JP2004277917A - ポリエステル繊維織物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステル繊維から構成される織物であって、該ポリエステルが、特定のチタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒の存在下に芳香族ジカルボキシレートエステルを重縮合して得られるポリエステルポリマーであり、リン元素/チタン金属元素の含有量のモル比が1〜15であり、その合計が繰り返し単位あたり10〜100ミリモル%である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル繊維織物に関し、さらに詳しくは、紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸しても口金付着物の発生量が非常に少ないポリエステル繊維から構成され、その伸度のバラツキが可及的に減少された、土木資材や産業資材などの用途に好適に使用可能なポリエステル繊維織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、繊維、フィルム、その他の成形物に広く利用されている。
【0003】
例えばポリエチレンテレフタレートは、通常テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させて、テレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させ、次いでこの反応生成物を重合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることによって製造されている。また、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレートも上記と同様の方法によって製造されている。
【0004】
ところがこれらの重縮合反応段階で使用する触媒の種類によっては、反応速度および得られるポリエステルの品質が大きく左右されることはよく知られており、ポリエチレンテレフタレートの重縮合触媒としては、アンチモン化合物が、優れた重縮合触媒性能を有し、かつ、色調の良好なポリエステルが得られるなどの理由から最も広く使用されている。
【0005】
しかしながら、アンチモン化合物を重縮合触媒として使用した場合、ポリエステルを長時間にわたって連続的に溶融紡糸すると、口金孔周辺に異物(以下、単に口金異物と称することがある。)が付着堆積し、溶融ポリマー流れの曲がり現象(ベンディング)が発生し、これが原因となって紡糸、延伸工程において毛羽、断糸あるいは繊維物性の斑などが発生したり、得られる繊維に歪が内在され、この繊維を編物とした際に、その物性の均一性が低下するという問題がある。
【0006】
特に、伸度のバラツキが製品の品質に重大な影響を及ぼす土木資材や産業資材などの用途においては、上記の口金異物の堆積に起因する繊維物性の不均一性の内在は致命的な欠点になる恐れもある。
【0007】
この問題を回避するため、該アンチモン化合物以外の重縮合触媒として、チタンテトラブトキシドのようなチタン化合物を用いることが提案されているが、このようなチタン化合物を使用した場合、熱的安定性が悪く、溶融時の劣化が激しい為に繊維の高タフネス化が難しい。また、得られたポリエステル自身が黄色く変色しており、繊維用途に使用したとき、得られた繊維の色調が悪化するという新たな問題が発生する。
【0008】
このような問題を解決するために、例えば特公昭59−46258号公報にはチタン化合物とトリメリット酸とを反応させて得られた生成物を、また特開昭58−38722号公報にはチタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物を、それぞれポリエステル製造用触媒として使用することが開示されている。確かに、これら方法によれば、ポリエステルの溶融熱安定性はある程度向上しているものの、得られるポリマーの色調が十分なものではなく、したがってポリマー色調のさらなる改善が望まれている。
【0009】
さらに、特開平7−138354号公報においては、チタン化合物とリン化合物との錯体をポリエステル製造用触媒とすることが提案されていており、この方法によれば溶融熱安定性もある程度は向上するものの、その効果は十分なものではなく、得られるポリマーの色調も改善が必要であるという問題があった。
【0010】
なお、これらのチタン−リン系触媒は、その触媒自身がポリエステルポリマー中に異物として残留することが多く、この問題についても解決されることが望まれていた。
【0011】
【特許文献1】
特公昭59−46258号公報
【0012】
【特許文献2】
特開昭58−38722号公報
【0013】
【特許文献3】
特開平7−138354号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術が有する問題点を解消し、紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸しても口金付着物の発生量が非常に少ないポリエステル繊維から構成されることにより、その伸度のバラツキが可及的に減少された、土木資材や産業資材などの用途に好適に使用可能なポリエステル繊維織物を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するためにポリエステルの製造に用いられる重縮合触媒について鋭意研究し、検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明によれば、ポリエステル繊維から構成される織物であって、該ポリエステル繊維が、チタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒の存在下に芳香族ジカルボキシレートエステルを重縮合して得られるポリエステルポリマーからなり、該チタン化合物成分が、下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシド及び下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシドと下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む成分であり、且つ該リン化合物が下記一般式(III)で表される化合物であると共に、チタンとリンの含有濃度が下記数式(1)及び(2)を同時に満足することを特徴とするポリエステル繊維織物が提供される。
【0017】
【化6】
【0018】
【化7】
【0019】
【化8】
【0020】
【数2】
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明のポリエステル繊維織物は、ポリエステル繊維から構成されており、該ポリエステルポリマーはチタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒の存在下に芳香族ジカルボキシレートエステルを重縮合して得られるポリマーである。
【0023】
そして本発明で用いられるチタン化合物成分は、下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシド及び下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシドと下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む成分である。
【0024】
この本発明で用いられる、重縮合反応に触媒として用いられるチタン化合物成分は、最終製品の触媒に起因する異物を低減する観点から、ポリマー中に可溶なチタン化合物であることが必要であり、該チタン化合物成分としては、下記一般式(I)で表される化合物、若しくは一般式(II)で表される化合物と下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物である必要がある。
【0025】
【化9】
【0026】
【化10】
【0027】
ここで、一般式(I)で表されるチタンアルコキシドとしては、具体的にはテトライソプロポキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラフェノキシチタン、オクタアルキルトリチタネート、及びヘキサアルキルジチタネートなどが好ましく用いられる。
【0028】
また、本発明の該チタンアルコキシドと反応させる一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物が好ましく用いられる。
【0029】
上記チタンアルコキシドと芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させる場合には、溶媒に芳香族多価カルボン酸又はその無水物の一部または全部を溶解し、この混合液にチタンアルコキシドを滴下し、0〜200℃の温度で少なくとも30分間、好ましくは30〜150℃の温度で40〜90分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力については特に制限はなく、常圧で十分である。なお、芳香族多価カルボン酸またはその無水物を溶解させる溶媒としては、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン及びキシレン等から所望に応じていずれを用いることもできる。
【0030】
ここで、チタンアルコキシドと芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応モル比には特に限定はないが、チタンアルコキシドの割合が高すぎると、得られるポリエステルの色調が悪化したり、軟化点が低下したりすることがあり、逆にチタンアルコキシドの割合が低すぎると重縮合反応が進みにくくなることがある。このため、チタンアルコキシドと芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応モル比は、2/1〜2/5の範囲内とすることが好ましい。
【0031】
本発明で用いられる重縮合用の触媒系は、上記のチタン化合物成分と、下記一般式(III)により表されるリン化合物とを含むものであり、両者の未反応混合物から実質的になるものである。
【0032】
【化11】
【0033】
上記一般式(III)のリン化合物(ホスホネート化合物)としては、カルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボブトキシメタンホスホン酸、カルボメトキシフェニルメタンホスホン酸、カルボエトキシフェニルメタンホスホン酸、カルボプロトキシフェニルメタンホスホン酸、カルボブトキシフェニルメタンホスホン酸等のホスホン酸誘導体のジメチルエステル類、ジエチルエステル類、ジプロピルエステル類、ジブチルエステル類等から選ばれることが好ましい。
【0034】
上記のホスホネート化合物は、通常安定剤として使用されるリン化合物に比較して、チタン化合物との反応が比較的緩やかに進行するので、反応中における、チタン化合物の触媒活性持続時間が長く、結果として該チタン化合物のポリエステルへの添加量を少なくすることができる。また、一般式(III)のリン化合物を含む触媒系に多量に安定剤を添加しても、得られるポリエステルの熱安定性を低下させることがなく、その色調を不良化することが無い。
【0035】
本発明では、上記のチタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒が、下記数式(1)及び(2)を同時に満足するものである必要がある。
【0036】
【数3】
【0037】
ここで、(P/Ti)は1以上15以下であるが、2以上15以下であることが好ましく、さらには2以上10以下であることが好ましい。この(P/Ti)が1未満の場合、ポリエステルの色相が黄味を帯びたものとなるので、好ましくない。また、(P/Ti)が15を越えるとポリエステルの重縮合反応性が大幅に低下し、目的とするポリエステルを得ることが困難となる。この(P/Ti)の適正範囲は通常の金属触媒系よりも狭いことが特徴的であるが、適正範囲にある場合、本発明のような従来にない効果を得ることができる。
【0038】
一方、(Ti+P)は10以上100以下であるが、20以上70以下であることがより好ましい。(Ti+P)が10に満たない場合は、製糸プロセスにおける生産性が大きく低下し、満足な性能が得られなくなる。また、(Ti+P)が100を越える場合には、触媒に起因する異物が少量ではあるが発生し好ましくない。
【0039】
上記式中、Tiの量としては2〜15ミリモル%程度が適当である。
【0040】
本発明で用いられているポリエステルポリマーは、上記のチタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒の存在下に芳香族ジカルボキシレートエステルを重縮合して得られるポリマーであるが、本発明においては、芳香族ジカルボキシレートエステルが、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールからなるジエステルであることが好ましい。
【0041】
ここで芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸を主とすることが好ましい。より具体的には、テレフタル酸が全芳香族ジカルボン酸を基準として70モル%以上を占めていることが好ましく、さらには該テレフタル酸は、全芳香族ジカルボン酸を基準として80モル%以上を占めていることが好ましい。ここでテレフタル酸以外の好ましい芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0042】
もう一方の脂肪族グリコールとしては、アルキレングリコールであることが好ましく、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンメチレングリコール、ドデカメチレングリコールを用いることができるが、特にエチレングリコールであることが好ましい。
【0043】
本発明ではポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートであることが特に好ましい。ここでポリエステルが、テレフタル酸とエチレングリコールからなるエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルであることも好ましい。ここで「主たる」とは該エチレンテレフタレート繰り返し単位がポリエステル中の全繰り返し単位を基準として70モル%以上を占めていることをいう。
【0044】
また本発明で用いるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールからなる主たる繰り返し単位以外に、酸成分またはジオール成分としてポリエステルを構成する成分を共重合した、共重合ポリエステルとしてもよい。
【0045】
共重合する成分としては、酸成分として、上記の芳香族ジカルボン酸はもちろん、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などの二官能性カルボン酸成分又はそのエステル形成性誘導体を原料として使用することができる。また、共重合するジオール成分としては上記の脂肪族ジオールはもちろん、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式グリコール、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類などの芳香族ジオールなどを原料として使用することができる。
【0046】
さらに、トリメシン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能性化合物を原料として共重合させ使用することができる。
【0047】
これらは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明においては、上記のような芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールからなる芳香族ジカルボキシレートエステルが用いられるが、この芳香族ジカルボキシレートエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとのジエステル化反応により得ることもできるし、あるいは芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステルと脂肪族グリコールとのエステル交換反応により得ることもできる。ただし、芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステルを原料とし、エステル交換反応を経由する方法とした方が、芳香族ジカルボン酸を原料としジエステル化反応させる方法に比較し、重縮合反応中に安定剤として添加したリン化合物の飛散が少ないという利点がある。
【0049】
さらに、チタン化合物の一部及び/又は全量をエステル交換反応開始前に添加し、エステル交換反応触媒と重縮合反応触媒との二つの触媒として兼用させることが好ましい。このようにすることにより、最終的にポリエステル中のチタン化合物の含有量を低減することができる。ポリエチレンテレフタレートの例で、さらに具体的に述べると、テレフタル酸を主とする芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステルとエチレングリコールとのエステル交換反応を、下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシド、及び下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシドと下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むチタン化合物成分の存在下に行い、このエステル交換反応により得られた、芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールとのジエステルを含有する反応混合物に、更に下記一般式(III)により表されるリン化合物を添加し、これらの存在下に重縮合することが好ましい。
【0050】
【化12】
【0051】
【化13】
【0052】
【化14】
【0053】
なお、該エステル交換反応を行う場合には通常は常圧下で実施されるが、0.05〜0.20MPaの加圧下に実施すると、チタン化合物成分の触媒作用による反応が更に促進され、かつ副生物のジエチレングリコールが大量に発生することもないので、熱安定性などの特性が更に良好なものとなる。温度としては160〜260℃が好ましい。
【0054】
また、本発明において、芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸である場合には、ポリエステルの出発原料としてテレフタル酸及びテレフタル酸ジメチルが用いられるが、その場合にはポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって得られた回収テレフタル酸ジメチル又はこれを加水分解して得られる回収テレフタル酸を、ポリエステルを構成する全酸成分の質量を基準として70質量%以上使用することもできる。この場合、前記ポリアルキレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましく、特に回収されたPETボトル、回収された繊維製品、回収されたポリエステルフィルム製品、さらには、これら製品の製造工程において発生するポリマー屑などをポリエステル製造用原料源とする再生ポリエステルを用いることは、資源の有効活用の観点から好ましいことである。
【0055】
ここで、回収ポリアルキレンテレフタレートを解重合してテレフタル酸ジメチルを得る方法には特に制限はなく、従来公知の方法をいずれも採用することができる。また、上記、回収された、テレフタル酸ジメチルからテレフタル酸を回収する方法にも特に制限はなく、従来方法のいずれを用いてもよい。テレフタル酸に含まれる不純物については、4−カルボキシベンズアルデヒド、パラトルイル酸、安息香酸及びヒドロキシテレフタル酸ジメチルの含有量が、合計で1ppm以下であることが好ましい。また、テレフタル酸モノメチルの含有量が、1〜5000ppmの範囲にあることが好ましい。回収されたテレフタル酸と、アルキレングリコールとを直接エステル化反応させ、得られたエステルを重縮合することによりポリエステルを製造することができる。
【0056】
本発明では、ポリエステルが上記のような再生ポリエステルであることがより好ましい。
【0057】
本発明で用いられるポリエステルの固有粘度は、0.40〜0.80の範囲にあることが好ましく、さらに0.45〜0.75、特に0.50〜0.70の範囲が好ましい。固有粘度が0.40未満であると、繊維の強度が不足するため好ましくない。他方、固有粘度が0.80を越えると、原料ポリマーの固有粘度を過剰に引き上げる必要があり不経済である。
【0058】
本発明で用いるポリエステルは、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、艶消剤等を含んでいてもよく、特に艶消剤として酸化チタン、安定剤としての酸化防止剤は好ましく添加され、酸化チタンとしては、平均粒径が0.01〜2μmの酸化チタンを、最終的に得られるポリエステル組成物中に0.01〜10重量%含有させるように添加することが好ましい。
【0059】
また、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤が好ましいが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量は1重量%以下であることが好ましい。1重量%を越えると製糸時のスカムの原因となり得る他、1重量%を越えて添加しても溶融安定性向上の効果が飽和してしまう為好ましくない。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量は0.005〜0.5重量%の範囲が更に好ましい。またこれらヒンダードフェノール系酸化防止とチオエーテル系二次酸化防止剤を併用して用いることも好ましく実施される。
【0060】
該酸化防止剤のポリエステルへの添加方法は特に制限はないが、好ましくはエステル交換反応、またはエステル化反応終了後、重合反応が完了するまでの間の任意の段階で添加する方法が挙げられる。
【0061】
上記した方法で得られたポリエステルポリマーを繊維とするには、格別な方法を採用する必要はなく、従来公知のポリエステルの溶融紡糸法を任意に採用することができる。ここで紡出する繊維の横断面における形状は円形であっても異形であってもどちらでもよい。また、該ポリエステル繊維は、その繊度が500dtex以上、強度が5.0cN/dtex以上であることが好ましい。
【0062】
本発明のポリエステル繊維織物は、上記ポリエステル繊維を少なくとも一部に用いて、製織される。この際、織物の組織としては、平織、斜文織、朱子織など、従来公知の組織を用いることができる。
【0063】
上記方法により得られた本発明のポリエステル織物は、盛土補強用、遮水シート、洗堀防止シート等の土木シートに代表される土木資材、或いはエアバッグ、シートベルト、テント、建築用シート、テープ、ターポリン、リボン、抄紙、キャンバス、セールクロス、ろ過布、車輌幌、鞄地、レザー地、布粘着テープ、電気絶縁テープ、半導電テープ、電気資材に代表される産業資材などの用途に好適に使用できる。
【0064】
【実施例】
以下、本発明を更に下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により何等限定を受けるものではない。なお、実施例中の各物性値は以下の方法に従って求めた。
【0065】
(1)固有粘度:
ポリエステルポリマーの固有粘度は、35℃オルソクロロフェノール溶液にて、常法に従って35℃において測定した粘度の値から求めた。
【0066】
(2)ポリエステル中のチタン、リン含有量:
サンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平面を有する成型体に形成し、蛍光X線測定装置(理学電機工業株式会社製3270型)に供して、定量分析した。
【0067】
(3)ジエチレングリコール(DEG)量:
抱水ヒドラジンを用いてポリマーを分解し、ガスクロマトグラフィー(株式会社日立製作所製「263−70」)を用い、常法に従って測定した。
【0068】
(4)繊維の強伸度:
JIS L 1013記載の方法に準拠して測定した。
【0069】
(5)紡糸口金に発生する付着物の層:
ポリエステルをチップ形状となし、これを290℃で溶融し、孔径0.15mmφ、孔数12個の紡糸口金から吐出し、600m/分で2日間連続で紡糸した後に、口金の吐出口外縁に発生する付着物の層の高さを測定した。この付着物層の高さが大きいほど吐出されたポリエステルメルトのフィラメント状流にベンディングが発生しやすく、このポリエステルの成形性は低くなる。すなわち、紡糸口金に発生する付着物層の高低は、当該ポリエステルの成形性の指標であり、0μに近い方が当然ながら成形性は良好である。
【0070】
(6)織物の強伸度
JIS L 1096に規定される方法に準じて、幅3cm、長さ20cmの試験長にて測定した。
【0071】
(7)伸度のバラツキの測定
任意に30点のサンプルを取り出し、経緯それぞれの伸度を測定し、平均値を算出した後、許容範囲内である±5%以内に入らないサンプル数をそれぞれ数えた。
【0072】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール70部との混合物に、テトラ−n−ブチルチタネート0.009部を加圧反応が可能なステンレス製容器に仕込み、0.07MPaの加圧を行い140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、トリエチルホスホノアセテート0.04部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0073】
その後、反応生成物を重合容器に移し、290℃まで昇温し、26.67Pa以下の高真空にて重縮合反応を行って、固有粘度0.60、ジエチレングリコール量が1.5%であるポリエステルを得た。得られたポリエステルポリマーの品質を表1に示す。
【0074】
次に得られたポリエステルを常法に従いチップ化し、乾燥した。さらにこのチップを用い、常法に従って紡糸した後、冷却、オイリング、延伸して500デシテックス、250フィラメントのポリエステル延伸糸を得た。
【0075】
次いで、ウォータージェットルーム織機を用い、得られた延伸糸を経糸及び緯糸に配して、経密度が53本/インチ、緯密度が同じく53本/インチの平織物に製織した後、精練、加熱セットを施した。
【0076】
次に、金属ロールの温度が180℃の、一対の金属ロール/弾性ロールカレンダーを用い、線圧が約20N/cm、速度6m/分の条件で上記平織物をカレンダー加工してエアバッグ用の基布を得た。
【0077】
得られた繊維の性能を表2に、得られた織物の性能を表3に示す。該織物はエアバッグとして使用するにあたり何ら問題の無く、伸度のバラツキも少ないものであった。
【0078】
[比較例1]
テレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール70部との混合物に、酢酸カルシウム一水和物0.064重量部を加圧反応が可能なステンレス製容器に仕込み、0.07MPaの加圧を行い140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、56重量%濃度のリン酸水溶液0.044重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0079】
その後、反応生成物を重合容器に移し、三酸化二アンチモンを表に示す量を添加して290℃まで昇温し、(26.67Pa)以下の高真空にて重縮合反応を行ってポリエステルを得た。得られたポリエステルポリマーの品質を表1に示す。
【0080】
次に得られたポリエステルを常法に従いチップ化し、乾燥した。さらにこのチップを用い、常法に従って紡糸した後、冷却、オイリング、延伸して500デシテックス、250フィラメントのポリエステル延伸糸を得た。
【0081】
次いで、実施例1と同様の操作を行なって、エアバッグ用の基布を得た。
【0082】
得られた繊維の性能を表2に、得られた織物の性能を表3に示す。該織物はエアバッグとして使用するにあたり何ら問題の無く、伸度のバラツキも少ないものであった。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸しても口金付着物の発生量が非常に少なく、その伸度のバラツキが可及的に減少された、土木資材や産業資材などの用途に好適に使用可能なポリエステル繊維織物が提供される。
Claims (5)
- ポリエステル繊維から構成される織物であって、該ポリエステル繊維が、チタン化合物成分とリン化合物とを含む触媒の存在下に芳香族ジカルボキシレートエステルを重縮合して得られるポリエステルポリマーからなり、該チタン化合物成分が、下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシド及び下記一般式(I)で表されるチタンアルコキシドと下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む成分であり、且つ該リン化合物が下記一般式(III)で表される化合物であると共に、チタンとリンの含有濃度が下記数式(1)及び(2)を同時に満足することを特徴とするポリエステル繊維織物。
- ポリエステルポリマーが、ポリエチレンテレフタレートである請求項1又は2記載のポリエステル繊維織物。
- ポリエステル繊維の繊度が500dtex以上、強度が5.0cN/dtex以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル繊維織物。
- ポリエステルが再生ポリエステルである請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル繊維織物。
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CN110129959A (zh) * | 2019-05-29 | 2019-08-16 | 浙江航民股份有限公司 | 节能环保型再生涤面料的制备方法 |
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2003
- 2003-03-14 JP JP2003070081A patent/JP2004277917A/ja active Pending
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