JP2004269332A - 燃料改質装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】反応器内の温度分布が均一で、燃料改質性能に優れた燃料改質装置を提供することである。
【解決手段】熱伝導率が50W/m・K以上の化合物を含有する燃料改質触媒が配置される、燃料改質装置である。本発明によれば、燃料改質装置の上流部側における部分酸化反応で発生した熱を、効率よく下流部側へと送ることができる。その結果、燃料改質装置内の温度分布が均一化され、燃料改質性能に優れる燃料改質装置が得られる。特に、燃料改質触媒が、白金、ロジウム、パラジウムおよびルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属元素を担持および焼成させて得たものであると、より優れた燃料改質性能が得られ、効率的に水素ガスが発生しうる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素改質分解反応と水蒸気改質反応とによって水素リッチガスを生成する燃料改質装置に関する。より詳細には、熱伝導率が50W/m・K以上の化合物を含有する燃料改質触媒を配置することで、水蒸気改質反応の吸熱と部分酸化反応の発熱とによる反応器内の温度分布を均一にできる燃料改質装置および該装置を搭載した自動車等に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子燃料電池は比較的低温でも高電流密度が得られるため、自動車などの移動用電源として期待されている。この固体高分子燃料電池への水素含有ガスの供給源として、炭化水素の酸化反応で放出される熱量を吸熱反応である炭化水素の水蒸気改質反応に利用するいわゆるオートサーマル型燃料改質装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種のオートサーマル型燃料改質装置では、例えばメタノールなどの炭化水素と空気(酸素)と水蒸気とを混合し、これを銅系触媒、貴金属あるいは、VIII族金属系触媒等が充填された反応器内に流し、下記式に示す水蒸気改質反応により水素および二酸化炭素を含有する改質ガスを生成する。
【0004】
【数1】
Figure 2004269332
【0005】
ここで、上記水蒸気改質反応は、下記の二つの反応が同時に進行することによる全体反応として示されている。
【0006】
【数2】
Figure 2004269332
【0007】
このように、一般に燃料を改質する反応は吸熱反応であるため、従来は、改質器にバーナーやヒーター等を設けて外部加熱を行い、改質反応に必要な熱量を供給していた。
【0008】
これに対し、オートサーマル型燃料改質装置においては、上記改質反応に加え、下記式に示す部分酸化反応も同時に起こっている。
【0009】
【数3】
Figure 2004269332
【0010】
このように、部分酸化反応は発熱反応であり、この反応により発生した熱量を上記改質反応に利用できる。したがって、オートサーマル型燃料改質装置においては外部加熱装置が不要であるために、小型化が可能になるのである。
【0011】
しかしながら、上述した部分酸化反応の反応速度は、水蒸気改質反応の反応速度よりも速い。このため、炭化水素と水蒸気と酸素との混合ガスを反応器内に導入すると、反応の入口近傍で部分酸化反応が優先して起こり、この領域が高温となって触媒の劣化を招くという問題があった。
【0012】
また、従来のオートサーマル型燃料改質装置では、燃料ガスと水蒸気、酸素含有ガスとを混合して、部分酸化反応と水蒸気改質反応を同時に起こしている。このため、反応器の上流部側では主として反応速度の速い部分酸化反応が起こり、下流部側では主として反応速度の遅い水蒸気改質反応が起こることとなる。これにより、反応器の下流部側の温度が降下して水蒸気改質反応が活発化せず、水素リッチガスが充分に得られないという問題があった。
【0013】
これらの問題を解決するため、上記二つの反応をそれぞれ促進する触媒活性成分の担持量を調整して、部分酸化反応による発熱量と、水蒸気改質反応による吸熱量をバランスさせ、触媒全体を所望の温度に維持する燃料改質方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0014】
【特許文献1】
特開平9−315801号公報
【特許文献2】
特開2002−104808号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献2の方法では、触媒の調製が容易ではないという問題があり、さらには燃料改質性能が充分ではないという問題もあった。
【0016】
そこで、本発明が目的とするところは、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、反応器内の温度分布が均一で、燃料改質性能に優れた燃料改質装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、熱伝導性のよい化合物を燃料改質触媒に混合することで、部分酸化反応で発生した熱が該化合物を通じて効率よく燃料改質装置の下流部側へ送られることを見出した。特に、熱伝導率が50W/m・K以上の化合物を含有する燃料改質触媒を燃料改質装置に配置することで、反応器内の温度分布がより均一化され、その結果、より優れた燃料改質性能が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
すなわち本発明は、熱伝導率が50W/m・K以上の化合物を含有する燃料改質触媒が配置される、燃料改質装置を提供するものである。
【0019】
また本発明は、前記記載の燃料改質装置と、該装置からの排出ガスに含まれる一酸化炭素を水性ガスシフト反応により低減するシフト反応器と、該シフト反応器からの排出ガスに含まれる一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去装置と、固体高分子型燃料電池とを固体高分子燃料電池システムを提供するものである。
【0020】
さらに本発明は、前記記載の燃料改質装置を搭載した燃料改質式水素発生システム、燃料電池システム、または燃料改質式燃料電池自動車を提供するものである。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、熱伝導率が50W/m・K以上の化合物を含有する燃料改質触媒を燃料改質装置に配置することで、燃料改質装置の上流部側における部分酸化反応で発生した熱を、効率よく下流部側へと送ることができる。その結果、燃料改質装置内の温度分布が均一化され、燃料改質性能に優れる燃料改質装置が得られる。特に、燃料改質触媒が、白金、ロジウム、パラジウムおよびルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属元素を担持および焼成させて得たものであると、より優れた燃料改質性能が得られ、効率的に水素ガスが発生しうる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、熱伝導率が50W/m・K以上の化合物(本明細書中、「熱伝導性化合物」とも称する。)を含有する燃料改質触媒が配置される、燃料改質装置である。
【0023】
オートサーマル型燃料改質触媒においては、吸熱反応である水蒸気改質反応により主に水素を発生させているが、この吸熱反応に必要な熱量は、発熱反応である燃料炭化水素の部分酸化反応により賄われている。ここで一般に、吸熱反応に比べて発熱反応は反応速度が速い。したがって、従来使用されているオートサーマル型燃料改質装置においても、燃料ガスが供給される上流部側において部分酸化反応が優先して起こり、触媒の温度が上がりすぎるという問題があった。また、部分酸化反応により発生した熱量が効率よく水蒸気改質反応に利用されないために、余剰の熱量が外部に逃げてしまい、改質効率の低下を招いていた。
【0024】
従来、触媒基材として用いられていたAlの熱伝導率は36〜46W/m・Kと低く、部分酸化反応により発生した熱量を外部に放散させずに水蒸気改質反応に利用させることは困難であった。これに対し、本発明では熱伝導性に優れる化合物を含有する燃料改質触媒を燃料改質装置に配置することでこの問題を解決した。これら化合物の熱伝導率は、好ましくは50W/m・K以上、より好ましくは200W/m・K以上、特に好ましくは300W/m・K以上である。50W/m・K未満では温度分布を均一化する効果が充分得られない。このような熱伝導性化合物としては、例えば炭化ケイ素(SiC:熱伝導率270W/m・K)、窒化アルミナ(AIN:熱伝導率260W/m・K)、窒化ホウ素(BN:熱伝導率319W/m・K)、酸化亜鉛(ZnO:熱伝導率54W/m・K)のような化合物があるが、好ましくは、熱伝導率の大きさから、SiC、AINまたはBNが使用されうる。これらの化合物はその熱伝導率の大きさから、温度分布を均一化する作用に優れ、その結果得られる燃料改質装置も、従来と比較して炭化水素転化率およびH+CO生成率に優れるためである。
【0025】
なお、本発明において、「炭化水素転化率」とは、下記式にしたがって算出するものとする。
【0026】
【数4】
Figure 2004269332
【0027】
また、「炭化水素転化率に優れる」とは、温度500℃におけるその燃料改質装置の有する炭化水素転化率が94〜100%のものをいう。さらに、「H+CO生成率」とは、全ガス中の水素濃度と一酸化炭素濃度の合計値であり、「H+CO生成率に優れる」とは、温度500℃におけるその触媒の有するH+CO生成率が1.3〜1.42%のものをいう。以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明の燃料改質装置は、少なくとも改質触媒を充填する触媒充填部を有するが、その他、原料供給口および酸素や空気などの分子状酸素含有ガスの供給口、水蒸気供給口とを有する。原料ガスが水蒸気や分子状酸素含有ガスとともに触媒充填部に供給される際の起動時の混合ガス温度は一般に−30〜50℃である。原料ガスは改質触媒によってCHに分解されるが、この反応は発熱反応であり、触媒充填部出口では一般に温度300〜800℃に達する。
【0029】
本発明で使用される触媒としては、担体に、白金、ロジウム、パラジウムおよびルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属元素を担持および焼成させて得たものがある。このような貴金属元素は水蒸気改質反応(例えば、CHOH+HO→3H+CO)に優れるため好ましく、特にロジウムは耐久性や触媒活性にも優れるため好ましい。
【0030】
前記触媒に担持させる貴金属元素の担持量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、金属換算で触媒あたり0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜6質量%である。この範囲で貴金属元素の担体上での分散性に優れ、その結果高い触媒活性が確保されるためである。ここで「触媒あたり」とは、熱伝導性化合物を含有する燃料改質触媒あたり、を意味する。
【0031】
前記触媒の担体としては、特に限定されることなく使用することができるが、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化セリウム、セリウム−ジルコニウム複合酸化物などを使用することができる。好ましくは、酸化アルミニウムまたは酸化セリウムを使用することができる。これらの酸化物に貴金属を担持すると、炭化水素転化率およびH+CO生成率に優れる触媒となるためである。なお、担体のBET比表面積は、好ましくは10〜300m/g、より好ましくは40〜300m/gである。また、担体の平均粒子径は、好ましくは0.1〜3μm、より好ましくは0.1〜50μmである。
【0032】
前記貴金属元素を担持させる担体の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、触媒あたり0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜6質量%である。この範囲では貴金属元素の担体上の分散性に優れており、その結果触媒活性に優れるためである。
【0033】
本発明に使用する燃料改質触媒は、特に制限されることなく従来公知の技術を用いて調製することができる。例えば、前記担体に担持すべき貴金属元素を含有する触媒調製溶液を用いて、含浸法、共沈法、競争吸着法など各種の技術を用いて前記貴金属元素を担持した後、焼成し、熱伝導性化合物と混合、焼成することにより調製してもよい。また、前記担体と熱伝導性化合物とを混合した後、担持すべき貴金属元素を含有する触媒調製溶液を用いて、前記各種の技術を用いて前記貴金属元素を担持し、その後焼成することにより調製してもよい。
【0034】
以下、本発明に使用する燃料改質触媒の調製方法を、順を追って説明する。
【0035】
まず、前記貴金属元素を担持させる際の処理条件は、各種方法に応じて適宜選択することができる。通常は、前記担体、または前記担体および熱伝導性のよい化合物の混合物と前記触媒調製溶液とを20〜90℃で1分間〜10時間、接触させる。例えば、前記貴金属元素を含む化合物を溶解または分散した触媒調製溶液を用い、前記担体、または前記担体および熱伝導性化合物の混合物を含浸させ、これを乾燥および焼成して焼成物を得てもよい。前記触媒調製溶液の溶媒としては、水のほか、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、カルボン酸類等、前期元素を含む化合物が溶解できる溶媒を広く使用することができる。
【0036】
その後、前記担体、または前記担体および熱伝導性化合物の混合物を乾燥するが、乾燥方法としては、例えば自然乾燥、蒸発乾固法、ロータリーエバポレーター、噴霧乾燥機、ドラムドライヤーによる乾燥などを用いることができる。その後焼成することができ、焼成条件は、通常、焼成温度200〜1000℃で、焼成時間は30〜480分で充分である。
【0037】
本発明で使用する燃料改質触媒は、前記担体に、さらにマンガン、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅から選ばれる少なくとも1種類の元素を担持させたものであってもよい。これらの添加によって炭化水素転化率および/またはH+CO生成率が向上するからである。これらの担持量は、好ましくは触媒あたり0.5〜40質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%である。これらの添加成分は前記貴金属と同時に担持させてもよく、別個に担持させてもよい。別個に担持させるには、前記添加成分を担持させた担体を、貴金属元素を含有する化合物を溶解または分散させた溶媒中に含浸させ、その後焼成すればよい。なお、含浸法のほか、共沈法、競争吸着法など各種の公知技術を利用することができる。
【0038】
本発明で使用する燃料改質触媒は、さらにアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移元素等を含んでいてもよい。
【0039】
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が好ましい。また、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が好ましい。そして希土類としては、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム等が好ましい。さらに、遷移元素としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅等が好ましい。これら添加物の添加量は、特に制限されることはないが、添加量により炭化水素添加率やH+CO生成率を変化させることができるため、所望の特性が得られる添加量にすることが好ましい。通常、触媒あたり0〜40質量%担持することにより制御可能である。なお、これらの成分の担持は、前記貴金属元素や添加成分の担時と同時に行ってもよく、別個に行ってもよい。
【0040】
本発明において、燃料改質触媒中の熱伝導性化合物の含有量は特に制限されることはないが、好ましくは8.3〜50質量%、より好ましくは33.3〜50質量%である。熱伝導性化合物の含有量をこの範囲で調整すると、炭化水素添加率および/またはH+CO生成率を調整することができる。さらには、供給される炭化水素燃料の温度や種類、該燃料の分解反応で発生する熱量の変化に応じて、触媒活性値を至適の値に制御することができる。
【0041】
本発明に使用する燃料改質触媒は、熱伝導性化合物を含有することにより触媒全体としても熱伝導性に優れる。この熱伝導性化合物を含有する触媒全体としての熱伝導率は、特に限定されるものではないが、好ましくは60W/m・K以上であり、より好ましくは100W/m・K以上である。
【0042】
本発明に使用する燃料改質触媒の使用形態としては、特に制限されるものではないが、好ましくは、本発明に使用する触媒は、ハニカムモノリスに担持させてモノリス触媒として用いられうる。ハニカムモノリスを使用すると、改質装置の触媒充填部への触媒の充填が容易であり、かつ、ハニカム構造によって原料ガスや改質ガスの通気性が確保されるためである。さらには、原料ガスを供給した際に、該触媒を熱や焼成から防ぐことができるため、触媒寿命および触媒活性が向上しうる。
【0043】
ハニカムモノリスを構成する素材としては、例えば、メタルフォーム(Ni−Cr、400セル〜2500セル、直径100mmφ、熱伝導率40W/m・K)、メタルハニカム(400セル〜3000セル、熱伝導率12〜20W/m・K)、オフセットフィン(400セル〜3000セル、熱伝導率12〜20W/m・K)、セラハニカム(セラミックス、400セル〜3000セル、直径35mmφ、熱伝導率0.8〜2.9W/m・K)またはセラフォーム(セラミックス、81セル〜900セル、直径75mmφ、熱伝導率12〜20W/m・K)等がある。いずれもが特に制限されることなく使用されうるが、熱伝導率に優れる点で、好ましくはメタルフォーム、メタルハニカムまたはオフセットフィンが、特に好ましくはメタルフォームが用いられうる。さらに、メタルフォームを用いる場合には以下の利点もある。メタルフォームはメタルハニカム、セラハニカムおよびオフセットフィン担体等と比較して、流路が複雑に入り乱れている。このため、圧損も大きいが、燃料流量が大きく変動しても、メタルフォームの緩衝作用により、後段のシフト反応器および一酸化炭素除去器への負荷を減少させることができる。すなわち、メタルフォームを用いると、シフト反応器や一酸化炭素除去器のロバスト性を高めることができるため好ましいのである。なお、通気性や触媒活性を確保するために、セル幅は0.01〜10mm、1リットルあたりのセル数は100〜10000であることが好ましい。
【0044】
ハニカムモノリスへの触媒の担持は、例えば以下のように行うことができる。予め熱伝導性化合物を含有する燃料改質触媒を調製し、これらを1〜10倍の水で攪拌および粉砕して触媒スラリーを調製し、次いでハニカムモノリスに該触媒スラリーを塗布し、該ハニカムモノリスを乾燥および焼成して製造することができる。
【0045】
本発明では、該モノリス触媒の平均貴金属量は、該モノリス触媒1リットルあたり好ましくは0.1〜12g、より好ましくは2.4〜4.0gである。0.1gを下回ると水素発生量が十分ではなく、12gを超えると、貴金属が凝集して触媒活性を発揮できない場合がある。
【0046】
本発明の改質装置に供給する原料ガスは、炭素数1〜20の炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、デカン、イソデカン等がある。改質装置に供給する際の炭化水素の濃度は、好ましくは1〜10体積%、より好ましくは1〜5体積%である。また、原料ガスの供給量は、触媒充填部に対して液空間速度(LHSV)が20〜30h−1である。
【0047】
本発明の第二は、第一の発明の燃料改質装置と、該装置からの排出ガスに含まれる一酸化炭素を水性ガスシフト反応により低減するシフト反応器と、該シフト反応器からの排出ガスに含まれる一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去装置と、固体高分子型燃料電池とを含む固体高分子燃料電池システムである。以下、本発明を図1を参照して説明する。
【0048】
図1は、本発明の固体高分子燃料電池システムの概略構成を示すブロック図である。例えば、メタノールを燃料とする固体高分子燃料電池システムは、図1に示すようにメタノールを本発明の改質装置で改質して水素と一酸化炭素とを含む改質ガスを生成させる。該改質ガスをシフト反応器に供給し、該ガスに含まれる一酸化炭素を水性ガスシフト反応により低減させる。次いでシフト反応器出口ガスに含まれる一酸化炭素を除去する触媒層を備えた一酸化炭素除去装置に供給して、一酸化炭素を低減させ、高純度の水素ガスを固体高分子型燃料電池に供給する。なお、シフト反応器からの排出ガスは、予め冷却部で冷却してから一酸化炭素除去器に供給すると、一酸化炭素の除去効率に優れる。
【0049】
シフト反応器に充填されるシフト触媒は、例えばPt系、Cu−ZnO系触媒等の従来公知の触媒を使用することができ、CO除去器に充填するCO除去触媒も、例えば、Pt系、Ru系触媒等の従来公知の触媒を使用することができる。
【0050】
なお、固体高分子型燃料電池は、水素イオンを選択的に透過する固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで挟持して構成され、アノードとカソードによって供給される燃料ガスの電気化学反応により起電力が生じ、発電される。
【0051】
本発明の燃料改質装置は、上述の通り熱伝導性に優れる化合物を含有する燃料改質触媒を燃料改質装置に配置した。このため、燃料改質装置の上流部側における部分酸化反応で発生した熱を、効率よく下流部側へと送ることができる。その結果、燃料改質装置内の温度分布が均一化され、炭化水素転化率およびH+CO生成率に優れる燃料改質装置が得られる。また、原料ガス濃度や供給温度が変動しても効率的に炭化水素を分解して水素を発生できるため、搭載範囲の限定される自動車等においても有効に利用することができる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0053】
本発明で使用する燃料改質触媒の調製方法は以下の通りである。
【0054】
(触媒調製実施例1)
(1)Al(熱伝導率36〜46W/m・K)を担体として用い、0. 058モルの硝酸ロジウムの水溶液0.36リットル中に該担体を投入 しロジウム元素を含浸させ、十分に攪拌した後に一日乾燥させ、その後
500℃で焼成を行い、ロジウム担持Al触媒を得た。
【0055】
さらに、同様な方法で同量のロジウムを逐次含浸し、4質量%のロジウム元素
を含有するロジウム担持Al触媒を得た。
【0056】
(2)硝酸ロジウムに替えて、硝酸プラチナ、硝酸ルテニウムおよび硝酸パラジウムを使用したこと以外は、上記(1)と同様にして、それぞれPt、RuおよびPdをAlに担持させ、各貴金属担持Al触媒を得た。
【0057】
(3)上記(1)または(2)で得た触媒200gと、熱伝導性化合物であるSiC(熱伝導率270W/m・K)200gとを、(1:1)で物理混合し、各触媒粉末を得た。
【0058】
(4)上記(3)で得た各触媒粉末400gにそれぞれ水1.0リットルを添加した後、各触媒粉末を湿式粉砕して各触媒スラリーを調製した。なお、粉砕は、市販のボール式振動ミルを用いて行い、ボール径、粉砕時間、振幅、振動周波数を調整して平均粒子径が2〜3μmのスラリーとした。
【0059】
(5)上記(4)で得た各触媒スラリーをセラミック製ハニカムモノリス(以下、「セラハニカム」と称する。)(6ミル、400セル)(熱伝導率0.8〜2.9W/m・K)に、セラハニカム1リットルあたりの合計塗布量が120gになるように塗布し、120℃で乾燥し、空気中400℃で焼成して、表1の反応例1に示すモノリス触媒A、B、CおよびDを得た。
【0060】
(反応実施例1)
上記(触媒調製実施例1)で調製した触媒のイソオクタン改質反応試験を行った。触媒量を5mLにして触媒担持セラハニカムを石英管に充填し、液空間速度(LHSV)がLHSV=20、25および30h−1になるように、イソオクタン、水蒸気、空気の混合ガスを導入した。この際のS/C=1.5、O/C=0.4とした。反応温度は入口温度を500℃に固定し、燃料電池原料成分であるH+CO生成率(%)、およびイソオクタン転化率(%)とを測定した。なお、イソオクタン転化率は、下記式にしたがって算出した。
【0061】
【数5】
Figure 2004269332
【0062】
また、CO生成率は、規定のCOボンベガスから検定された検量線をもとに算出し、H生成率は、規定のHボンベガスから検定された検量線をもとに算出した。なお、いずれもガスクロマトグラフィーにより測定したが、サンプリング量の誤差の影響を排除するために、窒素を内標準として用いることにより測定した。
【0063】
触媒組成、イソオクタン転化率、H+CO生成率を表1の反応例1の項に示す。これよりわかるように、Rhを担持したときは他の金属を担持したときに比べて、イソオクタン転化率およびH+CO生成率がともに高い。これはRhが他の金属に比べて、高温域(入口温度400℃以上)でのオートサーマル型燃料改質反応に有効な貴金属であるからである。また、いずれの触媒も、LHSV=20、25、30h−1と大きくなるにつれてイソオクタン転化率およびH+CO生成率がともに減少した。これは、LHSVが高くなると、供給される燃料ガスが触媒層に接触する時間が短くなるためと考えられる。
【0064】
(触媒調製比較例1)
熱伝導性化合物SiCに替えて、熱伝導性の低いAl(熱伝導率36〜46W/m・K)を使用したこと以外は、上記(触媒調製実施例1)と同様にして、RhをAlに担持させ、セラハニカムに塗布し、モノリス触媒Eを得た。
【0065】
(反応比較例1)
上記(触媒調製比較例1)で調製した触媒について、上記(反応実施例1)と同様にして、イソオクタン改質反応試験を行った。結果を表1の比較例1の項に示す。
【0066】
これよりわかるように、触媒A、B、CおよびDのいずれもが、触媒Eと比較して、イソオクタン転化率およびH+CO生成率がともに高い。したがって、熱伝導性化合物であるSiCを含有する触媒を用いることによって、燃料改質装置の改質性能が向上することがわかる。これは、SiCを含有することによって、触媒層の熱伝導性が増加し、部分酸化反応で発生した熱が放散する前に下流部側へと送られ、水蒸気改質反応に効率よく利用されるためであると考えられる。
【0067】
(触媒調製実施例2)
熱伝導性化合物SiCに替えて、AIN(熱伝導率260W/m・K)およびBN(熱伝導率319W/m・K)を使用したこと以外は、上記(触媒調製実施例1)と同様にして、モノリス触媒FおよびGを得た。
【0068】
(反応実施例2)
上記(触媒調製実施例2)で調製した触媒について、上記(反応実施例1)と同様にして、イソオクタン改質反応試験を行った。結果を表1の反応例2の項に示す。
【0069】
これよりわかるように、触媒EおよびFのいずれもが、触媒Aと同程度のイソオクタン転化率およびH+CO生成率を示した。したがって、SiC、AINおよびBNのいずれを燃料改質触媒に用いた場合にも改質性能に優れる改質装置を得られると考えられる。
【0070】
(触媒調製実施例3)
Rh担持Al触媒と、熱伝導性物質であるSiCと、トータルコート量を合わせるための希釈剤であるAlを1:1:0(SiC含有量50%)、1:0.67:0.33(同33.5%)、1:0.33:0.67(同16.5%)および1:0.17:0.83(同8.5%)の質量比で混合したこと以外は、上記(触媒調製実施例1)と同様にして、モノリス触媒H、I、Jを得た。
【0071】
(反応実施例3)
上記(触媒調製実施例3)で調製した触媒について、上記(反応実施例1)と同様にして、イソオクタン改質反応試験を行った。結果を表1の反応例3の項に示す。
【0072】
これよりわかるように、触媒A、Hは、SiCの含有量が多いことから、部分酸化反応で生じた熱が効率よく水蒸気改質反応に使われるため、高い触媒活性を示している。これに対し、触媒I、J、特に触媒Jは、熱伝導性化合物の含有量が少ないため、それほど優れた改質性能を示さない。
(触媒調製比較例2)
燃料改質触媒は使用せず、熱伝導性物質SiCのみを使用し、上記(触媒調製実施例1)と同様にして、モノリス触媒Mを得た。
【0073】
(反応比較例2)
上記(触媒調製比較例3)で調製した触媒について、上記(反応実施例1)と同様にして、イソオクタン改質反応試験を行った。結果を表1の比較例3の項に示す。
【0074】
これよりわかるように、触媒Mは触媒成分を全く含有していないため、当然ながら全く改質性能を示さなかった。
【0075】
(触媒調製実施例4)
セラハニカムに替えて、メタルフォーム(900セル)(熱伝導率40W/m・K)、メタルハニカム(900セル)(熱伝導率12〜20W/m・K)およびオフセットフィン(900セル)(熱伝導率12〜20W/m・K)を使用したこと以外は、上記(触媒調製実施例1)と同様にして、モノリス触媒L、MおよびNを得た。
【0076】
(反応実施例4)
上記(触媒調製実施例4)で調製した触媒について、上記(反応実施例1)と同様にして、イソオクタン改質反応試験を行った。結果を表1の実施例4の項に示す。
【0077】
これよりわかるように、触媒L、MおよびNは、いずれも触媒Aよりもイソオクタン転化率およびH+CO生成率に優れる。これは、メタルフォーム、メタルハニカムおよびオフセットフィンはいずれもセラハニカムよりも熱伝導率が高いためであると考えられる。以上より、メタルフォーム、メタルハニカムおよびオフセットフィンのいずれをハニカム担体として燃料改質触媒を作製した場合にも改質性能に優れる改質装置を得られると考えられる。
【0078】
【表1】
Figure 2004269332

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、冷却手段を含む固体高分子燃料電池システムの概要を示す図である。

Claims (11)

  1. 熱伝導率が50W/m・K以上の化合物を含有する燃料改質触媒が配置される、燃料改質装置。
  2. 前記化合物が、SiC、AINおよびBNからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の燃料改質装置。
  3. 前記触媒が、担体に、白金、ロジウム、パラジウムおよびルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属元素を担持および焼成させて得たものである、請求項1または2に記載の燃料改質装置。
  4. 前記化合物の含有量が、前記燃料改質触媒あたり8.3〜50質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料改質装置。
  5. 前記燃料改質触媒の熱伝導率が60W/m・K以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料改質装置。
  6. 前記燃料改質触媒が、ハニカムモノリスに担持されるものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料改質装置。
  7. 前記ハニカムモノリスが、メタルフォーム、メタルハニカムおよび/またはオフセットフィンのいずれかである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料改質装置。
  8. 前記ハニカムモノリスが、メタルフォームである、請求項7に記載の燃料改質装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料改質装置と、該装置からの排出ガスに含まれる一酸化炭素を水性ガスシフト反応により低減するシフト反応器と、該シフト反応器からの排出ガスに含まれる一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去装置と、固体高分子型燃料電池とを含む固体高分子燃料電池システム。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料改質装置を搭載した燃料改質式水素発生システム、燃料電池システム、または燃料改質式燃料電池自動車。
  11. 熱伝導率が50W/m・K以上の化合物を含有する燃料改質触媒。
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