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化コバルト、二酸化マンガン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム等が好ましい。
【0136】
さらに、本発明のトナーには、ポリフッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;フッ化カーボン等のフッ素化合物等の滑剤粉末を外添剤として添加することもできる。
【0137】
本発明のトナーは、公知の方法によって製造することができる。本発明のトナーを製造する方法としては、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロールニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて良く混練し、冷却固化後、機械的に粉砕し、粉砕粉を分級する方法が好ましい。
【0138】
他には、結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合法トナー製造法;コア材及びシェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいて、コア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法;結着樹脂溶液中に構成材料を分散した後、噴霧乾燥することによりトナーを得る方法が挙げられる。
【0139】
さらに、前述したこれらの方法によって得られたトナー粒子に、必要に応じ所望の外添剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により十分に混合し、本発明のトナーを製造することができる。
【0140】
本発明のトナーを製造する際に使用される機器としては、特に限定されないが、例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられる。
【0141】
混練機としては、例えばKRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押出機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。
【0142】
粉砕機としては、例えばカウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。
【0143】
分級機としては、例えばクラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。
【0144】
粗粒等をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、例えばウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社製);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
【0145】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。
【0146】
<高分子成分(H)の製造例A−1>
・スチレン 78.5質量部
・アクリル酸n−ブチル 19.0質量部
・メタクリル酸 2.5質量部
・2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシ 1.0質量部
シクロヘキシル)プロパン
上記各成分を、4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し120℃に昇温させた後4時間かけて滴下した。更に、キシレン還流下で重合を完了した。このようにして得られた樹脂をA−1とする。
【0147】
<高分子成分(H)の製造例A−2>
製造例A−1において、スチレン76.0質量部、アクリル酸n−ブチル22.0質量部、メタクリル酸2.0質量部、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン1.5質量部とした以外は製造例A−1と同様にして樹脂A−2を得た。
【0148】
<高分子成分(H)の製造例A−3>
製造例A−1において、スチレン80.0質量部、アクリル酸n−ブチル18.0質量部、メタクリル酸2.0質量部、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.7質量部とした以外は製造例A−1と同様にして樹脂A−3を得た。
【0149】
<高分子成分(H)の製造例A−4>
製造例A−1において、スチレン76.0質量部、アクリル酸n−ブチル17.0質量部、メタクリル酸7.0質量部、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン1.0質量部とした以外は製造例A−1と同様にして樹脂A−4を得た。
【0150】
<高分子成分(H)の製造例A−5>
製造例A−1において、スチレン75.0質量部、アクリル酸n−ブチル23.5質量部、メタクリル酸1.5質量部、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン2.4質量部とした以外は製造例A−1と同様にして樹脂A−5を得た。
【0151】
<低分子成分(L1)の製造例B−1>
製造例A−1において、スチレン80.0質量部、アクリル酸n−ブチル18.5質量部、メタクリル酸1.5質量部、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン1.2質量部とした以外は製造例A−1と同様にして樹脂B−1を得た。
【0152】
そのピーク分子量を表1に示す。
【0153】
<低分子成分(L1)の製造例B−3>
製造例B−1において、ジ−t−ブチルパーオキサイド1.4質量部とした以外は製造例B−1と同様にして樹脂B−3を得た。
【0154】
<低分子成分(L1)の製造例B−4>
製造例B−1において、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン2.0質量部とした以外は製造例B−1と同様にして樹脂B−4を得た。
【0155】
<低分子成分(L2)の製造例C−1>
製造例B−3と同様にC−1を得た。
【0156】
<低分子成分(L2)の製造例C−2>
製造例B−1において、ジ−t−ブチルパーオキサイド2.1質量部とした以外は製造例B−1と同様にして樹脂C−2を得た。
【0157】
<低分子成分(L2)の製造例C−3>
製造例B−1において、ジ−t−ブチルパーオキサイド4.0質量部とした以外は製造例B−1と同様にして樹脂C−3を得た。
【0158】
<低分子成分(L2)の製造例C−4>
製造例B−1において、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.9質量部とした以外は製造例B−1と同様にして樹脂C−4を得た。
【0159】
<低分子成分(L2)の製造例C−5>
製造例B−1において、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.6質量部とした以外は製造例B−1と同様にして樹脂C−5を得た。
【0160】
得られた各樹脂成分のGPCにおけるピーク分子量および酸価の測定を行った。GPCにおける分子量分布は以下の条件で測定した。
【0161】
40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料のTHF溶液を約100μl注入して測定を行った。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料(東ソー社製のF−850、F−80、F−4、A−2500、F−450、F−40、F−2、A−1000、F−288、F−20、F−1、A−500、F−128、F−10、A−5000)により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。カラムとしては、昭和電工社製のshodexGPCKF−801,802,803,804,805,806,807,800Pを組み合わせたものを用いた。
【0162】
GPC測定用の試料は以下のようにして作製した。トナーをTHFに入れ、数時間放置した後、十分振とうして良く混ぜ(トナーの合一体がなくなるまで)、さらに12時間以上放置した。このとき、THF中へのトナーの放置時間が24時間以上となるようにした。その後、サンプル処理フィルター(マイショリディスクH−25−5 東ソー社製)を通過させたものを、GPCの測定試料とした。試料濃度は、樹脂成分が0.1mg/mlとなるように調整した。
【0163】
これら製造例に挙げた樹脂のピーク分子量を表1に示す。
【0164】
【表1】
Figure 2004271655
【0165】
<グリシジル基含有ビニル樹脂の製造例>
・スチレン 79質量部
・アクリル酸n−ブチル 20質量部
・メタクリル酸グリシジル 1質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 5質量部
上記各成分を、4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し120℃に昇温させた後4時間かけて滴下した。更に、キシレン還流後下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去しグリシジル基含有ビニル樹脂を得た。得られたグリシジル基含有ビニル樹脂のエポキシ価は0.078eq/kgであった。
【0166】
[実施例1]
製造例A−1、B−1及びC−1で得られたアクリル酸及びメタクリル酸ユニット含有ビニル樹脂を表2に示す配合比で計100質量部、また製造例に従って得られたグリシジル基含有ビニル樹脂10質量部を更に加え、ヘンシェルミキサーにて混合後、二軸混練押出機にて200℃で混練、冷却粉砕し、結着樹脂1を得た。
【0167】
酸価は、発明の実施の形態において述べた方法と同様の方法を用いて測定した。
【0168】
・上記結着樹脂1 100質量部
・マグネタイト 90質量部
・ポリエチレンワックス 5質量部
・鉄アゾ化合物(5) 2質量部
上記材料をヘンシェルミキサーで十分に前混合した後、130℃に設定した二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、波型形状をもつケーシング及び回転体を備えた機械式微粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕物を更に風力分級機で分級し、重量平均径6.8μmの分級微粉体(トナー粒子)を得た。得られた分級微粉体は、グリシジル基含有ビニル樹脂を添加していないものに比べ、溶融混練時の溶融粘度の上昇がみられ、架橋反応していることを確認した。さらに、カルボキシル基とグリシジル基の反応により、架橋成分が生成し、トナー化による適度な溶融粘度の調整が確認された。
【0169】
この磁性トナー粒子100質量部と、ジメチルジクロロシラン処理した後、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体(BET200m/g)1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合し、目開き150μmのメッシュで篩い負帯電性磁性トナー1を調製した。このトナーの物性を結着樹脂の調整結果と合わせて表2に示した。
【0170】
トナーの重量平均径は、発明の実施の形態において述べた方法と同様の方法を用いて測定した。トナーの重量平均径は表2に示す。
【0171】
次に、この調製された現像剤を以下に示すような方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
【0172】
(画出し試験)
上記トナーをプロセスカートリッジに入れ、ヒューレットパッカード社製レーザービームプリンターLasarJet4100を用いた。このプロセススピードは140mm/secであった。
【0173】
図1に本発明に用いることができるプロセスカートリッジの一例を示す。図1において、1は現像装置、2はトナー容器、3はドラム状の静電潜像保持体(感光体ドラム)、6は現像スリーブ、7はクリーニングブレード、8はトナー層厚規制部材としての弾性ブレード、9はブレード支持部材、13はトナー、14はクリーナ、15は磁石、18はプロセスカートリッジを示す。
【0174】
上記設定条件で高温高湿環境下(32.5℃,相対湿度80%)および低温低湿環境下(15℃,相対湿度10%)において画出し試験(画像形成試験)を行い、得られた画像を下記の項目について評価した。プリント速度は2枚/20secとした。
【0175】
(1)画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m)に10000枚プリントアウトし、プリント開始時及び終了時の画像濃度の評価を行った。なお、画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用い、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
【0176】
(2)カブリ
通常の複写機用普通紙(75g/m)に10000枚プリントアウトし、プリント開始時及び終了時のカブリの評価を行った。リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。数値が低いほどカブリが少ない。
【0177】
(3)低温定着性、耐高温オフセット性の準備
上記トナーをプロセスカートリッジに入れ、ヒューレットパッカード社製レーザービームプリンターLasarJet4100を用いた。このプロセススピードは140mm/secであった。更に加熱加圧ローラー定着器の加熱ローラーの表面温度を130〜240℃まで外部から変更できるように改造する以外は、上述の画出し試験で用いた装置と同様の条件を設定した。この加熱ローラー表面の設定温度を5℃刻みに変更させながら常温常湿環境下(25℃,相対湿度60%)にて画像サンプルのプリントアウトを行った。
【0178】
(4)低温定着性
上記画像サンプルのプリントアウト終了後の試験紙に4.9kPa(50g/cm)の加重をかけながら柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)が10%以下である最低の温度を定着開始温度として評価を行った。なお、試験紙は定着性に厳しい複写機用普通紙(90g/m)を使用した。
【0179】
(5)耐高温オフセット性
画像面積率約5%のサンプル画像をプリントアウトし、画像上の汚れの程度により耐高温オフセット性を評価した。表3には、画像上の汚れの発生しない最高温度を高温オフセットフリー始点として示した。なお、試験紙としてオフセットの発生しやすい複写機用普通紙(60g/m)を使用した。
【0180】
(6)保存性評価
[保存性評価]約10gのトナーを100ccのポリカップに入れ、50℃で3日間放置した後、トナーへの影響を目視で評価した。
A:非常に良好(変化なし)
B:良好 (凝集体が見られるが容易にほぐれる)
C:実用可 (ほぐれにくい)
D:実用不可 (ケーキング)
【0181】
(7)スリーブ融着
上記の画出し試験終了後使用したカートリッジを分解し、スリーブ上を吸引・エアーブローにより清掃した後、スリーブへのトナーの融着状態を目視及び薄紙による拭き取りにより評価した。
A:融着無し
B:若干融着物が見られるが、紙による乾拭きで融着物の除去が可能な状態
C:融着物が帯状についており、紙による乾拭きでは除去できない状態
【0182】
〈実施例2〜12〉
表2に記載されているように混合する結着樹脂の種類及び配合比を変えた以外は、実施例1と同様の方法を用いてトナー2〜12を製造し、トナー1と同様の方法により物性の測定を行った。トナー11に使用した結着樹脂の調整においてはグルシジル含有ビニル樹脂の投入量を2倍に増やし、トナー12に使用した結着樹脂の調整においてはグリシジル含有ビニル樹脂の投入量を1/2にしている。
【0183】
上記実施例に使用した結着樹脂の物性を表2に示す。これらトナー2〜12について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0184】
〈比較例1〉
高分子成分(H)にピーク分子量が85,000であるA−5を用い、結着樹脂の配合比を表2のように調整した以外は、実施例1と同様の方法を用いてトナー13を製造し、トナー1と同様の方法により物性の測定を行った。トナー物性を表2に示した。これらトナー13について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0185】
〈比較例2〉
低分子成分(L1)に高分子成分用に製造したピーク分子量が120,000のA−2をL1として用い、結着樹脂の配合比を表2のように調整した以外は実施例1と同様の方法を用いてトナー14を製造し、トナー1と同様の方法により物性の測定を行った。トナー物性を表2に示す。トナー14について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0186】
〈比較例3〉
低分子成分(L2)に高分子成分用に製造したピーク分子量が27,000のC−5を用い、結着樹脂の配合比を表2のように調整した以外は実施例1と同様の方法を用いてトナー15を製造し、トナー1と同様の方法により物性の測定を行った。トナー物性を表2に示す。トナー15について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0187】
〈比較例4〉
実施例3において、低分子成分(L1)を用いず、結着樹脂の配合比を表2のように調整した以外は実施例1と同様の方法を用いてトナー16を製造し、トナー1と同様の方法により物性の測定を行った。トナー物性を表2に示す。トナー16について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0188】
〈比較例5〉
実施例1において、高分子成分(H)及び低分子成分(L2)を用いず、低分子成分(L1)のみ用いた以外は実施例1と同様の方法を用いてトナー17を製造し、トナー1と同様の方法により物性の測定を行った。トナー物性を表2に示す。トナー17について、実施例1と同様の評価を行った。トナー17の画出し試験においては低温低湿環境でのオフセット現象による画像汚れが顕著であったため画出し試験を中止した。その他、耐高温オフセット性、低温定着性、保存性の評価結果を表3に示す。
【0189】
〈比較例6〉
実施例10において、グリシジル含有ビニル樹脂を結着樹脂の調整にを用いなかった以外は実施例1と同様の方法を用いてトナー18を製造し、トナー1と同様の方法により物性の測定を行った。トナー物性を表2に示す。トナー18について、実施例1と同様の評価を行った。トナー18の画出し試験においては比較例5と同様に低温低湿環境でのオフセット現象による画像汚れが顕著であったため画出し試験を中止した。その他、耐高温オフセット性、低温定着性、保存性の評価結果を表3に示す。
【0190】
【表2】
Figure 2004271655
【0191】
【表3】
Figure 2004271655
【0192】
【発明の効果】
本発明によれば、高画質、高画像濃度を維持し、環境安定性に優れ、高い低温定着性、耐高温オフセット性、及び保存性を持つトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いることができるプロセスカートリッジの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 現像装置
2 トナー容器
3 感光体ドラム
6 現像スリーブ
13 トナー
18 プロセスカートリッジ

Claims (4)

  1. 結着樹脂と着色剤を少なくとも含有するトナーであって、
    該結着樹脂が(1)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基を有するビニル樹脂の混合物、(2)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基を有するビニル樹脂、及び(3)グリシジル基と反応する官能基とグリシジル基とが反応したビニル樹脂を含むグループから選択される1種以上の樹脂を含有する結着樹脂を含み、
    ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分に含まれる分子量分布が100,000を超え、10,000,000未満の領域に少なくとも1つのピーク(PMw(H))を有する高分子体(H)とピーク分子量の異なる2種の低分子体(6,000≦L1ピーク分子量(PMw(L1))≦100,000、3,000≦L2ピーク分子量(PMw(L2))≦20,000、PMw(L1)>PMw(L2))の混合物を含むことを特徴とするトナー。
  2. 高分子体(H)、低分子体L1及びL2の添加量比が以下の関係を満たす請求項1に記載のトナー。(グリシジル含有ビニル樹脂以外の部分の樹脂を100質量部とする)
    H : 10〜50質量部
    L1 : 10〜50質量部
    L2 : 20〜80質量部
  3. 高分子成分(H)、低分子成分(L1及びL2)及びグリシジル含有ビニル樹脂が混合された該結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gである請求項1に記載のトナー。
  4. THF不溶分を1乃至30質量%含有する請求項1に記載のトナー。
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