JP2004269477A - 細胞外マトリックス濃縮液を利用した歯周病治療剤及び歯周病治療用遮断膜。 - Google Patents
細胞外マトリックス濃縮液を利用した歯周病治療剤及び歯周病治療用遮断膜。 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】直接的に歯周線維芽細胞の増殖を促進する、歯周病治療剤及び歯周病治療用遮断膜の提供並びにプリオン等の混入やアレルギー反応等の可能性を排除できる安全性の高い歯周病治療剤及び歯周病治療用遮断膜の提供。
【解決手段】ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を、歯周病治療剤又は歯周病治療法であるGTR(組織再生誘導)法に使用する遮断膜として提供する。また、前記線維芽細胞を採取した個体に用いる、該細胞外マトリックス濃縮液を利用した歯周病治療剤又はGTR用遮断膜を提供する。
【解決手段】ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を、歯周病治療剤又は歯周病治療法であるGTR(組織再生誘導)法に使用する遮断膜として提供する。また、前記線維芽細胞を採取した個体に用いる、該細胞外マトリックス濃縮液を利用した歯周病治療剤又はGTR用遮断膜を提供する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯周病治療剤及び歯周病治療法であるGTR(組織再生誘導)法に用いる歯周病治療用遮断膜に関する。より詳細には、組織培養上清より産生した細胞外マトリックスを利用した歯周病治療剤及び歯周病治療用遮断膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯周病は、歯肉炎が進行し、歯周組織が破壊される病気で、重症化すると、歯が動揺したり抜け落ちたりする。中等度以上の歯周病患者に対して、失われた歯周組織の回復を目的として臨床的に行われている治療法として、エムドゲイン療法及びGTR(組織再生誘導)法がある。
【0003】
エムドゲイン療法は、歯周基本治療終了後、依然として残存する深い歯周ポケット、高度のアタッチメントロスなどが適応症となる。術式は、歯肉を切開、剥離後、歯根面にゲル状に調整されたエムドゲインをシリンジで注入、患部を縫合する。
【0004】
当該療法で使用されるエムドゲインは、スウェーデンのビオラ社の開発した歯周病治療剤で、具体的な製法は明らかにされていないが、主成分は、幼若ブタの歯胚から抽出されたエナメル基質を凍結乾燥して得られるエナメル基質タンパク質である。当該エナメル基質由来タンパク質は、歯周組織の発生過程において、無細胞性セメント質の形成に関与する。従って、無細胞性セメント質を誘導することにより、歯周ポケットを減少させ、失われた歯周組織を回復させる効果を持つ。その他、エムドゲインは、歯槽骨再生、歯根膜形成、上皮細胞の増殖の抑制などにも一定の効果があるといわれる。
【0005】
一方、GTR(組織再生誘導)法とは、GTR用遮断膜を歯根表面に固定し、遮断膜と歯根表面間の空隙内に歯根膜細胞と骨芽細胞のみを再生、増殖させる方法である。
【0006】
歯周組織においては、上皮細胞が最も増殖が速いため、歯周病で歯周組織が破壊された場合、代わりに上皮細胞が歯根面を覆ってしまう。上記GTR法は、遮断膜により、上皮細胞を排除することで、結合組織の再生を促す。即ち、GTR法は、歯根膜の再生を待つ治療法であり、失われた歯周組織に新生セメント質を形成させ、結合組織性の付着を得ることができる。
【0007】
なお、エムドゲイン療法及びGTR法は、イヌをはじめ、動物の歯周病の治療にも用いられている。
【0008】
先行技術文献として、非特許文献1は、エムドゲイン療法について記載されている。非特許文献2は、歯周病の再生療法について及びGTR法について記載されている。非特許文献3には、GTR法について記載されている。
【0009】
【非特許文献1】
奥田一博,他2名,「エムドゲインの現状と未来」,歯界展望,平成14年3月,第99巻,第3号,p505−516
【非特許文献2】
石川烈,他1名,「再生療法は歯周治療に何をもたらすか」,歯界展望,平成14年3月,第99巻,第3号,p498−504
【非特許文献3】
内藤徹,外2名,「GTRの現状と未来」,歯界展望,平成14年3月,第99巻,第3号,p517−526
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、歯周病治療剤エムドゲイン及び従来のGTR用遮断膜には以下のような解決すべき技術的課題があった。
【0011】
歯周病治療剤エムドゲインは、歯肉膜細胞、歯肉線維芽細胞等への促進作用や上皮細胞への抑制作用についても一定の効果は有するが、直接的には、無細胞性セメント質の形成を促進するものである。従って、直接的に歯肉線維芽細胞の増殖を促進し、歯肉膜の回復に寄与するものではなかった。
【0012】
また、ウイルス、プリオン等の混入やアレルギー等の危険性がある生物製剤においては、製法が明らかになっていることが望ましい。即ち、万が一、感染や副作用が起こったときに、原因と対処法をすばやく判断する上で、正確な知識と情報が必要であるからである。しかし、歯周病治療剤エムドゲインは、具体的な製法が明らかにされていないという問題点があった。
【0013】
さらに、歯周病治療剤エムドゲインは、幼若ブタの歯胚から抽出されたエナメル基質タンパク質を主成分とする生物製剤であるため、幼若ブタからプリオンなどの伝達性病原体やウイルス、細菌などが混入したり、催腫瘍性や奇形性のある未知物質が混入したりする可能性を排除できない。また、歯周病患者または患畜にとって、幼若ブタ由来のタンパク質は異物であり、患者又は患畜によっては、アレルギー反応を起こす可能性を排除できない。また、幼若ブタの歯胚は、細胞培養をして増殖させると考えられるが、培養の際には、FBS(牛胎児血清)等の血清を添加する場合が多い。従って、エムドゲイン作製等の際に、使用した他種動物由来の血清からプリオンなどが混入したり、他種動物由来の血清の使用によって混入した物質が原因でアレルギー反応を起こしたりする等の危険性を排除できない。GTR用遮断膜に関しても、歯周病患者又は患畜にとっては異物であり、患者又は患畜の体質によっては、アレルギー反応を起こす可能性を排除できない。
【0014】
そこで、本発明は、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られた細胞外マトリックス濃縮液を用いることにより、より直接的に歯周線維芽細胞の増殖を促進し、歯周病治療剤及び歯周病治療用遮断膜を提供することを主な目的とする。また、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液を、前記線維芽細胞を採取した個体の歯周病疾患部位に適用することで、プリオン等の混入やアレルギー反応等の可能性を排除して、より安全性の高い歯周病治療剤及び歯周病治療用遮断膜を提供することを主な目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するために、本発明では、次の手段を採用する。
【0016】
まず、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を用いた歯周病治療剤を提供する。
【0017】
また、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を用いるものであって、限外濾過で精製することによって得られる分子量10万以上の画分からなる歯周病治療剤を提供する。
【0018】
前記細胞外マトリックス濃縮液は、コラーゲンなどの細胞外タンパク質を主成分とすると考えられ、線維芽細胞の増殖を促進し、上皮細胞の増殖を抑制する作用を持つ。繊維芽細胞の増殖は、破壊された歯周組織の結合組織の再生を促進し、また、最も増殖の速い上皮細胞の増殖が抑制されることにより、歯周病治療に効果を上げることができる。
【0019】
次に、前記細胞外マトリックス濃縮液をゲル化した歯周病治療剤を提供する。
【0020】
前記細胞外マトリックス濃縮液をゲル化することにより、歯周病治療の際に、患部に直接塗布したり注入したりすることができ、治療をより効果的にすることができる利点がある。
【0021】
なお、前記細胞外マトリックス濃縮液をゲル化する方法は、どのような方法を用いてもよい。例えば、従来の方法としては、トリメチレンカーボネート系、ポリエチレングリコール系等の生分解性ポリマーに細胞外マトリックス濃縮液を添加して、ガラス転移温度以下で攪拌、混合してゲル化する方法を採用できる。
【0022】
次に、前記線維芽細胞から採取した細胞外マトリックス濃縮液又は該濃縮液をゲル化したものであって、該線維芽細胞を採取した個体の歯周病疾患部位に用いる歯周病治療剤を提供する。
【0023】
前記歯周病治療剤は、ヒト又は動物において、線維芽細胞を培養した際の培養上清から産生されるものであり、また、当該細胞の培養の際には、無血清培養を行っているので、プリオンなどの混入やアレルギーの発生などの危険性を極力排除し、安全性のより高い歯周病治療剤を提供できるという利点がある。
【0024】
次に、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を膜状に加工して得られる歯周病治療用遮断膜を提供する。
【0025】
前記遮断膜は、従来のGTR法と同様の効果を得ることができ、また、歯肉線維芽細胞の増殖と上皮細胞の抑制し、歯周組織を回復させる効果を期待できる。
【0026】
なお、前記細胞外マトリックス濃縮液を膜に加工する方法は、どのような方法を用いてもよい。例えば、従来の方法としては、細胞外マトリックス濃縮液を必要な大きさの容器に入れて、減圧又は凍結乾燥させることで、水分を蒸発させて該濃縮液の膜を形成させる方法を採用できる。
【0027】
さらに、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を膜状に加工して得られる膜であって、該線維芽細胞を採取した個体の歯周病疾患部位に用いられる歯周病治療用遮断膜を提供する。
【0028】
前記遮断膜は、歯周病疾患の患者又は患畜の線維芽細胞から無血清培養で産生されたものであるので、アレルギーなどの危険性がより少なく、安全性の高いGTR用遮断膜を提供できるという利点がある。
【0029】
本願において、「線維芽細胞」とは、結合組織形成細胞のことをいい、線維芽細胞の増殖によって結合組織の形成が促進されるほか、コラーゲン、フィブロネクチン等の体内間質物質を多量産生する。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を示す。なお、本発明の範囲は実施例により限定されない。
【0031】
実施例1。
実施例1は、ヒトの線維芽細胞を用いて、本願に係る細胞外マトリックス濃縮液の産生手順を例示したものである。
【0032】
まず、ヒトの皮膚組織より分離した初代培養の線維芽細胞を、225cm2の培養フラスコを用いて、10%FBS(ウシ胎児血清)及び抗生物質を含むDMEM培地(日本製薬)でコンフルエントになるまで培養した。
【0033】
次に、同フラスコの培養液を捨て、30mlのPBS(リン酸バッファー溶液)で少なくとも3回洗浄した後、FBSを添加していないDMEM培地を35ml添加して5日間培養した。
【0034】
次に、前記無血清培地の培養上清を回収し、10〜30μmのフィルターで細胞残渣を除去した後、日本ミリポア製の分画フィルター(Pellicon,EL,100K)を用いて限外濾過し、濃縮した。
【0035】
そして、培養上清中のフェノール・レッド(色素)を除くため、更に、水で濃縮した。濃縮の過程で沈殿が生じた場合には、遠心をして、上清分画を試料とした。
【0036】
最後に、0.22μmのフィルターを通して滅菌し、得た液を本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液とした。
【0037】
実施例2。
実施例2は、実施例1で得た細胞外マトリックス濃縮液が線維芽細胞の増殖を促進することを示した実験例である。
【0038】
まず、ヒト(A氏、B氏)の皮膚組織より培養して得た線維芽細胞を、それぞれ、1×102個/ウェルになるように無添加DMEM培地で希釈して、96−ウェル培養プレートに播種した。
【0039】
そして、それぞれ、96−ウェル培養プレートを32ウェルずつ3等分し、最初の32ウェルには何も添加せず、次の32ウェルには5%FBSを添加し、最後の32ウェルには、実施例1の方法により得たA氏由来の細胞外マトリックス濃縮液(1mg/ml)を1/100量添加して、3日間培養した。
【0040】
そして、それぞれの96−ウェル培養プレートの各ウェルについてMTTアッセイを行った。その結果を、表1に示す。なお、MTTアッセイは、450nmの吸光度を測定することにより、細胞の増殖性を図る方法である。細胞の増殖性は、吸光度(450nm)の大きさであらわすことができ、増殖が促進されるほど、吸光度も大きな値となる。今回行ったMTTアッセイには、WST−1(TaKaRa)を用いた。
【0041】
【表1】
【0042】
前掲した表1に示されているように、細胞外マトリックス濃縮液を添加したものでは、何も添加しないものに比べて、吸光度が0.083nmから0.28nmに顕著に増加しており、線維芽細胞の増殖が促進されることがわかった。
【0043】
また、実験結果にばらつきはあるものの、A氏由来の細胞膜マトリックス濃縮液をB氏の線維芽細胞に添加した場合でも、A氏の線維芽細胞に添加した場合と同様に、線維芽細胞の増殖が促進されることがわかった。この実験の結果は、ヒトの細胞外マトリックス濃縮液は、自身の線維芽細胞から産生した場合でも、他個体から産生した場合でも、線維芽細胞の増殖を促進する効果があることを示している。
【0044】
実施例3。
実施例3は、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液が、上皮細胞の増殖を抑制することを示した実験例である。
【0045】
まず、皮膚組織より分離した初代培養の表皮角化細胞を低Ca濃度の専用培地(例えば、GIBCOの角化細胞用無血清培地)で培養し、70%コンフルエントの状態で継代培養を行った。
【0046】
続いて、3.5cmシャーレを6つ用意し、それぞれに、表皮角化細胞を角化細胞用無血清培地で希釈したものを、1.1×102個になるように播種した。同時に、3つのシャーレには、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液(2.8mg/ml)を1/100量添加した。培地交換は、3日又は4日間隔で行い、前記3つのシャーレについては培地交換ごとに該濃縮液を同量添加した。
【0047】
前記播種後、1日、7日、14日後に、上記濃縮液を添加したシャーレと添加しないシャーレについて、各々、細胞数を測定して、表皮角化細胞の増殖性を調べた。その結果を以下の表2に示す。なお、細胞数の測定は、培養細胞をトリプシンで剥がし、血球計測版で数える方法によって行った。
【0048】
【表2】
【0049】
前掲した表2に示されているように、表皮角化細胞は、上記濃縮液を添加しない場合は、時間の経過とともに細胞数が増加するのに対し、上記濃縮液を添加した場合は、細胞数はあまり増加しなかった。即ち、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液の添加により、表皮角化細胞の増殖は停止することがわかった。この実験結果は、歯周組織において、上皮細胞の増殖を抑制することを示す。このことは、上記細胞外マトリックス濃縮液が、歯周病で歯周組織が破壊された場合、代わりに上皮細胞が歯根面を覆ってしまうことを防止し、結合組織の再生を促す効果を有することを示している。
【0050】
実施例4。
実施例4は、他個体から上記細胞外マトリックス濃縮液を採取した場合でも、自らの線維芽細胞から該濃縮液を採取した場合でも、同様に上皮細胞増殖抑制
効果があることを示している。
【0051】
まず、実施例1に基づいて、ヒト(C氏、D氏)の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して細胞外マトリックス濃縮液を産生した。
【0052】
次に、C氏の皮膚組織より表皮角化細胞を分離し、1.3×104個をGIBCO社製角化細胞用無血清培地に懸濁させて6cmシャーレ2枚に播種した。その際に、前記C氏又はD氏由来の細胞外マトリックス濃縮液5.9mg/mlを1/200量添加した。そして、それぞれ、12日間培養し、培養後、実施例3と同様の方法で、細胞数を測定した。なお、培地交換は3日又は4日間隔で行い、培地交換の際には、該濃縮液を同量添加した。
【0053】
【表3】
【0054】
前掲した表3に示されているように、C氏から採取した表皮角化細胞は、C氏由来の細胞外マトリックス濃縮液を添加した場合でも、D氏由来の該濃縮液を添加した場合でも、無添加の場合に比べて、増殖が抑制された。従って、この結果は、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液が上皮細胞の増殖を抑制することを示すとともに、該濃縮液は、線維芽細胞を採取した個体が同一であるか他個体であるかにかかわらず、同様に効果を有することを示している。
【0055】
【発明の効果】
本発明によって奏される主な効果は、以下のとおりである。
【0056】
まず、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して細胞外マトリックス濃縮液を産生することにより、歯肉線維芽細胞の増殖を直接促進する歯周病治療剤を提供できる効果がある。
【0057】
また、上記のような効果を持つ細胞外マトリックス濃縮液をゲル状にすることにより、歯周病治療の際に、確実に患部に塗布することができる効果がある。
【0058】
また、上記細胞外マトリックス濃縮液を不溶化して、GTR用遮断膜として利用することにより、従来のGTR用遮断膜に歯周組織を回復させる機能を付加することができる効果がある。
【0059】
さらに、該濃縮液を、前記線維芽細胞を採取した個体の歯周病疾患部位に用いることにより、プリオンなどの混入やアレルギーの発生等、生物製剤のもつ危険性を極力排除し、より安全性の高い歯周病治療薬や歯周病治療用遮断膜を提供できる効果がある。
【0060】
なお、本発明は、歯が抜け落ちたとき等に行われるインプラント治療の際に、インプラント(人工歯根)を上記細胞外マトリックス濃縮液に浸したり、該濃縮液を患部に注入した上でインプラント治療を行ったりすることにより、歯根周囲の結合組織の形成を促進する効果が期待できる。
【0061】
また、本発明は、変形性膝関節症、肩関節周囲炎、関節リウマチ等の関節病についても、上記細胞外マトリックス濃縮液を適用することにより、関節内結合組織の再生を促すと考えられるので、関節病治療にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3に関して、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液を添加しないで7日間培養した際に表皮角化細胞が増殖した様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図2】実施例3に関して、図1との比較において、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液を添加して7日間培養した際に表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図3】実施例3に関して、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液を添加しないで14日間培養した際に表皮角化細胞が増殖した様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図4】実施例3に関して、図3との比較において、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液を添加して7日間培養した際に表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯周病治療剤及び歯周病治療法であるGTR(組織再生誘導)法に用いる歯周病治療用遮断膜に関する。より詳細には、組織培養上清より産生した細胞外マトリックスを利用した歯周病治療剤及び歯周病治療用遮断膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯周病は、歯肉炎が進行し、歯周組織が破壊される病気で、重症化すると、歯が動揺したり抜け落ちたりする。中等度以上の歯周病患者に対して、失われた歯周組織の回復を目的として臨床的に行われている治療法として、エムドゲイン療法及びGTR(組織再生誘導)法がある。
【0003】
エムドゲイン療法は、歯周基本治療終了後、依然として残存する深い歯周ポケット、高度のアタッチメントロスなどが適応症となる。術式は、歯肉を切開、剥離後、歯根面にゲル状に調整されたエムドゲインをシリンジで注入、患部を縫合する。
【0004】
当該療法で使用されるエムドゲインは、スウェーデンのビオラ社の開発した歯周病治療剤で、具体的な製法は明らかにされていないが、主成分は、幼若ブタの歯胚から抽出されたエナメル基質を凍結乾燥して得られるエナメル基質タンパク質である。当該エナメル基質由来タンパク質は、歯周組織の発生過程において、無細胞性セメント質の形成に関与する。従って、無細胞性セメント質を誘導することにより、歯周ポケットを減少させ、失われた歯周組織を回復させる効果を持つ。その他、エムドゲインは、歯槽骨再生、歯根膜形成、上皮細胞の増殖の抑制などにも一定の効果があるといわれる。
【0005】
一方、GTR(組織再生誘導)法とは、GTR用遮断膜を歯根表面に固定し、遮断膜と歯根表面間の空隙内に歯根膜細胞と骨芽細胞のみを再生、増殖させる方法である。
【0006】
歯周組織においては、上皮細胞が最も増殖が速いため、歯周病で歯周組織が破壊された場合、代わりに上皮細胞が歯根面を覆ってしまう。上記GTR法は、遮断膜により、上皮細胞を排除することで、結合組織の再生を促す。即ち、GTR法は、歯根膜の再生を待つ治療法であり、失われた歯周組織に新生セメント質を形成させ、結合組織性の付着を得ることができる。
【0007】
なお、エムドゲイン療法及びGTR法は、イヌをはじめ、動物の歯周病の治療にも用いられている。
【0008】
先行技術文献として、非特許文献1は、エムドゲイン療法について記載されている。非特許文献2は、歯周病の再生療法について及びGTR法について記載されている。非特許文献3には、GTR法について記載されている。
【0009】
【非特許文献1】
奥田一博,他2名,「エムドゲインの現状と未来」,歯界展望,平成14年3月,第99巻,第3号,p505−516
【非特許文献2】
石川烈,他1名,「再生療法は歯周治療に何をもたらすか」,歯界展望,平成14年3月,第99巻,第3号,p498−504
【非特許文献3】
内藤徹,外2名,「GTRの現状と未来」,歯界展望,平成14年3月,第99巻,第3号,p517−526
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、歯周病治療剤エムドゲイン及び従来のGTR用遮断膜には以下のような解決すべき技術的課題があった。
【0011】
歯周病治療剤エムドゲインは、歯肉膜細胞、歯肉線維芽細胞等への促進作用や上皮細胞への抑制作用についても一定の効果は有するが、直接的には、無細胞性セメント質の形成を促進するものである。従って、直接的に歯肉線維芽細胞の増殖を促進し、歯肉膜の回復に寄与するものではなかった。
【0012】
また、ウイルス、プリオン等の混入やアレルギー等の危険性がある生物製剤においては、製法が明らかになっていることが望ましい。即ち、万が一、感染や副作用が起こったときに、原因と対処法をすばやく判断する上で、正確な知識と情報が必要であるからである。しかし、歯周病治療剤エムドゲインは、具体的な製法が明らかにされていないという問題点があった。
【0013】
さらに、歯周病治療剤エムドゲインは、幼若ブタの歯胚から抽出されたエナメル基質タンパク質を主成分とする生物製剤であるため、幼若ブタからプリオンなどの伝達性病原体やウイルス、細菌などが混入したり、催腫瘍性や奇形性のある未知物質が混入したりする可能性を排除できない。また、歯周病患者または患畜にとって、幼若ブタ由来のタンパク質は異物であり、患者又は患畜によっては、アレルギー反応を起こす可能性を排除できない。また、幼若ブタの歯胚は、細胞培養をして増殖させると考えられるが、培養の際には、FBS(牛胎児血清)等の血清を添加する場合が多い。従って、エムドゲイン作製等の際に、使用した他種動物由来の血清からプリオンなどが混入したり、他種動物由来の血清の使用によって混入した物質が原因でアレルギー反応を起こしたりする等の危険性を排除できない。GTR用遮断膜に関しても、歯周病患者又は患畜にとっては異物であり、患者又は患畜の体質によっては、アレルギー反応を起こす可能性を排除できない。
【0014】
そこで、本発明は、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られた細胞外マトリックス濃縮液を用いることにより、より直接的に歯周線維芽細胞の増殖を促進し、歯周病治療剤及び歯周病治療用遮断膜を提供することを主な目的とする。また、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液を、前記線維芽細胞を採取した個体の歯周病疾患部位に適用することで、プリオン等の混入やアレルギー反応等の可能性を排除して、より安全性の高い歯周病治療剤及び歯周病治療用遮断膜を提供することを主な目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するために、本発明では、次の手段を採用する。
【0016】
まず、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を用いた歯周病治療剤を提供する。
【0017】
また、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を用いるものであって、限外濾過で精製することによって得られる分子量10万以上の画分からなる歯周病治療剤を提供する。
【0018】
前記細胞外マトリックス濃縮液は、コラーゲンなどの細胞外タンパク質を主成分とすると考えられ、線維芽細胞の増殖を促進し、上皮細胞の増殖を抑制する作用を持つ。繊維芽細胞の増殖は、破壊された歯周組織の結合組織の再生を促進し、また、最も増殖の速い上皮細胞の増殖が抑制されることにより、歯周病治療に効果を上げることができる。
【0019】
次に、前記細胞外マトリックス濃縮液をゲル化した歯周病治療剤を提供する。
【0020】
前記細胞外マトリックス濃縮液をゲル化することにより、歯周病治療の際に、患部に直接塗布したり注入したりすることができ、治療をより効果的にすることができる利点がある。
【0021】
なお、前記細胞外マトリックス濃縮液をゲル化する方法は、どのような方法を用いてもよい。例えば、従来の方法としては、トリメチレンカーボネート系、ポリエチレングリコール系等の生分解性ポリマーに細胞外マトリックス濃縮液を添加して、ガラス転移温度以下で攪拌、混合してゲル化する方法を採用できる。
【0022】
次に、前記線維芽細胞から採取した細胞外マトリックス濃縮液又は該濃縮液をゲル化したものであって、該線維芽細胞を採取した個体の歯周病疾患部位に用いる歯周病治療剤を提供する。
【0023】
前記歯周病治療剤は、ヒト又は動物において、線維芽細胞を培養した際の培養上清から産生されるものであり、また、当該細胞の培養の際には、無血清培養を行っているので、プリオンなどの混入やアレルギーの発生などの危険性を極力排除し、安全性のより高い歯周病治療剤を提供できるという利点がある。
【0024】
次に、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を膜状に加工して得られる歯周病治療用遮断膜を提供する。
【0025】
前記遮断膜は、従来のGTR法と同様の効果を得ることができ、また、歯肉線維芽細胞の増殖と上皮細胞の抑制し、歯周組織を回復させる効果を期待できる。
【0026】
なお、前記細胞外マトリックス濃縮液を膜に加工する方法は、どのような方法を用いてもよい。例えば、従来の方法としては、細胞外マトリックス濃縮液を必要な大きさの容器に入れて、減圧又は凍結乾燥させることで、水分を蒸発させて該濃縮液の膜を形成させる方法を採用できる。
【0027】
さらに、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を膜状に加工して得られる膜であって、該線維芽細胞を採取した個体の歯周病疾患部位に用いられる歯周病治療用遮断膜を提供する。
【0028】
前記遮断膜は、歯周病疾患の患者又は患畜の線維芽細胞から無血清培養で産生されたものであるので、アレルギーなどの危険性がより少なく、安全性の高いGTR用遮断膜を提供できるという利点がある。
【0029】
本願において、「線維芽細胞」とは、結合組織形成細胞のことをいい、線維芽細胞の増殖によって結合組織の形成が促進されるほか、コラーゲン、フィブロネクチン等の体内間質物質を多量産生する。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を示す。なお、本発明の範囲は実施例により限定されない。
【0031】
実施例1。
実施例1は、ヒトの線維芽細胞を用いて、本願に係る細胞外マトリックス濃縮液の産生手順を例示したものである。
【0032】
まず、ヒトの皮膚組織より分離した初代培養の線維芽細胞を、225cm2の培養フラスコを用いて、10%FBS(ウシ胎児血清)及び抗生物質を含むDMEM培地(日本製薬)でコンフルエントになるまで培養した。
【0033】
次に、同フラスコの培養液を捨て、30mlのPBS(リン酸バッファー溶液)で少なくとも3回洗浄した後、FBSを添加していないDMEM培地を35ml添加して5日間培養した。
【0034】
次に、前記無血清培地の培養上清を回収し、10〜30μmのフィルターで細胞残渣を除去した後、日本ミリポア製の分画フィルター(Pellicon,EL,100K)を用いて限外濾過し、濃縮した。
【0035】
そして、培養上清中のフェノール・レッド(色素)を除くため、更に、水で濃縮した。濃縮の過程で沈殿が生じた場合には、遠心をして、上清分画を試料とした。
【0036】
最後に、0.22μmのフィルターを通して滅菌し、得た液を本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液とした。
【0037】
実施例2。
実施例2は、実施例1で得た細胞外マトリックス濃縮液が線維芽細胞の増殖を促進することを示した実験例である。
【0038】
まず、ヒト(A氏、B氏)の皮膚組織より培養して得た線維芽細胞を、それぞれ、1×102個/ウェルになるように無添加DMEM培地で希釈して、96−ウェル培養プレートに播種した。
【0039】
そして、それぞれ、96−ウェル培養プレートを32ウェルずつ3等分し、最初の32ウェルには何も添加せず、次の32ウェルには5%FBSを添加し、最後の32ウェルには、実施例1の方法により得たA氏由来の細胞外マトリックス濃縮液(1mg/ml)を1/100量添加して、3日間培養した。
【0040】
そして、それぞれの96−ウェル培養プレートの各ウェルについてMTTアッセイを行った。その結果を、表1に示す。なお、MTTアッセイは、450nmの吸光度を測定することにより、細胞の増殖性を図る方法である。細胞の増殖性は、吸光度(450nm)の大きさであらわすことができ、増殖が促進されるほど、吸光度も大きな値となる。今回行ったMTTアッセイには、WST−1(TaKaRa)を用いた。
【0041】
【表1】
【0042】
前掲した表1に示されているように、細胞外マトリックス濃縮液を添加したものでは、何も添加しないものに比べて、吸光度が0.083nmから0.28nmに顕著に増加しており、線維芽細胞の増殖が促進されることがわかった。
【0043】
また、実験結果にばらつきはあるものの、A氏由来の細胞膜マトリックス濃縮液をB氏の線維芽細胞に添加した場合でも、A氏の線維芽細胞に添加した場合と同様に、線維芽細胞の増殖が促進されることがわかった。この実験の結果は、ヒトの細胞外マトリックス濃縮液は、自身の線維芽細胞から産生した場合でも、他個体から産生した場合でも、線維芽細胞の増殖を促進する効果があることを示している。
【0044】
実施例3。
実施例3は、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液が、上皮細胞の増殖を抑制することを示した実験例である。
【0045】
まず、皮膚組織より分離した初代培養の表皮角化細胞を低Ca濃度の専用培地(例えば、GIBCOの角化細胞用無血清培地)で培養し、70%コンフルエントの状態で継代培養を行った。
【0046】
続いて、3.5cmシャーレを6つ用意し、それぞれに、表皮角化細胞を角化細胞用無血清培地で希釈したものを、1.1×102個になるように播種した。同時に、3つのシャーレには、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液(2.8mg/ml)を1/100量添加した。培地交換は、3日又は4日間隔で行い、前記3つのシャーレについては培地交換ごとに該濃縮液を同量添加した。
【0047】
前記播種後、1日、7日、14日後に、上記濃縮液を添加したシャーレと添加しないシャーレについて、各々、細胞数を測定して、表皮角化細胞の増殖性を調べた。その結果を以下の表2に示す。なお、細胞数の測定は、培養細胞をトリプシンで剥がし、血球計測版で数える方法によって行った。
【0048】
【表2】
【0049】
前掲した表2に示されているように、表皮角化細胞は、上記濃縮液を添加しない場合は、時間の経過とともに細胞数が増加するのに対し、上記濃縮液を添加した場合は、細胞数はあまり増加しなかった。即ち、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液の添加により、表皮角化細胞の増殖は停止することがわかった。この実験結果は、歯周組織において、上皮細胞の増殖を抑制することを示す。このことは、上記細胞外マトリックス濃縮液が、歯周病で歯周組織が破壊された場合、代わりに上皮細胞が歯根面を覆ってしまうことを防止し、結合組織の再生を促す効果を有することを示している。
【0050】
実施例4。
実施例4は、他個体から上記細胞外マトリックス濃縮液を採取した場合でも、自らの線維芽細胞から該濃縮液を採取した場合でも、同様に上皮細胞増殖抑制
効果があることを示している。
【0051】
まず、実施例1に基づいて、ヒト(C氏、D氏)の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して細胞外マトリックス濃縮液を産生した。
【0052】
次に、C氏の皮膚組織より表皮角化細胞を分離し、1.3×104個をGIBCO社製角化細胞用無血清培地に懸濁させて6cmシャーレ2枚に播種した。その際に、前記C氏又はD氏由来の細胞外マトリックス濃縮液5.9mg/mlを1/200量添加した。そして、それぞれ、12日間培養し、培養後、実施例3と同様の方法で、細胞数を測定した。なお、培地交換は3日又は4日間隔で行い、培地交換の際には、該濃縮液を同量添加した。
【0053】
【表3】
【0054】
前掲した表3に示されているように、C氏から採取した表皮角化細胞は、C氏由来の細胞外マトリックス濃縮液を添加した場合でも、D氏由来の該濃縮液を添加した場合でも、無添加の場合に比べて、増殖が抑制された。従って、この結果は、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液が上皮細胞の増殖を抑制することを示すとともに、該濃縮液は、線維芽細胞を採取した個体が同一であるか他個体であるかにかかわらず、同様に効果を有することを示している。
【0055】
【発明の効果】
本発明によって奏される主な効果は、以下のとおりである。
【0056】
まず、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して細胞外マトリックス濃縮液を産生することにより、歯肉線維芽細胞の増殖を直接促進する歯周病治療剤を提供できる効果がある。
【0057】
また、上記のような効果を持つ細胞外マトリックス濃縮液をゲル状にすることにより、歯周病治療の際に、確実に患部に塗布することができる効果がある。
【0058】
また、上記細胞外マトリックス濃縮液を不溶化して、GTR用遮断膜として利用することにより、従来のGTR用遮断膜に歯周組織を回復させる機能を付加することができる効果がある。
【0059】
さらに、該濃縮液を、前記線維芽細胞を採取した個体の歯周病疾患部位に用いることにより、プリオンなどの混入やアレルギーの発生等、生物製剤のもつ危険性を極力排除し、より安全性の高い歯周病治療薬や歯周病治療用遮断膜を提供できる効果がある。
【0060】
なお、本発明は、歯が抜け落ちたとき等に行われるインプラント治療の際に、インプラント(人工歯根)を上記細胞外マトリックス濃縮液に浸したり、該濃縮液を患部に注入した上でインプラント治療を行ったりすることにより、歯根周囲の結合組織の形成を促進する効果が期待できる。
【0061】
また、本発明は、変形性膝関節症、肩関節周囲炎、関節リウマチ等の関節病についても、上記細胞外マトリックス濃縮液を適用することにより、関節内結合組織の再生を促すと考えられるので、関節病治療にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3に関して、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液を添加しないで7日間培養した際に表皮角化細胞が増殖した様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図2】実施例3に関して、図1との比較において、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液を添加して7日間培養した際に表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図3】実施例3に関して、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液を添加しないで14日間培養した際に表皮角化細胞が増殖した様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図4】実施例3に関して、図3との比較において、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液を添加して7日間培養した際に表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
Claims (6)
- ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を用いることを特徴とする歯周病治療剤。
- 前記細胞外マトリックス濃縮液は、限外濾過で精製することによって得られる分子量10万以上の画分からなることを特徴とする請求項1記載の歯周病治療剤。
- 前記細胞外マトリックス濃縮液をゲル化したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歯周病治療剤。
- 前記線維芽細胞を採取した個体の歯周病疾患部位に用いられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の歯周病治療剤。
- ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を膜状に加工して得られる歯周病治療用遮断膜。
- 前記線維芽細胞を採取した個体の歯周病疾患部位に用いられることを特徴とする請求項5記載の歯周病治療用遮断膜。
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