JP2004266186A - 研磨用パッド及び研磨物の製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被研磨物表面を研磨し平坦化するときに、研磨による摩擦熱で研磨用パッドの温度が高くなった場合にも、研磨特性の変化を抑え安定した研磨を実施できる研磨用パッドを提供すること。
【解決手段】被研磨物表面を研磨するためのパッドであって、温度を25℃から60℃へ上昇した際の温度上昇による弾性率低下量が25℃における弾性率に対して25%以下であること、及び無機充填物を含まず、実質的に発泡孔を有さない樹脂からなる研磨用パッド。
【選択図】 なし
【解決手段】被研磨物表面を研磨するためのパッドであって、温度を25℃から60℃へ上昇した際の温度上昇による弾性率低下量が25℃における弾性率に対して25%以下であること、及び無機充填物を含まず、実質的に発泡孔を有さない樹脂からなる研磨用パッド。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被研磨物の表面研磨に適用する研磨用パッドとその製造法に関する。特に、半導体装置等の製造において、CMP(Chemical Mechanical Polishing)研磨剤と共に用いられるものであり、層間絶縁膜やBPSG膜(ボロン、リンをドープした二酸化珪素膜)の平坦化工程、シャロー・トレンチ分離の形成工程等に使用するのに適した研磨用パッドに関する。また、本発明は、シリコンウエハ、ハードディスク等を被研磨物とし、その表面研磨をするのにも適した研磨用パッドとその製造法に関する。さらに、本発明は、この研磨用パッドを使用して研磨をする研磨物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
超々大規模集積回路の実装密度を高めるために、種々の微細加工技術が研究、開発されている。既に、デザインルールは、サブハーフミクロンのオーダーになっている。このような厳しい微細化の要求を満足するために開発されている技術の一つにCMP技術がある。この技術は、半導体装置の製造工程において、露光を施す層を完全に平坦化し、露光技術の負担を軽減し、製造歩留まりを高いレベルで安定させることに寄与する。半導体装置製造工程におけるCMP技術には、素子分離形成、メモリのキャパシタ形成、プラグ及び埋め込み金属配線形成等において溝に埋め込んだ成膜層の余分な成膜部分を除去するためのリセスCMP技術、及び層間絶縁膜成膜後の平坦化CMP技術がある。
【0003】
集積回路内の素子分離形成には、LOCOS(シリコン局所酸化)技術が用いられてきたが、加工寸法のさらなる微細化に伴い、素子分離幅のより小さいシャロー・トレンチ分離技術が採用されつつある。シャロー・トレンチ分離では、基板上に埋め込んだ余分な酸化珪素膜を除くためにCMP技術が必須となる。
【0004】
従来、半導体装置の製造工程においては、プラズマ−CVD(Chemical Vapor Deposition、化学的蒸着法)や低圧−CVD、スパッタ、電解メッキ等の手段により酸化珪素等絶縁膜、キャパシタ強誘電体膜、配線用金属膜を基板上に形成しこれら(被研磨物)を平坦化するために、また、埋め込み層を形成するために、次のような研磨を実施している。被研磨物を研磨用パッドに押し当て、CMP研磨剤スラリを被研磨物と研磨用パッドの間に供給しながら、研磨用パッドを被研磨物との間で相対的に摺動させる技術である。
【0005】
CMP研磨剤としてはフュームドシリカ系及び酸化セリウム系が、研磨用パッドとしては発泡ウレタン系が一般的に用いられている。
パッドは、研磨による摩擦熱によって全体的にあるいは部分的に温度が高くなることがあるが、発泡ウレタン系パッドは、温度上昇による弾性率の低下率が大きいため、研磨作業中に弾性率が変化しやすく、研磨特性が安定しないという問題がある。また、発泡ウレタン系パッドは、長時間に亘って繰り返し加えられる温度上昇及び研磨荷重により塑性変形し、使用時間の累積とともに研磨特性が徐々に変化するという不具合を引き起こすことがある。
【0006】
また、ポリウレタン、ポリカーボネート、ナイロン、アクリル重合体、ポリエステル等の非発泡樹脂からなる研磨用パッドも提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、これらの研磨用パッドは、本質的にスラリーを吸収する又は移動させる固有の性質を備えていない材質、つまり固体均質重合体シートであって、外部手段を用いて大小の流路を形成しなければならない。
【0007】
【特許文献1】
特表平8−511210号公報(特許請求の範囲)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
層間絶縁膜、BPSG膜、シャロー・トレンチ分離用絶縁膜、キャパシタ強誘電体膜、配線用金属膜、その他の被研磨物表面を研磨し平坦化するに当たって、あるいは埋め込み層を形成するに当たっては、被研磨物とこれに押し当てた研磨用パッドの間にCMP研磨剤スラリを供給しながら研磨用パッドを回転して研磨を行なうが、本発明が解決しようとする課題は、このような研磨による摩擦熱で研磨用パッドの温度が高くなった場合にも、研磨特性の変化を抑え安定した研磨を実施できる研磨用パッドを提供することである。また、この研磨用パッドを研磨装置に取り付け、研磨を実施し、研磨物を製造することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る研磨用パッドは、被研磨物表面を研磨するためのパッドであって、温度を25℃から60℃へ上昇した際の温度上昇による弾性率低下量が25℃における弾性率に対して25%以下であること、及び無機充填物を含まず、実質的に発泡孔を有さない樹脂からなることを特徴とする。
また、本発明に係る研磨物の製造法は、所定の被研磨物の研磨すべき表面を上記の研磨用パッドに押し当て、研磨剤を被研磨物とパッドとの間に供給しながら、被研磨物とパッドを相対的に摺動させ、被研磨物の研磨すべき表面を研磨することを特徴とする。
【0010】
研用磨パッドの温度上昇による弾性率の低下を小さく抑えることは、研磨用パッドの研磨特性を安定させる上で非常に重要な要素である。研磨特性を安定させることは、研磨の効率向上に大きな役割を担っている。ここで、25℃から60℃への温度上昇における弾性率の低下率に着目するのは、研磨を行なうことによって研磨パッド自体の温度が局所的に上昇し、常温の25℃から60℃程度まで上昇するからである。前記弾性率の低下率は、0〜10%であることが好ましい。そして、前記弾性率の低下率を25%以下にしなければならない理由は、温度上昇による弾性率低下が25%を超えると研磨中のヘッドの荷重により研磨パッドの変形量が温度上昇前後で異なる特性を示し、ウエハ製造である研磨を安定して行なえないためである。また、無機充填物を含まない樹脂材料に特定したのは、被研磨物の研磨表面にできる研磨傷をできるだけ抑えるためである。
【0011】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明に係る研磨用パッドは、所定の温度上昇による弾性率の低下率を所定の値以下に抑えるものである。このような構成は、樹脂組成、樹脂形態、充填物等を以下のように工夫することにより実現できる。
【0012】
樹脂は、比較的弾性率の高い部類に属する熱硬化性樹脂の硬化物又は熱可塑性樹脂であることが好ましい。特に、熱硬化性樹脂の硬化物は、温度上昇による熱変形が小さく、温度上昇による弾性率の低下防止に有効である。また、研磨やドレッシングによる摩耗が少なく、耐久性にも優れる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を使用でき、好ましい樹脂である。本発明の研磨用パッドの製造に熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤等を配合する。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤としては、ジシアンジアミド、有機酸、有機酸無水物、ポリアミン等を用いることができ、硬化促進剤としては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレンコポリマ)等を使用でき、そのGPCによって測定した数平均分子量は、1,000〜50,000であることが好ましい。
【0013】
また、樹脂は、実質的に発泡孔を有しない形態が好ましい。発泡孔を有する形態は、非発泡形態と比較して単位体積当たりの弾性率が小さいだけでなく、発泡孔によって樹脂の体積占有率が小さくなるために、温度上昇による熱変形が起こりやすい。結果として、温度上昇による弾性率の低下が大きくなる。また、発泡孔により熱伝導率が低いため、研磨パッド表面の温度上昇がおこりやすくなる。
【0014】
樹脂中には、有機繊維を充填することができる。有機繊維は、アラミド樹脂、ポリエステル、ポリイミド等の材質の有機繊維である。単繊維を所定長に切断したチョップやチョップを叩解したパルプを個々に独立した状態のまま樹脂中に充填してもよいし、織布や不織布の形態で樹脂中に充填してもよい。有機繊維の繊維径は、特に制限はないが、通常、1mm以下のものが使用でき、50μm以下のものが好ましい。有機繊維の繊維径は好ましくは1μm〜1mm、より好ましくは10〜50μmである。
有機繊維の織布や不織布は、繊維自身の融着力によって繊維同士が接合して形成されたものでもよく、また、接着剤を用いて繊維同士が接合して形成されたものでもよい。接着剤としては、特に制限はなく、例えば、水溶性エポキシ樹脂バインダー等のエポキシ樹脂などからなる接着剤を使用することができる。接着剤を用いる場合、その量に特に制限はないが、有機繊維100重量部に対して3〜20重量部とすることが好ましく、5〜15重量部とすることがより好ましい。
また、本発明の研磨用パッドが、樹脂中に有機繊維を含有するものである場合、有機繊維の量は、樹脂及び接着剤の合計100重量部に対して1〜400重量部であることが好ましく、3〜300重量部であることがより好ましい。
【0015】
樹脂より弾性率が大きい有機繊維の充填は好ましいものであり、また、有機繊維は樹脂より温度上昇による弾性率低下量が小さいことが好ましい。このような有機繊維を用いると、温度上昇による繊維自体の弾性率低下が小さいので、研磨用パッドとしても温度上昇による弾性率低下を抑えることができる。特に、アラミド繊維の選択(単独で用いるか又は主たる繊維として用いる)は好ましいものである。その理由は、アラミド繊維は一般的な有機繊維に比べて引張り強度が高く、研磨用パッドの耐久性を向上させ使用寿命を延ばせるからである。さらに、アラミド繊維にはパラ系とメタ系があり、パラ系アラミド繊維はメタ系アラミド繊維より繊維自体の力学的物性値(引張り強度など)が高いので、パラ系アラミド繊維の選択は研磨用パッドの摩耗消耗を抑制して寿命を延ばす上で好適である。パラ系アラミド繊維としてはポリp−フェニレンテレフタラミド繊維とポリp−フェニレンジフェニルエーテルテレフタラミド繊維が市販されており、これらが一般的である。
【0016】
本発明に係る研磨用パッドは、有機繊維の充填物を含むと含まないとに拘わらず、射出成形、押出成形、注型法などによって成形することができる。有機繊維を樹脂中に充填する場合は、有機繊維を樹脂中に固定するために、熱硬化性樹脂を選択することが好ましい。さらに、有機繊維との接着性に優れるエポキシ樹脂を選択することが好ましい。成形時の加熱温度は、通常150〜200℃であり、160〜180℃が好ましく、圧力は通常50〜500kPaであり、200〜400kPaが好ましい。
【0017】
有機繊維を織布や不織布の形態で樹脂中に充填する場合は、前記織布や不織布に熱硬化性樹脂を含浸し加熱乾燥してプリプレグとし、このプリプレグを重ねて加熱加圧成形する製法が適している。
本発明の研磨用パッドの25℃における弾性率は、0.1〜10GPaであることが好ましく、0.2〜7GPaであることがより好ましい。
本発明の研磨用パッドの研磨面には、必要に応じてドレッシング処理(ドレス番手#100〜#400が好ましい。)、研磨剤の流路となる溝加工等を施してもよい。溝の形状は、例えば格子状、同心円状とすることができ、深さは0.1〜0.8mm、幅は0.5〜2mm、幅は0.5〜2mm、ピッチは1〜20mmが好ましい。
【0018】
本発明の研磨物の製造法に用いられる被研磨物としては、特に制限はなく、例えば、半導体基板、すなわち回路素子と配線パターンが形成された段階の半導体基板、回路素子が形成された基板等がある。このような半導体基板上に形成された絶縁膜である酸化珪素膜層又は窒化珪素膜層を、上記の研磨用パッドを用いて研磨剤を供給しながら研磨することによって、酸化珪素膜層又は窒化珪素膜層の表面の凹凸を解消し、半導体基板全面に亘って平滑な面とすることができる。また、このような半導体基板に形成された絶縁膜に限らず、所定の配線を有する配線板に形成された酸化珪素膜、硝子、窒化珪素等の無機絶縁膜、ポリシリコン、Al、Cu、Ti、TiN、W、Ta、TaN等を主として含有する膜、フォトマスク・レンズ・プリズム等の光学ガラス、ITO等の無機導電膜、ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路、光ファイバーの端面、シンチレータ等の光学用単結晶、固体レーザ単結晶、青色レーザLED用サファイヤ基板、SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶、磁気ディスク用ガラス或いはアルミ基板、磁気ヘッド等を研磨することができる。
【0019】
研磨剤としては、特に制限はなく、例えば半導体基板の絶縁膜を研磨する場合には、酸化セリウム粒子を0.5〜20重量%の濃度で水に分散させた研磨剤が好適である。必要に応じて、日立化成工業(株)製HS−8102GP等の添加剤を添加してもよい。添加剤は、あらかじめ研磨剤中に添加しておいてもよいし、添加剤を2〜7重量%含有する水溶液等として、研磨剤と同時に滴下して混合してもよい。
【0020】
本発明に係る研磨用パッドを使用して被研磨物を研磨する場合、研磨装置の種類に制限はなく、円盤型研磨装置、リニア型研磨装置のいずれにも適用可能である。研磨装置は、半導体基板等の被研磨物を保持するヘッドと研磨用パッドを貼り付けた定盤(回転数が変更可能なモータ等に装着してある)を備えた構成が一般的である。研磨条件に制限はないが、半導体基板を研磨する場合、定盤の回転速度は、半導体基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましく、研磨用パッドを半導体基板に押し当てる圧力は研磨後に傷が発生しないように50kPa以下が好ましい。研磨している間、研磨用パッドと半導体基板との間へは、研磨剤スラリをポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨用パッドの表面が常に研磨剤スラリで覆われている状態にすることが好ましい。
研磨終了後の半導体基板は、流水中で十分に洗浄後、スピンドライヤ等を用いて表面に付着している水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
有機繊維として、以下のものを準備した。
[アラミド繊維不織布]
パラ系アラミド繊維チョップ(繊維径:12.5μm、繊維長:5mm、デュポン製「ケブラー」)とパラ系アラミド繊維パルプ(繊維径:1μm、繊維長:1mm、デュポン製「ケブラー」)とメタ系アラミド繊維チョップ(繊維径:25μm、繊維長:6mm、軟化温度280℃、帝人製「コーネックス」)を混抄し、水溶性エポキシ樹脂バインダ(ガラス転移温度110℃、大日本インキ化学(株)製、商品名:Vコート)の20重量%水溶液をスプレーして加熱乾燥(150℃、3分)し、さらに、一対の熱ロール間(温度300℃、線圧力196kN/m)に通すことにより加熱圧縮し、メタ系アラミド繊維チョップをパラ系アラミド繊維チョップに熱融着し、アラミド繊維不織布を製造した。このアラミド繊維不織布は、単位質量70g/m2、パラ系アラミド繊維チョップ/パラ系アラミド繊維パルプ/メタ系アラミド繊維チョップ/エポキシ樹脂バインダの配合質量比58/17/8/17であった。
【0022】
プリプレグとして、以下のものを準備した。
先ず、硬化剤としてジシアンジアミドを、硬化促進剤として2−エチル−4メチルイミダゾールを配合したビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル(株)製、商品名:EP−828SK)ワニス(A)を準備した。ワニス(A)の調製には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対し、硬化剤を20重量部、硬化促進剤を0.1重量部、溶剤としてメチルエチルケトンを40重量部用いた。
[プリプレグ(1)]
ワニス(A)をアラミド繊維不織布に含浸し、加熱乾燥(170℃、5分)してプリプレグとした。このプリプレグは、加熱加圧成形後の厚さが0.08mmになるように樹脂付着量を調整したものである。アラミド繊維不織布の含有率は、60重量%である。
【0023】
[プリプレグ(2)]
ワニス(A)をガラス繊維織布(単位重量:107g/m2、旭シュエーベル製「GC−216」)に含浸し、加熱乾燥(170℃、5分)してプリプレグとした。このプリプレグは、加熱加圧成形後の厚さが0.1mmになるように樹脂付着量を調整したものである。硝子繊維織布の含有率は、60重量%である。
【0024】
実施例1
プリプレグ(1)を12枚重ねたプリプレグ層の両表面に離型フィルム(50μm厚のポリプロピレンフィルム)を配置しこれをステンレス製鏡面板に挟み込み、その複数組をプレス熱盤間に投入し、熱盤との間にはクラフト紙層からなる厚さ10mmのクッション材を介在させて加熱加圧成形し(温度170℃、圧力300kPa、時間120分)、厚さ1.0mmの積層板を得た。
【0025】
実施例2
PMMA(ポリメチルメタクリレート、三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリライト)のペレットを溶融しながら、パラ系アラミド繊維チョップ(繊維径12.5μm、繊維長5mm、デュポン社製「ケブラー」)をPMMA100重量部に対して5重量部となるように混合・混練し、押出成形によって厚さ1.0mmのアクリルシートを得た。
【0026】
従来例1
発泡ポリウレタン系樹脂からなる研磨用パッド(厚み1.2mm、ロデール製「IC−1000」)である。
【0027】
比較例1
ポリエチレンのペレットを溶融しながら混練し、押出成形によって厚さ1.0mmのポリエチレンシートを得た。
【0028】
比較例2
トリレンジイソシアナートとトリエチレンオキシドを混合し反応させたウレタン樹脂ワニスを注型法により成形し(温度:60℃、真空脱泡)、厚さ1.0mmの非発泡ポリウレタンシートを得た。
【0029】
比較例3
プリプレグ(2)を10枚使用し、実施例1と同様に加熱加圧成形し、厚さ1.0mmの積層板を得た。
以上の各例における研磨用パッド材の仕様を表1に纏めて示す。研磨用パッド材の弾性率測定はJIS K 7208に準拠して行なった。
【0030】
【表1】
【0031】
上記各実施例、従来例及び比較例における研磨用パッド材に、表面粗さを調整するためのドレス処理(#170、荷重2.7kgf、15分間)を行ない、研磨剤スラリの供給を均一にするための溝加工(格子状、幅2mm、深さ0.6mm、ピッチ15mm)を行なって研磨用パッドとした。これら研磨用パッドとCMP研磨剤により、シリコンウエハの研磨を次のように実施した。
研磨装置は荏原製「EPO−111」を使用し、研磨用パッドφ600mmを定盤上に貼付けて固定する。上記シリコンウエハを研磨機にセットし、ヘッド部に保持する。前記シリコンウエハの酸化珪素膜面をヘッドに保持したまま研磨用パッドに当接して、研磨荷重を30kPaに設定する。酸化セリウム研磨剤(日立化成工業(株)製HS−8005)を40mL/minと添加剤(日立化成工業(株)製HS−8102GP)を160mL/minの量で混合して定盤上に滴下しながら、定盤及びウエハを両者同一方向に75rpmで1分間回転させて、酸化珪素膜を研磨する。そして、研磨後のシリコンウエハを純水で十分に洗浄後、乾燥する。
【0032】
研磨を次の観点から評価した。評価結果を表2に示す。
弾性率の低下率(%):(25℃の弾性率−60℃の弾性率)/25℃の弾性率×100
研磨傷数:φ200mmシリコンウエハ上にTEOS−プラズマCVD法で酸化珪素膜を1μm厚に形成したブランケットウェハを1分間研磨した後、ウェハ表面全体を光学的スキャンし、検出部を顕微鏡観察し研磨傷をカウントする。
平坦性:φ200mmのシリコンウェハ上に幅100μm、間隔300μmのラインなどのパターンを厚み10nmの窒化珪素膜で作製した後、Si露出部を深さ350nmエッチングし、このウェハ上にTEOS−プラズマCVD法で酸化珪素膜を600nm厚に形成した450nmの凹凸を持ったTEGウェハを準備する。このウェハを窒化珪素膜が露出するまで研磨した後、窒化珪素膜のライン(幅100μm)とその隣り合った酸化珪素膜のライン(幅300μm)との表面の段差をDektak3030(SLOAN社製)触針式段差計を用いて測定した。
耐久性:従来例の研磨用パッドの使用寿命を100とした指数で示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2の評価結果から、本発明に係る研磨用パッドを用いることにより、従来例1及び比較例1、2と比較し、60℃においても平坦性の低下を25%前後に抑えることができ、しかも有機繊維の効果で研磨傷の発生を抑制できることが判る。
実施例1と実施例2との対照から、熱硬化性のエポキシ樹脂を使用することにより、温度上昇による弾性率低下を防止できることが判る。また有機繊維としてアラミド繊維を含有させることにより、研磨用パッドが高強度になり、摩耗に対する耐久性が高まることが判る。
上記本発明の実施例に係る研磨用パッドは、シリコンウエハやハードディスクなどの製造工程において、その表面を研磨するために用いても、安定した研磨速度を維持し、研磨傷の発生を抑制しながら研磨を実施することができる。
【0035】
【発明の効果】
上述したように、本発明に係る研磨用パッドを使用することにより、平坦性を安定化することができる。また有機繊維を使用することにより被研磨物の微細な研磨傷の発生を抑制することもできる。そして、これらによって、研磨物の生産歩留まり向上を図れ、コスト低減が可能となる。特に熱硬化性樹脂と有機繊維の複合材である時、研磨速度の上昇と研磨傷を低減させるために有効である。さらに、有機繊維基材は強度の高いアラミド繊維を選択することにより、研磨用パッドの強度を大きくでき、他の有機繊維と比較して摩耗に対する耐久性が高まるので、上記効果を保持しつつ研磨用パッドの使用寿命を延ばすことも可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、被研磨物の表面研磨に適用する研磨用パッドとその製造法に関する。特に、半導体装置等の製造において、CMP(Chemical Mechanical Polishing)研磨剤と共に用いられるものであり、層間絶縁膜やBPSG膜(ボロン、リンをドープした二酸化珪素膜)の平坦化工程、シャロー・トレンチ分離の形成工程等に使用するのに適した研磨用パッドに関する。また、本発明は、シリコンウエハ、ハードディスク等を被研磨物とし、その表面研磨をするのにも適した研磨用パッドとその製造法に関する。さらに、本発明は、この研磨用パッドを使用して研磨をする研磨物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
超々大規模集積回路の実装密度を高めるために、種々の微細加工技術が研究、開発されている。既に、デザインルールは、サブハーフミクロンのオーダーになっている。このような厳しい微細化の要求を満足するために開発されている技術の一つにCMP技術がある。この技術は、半導体装置の製造工程において、露光を施す層を完全に平坦化し、露光技術の負担を軽減し、製造歩留まりを高いレベルで安定させることに寄与する。半導体装置製造工程におけるCMP技術には、素子分離形成、メモリのキャパシタ形成、プラグ及び埋め込み金属配線形成等において溝に埋め込んだ成膜層の余分な成膜部分を除去するためのリセスCMP技術、及び層間絶縁膜成膜後の平坦化CMP技術がある。
【0003】
集積回路内の素子分離形成には、LOCOS(シリコン局所酸化)技術が用いられてきたが、加工寸法のさらなる微細化に伴い、素子分離幅のより小さいシャロー・トレンチ分離技術が採用されつつある。シャロー・トレンチ分離では、基板上に埋め込んだ余分な酸化珪素膜を除くためにCMP技術が必須となる。
【0004】
従来、半導体装置の製造工程においては、プラズマ−CVD(Chemical Vapor Deposition、化学的蒸着法)や低圧−CVD、スパッタ、電解メッキ等の手段により酸化珪素等絶縁膜、キャパシタ強誘電体膜、配線用金属膜を基板上に形成しこれら(被研磨物)を平坦化するために、また、埋め込み層を形成するために、次のような研磨を実施している。被研磨物を研磨用パッドに押し当て、CMP研磨剤スラリを被研磨物と研磨用パッドの間に供給しながら、研磨用パッドを被研磨物との間で相対的に摺動させる技術である。
【0005】
CMP研磨剤としてはフュームドシリカ系及び酸化セリウム系が、研磨用パッドとしては発泡ウレタン系が一般的に用いられている。
パッドは、研磨による摩擦熱によって全体的にあるいは部分的に温度が高くなることがあるが、発泡ウレタン系パッドは、温度上昇による弾性率の低下率が大きいため、研磨作業中に弾性率が変化しやすく、研磨特性が安定しないという問題がある。また、発泡ウレタン系パッドは、長時間に亘って繰り返し加えられる温度上昇及び研磨荷重により塑性変形し、使用時間の累積とともに研磨特性が徐々に変化するという不具合を引き起こすことがある。
【0006】
また、ポリウレタン、ポリカーボネート、ナイロン、アクリル重合体、ポリエステル等の非発泡樹脂からなる研磨用パッドも提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、これらの研磨用パッドは、本質的にスラリーを吸収する又は移動させる固有の性質を備えていない材質、つまり固体均質重合体シートであって、外部手段を用いて大小の流路を形成しなければならない。
【0007】
【特許文献1】
特表平8−511210号公報(特許請求の範囲)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
層間絶縁膜、BPSG膜、シャロー・トレンチ分離用絶縁膜、キャパシタ強誘電体膜、配線用金属膜、その他の被研磨物表面を研磨し平坦化するに当たって、あるいは埋め込み層を形成するに当たっては、被研磨物とこれに押し当てた研磨用パッドの間にCMP研磨剤スラリを供給しながら研磨用パッドを回転して研磨を行なうが、本発明が解決しようとする課題は、このような研磨による摩擦熱で研磨用パッドの温度が高くなった場合にも、研磨特性の変化を抑え安定した研磨を実施できる研磨用パッドを提供することである。また、この研磨用パッドを研磨装置に取り付け、研磨を実施し、研磨物を製造することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る研磨用パッドは、被研磨物表面を研磨するためのパッドであって、温度を25℃から60℃へ上昇した際の温度上昇による弾性率低下量が25℃における弾性率に対して25%以下であること、及び無機充填物を含まず、実質的に発泡孔を有さない樹脂からなることを特徴とする。
また、本発明に係る研磨物の製造法は、所定の被研磨物の研磨すべき表面を上記の研磨用パッドに押し当て、研磨剤を被研磨物とパッドとの間に供給しながら、被研磨物とパッドを相対的に摺動させ、被研磨物の研磨すべき表面を研磨することを特徴とする。
【0010】
研用磨パッドの温度上昇による弾性率の低下を小さく抑えることは、研磨用パッドの研磨特性を安定させる上で非常に重要な要素である。研磨特性を安定させることは、研磨の効率向上に大きな役割を担っている。ここで、25℃から60℃への温度上昇における弾性率の低下率に着目するのは、研磨を行なうことによって研磨パッド自体の温度が局所的に上昇し、常温の25℃から60℃程度まで上昇するからである。前記弾性率の低下率は、0〜10%であることが好ましい。そして、前記弾性率の低下率を25%以下にしなければならない理由は、温度上昇による弾性率低下が25%を超えると研磨中のヘッドの荷重により研磨パッドの変形量が温度上昇前後で異なる特性を示し、ウエハ製造である研磨を安定して行なえないためである。また、無機充填物を含まない樹脂材料に特定したのは、被研磨物の研磨表面にできる研磨傷をできるだけ抑えるためである。
【0011】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明に係る研磨用パッドは、所定の温度上昇による弾性率の低下率を所定の値以下に抑えるものである。このような構成は、樹脂組成、樹脂形態、充填物等を以下のように工夫することにより実現できる。
【0012】
樹脂は、比較的弾性率の高い部類に属する熱硬化性樹脂の硬化物又は熱可塑性樹脂であることが好ましい。特に、熱硬化性樹脂の硬化物は、温度上昇による熱変形が小さく、温度上昇による弾性率の低下防止に有効である。また、研磨やドレッシングによる摩耗が少なく、耐久性にも優れる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を使用でき、好ましい樹脂である。本発明の研磨用パッドの製造に熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤等を配合する。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤としては、ジシアンジアミド、有機酸、有機酸無水物、ポリアミン等を用いることができ、硬化促進剤としては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレンコポリマ)等を使用でき、そのGPCによって測定した数平均分子量は、1,000〜50,000であることが好ましい。
【0013】
また、樹脂は、実質的に発泡孔を有しない形態が好ましい。発泡孔を有する形態は、非発泡形態と比較して単位体積当たりの弾性率が小さいだけでなく、発泡孔によって樹脂の体積占有率が小さくなるために、温度上昇による熱変形が起こりやすい。結果として、温度上昇による弾性率の低下が大きくなる。また、発泡孔により熱伝導率が低いため、研磨パッド表面の温度上昇がおこりやすくなる。
【0014】
樹脂中には、有機繊維を充填することができる。有機繊維は、アラミド樹脂、ポリエステル、ポリイミド等の材質の有機繊維である。単繊維を所定長に切断したチョップやチョップを叩解したパルプを個々に独立した状態のまま樹脂中に充填してもよいし、織布や不織布の形態で樹脂中に充填してもよい。有機繊維の繊維径は、特に制限はないが、通常、1mm以下のものが使用でき、50μm以下のものが好ましい。有機繊維の繊維径は好ましくは1μm〜1mm、より好ましくは10〜50μmである。
有機繊維の織布や不織布は、繊維自身の融着力によって繊維同士が接合して形成されたものでもよく、また、接着剤を用いて繊維同士が接合して形成されたものでもよい。接着剤としては、特に制限はなく、例えば、水溶性エポキシ樹脂バインダー等のエポキシ樹脂などからなる接着剤を使用することができる。接着剤を用いる場合、その量に特に制限はないが、有機繊維100重量部に対して3〜20重量部とすることが好ましく、5〜15重量部とすることがより好ましい。
また、本発明の研磨用パッドが、樹脂中に有機繊維を含有するものである場合、有機繊維の量は、樹脂及び接着剤の合計100重量部に対して1〜400重量部であることが好ましく、3〜300重量部であることがより好ましい。
【0015】
樹脂より弾性率が大きい有機繊維の充填は好ましいものであり、また、有機繊維は樹脂より温度上昇による弾性率低下量が小さいことが好ましい。このような有機繊維を用いると、温度上昇による繊維自体の弾性率低下が小さいので、研磨用パッドとしても温度上昇による弾性率低下を抑えることができる。特に、アラミド繊維の選択(単独で用いるか又は主たる繊維として用いる)は好ましいものである。その理由は、アラミド繊維は一般的な有機繊維に比べて引張り強度が高く、研磨用パッドの耐久性を向上させ使用寿命を延ばせるからである。さらに、アラミド繊維にはパラ系とメタ系があり、パラ系アラミド繊維はメタ系アラミド繊維より繊維自体の力学的物性値(引張り強度など)が高いので、パラ系アラミド繊維の選択は研磨用パッドの摩耗消耗を抑制して寿命を延ばす上で好適である。パラ系アラミド繊維としてはポリp−フェニレンテレフタラミド繊維とポリp−フェニレンジフェニルエーテルテレフタラミド繊維が市販されており、これらが一般的である。
【0016】
本発明に係る研磨用パッドは、有機繊維の充填物を含むと含まないとに拘わらず、射出成形、押出成形、注型法などによって成形することができる。有機繊維を樹脂中に充填する場合は、有機繊維を樹脂中に固定するために、熱硬化性樹脂を選択することが好ましい。さらに、有機繊維との接着性に優れるエポキシ樹脂を選択することが好ましい。成形時の加熱温度は、通常150〜200℃であり、160〜180℃が好ましく、圧力は通常50〜500kPaであり、200〜400kPaが好ましい。
【0017】
有機繊維を織布や不織布の形態で樹脂中に充填する場合は、前記織布や不織布に熱硬化性樹脂を含浸し加熱乾燥してプリプレグとし、このプリプレグを重ねて加熱加圧成形する製法が適している。
本発明の研磨用パッドの25℃における弾性率は、0.1〜10GPaであることが好ましく、0.2〜7GPaであることがより好ましい。
本発明の研磨用パッドの研磨面には、必要に応じてドレッシング処理(ドレス番手#100〜#400が好ましい。)、研磨剤の流路となる溝加工等を施してもよい。溝の形状は、例えば格子状、同心円状とすることができ、深さは0.1〜0.8mm、幅は0.5〜2mm、幅は0.5〜2mm、ピッチは1〜20mmが好ましい。
【0018】
本発明の研磨物の製造法に用いられる被研磨物としては、特に制限はなく、例えば、半導体基板、すなわち回路素子と配線パターンが形成された段階の半導体基板、回路素子が形成された基板等がある。このような半導体基板上に形成された絶縁膜である酸化珪素膜層又は窒化珪素膜層を、上記の研磨用パッドを用いて研磨剤を供給しながら研磨することによって、酸化珪素膜層又は窒化珪素膜層の表面の凹凸を解消し、半導体基板全面に亘って平滑な面とすることができる。また、このような半導体基板に形成された絶縁膜に限らず、所定の配線を有する配線板に形成された酸化珪素膜、硝子、窒化珪素等の無機絶縁膜、ポリシリコン、Al、Cu、Ti、TiN、W、Ta、TaN等を主として含有する膜、フォトマスク・レンズ・プリズム等の光学ガラス、ITO等の無機導電膜、ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路、光ファイバーの端面、シンチレータ等の光学用単結晶、固体レーザ単結晶、青色レーザLED用サファイヤ基板、SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶、磁気ディスク用ガラス或いはアルミ基板、磁気ヘッド等を研磨することができる。
【0019】
研磨剤としては、特に制限はなく、例えば半導体基板の絶縁膜を研磨する場合には、酸化セリウム粒子を0.5〜20重量%の濃度で水に分散させた研磨剤が好適である。必要に応じて、日立化成工業(株)製HS−8102GP等の添加剤を添加してもよい。添加剤は、あらかじめ研磨剤中に添加しておいてもよいし、添加剤を2〜7重量%含有する水溶液等として、研磨剤と同時に滴下して混合してもよい。
【0020】
本発明に係る研磨用パッドを使用して被研磨物を研磨する場合、研磨装置の種類に制限はなく、円盤型研磨装置、リニア型研磨装置のいずれにも適用可能である。研磨装置は、半導体基板等の被研磨物を保持するヘッドと研磨用パッドを貼り付けた定盤(回転数が変更可能なモータ等に装着してある)を備えた構成が一般的である。研磨条件に制限はないが、半導体基板を研磨する場合、定盤の回転速度は、半導体基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましく、研磨用パッドを半導体基板に押し当てる圧力は研磨後に傷が発生しないように50kPa以下が好ましい。研磨している間、研磨用パッドと半導体基板との間へは、研磨剤スラリをポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨用パッドの表面が常に研磨剤スラリで覆われている状態にすることが好ましい。
研磨終了後の半導体基板は、流水中で十分に洗浄後、スピンドライヤ等を用いて表面に付着している水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
有機繊維として、以下のものを準備した。
[アラミド繊維不織布]
パラ系アラミド繊維チョップ(繊維径:12.5μm、繊維長:5mm、デュポン製「ケブラー」)とパラ系アラミド繊維パルプ(繊維径:1μm、繊維長:1mm、デュポン製「ケブラー」)とメタ系アラミド繊維チョップ(繊維径:25μm、繊維長:6mm、軟化温度280℃、帝人製「コーネックス」)を混抄し、水溶性エポキシ樹脂バインダ(ガラス転移温度110℃、大日本インキ化学(株)製、商品名:Vコート)の20重量%水溶液をスプレーして加熱乾燥(150℃、3分)し、さらに、一対の熱ロール間(温度300℃、線圧力196kN/m)に通すことにより加熱圧縮し、メタ系アラミド繊維チョップをパラ系アラミド繊維チョップに熱融着し、アラミド繊維不織布を製造した。このアラミド繊維不織布は、単位質量70g/m2、パラ系アラミド繊維チョップ/パラ系アラミド繊維パルプ/メタ系アラミド繊維チョップ/エポキシ樹脂バインダの配合質量比58/17/8/17であった。
【0022】
プリプレグとして、以下のものを準備した。
先ず、硬化剤としてジシアンジアミドを、硬化促進剤として2−エチル−4メチルイミダゾールを配合したビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル(株)製、商品名:EP−828SK)ワニス(A)を準備した。ワニス(A)の調製には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対し、硬化剤を20重量部、硬化促進剤を0.1重量部、溶剤としてメチルエチルケトンを40重量部用いた。
[プリプレグ(1)]
ワニス(A)をアラミド繊維不織布に含浸し、加熱乾燥(170℃、5分)してプリプレグとした。このプリプレグは、加熱加圧成形後の厚さが0.08mmになるように樹脂付着量を調整したものである。アラミド繊維不織布の含有率は、60重量%である。
【0023】
[プリプレグ(2)]
ワニス(A)をガラス繊維織布(単位重量:107g/m2、旭シュエーベル製「GC−216」)に含浸し、加熱乾燥(170℃、5分)してプリプレグとした。このプリプレグは、加熱加圧成形後の厚さが0.1mmになるように樹脂付着量を調整したものである。硝子繊維織布の含有率は、60重量%である。
【0024】
実施例1
プリプレグ(1)を12枚重ねたプリプレグ層の両表面に離型フィルム(50μm厚のポリプロピレンフィルム)を配置しこれをステンレス製鏡面板に挟み込み、その複数組をプレス熱盤間に投入し、熱盤との間にはクラフト紙層からなる厚さ10mmのクッション材を介在させて加熱加圧成形し(温度170℃、圧力300kPa、時間120分)、厚さ1.0mmの積層板を得た。
【0025】
実施例2
PMMA(ポリメチルメタクリレート、三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリライト)のペレットを溶融しながら、パラ系アラミド繊維チョップ(繊維径12.5μm、繊維長5mm、デュポン社製「ケブラー」)をPMMA100重量部に対して5重量部となるように混合・混練し、押出成形によって厚さ1.0mmのアクリルシートを得た。
【0026】
従来例1
発泡ポリウレタン系樹脂からなる研磨用パッド(厚み1.2mm、ロデール製「IC−1000」)である。
【0027】
比較例1
ポリエチレンのペレットを溶融しながら混練し、押出成形によって厚さ1.0mmのポリエチレンシートを得た。
【0028】
比較例2
トリレンジイソシアナートとトリエチレンオキシドを混合し反応させたウレタン樹脂ワニスを注型法により成形し(温度:60℃、真空脱泡)、厚さ1.0mmの非発泡ポリウレタンシートを得た。
【0029】
比較例3
プリプレグ(2)を10枚使用し、実施例1と同様に加熱加圧成形し、厚さ1.0mmの積層板を得た。
以上の各例における研磨用パッド材の仕様を表1に纏めて示す。研磨用パッド材の弾性率測定はJIS K 7208に準拠して行なった。
【0030】
【表1】
【0031】
上記各実施例、従来例及び比較例における研磨用パッド材に、表面粗さを調整するためのドレス処理(#170、荷重2.7kgf、15分間)を行ない、研磨剤スラリの供給を均一にするための溝加工(格子状、幅2mm、深さ0.6mm、ピッチ15mm)を行なって研磨用パッドとした。これら研磨用パッドとCMP研磨剤により、シリコンウエハの研磨を次のように実施した。
研磨装置は荏原製「EPO−111」を使用し、研磨用パッドφ600mmを定盤上に貼付けて固定する。上記シリコンウエハを研磨機にセットし、ヘッド部に保持する。前記シリコンウエハの酸化珪素膜面をヘッドに保持したまま研磨用パッドに当接して、研磨荷重を30kPaに設定する。酸化セリウム研磨剤(日立化成工業(株)製HS−8005)を40mL/minと添加剤(日立化成工業(株)製HS−8102GP)を160mL/minの量で混合して定盤上に滴下しながら、定盤及びウエハを両者同一方向に75rpmで1分間回転させて、酸化珪素膜を研磨する。そして、研磨後のシリコンウエハを純水で十分に洗浄後、乾燥する。
【0032】
研磨を次の観点から評価した。評価結果を表2に示す。
弾性率の低下率(%):(25℃の弾性率−60℃の弾性率)/25℃の弾性率×100
研磨傷数:φ200mmシリコンウエハ上にTEOS−プラズマCVD法で酸化珪素膜を1μm厚に形成したブランケットウェハを1分間研磨した後、ウェハ表面全体を光学的スキャンし、検出部を顕微鏡観察し研磨傷をカウントする。
平坦性:φ200mmのシリコンウェハ上に幅100μm、間隔300μmのラインなどのパターンを厚み10nmの窒化珪素膜で作製した後、Si露出部を深さ350nmエッチングし、このウェハ上にTEOS−プラズマCVD法で酸化珪素膜を600nm厚に形成した450nmの凹凸を持ったTEGウェハを準備する。このウェハを窒化珪素膜が露出するまで研磨した後、窒化珪素膜のライン(幅100μm)とその隣り合った酸化珪素膜のライン(幅300μm)との表面の段差をDektak3030(SLOAN社製)触針式段差計を用いて測定した。
耐久性:従来例の研磨用パッドの使用寿命を100とした指数で示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2の評価結果から、本発明に係る研磨用パッドを用いることにより、従来例1及び比較例1、2と比較し、60℃においても平坦性の低下を25%前後に抑えることができ、しかも有機繊維の効果で研磨傷の発生を抑制できることが判る。
実施例1と実施例2との対照から、熱硬化性のエポキシ樹脂を使用することにより、温度上昇による弾性率低下を防止できることが判る。また有機繊維としてアラミド繊維を含有させることにより、研磨用パッドが高強度になり、摩耗に対する耐久性が高まることが判る。
上記本発明の実施例に係る研磨用パッドは、シリコンウエハやハードディスクなどの製造工程において、その表面を研磨するために用いても、安定した研磨速度を維持し、研磨傷の発生を抑制しながら研磨を実施することができる。
【0035】
【発明の効果】
上述したように、本発明に係る研磨用パッドを使用することにより、平坦性を安定化することができる。また有機繊維を使用することにより被研磨物の微細な研磨傷の発生を抑制することもできる。そして、これらによって、研磨物の生産歩留まり向上を図れ、コスト低減が可能となる。特に熱硬化性樹脂と有機繊維の複合材である時、研磨速度の上昇と研磨傷を低減させるために有効である。さらに、有機繊維基材は強度の高いアラミド繊維を選択することにより、研磨用パッドの強度を大きくでき、他の有機繊維と比較して摩耗に対する耐久性が高まるので、上記効果を保持しつつ研磨用パッドの使用寿命を延ばすことも可能となる。
Claims (5)
- 被研磨物表面を研磨するためのパッドであって、温度を25℃から60℃へ上昇した際の温度上昇による弾性率低下量が25℃における弾性率に対して25%以下であること、及び無機充填物を含まず、実質的に発泡孔を有さない樹脂からなることを特徴とする研磨用パッド。
- 樹脂が熱硬化性樹脂の硬化物を含有することを特徴とする請求項1記載の研磨用パッド。
- 樹脂中に有機繊維を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨用パッド。
- 樹脂中に当該樹脂より温度上昇による弾性率低下量が小さい有機繊維を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の研磨用パッド。
- 所定の被研磨物に対し請求項1〜4のいずれかに記載の研磨用パッドを押し当て、被研磨物と研磨用パッドとの間に研磨剤を供給しながら、被研磨物と研磨用パッドを相対的に摺動させて被研磨物表面を研磨することを特徴とする研磨物の製造法。
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- 2003-03-04 JP JP2003056820A patent/JP2004266186A/ja active Pending
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