JP2004262779A - アリル基含有化合物の製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のアリル基含有化合物の製造法は、遷移元素化合物の存在下、下記式(1)
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す)
で表されるアリルエステル化合物と、下記式(2)
R7−Y−H (2)
(式中、R7は有機基を示し、Yは酸素原子又は硫黄原子を示す)
で表される化合物とを反応させて、下記式(3)
【化2】
(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びYは前記に同じ)
で表されるアリル基含有化合物を得ることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、香料や有機合成の中間体などとして有用なアリル基含有化合物の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アリルエーテルやアリルチオエーテル、アリルエステル、アリルチオエステル等のアリルオキシ基やアリルチオ基を含有する化合物(以下、「アリル基含有化合物」と称する場合がある)は香料や有機合成の中間体等として有用であり、例えば、テルペン系アリル基含有化合物は、香料として広く用いられている。
【0003】
アリルエーテルの製造法としては、ハロゲン化アリルのハロゲンをアルコキシドで置換する方法などが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。しかしこの方法は、原料と当量の塩基が用いられ反応系が塩基性となるため、特に、香料に用いられるような複雑な構造を有する化合物は分解されやすくなり、また、脱離により生じる多量のハロゲン含有廃液の後処理を要する等の問題があった。
【0004】
【非特許文献1】
社団法人日本化学会編,「実験化学講座(第20巻)」,第4版,丸善株式会社,平成4年6月5日,p.188−193
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、遷移元素化合物を用いた触媒的な反応により、アリル基含有化合物を温和な条件下、簡易に製造できる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、汎用性に優れたアリル基含有化合物の製造法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、アリルエステル化合物とアルコール、チオール、カルボン酸又はチオカルボン酸とを特定の触媒の存在下で反応させると、温和な条件下で対応するアリル基含有化合物が簡易に得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、遷移元素化合物の存在下、下記式(1)
【化3】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す)
で表されるアリルエステル化合物と、下記式(2)
R7−Y−H (2)
(式中、R7は有機基を示し、Yは酸素原子又は硫黄原子を示す)
で表される化合物とを反応させて、下記式(3)
【化4】
(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びYは前記に同じ)
で表されるアリル基含有化合物を得ることを特徴とするアリル基含有化合物の製造法を提供する。前記式(2)で表される化合物には、アルコール類、フェノール類、チオール化合物、カルボン酸、及びチオカルボン酸が含まれる。
【0008】
前記遷移元素化合物には、例えばイリジウム化合物等の周期表VIII族元素化合物が含まれる。
【0009】
なお、本明細書におけるアリルエステル化合物、アリル基含有化合物には、アリル基(−CH2−CH=CH2)の水素原子が置換基で置換された化合物も含まれるものとする。また、遷移元素とは、周期表IIIA族元素、IVA族元素、VA族元素、VIA族元素、VIIA族元素、VIII族元素及びIB族元素を意味する。本明細書における「有機基」とは、炭素原子含有基だけでなく、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基などの非金属原子含有基を含む広い意味で用いる。
【0010】
【発明の実施の形態】
[遷移元素化合物]
本発明では遷移元素化合物(遷移元素の単体を含む)を触媒として用いる。遷移元素化合物は単独で又は2以上を組み合わせて使用できる。遷移元素には、ランタン、セリウムなどのIIIA族元素(特にランタノイド元素);チタン、ジルコニウムなどのIVA族元素;バナジウムなどのVA族元素;クロム、モリブデン、タングステンなどのVIA族元素;マンガンなどのVIIA族元素;鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などのVIII族元素;銅、銀などのIB族元素が含まれる。これらの中でもVIII族元素が好ましく、特に白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金)、とりわけイリジウムが好ましい。
【0011】
遷移元素化合物としては、例えば、遷移元素の単体(金属)、酸化物、硫化物、水酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、硫酸塩、遷移元素を含むオキソ酸又はその塩、無機錯体などの無機化合物;シアン化物、有機酸塩(酢酸塩など)、有機錯体などの有機化合物が挙げられる。これらのなかでも特に有機錯体が好ましい。錯体の配位子には公知の配位子が含まれる。遷移元素化合物における遷移元素の価数は0〜6程度、好ましくは0〜3価であり、特にイリジウム化合物などの場合には1価又は3価が好ましい。
【0012】
遷移元素化合物の代表的な例をイリジウムを例にとって示すと、例えば、金属イリジウム、酸化イリジウム、硫化イリジウム、水酸化イリジウム、フッ化イリジウム、塩化イリジウム、臭化イリジウム、ヨウ化イリジウム、硫酸イリジウム、イリジウム酸又はその塩(例えば、イリジウム酸カリウムなど)、無機イリジウム錯体[例えば、ヘキサアンミンイリジウム(III)塩、クロロペンタアンミンイリジウム(III)塩等]などの無機化合物;シアン化イリジウム、有機イリジウム錯体[例えば、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム、ドデカカルボニル四イリジウム(0)、クロロトリカルボニルイリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(エチレン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロジクロロビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)二イリジウム(III)、トリクロロトリス(トリエチルホスフィン)イリジウム(III)、ペンタヒドリドビス(トリメチルホスフィン)イリジウム(V)、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、クロロエチレンビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジカルボニルイリジウム(I)、ビス{1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン}イリジウム(I)塩化物、ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(エチレン)イリジウム(I)、カルボニルメチルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、(1,5−シクロオクタジエン)(ジホスフィン)イリジウム(I)ハロゲン化物、1,5−シクロオクタジエン(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)イリジウム(I)ヘキサフルオロリン酸塩、(1,5−シクロオクタジエン)ビス(トリアルキルホスフィン)イリジウム(I)ハロゲン化物、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等]などの有機化合物が挙げられる。
【0013】
好ましいイリジウム化合物にはイリジウム錯体が含まれる。これらの中でも、有機イリジウム錯体、特に、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、エチレン、ペンタメチルシクロペンタジエン、ベンゼン、トルエンなどの不飽和炭化水素;アセトニトリルなどのニトリル類;テトラヒドロフランなどのエーテル類を配位子として有する有機イリジウム錯体[例えば、ジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(エチレン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等]が好ましい。本発明においては、特に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等のカチオン性イリジウム錯体が好適に用いられる。イリジウム化合物は単独で又は2以上を混合して使用することができる。また、イリジウム化合物と他の遷移元素化合物とを併用することもできる。
【0014】
イリジウム化合物以外の遷移元素化合物としては、上記イリジウム化合物に対応する化合物[例えば、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金、ジクロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二ロジウム等]などが例示できる。イリジウム化合物以外の遷移元素化合物においても、例えば、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、エチレン、ペンタメチルシクロペンタジエン、ベンゼン、トルエンなどの不飽和炭化水素;アセトニトリルなどのニトリル類;テトラヒドロフランなどのエーテル類を配位子として有する有機錯体が特に好ましく、なかでもカチオン性錯体が用いられる場合が多い。
【0015】
遷移元素化合物は、そのままで又は担体に担持した形態で使用できる。前記担体としては、触媒担持用の慣用の担体、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、マグネシアなどの無機の金属酸化物や活性炭などが挙げられる。担体担持型触媒において、遷移元素化合物の担持量は、担体に対して、例えば0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%程度である。触媒の担持は、慣用の方法、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などにより行うことができる。
【0016】
遷移元素化合物の使用量は、反応成分として用いる式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.005〜0.1モル程度である。
【0017】
[アリルエステル化合物]
式(1)で表されるアリルエステル化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ、水素原子又は有機基を示す。有機基としては、本反応を阻害しないような有機基(例えば、本方法における反応条件下で非反応性の有機基)であればよく、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、複素環式基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基など)、カルボキシル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、アシル基(アセチル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等のC1−6アルコキシ基など)、N,N−ジ置換アミノ基(N,N−ジメチルアミノ基、ピペリジノ基など)など、及びこれらが2以上結合した基などが挙げられる。前記カルボキシル基などは有機合成の分野で公知乃至慣用の保護基で保護されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子が挙げられる。これらの有機基のなかでも、炭化水素基、複素環式基などが好ましい。
【0018】
前記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基も含まれる。前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0019】
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0020】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3−20シクロアルキル−C1−4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7−18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1−4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0021】
好ましい炭化水素基には、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C6−10芳香族炭化水素基、C3−15シクロアルキル−C1−4アルキル基、C7−14アラルキル基等が含まれる。
【0022】
上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0023】
前記R1等における複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1−4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。
【0024】
好ましいR1、R2、R3、R4、R5、R6には、水素原子及び炭化水素基(例えば、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C6−10芳香族炭化水素基、C3−12シクロアルキル−C1−4アルキル基、C7−14アラルキル基など)などが含まれる。特に、R1として、メチル基などのC1−3アルキル基及びフェニル基が好ましい。また、R2、R3、R4、R5、R6として、水素原子、メチル基などのC1−3アルキル基が特に好ましい。
【0025】
式(1)で表されるアリルエステル化合物の代表的な例として、酢酸アリル、酢酸2−ブテニル、酢酸1−メチル−2−ブテニル、酢酸2−メチル−2−ブテニル、酢酸1,2−ジメチル−2−ブテニル、ギ酸アリル、プロピオン酸アリル、安息香酸アリルなどが挙げられる。さらに、酢酸リナリル、酢酸d−シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸フィチル、酢酸ルペオリル;ギ酸ゲラニル、ギ酸ネリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸ネリル;安息香酸ゲラニル、安息香酸ネリルなどのテルペン系アリルエステル化合物などが挙げられる。
【0026】
また、本発明におけるアリルエステル化合物は、反応系中で生成させて反応に用いることもできる。例えば、対応するアリルアルコール類[R5R6C=C(R4)−C(R2)(R3)−OH]とカルボン酸(R1−COOH)を添加することにより反応系中でアリルエステルを生成し、原料として用いることも可能である。このようなアリルアルコール類の代表的な例として、アリルアルコール、2−ブテン−1−オール、1−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、1,2−ジメチル−2−ブテン−1−オールなどの他、リナロール、d−シトロネロール、ゲラニオール、ネロールなどが挙げられる。カルボン酸の代表的な例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸などが挙げられる。
【0027】
[式(2)で表される化合物]
本発明の製造法では、反応成分として式(2)で表される化合物、すなわち、広範囲のヒドロキシ化合物、チオール化合物、カルボン酸、チオカルボン酸などを用いることができる。式(2)中、R7における有機基としては、本反応を阻害しないような有機基(例えば、本方法における反応条件下で非反応性の有機基)であればよく、例えば、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6における有機基と同様のものが例示される。代表的な有機基には炭化水素基、複素環式基、アシル基が含まれる。炭化水素基、複素環式基としては、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6における炭化水素基、複素環式基と同様のものを例示できる。前記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基(これらに環が縮合している場合も含む)も含まれる。置換基としては反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、例えば、前記R1等における炭化水素基及び複素環式基が有していてもよい置換基と同様のものを例示できる。前記アシル基としては、R8−C(=O)− (式中、R8は炭化水素基又は複素環式基を示す)で表される基が挙げられる。R8における炭化水素基、複素環式基としては、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6における炭化水素基、複素環式基と同様のものを例示できる。
【0028】
ヒドロキシ化合物には、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコール、フェノール類等が含まれる。また、ヒドロキシ化合物は複数のヒドロキシル基を有していてもよく、1価アルコール、2価アルコール、多価アルコール、1価フェノール、2価フェノール、多価フェノール等の何れであってもよい。
【0029】
代表的な第1級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ヘキサデカノール、2−ブテン−1−オール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、グリセリン、ヘキサメチレングリコール、ペンタエリスリトールなどの炭素数1〜30(好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第1級アルコール;シクロペンチルメチルアルコール、シクロヘキシルメチルアルコール、2−シクロヘキシルエチルアルコールなどの飽和又は不飽和脂環式第1級アルコール;ベンジルアルコール、1,2−(1,3−又は1,4−)ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,2,3−(1,2,4−又は1,3,5)−トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、桂皮アルコールなどの芳香族第1級アルコール;2−ヒドロキシメチルピリジンなどの複素環式第1級アルコールなどが挙げられる。また、炭化水素部位に置換基を有する第1級アルコールとして、例えば、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル等のグリコール酸エステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;エチレングリコールモノアセテート等のアルキレングリコールモノエステルなどが挙げられる。
【0030】
代表的な第2級アルコールとしては、例えば、2−プロパノール、s−ブチルアルコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−オクタノール、4−デカノール、2−ヘキサデカノール、2−ペンテン−4−オール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、2,3−ブタンジオールや2,3−ペンタンジオールなどのビシナルジオール類などの炭素数3〜30(好ましくは3〜20、さらに好ましくは3〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第2級アルコール;1−シクロペンチルエタノール、1−シクロヘキシルエタノールなどの、ヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基(シクロアルキル基など)とが結合している第2級アルコール;シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、シクロドデカノール、2−シクロヘプテン−1−オール、2−シクロヘキセン−1−オール、2−アダマンタノール、アダマンタン環にオキソ基を有する2−アダマンタノール、2−ヒドロキシノルボルナン、2,5−ジヒドロキシノルボルナン、3−ヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンなどの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜15員、特に5〜8員)程度の飽和又は不飽和脂環式第2級アルコール(橋かけ環式第2級アルコールを含む);1−フェニルエタノール、1−フェニルプロパノール、1−フェニルメチルエタノール、ジフェニルメタノールなどの芳香族第2級アルコール;1−(2−ピリジル)エタノールなどの複素環式第2級アルコールなどが例示される。
【0031】
代表的な第3級アルコールとしては、例えば、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコールなどの炭素数4〜30(好ましくは4〜20、さらに好ましくは4〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第3級アルコール;1−シクロヘキシル−1−メチルエタノールなどの、ヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、橋かけ環式炭化水素基など)とが結合している第2級アルコール;1−メチル−1−シクロヘキサノールなどの、脂環式環(シクロアルカン環、橋かけ炭素環など)を構成する1つの炭素原子にヒドロキシル基と脂肪族炭化水素基とが結合している第3級アルコール;1−アダマンタノール、1,3−アダマンタンジオールなどの橋かけ炭素環の橋頭位にヒドロキシル基を有する橋かけ炭素環含有第3級アルコール;1−フェニル−1−メチルエタノールなどの芳香族第3級アルコール;1−メチル−1−(2−ピリジル)エタノールなどの複素環式第3級アルコールなどが挙げられる。
【0032】
上記に例示のアルコールのほかに、例えば、グルコース、フルクトース、ソルビトール、イソソルバイド、アミロース、セルロースなどの鎖状又は環式の単糖類、二糖類、多糖類、糖アルコールなどのヒドロキシル基を有する糖類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類;カルボン酸エステル基、ニトロ基、アミド基などの塩基に弱い官能基を有するアルコールなどが挙げられる。
【0033】
代表的なフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、1−ヒドロキシナフタレンなどの芳香族炭素環にヒドロキシル基が結合している化合物;2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシフラン、3−ヒドロキシチオフェンなどの芳香族複素環にヒドロキシル基が結合している化合物などが挙げられる。上記のヒドロキシ化合物の各代表的化合物は、反応を阻害しない範囲で種々の置換基を有していてもよい。
【0034】
また、好ましいヒドロキシ化合物には、上記に例示した化合物のほか、リナロール、d−シトロネロール、カルベオール、メントール、ゲラニオール、ネロールなどのモノテルペン;フィトールなどのジテルペン;コレステロール、ルペオールなどのトリテルペンなどのテルペン系アルコールが含まれる。
【0035】
チオール化合物には、脂肪族チオール、脂環式チオール及び芳香族チオール(チオフェノール類)が含まれる。これらのチオール化合物は複数のメルカプト基を有していてもよい。
【0036】
チオール化合物としては、上記ヒドロキシ化合物として例示の化合物中のヒドロキシル基の酸素原子を硫黄原子で置換した化合物を挙げることができる。代表的な脂肪族チオールとしては、例えば、メタンチオール、エタンチオール、2−プロパンチオール、t−ブタンチオール、1−メルカプト−2−ブテン、1−ペンタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−オクタンチオールなどの炭素数1〜30(好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族チオールが挙げられる。脂環式チオールとしては、シクロペンチルメタンチオール、シクロヘキシルメタンチオール、シクロヘキサンチオールなどの飽和又は不飽和脂環式チオールが挙げられる。これらの脂肪族チオール及び脂環式チオールは、反応を阻害しない範囲で種々の置換基を有していてもよい。このような化合物の具体例として脂肪族チオールを例にとって示すと、例えば、ベンジルチオール、1−フェニルエタンチオールなどの芳香族環置換脂肪族チオール;2−メルカプトメチルピリジンなどの複素環置換脂肪族チオールなどの置換脂肪族チオールが挙げられる。
【0037】
代表的な芳香族チオールとしては、例えば、チオフェノール、チオクレゾール、メルカプトキノン、1−チオナフトールなどの芳香族炭素環にメルカプト基が結合している化合物;2−メルカプトピリジン、3−メルカプトピリジン、3−メルカプトフラン、3−メルカプトチオフェンなどの芳香族複素環にメルカプト基が結合している化合物などが挙げられる。これらの芳香族チオールは、反応を阻害しない範囲で種々の置換基を有していてもよい。
【0038】
チオール化合物には、上記に例示した化合物のほか、好ましいアルコール化合物として例示のテルペン系アルコールのヒドロキシル基の酸素原子を硫黄原子で置換した化合物が含まれる。
【0039】
カルボン酸には、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、芳香族カルボン酸等が含まれる。また、カルボン酸は複数のカルボキシル基を有していてもよく、モノカルボン酸、ジカルボン酸、多価カルボン酸等の何れであってもよい。
【0040】
代表的な脂肪族カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸、メタクリル酸、ステアリン酸、ベヘン酸、パルミチン酸などのモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸などが挙げられる。代表的な脂環式カルボン酸としては、シクロプロパンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などのモノカルボン酸;1,1−シクロプロパンジカルボン酸などのジカルボン酸などが挙げられる。代表的な芳香族カルボン酸としては、安息香酸、サリチル酸などのモノカルボン酸;フタル酸などのジカルボン酸などが挙げられる。
【0041】
また、好ましいカルボン酸には、上記に例示した化合物のほかに、フェンコル酸、カンファン酸、カンホル酸、フシジン酸などのモノカルボン酸;シネオール酸、ショウノウ酸などのジカルボン酸などのテルペン系カルボン酸などが含まれる。
【0042】
チオカルボン酸には、脂肪族チオカルボン酸、脂環式チオカルボン酸、芳香族チオカルボン酸等が含まれる。これらのチオカルボン酸は複数のチオカルボキシル基を有していてもよい。
【0043】
チオカルボン酸としては、上記カルボン酸として例示の化合物中のカルボキシル基の酸素原子を硫黄原子で置換した化合物を挙げることができる。代表的なチオカルボン酸としては、例えば、チオ酢酸、チオプロピオン酸、チオメタクリル酸、チオマロン酸などの脂肪族チオカルボン酸;シクロプロパンチオカルボン酸、1,1−シクロプロパンジチオカルボン酸などの脂環式チオカルボン酸;チオ安息香酸、チオフタル酸などの芳香族チオカルボン酸などが挙げられる。
【0044】
また、好ましいチオカルボン酸には、上記に例示した化合物のほか、好ましいカルボン酸として例示のテルペン系カルボン酸のカルボキシル基の酸素原子を硫黄原子で置換した化合物が含まれる。
【0045】
[反応]
式(1)で表されるアリルエステル化合物と式(2)で表される化合物との反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0046】
式(1)で表されるアリルエステル化合物の使用量は、式(2)で表される化合物1当量に対して、例えば0.8〜15当量、好ましくは1〜12当量、さらに好ましくは3〜10当量程度である。式(1)で表されるアリルエステル化合物を大過剰量用いてもよい。
【0047】
本発明の反応では、目的生成物の収率などの点から、反応系に存在する塩基(例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩基;酢酸ナトリウム、ナトリウムエトキシドなどの有機塩基)は少ないほど好ましく、式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば0.001モル未満、特に0.0001以下であるのが好ましい。反応は、通常、塩基の非存在下で行われる。
【0048】
また、前記アリルアルコール類とカルボン酸を系内に添加して原料としてのアリルエステル化合物を反応系中で生成させる場合、カルボン酸の添加量は特に制限はなく、アリルアルコール類1モルに対して、例えば0.01〜2モル程度、好ましくは0.05〜1モル程度である。カルボン酸を触媒量用いても反応は進行する。また、モレキュラーシーブなどの脱水剤の存在下で反応を行ってもよく、副生する水を留出させながら反応を行ってもよい。なお、必要に応じて、硫酸、p−トルエンスルホン酸などの強酸を触媒として用いてもよい。
【0049】
反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、20〜200℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0050】
本発明の方法では、反応により、温和な条件下で、対応する式(3)で表されるアリル基含有化合物が生成する。具体的には、例えば、以下の[A]〜[D]に示す態様が挙げられる。[A]式(2)で表される化合物としてヒドロキシ化合物を用いた場合には、式(3)で表されるアリルエーテル化合物が生成し、[B]式(2)で表される化合物としてチオール化合物を用いた場合には、アリルチオエーテル化合物が生成し、[C]式(2)で表される化合物としてカルボン酸を用いた場合には、エステル変換されたアリルエステル化合物が生成し、[D]式(2)で表される化合物としてチオカルボン酸を用いた場合には、エステル変換されたアリルチオエステル化合物が生成する。反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、遷移元素化合物を触媒に用いるため、アリル基含有化合物を温和な条件下、簡易に製造することができる。また、本発明の製造法は汎用性に優れ、広範なアリル基含有化合物を効率よく製造できる。
【0052】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0053】
実施例1
ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート[Ir(cod)2]+BF4 −(0.01mmol)のトルエン(1.0ml)混合液に、1−オクタノール(130mg、1mmol)及び酢酸アリル(5mmol)を加え、100℃で5時間攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1−オクタノールの転化率は95%であり、(1−オクチル)アリルエーテルが収率90%、酢酸オクチルが収率2%、オクチルアルデヒドが収率2%で生成し、オクタン酸オクチルが痕跡量生成していた。
【0054】
実施例2
実施例1において、酢酸アリルを2mmol用いた以外は、実施例1と同様の操作により反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1−オクタノールの転化率は87%であり、(1−オクチル)アリルエーテルが収率56%、酢酸オクチルが収率1%、オクチルアルデヒドが収率1%、オクタン酸オクチルが11%で生成していた。
【0055】
実施例3
実施例1において、1−オクタノールの代わりにゲラニオールを用いた以外は、実施例1と同様の操作により反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1−アリロキシ−3,7−ジメチル−オクタ−2,6−ジエンが収率85%、酢酸ゲラニルが収率1%で生成していた。
【0056】
実施例4
実施例1において、1−オクタノールの代わりに1,4−ブタンジオールを用い、酢酸アリルを10mmol用いた点以外は、実施例1と同様の操作により反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−(4−アリロキシ−ブトキシ)−プロペンが収率78%、4−アリロキシ−1−ブタノールが収率6%で生成していた。
【0057】
実施例5
実施例1において、1−オクタノールの代わりに1−アダマンタノールを用いた以外は、実施例1と同様の操作により反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、(1−アダマンチル)アリルエーテルが収率81%で生成していた。
【0058】
実施例6
実施例1において、1−オクタノールの代わりに2−オクタノールを用いた以外は、実施例1と同様の操作により反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、(2−オクチル)アリルエーテルが収率69%で生成していた。
【0059】
実施例7
実施例1において、酢酸アリルの代わりにアリルアルコール(5mmol)、酢酸(1mmol)、トルエン(1ml)を用いた点以外は、実施例1と同様の操作により反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、(1−オクチル)アリルエーテルが収率41%、酢酸オクチルが収率2%、オクチルアルデヒドが収率6%で生成していた。
【0060】
実施例8
実施例1において、酢酸アリルの代わりにアリルアルコール(5mmol)、酢酸(1mmol)を用い、さらに、モレキュラーシーブ3A(100mg)、トルエン1mlを用いた点以外は、実施例1と同様の操作により反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、(1−オクチル)アリルエーテルが収率53%、酢酸オクチルが収率2%、オクチルアルデヒドが収率13%で生成していた。
【0061】
実施例9
ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート[Ir(cod)2]+BF4 −(0.01mmol)のトルエン(1.0ml)混合液に、フェノール(1mmol)及び酢酸アリル(5mmol)を加え、100℃で攪拌し、5時間後及び15時間後の反応液についてそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析した。5時間後の反応液では、フェノールの転化率は23%であり、フェニルアリルエーテルが収率21%で生成しており、15時間後の反応液では、フェノールの転化率は51%であり、フェニルアリルエーテルが収率51%で生成していた。
【0062】
実施例10
実施例9において、フェノールの代わりにベンジルアルコール(1mmol)を用いた以外は、実施例9と同様の操作により反応を行い、5時間後及び15時間後の反応液についてそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析した。5時間後の反応液では、ベンジルアルコールの転化率は83%であり、ベンジルアリルエーテルが収率71%、酢酸ベンジルが収率2%、ベンズアルデヒドが収率2%で生成しており、15時間後の反応液では、ベンジルアルコールの転化率は99%であり、ベンジルアリルエーテルが収率82%、酢酸ベンジルが収率2%、ベンズアルデヒドが収率4%で生成していた。
【0063】
実施例11
実施例9において、フェノールの代わりにアリルアルコール(1mmol)を用いた以外は、実施例9と同様の操作により反応を行い、5時間後及び15時間後の反応液についてそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析した。5時間後の反応液では、アリルアルコールの転化率は83%であり、ジアリルエーテルが収率56%で生成しており、15時間後の反応液では、アリルアルコールの転化率は99%であり、ジアリルエーテルが収率61%で生成していた。
【0064】
実施例12
実施例9において、フェノールの代わりに安息香酸(1mmol)を用いた以外は、実施例9と同様の操作により反応を行い、15時間後の反応液についてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、安息香酸アリルが収率6%で生成していた。
【0065】
実施例13
実施例9において、フェノールの代わりにヘキサンチオール(1mmol)を用いた以外は、実施例9と同様の操作により反応を行い、5時間後の反応液についてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、ヘキシルアリルチオエーテルが収率23%で生成していた。
Claims (4)
- 遷移元素化合物が周期表VIII族元素化合物である請求項1記載のアリル基含有化合物の製造法。
- 遷移元素化合物がイリジウム化合物である請求項1記載のアリル基含有化合物の製造法。
- 式(2)で表される化合物が、アルコール類、フェノール類、チオール化合物、カルボン酸、又はチオカルボン酸である請求項1記載のアリル基含有化合物の製造法。
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