JP2004267167A - 老化上皮幹細胞の取得方法 - Google Patents

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茂 安本
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Abstract

【課題】長期生存細胞の中でも特に発がんとの関連性が深いと予測される細胞を取得する手段を提供する。
【解決手段】以下の(1)〜(3)の工程を含む老化上皮幹細胞の取得方法。
(1)上皮細胞の懸濁液を、細胞外接着物質で被覆された培養容器中に滴下し、上皮細胞を培養容器に付着させる工程
(2)上皮細胞の付着した培養容器内に培地を加え、上皮細胞を培養する工程
(3)培養により産生する分化ケラチノサイトが死滅した後、残存している細胞を採取する工程
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、老化上皮幹細胞及び不死化老化上皮幹細胞の取得方法、並びに前記方法により取得された細胞に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のCTやNMRなどの機器の進歩により微少初期がんの発見が可能になり、がんの早期発見率は向上している。しかしながら、がんが顕在化するまでには長期の潜伏期間(通常15〜20年)が存在し、この間のがん細胞(前がん細胞)を特定し、その悪性化の指標を同定すればがんを阻止または予防する手段が提供される。
【0003】
がん細胞の検出方法としては、抗体によるがん関連抗原の検出方法等がすでに利用されている。しかし、これらの方法は、がんに対する感度および特異性が必ずしも高くないという問題がある。例えば、がん胎児性抗原(CEA)やα−フェトプロテイン(AFP)などががんのマーカーとして知られているが、いずれも限定されたがんで6割程度の疾患感度しかなく、がん以外の疾患でも非特異的に陽性を呈する等の問題がある。また疾患関連性遺伝子においても限られた症例で検出されるだけで普遍的ながんを検出するマーカーには至っていない。
【0004】
一方、幹細胞は発生過程における形態形成や成体における各組織、臓器の恒常性、生殖細胞の維持に働く一群の細胞であり、長年にわたる多くの科学者の研究により、成体哺乳類動物の造血系、皮膚、腸管系等に存在し、血液、皮膚、腸管粘膜の再生に寄与していることが知られている。この幹細胞は、複数の違った種類の細胞に分化する多分化能および対称的あるいは非対称的な分裂を行い新たな幹細胞を生み出す自己再生能を持ち合わせており、通常は組織の特定の場所に位置し、ごくゆっくり増殖しているかあるいは細胞分裂休止状態にあるが、組織の再生維持に関与する特異的な増殖刺激や創傷、炎症などによる物理科学的刺激などの特定条件下では素早く増殖を誘導することができる。
【0005】
本発明者らはこのような幹細胞を含む長期生存細胞には、発がんの起源細胞を含むことを提唱し、さらに長期生存細胞は低親和性神経成長因子受容体(以下、これを「NGFRp75」と称することがある。)、インテグリンβ4あるいはbcl−2の発現を指標として同定できることを開示している(特開2000−4900号公報)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−4900号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、長期生存細胞の中でも特に発がんとの関連性が深いと予測される細胞を取得する手段を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、上皮組織中の細胞群からIV型コラーゲンに高い親和性を有する細胞群を至適濃度0.1〜0.5mMのCa2+、牛脳下垂体抽出物または塩基性FGF、牛胎児血清0.5%以下の存在下で長期間培養すると、1)明確な細胞死を起こさず、2)分裂を促す増殖因子にも反応せず、3)テロメアが短鎖化している細胞(老化上皮幹細胞)を分離できることを見出した。また、ウィルス腫瘍遺伝子を導入した上皮細胞を長期間培養すると、テロメレースが活性化しており、かつ他の細胞に比べテロメアが短い(但し、その後テロメアは長鎖化する場合がある)細胞(不死化老化上皮幹細胞)が得られることを見出した。本発明は、以上の知見から完成されたものである。
【0009】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)の工程を含む老化上皮幹細胞の取得方法である。
(1)上皮細胞の懸濁液を、細胞外接着物質で被覆された培養容器中に滴下し、上皮細胞を培養容器に付着させる工程
(2)上皮細胞の付着した培養容器内に培地を加え、上皮細胞を培養する工程
(3)培養により産生する分化ケラチノサイトが死滅した後、残存している細胞を採取する工程
また、本発明は、上記の方法により取得された老化上皮幹細胞である。
【0010】
更に、本発明は、以下の(1)〜(3)の工程を含む不死化老化上皮幹細胞の取得方法である。
(1)上皮細胞の懸濁液を、細胞外接着物質で被覆された培養容器中に滴下し、ヒト上皮細胞を培養容器に付着させる工程
(2)上皮細胞の付着した培養容器内に培地を加え、上皮細胞を培養する工程
(3)上皮細胞にウイルス腫瘍遺伝子を導入した後、細胞集団倍加数が90以上の細胞を分離する工程。
(4)テロメレース活性を有する細胞を選択する工程
更に、本発明は、上記の方法により取得された不死化老化上皮幹細胞である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の老化上皮幹細胞は、以下の(A−1)〜(A−3)の工程により取得される。
【0013】
工程(A−1)では、上皮細胞の懸濁液を、細胞外接着物質で被覆された培養容器中に滴下し、上皮細胞を培養容器に付着させる。
【0014】
上皮細胞としては、ヒト表皮角化細胞、ヒト子宮上皮細胞、ヒト食道上皮細胞、ヒト乳腺上皮細胞、ヒト角膜上皮細胞、ヒト血管内皮細胞、ヒト神経細胞などを例示することができる。これらの上皮細胞は、常法に従って採取することができる。
【0015】
懸濁液中の細胞密度は一定の密度を維持するのがよく、1×10〜1×10個/μlとするのが好ましい。細胞密度が1×10個/μl未満では、幹細胞が含まれない可能性が大きく細胞同士の相互作用も弱くなる。但し、純化した幹細胞を用いる場合は1個/μlの培養も可能である。また、逆に1×10個/μlを超えると、細胞密度が高くなり過ぎ細胞の接着過程で増殖活性の高い細胞の基質への接着が阻害されることが起こり、いずれの場合も良好な上皮培養シートが形成され難く培養効率が低下する。
【0016】
細胞外接着物質としては、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン等を例示することができる。
【0017】
培養容器は、上皮細胞を付着及び培養させることができるものであれば特に限定されず、例えば、培養皿、培養フラスコ、カバーグラスなどを使用することができる。
【0018】
懸濁液の滴下は、市販のマイクロピペッター等の器具を用いて行うことができる。滴下量は、上皮細胞を培養容器に付着させることのできる範囲内であれば特に限定されないが、10〜50μlが適当である。
【0019】
懸濁液を滴下した後、50〜90分程度保温することにより、懸濁液中の上皮細胞を培養容器に付着させることができる。この過程は基底層基質に親和性を持つ増殖能力の高い幹細胞を含む細胞を選択し、一方基質への接着が低下した分化細胞を排除する。そのことにより増殖能力が活発な高密度培養が可能になる。(特開2000−60542)
【0020】
工程(A−2)では、上皮細胞の付着した培養容器内に培地を加え、上皮細胞を培養する。
【0021】
培地は、上皮細胞を培養することのできるものであればどのようなものでもよく、例えば、MCDB153培地、MCDB152培地、MCDB170培地、HamF12培地などを使用することができる。
【0022】
培養条件は特に限定されないが、培養温度37℃、湿度100 %、炭酸ガス濃度5 %とするのが好ましい。
【0023】
工程(A−3)では、培養により産生する分化ケラチノサイトが死滅した後、残存している細胞を採取する。
【0024】
工程(A−2)の培養により、培養容器に付着した上皮細胞からケラチノサイトが分化してくるが、この分化ケラチノサイトはやがて死滅する。分化ケラチノサイトが死滅した時点で残存している細胞を採取することにより、老化上皮幹細胞を得ることができる。
【0025】
分化ケラチノサイトが死滅するまでの期間は、通常3ヶ月程度であるが、細胞の種類によって異なるので、老化上皮幹細胞の採取時期は、分化ケラチノサイトの死滅を指標として判断するのが望ましい。
【0026】
以上により取得される老化上皮幹細胞は、少なくと一つの老化の指標となる性質と、少なくとも一つの上皮幹細胞の指標となる性質を示す。ここで、老化の指標となる性質としては、テロメアの短鎖化、又はβ−ガラクトシダーゼ、p16、p15、IGR−bp3、CEA、midkine、E2F4、若しくはcdc48(HAM)の発現などを例示することができる。上皮幹細胞の指標となる性質としては、p75NTR、インテグリンβ4、bc1−2,の発現などを例示することができる。なお、「テロメアの短鎖化」とは、テロメアの長さが、他の細胞のテロメアの50%以下の長さ、好ましくは30%以下の長さ、更に好ましくは15%以下の長さになることを意味し、具体的には、テロメアの長さが5kb以下になることをいう。
【0027】
本発明の不死化老化上皮幹細胞は、以下の(B−1)〜(B−4)の工程により取得される。
【0028】
工程(B−1)では、ヒト上皮細胞の懸濁液を、細胞外接着物質で被覆された培養容器中に滴下し、ヒト上皮細胞を培養容器に付着させる。この工程は、工程(A−1)と同様に行うことができる。
【0029】
工程(B−2)では、ヒト上皮細胞の付着した培養容器内に培地を加え、ヒト上皮細胞を培養する。この工程は、工程(A−2)と同様に行うことができる。
【0030】
工程(B−3)では、上皮細胞にウイルス腫瘍遺伝子を導入した後、細胞集団倍加数(PDL)が90以上の細胞を分離する。ウイルス腫瘍遺伝子としては、SV40ラージT抗原遺伝子、ヒトパピローマウイルス16型遺伝子等を例示することができる。ウイルス腫瘍遺伝子の導入は、トランスフェクション等の常法に従って行うことができる。
【0031】
工程(B−4)では、テロメレース活性を有する細胞を選択する。テロメレース活性の測定法としては、例えば、TRAP法(Telomeric repeat amplification protocol ;Kim, N. W., et al., Science, 266, 2011(1994))や、それを改変した方法(Yasumoto, S.,et al., Oncogene, 13, 433(1996); Kunimura, C., et al., Oncogene, 17,187(1998))を用いることができる。
【0032】
以上により取得される不死化老化上皮幹細胞は、少なくとも一つの不死化の指標となる性質と、少なくとも一つの老化の指標となる性質と、少なくとも一つの上皮幹細胞の指標となる性質を示す。ここで、不死化の指標となる性質としては、テロメレースの活性化などを例示することができる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕 上皮幹細胞及び不死化上皮幹細胞の調製およびテロメア長の解析
(1)上皮幹細胞の調製
重度の子宮筋腫患者から外科的に子宮頸部を切除し、ヒト正常上皮組織標本を調製した(Yasumoto, S.,et al., Oncogene, 13, 433(1996))。ケラチノサイト初代培養は、子宮頸部上皮組織片を0.03mM Ca2+を含むMCDB153培養液を基本培地とするDMEM混合培地(混合比:25%(V/V)DMEM/MCDB、Ca2+ 濃度0.23mM)中で培養することにより行った(Ohta, Y., et al., J. Cancer Res., 99, 644 (1997))。
【0035】
得られた子宮上皮組織標本をIV型コラーゲンをコートした培養皿(IWAKI社製)上で下記培養液により2週間培養した後、0.01%のEDTAおよび0.1%のトリプシンを含むCa2+、Mg2+を含まないリン酸緩衝液(以下、これを「PBS(−)」と称することがある)37℃で5分間反応させた。0.01%のEDTAを含むPBS(−)で4℃、15分処理し、子宮上皮細胞を回収した。回収された細胞は0.03mM Ca2+、0.5% FCS、5μg/ml インシュリン、5mg/ml 上皮細胞増殖因子(EGF)、200nM ハイドロコーテイゾン、10μg/ml トランスフェリン、0.5μM ホスホエタノールアミン、0.5μMエタノールアミン、6.25μg/ml 牛脳下垂体抽出液(BPE)、を添加したMCDB153培地で5%CO、37℃で培養した。また、液摘培養に用いられるまで液体窒素中で保存した。
【0036】
(2)上皮幹細胞の培養
得られた子宮上皮細胞は、5〜20μlの4℃に冷却した培養液(上記MCDB153培地)中に1×10個/μlとなるように懸濁し、これをIV型コラーゲンをコートした35mm培養シャーレの中心に液摘し(37℃、100%以上高湿度の炭酸ガス培養器中で50分〜90分保温し、細胞接着を促す。)、50%以上細胞接着後(1)で示した0.23 mM Ca2+、25%(V/V)DMEM/MCDB混合培地培養液2mlを加えで湿度100%のCOインキュベーター中で培養を継続した。この培養により培養シャーレの底面に付着した上皮細胞は、3日間以内に増殖を開始した。この培養を3ヶ月以上継続し、細胞分裂の限界に至るまで培養した。上記の液摘による培養により上皮細胞は多層の上皮細胞シートを形成することにより構造が維持されている。この上皮細胞シートの上層にある細胞は分化度が進行したケラチノサイトで培養の継続により自然と剥離したが、最下層の細胞は増殖と分化のホメオスタシス(定常)的なバランスを取りながら生存し続け、分化ケラチノサイトを産生した。3ヶ月の培養により、上皮細胞シートにより産生されてくる分化ケラチノサイトはほとんど全てが死滅し、底面の細胞のみが生存していた(図1)。これらの残った細胞群は明確な細胞死を起こさず、また分裂を促する増殖因子にも反応せず、10ヶ月以上も生存し続けた(図2)。
【0037】
(3)老化上皮幹細胞中のβガラクトシダーゼ発現の解析
上記(2)で得られた底面に付着した長期生存細胞を、PBSで洗浄し、3%ホルムアルデヒド(固定液)で室温、5分間反応させ固定した。PBSで固定液を洗浄した後、βガラクトシダーゼ反応液(1mg/ml:5−bromo−4−chloro−3−indolylβ−D−galactoside、40mM:クエン酸、40mM:リン酸ナトリウム(pH6.0)、5mM:フェロシアンカリウム、5mM:フェリシアンカリウム、150mM:塩化ナトリウム、2mM:塩化マグネシウム)中で37℃、5〜12時間反応させた。この結果を図3に示す。図から明らかなように、(2)で得られた細胞は、老化の指標となるβ−ガラクトシダーゼが発現しており、全ての長期生存細胞で老化の進行が認められた。
【0038】
(4)長期生存上皮細胞のテロメア長の測定
ここで得られた底面に付着した長期生存細胞を0.1%トリプシン/0.01%EDTAにより剥離し、該細胞からproteinaseK−SDS法及びフェノール/クロロフォルム法により高分子ゲノムDNA(25kb以上)を精製した。取得したDNAを、過剰量(DNA 1μg当たり10〜20ユニット)のHInfI(5〜10U)とRsaI(5〜10U)を添加し、DNAが完全に消化されるまで37℃で数時間反応させた。消化されたDNA 1μgを0.5%のアガロースゲルにより電気泳動して分離した。上記の制限酵素により完全に消化されたことは、アガロースゲルをエチジウムブロマイドで染色して確認した。次にこのアガロースゲルを真空乾燥機で60℃、30分間乾燥させた。乾燥したアガロースシートを0.1MのNaOH溶液に15分間浸し、DNAを変性させて、その後1.5MのTris−HCl(pH7.2)で中和した。
【0039】
ハイブリダイゼーション用のプローブは、配列番号1に示す塩基配列、32P−(TTAGGG)を有するものを委託して合成した。このプローブの5’末端をポリヌクレオチドキナーゼ(polynucleotide kinase)を用いて32Pで標識し、加熱吸引(60℃、30分)乾燥したアガロースシートと37℃で12時間ハイブリダイゼーションを行った。反応後、該シートを0.1×SSC(NaCl−Citrioc acid)−0.05%SDSにより15分間、3回洗浄し、増感紙(intensifying screen)に転写しシグナルをイメージング アナライザー又はオートラジオグラフィーにより解析した。この結果を図4に示す。図より明らかなように、正常上皮細胞(図4左)が約9.5kbのテロメアを有しているのに対し、底面で長期間生存する細胞のテロメアは4.5kbと短鎖化していた(図4右)。
【0040】
〔実施例2〕 ウィルス腫瘍遺伝子を導入した細胞のテロメレース活性およびテロメア長の解析
実施例1と同様にしてヒト上皮初代培養細胞をIV型コラーゲンをコートした培養皿で液摘培養を行い、培養開始2〜3日目に通常のトランスフェクション法によってSV40腫瘍遺伝子(大型T)、又はヒトパピローマウイルス16型(HPV16)DNAを導入し長期継代可能な細胞集団を作製し、継代中の早い段階(80PDL以前)、及び遅い段階(80PDL以降)から細胞を調製した(Yasumoto, S., et al., Oncogene, 13, 433 (1996))。各細胞は1 x 10 個/mlの割合で低調緩衝液(10mM:HEPES(pH8.0)、3mM:塩化カリウム、1mM:塩化マグネシウム、1mM:DTT、0.1mM:PMSF、1μg/ml:
leupeptin、2μg/ml:Pepstatin A、0.5%:MEGA−9、10U/ml:RNase inhibitor)に懸濁し、氷上で20分間インキュベートした。細胞のデブリスを低温遠心で除いた後、その上清に最終濃度0.1Mの塩化ナトリウムを加え、4℃で20分間穏やかに混和した。さらに100,000Gの遠心分離により得られた上清に1/4容量のグリセロールを添加して細胞抽出液として用いた。
【0041】
この細胞抽出液1−5μlにテロメア伸長用プライマー(0.05μg TS:文献Yasumoto et al., Oncogene, 13, 433 (1996))を含むポリメラーゼチェインリアクション(PCR)反応液を用いて、20℃/30分×1サイクル、94℃/45秒−50℃/45秒−72℃/3分×31サイクルのPCRを行った。この反応液の1/5を1×Tris−Boric−EDTA緩衝液(TBE)に溶解した8%ポリアクリルアミド非変性ゲルを用いた電気泳動により分離した。ゲルを乾燥させ、Storm860(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いてテロメレース活性の解析を行った。この結果を図5に示す。図から明らかなようにテロメレースの活性はSV40を導入し90PDL以上培養した細胞にのみ見られ(図5A)、それ以前の細胞には見られなかった。しかし、90PDL以前の細胞について限界希釈法により細胞をクローニングして同様の解析を行ったところ、65PDL培養細胞にSV−40を導入した細胞についても約1000細胞中1細胞でテロメレース活性が見出された(図5B)。
【0042】
上記でテロメレース活性が見られた細胞について、実施例1と同様にしてテロメア長を解析したところ、テロメレース活性化による不死化成立初期段階では平均して4kbpであった(図6)。これらのことから、テロメレース活性化が伴う細胞の不死化はSV40が導入され分裂老化に到達した幹細胞系列で成立したものと推測される。不死化成立後のテロメア長は伸長(長鎖化)する傾向を示し、必ずしも短鎖化状態を維持しなかった。不死化によるテロメア長の不安定化は染色体異常、例えば染色体重複、染色体末端融合及びリング形成など(文献:Hashida & Yasumoto J. Gen. Virol (1991))を高い頻度で出現する時期に相当する。
【0043】
【発明の効果】
老化上皮幹細胞及び不死化老化上皮幹細胞は、発がんと密接な関連を持つと推測されるので、制がん剤などのスクリーニングに利用することができる。
【0044】
【配列表】
Figure 2004267167

【図面の簡単な説明】
【図1】分化ケラチノサイト死滅後も生存していた細胞(老化上皮幹細胞)のコロニーの写真。
【図2】生存細胞の累積数と培養期間との関係を示す図(N+はヒト上皮細胞の増殖様式が幹細胞の特性を表していることを示す。)。
【図3】長期生存した老化上皮幹細胞のコロニーの写真(すべての細胞で老化の指標であるβ−ガラクトシダーゼの活性化が認められた。)。
【図4】ヒト老化上皮幹細胞及び初代培養正常上皮細胞のテロメア長の解析結果を示す図(老化上皮幹細胞では、著しいテロメア配列の短縮化が認められた。)。
【図5】SV40−腫瘍遺伝子(LT)を導入後分裂寿命の延長が誘発された 上皮細胞のPDLとテロメレースの活性化との関係を示す図。
【図6】老化上皮幹細胞及び不死化老化上皮幹細胞のテロメア長の解析結果を示す図(AはSV40−LTによる細胞老化の促進過程とテロメレース活性化によるテロメア長の伸長過程を示す。Bは同様のことが別のヒト腫瘍ウイルス(HPV16)によっても誘発されることを示す。すなわち、細胞の癌化のプロセスは幹細胞の老化促進から始まることを示している。)。

Claims (4)

  1. 以下の(1)〜(3)の工程を含む老化上皮幹細胞の取得方法。
    (1)上皮細胞の懸濁液を、細胞外接着物質で被覆された培養容器中に滴下し、上皮細胞を培養容器に付着させる工程
    (2)上皮細胞の付着した培養容器内に培地を加え、上皮細胞を培養する工程
    (3)培養により産生する分化ケラチノサイトが死滅した後、残存している細胞を採取する工程
  2. 請求項1記載の方法により取得された老化上皮幹細胞。
  3. 以下の(1)〜(3)の工程を含む不死化老化上皮幹細胞の取得方法。
    (1)上皮細胞の懸濁液を、細胞外接着物質で被覆された培養容器中に滴下し、ヒト上皮細胞を培養容器に付着させる工程
    (2)上皮細胞の付着した培養容器内に培地を加え、上皮細胞を培養する工程
    (3)上皮細胞にウイルス腫瘍遺伝子を導入した後、細胞集団倍加数が90以上の細胞を分離する工程。
    (4)テロメレース活性を有する細胞を選択する工程
  4. 請求項3記載の方法により取得された不死化老化上皮幹細胞。
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