JP2004270114A - ポリエステル偏平断面繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】単糸の断面形状が偏平形状で、該偏平形状は長手方向に丸断面形状の3〜6個が接合したような形状を有している偏平断面繊維とし、該繊維を構成するポリエステルを、特定のチタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒の存在下に芳香族ジカルボキシレートエステルを重縮合して得られるポリエステルとする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソフト感があり、しかも、ベトツキ感がなく、防透性、低通気性、吸水性に優れ、色調が良好で、毛羽の少ない偏平断面繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、繊維を構成する単糸の形状等について数多くの提案がなされており、偏平断面糸は、丸断面糸に比べて、原糸段階で曲げ特性が向上する為、織編物にした際にソフトな風合いが得られることが知られている。しかしながら、偏平断面糸は触ったときの皮膚に接触する単位繊度あたりの面積が丸断面糸に比べて大きくなり、特有のベトツキ感が発現する。
【0003】
かかる問題を解決する為に、その偏平形状を、例えば、特許文献1に提案されている、長手方向に丸断面形状が接合したような形状(以下、団子状偏平断面と称する場合もある)を有とすることが考えられる。
【0004】
しかし、ポリエステルの溶融紡糸においては、紡糸時間の経過と共に、紡糸口金吐出孔周辺に異物(以下、単に口金異物と称する場合もある)が発現し、付着・堆積し、溶融ポリマーの正常な流れを阻害し、吐出糸条の屈曲、ピクツキ、旋回等(以下、単に異常吐出現象と称する場合もある)が進行し、ついには吐出ポリマー糸条が紡糸口金面に付着して断糸するという現象が起こることが知られている。
【0005】
特に、上記のように異形化された偏平断面繊維を溶融紡糸する際には、一般的に丸断面形状の吐出孔とスリット状の吐出孔が連結したような口金孔が使用されるが、吐出孔のスリット部を通過するポリマーの流速が丸断面部を通過するポリマーのそれよりも早くなる為、単なる丸断面繊維を溶融紡糸する場合よりも上述の口金異物が短時間で付着・堆積し、溶融ポリマー流れの曲がり現象(ベンディング)が発生し、これが原因となって紡糸、延伸工程における毛羽および/または断糸といった工程トラブルだけでなく、上記偏平形状の成形が不安定になり、品質トラブルも引き起こすという問題がある。このため、紡糸引き取り操作を一定間隔で中断し、紡糸口金吐出孔周辺に付着・堆積した口金異物を拭き取る作業を頻繁に実施しなければならないという問題がある。
【0006】
このような口金異物の付着・堆積原因は、ポリエステル中に存在するアンチモンに起因することが知られているが、そのアンチモンは、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートの触媒として、優れた重縮合触媒性能を有する、また色調の良好なポリエステルが得られるなどの理由から、実際に最も広く使用されている。
【0007】
一方、該アンチモン化合物以外の重縮合触媒として、チタンテトラブトキシドのようなチタン化合物を用いることも提案されているが、このようなチタン化合物を使用した場合、上記のような、口金異物の付着・堆積は減少するが、ポリエステル自身の黄色味が強くなり、ポリエステル繊維として衣料用途に使用できない色調となる。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−96136号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、ソフト感があり、従来の偏平断面繊維からなる織編物の欠点であったベトツキ感が無く、しかも、防透性、低通気性、吸水性、耐磨耗性も兼ね備えており、色調が良好で、毛羽の少ない高品質のポリエステル偏平断面繊維を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究したところ、ポリエステルの重縮合触媒を適正化したポリエステルを用いることにより、上記のような団子状偏平断面を有する偏平断面繊維を、形状を損なわず、かつ、毛羽や断糸をほとんど発生させず、安定して製造できることを見出した。これにより、ベトツキ感がない偏平断面繊維が得られ、しかも、該繊維は、防透性、低通気性、吸水性、耐磨耗性も兼ね備えており、色相にも優れたものであった。
【0011】
かくして、本発明によれば、単糸の断面形状が偏平形状であり、該偏平形状は長手方向に丸断面形状の3〜6個が接合したような形状を有している偏平断面繊維であって、該繊維が、チタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒の存在下に芳香族ジカルボキシレートエステルを重縮合して得られるポリエステルからなり、該チタン化合物成分が下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシド及び下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシドと下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む成分であり、該リン化合物が下記一般式(III)で表される化合物であり、チタンとリンの含有濃度が下記数式(1)及び(2)を同時に満足することを特徴とするポリエステル偏平断面繊維が提供される。
【0012】
【化6】
【0013】
【化7】
【0014】
【化8】
【0015】
【数2】
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル偏平断面繊維は、単糸の断面形状が偏平形状であり、該偏平形状は長手方向に丸断面形状の3〜6個が接合したような形状を有している偏平断面繊維である。ここで“接合したような”とは、現実にその溶融紡糸の段階で接合されることを示しているのでは無く、結果として“接合したような”形状を有しているという意味である。また、ここで“丸断面形状”とは、真円に限らず楕円形も含まれる。
【0017】
本発明の偏平断面繊維の断面形状を図1により説明する。図1(a)〜(f)は偏平断面繊維の断面形状を模式的に示したものであり、(a)は3個、(b)は4個、(c)は5個の丸断面形状が接合したような形状を示している。
【0018】
すなわち、本発明の偏平断面繊維の断面形状は、長手方向(長軸方向)に丸断面形状が接合したような形状であり、長軸を軸として凸部と凸部(山と山)、凹部と凹部(谷と谷)が対称に互いに重なり合う形をしており、上記のように丸断面形状の数は3〜6個である。丸断面形状の数が2個の場合には、単に丸断面繊維を布帛にした場合に近いソフト性しか得られず、防透性、低通気性、吸水性も悪くなる。一方、丸断面形状の数が7個を超えると、繊維が割れ易くなり、耐磨耗性が低下する。
【0019】
本発明においては、上記ポリエステル偏平断面繊維が、チタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒の存在下に芳香族ジカルボキシレートエステルを重縮合して得られるポリエステルからなり、該チタン化合物成分が下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシド及び下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシドと下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む成分であり、該リン化合物が後述する下記一般式(III)で表される化合物であることが肝要である。これにより、上記のような偏平断面形状を有する繊維を、形状を損なうことなく安定して製造でき、ベトツキ感が無く、防透性、低通気性、吸水性、耐摩耗性をも兼ね備えた偏平断面繊維とすることができる。また、上記ポリエステルを用いることにより、製糸性が良好であるため毛羽が少なく、しかも色調にも優れた、極めて品質の高いポリエステル偏平断面繊維とすることができる。
【0020】
この本発明で用いられる、重縮合反応に触媒として用いられるチタン化合物成分は、最終製品の触媒に起因する異物を低減する観点から、ポリマー中に可溶なチタン化合物であることが必要であり、該チタン化合物成分としては、下記一般式(I)で表される化合物、若しくは一般式(II)で表される化合物と下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物である必要がある。
【0021】
【化9】
【0022】
【化10】
【0023】
ここで、一般式(I)で表されるチタンアルコキシドとしては、具体的にはテトライソプロポキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラフェノキシチタン、オクタアルキルトリチタネート、及びヘキサアルキルジチタネートなどが好ましく用いられる。
【0024】
また、本発明の該チタンアルコキシドと反応させる一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物が好ましく用いられる。
【0025】
上記チタンアルコキシドと芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させる場合には、溶媒に芳香族多価カルボン酸又はその無水物の一部または全部を溶解し、この混合液にチタンアルコキシドを滴下し、0〜200℃の温度で少なくとも30分間、好ましくは30〜150℃の温度で40〜90分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力については特に制限はなく、常圧で十分である。なお、芳香族多価カルボン酸またはその無水物を溶解させる溶媒としては、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン及びキシレン等から所望に応じていずれを用いることもできる。
【0026】
ここで、チタンアルコキシドと芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応モル比には特に限定はないが、チタンアルコキシドの割合が高すぎると、得られるポリエステルの色調が悪化したり、軟化点が低下したりすることがあり、逆にチタンアルコキシドの割合が低すぎると重縮合反応が進みにくくなることがある。このため、チタンアルコキシドと芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応モル比は、2/1〜2/5の範囲内とすることが好ましい。
【0027】
本発明で用いられる重縮合用の触媒系は、上記のチタン化合物成分と、下記一般式(III)により表されるリン化合物とを含むものであり、両者の未反応混合物から実質的になるものである。
【0028】
【化11】
【0029】
上記一般式(III)のリン化合物(ホスホネート化合物)としては、カルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボブトキシメタンホスホン酸、カルボメトキシフェニルメタンホスホン酸、カルボエトキシフェニルメタンホスホン酸、カルボプロトキシフェニルメタンホスホン酸、カルボブトキシフェニルメタンホスホン酸等のホスホン酸誘導体のジメチルエステル類、ジエチルエステル類、ジプロピルエステル類、ジブチルエステル類等から選ばれることが好ましい。
【0030】
上記のホスホネート化合物は、通常安定剤として使用されるリン化合物に比較して、チタン化合物との反応が比較的緩やかに進行するので、反応中における、チタン化合物の触媒活性持続時間が長く、結果として該チタン化合物のポリエステルへの添加量を少なくすることができる。また、一般式(III)のリン化合物を含む触媒系に多量に安定剤を添加しても、得られるポリエステルの熱安定性を低下させることがなく、その色調を不良化することが無い。
【0031】
本発明では、上記のチタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒が、下記数式(1)及び(2)を同時に満足するものである必要がある。
【0032】
【数3】
【0033】
ここで、(P/Ti)は1以上15以下であるが、2以上15以下であることが好ましく、さらには10以下であることが好ましい。この(P/Ti)が1未満の場合、ポリエステルの色相が黄味を帯びたものであり、好ましくない。また、(P/Ti)が15を越えるとポリエステルの重縮合反応性が大幅に低下し、目的とするポリエステルを得ることが困難となる。この(P/Ti)の適正範囲は通常の金属触媒系よりも狭いことが特徴的であるが、適正範囲にある場合、本発明のような従来にない効果を得ることができる。
【0034】
一方、(Ti+P)は10以上100以下であるが、20以上70以下であることがより好ましい。(Ti+P)が10に満たない場合は、製糸プロセスにおける生産性が大きく低下し、満足な性能が得られなくなる。また、(Ti+P)が100を越える場合には、触媒に起因する異物が少量ではあるが発生し好ましくない。
【0035】
上記式中、Tiの量としては2〜15ミリモル%程度が適当である。 本発明で用いられているポリエステルポリマーは、上記のチタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒の存在下に芳香族ジカルボキシレートエステルを重縮合して得られるポリマーであるが、本発明においては、芳香族ジカルボキシレートエステルが、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールからなるジエステルであることが好ましい。
【0036】
ここで芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸を主とすることが好ましい。より具体的には、テレフタル酸が全芳香族ジカルボン酸を基準として70モル%以上を占めていることが好ましく、さらには該テレフタル酸は、全芳香族ジカルボン酸を基準として80モル%以上を占めていることが好ましい。ここでテレフタル酸以外の好ましい芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0037】
もう一方の脂肪族グリコールとしては、アルキレングリコールであることが好ましく、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンメチレングリコール、ドデカメチレングリコールを用いることができるが、特にエチレングリコールであることが好ましい。
【0038】
本発明ではポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートであることが特に好ましい。ここでポリエステルが、テレフタル酸とエチレングリコールからなるエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルであることも好ましい。ここで「主たる」とは該エチレンテレフタレート繰り返し単位がポリエステル中の全繰り返し単位を基準として70モル%以上を占めていることをいう。
【0039】
また本発明で用いるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールからなる主たる繰り返し単位以外に、酸成分またはジオール成分としてポリエステルを構成する成分を共重合した、共重合ポリエステルとしてもよい。
【0040】
共重合する成分としては、酸成分として、上記の芳香族ジカルボン酸はもちろん、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などの二官能性カルボン酸成分又はそのエステル形成性誘導体を原料として使用することができる。また、共重合するジオール成分としては上記の脂肪族ジオールはもちろん、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式グリコール、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類などの芳香族ジオールなどを原料として使用することができる。
【0041】
さらに、トリメシン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能性化合物を原料として共重合させ使用することができる。
これらは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明においては、上記のような芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールからなる芳香族ジカルボキシレートエステルが用いられるが、この芳香族ジカルボキシレートエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとのジエステル化反応により得ることもできるし、あるいは芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステルと脂肪族グリコールとのエステル交換反応により得ることもできる。ただし、芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステルを原料とし、エステル交換反応を経由する方法とした方が、芳香族ジカルボン酸を原料としジエステル化反応させる方法に比較し、重縮合反応中に安定剤として添加したリン化合物の飛散が少ないという利点がある。
【0043】
さらに、チタン化合物の一部及び/又は全量をエステル交換反応開始前に添加し、エステル交換反応触媒と重縮合反応触媒との二つの触媒として兼用させることが好ましい。このようにすることにより、最終的にポリエステル中のチタン化合物の含有量を低減することができる。ポリエチレンテレフタレートの例で、さらに具体的に述べると、テレフタル酸を主とする芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステルとエチレングリコールとのエステル交換反応を、下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシド、及び下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシドと下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むチタン化合物成分の存在下に行い、このエステル交換反応により得られた、芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールとのジエステルを含有する反応混合物に、更に下記一般式(III)により表されるリン化合物を添加し、これらの存在下に重縮合することが好ましい。
【0044】
【化12】
【0045】
【化13】
【0046】
【化14】
【0047】
なお、該エステル交換反応を行う場合には通常は常圧下で実施されるが、0.05〜0.20MPaの加圧下に実施すると、チタン化合物成分の触媒作用による反応が更に促進され、かつ副生物のジエチレングリコールが大量に発生することもないので、熱安定性などの特性が更に良好なものとなる。温度としては160〜260℃が好ましい。
【0048】
また、本発明において、芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸である場合には、ポリエステルの出発原料としてテレフタル酸及びテレフタル酸ジメチルが用いられるが、その場合にはポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって得られた回収テレフタル酸ジメチル又はこれを加水分解して得られる回収テレフタル酸を、ポリエステルを構成する全酸成分を基準として70重量%以上使用することもできる。この場合、前記ポリアルキレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましく、特に回収されたPETボトル、回収された繊維製品、回収されたポリエステルフィルム製品、さらには、これら製品の製造工程において発生するポリマー屑などをポリエステル製造用原料源とする再生ポリエステルを用いることは、資源の有効活用の観点から好ましいことである。
【0049】
ここで、回収ポリアルキレンテレフタレートを解重合してテレフタル酸ジメチルを得る方法には特に制限はなく、従来公知の方法をいずれも採用することができる。また、上記、回収された、テレフタル酸ジメチルからテレフタル酸を回収する方法にも特に制限はなく、従来方法のいずれを用いてもよい。テレフタル酸に含まれる不純物については、4−カルボキシベンズアルデヒド、パラトルイル酸、安息香酸及びヒドロキシテレフタル酸ジメチルの含有量が、合計で1ppm以下であることが好ましい。また、テレフタル酸モノメチルの含有量が、1〜5000ppmの範囲にあることが好ましい。回収されたテレフタル酸と、アルキレングリコールとを直接エステル化反応させ、得られたエステルを重縮合することによりポリエステルを製造することができる。
本発明では、ポリエステルが上記のような再生ポリエステルであることがより好ましい。
【0050】
本発明で用いられるポリエステルの固有粘度は、0.40〜0.80の範囲にあることが好ましく、さらに0.45〜0.75、特に0.50〜0.70の範囲が好ましい。固有粘度が0.40未満であると、繊維の強度が不足するため好ましくない。他方、固有粘度が0.80を越えると、原料ポリマーの固有粘度を過剰に引き上げる必要があり不経済である。
【0051】
本発明で用いるポリエステルは、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、艶消剤等を含んでいてもよく、特に艶消剤として酸化チタン、安定剤としての酸化防止剤は好ましく添加され、酸化チタンとしては、平均粒径が0.01〜2μmの酸化チタンを、最終的に得られるポリエステル組成物中に0.01〜10重量%含有させるように添加することが好ましい。
【0052】
また、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤が好ましいが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量は1重量%以下であることが好ましい。1重量%を越えると製糸時のスカムの原因となり得る他、1重量%を越えて添加しても溶融安定性向上の効果が飽和してしまう為好ましくない。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量は0.005〜0.5重量%の範囲が更に好ましい。またこれらヒンダードフェノール系酸化防止とチオエーテル系二次酸化防止剤を併用して用いることも好ましく実施される。
【0053】
該酸化防止剤のポリエステルへの添加方法は特に制限はないが、好ましくはエステル交換反応、またはエステル化反応終了後、重合反応が完了するまでの間の任意の段階で添加する方法が挙げられる。
【0054】
また、本発明においてはポリエステルが、無機粒子を0.2〜10重量%含有していることが、防透性をより向上でき好ましい。
【0055】
次に図2を用いて説明する。本発明においては、偏平断面繊維の長軸の幅Aと該長軸に直行する短軸の最大幅Bの比A/Bで表される偏平度が、3〜6であることが好ましい。3より小さい場合は、ソフト感が低下する傾向にあり、6より大きい場合は、ベトツキ感が生じる傾向にあり、好ましくない。
【0056】
また、本発明においては、ベトツキ感を無くし、吸水性を向上させる点から、偏平断面繊維の短軸の最大幅Bと最小幅C(丸断面形状の接合部の最小の幅)の比B/Cで表される異型度が、1<B/C<5であることが好ましい。すなわち、本発明の偏平断面繊維の凹部を毛細管現象により、水分が拡散する為、丸断面繊維と比較して優れた吸水性能が得られるが、異型度1の場合は単なる偏平繊維となり、ベトツキ感が生じ、吸水性も無くなる。B/Cが5以上の場合、ベトツキ感は無く、吸水性も付与できるが、丸断面形状の接合部が短くなり過ぎ、偏平断面繊維の強度が低下し、断面が割れ易くなる等、別の欠点が生じて来るため、B/Cは1<B/C<5とするのが好ましく、より好ましくは1.1≦B/C≦2である。
【0057】
本発明の偏平断面繊維の単糸繊度、及び該偏平断面繊維で構成されるマルチフィラメントの総繊度は特に規定していないが、本発明の偏平断面繊維を衣料用途に用いる場合は、単糸繊度は0.3〜3.0dtex、マルチフィラメントの総繊度は30〜200dtexとするのが好ましい。
【0058】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。実施例における各項目は次の方法で測定した。
【0059】
(1)固有粘度
オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定した。
【0060】
(2)ポリエステル中のチタン、リン含有量
ポリエステルサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平面を有する成型体に形成し、蛍光X線測定装置(理学電機工業株式会社製3270型)に供して、定量分析した。
【0061】
ただし、艶消し剤として酸化チタンを添加したポリマー中のチタン原子濃度については、サンプルをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、遠心分離機で前記溶液から酸化チタン粒子を沈降させ、傾斜法により上澄み液のみを回収し、溶剤を蒸発させて供試サンプルを調整し、このサンプルについて測定した。
【0062】
(3)ジエチレングリコール(DEG)量
抱水ヒドラジンを用いてポリマーを分解し、ガスクロマトグラフィ−(株式会社日立製作所製「263−70」)を用い、常法に従って測定した。
【0063】
(4)ソフト性
触感による官能評価を行い、3:柔らかく極めて良好、2:良好、1:粗硬感あり不良と判断した。
【0064】
(5)防透性
L値を測定し、△L=白板を使用した際のL値−黒板を使用した際のL値を算出し、数値の低いもの程、防透性に優れていると判断した。
【0065】
(6)通気性
JIS L−1096−79−6.27 通気性A法に準拠し、フラジール型通気量測定器を用いて測定した。
【0066】
(7)吸水性
JIS1096「バイレック法」により測定した。
【0067】
(8)耐磨耗性
マーチンデール磨耗試験機で3000回摩擦しても布帛の磨耗が見られないものを良好と判断し、磨耗の認められるものを不良と判断した。
【0068】
(9)(L*−b*)値
ポリエステル繊維を12ゲージ丸編機で30cm長の筒編みとし、マクベス社製カラー測定装置(Macbeth COLOR−EYE)を用い、L*値、b*値を測定し、その差を(L*−b*)値とした。
【0069】
(10)毛羽数(個/106m)
パッケージ巻き(あるいはパーン巻き)としたポリエステル繊維250個を毛羽検出装置付きの整経機に掛けて400m/minの速度で、42時間整経引き取りした。整経機が停止するごとに、目視で毛羽の有無を確認し、確認された毛羽の全個数を繊維糸条長106m当たりに換算し、毛羽数とした。
【0070】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール70部との混合物に、テトラ−n−ブチルチタネート(TBT)0.009部を加圧反応が可能なステンレス製容器に仕込み、0.07MPaの加圧を行い140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、トリエチルホスホノアセテート(TEPA)0.035部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0071】
その後、反応生成物を重合容器に移し、290℃まで昇温し、26.67Pa以下の高真空にて重縮合反応を行い、ポリエチレンテレフタレートを得た。この際、反応の途中で、ポリエステル全重量を基準として、2.5重量%となるように、艶消し剤としてニ酸化チタンを添加した。また、このポリエチレンテレフタレートの固有粘度は0.62、ジエチレングリコール量は1.5%であった。さらに得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従いペレット化した。
【0072】
このポリエチレンテレフタレートペレットを、図1に示す単糸断面形状となる吐出孔を36個有した紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度3000m/minで引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度85℃、熱セット温度120℃、延伸倍率1.67の条件で延伸し、5000m/minの速度で巻き取り、単繊度2.4dtex、総繊度86dtexの本発明の偏平断面繊維からなるマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントを110本/2.54cmの織密度、経緯無撚で製織し、平織物とした後、定法に従い、染色加工をし、得られた布帛について、上記の各方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例2〜3、比較例1〜4]
実施例1において、紡糸口金を交換し、吐出孔を図1の(b)〜(f)および丸断面の単糸断面形状が得られるものに変更した以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0074】
[比較例5]
テレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール70部との混合物に、酢酸カルシウム一水和物0.064重量部を加圧反応が可能なステンレス製容器に仕込み、0.07MPaの加圧を行い140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、56重量%濃度のリン酸水溶液0.044重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0075】
その後、反応生成物を重合容器に移し、三酸化二アンチモンを表に示す量を添加して290℃まで昇温し、26.67Pa以下の高真空にて重縮合反応を行ってポリエチレンテレフタレートを得た。この反応の際、実施例1と同様に二酸化チタンを添加した。さらに得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従いペレット化した。
【0076】
実施例1において、上記ポリエチレンテレフタレートのペレットを用いたこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、ソフトな風合い有し、しかもベトツキ感がないといった感性に加え、防透性、低通気性、吸水性、耐摩耗性といった様々な機能性も同時に併せ持ち、しかも毛羽が少なく、色調にも優れた極めて高品質のポリエステル偏平断面繊維を提供することができる。このため、該ポリエステル偏平断面繊維は、白衣等のユニフォーム、ブラウス、ジャケット、スーツ、パンツ等の一般衣料、ランジェリー、ファンデーション、肌着等のインナー衣料、スポーツ衣料、裏地、婦人・紳士衣料などの幅広い用途に展開できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリエステル偏平断面繊維の単糸断面の模式図を示すものであり、図1(a)〜(f)はそれぞれ下記のことを示している。
(a)本発明のポリエステル繊維を構成する単糸の断面図
(b)本発明のポリエステル繊維を構成する単糸の断面図
(c)本発明のポリエステル繊維を構成する単糸の断面図
(d)2つの山を有する偏平糸の断面図
(e)7つの山を有する偏平糸の断面図
(f)偏平断面糸の断面図
【図2】ポリエステル偏平断面繊維の単糸断面の模式図を示すものであり、各寸法を説明するものである。
【符号の説明】
A 長軸の幅
B 短軸の最大幅
C 短軸の最小幅
Claims (6)
- 単糸の断面形状が偏平形状であり、該偏平形状は長手方向に丸断面形状の3〜6個が接合したような形状を有している偏平断面繊維であって、該繊維が、チタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒の存在下に芳香族ジカルボキシレートエステルを重縮合して得られるポリエステルからなり、該チタン化合物成分が下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシド及び下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシドと下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む成分であり、該リン化合物が下記一般式(III)で表される化合物であり、チタンとリンの含有濃度が下記数式(1)及び(2)を同時に満足することを特徴とするポリエステル偏平断面繊維。
- ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである、請求項1または2に記載のポリエステル偏平断面繊維。
- ポリエステルが、無機粒子を0.2〜10重量%含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル偏平断面繊維。
- 単糸の断面において、長軸の幅Aと該長軸に直行する短軸の最大幅Bとの比A/Bで表される偏平度が、3〜6である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル偏平断面繊維。
- 単糸の断面において、短軸の最大幅Bと最小幅C(丸断面形状の接合部で最小の幅)との比B/Cで表される異形度が、1より大きく、かつ、5未満である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル偏平断面繊維。
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