JP2004269296A - 水の分解による水素製造法とそれに使用する反応媒体 - Google Patents

水の分解による水素製造法とそれに使用する反応媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】フェライトを反応媒体とする二段階水分解熱化学サイクルによって水素を製造する方法において、1400℃以下の比較的低温でも優れた高反応性とともに、優れた反応媒体のサイクル性を得ること。
【解決手段】反応媒体として、ジルコニア微粉によって担持されたフェライト微粉、あるいは、Mn、CoまたはMgによってドープされたフェライト微粉を反応媒体として使用する。
【選択図】 なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽エネルギーあるいは工業廃熱などを利用して水を分解して水素を製造する方法、とくに、二段階水分解熱化学サイクルにより水素を製造する方法と、その反応に使用される反応媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、水分解反応による水素製造は、多くは、ナフサを原料とする水蒸気改質法を用いて製造されているが、近年、環境問題と深く関わったエネルギー問題を解決するための手段の一つとして、太陽熱や工業廃熱などの熱エネルギーを水素エネルギーへ変換する方法が注目されている。
【0003】
係る熱エネルギーを水分解のエネルギー源として水素を製造する方法として、従来から熱化学サイクル法が知られており、太陽エネルギーを使う場合は、熱化学サイクル法の他に、光化学法もある。
【0004】
光化学法は、分子分解やイオン分離反応を熱の代わりに光を用いて反応を進めようとするものであるが、実用化のためにはエネルギーの利用効率に問題がある。
【0005】
一方、熱エネルギーによってHO→H+1/2Oの一段階の水分解反応を行う場合は、熱力学的に4000℃(1気圧)の高温を要するため、実現不可能である。
【0006】
しかしながら、この反応を多段階化した熱化学サイクル法は反応を低温化することができる。しかし、従来の1000℃以下で作動する熱化学サイクル法では、反応が3〜6段階で複雑となり、反応装置の大型化を招き、さらに腐食性のガスを高温で用いるので反応炉の炉材がコスト高となるため、実用化が難しい。そこで1000℃以上ではあるが、金属酸化物redox触媒を反応媒体とした2段階水分解熱化学サイクル法が、エネルギー効率も良く、腐食性ガスを使用しないことから、新しい熱エネルギー/化学エネルギー転換法として有望視されるようになった。
【0007】
ここで、二段階水分解熱化学サイクルとは、下記の2つの化学反応式を繰り返す水素の製造プロセスであり、第一段階で金属酸化物(metal oxide MOox)を高温熱分解反応によって還元して還元金属酸化物(reduced metal oxide MOred)を生成するとともに酸素を発生し、第二段階で還元金属酸化物を水と反応させて、還元金属酸化物を金属酸化物に酸化させるとともに水素を発生し、しかも、金属酸化物は繰り返し反応に使用するサイクルを意味する。
【0008】
MOox→MOred+1/2O
MOred+HO→ MOox+H
この反応のために反応媒体として使用する金属酸化物としてのMOoxとしては、フェライトと称せられる鉄系酸化物(マグネタイトFe)が一般的に使用され、第一段階でその鉄系酸化物は、還元鉄系酸化物(ウスタイトFeO)に還元されて酸素を放出し、さらに第二段階での水との反応で水素を放出し、反応媒体は鉄系酸化物(マグネタイトFe)に戻り再使用される。
【0009】
上記反応式において、第一段階で酸素を放出するプロセスには一般に1800〜2300℃の高温雰囲気が必要である。ところが、この酸素放出反応におけるこのような高温下では鉄系酸化物の激しい気化が起こるため、その気化物をクエンチ(急冷)する必要があり、これが、この二段階水分解熱化学サイクルの実用化を困難にしている。
【0010】
さらに、第一段階での酸素を放出する温度を熱力学的計算上低下させるとされるMn、CoあるいはMg等の金属イオンを反応媒体であるFeにドープすることも試みられたが、実際には酸素放出反応におけるFeの還元率が著しく低く実用的な反応性は得られていない。
【0011】
反応媒体として鉄系酸化物を使う場合、充分な反応性が得られない原因は、酸素放出反応時の高温において、Feが焼結し、この焼結によってFeの反応表面積が低下することにある。
【0012】
また、この2段階水分解熱化学サイクルにおける酸素放出のための反応温度を低下させるために、鉄系酸化物と他の金属酸化物を併用して使用する方法も検討されている。例えば、特許文献1には、マンガンフェライトに炭酸塩を添加し、ある温度条件の下で水蒸気を加えて反応させることが記載されている。すなわち、特許文献1に記載のシステムは、下式のように、Mn−Feの酸化物に炭酸塩を添加した反応媒体に水蒸気を加えて反応させ、反応生成物と水素を発生させるものである。
【0013】
2MnFe+3NaCO+HO→
6Na(Mn1/3,Fe2/3)O+3CO+H
この反応系においては、ほぼ、600℃の低温で酸素放出反応が行われる利点があるが、MnFeを再生する際には、Hとともに放出されるCOを分離回収し、再利用するシステムが必要となり、装置としての大型化と複雑化を招くことになる。また、生じるアルカリ炭酸塩のために反応器を腐食されやすいので、対腐食性に優れた高価なNi合金やCr合金の反応器を必要とする欠点がある。
【0014】
さらに、他の水素製造法として特許文献2には、下式にしたがって金属亜鉛とマグネタイト(Fe)とを水と反応させて、水素とともに、ZnFeを形成させるものである。
【0015】
3Zn+2Fe+4HO=3ZnFe+4H
そして、合成されたZnFeをさらに下式にしたがって1300℃で加熱することで分解し、分解反応の生成物として酸素を発生させて、反応媒体としてのマグネタイトを再生するものである。
【0016】
ZnFe=3Zn+2Fe+2O
しかしながら、この反応系においては、金属亜鉛蒸気が発生するため、これをクエンチするための反応装置が必要となる。このクエンチによるエネルギー損失は大きく、また、システムの大型化につながる問題がある。
【0017】
【特許文献1】
特開平11−21101号公報
【0018】
【特許文献2】
特開2001−270701号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フェライトを反応媒体とする二段階水分解熱化学サイクルによって水素を製造する方法における上記諸問題を解消するもので、とくに、1400℃以下の比較的低温でも、優れた高反応性とともに、優れた反応媒体のサイクル性を得ることにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ジルコニアが比較的高温でもそれ自体の結晶成長が抑えられ、そのことが反応媒体としてフェライトの焼結を抑制する機能を有する点に着目して達成した。
【0021】
すなわち、本発明は、フェライトを反応媒体とする二段階水分解熱化学サイクルによる水素製造方法において、反応媒体として、フェライト微粉をジルコニア微粉によって担持させたフェライト−ジルコニア複合体を使用することを特徴とする。
【0022】
本発明でいうフェライトとは、M(II)O・Fe型の酸化物を意味し、M(II)は、Fe、Mn、Co、Mg、Ni、Zn、Cu等の2価金属であり、それを構成する酸化物として、いかなる形態のもの、例えば、スピネル型結晶構造を持つFeを使用することができる。2価金属は、イオンとしてMn、Co、Mg等をドープするのも有効である。
【0023】
本発明に使用するジルコニアは、セラミックス原料あるいは耐火物原料として一般的に使用されているものが使用できる。また、ジルコニアに、CaO、MgOあるいはY等の他の金属酸化物を少量含んでいても問題ない。
【0024】
本発明において、フェライト微粉をジルコニア微粉によって担持させることとは、Feの微粉とジルコニアの微粉とが絡み合ってくっついた状態のものを意味する。
フェライト微粉とジルコニア微粉のそれぞれの大きさは、10μm以下、好ましくは1μm以下である。10μmを超えると反応性が低下する。この微粉の大きさは、二段階水分解熱化学サイクルに使用する前の大きさである。フェライトの焼結が抑制されるフェライト微粉を担持したジルコニア微粉との複合粉末といえども、繰り返し使用することによって、ある程度の粒子相互の焼結による粒子径の増大は避けることはできない。
【0025】
フェライト微粉をジルコニア微粉に担持させる方法としては、種々の手段が適用できる。その第一は、二価鉄の水酸化物のコロイド水溶液にジルコニア微粉を分散させた後、空気を吹き込みその表面にFeが析出したジルコニア粒子を乾燥する方法である。これによって、1μm以下のジルコニア粒子と1μm以下のFe微粉が絡み合った複合微粉体が得られる。また、両微粉を溶液中に分散した後、スプレードライ法などで増粒する方法が適用ができる。さらには、いわゆる触媒含浸法を適用しても調製できる。すなわち、硝酸鉄、塩化鉄、有機酸鉄などの金属塩と、同じくドープ金属の金属塩の水溶液に、ジルコニア粒子を分散させ、これを蒸発乾固させた後、焼成してジルコニア上の金属塩を金属酸化物にする。これをH/HO混合ガス雰囲気下、あるいはCO/CO混合ガス雰囲気下で酸素分圧を調整しながら300℃以上で焼成することによっても調製できる。
【0026】
このフェライト微粉を担持するためには、ジルコニアの他に、アルミナ、シリカ、チタニア等も考えられるが、ジルコニア以外を使用する場合には、二段階水分解熱化学サイクルにおける酸素放出時の通常の1200℃以上の反応温度では、担体が反応媒体と反応してしまう。
【0027】
本発明によるフェライト微粉をジルコニア微粉によって担持した反応媒体を使用しての二段階水分解熱化学サイクルによる水素の製造方法は、下記化学式で酸素を放出させた後、この酸素を放出した反応媒体を水と反応させて水素を放出するものである。
【0028】
Fe3− =3(M /3,Fe1− /3)O+1/2O(1)
3(M /3,Fe1− /3)O+HO=MFe3− +H(2)
ここで、M=Mn、CoまたはMgである
ジルコニアは、二段階水分解熱化学サイクルにおいて、1200℃以上の高い反応温度でも、少なくとも1600℃以下では、酸化鉄と反応しないため、フェライトの反応性を阻害することがない。
【0029】
本発明において、反応媒体であるフェライト微粉をジルコニア微粉によって担持することによって、水分解の反応サイクルを繰り返しても、フェライトの粒成長の速度は極めて小さい。この理由は、ジルコニア微粒子が高温でも焼結しにくく、これに担持された酸化鉄微粒子は互いに密に接触することが妨げられて、粒成長が抑制されるものと推定される。
【0030】
これによって、酸化鉄微粒子の反応表面の高い反応性が保たれるため、従来よりも低温での反応が進み、反応媒体における低温での高反応性が維持でき、しかも、反応媒体の繰りかえし利用性に優れたものとなり、サイクル性が高くなる。
【0031】
しかも、本発明の反応系においては、高温の金属蒸気が発生しないためクエンチの必要がなく、しかも、ジルコニアは腐食性もないので、設備も耐腐食性を考慮した複雑な構造のものにする必要がない。
【0032】
本発明のフェライト微粉をジルコニア微粉に担持したフェライト/ジルコニア複合粉末を反応媒体として、二段階水分解熱化学サイクルに適用して水素を発生させる。具体的には、フェライト/ジルコニア複合粉末を高温耐久性のステンレス等の金属管内に充填して、反応容器中に多数設置し、1300〜1500℃に加熱しながら窒素ガスを流通することで、上記(1)の反応によってフェライト/ジルコニア複合粉末から酸素を放出する。その後、温度を1000℃に下げて水蒸気を導入すると、上記(2)の反応式によって水が分解され水素が発生する。フェライト/ジルコニア複合粉末は繰り返し使用することができる。
【0033】
また、太陽熱で反応を行う場合には、反応容器に石英窓を設置し、そこから集光した太陽光を入射し、反応容器内では、フェライト/ジルコニア複合粉末に窒素ガスを流通して流動層、あるいはその噴流層をつくり、これに集光した太陽光を直接照射させて反応を行うことも可能である。このような場合は、フェライト/ジルコニア複合粉末が直接、光で加熱されるため、石英窓を含む反応容器壁は、フェライト/ジルコニア複合粉末より低温に保たれるので、反応容器の金属材料が安価となる。その後、温度を1000℃に下げて水蒸気を導入すると、上記(2)式に基づいて水が分解され水素が発生する。
【0034】
反応容器内にフェライト/ジルコニア複合粉末を設ける場合には、ハニカム、セラミックフォーム、充填剤等に担持して使用することも可能である。この場合も、太陽熱を使う場合には、石英窓を持った反応容器内に、石英窓からある程度離して、フェライト/ジルコニア複合粉末を担持したハニカム、セラミックフォーム、充填剤を設置することができる。石英窓を通して集光した太陽光を直接、ハニカム、セラミックフォーム、充填剤に照射して、これらの担持体だけを1300−1500℃の高温に加熱しながら窒素ガスを流通することで、担持した金属酸化物から酸素が放出される。その後、温度を1000℃に下げて水蒸気を導入すると、水が分解され水素が発生する。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を実施例によって説明する。
【0036】
あらかじめ、Mn(II)塩、あるいは他の金属イオン溶解させたFe(II)塩の水溶液に粒径1μm以下のジルコニア微粉を分散させ、これに水酸化ナトリウム水溶液を添加し、水溶液中にFe(II)水酸化物のコロイドを生成させた後、これに空気をバブリングさせて酸化した。
【0037】
Fe(II)水酸化物のコロイドが水溶液に溶解した後、Feとなって析出する溶解析出反応が進行するが、この際、分散させたジルコニア微粉上にFeが成長し、フェライト/ジルコニアの複合粉末が生成する。反応性の比較のため、Mn−フェライトの微粉を従来の共沈法で合成した。
【0038】
フェライト/ジルコニア複合粉末を白金皿に盛り、透明石英反応管内に設置し、Nガスを流通しながら、フェライト/ジルコニア複合粉末を赤外線イメージ炉で1300℃〜1500℃に加熱し、高温酸素放出反応を行った。次に反応生成物を石英反応管に充填して、HO/N混合ガスを導入し、1000℃へ加熱しながら水分解反応を行った。
【0039】
図1は、Mn−フェライト微粉 (unsupported Mn 38Fe 62)とMn−フェライト/ジルコニア複合粉末(Mn 36Fe 64/ZrO)との水素発生量を、使用した粉末1gあたりの水素量で比較した。酸素放出反応は1400℃で行い、二段階サイクル反応を4回繰り返した。Mn−フェライト/ジルコニア複合粉末のフェライト部分の化学組成はMn−フェライト微粉とほぼ同じであり、反応管に充填したフェライトの量は、Mn−フェライト/ジルコニア複合粉末の方が、Mnフェライト微粉の1/6にも関わらず、高い水素発生量を示している。反応前後のMn−フェライト/ジルコニア複合粉末をXRDで分析した。反応前のXRDパターンを図4aに示す。酸素放出反応後は、フェライト/ジルコニア複合粉末中のフェライトのスピネル型結晶構造のXRDピークがすべて消失し(図4b)、ウスタイト相の強いXRDピークが現れている。水分解後は、図4cに示すとおりウスタイト相のXRDピークがすべて消失し、フェライトのスピネル型結晶構造の強いピークが現れている。酸素放出反応後のMn−フェライト/ジルコニア複合粉末をXRDで分析した結果、フェライトの一部が還元体であるウスタイト相に転換していることが確認された。水分解反応後では、このウスタイト相がすべて消失し、フェライト相が再生していることがXRDで確認できた。Mn−フェライト/ジルコニア複合粉末の水素生成量を表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 2004269296
同表に示すように、Mn−フェライト/ジルコニア複合粉末の場合の水素発生量は1サイクル目で5.4Ncm−1であり、4サイクル目でも4.2 Ncm−1とほとんど低下していなかった。
【0041】
これに対して、Mn−フェライト微粉では、1サイクル目で1.9 Ncm−1とわずかであり、また、4サイクル目で0.79 Ncm−1に低下している。
【0042】
このことは、Mn−フェライト/ジルコニア複合微粉では、フェライトの焼結が抑制されており、サイクル反応性が向上するのと同時に、フェライト自身の酸素放出温度も微粒子化によって低温化することを意味する。
【0043】
図2及び図3において、左の縦軸は、金属酸化物1g当たりの水素の生成速度を、μmol/分で示したもの。実線の折れ線が水素生成速度を示す。右は1000℃への昇温過程の金属酸化物の温度変化でケルビンKで示してある。点線がその温度変化を表す。
【0044】
図2は、水分解反応時の水素生成速度を、本発明のMn−フェライト/ジルコニア複合粉末 (Mn 36Fe 64/ZrO)を比較例のMn−フェライト微粉(unsupported Mn 38Fe 62)と比較したものである。サイクル1回目と4回目で比較した。●は1サイクル目のMn−フェライト/ジルコニア複合粉末 の水分解反応、■は4サイクル目のMn−フェライト/ジルコニア複合粉末 の水分解反応、○は1サイクル目のMn−フェライト微粉の水分解反応、□は4サイクル目のMn−フェライト微粉の水分解反応を示す。Mn−フェライト/ジルコニア複合粉末の水分解反応は、実際には700℃〜800℃で進行し、Mn−フェライト微粉の約3〜7倍の水素生成速度をもっている。
【0045】
表1に示すフェライト/ジルコニア複合粉末のサイクル反応性をFe−フェライト/ジルコニア(Fe/ZrO)とMn−フェライト/ジルコニア(Mn 36Fe 64/ZrO)での比較を示す。酸素放出反応(1500℃)における水素発生量は、Fe−フェライト/ジルコニアで5サイクル反応を繰り返すと5.2 Ncm−1から1.1 Ncm−1に低下するのに対し、Mn−フェライト/ジルコニアでは6.4 Ncm−1から8.9 Ncm−1とむしろ増えている。フェライト/ジルコニアによるサイクル反応性の向上は、金属イオンドープ型のフェライトでより有効である。また、表1より担体のジルコニア自身からも1300℃以上の熱還元で酸素が放出されることが分かった。これによって次式に示すように、生じるジルコニア内の酸素空孔が1000℃以下で水と反応し水素を発生させる。
【0046】
ZrO=ZrO2− +1/2xO (x≦0.4)
ZrO2− +xHO=ZrO+xH
ジルコニアをフェライトの単体と複合することで、この反応がフェライトの相変化による水分解反応に加わる。したがってフェライト/ジルコニア複合粉末による水素発生量の一部にジルコニアからの水素発生量が加わることになる。
【0047】
また、Mnドープ量を増やしたMn 69Fe 31/ZrO、Co(II)をドープしたCo 38Fe 62/ZrOで検討した。図3が示すようにMn 36Fe 64/ZrOと比較すると、最大の水素生成速度が2〜8倍に向上した。特にCo 38Fe 62/ZrOで著しい向上が見られた。
【0048】
表1に見られるように、Mn 69Fe 31/ZrOでは1400℃における水素発生量が10.7 Ncm−1であり、Co 38Fe 62/ZrOでは、21.7 Ncm−1に達している。
【0049】
図5は水分解サイクル反応を行う前のZrOを担持させたMn−フェライト/ジルコニア複合粉末(Mn 36Fe 64/ZrO)をSEM観察したもので、粒径は1μm以下である。
【0050】
図6は、ZrOを担持したMn−フェライト/ジルコニア複合粉末を用いて6回水分解反応を繰り返した後のSEM観察結果を示す。サイクルの反応過程での焼結による増大によっても、粒径は約3.5μm程度に抑えられ、水分解反応性は維持されていることが分かる。
【0051】
図7は比較のため、Mn−フェライト(unsupported Mn 38Fe 62)の粒子の成長の状態を示す。同図に示すように、この場合、水分解反応前で既に粒子が10μmに成長していた。このMn−フェライトを用いて水分解反応を6サイクル繰り返すと粒径は約22μmに成長し、ほとんど水分解しなくなる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によって以下の効果を奏する。
【0053】
1 .反応媒体であるフェライトの結晶成長を抑え、サイクル反応性を維持することができる。
【0054】
2.ジルコニア自体の反応媒体としての機能が加わり、水素発生量が増大する。
【0055】
3.二段反応において酸素放出温度が低温化される。
【0056】
4.この低温化に伴ってクエンチを必要とせず、したがって大型設備を必要としない。
【0057】
5.したがって、太陽エネルギーなどの自然の熱エネルギーを水素の化学エネルギーに変換する方法の実現化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による反応媒体と比較例との水素発生量の比較を示す。
【図2】本発明による反応媒体と比較例との水素生成速度の比較を示す。
【図3】ドープによる水素生成速度の比較を示す。
【図4】水分解反応時の固相のXRD変化を示す。
【図5】水分解サイクル反応前の本発明の反応媒体のSEM画像を示す。
【図6】水分解サイクルを6回繰り返した後の本発明の反応媒体のSEM画像を示す。
【図7】水分解サイクル反応前の比較例に係る反応媒体のSEM画像を示す。
【図8】水分解サイクルを6サイクル繰り返した後の比較例に係る反応媒体のSEM画像を示す。

Claims (4)

  1. フェライトを反応媒体として使用する二段階水分解熱化学サイクルによる水素製造法において、
    前記反応媒体を構成するフェライト微粉がジルコニア微粉に担持されている水の分解による水素製造法。
  2. フェライト微粉が、Mn、CoまたはMgによってドープされている請求項1に記載の水の分解による水素製造法。
  3. 二段階水分解熱化学サイクルに使用される反応媒体であって、ジルコニア微粉によって担持されたフェライト微粉から構成されている反応媒体。
  4. フェライト微粉が、Mn、CoまたはMgによってドープされている請求項3に記載の反応媒体。
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