JP2004269642A - ポリオレフィンマクロモノマーおよびその製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(I)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端にスチリル基を有するポリオレフィンマクロモノマー。
【化1】
式(I)中、Wはヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基、例えばカルボン酸エステル基、アミド基、エーテル基またはカルバミン酸エステル基であり、PはCH2=CHR1(R1は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である。〕
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチリル基を末端に有するポリオレフィンマクロモノマーおよびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンは、軽量かつ安価な上に、優れた物性と加工性を持つという特性を有する反面、印刷性、塗装性、耐熱性、耐衝撃性および他の極性を有するポリマーとの相溶性などの高機能性を付与するという観点ではその高い化学的安定性が妨げとなっている。この欠点を補い、ポリオレフィンに機能性を持たせる方法として、例えばラジカル重合法によりオレフィンと酢酸ビニル、メタクリル酸エステルなどの極性モノマーを共重合する方法や、過酸化物の存在下にポリオレフィンに無水マレイン酸などの極性モノマーをグラフトさせる方法が知られている。しかしながら、これらの方法は得られるポリマー中におけるポリオレフィン部分の構造を精密に制御することが困難であり、ポリオレフィン本来の優れた物性を保持するには不充分であった。
【0003】
構造が精密に制御されたポリオレフィン部分を有し、かつポリオレフィンのみでは発現し得ない機能を有するポリマーを製造する手段の一つとして、末端に重合性のビニル結合を有するポリオレフィンマクロモノマーを用い、それを単独重合あるいは官能基を持った様々なビニルモノマーと共重合させることによりポリオレフィン側鎖を有するグラフトポリマーとする方法が考えられる。このようなグラフトポリマーを合成するためのポリオレフィンマクロモノマーを製造する方法としては、例えば特開平6−329720号公報には、リビング重合法を利用して合成したポリエチレンの末端に重合性のアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入する方法が記載されている。また、特開平4−252218号公報および特開平8−176354号公報、特開平8−176415号公報には、リビング重合法を利用して合成したポリプロピレン系重合体の末端に重合性のスチリル基を導入する方法が開示されている。
【0004】
前述のリビング重合を用いた方法では、一つの触媒活性点から一本の重合体しか得られず、ポリオレフィンの分子量分布(Mw/Mn)は約1になる。しかしながら生産性の点からは一つの触媒活性点から得られる重合体の数は多いほど好ましく、重合体の成形加工面からはポリオレフィンの分子量分布(Mw/Mn)は広い方が好ましい。したがって、リビング重合の利用は工業的な量産を考えると経済的に十分満足すべき方法とは言い難い。しかも、特開平6−329720号公報に記載の方法ではアルキルリチウムを用いたアニオン重合法を利用しているため、マクロモノマーとして製造できるポリオレフィンは最大で1000量体程度の比較的低分子量のポリエチレンであり、また、特開平8−176354号公報に記載の方法ではオレフィン重合触媒として特定の構造を有するバナジウム化合物を用いるために製造できるポリオレフィンの種類はポリプロピレン系重合体に限られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状において本発明者らは、生産性に優れ、様々なα−オレフィンの単独重合体あるいは共重合体から成り、かつ広範な分子量領域をカバーし得るポリオレフィンマクロモノマーを開発すべく鋭意検討した結果、ポリオレフィン製造用触媒として工業的に広く用いられている固体状チタン触媒やメタロセン触媒などに代表される遷移金属化合物を成分として含有する配位重合触媒により製造したポリオレフィンの末端に反応性の高い官能基を導入し、さらにスチリル基を導入する方法を見出し、新規なポリオレフィンマクロモノマーを工業的に有利な方法で製造する製造法を発明するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明に係るポリオレフィンマクロモノマーの製造法について具体的に説明する。本発明の下記一般式(I)
【0007】
【化4】
〔式(I)中、Wはヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基であり、PはCH2=CHR1(R1は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である。〕
で示される、ポリオレフィン鎖Pの末端にスチリル基を有するポリオレフィンマクロモノマーは、下記一般式(II)
【0008】
【化5】
〔式(II)中、Xはハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基から選ばれる官能基を含む基である。〕で示されるスチレン誘導体と、下記一般式(III)
【0009】
【化6】
〔式(III)中、Pは式(I)と同一であり、Yは水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、酸無水物基から選ばれる官能基である。〕で示される官能基含有ポリオレフィンとを反応させることにより得られる。
【0010】
上記一般式(II)で示されるスチレン誘導体の具体例としては、例えばm−クロロスチレン、p−クロロスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、m−ヨードスチレン、p−ヨードスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、m−ブロモメチルスチレン、p−ブロモメチルスチレン、m−ヨードメチルスチレン、p−ヨードメチルスチレン、p−(2−クロロエチル)スチレン、p−(2−ブロモエチル)スチレン、p−(3−クロロプロピル)スチレン、p−(3−ブロモプロピル)スチレン、p−(4−クロロブチル)スチレン、p−(4−ブロモブチル)スチレン、p−(5−クロロペンチル)スチレン、p−(5−ブロモペンチル)スチレン、p−(6−クロロヘキシル)スチレン、p−(6−ブロモヘキシル)スチレンなどのハロゲン含有スチレン類、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシメチルスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−(2−ヒドロキシエチル)スチレン、p−(3−ヒドロキシプロピル)スチレン、p−(4−ヒドロキシブチル)スチレンなどの水酸基含有スチレン類、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、(3−ビニルフェニル)酢酸、(4−ビニルフェニル)酢酸、3−(4−ビニルフェニル)プロピオン酸、4−(4−ビニルフェニル)ブタン酸、5−(4−ビニルフェニル)ペンタン酸、6−(4−ビニルフェニル)ヘキサン酸などのカルボキシル基含有スチレン類、3−ビニル安息香酸クロリド、4−ビニル安息香酸クロリド、3−ビニル安息香酸ブロミド、4−ビニル安息香酸ブロミド、3−ビニル安息香酸ヨージド、4−ビニル安息香酸ヨージド、(3−ビニルフェニル)酢酸クロリド、(4−ビニルフェニル)酢酸クロリド、3−(4−ビニルフェニル)プロピオン酸クロリド、4−(4−ビニルフェニル)ブタン酸クロリド、5−(4−ビニルフェニル)ペンタン酸クロリド、6−(4−ビニルフェニル)ヘキサン酸クロリドなどの酸ハロゲン化物基含有スチレン類、3−ビニルアニリン、4−ビニルアニリン、3−ビニルベンジルアミン、4−ビニルベンジルアミン、2−(4−ビニルフェニル)エチルアミン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルアミン、4−(4−ビニルフェニル)ブチルアミン、5−(4−ビニルフェニル)ペンチルアミンなどのアミノ基含有スチレン類、グリシジル−(3−ビニルベンジル)エーテル、グリシジル−(4−ビニルベンジル)エーテルなどのエポキシ基含有スチレン類、3−イソシアナートスチレン、4−イソシアナートスチレン、3−イソシアナートメチルスチレン、4−イソシアナートメチルスチレン、4−(2−イソシアナートエチル)スチレン、4−(3−イソシアナートプロピル)スチレン、4−(4−イソシアナートブチル)スチレンなどのイソシアナート基含有スチレン類などが挙げられる。
【0011】
上記一般式(III)で示される官能基含有ポリオレフィンは、例えば、a)13族元素を含む基を有するポリオレフィンを製造し、次いで該ポリオレフィンの13族元素を含む基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行った後加溶媒分解するか、または、b)該ポリオレフィンの13族元素を含む基を加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行った後加溶媒分解することにより製造することができるが、本発明ではこれらの方法に何ら限定されるものではない。以下、上記製造方法について詳細に説明する。
【0012】
13族元素を含む基を有するポリオレフィンの製造
13族元素を含む基を有するポリオレフィンの製造方法は、(A)13族元素を含む化合物の存在下で公知重合触媒によってオレフィン重合する方法と、(B)末端に不飽和結合を持つポリオレフィンと13族元素を含む化合物と反応によって製造する方法に大別される。以下、各々について説明する。
【0013】
〔(A)13族元素を含む化合物の存在下でオレフィン重合する方法〕
13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、例えば既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒を用いて13族元素を含む化合物の存在下、CH2=CHR1で示されるオレフィンを単独重合または共重合させて製造される。R1は、炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子である。
このようなCH2 =CHR1 で示されるオレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンなどが挙げられる。
【0014】
13族元素を含む化合物としては、例えば有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば下記式(IV)で示される有機アルミニウム化合物を例示することができる。
【0015】
【化7】
〔式(IV)中、Ra は炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、Aはハロゲンまたは水素であり、nは1〜3である。〕
Ra は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などである。
【0016】
このような有機アルミニウム化合物として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;トリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムジハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。
また有機アルミニウム化合物として、下記式(V)で示される化合物を用いることもできる。
【0017】
【化8】
上記式(V)において、Ra は上記と同様であり、Bは−ORb 基、−OSiRc 3 基、−OAlRd 2 基、−NRe 2 基、−SiRf 3 基または−N(Rg )AlRh 2 基であり、nは1〜2であり、Rb 、Rc 、Rd およびRh はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、Re は水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、RfおよびRgはメチル基、エチル基などである。
【0018】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物を例示できる。
(i)Ra nAl(ORb)3−nで表される化合物、例えば、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなど、(ii)Ra nAl(OSiRc)3−nで表される化合物、例えば、Et2Al(OSiMe3)、(iso−Bu)2Al(OSiMe3)、(iso−Bu)2Al(OSiEt3)など、(iii)Ra nAl(OAlRd 2)3−nで表される化合物、例えば、 Et2AlOAlEt2、(iso−Bu)2AlOAl(iso−Bu)2 など、(iv)Ra nAl(NRe 2)3−nで表される化合物、例えば、Me2AlNEt2、Et2AlNHMe、Me2AlNHEt 、Et2AlN(Me3Si)2 、(iso−Bu)2AlN(Me3Si)2 など、(v)Ra n Al(SiRf 3)3−nで表される化合物、例えば、(iso−Bu)2AlSiMe3など、(vi)Ra n Al〔N(Rg )−AlRh 2 〕3−nで表される化合物、例えば、Et2AlN(Me)−AlEt2、(iso−Bu)2AlN(Et)Al(iso−Bu)2 など。
【0019】
また、これに類似した化合物、例えば酸素原子、窒素原子を介して2以上のアルミニウムが結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。より具体的には、(C2H5)2AlOAl(C2H5)2 、(C4H9)2AlOAl(C4H9)2 、(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2、など、さらにメチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類(有機アルミニウムオキシ化合物)を挙げることができる。
また、下記式(VI)の有機アルミニウム化合物を用いることもできる。
【0020】
【化9】
〔Ra、A、Bは上記式(IV)または(V)と同様である。〕
【0021】
13族元素を含む化合物として、有機ホウ素化合物を用いることもできる。有機ホウ素化合物としては、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロン、テキシルボラン、ジシクロヘキシルボラン、ジシアミルボラン、ジイソピノカンフェニルボラン、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、カテコールボラン、B−ブロモ−9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、ボラン−トリエチルアミン錯体、ボラン−メチルスルフィド錯体などが挙げられる。
【0022】
また、有機ホウ素化合物としてイオン性化合物を使用してもよい。このような化合物としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモンニウム]ノナボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモンニウム]デカボレートなどが挙げられる。
また、これらの13族元素を含む化合物は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いることもできる。
【0023】
〔(B)末端に不飽和結合を持つポリオレフィンから製造する方法〕
また、13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、末端に不飽和結合を持つポリオレフィンを用いて製造することもできる。具体的には、末端が不飽和結合であるポリオレフィンと、13族元素を含む化合物、例えば有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物とを反応させて、13族元素を含む基を有するポリオレフィンとする方法である。
【0024】
片末端が不飽和結合であるポリオレフィン(末端不飽和ポリオレフィン)は、例えば既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒の存在下に炭素原子数2〜20のオレフィンを重合または共重合させて製造することができる。炭素原子数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどが好ましく用いられる。
このようにして得られた末端不飽和ポリオレフィンと13族元素を含む化合物を反応させて13族元素を含む基を有するポリオレフィンに変換する。なお、得られたポリオレフィンが、片末端に13族元素が結合したものと、片末端が不飽和結合末端であるものとの混合物である場合にも、必要に応じて、片末端が不飽和結合末端であるポリオレフィンの末端を13族元素が結合した末端に変換してもよい。
【0025】
反応に用いられる13族元素を含む化合物は、有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物が好ましく用いられる。中でも、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライドまたは1つ以上の水素−ホウ素結合を有するホウ素化合物であることがより好ましく、有機アルミニウムとしてはジアルキルアルミニウムハイドライドが特に好ましく、有機ホウ素化合物としては9−ボラビシクロ[3,3,1]ノナンが特に好ましい。
【0026】
片末端が不飽和結合末端であるポリオレフィンと、13族元素を含む化合物との反応は、例えば以下のようにして行われる。
(i) 末端がビニリデン基であるポリプロピレン0.1〜50gと、ジイソブチルアルミニウムハイドライドの0.01〜5モル/リットル−オクタン溶液を5〜1000ミリリットルとを混合し、0.5〜6時間還流させる。
(ii) 末端がビニリデン基であるポリプロピレン0.1〜50gと、5〜1000ミリリットルの無水テトラヒドロフランと、0.1〜50ミリリットルの9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンの0.05〜10モル/リットル−テトラヒドロフラン溶液とを混合し、20〜65℃で0.5〜24時間攪拌する。
以上のようにして、13族元素を含む基を有するポリオレフィンが製造される。
【0027】
一般式( III )で示される官能基含有ポリオレフィンへの変換
このようにして製造された13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、
(方法a)該ポリオレフィンの13族元素を含む基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解するか、または、
(方法b)該ポリオレフィンの13族元素を含む基を加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解することにより、一般式(III)におけるYが水酸基である下記一般式(VII)で示されるポリオレフィンに変換することができる。
【0028】
【化10】
式中、Pは前記と同様である。
【0029】
(方法a)で用いられる、官能基構造を有する化合物としては、ハロゲンガス、メチルクロロホルミエート、フタル酸クロライドなどが挙げられる。また、(方法b)で用いられる、加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物としては、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素などが挙げられる。
【0030】
上記のようにして得られた13族元素を含む基を有するポリオレフィンの13族元素を含む基と、官能基構造を有する化合物または加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応は、通常0〜300℃、好ましくは10〜200℃の温度で、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間行われる。置換反応を行った後、加溶媒分解する際の温度は、通常0〜100℃、好ましくは10〜80℃の温度であり、加溶媒分解時間は、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間である。加溶媒分解に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、水などが挙げられる。
【0031】
また、上記一般式(III)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Yがエポキシ基であるポリオレフィンは、前記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンを、例えば特開昭63−305104号公報などに示される方法を用いて不飽和結合をエポキシ化することによっても製造することができる。
具体的には、上記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンに、1) ギ酸、酢酸などの有機酸と過酸化水素との混合物を反応させる、あるいは、2) m−クロロ過安息香酸などの有機過酸化物を反応させることによって製造することができる。
【0032】
さらに、上記一般式(III)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Yが酸無水物基であるポリオレフィンは、上記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンを、例えばMakromol. Chem. Macromol. Symp., 48/49, 317 (1991)、あるいはPolymer, 43, 6351 (2002) などに示される方法を用いて、例えば無水マレイン酸などと熱反応させることにより末端に酸無水物を導入する方法を用いて製造することができる。
また、上記一般式(III)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Yがカルボキシル基であるポリオレフィンは、上記一般式(VII)で示される水酸基を有するポリオレフィンを酸化することにより水酸基をカルボキシル基に変換する方法を用いて製造することができる。
【0033】
また、上記一般式(III)で示される官能基を有するポリオレフィンは、既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒を用い、CH2=CHR1で示されるオレフィンと官能基を有するオレフィン類とを共重合することによっても製造することが可能である。R1は、炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子である。
【0034】
このようなCH2 =CHR1 で示されるオレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンなどが挙げられる。
共重合に用いられる官能基を有するオレフィン類としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、10−ウンデセン−1−オールなどの炭化水素部分が直鎖状である不飽和アルコール類、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸などの不飽和カルボン酸類、アリルアミン、5−ヘキセンアミン、6−ヘプテンアミンなどの不飽和アミン類、(2,7−オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物および上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸無水物基に置き換えた化合物などの不飽和酸無水物類、上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸ハライド基に置き換えた化合物などの不飽和カルボン酸ハライド類、4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセンなどの不飽和エポキシ化合物類などが挙げられる。
【0035】
上記一般式(I)で示されるポリオレフィン鎖Pの末端にスチリル基を有するポリオレフィンマクロモノマーを製造する際の、上記一般式(II)で示されるスチレン誘導体と、上記一般式(III)で示される官能基を有するポリオレフィンとの組み合わせについては、例えば下記に示される組み合わせが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
(1)上記一般式(II)において、Xがカルボキシル基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(2)上記一般式(II)において、Xがカルボキシル基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yがアミノ基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(3)上記一般式(II)において、Xが水酸基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yがエポキシ基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(4)上記一般式(II)において、Xが水酸基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yがカルボキシル基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(5)上記一般式(II)において、Xが水酸基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yが酸無水物基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(6)上記一般式(II)において、Xが水酸基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yが酸ハロゲン基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(7)上記一般式(II)において、Xが酸ハロゲン基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(8)上記一般式(II)において、Xが酸ハロゲン基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yがアミノ基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(9)上記一般式(II)において、Xがハロゲンを含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(10)上記一般式(II)において、Xがエポキシ基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(11)上記一般式(II)において、Xがアミノ基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yがカルボキシル基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(12)上記一般式(II)において、Xがアミノ基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yが酸ハロゲン基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(13)上記一般式(II)において、Xがアミノ基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yが酸無水物基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(14)上記一般式(II)において、Xがイソシアナート基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(III)において、Yが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
【0036】
本発明の末端にスチリル基を有するポリオレフィンマクロモノマーを製造する際の上記一般式(III)で示される官能基を有するポリオレフィンに対する上記一般式(II)で示されるスチレン誘導体の使用量は、官能基を有するポリオレフィンに対して、通常0.01〜100倍モル、好ましくは0.1〜10倍モルである。
【0037】
反応溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘキセンなどの脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、2,4−ジクロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、複数を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記一般式(II)で示されるスチレン誘導体と上記一般式(III)で示される官能基を有するポリオレフィンとの反応に際しては、反応を効率よく進行させるために、必要に応じて縮合剤を添加することができる。
縮合剤としては、例えば濃硫酸、五酸化二リン、無水塩化亜鉛などの無機脱水縮合剤類、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド)塩酸塩などのカルボジイミド類、ポリリン酸、無水酢酸、カルボニルジイミダゾール、p−トルエンスルホニルクロリドなどが挙げられる。
【0039】
また、上記一般式(II)で示されるスチレン誘導体と上記一般式(III)で示される官能基を有するポリオレフィンとの反応は塩基性触媒の存在下で行うのが好ましい。具体的には、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリンなどの有機アミン類、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、n−ブチルリチウムなどのアルカリ金属化合物類などが挙げられる。
【0040】
なお、上記一般式(II)で示されるスチレン誘導体および上記一般式(III)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、官能基としてカルボキシル基を持つ場合には、まず、例えば五塩化リンや塩化チオニルなどと反応させて酸クロリド化合物とし、これとそれぞれ対応する上記一般式(III)で示される官能基を有するポリオレフィンおよび上記一般式(II)で示されるスチレン誘導体とを適当な溶媒中、反応させることによっても製造することができる。
また、上記一般式(II)で示されるスチレン誘導体のうち、ハロゲン原子を含む基を持つ場合には、まず、Yが水酸基である上記一般式(III)で示される官能基を有するポリオレフィンを、金属アルコキシド化剤でアルコキシドに変換し、これと上記一般式(II)で示されるスチレン誘導体とを適当な溶媒中、反応させることによっても製造することができる。金属アルコキシド化剤としては、例えば金属ナトリウム、金属カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ソーダアミドなどが挙げられる。
このようにして下記一般式(I)で表されるポリオレフィン鎖Pの末端にスチリル基を有するポリオレフィンマクロモノマーが製造される。
【0041】
【化11】
〔式(I)中、Wはヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基であり、PはCH2=CHR1(R1は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である〕
【0042】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
[末端Al化エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の合成]
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブに精製トルエン400mlを入れ、エチレン20リットル/h、プロピレン80リットル/hを吹き込むことにより液相および気相を飽和させた。その後、50℃にてMAOをAl換算で10ミリモルおよびビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド0.01ミリモルを加えて重合を開始した。常圧下、50℃で120分間重合させた後、引き続きジイソブチルアルミニウムヒドリド50mlを加えて100℃で4.5時間加熱攪拌を行った。このようにして末端Al化EPRを含むトルエン溶液を得た。
【0043】
[末端OH化EPRの合成]
上記にて得られたトルエン溶液を100℃に保ち、窒素ガスを乾燥空気に切り替え、該温度を保ちながら100リットル/hの流量で14時間供給しつづけた後、メタノール200mlを加えて反応を停止した。析出した黄色固体をグラスフィルター(G3)でろ過した後、ヘキサン500mlで3回洗浄し、EPRを抽出した。得られたヘキサン溶液を濃縮し、さらに10時間真空乾燥して53.1gの淡黄色オイル状ポリマーを得た。該ポリマーの分子量(EPR換算)をGPCにより測定したところ、Mwが3700、Mnが1100、Mw/Mn=3.4であった。
該ポリマー100mgを25℃で0.6mlの重クロロホルムに溶解させて得たサンプルを1H−NMR(日本電子製JEOL GSX−270)を用いて分析をおこなったところ、3.3−3.6ppmにヒドロキシル基に隣接するメチレン基に基づくシグナルが認められた。すなわち、以下の構造(化12)の末端を有するEPRが存在することを確認した。また、積分値からOH基含量は1.3mol%と算出された。
【0044】
【化12】
【0045】
[マクロモノマーの合成]
充分窒素置換した100mlシュレンク管に、上記にて得られた末端OH化EPR10gを入れ、乾燥THF40mlおよび水素化ナトリウム0.62g(あらかじめ乾燥ヘキサン5mlで5回洗浄し、ミネラルオイルを除いたもの)を加えて室温で2時間攪拌した。得られた反応液を氷浴にて0℃に冷却し、p−ビニルベンジルクロリド3.37mlを加えた。氷浴を外し、室温で24時間攪拌した後、反応液をアセトン400mlとヘキサン400mlの混合溶媒中に注ぎ、析出した白色沈殿をグラスフィルター(G3)でろ別した。得られた黄色ろ液を濃縮し、10時間真空乾燥して10.4gの黄色オイル状ポリマーを得た。このポリマーをヘキサンに溶解し、カラムクロマトグラフィーにより精製して微黄色オイル状ポリマー1.1gを得た。該ポリマーの分子量(EPR換算)をGPCにより測定したところ、Mwが4800、Mnが3000、Mw/Mn=1.6であった。
該ポリマー100mgを25℃で0.6mlの重クロロホルムに溶解させて得たサンプルを1H−NMR(日本電子製JEOL GSX−270)を用いて分析をおこなったところ、EPRに基づくシグナルの他に以下のシグナルが検出された。δ3.2−3.4ppm(m、2H;−O−CH 2−EPR)、δ4.5ppm(s、2H;−C6H4−CH 2−O−)、δ5.2ppm(d、1H;CH2=)、δ5.7ppm(d、1H;CH 2=)、δ6.7ppm(d×d、1H;CH2=CH−)、δ7.2−7.4ppm(m、4H;−C6 H 4−)。すなわち、以下の構造(化13)の末端を有するEPRマクロモノマーが存在することを確認した。また、積分値からスチリル基含量は0.11mol%と算出された。
【0046】
【化13】
【0047】
【発明の効果】
本発明の方法により、ポリオレフィン鎖の末端にスチリル基を有する新規なポリオレフィンマクロモノマーが効率良く得られる。
Claims (4)
- 上記一般式(I)において、Wで示される基が、カルボン酸エステル基、アミド基、エーテル基、カルバミン酸エステル基から選ばれる基を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィンマクロモノマー。
- 上記ポリオレフィン鎖Pの分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上である請求項1〜3に記載のポリオレフィンマクロモノマー。
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