JP2004263274A - 電気接点に用いる金属板及び同金属板の製造方法 - Google Patents

電気接点に用いる金属板及び同金属板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】100万回以上の繰り返し打鍵試験をクリアできる電気接点に用いる皿バネ用SUS材の提供。
【解決手段】ステンレス鋼からなる薄板状の基板2表面に、ニッケルメッキ層3を形成し、ニッケルメッキ層3上にフラッシュメッキによって0.5μm厚以下の銅メッキ層4を形成し、銅メッキ層4上には銀メッキ層5を形成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電子機器に用いる小型スイッチ内に設け電気接点として用いるための金属板及び同金属板の製造方法に係り、詳細には、皿バネとしての機能及び接点としての機能に優れた電気接点に用いる金属板及び同金属板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】小型化が著しい電子機器においては、各電子部品を小型化することが求められるが、一方で、小型化した部品の耐久性を劣化させないようにしなければならない。そして、構成する部品点数を少なくするためには一つの部品に求められる機能も多様に亙るようにしなければならない。
【0003】
例えば、プッシュスイッチにおいては、スイッチを押圧した後に指を離し開放すると押圧部が押し戻されるようスイッチ内部にバネを設けていたが、該スイッチを小型化するに当たって、バネをコイル形状から皿板形状の皿バネとすることで、高さを抑えることが出来、又、押圧方向の押し込み量を少なくすると共に皿バネのばね力によってクリック感を持たせ、更には、皿バネ自体を接点として機能させ、皿バネに複数の機能を持たせることで小型化することが出来た。
この皿バネは、金属板を皿状に打ち抜き加工して用いられるが、素材である金属板には電子部品として用いるに足る電導性、皿バネとして用いるに足るバネ特性、バネとして繰り返し使用に耐える耐久性等が求められる。即ち、例えばプッシュスイッチにおいて市場で求められる耐久性能は、100万回の繰り返し使用にも耐えうるものであることが望ましい。
【0004】
そこで、従来用いられていた金属板は、ベリリウム銅(以下、BeCu材という。)表面に薄膜状に銀メッキを施し圧延して薄板としたものも多く用いられる金属材料であった。
従来用いられていた銀メッキを施したBeCu材は、銀メッキ層が1μm程度のものであり、同BeCu材を用いて製造したプッシュスイッチを用い機械的特性試験である繰り返し打鍵試験を行ったところ、銀メッキ層の剥がれは無かったものの約50万回の繰り返し打鍵で同BeCu材に割れが発生した。
【0005】
そこで発明者は、同試験結果を受けて、ステンレス鋼材を用いた試作金属板を考えた。試作金属板は、ステンレス鋼材(以下、SUS材という。)の電導度を上げるための銀メッキを表面に施しやすいように下地材として0.1μm〜0.3μm厚のニッケル層をフラッシュメッキによって設け(以下、NiF層という)てから銀メッキを施す。従来用いられていた銀メッキを施したSUS材は、銀メッキ層が1μm程度のものである。
このSUS材を用いて製造したプッシュスイッチをBeCu材同様に製造し、繰り返し打鍵試験を行った結果、機械的特性では200万回の繰り返し試験でも割れやクラックが発生しなかった。しかしながら、約50万回の繰り返し打鍵後に銀メッキ層に剥がれが生じ、電気的特性が得られなくなった。
上記SUS材及びBeCu材では、市場で求められる所望の耐久性が得られない。
【0006】
以下に、SUS材及びBeCu材の説明と同材料を用いたプッシュスイッチの説明、及び、上記打鍵試験並びにその結果を、図6以下を用いて詳説する。
図6は、皿バネを用いたプッシュスイッチの縦断面説明図である。100はストロークが比較的短い携帯電話や携帯端末機器に用いられるプッシュスイッチであり、上面を開口した筐体101の底面両端側に接点102a、102aを固定し、接点102a、102a間に接点102bを固定して構成する。そして、接点102a、102a間には、金属板を皿状に加工した皿バネ103を設置する。皿バネ103は、直径3.5mmであり中央部が凸状に湾曲した皿形状を呈する薄板状からなり、中央部が上方に凸状となるよう接点102a、102a上に載置される。このように皿バネ103が載置された状態では、皿バネ103が接点102bとは接触しておらず、接点102a及び接点102bは電気的に導通状態ではない。
【0007】
皿バネ103を構成する金属板は、上記銀メッキ層を下地NiF層上に施した厚さ0.05mmのSUS材、及び、銀メッキ層を施した厚さ0.05mmのBeCu材の夫々から形成して、SUS材及びBeCu材夫々の性能試験に用いた。
105は、キートップである。キートップ105は、凸形状を呈し、底面には皿バネ押圧部となる突起を設けてなる。又、104は、中央に貫通孔を穿設したカバーであり、カバー104の貫通孔内に下方からキートップ105を貫通させ、カバー104によって筐体101上面を覆い閉塞する。
このように形成するプッシュスイッチ100を用いて、皿バネ103に上記SUS材及びBeCu材の夫々を用い、夫々の性能試験を行った。
【0008】
図7は、試験に用いた上記SUS材及びBeCu材夫々の仕様である。図6及び図7から解るとおり、SUS材はJIS表記される「SUS301」であって、厚さ0.05mmであり、表面には下地として厚さ0.1μm〜0.3μmのNiF層を設け、該NiF層上に厚さ1μmの銀メッキを施したものである。該SUS材において表面に設けたNiF層は、SUS材上への銀メッキの相性が悪いために設けたものである。同様にBeCu材は、厚さ0.2mmのBeCu材表面に4μm厚に銀メッキを施した基材を圧延加工してから650度にて焼き鈍しを行い、再び圧延加工してから720度で焼き鈍しを行った後に厚さ0.05mmにまで圧延加工を施し、最終的に厚さ0.05mmのBeCu材表面に1μmの銀メッキを施し板状に加工したものである。そして、SUS材及びBeCu材共に直径3.5mmの皿バネ形状に打ち抜き加工して用いた。
該SUS材及び該BeCu材を用いた金属板から形成した皿バネ103を用いた繰り返し打鍵試験の結果は前記した結果となった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで発明者は、前記繰り返し打鍵試験結果を受け、動作耐久性能が200万回以上となるような皿バネの開発研究に着手した。
先ず、発明者は試験結果を分析するために、試験終了後の前記従来例に係る銀メッキを施したSUS材及び同BeCu材夫々からなる皿バネである検体を電子顕微鏡で撮像する等して分析を試みた。図8に表す顕微鏡画像(以下画像とは画像を模した図をいう。)は50万回打鍵後のSUS材の表面であり、図9に表す顕微鏡画像は50万回打鍵後のBeCu材の表面である。又、図10はP−δ特性図(荷重―変位曲線)であり、縦軸が打鍵に必要な押圧力を表し横軸が接点である皿バネの変位量を表す。更に又、図11は解析した結果を表す模式図である。
【0010】
50万回打鍵後の従来例であるSUS材には、走査電子顕微鏡による分析(以下、SEM分析という)及びエネルギー分散型X線元素分析装置による分析(以下、EDX分析という)を施した結果、図8(a)に表す走査型顕微鏡による表面画像のように、表面の銀メッキ層106が剥がれており、図8(b)に表すAg成分のEDX分析画像によっても、銀メッキ層106の剥がれた様子が中央のホール状画像部107によって明かとなった。更に、図8(c)はNi成分を表すEDX分析画像及び図8(d)はFe成分を表すEDX分析画像で、図8(b)で表れたホール状画像部107に相当する部分が表れていることから、NiF層は銀メッキ層の剥がれが生じた部分に存在していることが明かとなった。
即ち、試験後のSUS材検体では、銀メッキ層が剥がれてはいるものの、銀メッキ層内部組織には存在しているという結果になった。
【0011】
更に又、該SUS材検体におけるスイッチがオンとなる点の試験前後の位置が表れるP−δ特性図(図10に表す)では、試験前の通常のオン位置である●点に対して、試験後にはオン位置が×点で表れており、スイッチの押し込みによるSUS材検体の変位量、即ち押し込まれた量が試験前よりも少ない時に表れており、スイッチの押し込みが正常時よりも少ない時点で既にオン状態となってしまう問題点が明かとなった。この状態を図11によって説明すれば、銀メッキ層106の剥がれによって、通常オン位置よりも剥がれた銀メッキ層106が接点102bと接触してしまうことに起因して発生するものと推察される。このオン位置の異常は、スイッチにとっては大きな欠点であり、解決しなければならない問題点である。
【0012】
又、BeCu材検体では、図9に表すように、銀メッキ層10の剥がれは少ないが、素材であるBeCu材にクラックが入っていた。このことから、銀メッキ層10の剥がれは、クラックが発生したことによるものと推察することが出来た。
【0013】
以上の事から、発明者は、50万回打鍵試験で素材にクラックが入っていたBeCu材では、基材となるBeCu材そのものが繰り返し使用に耐えることが出来ないので、同試験で銀メッキ層は剥がれていたものの基材には変化が見られないSUS材を素材として研究を進めることに思い至った。
【0014】
【課題を解決するための手段】そこで発明者は、試験前の素材の状態を調査するため、オージェ電子分光分析(以下、AES分析という)によってSUS材検体及びBeCu材検体の試験前の表面状態を分析した。
【0015】
図12はSUS材を用いた打鍵試験前の皿バネ表面をAES分析したグラフである。図12に表すグラフは横軸にメッキ層の深さを表し、縦軸に成分割合を示し成分毎の曲線をグラフに描いて表しており、同グラフに表れるように、SUS材のメッキ表面には銀が主成分として存在し、メッキ深さ略1μm地点でNiが主成分に代わっている。次いで、表面から略1.4μm地点で主成分がFeに代わっている。そして、Ni層は表面方向に行くに従い急激に曲線が落ち込みNi成分の割合が極端に少なくなっていることが解り、その逆に、中心方向へは稍浸透してNiの成分が深い所まで到達していることが解る。
【0016】
図13はBeCu材を用いた打鍵試験前の皿バネ表面をAES分析したグラフである。図13に表すグラフも又図12同様横軸がメッキ深さ、縦軸が成分割合を表しており、同グラフによれば、表面層を形成している銀メッキ層の下層である銅メッキ層が表層近くまで成分を残しており、表層である銀メッキ層の形成され方がSUS材とは異なっていることが解った。
【0017】
そこで発明者は、上述のSUS材及びBeCu材の表層部の構造の差異を考察し、SUS材におけるNiは銀に殆ど固溶しないため密着性が悪く、又、SUS材では銀メッキ層とNi層とが重なり合っている部分(拡散層)が少ないが、BeCu材では表層部分まで銀メッキ層とCuメッキ層とが重なり合っている(拡散層)ことに着目し、SUS材では成分が重なり合っている部分(拡散層)が少ないことに起因して銀メッキ剥がれが容易に起こってしまうのではないかと推論し、SUS材の表層である銀メッキ層の剥がれが容易に起こらないようにするため、Ni層と銀メッキ層との間にBeCu材同様にCuメッキ層を設けることに思い至った。
【0018】
発明者は、上記考察に基づいてSUS材の銀メッキ層とNi層との間にCu層を設けた新たなSUS材(以後、Cu層追加SUS材という)と、前記従来例のSUS材に圧延処理を施したSUS材(以後、SUSリロール材という)を用いることを着想した。
そして、Cu層追加SUS材及びSUSリロール材とによって夫々打鍵試験を試みた。図14は、これらSUS材による実験後の表面外観画像である。
【0019】
図14(a)は、SUSリロール材の20万回打鍵後であり、SUSリロール材は打鍵試験の結果20万回打鍵後には銀メッキ層が剥離し、スイッチ押圧前にスイッチがオン状態となってしまった。
図14(b)は、Cu層追加SUS材の50万回打鍵後の表面観察画像であり、図14(c)は図14(b)の周囲部の様子を表した画像である。更に、図15(a)は図8同様、Cu層追加SUS材のSEM分析画像であり、図15(b)はAg成分の、図15(c)はCu成分の、図15(d)はNi成分の、図15(e)はFe成分の夫々EDX分析画像である。そして、Cu層追加SUS材は打鍵試験の結果、50万回打鍵後に銀メッキ層が図14(b)に表れるように摩耗してしまい、図14(c)に表れるように銀メッキ層の摩耗粉108が発生していた。しかしながら、図15各図から明らかなように銀メッキ層は剥離したのではなく摩耗であり、更には、Cu層は摩耗しているものの剥離ではない状態が観測された。図16は、比較的良好であった打鍵試験前のCu層追加SUS材をAES分析した結果である。図16を見ると、表面からの深さ約0.7μm地点でAg成分とCu成分とが交差しており、該交差前後ではAg成分及びCu成分共に急激に成分比率が落ち込んでいて1μmの銀メッキ層と1.4μmのCu層とは、改良前のSUS材と同様に拡散層を形成していないことが解った。
【0020】
上記SUSリロール材及びCu層追加SUS材の結果から、SUSリロール材では、Ag及びNiの密着性が低下しており耐久性に欠けるため不採用とし、Cu層追加SUS材に、Ag成分とCu成分との拡散層を形成するような改良を加えることに思い至った。
これらの結果を受けて、BeCu材ではCu成分が表面近くにまで比較的多く表れて銀メッキ層と良く密着しており、製造工程では焼き鈍し処理を施していたので、Cu層追加SUS材にも焼き鈍し処理を施す改良をすることに思い至ったが、打鍵試験の結果30万回〜50万回の繰り返し打鍵後に割れが発生したので機械的強度が低下してしまい採用できなかった。
【0021】
そこで発明者は、Cu層の摩耗対策としてCuを極薄い層にフラッシュメッキによって形成してはどうかと思い至ったので、
【0022】
ステンレス鋼からなる薄板状の基板表面に、ニッケルメッキ層を形成し、ニッケルメッキ層上にフラッシュメッキによって銅メッキ層を形成し、銅メッキ層上には銀メッキ層を形成することを特徴とする電気接点に用いる金属板、
【0023】
及び、
【0024】
ステンレス鋼からなる薄板状の基板表面に、ニッケルメッキ層を形成し、ニッケルメッキ層上にフラッシュメッキによって銅メッキ層を形成し、銅メッキ層上には銀メッキ層を形成することを特徴とする電気接点に用いる金属板の製造方法、
【0025】
及び、
【0026】
ステンレス鋼からなる薄板状の基板表面に、ニッケルメッキ層を形成し、ニッケルメッキ層上には0.5μm厚以下の銅メッキ層を形成し、銅メッキ層上には銀メッキ層を形成することを特徴とする電気接点に用いる金属板、
【0027】
及び、
【0028】
ステンレス鋼からなる薄板状の基板表面に、ニッケルメッキ層を形成し、ニッケルメッキ層上には0.5μm厚銅メッキ層を形成し、銅メッキ層上には銀メッキ層を形成することを特徴とする電気接点に用いる金属板の製造方法、
を提供する。
【0029】
【発明の実施の形態】以下に、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1はこの発明の実施の形態による皿バネを表す説明図であり(a)は平面説明図(b)は側面説明図(c)は一部拡大図であり、図2はこの発明にかかる金属板を用いたプッシュスイッチの中央縦断面説明図であり、図3は打鍵試験後の走査型電子顕微鏡の画像であり、図4は打鍵試験後のSEM分析及びEDX分析画像であり、図5はP−δ特性図である。
【0030】
1は、この発明の実施の形態である金属板を皿状に加工したスイッチ用の皿バネである。皿バネ1は、押圧スイッチにクリック感を持たせるような機械的特性を有すると共に押圧時には接点相互を接続して良好な電気的な導通状態を形成可能でなければならず、更には繰り返し使用に耐えるよう、100万回というような複数回の繰り返し使用後にも電気的導通状態を保持すると共にクリック感を持たせるような機械的特性を維持できなければならない。皿バネ1は、直径2.3mmの円形薄板状であり、中央部が上方に凸状に湾曲してなる。皿バネ1の基板2は厚さ0.5mmのステンレス鋼(SUS材)からなり、基板表面にはフラッシュメッキによってニッケルメッキを施したニッケル層3を形成する。又、基材2は、この実施の形態ではJIS規格で定められたSUS301−H−TAを用いたが、機械的強度等が略同等であれば他のSUS材でも使用可能である。
【0031】
ニッケル層3は、この実施の形態では0.1μm〜0.3μmからなるが、それ以上の厚さでも良く、フラッシュメッキによらなくとも良い。
更にニッケル層3の上部には同じくフラッシュメッキによって銅メッキを施し銅層4を形成する。更に銅層4上部には銀メッキを施した銀層5を形成する。
【0032】
銅層4は、その厚さの目標値を0.3μmに設定してフラッシュメッキによって形成するが、0.1μm〜0.5μm程度の厚さであれば充分にこの発明による所定の性能を発揮することが可能であり、又、フラッシュメッキによらずとも、銅層4を薄膜状にメッキ形成可能で有れば他のメッキ法によって形成しても良い。更に又、銅層4は0.5μmより厚くとも良く、前記従来例における実験では1.26μm厚のメッキではメッキ剥がれが起きてしまうことが解っているので少なくとも1.26μm未満でなければならないが、1.26μm未満であって本発明の効果である繰り返し使用によってもメッキ剥がれ等が現出しない厚さに形成すればよい。発明者がフラッシュメッキによりメッキした目標値0.3μmの銅層4の厚みを計測するために、製品となる良好な皿バネ1から複数をサンプリングし、皿バネ1の表層である銀層5を剥離剤によって剥離してから計測した結果では、0.13μm〜0.19μmであった。この数値は、目標値である0.3μmを大きく下回る値であるが、銅層4の上層である銀層5を銀剥離剤によって剥離する際に、銀層5と共に銅層4も剥離されていたためであると考えられ、略同じ厚さの銅層4が剥離されたものと考えれば、銅層4の厚さのばらつきは本発明の効果に影響を与えないことが解る。このように、0.5μm程度の厚さで有れば、銀層5が剥離せず所定の性能を有する皿バネ1として使用することが可能であると考えられる。
【0033】
銀層5は、厚さ1μmに形成されるが、厚さ1μmに限定されるものではなく電気接点部材の一部として形成する皿バネ1が良好な電導度を保てればどの様な厚さからなっても良い。
【0034】
上述のように形成される皿バネ1は、図1に表すように、プッシュスイッチ6の接点部材として用いられる。即ち、プッシュスイッチ10は、ストロークが比較的短い携帯電話や携帯端末機器に用いられるスイッチであり、上面を開口した筐体7の底面両端側に接点8a、8aを固定し、接点8a、8aの間には接点8bを固定して形成する。そして、接点8a、8a間には、皿バネ1を設置する。皿バネ1は、中央部が上方に凸状となるよう接点8a、8a上に載置される。このように皿バネ1が載置された状態では、皿バネ1は接点8bとは接触しておらず接点8a及び接点8bは電気的に導通状態ではない。
【0035】
10は、キートップである。キートップ10は、凸形状を呈し、底面には皿バネ押圧部となる突起を設けてなる。又、9は、中央に貫通孔を穿設したカバーであり、カバー9の貫通孔内に下方からキートップ10を貫通させ、カバー9によって筐体7上面を覆い閉塞する。
そこで、このように形成するプッシュスイッチ6を用い、キートップ10が打鍵されることで皿バネ1が押圧されて接点8aと接点8bとを導通状態とする動作を繰り返し行う打鍵試験を行い、上述のように形成した皿バネ1を形成する金属板の性能を検証した結果を、打鍵後の皿バネ1表面を撮像した画像を表す図3、同SEM分析した画像である図4(a)、EDX分析した画像である図4(b)乃至図4(e)に基づき述べる。尚、図5はP−δ特性図(荷重―変位曲線)であり、縦軸が打鍵に必要な押圧力を表し横軸が接点である皿バネ1の変位を表し、●点が通常のスイッチオン状態となる位置を表す。従って、図5に表す●点にてスイッチオン状態となれば、打鍵試験に合格していることとなり、合否判定の基準となる。
【0036】
該打鍵試験では、50万回打鍵後には図5に表すP−δ特性図上の●点でスイッチオン状態となり良好な結果が得られ、図3(a)に表すように摩耗部11が存在し銀層5に摩耗は見られるものの、図3(b)に表す摩耗部11周囲部には剥離して離脱した銀メッキ片は見あたらない。又、図4(a)に表すSEM分析画像にも、摩耗以外のメッキ剥がれは見あたらなかった。更に又、図4(b)に表す銀成分のEDX分析画像、図4(c)に表す銅成分のEDX分析画像、図4(d)に表すニッケル成分のEDX分析画像、図4(e)に表す鉄成分のEDX分析画像には夫々成分の欠落が表れておらず、このことから銀メッキ層内でのみの摩耗であり銀層5全ての摩耗には至っておらず下層である銅層4以下にも勿論摩耗による欠落は起こっていなかった。
更に打鍵試験を繰り返し100万回打鍵後を観察したところ、100万回打鍵後でも50万回打鍵後の結果同様、図3に表すように銀層5に摩耗は見られるものの同様に良好なスイッチオン状態を維持していた。
そして更に打鍵試験を繰り返し200万回打鍵後を観察しても同様の結果が得られた。
【0037】
【発明の効果】従って、この発明によれば、表層である銀層と銀層の下層であったニッケル層との間に銅の薄膜層を形成したので、表層である銀層が箔状にメッキ剥がれを起こすことを防止でき、更には銅層を設けなかった従来品の打鍵試験結果に比し、200万回という打鍵試験後にも良好な接点部品としての皿バネ特性を保持可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態による皿バネを表す説明図
【図2】同皿バネを用いたプッシュスイッチの中央縦断面説明図
【図3】打鍵試験後の走査型電子顕微鏡の画像
【図4】打鍵試験後のSEM分析及びEDX分析画像
【図5】P−δ特性図
【図6】従来例図
【図7】従来例図
【図8】従来例図
【図9】従来例図
【図10】従来例図
【図11】従来例図
【図12】従来例図
【図13】従来例図
【図14】従来例図
【図15】従来例図
【図16】従来例図
【符号の説明】
1 皿バネ
2 基板
3 ニッケル層
4 銅層
5 銀層
6 プッシュスイッチ
7 筐体
8a 接点
8b 接点
9 カバー
10 キートップ
11 摩耗部

Claims (4)

  1. ステンレス鋼からなる薄板状の基板表面に、ニッケルメッキ層を形成し、ニッケルメッキ層上にフラッシュメッキによって銅メッキ層を形成し、銅メッキ層上には銀メッキ層を形成することを特徴とする電気接点に用いる金属板。
  2. ステンレス鋼からなる薄板状の基板表面に、ニッケルメッキ層を形成し、ニッケルメッキ層上にフラッシュメッキによって銅メッキ層を形成し、銅メッキ層上には銀メッキ層を形成することを特徴とする電気接点に用いる金属板の製造方法。
  3. ステンレス鋼からなる薄板状の基板表面に、ニッケルメッキ層を形成し、ニッケルメッキ層上には0.5μm厚以下の銅メッキ層を形成し、銅メッキ層上には銀メッキ層を形成することを特徴とする電気接点に用いる金属板。
  4. ステンレス鋼からなる薄板状の基板表面に、ニッケルメッキ層を形成し、ニッケルメッキ層上には0.5μm厚銅メッキ層を形成し、銅メッキ層上には銀メッキ層を形成することを特徴とする電気接点に用いる金属板の製造方法。
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