JP2004263060A - 蒸着用フィルムの保存方法及び積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】気相蒸着法により薄膜層を形成させるに際し、系内を短時間で目的の真空度に到達させ得る蒸着フィルムの保存方法、及びこの方法で保存された蒸着用フィルム上に気相蒸着法により薄膜層を形成してなる積層体を提供する。
【解決手段】気相蒸着に用いられるプラスチックフィルムを保存する方法であって、保存開始時の揮発成分含有量が0.1重量%以下の前記プラスチックフィルムを、湿度50%RH以下の条件下に保存する蒸着用フィルムの保存方法、及び前記の方法で保存された蒸着用フィルムの少なくとも片面に、気相蒸着法により形成された薄膜層を有する積層体である。
【選択図】 なし
【解決手段】気相蒸着に用いられるプラスチックフィルムを保存する方法であって、保存開始時の揮発成分含有量が0.1重量%以下の前記プラスチックフィルムを、湿度50%RH以下の条件下に保存する蒸着用フィルムの保存方法、及び前記の方法で保存された蒸着用フィルムの少なくとも片面に、気相蒸着法により形成された薄膜層を有する積層体である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸着用フィルムの保存方法及び積層体に関する。さらに詳しくは、本発明は、プラスチックフィルム上に気相蒸着法により薄膜層を形成させるに際し、系内を短時間で目的の真空度に到達させて生産性の向上を図るための蒸着用フィルム、特に光学用途に用いられる蒸着用フィルムの保存方法、及びこの方法により保存された蒸着用フィルム上に気相蒸着法により薄膜層を形成してなる、例えば光学用部材の反射防止性保護フィルムなどとして好適な積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチックフィルム上に金属や金属化合物などからなる薄膜層が設けられた積層体は、機能性フィルムとして、様々な分野で広く用いられている。前記薄膜層を設ける方法は、乾式法及び湿式法(塗布法)に大別することができ、基材フィルムや薄膜層の種類、用途、経済性などに応じて使い分けられている。
乾式法としては、化学的気相蒸着(CVD)法や物理的気相蒸着(PVD)法などの気相蒸着法が知られており、そして、上記PVD法には、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどがある。
気相蒸着法により薄膜層が設けられた機能性フィルムとしては、例えば反射防止層を有する光学部材用保護フィルム、光触媒活性材料層を有する光触媒フィルム、導電性材料層を有する導電性フィルム、誘電体材料層を有する絶縁性フィルム、赤外線遮断剤層を有する赤外線遮断フィルムなどが知られている。
ところで、液晶表示装置は、入射した直線偏光を液晶層のもつ電気光学特性で変調し、出射側の偏光板で透過率の強弱や着色の信号として可視化する装置であって、偏光をその表示の原理に用いているため、偏光板は必須の部材である。この偏光板は自然光を直線偏光に変える素子であり、現在、液晶表示装置用の偏光板の多くは、ポリビニルアルコールフィルムからなる基材フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性材料を、染色・吸着させ、延伸配向させてなる偏光フィルムの両面あるいは片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせたものが用いられている。そして、この保護膜としては、通常トリアセチルセルロースフィルムが使用される。この液晶表示装置においては、前記偏光板は、液晶層の出射側以外に、通常入射側にも設けられている。
このような液晶表示装置をはじめ、PDP(プラズマディスプレイパネル)、CRT(ブラウン管)、EL(エレクトロルミネッセンス素子)などの各種ディスプレイにおいては、画面に外部から光が入射し、この光が反射して表示画像を見ずらくすることがあり、特に近年、フラットパネルディスプレイの大型化に伴い、上記問題を解決することが、重要な課題となってきている。
このような問題を解決するために、これまで種々のディスプレイに対して、様々な反射防止処置や防眩処置がとられている。その一つとして反射防止フィルムを各種のディスプレイに使用することが行われている。この反射防止フィルムには、反射防止性能と共に、保護フィルムとしての機能も要求される。
また、近年、市場が増大している携帯用の情報端末への入力装置として、タッチパネルが利用されている。このタッチパネルは、ディスプレイ画面を直接指、ペンなどで触れることによってデータを入力する装置である。このようなタッチパネルにおいては、視認側最表面に、外光の映り込みによる表示光のコントラストの低下を抑制するために、反射防止層を設けることが要求される。
反射防止フィルムは、現在、乾式法又は湿式法により基材フィルム表面に反射防止層を形成することにより作製されている。これらの方法の中で、乾式法においては、通常基材フィルム上に真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法を用いて、低屈折率の物質(MgF2、SiO2)を薄膜化する方法や、屈折率の高い物質[ITO(錫ドープ酸化インジウム)、TiO2、Al2O3など]と屈折率の低い物質(MgF2、SiO2など)を交互に積層する方法などにより、反射防止フィルムを作製することが行われている。
ところが、前記真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法や、減圧CVD法などの気相蒸着法により、基材フィルム上に薄膜層を形成する場合、該気相蒸着法においては、真空下で製膜が行われるため、一般に以下に示すような問題が生じていた。すなわち、基材フィルムは、通常ロール状に巻きとられ、そのまま保管や輸送がなされている。その基材フィルムに気相蒸着法で薄膜層を形成するに際し、系内を目的の真空度に到達させるのに、長時間を要し、生産性が低下するのを免れないという問題があった。特に高真空度が要求される真空蒸着(蒸着時の真空度;真空蒸着:約10−2〜10−5Pa、スパッタリング:約1〜10−1Pa、イオンプレーティング:約1〜10−1Pa)を採用する場合や、基材フィルムとしてポリカーボネートフィルムのような吸湿性の高いフィルムを用いる場合には、上記問題が顕著であった。
このような問題に対処するために、例えば真空蒸着において、蒸着装置を改良する技術(例えば特許文献1参照)、あるいは蒸着材料を改良する技術(例えば特許文献2、特許文献3参照)が開示されている。しかしながら、これらの技術は、基材フィルムの改良技術ではなく、まだ十分に満足し得るとはいえず、所望の真空度に到達する時間のさらなる短縮が望まれていた。
【特許文献1】
特開2000−199050号公報
【特許文献2】
特開2002−294432号公報
【特許文献3】
特開2001−3157号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、気相蒸着法により薄膜層を形成させるに際し、系内を短時間で目的の真空度に到達させて生産性の向上を図るための蒸着用フィルムの保存方法、及びこの方法により保存された蒸着用フィルム上に気相蒸着法により薄膜層を形成してなる積層体を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、フィルムを製造後、特定の環境条件下である期間以上保存することにより、吸湿が抑制され、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)気相蒸着に用いられるプラスチックフィルムを保存する方法であって、保存開始時の揮発成分含有量が0.1重量%以下の前記プラスチックフィルムを、湿度50%RH以下の条件下に保存することを特徴とする蒸着用フィルムの保存方法、
(2)温度40℃、湿度90%RHの外部環境条件における透湿度が15g/m2・24h以下の密閉容器中で保存する第1項記載の蒸着用フィルムの保存方法、
(3)蒸着用フィルムが光学用途に用いられる第1項又は第2項記載の蒸着用フィルムの保存方法、
(4)プラスチックフィルムが、熱可塑性樹脂フィルムである第1項、第2項又は第3項記載の蒸着用フィルムの保存方法、
(5)熱可塑性樹脂フィルムが、脂環式構造を有する重合体のフィルムである第4項記載の蒸着用フィルムの保存方法、
(6)気相蒸着が、真空蒸着、スパッタリング及びイオンプレーティングの中から選ばれる物理的気相蒸着である第1項ないし第5項のいずれかに記載の蒸着用フィルムの保存方法、
(7)第1項ないし第6項のいずれかに記載の方法で保存された蒸着用フィルムの少なくとも片面に、気相蒸着により形成された薄膜層を有することを特徴とする積層体、
(8)薄膜層が反射防止層である第7項記載の積層体、
(9)光学部材の反射防止性保護フィルム用である第8項記載の積層体、及び
(10)光学部材が液晶表示装置における偏光板である第9項記載の積層体、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の蒸着用フィルムの保存方法において用いられるプラスチックフィルムとしては、気相蒸着法が適用されうるものであればよく、特に制限されず、熱可塑性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂フィルムのいずれも用いることができるが、これらの中で熱可塑性樹脂フィルムの方が、用途面などにおいて、好ましく用いられる。
この熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1などのポリオレフィン系樹脂;脂環式構造を有する重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリエチレンサルファイド系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;スチレン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;などからなるフィルム又はこれらの積層フィルムが用いられる。これらの中で、各種ディスプレイやタッチパネル用などの反射防止フィルム、表面保護用フィルムなどの光学用フィルムの基材としては、特に低飽和吸水率、透明性、耐熱性及び低複屈折値などの点から、脂環式構造を有する重合体のフィルムが好適である。
ここで、脂環式構造を有する重合体としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
ノルボルネン系重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他モノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他モノマーとの付加型共重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び透明性の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物が最も好ましい。
上記脂環式構造を有する重合体は、例えば特開2002−321302号公報などに開示されている公知の重合体である。
【0006】
一方、熱硬化性樹脂フィルムとしては、例えばポリイミドフィルムや熱硬化性ポリウレタンフィルムなどを用いることができる。
これらのプラスチックフィルムは、透明、半透明のいずれであってもよく、また、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば偏光板などの保護用として用いる場合には、無色透明のフィルムが好適である。
本発明の蒸着用フィルムの保存方法において用いられるプラスチックフィルムには、他の配合剤を含んでいてもよい。配合剤としては、格別限定されず、例えば、無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
また、このプラスチックフィルムは、その表面に設けられる薄膜層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法はプラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
本発明においては、これらのプラスチックフィルムは、真空を必要とする気相蒸着法に適用される。この気相蒸着法としては、減圧CVD法やPVD法などがあるが、これらの中で真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法を好ましく採用することができる。
ここで、真空蒸着においては、10−2〜10−5Pa程度の真空中で抵抗加熱、電子ビーム加熱、レーザ光加熱、アーク放電などの方法で蒸着物質を加熱蒸発させ、プラスチックフィルム表面に薄膜層を形成させる。また、スパッタリングにおいては、アルゴンなどの不活性ガスが存在する1〜10−1Pa程度の真空中で、グロー放電などにより加速されたAr+などの陽イオンをターゲット(蒸着物質)に撃突させて蒸着物質をスパッタ蒸発させ、プラスチックフィルム表面に薄膜層を形成させる。蒸発の方法としては、DC(直流)スパッタリング、RF(高周波)スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、バイアススパッタリングなどがある。イオンプレーティングは、上記の真空蒸着とスパッタリングとを組み合わせたような蒸着法である。この方法では、1〜10−1Pa程度の真空中において、加熱により放出された蒸発原子を、電界中でイオン化と加速を行い、高エネルギー状態でプラスチックフィルム表面に付着させ、薄膜層を形成させる。
【0007】
本発明の方法は、これらのPVD法の中で、特に高真空を必要とする真空蒸着に適用するのが好ましい。
本発明の方法は、気相蒸着に用いられるプラスチックフィルムを保存する方法であって、保存開始時の揮発成分含有量が0.1重量%以下の前記プラスチックフィルムを、湿度50%RH以下の条件下に保存する。保存すべきプラスチックフィルムの保存開始時の揮発成分含有量が0.1重量%を超えるものでは、保存後の揮発成分含有量が十分に低くならず、本発明の目的が達せられない。好ましい保存開始時の揮発成分含有量は0.05重量%以下であり、特に0.02重量%以下が好適である。なお、揮発成分は、分子量200以下の比較的低沸点の物質であり、例えば水や有機溶媒、残留単量体などが挙げられる。したがって、プラスチックフィルムがこのような揮発成分含有量であるためには、製膜後ロールに巻き取られたプラスチックフィルム、あるいは製膜後、前記表面処理が施され、ロールに巻き取られたプラスチックフィルムを、できるだけ早く湿度50%RH条件下に保存することが好ましい。
保存中の湿度が50%RHを超えると保存後のプラスチックフィルムの揮発成分含有量が高くなって、本発明の目的が達せられない。好ましい湿度は40%RH以下、特に30%RH以下が好適である。
本発明において、プラスチックフィルムの密閉容器での保存期間は短いほどよいが、保存期間が5日間以上であると本発明の主旨が十分に発揮される。また、長期間の保存においても十分に効果を発揮する。ただしあまり長期間になると容器自体の劣化による透湿度の低下の可能性も生じるため、3年以内とすることが好ましく、さらに好ましくは1年以内である。
本発明においては、保存期間中の湿度が前記範囲にあるためには、温度40℃、湿度90%RHの外部環境条件における透湿度が15g/m2・24h以下の密閉容器中で保存することが好ましい。この透湿度が15g/m2・24hを超える密閉容器では、保存期間中の外部環境が高湿度になった場合に、本発明の目的が達せられない場合がある。より好ましい透湿度は5g/m2・24h以下であり、特に1g/m2・24h以下が好ましい。
なお、上記透湿度は、カップ法(JIS Z 0208)に準拠して40℃、90%RH条件下で測定した値である。
他にも、除湿した空気や、予め乾燥したガス中に保存するのが好ましい。また、吸湿剤を内封した密閉容器中で保存することが好ましい。そのための吸湿剤は特に限定されず、シリカゲル、活性炭、モレキュラーシーブなどの無機質系、酸化鉄などの金属酸化物系吸湿剤、塩化カルシウムなどのイオン結合化合物、濃硫酸、金属ナトリウム等が例示されるが、腐食性の少ないシリカゲル、活性炭、モレキュラーシーブなどの無機質系が好ましい。密閉容器内の圧力は特に限定されないが、常圧又は減圧であることが好ましい。かかる雰囲気を形成するガスは特に限定されず、空気、窒素ガス、アルゴンガスが例示される。さらに、保存温度は特に限定されないが、常温若しくは常温以下であることが好ましい。
【0008】
前記密閉容器の材料としては、前記透湿度を満たすものであればよく、特に制限されず、プラスチック基材、金属蒸着プラスチック基材、金属箔、ラミネート紙など、いずれも用いることができる。ここで、プラスチック基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂;ポリイミド;などを例示することができる。金属蒸着プラスチック基材としては、例えば一般のプラスチック基材にアルミニウムなどを蒸着したものを用いることができ、金属箔としてはアルミニウム箔などを用いることができる。一方、ラミネート紙としては、例えば上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙などの紙基材にポリエチレンなどの低透湿性熱可塑性樹脂をラミネートとしたものなどを用いることができる。
この密閉容器の形状としては特に制限はなく、袋状、箱状など、いかなる形状であってもよい。
このようにして保存した後の蒸着用フィルムの揮発成分含有量は、プラスチックフィルムの吸湿性に応じて異なるが、通常0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.02重量%以下である。
本発明の方法により保存された蒸着用フィルムは、揮発成分含有量が上記のように低いので、気相蒸着法により薄膜層を形成させるに際し、系内を目的の真空度に到達させる時間が短くてすみ、生産性の向上を図ることができる。
本発明の蒸着用フィルムは、特に光学用途に好適に用いられる。光学用途に用いられる蒸着用フィルムとしては、例えば液晶表示装置、有機EL素子、プラズマディスプレイ、プロジェクタなどの光学装置の部材などとして使用されるフィルム、具体的には位相差フィルム、偏光板保護フィルム、液晶セル基板用フィルム、液晶表示素子基板、タッチパネル基板など、あるいはそれらの原反フィルムなどを挙げることができる。これらのフィルムは、後工程として反射防止膜、防眩膜、ハードコート層、防汚層、透明導電膜が気相蒸着法などにより積層されて用いられる。
次に、本発明の積層体は、前述の方法で保存された蒸着用フィルムの少なくとも片面に、気相蒸着法により形成された薄膜層を有するものである。
この積層体における薄膜層の形成に用いられる気相蒸着法としては、前述のように、減圧CVD法や、真空蒸着、スパッタリング及びイオンプレーティングなどのPVD法等があるが、これらの中で、PVD法が好ましく、特に本発明の保存方法の効果を有効に発揮させることができる、高真空度が必要な真空蒸着が好ましい。
気相蒸着法による薄膜層の形成材料としては特に制限はなく、本発明の積層体の用途に応じて適宜選択することができる。該積層体の用途としては、例えば反射防止層を有する反射防止フィルム、光触媒活性材料層を有する光触媒フィルム、導電性材料層を有する導電性フィルム、赤外線遮断材料層を有する赤外線遮断フィルム、その他誘電体材料層を有する絶縁性フィルムなどがあるが、これらの中で、薄膜層が反射防止層である反射防止フィルム用が好ましい。
次に、前記用途に用いられる各積層体について説明する。
【0009】
<反射防止フィルム>
反射防止フィルムは、一般に液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、EL素子、陰極管表示装置などの画像表示装置やタッチパネル等の光学装置において、外光の反射によるコントラストの低下や像の映り込みを防止するために用いられている。これらの反射防止フィルムは、通常各光学装置における視認側最上層に形成されている光学部材の反射防止性保護フィルムとして設けられることが多い。
本発明の積層体は、前記光学部材として、特に液晶表示装置における偏光板に適用することが好ましい。
液晶表示装置における偏光板は、液晶セルの出射側に設けられるが、通常入射側にも設けられている。この偏光板は、一般にポリビニルアルコールからなる基材フィルムにヨウ素や有機染料などの二色性材料を染色又は吸着させたのち、一方向に延伸配向させて偏光フィルムを作製し、この両面にトリアセチルセルロール(TAC)などの保護フィルムを貼り合わせることにより、製造されている。本発明の積層体を前記偏光板の反射防止性保護フィルムとして用いる場合には、片面に気相蒸着法により設けられた反射防止層を有する反射防止フィルムを、該反射防止層が表面側になるように、偏光板の出射側保護フィルム上に貼り合わせてもよいし、あるいは、偏光板の出射側保護フィルムの代わりに、反射防止層が設けられた反射防止フィルムを、該反射防止層が表面側になるように用いてもよい。
一方、タッチパネルは、現在約9割が抵抗膜方式を採用している。該抵抗膜方式のタッチパネルは、一般に透明プラスチック基材の片面にITO膜などの透明導電性薄膜を積層した入力側プラスチック基材と、ガラスなどの透明基材の片面にITO膜などの透明導電性薄膜を積層した受圧側透明基材とを、絶縁スペーサを介して、各透明導電性薄膜が向き合うように対向配置させた構造を有している。
そして、入力は、ペンや指で入力側プラスチック基材の入力面(透明導電性薄膜側とは反対側の面をいう。)を押圧し、入力側プラスチック基材の透明導電性薄膜と、受圧側透明基材の透明導電性薄膜とを接触させて行う。
【0010】
本発明の積層体を前記タッチパネルの反射防止性保護フィルムとして用いる場合には、片面に気相蒸着法により設けられた反射防止層を有する反射防止フィルムを、該反射防止層が表面側になるように、タッチパネルの視認側最表面に設けてもよい。あるいは、該反射防止フィルムの反射防止層とは反対側の面に、気相蒸着法によりITO膜などの透明導電性薄膜を設けたものを、タッチパネルの入力側プラスチック基材として用いてもよい。
本発明の積層体を、このような光学用途に用いる場合には、基材のプラスチックフィルムとしては、前述のように低飽和吸水率、透明性、耐熱性及び低複屈折値などの特性を有する脂環式構造を有する重合体フィルムを好ましく用いることができる。
前記反射防止フィルムを気相蒸着法により作製する場合には、通常基材フィルムよりも低屈折率の物質、例えばMgF2、SiO2などを蒸着し、単層反射防止層を形成する方法、あるいは高屈折率物質、例えばITO、酸化タンタル、酸化チタン、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、酸化錫、酸化アルミニウムなどと、低屈折率物質、例えばMgF2、SiO2などを交互に蒸着し、多層反射防止層を形成する方法などが用いられる。反射防止層の厚さとしては特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常0.01〜1.0μm、好ましくは0.02〜0.5μmの範囲で選定される。
<光触媒フィルム>
光触媒活性材料(以下、単に光触媒と称すことがある。)は、そのバンドギャップ以上のエネルギーの光を照射すると、励起されて伝導帯に電子が生じ、かつ価電子帯に正孔が生じる。そして、生成した電子は表面酸素を還元してスーパーオキサイドアニオン(・O2−)を生成させると共に、正孔は表面水酸基を酸化して水酸ラジカル(・OH)を生成し、これらの反応性活性酸素種が強い酸化分解機能を発揮し、光触媒の裏面に付着している有機物質を高効率で分解することが知られている。
【0011】
また、光触媒が光励起されると、光触媒表面は、水との接触角が10度以下となる超親水化を発現することも知られている。
このような光触媒の機能を応用して、例えば脱臭、防汚、抗菌、殺菌、廃水中や廃ガス中の各種有害物質の分解・除去用として、あるいは高速道路の防音壁やトンネル内照明、街路灯などに対する自動車の排ガスに含まれる煤などによる汚染防止用として、さらには自動車のボディーコートやサイドミラー用フィルム、防曇性やセルフクリーニング性窓ガラス用などに、光触媒が使用されている。
本発明における光触媒フィルムにおいては、本発明の方法で保存されたプラスチックフィルムの少なくとも片面に、前記の機能を有する光触媒活性材料からなる光触媒層を気相蒸着法により形成させるが、該光触媒層をプラスチックフィルム上に直接形成させると、その酸化力によって、基材のプラスチックフィルムの劣化が著しいので、通常シリカ膜などの下地層を気相蒸着法により設け、その上に光触媒層を設けることが行われる。光触媒活性材料としては特に制限はなく、従来公知のもの、例えば二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTi4O9)、チタン酸ナトリウム(Na2Ti6O13)、二酸化ジルコニウム、α−Fe2O3、酸化タングステン、硫化カドミウム、硫化亜鉛などを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、二酸化チタン、特にアナターゼ型二酸化チタンは実用的な光触媒活性材料として有用である。
この光触媒フィルムにおける下地層の厚さは特に制限はないが、通常0.1〜10μm程度である。また、光触媒層の厚さは、通常10nmから5μm、好ましくは30nm〜3μm、より好ましくは40nm〜1μmの範囲で選定される。この厚さが10nm未満では光触媒機能が十分に発揮されにくいし、5μmを超えると厚さの割には光触媒機能の向上効果が認められず、むしろクラックなどが生じるおそれがある。
【0012】
<導電性フィルム>
表面に導電性材料層を有するプラスチックフィルムは、EL素子、液晶表示素子、タッチパネル、太陽電池などに用いられ、さらに電磁波遮蔽フィルムや帯電防止性フィルムなどとして用いられている。このような用途に用いられる導電性材料としては、例えば酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化カドミウム、ITOなどの金属酸化物や、金、白金、銀、ニッケル、アルミニウム、銅のような金属などが用いられる。
本発明における導電性フィルムにおいては、本発明の方法で保存されたプラスチックフィルムの少なくとも片面に、前記導電性材料層を気相蒸着法により形成させる。この導電性材料層の厚さは、通常5〜200nm程度である。
<赤外線遮断フィルム>
建物の窓、乗り物の窓、あるいは冷蔵、冷凍ショーケースの窓などにおいて、暑さの軽減、省エネルギー化を図るために、これらの窓に熱線(赤外線)を反射又は吸収する性能を付与する方法が行われている。例えば、透明プラスチックフィルムの表面に、アルミニウム、銀、金等の金属薄膜を気相蒸着法により設けた熱線反射フィルム、あるいは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、ATO、ITOなどの金属酸化物からなる赤外線吸収剤薄膜を設けた赤外線吸収フィルムなどの赤外線遮断フィルムが実用化されている。
本発明における赤外線遮断フィルムにおいては、本発明の方法で保存されたプラスチックフィルムの少なくとも片面に、前記金属からなる熱線反射薄膜や前記金属酸化物からなる赤外線吸収薄膜などの赤外線遮断剤層を、気相蒸着法により形成させる。この赤外線遮断剤層の厚さは、通常5〜500nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選定される。
<その他蒸着フィルム>
前記の各積層体以外に、例えばプラスチックフィルムの表面にSiN、SiO、SiO2、Ta2O5などの誘電体材料からなる薄膜層を形成した絶縁性フィルム、メタルを蒸着させて磁性層を形成した磁性フィルムなどがある。
本発明におけるこれらの絶縁性フィルムや磁性フィルムにおいては、本発明の方法で保存されたプラスチックフィルムの少なくとも片面に、前記誘電体材料からなる薄膜層や磁性層を気相蒸着法により形成させる。
【0013】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各物性は、以下に示す方法に従って測定した。
(1)ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準拠し、示差走査熱量分析計(DSC)にて測定した。
(2)フィルムの膜厚
オフライン厚み計測装置[山文電気社製、「TOF−4R」]を用いて測定した。
(3)揮発成分含有量
フィルムの揮発成分含有量は、ガスクロマトグラフィーにより、分子量200以下の成分の合計として定量した。
(4)飽和吸水率
フィルムの飽和吸水率は、JIS K 7209に準じて測定した。
(5)相対湿度
日置電機(株)製、「温湿度ロガー3631」を用いて測定した。
【0014】
製造例1
ノルボルネン系重合体[日本ゼオン社製「ZEONOR1420」、Tg135℃、飽和吸水率0.01重量%未満]のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥したのち、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、溶融樹脂温度240℃、Tダイの幅500mmの成形条件で、厚さ100μm、長さ300mのフィルムを押出成形した。得られた長尺のフィルムは、ロール状に巻き取った。
製造例2
ポリカーボネート樹脂[帝人化成社製「AD5503」、Tg160℃、飽和吸水率0.16重量%]のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥したのち、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、溶融樹脂温度270℃、Tダイの幅500mmの成形条件で、厚さ100μm、長さ300mのフィルムを押出成形した。得られた長尺のフィルムは、ロール状に巻き取った。
実施例1
製造例1で製造したノルボルネン系重合体フィルムロールを、幅3.3m、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム[透湿度7g/m2・24h(40℃、90%RH)]に相対湿度10%の空気を内包して密閉し、温度を25℃、相対湿度を65%に一定管理された部屋に30日間保存した。
なお、保存開始時のノルボルネン系フィルムは、揮発成分含有量が0.002重量%であり、保存後の該フィルムの揮発成分含有量は0.004重量%であった。また、保存開始時及び保存後の密閉容器内の相対湿度は、それぞれ10%及び25%であった。
【0015】
比較例1
製造例1で製造したノルボルネン系重合体フィルムロールを、幅3.3m、厚さ20μmの二軸延伸ナイロンフィルム[透湿度260g/m2・24h(40℃、90%RH)]に相対湿度10%の空気を内包して密閉し、温度を25℃、相対湿度を65%に一定管理された部屋に30日間保存した。
なお、保存開始時のノルボルネン系フィルムは、揮発成分含有量が0.002重量%であり、保存後の該フィルムの揮発成分含有量は0.01重量%であった。また、保存開始時及び保存後の密閉容器内の相対湿度は、それぞれ10%及び61%であった。
実施例2
製造例2で製造したポリカーボネートフィルムロールを、幅3.3m、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム[透湿度7g/m2・24h(40℃、90%RH)]に相対湿度10%の空気を内包して密閉し、温度を25℃、相対湿度を65%に一定管理された部屋に30日間保存した。
なお、保存開始時のポリカーボネートフィルムは、揮発成分含有量が0.003重量%であり、保存後の該フィルムの揮発成分含有量は0.01重量%であった。また、保存開始時及び保存後の密閉容器内の相対湿度は、それぞれ10%及び22%であった。
実施例3
製造例2で製造したポリカーボネートフィルムロールを、幅3.3m、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム[透湿度7g/m2・24h(40℃、90%RH)]に相対湿度10%の空気と水蒸気透過性フィルムで包んだ乾燥シリカゲル粉末を内包して密閉し、温度を25℃、相対湿度を65%に一定管理された部屋に30日間保存した。
なお、保存開始時のポリカーボネートフィルムは、揮発成分含有量が0.003重量%であり、保存後の該フィルムの揮発成分含有量は0.004重量%であった。また、保存開始時及び保存後の密閉容器内の相対湿度は、それぞれ10%及び12%であった。
【0016】
比較例2
製造例2で製造したポリカーボネートフィルムロールを、幅3.3m、厚さ20μmの二軸延伸ナイロンフィルム[透湿度260g/m2・24h(40℃、90%RH)]に相対湿度10%の空気を内包して密閉し、温度を25℃、相対湿度を65%に一定管理された部屋に30日間保存した。
なお、保存開始時のポリカーボネートフィルムは、揮発成分含有量が0.003重量%であり、保存後の該フィルムの揮発成分含有量は0.15重量%であった。また、保存開始時及び保存後の密閉容器内の相対湿度は、それぞれ10%及び60%であった。
試験例
実施例1〜3及び比較例1、2で30日間保存された各フィルムの表面に、ロール・ツー・ロール方式の直流(DC)マグネトロンスパッタリング装置によって、反射防止膜を形成した。
図1は、本試験例において、DCマグネトロンスパッタリング装置により、保存フィルム表面に反射防止膜を形成するための説明図である。
まず、スパッタリング装置10内の送り出しロール1に上記フィルムを装着し、フィルム2をガイドロール3a、ガイドロール3b、冷却ドラム4、ガイドロール3c及びガイドロール3dを介して巻取りロール5によって巻き取り速度4m/minで巻き取ると共に減圧を開始する。ロール1のフィルム全てが巻取りロール5に巻き取られるのを巻取り回数1回とし、この巻取り時間を75分間に調整する。次いで、巻き取られたフィルムは、巻き変えを行い上記とは逆方向に巻き取られ、このフィルム全てが巻き取られるのを巻取り回数合計2回とし、この巻取り時間も75分間に調整する。この操作を繰り返しながら、到達真空度が5.0×10−4Paになるまでの巻取り合計回数(トータル経過時間)を求めた。結果を第1表に示す。
【0017】
到達真空度が5.0×10−4Paになった時点で、次の工程に移った。
次いで、インラインで、放電プラズマ発生装置7を用いて、下記の条件でプラズマ処理を行い、フィルム表面にプラズマ処理面を形成した。
<プラズマ処理条件>
グロー放電ガス:酸素ガス
電源:直流電源
放電電力:60W・分/m2
グロー放電圧力:2.0Pa
次に、インラインでスパッタリングにより、フィルムのプラズマ処理面に、まず酸化アルミニウム層の蒸着を行い、屈折率1.59を有する酸化アルミニウム層を、光学膜厚0.25λ(λ=550nm)で形成させたのち、この酸化アルミニウム層の上にフッ化マグネシウム層の蒸着を、光学膜厚0.23λ(λ=550nm)で形成させ、多層反射防止膜を設けた。この際のスパッタリング条件は、次のとおりである。なお符号6はターゲットを示す。
<スパッタリング条件>
真空到達度:5.0×10−4Pa
作業真空度:1.3×10−1Pa
巻き取り速度:4m/min
放電ガス:アルゴン
電力密度:2w/cm2
【0018】
【表1】
【0019】
[注]
実施例に使用した容器は二軸延伸ポリプロピレンフィルム[透湿度7g/m2・24h(40℃、90%RH)]であり、比較例で使用した容器は二軸延伸ナイロンフィルム[透湿度260g/m2・24h(40℃、90%RH)]である。
第1表の結果から以下のことが分かる。ノルボルネン系重合体からなるフィルムを、透湿度が7g/m2・24h(40℃、90%RH)である二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる容器に保存した実施例1は、保存前後におけるフィルム中の揮発成分の変化も少ない。加えてこのフィルムに蒸着を行うための所定の真空度に達するまでの時間は1回の巻き取り時間(75分)ですむ。
一方、ノルボルネン系重合体からなるフィルムを、透湿度が260g/m2・24h(40℃、90%RH)である二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる容器に保存した比較例1は、実施例1と比べると、保存前後の容器内の湿度変化が大きく、それに伴って保存前後におけるフィルム中の揮発成分の変化も大きくなる。加えて蒸着を行うための所定の真空度に達するまで時間は長くなる。
飽和吸水率の高いポリカーボネートからなるフィルムを、透湿度が7g/m2・24h(40℃、90%RH)である二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる容器に保存した実施例2は、実施例1と比べると、保存前後におけるフィルム中の揮発成分の変化が若干大きいが、このフィルムに蒸着を行うための所定の真空度に達するまでの時間は2回の巻き取り時間(150分)ですむ。
【0020】
飽和吸水率の高いポリカーボネートからなるフィルムを、水蒸気透過性フィルムで包んだ乾燥シリカゲルを内包させた透湿度が7g/m2・24h(40℃、90%RH)である二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる容器に保存した実施例3は、実施例2と比べると、保存前後におけるフィルム中の揮発成分の変化も少なく、蒸着を行うための所定の真空度に達するまで時間は1回の巻き取り時間(75分)ですむ。
一方、飽和吸水率の高いポリカーボネートからなるフィルムを、透湿度が260g/m2・24h(40℃、90%RH)である二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる容器に保存した比較例2は、実施例2及び3と比べると、保存前後の容器内の湿度変化が大きく、それに伴って保存前後におけるフィルム中の揮発成分の変化も大きい。加えて蒸着を行うための所定の真空度に達するまで時間は長くなる。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、プラスチックフィルム上に気相蒸着法により薄膜層を形成させるに際し、系内を短時間で目的の真空度に到達させて生産性の向上を図るための蒸着用フィルムの保存方法、及びこの方法により保存された蒸着用フィルム上に気相蒸着法により薄膜層を形成してなる、例えば光学用部材の反射防止性保護フィルムなどとして好適な積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、試験例において、スパッタリング装置により保存フィルム表面に反射防止膜を形成するための説明図である。
【符号の説明】
1 送り出しロール
2 フィルム
3a、3b、3c、3d ガイドロール
4 冷却ドラム
5 巻取りロール
6 ターゲット
7 放電プラズマ発生装置
10 スパッタリング装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸着用フィルムの保存方法及び積層体に関する。さらに詳しくは、本発明は、プラスチックフィルム上に気相蒸着法により薄膜層を形成させるに際し、系内を短時間で目的の真空度に到達させて生産性の向上を図るための蒸着用フィルム、特に光学用途に用いられる蒸着用フィルムの保存方法、及びこの方法により保存された蒸着用フィルム上に気相蒸着法により薄膜層を形成してなる、例えば光学用部材の反射防止性保護フィルムなどとして好適な積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチックフィルム上に金属や金属化合物などからなる薄膜層が設けられた積層体は、機能性フィルムとして、様々な分野で広く用いられている。前記薄膜層を設ける方法は、乾式法及び湿式法(塗布法)に大別することができ、基材フィルムや薄膜層の種類、用途、経済性などに応じて使い分けられている。
乾式法としては、化学的気相蒸着(CVD)法や物理的気相蒸着(PVD)法などの気相蒸着法が知られており、そして、上記PVD法には、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどがある。
気相蒸着法により薄膜層が設けられた機能性フィルムとしては、例えば反射防止層を有する光学部材用保護フィルム、光触媒活性材料層を有する光触媒フィルム、導電性材料層を有する導電性フィルム、誘電体材料層を有する絶縁性フィルム、赤外線遮断剤層を有する赤外線遮断フィルムなどが知られている。
ところで、液晶表示装置は、入射した直線偏光を液晶層のもつ電気光学特性で変調し、出射側の偏光板で透過率の強弱や着色の信号として可視化する装置であって、偏光をその表示の原理に用いているため、偏光板は必須の部材である。この偏光板は自然光を直線偏光に変える素子であり、現在、液晶表示装置用の偏光板の多くは、ポリビニルアルコールフィルムからなる基材フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性材料を、染色・吸着させ、延伸配向させてなる偏光フィルムの両面あるいは片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせたものが用いられている。そして、この保護膜としては、通常トリアセチルセルロースフィルムが使用される。この液晶表示装置においては、前記偏光板は、液晶層の出射側以外に、通常入射側にも設けられている。
このような液晶表示装置をはじめ、PDP(プラズマディスプレイパネル)、CRT(ブラウン管)、EL(エレクトロルミネッセンス素子)などの各種ディスプレイにおいては、画面に外部から光が入射し、この光が反射して表示画像を見ずらくすることがあり、特に近年、フラットパネルディスプレイの大型化に伴い、上記問題を解決することが、重要な課題となってきている。
このような問題を解決するために、これまで種々のディスプレイに対して、様々な反射防止処置や防眩処置がとられている。その一つとして反射防止フィルムを各種のディスプレイに使用することが行われている。この反射防止フィルムには、反射防止性能と共に、保護フィルムとしての機能も要求される。
また、近年、市場が増大している携帯用の情報端末への入力装置として、タッチパネルが利用されている。このタッチパネルは、ディスプレイ画面を直接指、ペンなどで触れることによってデータを入力する装置である。このようなタッチパネルにおいては、視認側最表面に、外光の映り込みによる表示光のコントラストの低下を抑制するために、反射防止層を設けることが要求される。
反射防止フィルムは、現在、乾式法又は湿式法により基材フィルム表面に反射防止層を形成することにより作製されている。これらの方法の中で、乾式法においては、通常基材フィルム上に真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法を用いて、低屈折率の物質(MgF2、SiO2)を薄膜化する方法や、屈折率の高い物質[ITO(錫ドープ酸化インジウム)、TiO2、Al2O3など]と屈折率の低い物質(MgF2、SiO2など)を交互に積層する方法などにより、反射防止フィルムを作製することが行われている。
ところが、前記真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法や、減圧CVD法などの気相蒸着法により、基材フィルム上に薄膜層を形成する場合、該気相蒸着法においては、真空下で製膜が行われるため、一般に以下に示すような問題が生じていた。すなわち、基材フィルムは、通常ロール状に巻きとられ、そのまま保管や輸送がなされている。その基材フィルムに気相蒸着法で薄膜層を形成するに際し、系内を目的の真空度に到達させるのに、長時間を要し、生産性が低下するのを免れないという問題があった。特に高真空度が要求される真空蒸着(蒸着時の真空度;真空蒸着:約10−2〜10−5Pa、スパッタリング:約1〜10−1Pa、イオンプレーティング:約1〜10−1Pa)を採用する場合や、基材フィルムとしてポリカーボネートフィルムのような吸湿性の高いフィルムを用いる場合には、上記問題が顕著であった。
このような問題に対処するために、例えば真空蒸着において、蒸着装置を改良する技術(例えば特許文献1参照)、あるいは蒸着材料を改良する技術(例えば特許文献2、特許文献3参照)が開示されている。しかしながら、これらの技術は、基材フィルムの改良技術ではなく、まだ十分に満足し得るとはいえず、所望の真空度に到達する時間のさらなる短縮が望まれていた。
【特許文献1】
特開2000−199050号公報
【特許文献2】
特開2002−294432号公報
【特許文献3】
特開2001−3157号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、気相蒸着法により薄膜層を形成させるに際し、系内を短時間で目的の真空度に到達させて生産性の向上を図るための蒸着用フィルムの保存方法、及びこの方法により保存された蒸着用フィルム上に気相蒸着法により薄膜層を形成してなる積層体を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、フィルムを製造後、特定の環境条件下である期間以上保存することにより、吸湿が抑制され、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)気相蒸着に用いられるプラスチックフィルムを保存する方法であって、保存開始時の揮発成分含有量が0.1重量%以下の前記プラスチックフィルムを、湿度50%RH以下の条件下に保存することを特徴とする蒸着用フィルムの保存方法、
(2)温度40℃、湿度90%RHの外部環境条件における透湿度が15g/m2・24h以下の密閉容器中で保存する第1項記載の蒸着用フィルムの保存方法、
(3)蒸着用フィルムが光学用途に用いられる第1項又は第2項記載の蒸着用フィルムの保存方法、
(4)プラスチックフィルムが、熱可塑性樹脂フィルムである第1項、第2項又は第3項記載の蒸着用フィルムの保存方法、
(5)熱可塑性樹脂フィルムが、脂環式構造を有する重合体のフィルムである第4項記載の蒸着用フィルムの保存方法、
(6)気相蒸着が、真空蒸着、スパッタリング及びイオンプレーティングの中から選ばれる物理的気相蒸着である第1項ないし第5項のいずれかに記載の蒸着用フィルムの保存方法、
(7)第1項ないし第6項のいずれかに記載の方法で保存された蒸着用フィルムの少なくとも片面に、気相蒸着により形成された薄膜層を有することを特徴とする積層体、
(8)薄膜層が反射防止層である第7項記載の積層体、
(9)光学部材の反射防止性保護フィルム用である第8項記載の積層体、及び
(10)光学部材が液晶表示装置における偏光板である第9項記載の積層体、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の蒸着用フィルムの保存方法において用いられるプラスチックフィルムとしては、気相蒸着法が適用されうるものであればよく、特に制限されず、熱可塑性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂フィルムのいずれも用いることができるが、これらの中で熱可塑性樹脂フィルムの方が、用途面などにおいて、好ましく用いられる。
この熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1などのポリオレフィン系樹脂;脂環式構造を有する重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリエチレンサルファイド系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;スチレン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;などからなるフィルム又はこれらの積層フィルムが用いられる。これらの中で、各種ディスプレイやタッチパネル用などの反射防止フィルム、表面保護用フィルムなどの光学用フィルムの基材としては、特に低飽和吸水率、透明性、耐熱性及び低複屈折値などの点から、脂環式構造を有する重合体のフィルムが好適である。
ここで、脂環式構造を有する重合体としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
ノルボルネン系重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他モノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他モノマーとの付加型共重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び透明性の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物が最も好ましい。
上記脂環式構造を有する重合体は、例えば特開2002−321302号公報などに開示されている公知の重合体である。
【0006】
一方、熱硬化性樹脂フィルムとしては、例えばポリイミドフィルムや熱硬化性ポリウレタンフィルムなどを用いることができる。
これらのプラスチックフィルムは、透明、半透明のいずれであってもよく、また、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば偏光板などの保護用として用いる場合には、無色透明のフィルムが好適である。
本発明の蒸着用フィルムの保存方法において用いられるプラスチックフィルムには、他の配合剤を含んでいてもよい。配合剤としては、格別限定されず、例えば、無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
また、このプラスチックフィルムは、その表面に設けられる薄膜層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法はプラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
本発明においては、これらのプラスチックフィルムは、真空を必要とする気相蒸着法に適用される。この気相蒸着法としては、減圧CVD法やPVD法などがあるが、これらの中で真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法を好ましく採用することができる。
ここで、真空蒸着においては、10−2〜10−5Pa程度の真空中で抵抗加熱、電子ビーム加熱、レーザ光加熱、アーク放電などの方法で蒸着物質を加熱蒸発させ、プラスチックフィルム表面に薄膜層を形成させる。また、スパッタリングにおいては、アルゴンなどの不活性ガスが存在する1〜10−1Pa程度の真空中で、グロー放電などにより加速されたAr+などの陽イオンをターゲット(蒸着物質)に撃突させて蒸着物質をスパッタ蒸発させ、プラスチックフィルム表面に薄膜層を形成させる。蒸発の方法としては、DC(直流)スパッタリング、RF(高周波)スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、バイアススパッタリングなどがある。イオンプレーティングは、上記の真空蒸着とスパッタリングとを組み合わせたような蒸着法である。この方法では、1〜10−1Pa程度の真空中において、加熱により放出された蒸発原子を、電界中でイオン化と加速を行い、高エネルギー状態でプラスチックフィルム表面に付着させ、薄膜層を形成させる。
【0007】
本発明の方法は、これらのPVD法の中で、特に高真空を必要とする真空蒸着に適用するのが好ましい。
本発明の方法は、気相蒸着に用いられるプラスチックフィルムを保存する方法であって、保存開始時の揮発成分含有量が0.1重量%以下の前記プラスチックフィルムを、湿度50%RH以下の条件下に保存する。保存すべきプラスチックフィルムの保存開始時の揮発成分含有量が0.1重量%を超えるものでは、保存後の揮発成分含有量が十分に低くならず、本発明の目的が達せられない。好ましい保存開始時の揮発成分含有量は0.05重量%以下であり、特に0.02重量%以下が好適である。なお、揮発成分は、分子量200以下の比較的低沸点の物質であり、例えば水や有機溶媒、残留単量体などが挙げられる。したがって、プラスチックフィルムがこのような揮発成分含有量であるためには、製膜後ロールに巻き取られたプラスチックフィルム、あるいは製膜後、前記表面処理が施され、ロールに巻き取られたプラスチックフィルムを、できるだけ早く湿度50%RH条件下に保存することが好ましい。
保存中の湿度が50%RHを超えると保存後のプラスチックフィルムの揮発成分含有量が高くなって、本発明の目的が達せられない。好ましい湿度は40%RH以下、特に30%RH以下が好適である。
本発明において、プラスチックフィルムの密閉容器での保存期間は短いほどよいが、保存期間が5日間以上であると本発明の主旨が十分に発揮される。また、長期間の保存においても十分に効果を発揮する。ただしあまり長期間になると容器自体の劣化による透湿度の低下の可能性も生じるため、3年以内とすることが好ましく、さらに好ましくは1年以内である。
本発明においては、保存期間中の湿度が前記範囲にあるためには、温度40℃、湿度90%RHの外部環境条件における透湿度が15g/m2・24h以下の密閉容器中で保存することが好ましい。この透湿度が15g/m2・24hを超える密閉容器では、保存期間中の外部環境が高湿度になった場合に、本発明の目的が達せられない場合がある。より好ましい透湿度は5g/m2・24h以下であり、特に1g/m2・24h以下が好ましい。
なお、上記透湿度は、カップ法(JIS Z 0208)に準拠して40℃、90%RH条件下で測定した値である。
他にも、除湿した空気や、予め乾燥したガス中に保存するのが好ましい。また、吸湿剤を内封した密閉容器中で保存することが好ましい。そのための吸湿剤は特に限定されず、シリカゲル、活性炭、モレキュラーシーブなどの無機質系、酸化鉄などの金属酸化物系吸湿剤、塩化カルシウムなどのイオン結合化合物、濃硫酸、金属ナトリウム等が例示されるが、腐食性の少ないシリカゲル、活性炭、モレキュラーシーブなどの無機質系が好ましい。密閉容器内の圧力は特に限定されないが、常圧又は減圧であることが好ましい。かかる雰囲気を形成するガスは特に限定されず、空気、窒素ガス、アルゴンガスが例示される。さらに、保存温度は特に限定されないが、常温若しくは常温以下であることが好ましい。
【0008】
前記密閉容器の材料としては、前記透湿度を満たすものであればよく、特に制限されず、プラスチック基材、金属蒸着プラスチック基材、金属箔、ラミネート紙など、いずれも用いることができる。ここで、プラスチック基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂;ポリイミド;などを例示することができる。金属蒸着プラスチック基材としては、例えば一般のプラスチック基材にアルミニウムなどを蒸着したものを用いることができ、金属箔としてはアルミニウム箔などを用いることができる。一方、ラミネート紙としては、例えば上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙などの紙基材にポリエチレンなどの低透湿性熱可塑性樹脂をラミネートとしたものなどを用いることができる。
この密閉容器の形状としては特に制限はなく、袋状、箱状など、いかなる形状であってもよい。
このようにして保存した後の蒸着用フィルムの揮発成分含有量は、プラスチックフィルムの吸湿性に応じて異なるが、通常0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.02重量%以下である。
本発明の方法により保存された蒸着用フィルムは、揮発成分含有量が上記のように低いので、気相蒸着法により薄膜層を形成させるに際し、系内を目的の真空度に到達させる時間が短くてすみ、生産性の向上を図ることができる。
本発明の蒸着用フィルムは、特に光学用途に好適に用いられる。光学用途に用いられる蒸着用フィルムとしては、例えば液晶表示装置、有機EL素子、プラズマディスプレイ、プロジェクタなどの光学装置の部材などとして使用されるフィルム、具体的には位相差フィルム、偏光板保護フィルム、液晶セル基板用フィルム、液晶表示素子基板、タッチパネル基板など、あるいはそれらの原反フィルムなどを挙げることができる。これらのフィルムは、後工程として反射防止膜、防眩膜、ハードコート層、防汚層、透明導電膜が気相蒸着法などにより積層されて用いられる。
次に、本発明の積層体は、前述の方法で保存された蒸着用フィルムの少なくとも片面に、気相蒸着法により形成された薄膜層を有するものである。
この積層体における薄膜層の形成に用いられる気相蒸着法としては、前述のように、減圧CVD法や、真空蒸着、スパッタリング及びイオンプレーティングなどのPVD法等があるが、これらの中で、PVD法が好ましく、特に本発明の保存方法の効果を有効に発揮させることができる、高真空度が必要な真空蒸着が好ましい。
気相蒸着法による薄膜層の形成材料としては特に制限はなく、本発明の積層体の用途に応じて適宜選択することができる。該積層体の用途としては、例えば反射防止層を有する反射防止フィルム、光触媒活性材料層を有する光触媒フィルム、導電性材料層を有する導電性フィルム、赤外線遮断材料層を有する赤外線遮断フィルム、その他誘電体材料層を有する絶縁性フィルムなどがあるが、これらの中で、薄膜層が反射防止層である反射防止フィルム用が好ましい。
次に、前記用途に用いられる各積層体について説明する。
【0009】
<反射防止フィルム>
反射防止フィルムは、一般に液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、EL素子、陰極管表示装置などの画像表示装置やタッチパネル等の光学装置において、外光の反射によるコントラストの低下や像の映り込みを防止するために用いられている。これらの反射防止フィルムは、通常各光学装置における視認側最上層に形成されている光学部材の反射防止性保護フィルムとして設けられることが多い。
本発明の積層体は、前記光学部材として、特に液晶表示装置における偏光板に適用することが好ましい。
液晶表示装置における偏光板は、液晶セルの出射側に設けられるが、通常入射側にも設けられている。この偏光板は、一般にポリビニルアルコールからなる基材フィルムにヨウ素や有機染料などの二色性材料を染色又は吸着させたのち、一方向に延伸配向させて偏光フィルムを作製し、この両面にトリアセチルセルロール(TAC)などの保護フィルムを貼り合わせることにより、製造されている。本発明の積層体を前記偏光板の反射防止性保護フィルムとして用いる場合には、片面に気相蒸着法により設けられた反射防止層を有する反射防止フィルムを、該反射防止層が表面側になるように、偏光板の出射側保護フィルム上に貼り合わせてもよいし、あるいは、偏光板の出射側保護フィルムの代わりに、反射防止層が設けられた反射防止フィルムを、該反射防止層が表面側になるように用いてもよい。
一方、タッチパネルは、現在約9割が抵抗膜方式を採用している。該抵抗膜方式のタッチパネルは、一般に透明プラスチック基材の片面にITO膜などの透明導電性薄膜を積層した入力側プラスチック基材と、ガラスなどの透明基材の片面にITO膜などの透明導電性薄膜を積層した受圧側透明基材とを、絶縁スペーサを介して、各透明導電性薄膜が向き合うように対向配置させた構造を有している。
そして、入力は、ペンや指で入力側プラスチック基材の入力面(透明導電性薄膜側とは反対側の面をいう。)を押圧し、入力側プラスチック基材の透明導電性薄膜と、受圧側透明基材の透明導電性薄膜とを接触させて行う。
【0010】
本発明の積層体を前記タッチパネルの反射防止性保護フィルムとして用いる場合には、片面に気相蒸着法により設けられた反射防止層を有する反射防止フィルムを、該反射防止層が表面側になるように、タッチパネルの視認側最表面に設けてもよい。あるいは、該反射防止フィルムの反射防止層とは反対側の面に、気相蒸着法によりITO膜などの透明導電性薄膜を設けたものを、タッチパネルの入力側プラスチック基材として用いてもよい。
本発明の積層体を、このような光学用途に用いる場合には、基材のプラスチックフィルムとしては、前述のように低飽和吸水率、透明性、耐熱性及び低複屈折値などの特性を有する脂環式構造を有する重合体フィルムを好ましく用いることができる。
前記反射防止フィルムを気相蒸着法により作製する場合には、通常基材フィルムよりも低屈折率の物質、例えばMgF2、SiO2などを蒸着し、単層反射防止層を形成する方法、あるいは高屈折率物質、例えばITO、酸化タンタル、酸化チタン、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、酸化錫、酸化アルミニウムなどと、低屈折率物質、例えばMgF2、SiO2などを交互に蒸着し、多層反射防止層を形成する方法などが用いられる。反射防止層の厚さとしては特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常0.01〜1.0μm、好ましくは0.02〜0.5μmの範囲で選定される。
<光触媒フィルム>
光触媒活性材料(以下、単に光触媒と称すことがある。)は、そのバンドギャップ以上のエネルギーの光を照射すると、励起されて伝導帯に電子が生じ、かつ価電子帯に正孔が生じる。そして、生成した電子は表面酸素を還元してスーパーオキサイドアニオン(・O2−)を生成させると共に、正孔は表面水酸基を酸化して水酸ラジカル(・OH)を生成し、これらの反応性活性酸素種が強い酸化分解機能を発揮し、光触媒の裏面に付着している有機物質を高効率で分解することが知られている。
【0011】
また、光触媒が光励起されると、光触媒表面は、水との接触角が10度以下となる超親水化を発現することも知られている。
このような光触媒の機能を応用して、例えば脱臭、防汚、抗菌、殺菌、廃水中や廃ガス中の各種有害物質の分解・除去用として、あるいは高速道路の防音壁やトンネル内照明、街路灯などに対する自動車の排ガスに含まれる煤などによる汚染防止用として、さらには自動車のボディーコートやサイドミラー用フィルム、防曇性やセルフクリーニング性窓ガラス用などに、光触媒が使用されている。
本発明における光触媒フィルムにおいては、本発明の方法で保存されたプラスチックフィルムの少なくとも片面に、前記の機能を有する光触媒活性材料からなる光触媒層を気相蒸着法により形成させるが、該光触媒層をプラスチックフィルム上に直接形成させると、その酸化力によって、基材のプラスチックフィルムの劣化が著しいので、通常シリカ膜などの下地層を気相蒸着法により設け、その上に光触媒層を設けることが行われる。光触媒活性材料としては特に制限はなく、従来公知のもの、例えば二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTi4O9)、チタン酸ナトリウム(Na2Ti6O13)、二酸化ジルコニウム、α−Fe2O3、酸化タングステン、硫化カドミウム、硫化亜鉛などを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、二酸化チタン、特にアナターゼ型二酸化チタンは実用的な光触媒活性材料として有用である。
この光触媒フィルムにおける下地層の厚さは特に制限はないが、通常0.1〜10μm程度である。また、光触媒層の厚さは、通常10nmから5μm、好ましくは30nm〜3μm、より好ましくは40nm〜1μmの範囲で選定される。この厚さが10nm未満では光触媒機能が十分に発揮されにくいし、5μmを超えると厚さの割には光触媒機能の向上効果が認められず、むしろクラックなどが生じるおそれがある。
【0012】
<導電性フィルム>
表面に導電性材料層を有するプラスチックフィルムは、EL素子、液晶表示素子、タッチパネル、太陽電池などに用いられ、さらに電磁波遮蔽フィルムや帯電防止性フィルムなどとして用いられている。このような用途に用いられる導電性材料としては、例えば酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化カドミウム、ITOなどの金属酸化物や、金、白金、銀、ニッケル、アルミニウム、銅のような金属などが用いられる。
本発明における導電性フィルムにおいては、本発明の方法で保存されたプラスチックフィルムの少なくとも片面に、前記導電性材料層を気相蒸着法により形成させる。この導電性材料層の厚さは、通常5〜200nm程度である。
<赤外線遮断フィルム>
建物の窓、乗り物の窓、あるいは冷蔵、冷凍ショーケースの窓などにおいて、暑さの軽減、省エネルギー化を図るために、これらの窓に熱線(赤外線)を反射又は吸収する性能を付与する方法が行われている。例えば、透明プラスチックフィルムの表面に、アルミニウム、銀、金等の金属薄膜を気相蒸着法により設けた熱線反射フィルム、あるいは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、ATO、ITOなどの金属酸化物からなる赤外線吸収剤薄膜を設けた赤外線吸収フィルムなどの赤外線遮断フィルムが実用化されている。
本発明における赤外線遮断フィルムにおいては、本発明の方法で保存されたプラスチックフィルムの少なくとも片面に、前記金属からなる熱線反射薄膜や前記金属酸化物からなる赤外線吸収薄膜などの赤外線遮断剤層を、気相蒸着法により形成させる。この赤外線遮断剤層の厚さは、通常5〜500nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選定される。
<その他蒸着フィルム>
前記の各積層体以外に、例えばプラスチックフィルムの表面にSiN、SiO、SiO2、Ta2O5などの誘電体材料からなる薄膜層を形成した絶縁性フィルム、メタルを蒸着させて磁性層を形成した磁性フィルムなどがある。
本発明におけるこれらの絶縁性フィルムや磁性フィルムにおいては、本発明の方法で保存されたプラスチックフィルムの少なくとも片面に、前記誘電体材料からなる薄膜層や磁性層を気相蒸着法により形成させる。
【0013】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各物性は、以下に示す方法に従って測定した。
(1)ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準拠し、示差走査熱量分析計(DSC)にて測定した。
(2)フィルムの膜厚
オフライン厚み計測装置[山文電気社製、「TOF−4R」]を用いて測定した。
(3)揮発成分含有量
フィルムの揮発成分含有量は、ガスクロマトグラフィーにより、分子量200以下の成分の合計として定量した。
(4)飽和吸水率
フィルムの飽和吸水率は、JIS K 7209に準じて測定した。
(5)相対湿度
日置電機(株)製、「温湿度ロガー3631」を用いて測定した。
【0014】
製造例1
ノルボルネン系重合体[日本ゼオン社製「ZEONOR1420」、Tg135℃、飽和吸水率0.01重量%未満]のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥したのち、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、溶融樹脂温度240℃、Tダイの幅500mmの成形条件で、厚さ100μm、長さ300mのフィルムを押出成形した。得られた長尺のフィルムは、ロール状に巻き取った。
製造例2
ポリカーボネート樹脂[帝人化成社製「AD5503」、Tg160℃、飽和吸水率0.16重量%]のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥したのち、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、溶融樹脂温度270℃、Tダイの幅500mmの成形条件で、厚さ100μm、長さ300mのフィルムを押出成形した。得られた長尺のフィルムは、ロール状に巻き取った。
実施例1
製造例1で製造したノルボルネン系重合体フィルムロールを、幅3.3m、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム[透湿度7g/m2・24h(40℃、90%RH)]に相対湿度10%の空気を内包して密閉し、温度を25℃、相対湿度を65%に一定管理された部屋に30日間保存した。
なお、保存開始時のノルボルネン系フィルムは、揮発成分含有量が0.002重量%であり、保存後の該フィルムの揮発成分含有量は0.004重量%であった。また、保存開始時及び保存後の密閉容器内の相対湿度は、それぞれ10%及び25%であった。
【0015】
比較例1
製造例1で製造したノルボルネン系重合体フィルムロールを、幅3.3m、厚さ20μmの二軸延伸ナイロンフィルム[透湿度260g/m2・24h(40℃、90%RH)]に相対湿度10%の空気を内包して密閉し、温度を25℃、相対湿度を65%に一定管理された部屋に30日間保存した。
なお、保存開始時のノルボルネン系フィルムは、揮発成分含有量が0.002重量%であり、保存後の該フィルムの揮発成分含有量は0.01重量%であった。また、保存開始時及び保存後の密閉容器内の相対湿度は、それぞれ10%及び61%であった。
実施例2
製造例2で製造したポリカーボネートフィルムロールを、幅3.3m、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム[透湿度7g/m2・24h(40℃、90%RH)]に相対湿度10%の空気を内包して密閉し、温度を25℃、相対湿度を65%に一定管理された部屋に30日間保存した。
なお、保存開始時のポリカーボネートフィルムは、揮発成分含有量が0.003重量%であり、保存後の該フィルムの揮発成分含有量は0.01重量%であった。また、保存開始時及び保存後の密閉容器内の相対湿度は、それぞれ10%及び22%であった。
実施例3
製造例2で製造したポリカーボネートフィルムロールを、幅3.3m、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム[透湿度7g/m2・24h(40℃、90%RH)]に相対湿度10%の空気と水蒸気透過性フィルムで包んだ乾燥シリカゲル粉末を内包して密閉し、温度を25℃、相対湿度を65%に一定管理された部屋に30日間保存した。
なお、保存開始時のポリカーボネートフィルムは、揮発成分含有量が0.003重量%であり、保存後の該フィルムの揮発成分含有量は0.004重量%であった。また、保存開始時及び保存後の密閉容器内の相対湿度は、それぞれ10%及び12%であった。
【0016】
比較例2
製造例2で製造したポリカーボネートフィルムロールを、幅3.3m、厚さ20μmの二軸延伸ナイロンフィルム[透湿度260g/m2・24h(40℃、90%RH)]に相対湿度10%の空気を内包して密閉し、温度を25℃、相対湿度を65%に一定管理された部屋に30日間保存した。
なお、保存開始時のポリカーボネートフィルムは、揮発成分含有量が0.003重量%であり、保存後の該フィルムの揮発成分含有量は0.15重量%であった。また、保存開始時及び保存後の密閉容器内の相対湿度は、それぞれ10%及び60%であった。
試験例
実施例1〜3及び比較例1、2で30日間保存された各フィルムの表面に、ロール・ツー・ロール方式の直流(DC)マグネトロンスパッタリング装置によって、反射防止膜を形成した。
図1は、本試験例において、DCマグネトロンスパッタリング装置により、保存フィルム表面に反射防止膜を形成するための説明図である。
まず、スパッタリング装置10内の送り出しロール1に上記フィルムを装着し、フィルム2をガイドロール3a、ガイドロール3b、冷却ドラム4、ガイドロール3c及びガイドロール3dを介して巻取りロール5によって巻き取り速度4m/minで巻き取ると共に減圧を開始する。ロール1のフィルム全てが巻取りロール5に巻き取られるのを巻取り回数1回とし、この巻取り時間を75分間に調整する。次いで、巻き取られたフィルムは、巻き変えを行い上記とは逆方向に巻き取られ、このフィルム全てが巻き取られるのを巻取り回数合計2回とし、この巻取り時間も75分間に調整する。この操作を繰り返しながら、到達真空度が5.0×10−4Paになるまでの巻取り合計回数(トータル経過時間)を求めた。結果を第1表に示す。
【0017】
到達真空度が5.0×10−4Paになった時点で、次の工程に移った。
次いで、インラインで、放電プラズマ発生装置7を用いて、下記の条件でプラズマ処理を行い、フィルム表面にプラズマ処理面を形成した。
<プラズマ処理条件>
グロー放電ガス:酸素ガス
電源:直流電源
放電電力:60W・分/m2
グロー放電圧力:2.0Pa
次に、インラインでスパッタリングにより、フィルムのプラズマ処理面に、まず酸化アルミニウム層の蒸着を行い、屈折率1.59を有する酸化アルミニウム層を、光学膜厚0.25λ(λ=550nm)で形成させたのち、この酸化アルミニウム層の上にフッ化マグネシウム層の蒸着を、光学膜厚0.23λ(λ=550nm)で形成させ、多層反射防止膜を設けた。この際のスパッタリング条件は、次のとおりである。なお符号6はターゲットを示す。
<スパッタリング条件>
真空到達度:5.0×10−4Pa
作業真空度:1.3×10−1Pa
巻き取り速度:4m/min
放電ガス:アルゴン
電力密度:2w/cm2
【0018】
【表1】
【0019】
[注]
実施例に使用した容器は二軸延伸ポリプロピレンフィルム[透湿度7g/m2・24h(40℃、90%RH)]であり、比較例で使用した容器は二軸延伸ナイロンフィルム[透湿度260g/m2・24h(40℃、90%RH)]である。
第1表の結果から以下のことが分かる。ノルボルネン系重合体からなるフィルムを、透湿度が7g/m2・24h(40℃、90%RH)である二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる容器に保存した実施例1は、保存前後におけるフィルム中の揮発成分の変化も少ない。加えてこのフィルムに蒸着を行うための所定の真空度に達するまでの時間は1回の巻き取り時間(75分)ですむ。
一方、ノルボルネン系重合体からなるフィルムを、透湿度が260g/m2・24h(40℃、90%RH)である二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる容器に保存した比較例1は、実施例1と比べると、保存前後の容器内の湿度変化が大きく、それに伴って保存前後におけるフィルム中の揮発成分の変化も大きくなる。加えて蒸着を行うための所定の真空度に達するまで時間は長くなる。
飽和吸水率の高いポリカーボネートからなるフィルムを、透湿度が7g/m2・24h(40℃、90%RH)である二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる容器に保存した実施例2は、実施例1と比べると、保存前後におけるフィルム中の揮発成分の変化が若干大きいが、このフィルムに蒸着を行うための所定の真空度に達するまでの時間は2回の巻き取り時間(150分)ですむ。
【0020】
飽和吸水率の高いポリカーボネートからなるフィルムを、水蒸気透過性フィルムで包んだ乾燥シリカゲルを内包させた透湿度が7g/m2・24h(40℃、90%RH)である二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる容器に保存した実施例3は、実施例2と比べると、保存前後におけるフィルム中の揮発成分の変化も少なく、蒸着を行うための所定の真空度に達するまで時間は1回の巻き取り時間(75分)ですむ。
一方、飽和吸水率の高いポリカーボネートからなるフィルムを、透湿度が260g/m2・24h(40℃、90%RH)である二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる容器に保存した比較例2は、実施例2及び3と比べると、保存前後の容器内の湿度変化が大きく、それに伴って保存前後におけるフィルム中の揮発成分の変化も大きい。加えて蒸着を行うための所定の真空度に達するまで時間は長くなる。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、プラスチックフィルム上に気相蒸着法により薄膜層を形成させるに際し、系内を短時間で目的の真空度に到達させて生産性の向上を図るための蒸着用フィルムの保存方法、及びこの方法により保存された蒸着用フィルム上に気相蒸着法により薄膜層を形成してなる、例えば光学用部材の反射防止性保護フィルムなどとして好適な積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、試験例において、スパッタリング装置により保存フィルム表面に反射防止膜を形成するための説明図である。
【符号の説明】
1 送り出しロール
2 フィルム
3a、3b、3c、3d ガイドロール
4 冷却ドラム
5 巻取りロール
6 ターゲット
7 放電プラズマ発生装置
10 スパッタリング装置
Claims (10)
- 気相蒸着に用いられるプラスチックフィルムを保存する方法であって、保存開始時の揮発成分含有量が0.1重量%以下の前記プラスチックフィルムを、湿度50%RH以下の条件下に保存することを特徴とする蒸着用フィルムの保存方法。
- 温度40℃、湿度90%RHの外部環境条件における透湿度が15g/m2・24h以下の密閉容器中で保存する請求項1記載の蒸着用フィルムの保存方法。
- 蒸着用フィルムが光学用途に用いられる請求項1又は2記載の蒸着用フィルムの保存方法。
- プラスチックフィルムが、熱可塑性樹脂フィルムである請求項1、2又は3記載の蒸着用フィルムの保存方法。
- 熱可塑性樹脂フィルムが、脂環式構造を有する重合体のフィルムである請求項4記載の蒸着用フィルムの保存方法。
- 気相蒸着が、真空蒸着、スパッタリング及びイオンプレーティングの中から選ばれる物理的気相蒸着である請求項1ないし5のいずれかに記載の蒸着用フィルムの保存方法。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の方法で保存された蒸着用フィルムの少なくとも片面に、気相蒸着により形成された薄膜層を有することを特徴とする積層体。
- 薄膜層が反射防止層である請求項7記載の積層体。
- 光学部材の反射防止性保護フィルム用である請求項8記載の積層体。
- 光学部材が液晶表示装置における偏光板である請求項9記載の積層体。
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2003
- 2003-02-28 JP JP2003054270A patent/JP2004263060A/ja active Pending
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