JP2004270764A - 防汚性樹脂管及び防汚性樹脂更生管 - Google Patents
防汚性樹脂管及び防汚性樹脂更生管 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ヒューム管に代表されるコンクリート管等からなる下水管と比較して油脂分の付着を抑制し、雨天時に油脂分が河川や海へ流出することを防止することができる防汚性樹脂管及び既設の下水管内面をライニングするための防汚性樹脂更生管を提供することを課題とする。
【解決手段】内面の表面粗さRmaxが0〜5.0μmであることを特徴とする既設管内面をライニングするための防汚性樹脂更生管。
【選択図】 なし
【解決手段】内面の表面粗さRmaxが0〜5.0μmであることを特徴とする既設管内面をライニングするための防汚性樹脂更生管。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、含油排水を含む合流式下水道の下水管に好適に用いられる防汚性樹脂管及び既設の下水管内面をライニングするための防汚性樹脂更生管に関する。
【0002】
【従来の技術】
合流式下水道は、家庭や工場等から排出される汚水や降雨時の雨水を集め、下水処理場まで流す下水管からなっている。そこでは、浸水などの災害の発生を未然に防ぐため、集中豪雨などで処理しきれないほどの大量の雨水が流れ込んできた場合、その一部または全部を河川や海などの放流水域に直接放流している。このため、降雨時には河川や海に汚水が流れ込み水質汚濁の一因となっている。近年では、飲食店街等で使用されたラードなどの食用油脂分が下水道管(ヒューム管に代表されるコンクリート管)内表面に付着し、降雨時に付着した油脂分が剥がれ落ち(オイルボールという)、河川や海に流出するという環境問題を引き起こしている。
【0003】
例えば、特許文献1には、飲食店等からでる食用油脂分を排水溜に貯留させ、そこに好気性微生物を流し込み、食用油脂分を分解消滅させる方法が開示されている。
【0004】
しかし、この方法の場合、油脂分解設備を導入していない飲食店や家庭からでる油脂分はそのまま下水管に排出されてしまうため、油脂分の河川や海への流出を抑制するためには必ずしも十分ではない。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−688号公報(特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、ヒューム管に代表されるコンクリート管等からなる下水管と比較して油脂分の付着を抑制し、雨天時に油脂分が河川や海へ流出することを防止することができる防汚性樹脂管及び既設の下水管内面をライニングするための防汚性樹脂更生管を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明(以下、発明1という)による防汚性樹脂更生管は、内面の表面粗さRmaxが0〜5.0μmであることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明(以下、発明2という)による防汚性樹脂管は、内面の表面粗さRmaxが0〜10.0μmであり、且つ、内面の水滴に対する接触角が0〜50度であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明(以下、発明3という)による防汚性樹脂更生管は、上記発明1又は2の防汚性樹脂更生管において、既設管内に挿入された後、加熱され又は加熱され且つ内圧をかけられることにより既設管の内面に密着することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明(以下、発明4という)による防汚性樹脂更生管は、上記発明1又は2の防汚性樹脂更生管において、地上より連続的に帯状体を既設管内に供給し、既設管内に設置した製管機により前記帯状体を連結して製管しながら、既設管内に順次挿入していくことを特徴とする。
【0011】
発明1の防汚性樹脂更生管(以下、単に更生管という)において、表面の平滑性の指標となる内面の表面粗さRmax(以下、Rmaxという)は0〜5.0μmに限定され、好ましくは0.1〜4.0μmであり、さらに好ましくは0.1〜3.0μmである。上記Rmaxが、5.0μmを超えると、油脂分が付着しやすくなり、付着し始めると経時的に付着量が増大してしまう。
【0012】
上記更生管とは、老朽化した既設のコンクリート管、陶管等からなる下水管を補修するための管のことであり、特に限定されることはなく、例えば、既設管の内面をポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂で被覆するライナータイプのものや、樹脂性の帯状体を連結して製管しながら既設管内面をライニングするようなものがある。
【0013】
発明2の防汚性樹脂管(以下、単に樹脂管という)において、内面のRmaxは0〜10.0μmに限定され、好ましくは0.1〜8.0μmであり、さらに好ましくは0.1〜5.0μmである。上記Rmaxが、10.0μmを超えると、油脂分が付着しやすくなり、付着し始めると経時的に付着量が増大してしまう。
【0014】
上記樹脂管又は更生管を成形する金型、樹脂温度、或いは成形条件は、樹脂管又は更生管の内面のRmaxを上記範囲にできるものであれば、特に限定されないが、安定して平滑性を有する樹脂管又は更生管を成形するため、金型の表面粗さは、Rmaxが10μm以下であることが好ましく、そのためにクロムメッキ等の表面処理が施されていてもよい。
【0015】
また、発明2の防汚性樹脂管において、表面の親水性の指標となる内面の水滴に対する接触角が0〜50度に限定され、好ましくは10〜40度である。上記の水滴に対する接触角が50度を超えると、親水性が不十分となり、油脂分が付着しやすくなるため、成形品の外観を損ねることとなる。
【0016】
上記樹脂管の内面を親水化する方法としては、樹脂管内面の水滴に対する接触角が上記範囲内にできるものであれば特に限定されず、例えば、親水化材料を樹脂管内面に塗布することや、樹脂管を多層構造とし最内面に親水性の材料を使用すること等により、樹脂管の内面に親水性の膜又は層を形成させる方法、或いは、樹脂管の成形に使用する樹脂にあらかじめ親水化材料を配合する方法などがある。これらの方法は、単独で用いられても良いし、2種以上の方法が併用されても良い。
【0017】
上記親水化材料としては特に限定されず、酸化チタン等による光触媒物質、親水性機能を有するシリカ等の無機材料、水酸基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、カルボン酸基、ポリエチレングリコール鎖、リン酸基等の親水性の官能基を有する有機材料などがあり、これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0018】
上記親水化材料を上記樹脂管の内面に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、フローコート等の方法がある。
【0019】
上記樹脂管を多層構造とする方法としては特に限定されず、多層押出成形法や射出成形法等により多層成形を行う方法、或いは、単層での成形後に内層を加熱融着させる方法などがある。
【0020】
本発明の樹脂管及び更生管として用いられる樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の有機高分子材料、或いは、不飽和ポリエステル樹脂にガラスファイバーを分散させた各種複合材料等が挙げられるが、成形加工性やコスト等の利点によりポリ塩化ビニルが好適に用いられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。更に、これらの樹脂を他の樹脂との共重合やグラフト重合により複合樹脂としても良い。
【0021】
本発明の樹脂管及び更生管には、必要に応じて、各種添加剤を用いても良く、上記樹脂としてポリ塩化ビニルを用いる時にはこれらの添加剤を添加することが好ましい。上記添加剤としては、安定剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、熱可塑性エラストマー、顔料などがある。
【0022】
上記安定剤としては、熱安定剤、熱安定化助剤などがあり、上記熱安定剤としては特に限定されず、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫系安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜りん酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム−亜鉛系安定剤;バリウム−亜鉛系安定剤などが挙げられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0023】
上記安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、りん酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0024】
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤などがあり、上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。この内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0025】
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。この外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0026】
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば、重量平均分子量10〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などが挙げられる。上記アルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0027】
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム等が挙げられる。
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系樹脂、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
【0028】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0029】
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系等の無機顔料等が挙げられる。
【0030】
また、上記樹脂管又は更生管には、成形時の加工性を向上させる目的で、可塑剤が添加されても良いが、成形品の耐熱性を低下させることがあるため、多量に使用することはあまり好ましくない。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
【0031】
更に、上記樹脂管又は更生管には、施工性を向上させる目的で、熱可塑性エラストマーが添加されても良い。上記熱可塑性エラストマーとしては特に限定されず、例えば、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは、単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0032】
上記樹脂管の形状は特に限定されず、例えば、流路断面が円形、楕円形、卵形でも良いし、円形のものを折りたたんだ形状でも良い。また、帯状体を連結して製管されても良い。
【0033】
発明3による防汚性樹脂更生管は、上記発明1又は2の防汚性樹脂更生管において、既設管内に挿入された後、加熱され又は加熱され且つ内圧をかけられることにより既設管の内面に密着することを特徴とする。
【0034】
発明4による防汚性樹脂更生管は、上記発明1又は2の防汚性樹脂更生管において、地上より連続的に帯状体を既設管内に供給し、既設管内に設置した製管機により前記帯状体を連結して製管しながら、既設管内に順次挿入していくことを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を揚げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「重量部」を意味し、「%」は「重量%」を意味する。
【0036】
(実施例1)
1.アクリル系共重合体の作製
n−ブチルアクリレート95%及びトリメチロールプロパントリアクリレート5%を含有してなるアクリル系混合モノマー2.36kg、乳化分散剤として商品名「ハイテノールN−08」(第一工業製薬社製)の10%水溶液50g及び純水1.5kgからなる乳化モノマー液を予め調製した。
攪拌機及び温度調整機を備えた重合反応器(内容積10リットル)内に、純水4kg、重合開始剤として過硫酸アンモニウムの10%水溶液24gを仕込み、重合容器内を窒素ガスで置換した後、攪拌下、重合反応器内を75℃に昇温した。次いで、予め調製した上記乳化モノマー液を昇温後の重合反応器内に一定の滴下速度で滴下した。乳化モノマー液の全量の滴下を3時間で終了し、その後、1時間攪拌を続けた後、重合反応を終了し、固形分の濃度が30%のアクリル系共重合体エマルジョンを得た。
【0037】
2.複合塩化ビニル系樹脂の作製
攪拌機及び温度調整機を備えた重合反応器(内容積15リットル)内に、純水7.5kg、上記で得られたアクリル系共重合体エマルジョン0.5kg(固形分0.15kg)、乳化分散剤として部分鹸化ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールL−8」、クラレ社製)の3%水溶液330g、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシデカネート及びα−クミルパーオキシネオデカネート各々1.1gを仕込み、重合反応器内の空気を真空ポンプで排出した後、攪拌下、塩化ビニルモノマー3.0kgを添加した。次いで、重合反応器内を50℃に昇温して、グラフト重合反応を開始した。重合反応器内の圧力の低下でグラフト重合反応の終了を確認した後、未反応の塩化ビニルモノマーを排出して、複合塩化ビニル系樹脂を作製した。得られた複合塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルのグラフト量は94%であり、アクリル系共重合体の含有量は6%であった。又、JIS K−6721に準拠して測定した平均重合度は1400であった。
【0038】
3.塩化ビニル系樹脂組成物及び樹脂管の作製
内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業社製)内に、上記で得られた複合塩化ビニル系樹脂100部、熱可塑性エラストマーとしてエチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(商品名「エルバロイ742」、三井デュポンポリケミカル社製)10部、安定剤として有機錫系安定剤(商品名「ONZ−142F」、三共有機社製)2部、滑剤としてポリエチレンワックス系滑剤(商品名「Hiwax220MP」、三井石油化学工業社製)0.5部及びステアリン酸(商品名「S−30」、花王社製)0.5部、及び、加工助剤として商品名「メタブレンP501A」(三菱レイヨン社製)3部を仕込み、均一に攪拌混合して、塩化ビニル系樹脂組成物を作製した。
【0039】
上記で得られた塩化ビニル系樹脂組成物を用い、以下の押出条件で成形を行って樹脂管を作製した。
・押出機:長田製作所社製、SLM50(2軸異方向コニカル押出機)
・金型:パイプ用金型、外径50mm用パイプ作製用
・樹脂流動面クロムメッキ、Rmax=5μm
・押出量:30kg/h
・樹脂温度:195℃(金型入口部での温度)
【0040】
4.更生管の作製
上記(3)で得られた樹脂管を、80℃に加熱されたギアオーブン内に20分間静置した後、得られる更生管の断面が4つ折りの形状になるようにして、この形状を維持したまま、成形体の温度が20℃になるまで冷却して、ライナータイプの塩化ビニル樹脂系の更生管を作製した。
【0041】
(実施例2)
樹脂管の作製において、押出成形時の樹脂温度(金型入口部の温度)を200℃としたこと以外は実施例1と同様にして、更生管を作製した。
【0042】
(実施例3)
樹脂管の作製において、重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含むエマルジョン(商品名「UE−7000」、東亞合成社製)100部に、分子内に重合性不飽和基を有する親水性モノマー(商品名「エレミノールRS−30」三洋化成社製)25部を混合して親水性塗料組成物(エマルジョン)を作製し、樹脂管の内面に塗布した後に、この塗布面に高圧水銀灯を光源とし、出力120W/cmで紫外線を5秒間照射し、コーティング層を光硬化させて親水性皮膜を形成させたこと以外は実施例1と同様にして、更生管を作製した。
【0043】
(実施例4)
樹脂管の作製において、押出成形時の樹脂温度(金型入口部の温度)を200℃としたこと以外は実施例3と同様にして、更生管を作製した。
【0044】
(実施例5)
塩化ビニル系樹脂組成物の作製において、複合塩化ビニル系樹脂の代わりに、塩化ビニル系樹脂(商品名「TS−1000R」、徳山積水社製)とし、また加工助剤(商品名「メタブレンP501A」、三菱レイヨン社製)の添加量を1部としたこと以外は実施例3と同様にして、更生管を作製した。
【0045】
(実施例6)
樹脂管の作製において、シリカ系親水コート剤(商品名「ケミセラコーティング」、トーアテック社製)を樹脂管の内面に塗布し、親水性皮膜を形成させたこと以外は実施例3と同様にして、更生管を作製した。
【0046】
(実施例7)
塩化ビニル系樹脂組成物の作製において、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(商品名「エルバロイ742」、三井・デュポンポリケミカル社製)を添加しなかったこと、及び、更生管(樹脂管)の作製において、金型として、更生管プロファイル作製用金型を用いたこと以外は実施例3と同様にして、更生管(帯状体タイプ)を作製した。
【0047】
(実施例8)
樹脂管(更生管)の作製において、シリカ系親水コート剤(商品名「ケミセラコーティング」、トーアテック社製)を樹脂管の内面に塗布し、親水性皮膜を形成させたこと以外は実施例7と同様にして、更生管(プロファイル)を作製した。
【0048】
(比較例1)
樹脂管の作製において、樹脂管の内面に親水性皮膜を形成させなかったこと以外は実施例5と同様にして、更生管を作製した。
【0049】
(比較例2)
樹脂管の作製において、押出成形時の樹脂温度(金型入口部の温度)を175℃としたこと以外は比較例1と同様にして、更生管を作製した。
【0050】
5.更生管の評価
上記実施例1〜8及び比較例1〜2で得られた更生管の性能を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
(1) 表面粗さRmax
更生管の内面を任意に8箇所選択し、下記の方法により表面粗さを測定し、その平均値を計算し、Rmaxを求めた。即ち、軸方向に8回測定を繰り返し、最大値と最小値を除いた6点の平均値をもって、その個所の平均粗さとし、8箇所の表面粗さの平均値を、そのサンプルのRmaxとした。
・測定機器:東洋精密社製、SURFCOM 1.63
・測定速度:1.5mm/s
・評価長さ:10mm
・カットオフ値:0.25mm
・傾斜補正:R面
・フィルタ種別:ガウシアン
・λsフィルタ:なし
・算出規格:JIS−‘94に準拠
【0051】
(2)親水性
温度23℃、相対湿度50%の室内で、協和界面科学社製の「FACE接触角計CA−X150型」を用い、液滴法によって、更生管の内面の水滴に対する接触角(度)を測定し、その表面の親水性を評価した。
【0052】
(3)油脂分付着性
更生管から50mm×80mmの試料片を切り出し、5重量%のラ−ド水溶液が循環する槽内に、攪拌しつつ液面を常に上下に移動させながら30℃で48時間浸漬し、内表面へのラード付着量(g)を測定した。測定は3回繰り返し、その平均を測定値とした。なお、ラードは雪印乳業社製の「雪印純正ラード」を使用した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1から明らかなように、本発明の実施例による防汚性樹脂更生管は、特定の表面粗さRmax及び特定の水滴に対する接触角を持っているので、油脂分付着を抑制する効果が良好であり、優れた防汚性を有している。因みに、ヒューム管を同様に測定した結果は、表面粗さRmax105.1μm、水滴に対する接触角は40〜50度、油脂付着量は0.66gであった。
【0055】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の防汚性樹脂管及び防汚性樹脂更生管は、優れた防汚性を有しているので、合流式下水道及びその修復に好適に用いられる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、含油排水を含む合流式下水道の下水管に好適に用いられる防汚性樹脂管及び既設の下水管内面をライニングするための防汚性樹脂更生管に関する。
【0002】
【従来の技術】
合流式下水道は、家庭や工場等から排出される汚水や降雨時の雨水を集め、下水処理場まで流す下水管からなっている。そこでは、浸水などの災害の発生を未然に防ぐため、集中豪雨などで処理しきれないほどの大量の雨水が流れ込んできた場合、その一部または全部を河川や海などの放流水域に直接放流している。このため、降雨時には河川や海に汚水が流れ込み水質汚濁の一因となっている。近年では、飲食店街等で使用されたラードなどの食用油脂分が下水道管(ヒューム管に代表されるコンクリート管)内表面に付着し、降雨時に付着した油脂分が剥がれ落ち(オイルボールという)、河川や海に流出するという環境問題を引き起こしている。
【0003】
例えば、特許文献1には、飲食店等からでる食用油脂分を排水溜に貯留させ、そこに好気性微生物を流し込み、食用油脂分を分解消滅させる方法が開示されている。
【0004】
しかし、この方法の場合、油脂分解設備を導入していない飲食店や家庭からでる油脂分はそのまま下水管に排出されてしまうため、油脂分の河川や海への流出を抑制するためには必ずしも十分ではない。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−688号公報(特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、ヒューム管に代表されるコンクリート管等からなる下水管と比較して油脂分の付着を抑制し、雨天時に油脂分が河川や海へ流出することを防止することができる防汚性樹脂管及び既設の下水管内面をライニングするための防汚性樹脂更生管を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明(以下、発明1という)による防汚性樹脂更生管は、内面の表面粗さRmaxが0〜5.0μmであることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明(以下、発明2という)による防汚性樹脂管は、内面の表面粗さRmaxが0〜10.0μmであり、且つ、内面の水滴に対する接触角が0〜50度であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明(以下、発明3という)による防汚性樹脂更生管は、上記発明1又は2の防汚性樹脂更生管において、既設管内に挿入された後、加熱され又は加熱され且つ内圧をかけられることにより既設管の内面に密着することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明(以下、発明4という)による防汚性樹脂更生管は、上記発明1又は2の防汚性樹脂更生管において、地上より連続的に帯状体を既設管内に供給し、既設管内に設置した製管機により前記帯状体を連結して製管しながら、既設管内に順次挿入していくことを特徴とする。
【0011】
発明1の防汚性樹脂更生管(以下、単に更生管という)において、表面の平滑性の指標となる内面の表面粗さRmax(以下、Rmaxという)は0〜5.0μmに限定され、好ましくは0.1〜4.0μmであり、さらに好ましくは0.1〜3.0μmである。上記Rmaxが、5.0μmを超えると、油脂分が付着しやすくなり、付着し始めると経時的に付着量が増大してしまう。
【0012】
上記更生管とは、老朽化した既設のコンクリート管、陶管等からなる下水管を補修するための管のことであり、特に限定されることはなく、例えば、既設管の内面をポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂で被覆するライナータイプのものや、樹脂性の帯状体を連結して製管しながら既設管内面をライニングするようなものがある。
【0013】
発明2の防汚性樹脂管(以下、単に樹脂管という)において、内面のRmaxは0〜10.0μmに限定され、好ましくは0.1〜8.0μmであり、さらに好ましくは0.1〜5.0μmである。上記Rmaxが、10.0μmを超えると、油脂分が付着しやすくなり、付着し始めると経時的に付着量が増大してしまう。
【0014】
上記樹脂管又は更生管を成形する金型、樹脂温度、或いは成形条件は、樹脂管又は更生管の内面のRmaxを上記範囲にできるものであれば、特に限定されないが、安定して平滑性を有する樹脂管又は更生管を成形するため、金型の表面粗さは、Rmaxが10μm以下であることが好ましく、そのためにクロムメッキ等の表面処理が施されていてもよい。
【0015】
また、発明2の防汚性樹脂管において、表面の親水性の指標となる内面の水滴に対する接触角が0〜50度に限定され、好ましくは10〜40度である。上記の水滴に対する接触角が50度を超えると、親水性が不十分となり、油脂分が付着しやすくなるため、成形品の外観を損ねることとなる。
【0016】
上記樹脂管の内面を親水化する方法としては、樹脂管内面の水滴に対する接触角が上記範囲内にできるものであれば特に限定されず、例えば、親水化材料を樹脂管内面に塗布することや、樹脂管を多層構造とし最内面に親水性の材料を使用すること等により、樹脂管の内面に親水性の膜又は層を形成させる方法、或いは、樹脂管の成形に使用する樹脂にあらかじめ親水化材料を配合する方法などがある。これらの方法は、単独で用いられても良いし、2種以上の方法が併用されても良い。
【0017】
上記親水化材料としては特に限定されず、酸化チタン等による光触媒物質、親水性機能を有するシリカ等の無機材料、水酸基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、カルボン酸基、ポリエチレングリコール鎖、リン酸基等の親水性の官能基を有する有機材料などがあり、これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0018】
上記親水化材料を上記樹脂管の内面に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、フローコート等の方法がある。
【0019】
上記樹脂管を多層構造とする方法としては特に限定されず、多層押出成形法や射出成形法等により多層成形を行う方法、或いは、単層での成形後に内層を加熱融着させる方法などがある。
【0020】
本発明の樹脂管及び更生管として用いられる樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の有機高分子材料、或いは、不飽和ポリエステル樹脂にガラスファイバーを分散させた各種複合材料等が挙げられるが、成形加工性やコスト等の利点によりポリ塩化ビニルが好適に用いられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。更に、これらの樹脂を他の樹脂との共重合やグラフト重合により複合樹脂としても良い。
【0021】
本発明の樹脂管及び更生管には、必要に応じて、各種添加剤を用いても良く、上記樹脂としてポリ塩化ビニルを用いる時にはこれらの添加剤を添加することが好ましい。上記添加剤としては、安定剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、熱可塑性エラストマー、顔料などがある。
【0022】
上記安定剤としては、熱安定剤、熱安定化助剤などがあり、上記熱安定剤としては特に限定されず、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫系安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜りん酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム−亜鉛系安定剤;バリウム−亜鉛系安定剤などが挙げられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0023】
上記安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、りん酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0024】
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤などがあり、上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。この内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0025】
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。この外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0026】
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば、重量平均分子量10〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などが挙げられる。上記アルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0027】
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム等が挙げられる。
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系樹脂、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
【0028】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0029】
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系等の無機顔料等が挙げられる。
【0030】
また、上記樹脂管又は更生管には、成形時の加工性を向上させる目的で、可塑剤が添加されても良いが、成形品の耐熱性を低下させることがあるため、多量に使用することはあまり好ましくない。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
【0031】
更に、上記樹脂管又は更生管には、施工性を向上させる目的で、熱可塑性エラストマーが添加されても良い。上記熱可塑性エラストマーとしては特に限定されず、例えば、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは、単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0032】
上記樹脂管の形状は特に限定されず、例えば、流路断面が円形、楕円形、卵形でも良いし、円形のものを折りたたんだ形状でも良い。また、帯状体を連結して製管されても良い。
【0033】
発明3による防汚性樹脂更生管は、上記発明1又は2の防汚性樹脂更生管において、既設管内に挿入された後、加熱され又は加熱され且つ内圧をかけられることにより既設管の内面に密着することを特徴とする。
【0034】
発明4による防汚性樹脂更生管は、上記発明1又は2の防汚性樹脂更生管において、地上より連続的に帯状体を既設管内に供給し、既設管内に設置した製管機により前記帯状体を連結して製管しながら、既設管内に順次挿入していくことを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を揚げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「重量部」を意味し、「%」は「重量%」を意味する。
【0036】
(実施例1)
1.アクリル系共重合体の作製
n−ブチルアクリレート95%及びトリメチロールプロパントリアクリレート5%を含有してなるアクリル系混合モノマー2.36kg、乳化分散剤として商品名「ハイテノールN−08」(第一工業製薬社製)の10%水溶液50g及び純水1.5kgからなる乳化モノマー液を予め調製した。
攪拌機及び温度調整機を備えた重合反応器(内容積10リットル)内に、純水4kg、重合開始剤として過硫酸アンモニウムの10%水溶液24gを仕込み、重合容器内を窒素ガスで置換した後、攪拌下、重合反応器内を75℃に昇温した。次いで、予め調製した上記乳化モノマー液を昇温後の重合反応器内に一定の滴下速度で滴下した。乳化モノマー液の全量の滴下を3時間で終了し、その後、1時間攪拌を続けた後、重合反応を終了し、固形分の濃度が30%のアクリル系共重合体エマルジョンを得た。
【0037】
2.複合塩化ビニル系樹脂の作製
攪拌機及び温度調整機を備えた重合反応器(内容積15リットル)内に、純水7.5kg、上記で得られたアクリル系共重合体エマルジョン0.5kg(固形分0.15kg)、乳化分散剤として部分鹸化ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールL−8」、クラレ社製)の3%水溶液330g、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシデカネート及びα−クミルパーオキシネオデカネート各々1.1gを仕込み、重合反応器内の空気を真空ポンプで排出した後、攪拌下、塩化ビニルモノマー3.0kgを添加した。次いで、重合反応器内を50℃に昇温して、グラフト重合反応を開始した。重合反応器内の圧力の低下でグラフト重合反応の終了を確認した後、未反応の塩化ビニルモノマーを排出して、複合塩化ビニル系樹脂を作製した。得られた複合塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルのグラフト量は94%であり、アクリル系共重合体の含有量は6%であった。又、JIS K−6721に準拠して測定した平均重合度は1400であった。
【0038】
3.塩化ビニル系樹脂組成物及び樹脂管の作製
内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業社製)内に、上記で得られた複合塩化ビニル系樹脂100部、熱可塑性エラストマーとしてエチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(商品名「エルバロイ742」、三井デュポンポリケミカル社製)10部、安定剤として有機錫系安定剤(商品名「ONZ−142F」、三共有機社製)2部、滑剤としてポリエチレンワックス系滑剤(商品名「Hiwax220MP」、三井石油化学工業社製)0.5部及びステアリン酸(商品名「S−30」、花王社製)0.5部、及び、加工助剤として商品名「メタブレンP501A」(三菱レイヨン社製)3部を仕込み、均一に攪拌混合して、塩化ビニル系樹脂組成物を作製した。
【0039】
上記で得られた塩化ビニル系樹脂組成物を用い、以下の押出条件で成形を行って樹脂管を作製した。
・押出機:長田製作所社製、SLM50(2軸異方向コニカル押出機)
・金型:パイプ用金型、外径50mm用パイプ作製用
・樹脂流動面クロムメッキ、Rmax=5μm
・押出量:30kg/h
・樹脂温度:195℃(金型入口部での温度)
【0040】
4.更生管の作製
上記(3)で得られた樹脂管を、80℃に加熱されたギアオーブン内に20分間静置した後、得られる更生管の断面が4つ折りの形状になるようにして、この形状を維持したまま、成形体の温度が20℃になるまで冷却して、ライナータイプの塩化ビニル樹脂系の更生管を作製した。
【0041】
(実施例2)
樹脂管の作製において、押出成形時の樹脂温度(金型入口部の温度)を200℃としたこと以外は実施例1と同様にして、更生管を作製した。
【0042】
(実施例3)
樹脂管の作製において、重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含むエマルジョン(商品名「UE−7000」、東亞合成社製)100部に、分子内に重合性不飽和基を有する親水性モノマー(商品名「エレミノールRS−30」三洋化成社製)25部を混合して親水性塗料組成物(エマルジョン)を作製し、樹脂管の内面に塗布した後に、この塗布面に高圧水銀灯を光源とし、出力120W/cmで紫外線を5秒間照射し、コーティング層を光硬化させて親水性皮膜を形成させたこと以外は実施例1と同様にして、更生管を作製した。
【0043】
(実施例4)
樹脂管の作製において、押出成形時の樹脂温度(金型入口部の温度)を200℃としたこと以外は実施例3と同様にして、更生管を作製した。
【0044】
(実施例5)
塩化ビニル系樹脂組成物の作製において、複合塩化ビニル系樹脂の代わりに、塩化ビニル系樹脂(商品名「TS−1000R」、徳山積水社製)とし、また加工助剤(商品名「メタブレンP501A」、三菱レイヨン社製)の添加量を1部としたこと以外は実施例3と同様にして、更生管を作製した。
【0045】
(実施例6)
樹脂管の作製において、シリカ系親水コート剤(商品名「ケミセラコーティング」、トーアテック社製)を樹脂管の内面に塗布し、親水性皮膜を形成させたこと以外は実施例3と同様にして、更生管を作製した。
【0046】
(実施例7)
塩化ビニル系樹脂組成物の作製において、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(商品名「エルバロイ742」、三井・デュポンポリケミカル社製)を添加しなかったこと、及び、更生管(樹脂管)の作製において、金型として、更生管プロファイル作製用金型を用いたこと以外は実施例3と同様にして、更生管(帯状体タイプ)を作製した。
【0047】
(実施例8)
樹脂管(更生管)の作製において、シリカ系親水コート剤(商品名「ケミセラコーティング」、トーアテック社製)を樹脂管の内面に塗布し、親水性皮膜を形成させたこと以外は実施例7と同様にして、更生管(プロファイル)を作製した。
【0048】
(比較例1)
樹脂管の作製において、樹脂管の内面に親水性皮膜を形成させなかったこと以外は実施例5と同様にして、更生管を作製した。
【0049】
(比較例2)
樹脂管の作製において、押出成形時の樹脂温度(金型入口部の温度)を175℃としたこと以外は比較例1と同様にして、更生管を作製した。
【0050】
5.更生管の評価
上記実施例1〜8及び比較例1〜2で得られた更生管の性能を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
(1) 表面粗さRmax
更生管の内面を任意に8箇所選択し、下記の方法により表面粗さを測定し、その平均値を計算し、Rmaxを求めた。即ち、軸方向に8回測定を繰り返し、最大値と最小値を除いた6点の平均値をもって、その個所の平均粗さとし、8箇所の表面粗さの平均値を、そのサンプルのRmaxとした。
・測定機器:東洋精密社製、SURFCOM 1.63
・測定速度:1.5mm/s
・評価長さ:10mm
・カットオフ値:0.25mm
・傾斜補正:R面
・フィルタ種別:ガウシアン
・λsフィルタ:なし
・算出規格:JIS−‘94に準拠
【0051】
(2)親水性
温度23℃、相対湿度50%の室内で、協和界面科学社製の「FACE接触角計CA−X150型」を用い、液滴法によって、更生管の内面の水滴に対する接触角(度)を測定し、その表面の親水性を評価した。
【0052】
(3)油脂分付着性
更生管から50mm×80mmの試料片を切り出し、5重量%のラ−ド水溶液が循環する槽内に、攪拌しつつ液面を常に上下に移動させながら30℃で48時間浸漬し、内表面へのラード付着量(g)を測定した。測定は3回繰り返し、その平均を測定値とした。なお、ラードは雪印乳業社製の「雪印純正ラード」を使用した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1から明らかなように、本発明の実施例による防汚性樹脂更生管は、特定の表面粗さRmax及び特定の水滴に対する接触角を持っているので、油脂分付着を抑制する効果が良好であり、優れた防汚性を有している。因みに、ヒューム管を同様に測定した結果は、表面粗さRmax105.1μm、水滴に対する接触角は40〜50度、油脂付着量は0.66gであった。
【0055】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の防汚性樹脂管及び防汚性樹脂更生管は、優れた防汚性を有しているので、合流式下水道及びその修復に好適に用いられる。
Claims (4)
- 内面の表面粗さRmaxが0〜5.0μmであることを特徴とする既設管内面をライニングするための防汚性樹脂更生管。
- 内面の表面粗さRmaxが0〜10.0μmであり、且つ、水滴に対する接触角が0〜50度であることを特徴とする防汚性樹脂管。
- 既設管内に挿入された後、加熱され又は加熱され且つ内圧をかけられることにより既設管の内面に密着することを特徴とする請求項1又は2記載の防汚性樹脂更生管。
- 地上より連続的に帯状体を既設管内に供給し、既設管内に設置した製管機により前記帯状体を連結して製管しながら、既設管内に順次挿入していくことを特徴とする請求項1又は2記載の防汚性樹脂更生管。
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