JP2004263156A - 帯電防止性ポリ乳酸系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】帯電防止性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物からなる樹脂成型品を得ること。
【解決手段】疎水基の炭素数が8から22であり、且つ硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤をポリ乳酸系樹脂組成物に対して0.05〜10.0重量%含有する樹脂成型品とする。
【選択図】 なし
【解決手段】疎水基の炭素数が8から22であり、且つ硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤をポリ乳酸系樹脂組成物に対して0.05〜10.0重量%含有する樹脂成型品とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物由来の再生可能資源であり、且つ生分解性を有するポリ乳酸系樹脂において優れた帯電防止性を付与した樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石油等化石資源を原料とするポリプロピレン、ポリエチレン或いはポリ塩化ビニル等のプラスチックは食品包装用フィルム、電化製品、工業資材等に形を変え、我々の生活には欠かせない非常に重要なものである。しかしながら、限りある化石資源を節約し、徹底的に再資源化する物質循環型システムが掲げられている社会背景の中で、化石資源を原料とする各種プラスチックは循環型システムから大きく外れている。その原因の一つとしてこれらの各種プラスチックの殆どが将来枯渇が想定される化石資源を原料としていること、更には生分解性が非常に悪いことが挙げられる。
【0003】
生分解性を有さないプラスチックは、不必要となった後は自然界に半永久的に残り続け、生態系に大きな影響を及ぼし様々な面で環境破壊に通じていることは周知の事実である。
【0004】
このように生分解性を有さず、且つ化石資源由来のプラスチックからの転換を図ろうとしているのが、植物由来の生分解性樹脂である。特に近年注目されているのが、生産量も飛躍的に増大しているポリ乳酸系樹脂である。
【0005】
ポリ乳酸系樹脂の原料は再生可能な資源であるトウモロコシ或いはジャガイモ等の穀物より得られた糖又はそれらを発酵して得られる乳酸から合成され、更に不要になった際はポリ乳酸系樹脂は自然環境下において容易に微生物により分解されて最終的に水と炭酸ガスになる。
【0006】
ポリ乳酸系樹脂は物質循環型システムに乗っ取った樹脂である一方、従来の化石資源由来の樹脂と同等の性能を示すことも知られている。ポリ乳酸系樹脂は非常に高い透明性を有しており、透明性を重視する包装用途に大いに利用できる。又水蒸気透過性は従来のOPP或いはOPSフィルム以上の性能があり、これらのフィルムの代替できる期待もある。
【0007】
しかしながら、いくつもの利点を有しフィルム、シート等の成型品に活用可能なポリ乳酸系樹脂にも一般的な樹脂と同様に樹脂特有の電気絶縁性を有していることから非常に帯電し易く、印刷時でのインキのハジキ、内容物を梱包する際の飛散、或いは製品に埃が付着し外観を損ねる等、帯電による多くの問題がある。
【0008】
帯電を解決する手段として特許文献1では脂肪族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止剤を含有する水性塗工液を塗布することで帯電防止性を付与することが示されている。又は特許文献2ではポリ乳酸系二軸延伸フィルムに対して特定のアニオン界面活性剤又は特定のノニオン界面活性剤の配合液を塗布することで帯電防止性を与えられることが示されている。しかしながら、一般に塗布方式では樹脂成形後に塗布工程が増える結果、経済的コストが掛かり、又塗布方式特有の滑り性、透明性不良、或いは帯電防止性能の持続性欠如等に問題点がある。
【0009】
フィルム等の成型品の表面に帯電防止剤を塗布する方法以外に帯電防止剤を予め樹脂に添加する練り込み方式がある。
【0010】
特許文献3では、ポリ乳酸樹脂に多価アルコール及びその脂肪酸エステルを含有させ帯電防止性のあるフィルム及びシートを提供することが示されている。又は特許文献4では、ポリ乳酸にグリセリン脂肪酸エステルからなるノニオン界面活性剤を含有させ帯電防止性を付与させることが示されている。更に特許文献5では、生分解性樹脂であるカプロラクトン系樹脂中に、グリセリン脂肪酸エステルを含むノニオン界面活性剤を含有させることで帯電防止性を付与させることが示されている。
【0011】
このように生分解性樹脂に対するノニオン界面活性剤である帯電防止剤の練り込み方式での検討は数多くなされたが、実際にはポリ乳酸系樹脂特有の結晶性と構造によりノニオン界面活性剤である帯電防止剤では十分満足できる帯電防止性能が得られていない為、さらなる改良が求められていた。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−86307号公報(第1−14頁)
【特許文献2】
特開平14−12687号公報(第1−6頁)
【特許文献3】
特開平9−221587号公報(第1−9頁)
【特許文献4】
特開平10−36650号公報(第1−14頁)
【特許文献5】
特開平14−60603号公報(第1−5頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、植物由来の再生可能資源であり、且つ生分解性を有するポリ乳酸系樹脂において優れた帯電防止性を付与した樹脂組成物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、植物由来の再生可能資源であり、且つ生分解性を有するポリ乳酸系樹脂において帯電防止性を付与させる為に、疎水基の炭素数が8から22であり、且つ硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤を含有させたところ、帯電防止性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0015】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明は疎水基の炭素数が8から22であり、且つ硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤からなる帯電防止剤を0.05重量%〜10.0重量%含有する帯電防止性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物に関する。
【0016】
以下、本発明の帯電防止剤について説明する。
本発明に帯電防止剤として使用されるアニオン界面活性剤は、疎水基の炭素数が8から22であり、且つ硫酸エステル塩型である。
【0017】
本発明で示される硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤の疎水基の炭素数は8から22であるが、炭素数がこのような範囲であれば、良好な帯電防止性が得られ、又樹脂加工工程において帯電防止剤の発煙による作業環境の悪化を招くことはない。
【0018】
本発明で示される硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤の疎水基は、直鎖型、分岐型或いは環状型が挙げられ、又飽和結合或いはアルケニル基、アルカジエニル基、アルカトリエニル基等の不飽和結合を有し、更にアミド基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシル基、フェニル基等の官能基を有しても構わないが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明で示される硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤の対イオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩系、高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩系、高級アルコールエーテル硫酸エステル塩系、高級脂肪酸アミドアルキロール化硫酸エステル塩系が挙げられ、更に具体的には、カプリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ベヘニル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ステアリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリン酸モノグリセリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリン酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン椰子油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリン酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等を例示することが出来るがこれに限定されるものではない。
【0021】
本発明のアニオン界面活性剤に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要により本発明以外の公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤である帯電防止剤を単独或いは2種以上併用させても良い。
【0022】
ポリ乳酸系樹脂に対する本発明の帯電防止剤の添加量は0.05重量%〜10.0重量%であるが、好ましく0.1重量%〜5.0重量%であり、更に好ましくは0.5重量%〜2.0重量%である。帯電防止剤の添加量がこのような範囲であれば、良好な帯電防止性が得られ、ポリ乳酸系樹脂の透明性を損なうことはない。
【0023】
本発明の帯電防止剤は、ポリ乳酸系樹脂の水分による加水分解を防止する為に、予め帯電防止剤を乾燥させることが望ましい。好ましくは帯電防止剤内の水分量が1.0重量%以下である。
【0024】
以下、本発明のポリ乳酸系樹脂について説明する。
本発明に使用されるポリ乳酸系樹脂はポリ乳酸を主成分とするものであるが、乳酸のホモポリマーのみならず、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸、コハク酸、アジピン酸等の多価カルボン酸、酢酸セルロース、エチルセルロース等の多糖類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコールと乳酸の共重合体を含むポリエステルでも構わない。更に本発明の目的を阻害しない範囲でこれらのポリ乳酸系樹脂に対し、デンプン、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の他の生分解性樹脂を配合しても構わない。
【0025】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂の製造方法は、乳酸を直接脱水縮重合する方法、或いは乳酸の環状2量体であるラクチドを開環重合する方法等、公知の方法が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明のポリ乳酸系樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で可塑剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、無機フィラー等の各種添加剤、改質剤、充填剤を付加成分として添加することができる。
【0027】
ポリ乳酸系樹脂を加熱加工するにあたり、水分による加水分解を抑制する為にポリエステル樹脂の十分な乾燥が必要である。従って予め使用する樹脂は窒素雰囲気下の80℃にて10時間の乾燥を行うことが好ましい。
【0028】
本発明の帯電防止剤の添加方法は、公知の方法で行われる。すなわち、高濃度のマスターバッチを別に作製し、これをフィルム及びシート等の成型品を得るまでの任意の工程で混合しても良いし、ポリ乳酸系樹脂パウダーとあらかじめ混合しても良い。
【0029】
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は押し出し機及びTダイ、インフレーション等によりフィルム、シート等に成型可能である。押し出し時の温度は樹脂の溶融粘度を考慮すると170〜200℃が好ましい。
【0030】
かくして本発明に係わる疎水基の炭素数が8から22であり、且つ硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤である帯電防止剤を使用すると、従来のポリ乳酸系樹脂を遙かに上回る優れた帯電防止性能を発揮できる。
【0031】
この効果発現の機構については明確に究明できてはいないが、ポリ乳酸系樹脂特有の結晶性と構造に対してノニオン界面活性剤と比較した場合、アニオン界面活性剤内の硫酸エステル塩部位のイオン性による親水性が帯電防止性能に大きく寄与しているものと推定しており、これが本発明の根幹を成すものである。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0032】
【実施例】
ポリ乳酸樹脂(レイシアH−100:三井化学株式会社製)100重量部に対して実施例1〜6の硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤を表1に示した添加量で配合し、ラボプラストミルとローラミキサー(東洋精機株式会社製)にて200℃で溶解混合した後、混合した樹脂をプレス機にて厚さ2mm、縦100mm、横100mmのシート状に成型した。このシートを温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下に14日間放置した後、帯電防止性及び透明性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0033】
【比較例】
実施例1〜6で用いたポリ乳酸樹脂100重量部に対し表1に示した帯電防止剤と添加量で実施例と同様に溶解混合した後、プレス機にてシートを成型し、このシートを温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下に14日間放置した後、帯電防止性及び透明性を評価した。実施例と共に比較例1〜4の評価結果を表1に示す。
【0034】
<評価方法>
シートの性能評価は、具体的に下記の方法によって実施した。
1)帯電防止性
JIS−K−6911に準じ、作製したシートの表面固有抵抗値を測定した。Log(表面固有抵抗値Ω)は13以下が目標である。
【0035】
2)透明性
HAZE測定装置にて作製シートのHAZE値を測定し、帯電防止剤未添加シートとの差ΔHAZEで評価した。ΔHAZEは10以下が目標である。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
表1に示すように、本発明の実施例1〜6の帯電防止剤を添加したポリ乳酸系樹脂組成物は、優れた帯電防止性能を発揮することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物由来の再生可能資源であり、且つ生分解性を有するポリ乳酸系樹脂において優れた帯電防止性を付与した樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石油等化石資源を原料とするポリプロピレン、ポリエチレン或いはポリ塩化ビニル等のプラスチックは食品包装用フィルム、電化製品、工業資材等に形を変え、我々の生活には欠かせない非常に重要なものである。しかしながら、限りある化石資源を節約し、徹底的に再資源化する物質循環型システムが掲げられている社会背景の中で、化石資源を原料とする各種プラスチックは循環型システムから大きく外れている。その原因の一つとしてこれらの各種プラスチックの殆どが将来枯渇が想定される化石資源を原料としていること、更には生分解性が非常に悪いことが挙げられる。
【0003】
生分解性を有さないプラスチックは、不必要となった後は自然界に半永久的に残り続け、生態系に大きな影響を及ぼし様々な面で環境破壊に通じていることは周知の事実である。
【0004】
このように生分解性を有さず、且つ化石資源由来のプラスチックからの転換を図ろうとしているのが、植物由来の生分解性樹脂である。特に近年注目されているのが、生産量も飛躍的に増大しているポリ乳酸系樹脂である。
【0005】
ポリ乳酸系樹脂の原料は再生可能な資源であるトウモロコシ或いはジャガイモ等の穀物より得られた糖又はそれらを発酵して得られる乳酸から合成され、更に不要になった際はポリ乳酸系樹脂は自然環境下において容易に微生物により分解されて最終的に水と炭酸ガスになる。
【0006】
ポリ乳酸系樹脂は物質循環型システムに乗っ取った樹脂である一方、従来の化石資源由来の樹脂と同等の性能を示すことも知られている。ポリ乳酸系樹脂は非常に高い透明性を有しており、透明性を重視する包装用途に大いに利用できる。又水蒸気透過性は従来のOPP或いはOPSフィルム以上の性能があり、これらのフィルムの代替できる期待もある。
【0007】
しかしながら、いくつもの利点を有しフィルム、シート等の成型品に活用可能なポリ乳酸系樹脂にも一般的な樹脂と同様に樹脂特有の電気絶縁性を有していることから非常に帯電し易く、印刷時でのインキのハジキ、内容物を梱包する際の飛散、或いは製品に埃が付着し外観を損ねる等、帯電による多くの問題がある。
【0008】
帯電を解決する手段として特許文献1では脂肪族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止剤を含有する水性塗工液を塗布することで帯電防止性を付与することが示されている。又は特許文献2ではポリ乳酸系二軸延伸フィルムに対して特定のアニオン界面活性剤又は特定のノニオン界面活性剤の配合液を塗布することで帯電防止性を与えられることが示されている。しかしながら、一般に塗布方式では樹脂成形後に塗布工程が増える結果、経済的コストが掛かり、又塗布方式特有の滑り性、透明性不良、或いは帯電防止性能の持続性欠如等に問題点がある。
【0009】
フィルム等の成型品の表面に帯電防止剤を塗布する方法以外に帯電防止剤を予め樹脂に添加する練り込み方式がある。
【0010】
特許文献3では、ポリ乳酸樹脂に多価アルコール及びその脂肪酸エステルを含有させ帯電防止性のあるフィルム及びシートを提供することが示されている。又は特許文献4では、ポリ乳酸にグリセリン脂肪酸エステルからなるノニオン界面活性剤を含有させ帯電防止性を付与させることが示されている。更に特許文献5では、生分解性樹脂であるカプロラクトン系樹脂中に、グリセリン脂肪酸エステルを含むノニオン界面活性剤を含有させることで帯電防止性を付与させることが示されている。
【0011】
このように生分解性樹脂に対するノニオン界面活性剤である帯電防止剤の練り込み方式での検討は数多くなされたが、実際にはポリ乳酸系樹脂特有の結晶性と構造によりノニオン界面活性剤である帯電防止剤では十分満足できる帯電防止性能が得られていない為、さらなる改良が求められていた。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−86307号公報(第1−14頁)
【特許文献2】
特開平14−12687号公報(第1−6頁)
【特許文献3】
特開平9−221587号公報(第1−9頁)
【特許文献4】
特開平10−36650号公報(第1−14頁)
【特許文献5】
特開平14−60603号公報(第1−5頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、植物由来の再生可能資源であり、且つ生分解性を有するポリ乳酸系樹脂において優れた帯電防止性を付与した樹脂組成物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、植物由来の再生可能資源であり、且つ生分解性を有するポリ乳酸系樹脂において帯電防止性を付与させる為に、疎水基の炭素数が8から22であり、且つ硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤を含有させたところ、帯電防止性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0015】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明は疎水基の炭素数が8から22であり、且つ硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤からなる帯電防止剤を0.05重量%〜10.0重量%含有する帯電防止性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物に関する。
【0016】
以下、本発明の帯電防止剤について説明する。
本発明に帯電防止剤として使用されるアニオン界面活性剤は、疎水基の炭素数が8から22であり、且つ硫酸エステル塩型である。
【0017】
本発明で示される硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤の疎水基の炭素数は8から22であるが、炭素数がこのような範囲であれば、良好な帯電防止性が得られ、又樹脂加工工程において帯電防止剤の発煙による作業環境の悪化を招くことはない。
【0018】
本発明で示される硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤の疎水基は、直鎖型、分岐型或いは環状型が挙げられ、又飽和結合或いはアルケニル基、アルカジエニル基、アルカトリエニル基等の不飽和結合を有し、更にアミド基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシル基、フェニル基等の官能基を有しても構わないが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明で示される硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤の対イオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩系、高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩系、高級アルコールエーテル硫酸エステル塩系、高級脂肪酸アミドアルキロール化硫酸エステル塩系が挙げられ、更に具体的には、カプリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ベヘニル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ステアリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリン酸モノグリセリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリン酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン椰子油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリン酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等を例示することが出来るがこれに限定されるものではない。
【0021】
本発明のアニオン界面活性剤に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要により本発明以外の公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤である帯電防止剤を単独或いは2種以上併用させても良い。
【0022】
ポリ乳酸系樹脂に対する本発明の帯電防止剤の添加量は0.05重量%〜10.0重量%であるが、好ましく0.1重量%〜5.0重量%であり、更に好ましくは0.5重量%〜2.0重量%である。帯電防止剤の添加量がこのような範囲であれば、良好な帯電防止性が得られ、ポリ乳酸系樹脂の透明性を損なうことはない。
【0023】
本発明の帯電防止剤は、ポリ乳酸系樹脂の水分による加水分解を防止する為に、予め帯電防止剤を乾燥させることが望ましい。好ましくは帯電防止剤内の水分量が1.0重量%以下である。
【0024】
以下、本発明のポリ乳酸系樹脂について説明する。
本発明に使用されるポリ乳酸系樹脂はポリ乳酸を主成分とするものであるが、乳酸のホモポリマーのみならず、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸、コハク酸、アジピン酸等の多価カルボン酸、酢酸セルロース、エチルセルロース等の多糖類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコールと乳酸の共重合体を含むポリエステルでも構わない。更に本発明の目的を阻害しない範囲でこれらのポリ乳酸系樹脂に対し、デンプン、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の他の生分解性樹脂を配合しても構わない。
【0025】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂の製造方法は、乳酸を直接脱水縮重合する方法、或いは乳酸の環状2量体であるラクチドを開環重合する方法等、公知の方法が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明のポリ乳酸系樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で可塑剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、無機フィラー等の各種添加剤、改質剤、充填剤を付加成分として添加することができる。
【0027】
ポリ乳酸系樹脂を加熱加工するにあたり、水分による加水分解を抑制する為にポリエステル樹脂の十分な乾燥が必要である。従って予め使用する樹脂は窒素雰囲気下の80℃にて10時間の乾燥を行うことが好ましい。
【0028】
本発明の帯電防止剤の添加方法は、公知の方法で行われる。すなわち、高濃度のマスターバッチを別に作製し、これをフィルム及びシート等の成型品を得るまでの任意の工程で混合しても良いし、ポリ乳酸系樹脂パウダーとあらかじめ混合しても良い。
【0029】
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は押し出し機及びTダイ、インフレーション等によりフィルム、シート等に成型可能である。押し出し時の温度は樹脂の溶融粘度を考慮すると170〜200℃が好ましい。
【0030】
かくして本発明に係わる疎水基の炭素数が8から22であり、且つ硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤である帯電防止剤を使用すると、従来のポリ乳酸系樹脂を遙かに上回る優れた帯電防止性能を発揮できる。
【0031】
この効果発現の機構については明確に究明できてはいないが、ポリ乳酸系樹脂特有の結晶性と構造に対してノニオン界面活性剤と比較した場合、アニオン界面活性剤内の硫酸エステル塩部位のイオン性による親水性が帯電防止性能に大きく寄与しているものと推定しており、これが本発明の根幹を成すものである。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0032】
【実施例】
ポリ乳酸樹脂(レイシアH−100:三井化学株式会社製)100重量部に対して実施例1〜6の硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤を表1に示した添加量で配合し、ラボプラストミルとローラミキサー(東洋精機株式会社製)にて200℃で溶解混合した後、混合した樹脂をプレス機にて厚さ2mm、縦100mm、横100mmのシート状に成型した。このシートを温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下に14日間放置した後、帯電防止性及び透明性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0033】
【比較例】
実施例1〜6で用いたポリ乳酸樹脂100重量部に対し表1に示した帯電防止剤と添加量で実施例と同様に溶解混合した後、プレス機にてシートを成型し、このシートを温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下に14日間放置した後、帯電防止性及び透明性を評価した。実施例と共に比較例1〜4の評価結果を表1に示す。
【0034】
<評価方法>
シートの性能評価は、具体的に下記の方法によって実施した。
1)帯電防止性
JIS−K−6911に準じ、作製したシートの表面固有抵抗値を測定した。Log(表面固有抵抗値Ω)は13以下が目標である。
【0035】
2)透明性
HAZE測定装置にて作製シートのHAZE値を測定し、帯電防止剤未添加シートとの差ΔHAZEで評価した。ΔHAZEは10以下が目標である。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
表1に示すように、本発明の実施例1〜6の帯電防止剤を添加したポリ乳酸系樹脂組成物は、優れた帯電防止性能を発揮することができる。
Claims (2)
- 疎水基の炭素数が8から22であり、且つ硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤である帯電防止剤を0.05重量%〜10.0重量%含有する帯電防止性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物。
- 請求項1記載の帯電防止剤を含有するポリ乳酸系樹脂組成物からなるフィルム、シート等の樹脂成型品。
Priority Applications (1)
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
WO2009147123A1 (de) * | 2008-06-02 | 2009-12-10 | Emery Oleochemicals Gmbh | Antistatikmittel enthaltend fettalkoholethersulfat und polyethylenglycolfettsäureester |
JP2017202986A (ja) * | 2016-05-10 | 2017-11-16 | ベルジュラックジャポン株式会社 | 皮膜形成用組成物 |
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JPH10101911A (ja) * | 1996-10-01 | 1998-04-21 | Miyoshi Oil & Fat Co Ltd | 生分解性エマルジョン |
JP2002179898A (ja) * | 2000-12-12 | 2002-06-26 | Riken Technos Corp | 制電性ポリ乳酸系樹脂組成物 |
WO2003006550A1 (fr) * | 2001-07-11 | 2003-01-23 | Mitsui Chemicals, Inc. | Composition de resine polyester aliphatique et pellicules contenant cette composition |
-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003100885A patent/JP2004263156A/ja active Pending
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