JP2004262732A - 板状シリコン製造用基板、板状シリコンの製造方法および板状シリコンを用いた太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価な板状シリコンの製造方法を用いて、ばらつきの少ない板状シリコンを提供する。
【解決手段】成長面を有する基板を、シリコン融液に接触させ、シリコンを基板に成長させることで、シリコンで形成された板を得る板状シリコンの製造方法において、板状シリコンの成長面を有する基板を分割することで、品質のばらつきの少ない板状シリコンを得る。
【選択図】 図1
【解決手段】成長面を有する基板を、シリコン融液に接触させ、シリコンを基板に成長させることで、シリコンで形成された板を得る板状シリコンの製造方法において、板状シリコンの成長面を有する基板を分割することで、品質のばらつきの少ない板状シリコンを得る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄板状のシリコン(以下、板状シリコンと略す。)の製造方法、およびその製造方法によって得られた板状シリコンを用いて作製した太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、太陽電池は、単結晶シリコンウェハを用いて製造されてきた。しかしながら、単結晶シリコンウェハは、長時間かけて作製することから非常に高価なウェハとなり、それを用いて作製される太陽電池も非常に高価であった。
【0003】
一方、近年、プロセス技術の革新により、多結晶シリコンを用いたシリコン太陽電池の低コスト化が進み、その生産量の増加は著しい。しかしながら、太陽電池の普及を考えた場合、さらなる低コスト化が必要な状況である。多結晶シリコンは、シリコン融液を鋳型に流し込んで徐冷し、得られた多結晶インゴットをスライスし、製造されているため、スライスによるシリコンの損失が大きいことが問題となっている。このスライス損失をなくし、低コストで多結晶シリコンウェハの大量生産が可能な方法として本発明者らは、スライス工程を必要とせず、低コストで大量生産が可能な板状シリコン製造方法(特許文献1参照)を発明した。この製造方法は、原料の融液に基板を浸漬し、基板上に板状シリコンを成長するというものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−247396号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のキャスト法の問題点は、ウェハを作製するために長時間を有することと、スライスロスが生じることから原料シリコンの利用効率の低下が挙げられ、別法の板状シリコンの製造方法では、安価な製造方法でありながら、高品質の板状シリコンを安定的に提供するのが難しくなる可能性が生じる。
【0006】
上記板状シリコン製造方法で板状シリコンを製造した場合、板状シリコンが坩堝中や、坩堝外に落ちてしまう場合があるという問題があった。
【0007】
また、板状シリコンは、基板の板状シリコンの成長面だけでなく、基板前後面および横面にも成長するため、板状シリコン成長後の降温時に、板状シリコンと基板材質の膨張係数の違いおよび、温度変化の時間的な遅れのために、板状シリコン面内に応力が残る、あるいはその応力のために板状シリコンにクラックが入る場合があるという問題があった。
【0008】
また、連続生産を行い、用いる基板の表面が劣化した場合には、基板を研削しなおし、表面を清浄にする必要がある。このような場合、基板の浸漬深さが研削分だけ浅くなることが予想される。そこで、低価格で、高品質な板状シリコンを提供するためには、上記問題を解決する必要があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の板状シリコンの製造方法は、成長面を有する基板をシリコン融液に接触させ、その成長面に、板状シリコンを成長させる板状シリコンの製造方法において、前記基板の板状シリコンの主たる成長面と、その成長面の周辺部が異なる基板で構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の板状シリコンの製造方法は、基板は、主たる成長面と周辺部の2分割以上された基板から、1枚の板状シリコンを得ることを特徴とする。本発明の板状シリコンの製造方法は、成長面を有する基板を、シリコン融液に接触させて板状シリコンを成長面に成長させ、次いで、前記成長面がシリコン融液から引き離す板状シリコンの製造方法において、前記分割された基板の周辺部側に凹部があることを特徴とする。
【0011】
本発明の板状シリコンの製造方法は、基板周辺部の凹部は、基板の進行方向部分に形成されており、基板の周辺部の凹部と成長面との高さ関係が変化しないことが好ましい。本発明の太陽電池は、前記製造方法により得られた板状シリコンを用いたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明における板状シリコンの製造方法は、成長面を有する基板を、シリコン融液に接触させ、その成長面に、板状シリコンを成長させる板状シリコンの製造方法において、前記基板の板状シリコンの成長面と、その成長面の周辺部が分割されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明による板状シリコンの製造方法は、図1に示すような分割された基板を用いることが特徴となる。本発明の基板Sは、主たる成長面1(ハッチング部)を有する基板部材SAと周辺部2を有する基板部材SBとから構成されている。図1(A)は基板部材SAと基板部材SBを組み立てたときの概略斜視図であり、図1(B)は基板部材SAと基板部材SBを組み立てる前の概略斜視図である。図1(B)にあるように基板部材SBの後方から基板部材SAを挿入することで、図1(A)の基板Sの構造となる。
【0014】
本発明による基板を用いた場合、主として成長面1上に成長した板状シリコンを製品として使用することになる。このような基板の成長面1上に板状シリコンを成長させるには、基板Sの成長面1を下側に向け、シリコン融液に接触させることで得ることが可能となる。
【0015】
シリコン融液から板状シリコンを得る方法は、例えば図2のような構成の製造装置によって、製造可能となる。図2において、坩堝25上に熱遮蔽板21の開口部22を有し、その開口部22を移動することが可能な支持体20と基体Sが固定脚23に接続され、その固定脚23は、冷却器24に接続されている。また、この冷却器24は、角度が変更できる関節部29を有するアーム26に接続されている。ただし、この図において、アームや関節部を移動させる手段、真空排気ができるようなチャンバーなどの装置は示していない。本装置においては、坩堝25上には、熱遮蔽板21が開口されており、基体Sは任意の軌道を描けるような構成になっている。その基体S上で結晶が成長し、板状シリコン6が形成されるのである。このとき、基体Sの温度、シリコン融液27の温度などを制御することにより、形成される板状シリコンの厚みを制御することが可能になる。この装置においては、アーム26が関節部29を有することにより、基体Sが移動する構成であるが、アーム26ごと移動する構成であっても構わない。
【0016】
このような場合、図1において基板Sの成長面1のみを、シリコン融液に接触させることができないため、基板Sの周辺部2にもシリコン結晶が成長することになる。そのために、周辺部についたシリコン結晶と成長面1上に成長したシリコン結晶とを分離するための、堀構造5が必要となる。これは、シリコン融液の表面張力により堀構造は完全に埋まることはないため、高品質な板状シリコンを得ることが可能となる。
【0017】
もし、堀構造5がないと、基板Sの前後面および横面(側面)にもシリコン結晶が成長するため、板状シリコン成長後の降温時に、板状シリコンと基板材質の熱膨張係数の違いおよび、温度変化の時間的な遅れのために、板状シリコン面内に応力が残ったり、あるいは、その応力のために板状シリコンにクラックが入る可能性が生じる。このように、堀構造5を設けた基板Sを用いることで、板状シリコンの面内に応力が加わらなくなり、高品質な板状シリコンを得ることができるようになる。
【0018】
また、本発明の基板には、図1において基板の進行方向の前方部3には、凹部4が形成されている。これは、成長面1から成長した板状シリコンは、堀構造5によって、周辺部2と分離されているために、落下する可能性が生じる。それを防止し、かつ、基板前方部から成長した板状シリコンに応力を加えないようにするために、凹部4が形成されている。この凹部4に板状シリコンはひっかかることになり、落下することがほとんどなくなる。この構造を設けることにより、歩留まり良く、高品質な板状シリコンが得られることになる。成長面1から凹部4までの長さL1は、1mm以上、8mm以下が特に好ましい。この長さL1が1mm以下であると、シリコン融液に浸漬させ、板状シリコンを成長させようとすると、シリコン融液から受ける熱のため、成長したシリコンと基板の凹部4が固着してしまい、それを起点としてクラックが発生したり、また、それを外そうとした場合には、基板を破損してしまうことに繋がる。一方、8mm以上であると、成長面もシリコン融液面から8mm以上まで浸漬しなければならなくなり、得られる板状シリコンの品質を常に一定に保つのが困難になるため、好ましくない。また、凹部4の幅W1は、基板のサイズより、小さければよい。例えば縦155mm、横155mmの正方形の基板より板状シリコンを得ようとするのであれば、幅W1は20mm以上、145mm以下が好ましい。特に好ましいのは、50mm以上、140mm以下である。この幅W1が小さすぎると、板状シリコンが引っ掛かる形状が不完全になり、落下する可能性が大きいため好ましくない。上述したように、図1のような基板形状にすることで、図3に示す概観形状を有する板状シリコン6を得ることができる。図3(A)は、基板S上に成長した板状シリコンの概略斜視図であり、図3(B)は図3(A)における一点鎖線X3−X3で切断した時の概略断面図である。板状シリコン6は、基板Sの進行方向となる前方部3から成長した前方シリコン63と、凹部4から成長したシリコン64と、基板の成長面から成長したシリコン61の3面で構成されているために、基板にひっかかる構造となるために、高歩留まりで板状シリコンを得ることができる。
【0019】
本発明においては、図1にあるように、基板の進行方向の前方部3には、凹部4が形成されている場合について説明したが、板状シリコン6が基板Sから落下しにくい構造にすることが本質となり、基板の進行方向の前方部3には、高低差を有する部分が存在していれば良いことになる。すなわち、基板の進行方向の前方部3に凸部を設けておくことも可能であるが、歩留まりを考慮すると、凹部が存在することが好ましい。
【0020】
高品質で、歩留まりよく板状シリコンが得られるようになるが、連続使用することで、基板Sの成長面1の表面が劣化する可能性が生じる。このような場合、基板の成長面をリフレッシュさせるために研削を行うが、基板が一体構造の場合、基板表面を再加工すると基板の厚みが減るだけでなく、成長面1と凹部4との距離が近づく。すなわち、図1中のL1の長さが短くなることになり、基板Sの進行方向となる前方部3から成長したシリコン63の長さH63が短くなり、板状シリコンは落下し易くなる。
【0021】
さらに、基板Sが一体構造であると、基板表面を再加工すると基板の厚みが減ることになる。これは、すなわち、浸漬軌道が一定の場合には、浸漬深さが浅くなることになり、上述と同様の理由により、板状シリコンは落下し易くなる。
【0022】
基板表面を研削しても、安定して、高品質な板状シリコンを得ようとする場合、シリコン融液の湯面高さと、基板表面の高さの位置関係を正確に制御することが必要になる。位置関係を維持する制御方法として、2つの方法が挙がられる。一つは、シリコン湯面を厳密に認知し、シリコン原料を連続的に供給して湯面を常に一定にする方法、もしくは、その湯面高さの変化に連動して坩堝の高さを変化させる方法などがある。
【0023】
もう一つは、基板の研削量に連動して、基板をシリコン融液に浸漬させるための軌道を随時変更する方法である。
【0024】
しかしながら、連続生産を行うと、シリコン湯面高さは、常に変動することから、基板の研削量によって、軌道も随時変更するのは、非常に困難となる。
【0025】
本発明の基板であると、基板部材SAと基板部材SBが分離可能な構造であるために、SA部分の成長面1の部分と、その周辺部との高さ関係を維持しつつ研削することで、基板表面の位置も、常に維持することが可能となる。すなわち、基板の研削量や研削回数に関係なく、軌道を常に一定にしておくことが可能となる。このように、基板側に工夫をすることにより、安定した制御が可能となる。
【0026】
また、基板部材SAと基板部材SBは、異なっていてもよい。特に成長面1を有する基板部材SAは高純度黒鉛であることが好ましい。これは、シリコン融液に対しての耐性があり、しかも表面加工が比較的容易であるためである。その他、基板部材SAとして、用いることができる材料としては、窒化珪素、窒化アルミ、アルミナなどのセラミックスが使用可能である。また、基板部材SBには、同じ材料を用いることができる。特に、基板部材SBの表面には、耐久性の高い材料でコーティングされていることが好ましい。特に好ましいのは、ダイアモンドライクカーボン、熱分解炭素、炭化珪素、窒化珪素などでコーティングされていることが好ましい。図4は、図1における一点鎖線Y1で切断したときの、本発明の基板Sの断面図であって、更にその上に板状シリコンが成長した状態の概略断面図である。基板部材SAは、基板部材SBの固定レール7に沿って挿入することにより、板状シリコンの成長面1とレールに接する部分の高さHの関係を常に維持できるような構造になっている。すなわち、この高さ関係を維持すれば、固定レールと接する部分からの距離は、一定であるために、基板部材SAの成長面1と、基板部材SBの周辺部2との高さが一致することになる。例えば、成長面1を5mm研削すれば、基板部材SBの固定レール7と接する部分も5mm研削することで、高さHを常に一定に維持することが可能となる。
【0027】
このような形状の基板を用いることで、シリコン融液に接触させるための軌道は、常に、一定にすることが可能となるだけでなく、成長面1と凹部4との距離関係を一定に維持することができ、板状シリコンの落下を抑制することが可能となる。本発明における基板の特徴は、成長面を有する基板の成長面を研削しても、成長面1と凹部4との高さ関係を維持する基板を提供することにある。
【0028】
次に、他の実施形態の基板について説明する。図5は、成長面1を有する基板SCと基板の前方部分に凹部4を有する基板SDとが組み合わせた時の基板の概略斜視図である。図1で示した基板との違いは、図1では成長面を有する基板部材SAとその周辺を有する基板部材SBとが分離されているが、図5では成長面を有する基板部材SCと基板の前方部に凹部4を有する基板部材SDとが分離されているところである。そのため、図1では、堀構造5は、成長面を有する基板部材SAと基板部材SBとの間に設けられているが、図5では成長面を有する基板部材SC側に設けられている。このような基板構造をしているために、基板の研削は、成長面1と、堀構造5と、基板SCが基板部材SDと接する部分を、同じ量だけ、同時に研削する必要がある。このような研削を行うことで、成長面1と凹部4との高さ関係を維持したままで、基板表面をリフレッシュすることが可能になる。
【0029】
このように、成長面と基板の凹部4とを別の基板部材で形成することで、それらの位置関係を変更せずに済むことになり、装置を煩雑にせずに済むだけでなく、安定して生産を行えることになる。
【0030】
(板状シリコンの製造方法)
次に、図2に示す板状シリコン製造装置を用いて、本発明による板状シリコンの製造方法について説明する。
【0031】
まず、得られる板状シリコンの比抵抗が所望の値になるようにボロンの濃度を調整したシリコン塊を、高純度黒鉛製坩堝25に一杯になるまで充填する。その坩堝を、図2に示すような装置内に設置する。次に、チャンバー内の真空引きを行ない、チャンバー内を所定の圧力まで減圧する。その後、チャンバー内にArガスを導入し、常に10L/minでチャンバー上部よりArガスを流したままにする。このように常にガスを流し続けるのは、清浄なシリコン湯面を得るためである。
【0032】
次に、シリコン溶融用のヒーター28の制御温度を1500℃に設定し、坩堝25内のシリコン塊を完全に溶融状態にする。このとき、シリコン原料は溶融することで液面が低くなることから、シリコン融液の湯面が、坩堝25上面から所定の位置になるように、新たにシリコン粉末を投入する。シリコン溶融用のヒーター28は、一度に1500℃に上げるのではなく、約1300℃位まで10〜50℃/minの昇温速度で加熱し、その後、所定温度まで上げるのが好ましい。これは、急激に温度を上げると、坩堝の角部などに熱応力が集中的にかかり、坩堝の破損に繋がるためである。
【0033】
その後、シリコン融液温度を1420℃に設定し、30分間そのまま保持し、融液温度の安定化を図り、坩堝昇降機構(図示せず)などを用いて、坩堝25を所定の位置に移動させる。このときのシリコン融液温度は、1500℃以下が好ましい。融点未満に設定すると、坩堝壁から徐々に湯面が固まってくるが、シリコン融液は熱による対流が存在するために、長時間の生産を行わない時は、融点付近に設定することも可能である。また、1500℃を超えると、得られる板状シリコンの成長速度が極端に遅くなり、生産性が悪くなるため余り好ましくない。
【0034】
次に、板状シリコンを基板S上に成長させるが、基板の成長面が、シリコン融液に接触するように移動させる。このように、基板Sの成長面がシリコン融液に接することで、基板の表面に板状シリコンが成長する。基板S上に板状シリコンを作製するための軌道は、円軌道、楕円軌道であってもよい。特に、任意の軌道を実現できるような構造にすることで、得られる板状シリコンの歩留まりを向上させることができる。
【0035】
シリコン融液への進入時の基板の表面温度は、1100℃以下が好ましい。基板の温度が1100℃を超えると、板状シリコンの成長速度が遅くなるだけでなく、基板とシリコンが固着したり、生産性が悪くなるおそれが生じる。このように、基板の温度によって、得られる板状シリコンのばらつきが生じやすくなるため、板状シリコンを作製する装置にも、冷却機構と加熱機構の両方を備えている方が好ましい。
【0036】
本発明の板状シリコンの製造方法では、基板の形状に特徴があり、さらに基板の凹部が存在する面を進行方向前面にすることが特徴となる。このような基板を用いることにより、基板前方部にもシリコンが成長し、そのシリコンが基板前方部に引っかかるような形状をとることとなり、重力に逆らいやすい形状になる。すなわち、図3に示した板状シリコンのように、基板に引っかかるような部分が存在することになる。そのため、板状シリコンが基板から落下することがなくなり、歩留まりよく、板状シリコンを作製することが可能となり、チャンバー外へも容易に搬出することが可能となる。
【0037】
図2にあるように、基板Sと板状シリコン6はチャンバー内で剥離してもいいし、チャンバー外へ搬出しても構わない。特に、生産速度を上げるのであれば、チャンバー内で、基板Sから剥離し、板状シリコン6だけをチャンバー外へ搬出するのが好ましい。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
<板状シリコンの作製>
得られる板状シリコンの比抵抗が1Ω・cmになるようにボロンの濃度を調節したシリコン原料を、高純度カーボン製坩堝に保護された石英坩堝内に充填し、図2にあるような装置内に設置した。その後、本体チャンバー内の圧力を300Paになるまでロータリーポンプを用いて排気を行った。その後、6Paになるまで、メカニカルブースターポンプを用いてさらに排気を行った。
【0039】
次に、坩堝を坩堝加熱用のコイルに周波数4kHz、電力80kWのインバーターを用いて、4℃/minの昇温レートにて500℃まで昇温する。本体チャンバー内の圧力を6Pa、坩堝温度が500℃を維持した状態で90分間保持することにより、カーボン製坩堝に含まれている水分を除去する。このようなベーキングを経た後、一旦インバーターの出力を停止し、坩堝の加熱を停止する。この状態で、本体チャンバーの圧力を800hPaになるまでアルゴンガスを充填する。
【0040】
本体チャンバー内が800hPaに達した時点で、再び坩堝を昇温レート10℃/minにて加熱し、坩堝温度が1500℃になるまで昇温する。坩堝温度を1500℃で安定させることにより、坩堝内のシリコン塊はやがて全て溶融して、シリコン融液となる。シリコン塊が完全に溶解したのを確認し、シリコン湯面の高さが坩堝上端より15mmになるように、シリコン塊を追加投入する。追加投入したシリコン塊が全て溶融したことを確認したのち、坩堝の設定温度を1430℃まで落として、シリコン融液の温度安定化のため30分間その状態を保持する。
【0041】
次に、基板表面の温度が300℃となるように加熱を行い、シリコン融液に浸漬させる。この時、用いた基板は図1のように2分割されており、成長面1の大きさは縦105mm、横105mmであった。さらに、成長面1から凹部4までの長さL1は5mmであり、凹部の幅W1は60mmであった。また、成長面1には、規則的な凹凸があり、凸部のピッチは1.5mmであり、その形状はピラミッド形状であった。
【0042】
同じ基板を用いて、繰り返し用いて、50回の浸漬を行い、板状シリコンを50枚作製し、その周辺部をレーザーで切断し、100mm角の板状シリコンを50枚得た。得られた板状シリコンの板厚の平均値は、約350μmであった。
【0043】
<太陽電池の作製>
100mm角の板状シリコンから太陽電池の作製を行った。得られた板状シリコンは、硝酸とフッ酸の混合液で洗浄も兼ねてエッチングを行った。その後、水酸化ナトリウムを用いてアルカリエッチングを行った。その後、PSG(リンシリケートガラス)拡散により、得られた板状シリコンにn+層を形成した。n+層形成時に形成されたPSG膜をフッ酸により除去した後、プラズマCVDにより、反射防止膜になるシリコン窒化膜を形成した。次に、太陽電池の裏面側となる面にも、形成されているn+層を硝酸とフッ酸の混合溶液でエッチング除去し、p型基板を露出させた。その上に、Alペーストをスクリーン印刷することにより、裏面電極およびp+層を同時に形成した。次に、Agペーストを印刷することにより、受光面電極を形成した。その後、半田コートを行い、太陽電池を得た。得られた太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にて、太陽電池特性を行った。なお測定方法は、「結晶系太陽電池セル出力測定方法(JIS C 8913(1988))」に従った。
【0044】
得られた50個の太陽電池の測定結果の平均値は、短絡電流32.3(mA/cm2)、開放電圧585(mV)、曲線因子0.75、効率14.2(%)であった。
【0045】
(実施例2)
実施例1で用いた基板部材SAの表面を2mm研削して平面にし、その後、再加工して、ピラミッド形状を形成して用いたこと以外、全て実施例1と同じ方法で50回の浸漬を行い、板状シリコンを50枚作製し、50個の太陽電池の作製を行った。
【0046】
得られた板状シリコンの板厚の平均値は、約345μmであった。
得られた50個の太陽電池の測定結果の平均値は、短絡電流32.5(mA/cm2)、開放電圧584(mV)、曲線因子0.75、効率14.2(%)であった。
【0047】
(比較例1)
実施例1で用いた基板の形状と同じで、分割されていない一体型の基板を用いたこと以外、全て実施例1と同じ方法で50回の浸漬を行い、板状シリコンを50枚作製し、50個の太陽電池を作製した。ここで板状シリコンの板厚の平均値は、約345μmであった。
【0048】
得られた50個の太陽電池の測定結果の平均値は、短絡電流32.4(mA/cm2)、開放電圧583(mV)、曲線因子0.74、効率14.0(%)であった。
【0049】
次に、その基板の表面を2mm研削して平面にし、その後、再加工して、ピラミッド形状を形成して用いたこと以外、全て実施例1と同じ方法で50回の浸漬を行い、板状シリコンを作製した。得られた板状シリコンは、50回の浸漬回数に対して、80%の40枚であり、残りの10枚は基板から落下した。
【0050】
得られた板状シリコンの板厚の平均値は、約320μmであった。
これは、基板表面を研削し、基板表面と凹部との距離が変化したために、引っ掛かりが悪くなり、得られる板状シリコンの枚数が減少した。
【0051】
さらに、同じ軌道で浸漬したために、浸漬深さが浅くなったことから、得られる板状シリコンの厚みも薄くなった。
【0052】
(実施例3)
<板状シリコンの作製>
得られる板状シリコンの比抵抗が2Ω・cmになるようにボロンの濃度を調節したシリコン原料を、高純度カーボン製坩堝に充填し、図2にあるような装置内に設置した。その後、本体チャンバー内の圧力を300Paになるまでロータリーポンプを用いて排気を行った。その後、6Paになるまで、メカニカルブースターポンプを用いてさらに排気を行った。
【0053】
次に、坩堝を坩堝加熱用のコイルに周波数4kHz、電力80kWのインバーターを用いて、2℃/minの昇温レートにて800℃まで昇温する。本体チャンバー内の圧力を6Pa、坩堝温度が800℃を維持した状態で30分間保持することにより、カーボン製坩堝に含まれている水分を除去する。このようなベーキングを経た後、一旦インバーターの出力を停止し、坩堝の加熱を停止する。この状態で、本体チャンバーの圧力を800hPaになるまでアルゴンガスを充填する。
【0054】
本体チャンバー内が800hPaに達した時点で、再び坩堝を昇温レート30℃/minにて加熱し、坩堝温度が1550℃になるまで昇温する。坩堝温度を1550℃で安定させることにより、坩堝内のシリコン塊はやがて全て溶融して、シリコン融液となる。シリコン塊が完全に溶解したのを確認し、シリコン湯面の高さが坩堝上端より10mmになるように、シリコン塊を追加投入する。追加投入したシリコン塊が全て溶融したことを確認したのち、坩堝の設定温度を1410℃まで落として、シリコン融液の温度安定化のため30分間保持し、坩堝壁面からの凝固が進行しないのを確認する。
【0055】
次に、基板表面の温度が200℃となるように基板加熱を行い、シリコン融液に浸漬させる。この時、用いた基板は、図5のように2分割されており、基板SCの成長面1の大きさは縦160mm、横160mm、厚み30mmであった。また、基板SCの成長面1の表面には、規則的な凹凸があり、凸部のピッチは1.0mmであり、その形状はピラミッド形状であり、そのピラミッドの高さは0.2mmであった。
【0056】
同じ基板を用いて、10回の浸漬を行い、板状シリコンを10枚作製した。その後、板状シリコンの周辺部をレーザーで切断し、155mm角の板状シリコンを10枚得た。得られた板状シリコンの板厚の平均値は、約400μmであった。
【0057】
<太陽電池の作製>
155mm角の板状シリコンから太陽電池の作製を行った。ここで板状シリコンは、洗浄も兼ねて水酸化ナトリウムを用いてアルカリエッチングを行った。その後、PSG(リンシリケートガラス)拡散により、得られた板状シリコンにn+層を形成した。n+層形成時に形成された余分なPSG膜をフッ酸により除去した後、プラズマCVDにより、反射防止膜になるシリコン窒化膜を形成した。次に、太陽電池の裏面側となる面にも、形成されているn層を硝酸とフッ酸の混合溶液でエッチング除去し、p型基板を露出させた。その上に、Alペーストをスクリーン印刷することにより、裏面電極およびp+層を同時に形成した。次に、Agペーストを印刷することにより、受光面電極を形成した。その後、半田コートを行い、太陽電池を得た。
【0058】
得られた太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にて、太陽電池特性を行った。なお測定方法は、「結晶系太陽電池セル出力測定方法(JIS C 8913(1988))」に従った。
【0059】
得られた10個の太陽電池の測定結果の平均値は、短絡電流31.0(mA/cm2)、開放電圧590(mV)、曲線因子0.743、効率13.6(%)であった。
【0060】
(実施例4)
実施例3で用いた基板SCの表面を2mm研削して、再加工して用いたこと以外、全て実施例3と同じ方法で10回の浸漬を行い、板状シリコンを10枚作製し、10個の太陽電池の作製を行った。
【0061】
得られた板状シリコンの板厚の平均値は、約395μmであった。
得られた10個の太陽電池の測定結果の平均値は、短絡電流30.9(mA/cm2)、開放電圧586(mV)、曲線因子0.741、効率13.4(%)であった。
【0062】
なお、今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記に示した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等な意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、基板を用いた板状シリコンの製造方法において、高歩留まりで、スライス工程が不要な生産性の高い板状シリコンを作製することが可能となる。これは、成長面の表面と基板の凹部との位置関係を変更せずに、基板を浸漬させることができるようになり、浸漬軌道を適宜変更する必要性がなくなり、装置を煩雑にすることがなくなる。
【0064】
また、得られた板状シリコンを太陽電池に用いることにより、低コストで製品にばらつきの少ない太陽電池を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は2個の基板部材SAおよび基板部材SBが組み合わさった時の概略斜視図であり、(B)は2個の基板部材SAおよび基板部材SBの概略斜視図である。
【図2】板状シリコンの製造装置の概略斜視図である。
【図3】(A)は図1(A)における基板S上で成長した板状シリコンの一点鎖線Y1−Y1で切断した概略斜視図であり、(B)は図3(A)における一点鎖線X3−X3で切断した板状シリコンの断面図である。
【図4】図1における一点鎖線Y1−Y1で切断した基板の断面図である。
【図5】本発明における分割された基板の概略斜視図である。
【符号の説明】
1 成長面、2 周辺部、3 基板の進行方向前方部、4 凹部、5 堀構造、6 板状シリコン、S,SA,SB,SC,SD 基板部材。
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄板状のシリコン(以下、板状シリコンと略す。)の製造方法、およびその製造方法によって得られた板状シリコンを用いて作製した太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、太陽電池は、単結晶シリコンウェハを用いて製造されてきた。しかしながら、単結晶シリコンウェハは、長時間かけて作製することから非常に高価なウェハとなり、それを用いて作製される太陽電池も非常に高価であった。
【0003】
一方、近年、プロセス技術の革新により、多結晶シリコンを用いたシリコン太陽電池の低コスト化が進み、その生産量の増加は著しい。しかしながら、太陽電池の普及を考えた場合、さらなる低コスト化が必要な状況である。多結晶シリコンは、シリコン融液を鋳型に流し込んで徐冷し、得られた多結晶インゴットをスライスし、製造されているため、スライスによるシリコンの損失が大きいことが問題となっている。このスライス損失をなくし、低コストで多結晶シリコンウェハの大量生産が可能な方法として本発明者らは、スライス工程を必要とせず、低コストで大量生産が可能な板状シリコン製造方法(特許文献1参照)を発明した。この製造方法は、原料の融液に基板を浸漬し、基板上に板状シリコンを成長するというものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−247396号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のキャスト法の問題点は、ウェハを作製するために長時間を有することと、スライスロスが生じることから原料シリコンの利用効率の低下が挙げられ、別法の板状シリコンの製造方法では、安価な製造方法でありながら、高品質の板状シリコンを安定的に提供するのが難しくなる可能性が生じる。
【0006】
上記板状シリコン製造方法で板状シリコンを製造した場合、板状シリコンが坩堝中や、坩堝外に落ちてしまう場合があるという問題があった。
【0007】
また、板状シリコンは、基板の板状シリコンの成長面だけでなく、基板前後面および横面にも成長するため、板状シリコン成長後の降温時に、板状シリコンと基板材質の膨張係数の違いおよび、温度変化の時間的な遅れのために、板状シリコン面内に応力が残る、あるいはその応力のために板状シリコンにクラックが入る場合があるという問題があった。
【0008】
また、連続生産を行い、用いる基板の表面が劣化した場合には、基板を研削しなおし、表面を清浄にする必要がある。このような場合、基板の浸漬深さが研削分だけ浅くなることが予想される。そこで、低価格で、高品質な板状シリコンを提供するためには、上記問題を解決する必要があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の板状シリコンの製造方法は、成長面を有する基板をシリコン融液に接触させ、その成長面に、板状シリコンを成長させる板状シリコンの製造方法において、前記基板の板状シリコンの主たる成長面と、その成長面の周辺部が異なる基板で構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の板状シリコンの製造方法は、基板は、主たる成長面と周辺部の2分割以上された基板から、1枚の板状シリコンを得ることを特徴とする。本発明の板状シリコンの製造方法は、成長面を有する基板を、シリコン融液に接触させて板状シリコンを成長面に成長させ、次いで、前記成長面がシリコン融液から引き離す板状シリコンの製造方法において、前記分割された基板の周辺部側に凹部があることを特徴とする。
【0011】
本発明の板状シリコンの製造方法は、基板周辺部の凹部は、基板の進行方向部分に形成されており、基板の周辺部の凹部と成長面との高さ関係が変化しないことが好ましい。本発明の太陽電池は、前記製造方法により得られた板状シリコンを用いたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明における板状シリコンの製造方法は、成長面を有する基板を、シリコン融液に接触させ、その成長面に、板状シリコンを成長させる板状シリコンの製造方法において、前記基板の板状シリコンの成長面と、その成長面の周辺部が分割されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明による板状シリコンの製造方法は、図1に示すような分割された基板を用いることが特徴となる。本発明の基板Sは、主たる成長面1(ハッチング部)を有する基板部材SAと周辺部2を有する基板部材SBとから構成されている。図1(A)は基板部材SAと基板部材SBを組み立てたときの概略斜視図であり、図1(B)は基板部材SAと基板部材SBを組み立てる前の概略斜視図である。図1(B)にあるように基板部材SBの後方から基板部材SAを挿入することで、図1(A)の基板Sの構造となる。
【0014】
本発明による基板を用いた場合、主として成長面1上に成長した板状シリコンを製品として使用することになる。このような基板の成長面1上に板状シリコンを成長させるには、基板Sの成長面1を下側に向け、シリコン融液に接触させることで得ることが可能となる。
【0015】
シリコン融液から板状シリコンを得る方法は、例えば図2のような構成の製造装置によって、製造可能となる。図2において、坩堝25上に熱遮蔽板21の開口部22を有し、その開口部22を移動することが可能な支持体20と基体Sが固定脚23に接続され、その固定脚23は、冷却器24に接続されている。また、この冷却器24は、角度が変更できる関節部29を有するアーム26に接続されている。ただし、この図において、アームや関節部を移動させる手段、真空排気ができるようなチャンバーなどの装置は示していない。本装置においては、坩堝25上には、熱遮蔽板21が開口されており、基体Sは任意の軌道を描けるような構成になっている。その基体S上で結晶が成長し、板状シリコン6が形成されるのである。このとき、基体Sの温度、シリコン融液27の温度などを制御することにより、形成される板状シリコンの厚みを制御することが可能になる。この装置においては、アーム26が関節部29を有することにより、基体Sが移動する構成であるが、アーム26ごと移動する構成であっても構わない。
【0016】
このような場合、図1において基板Sの成長面1のみを、シリコン融液に接触させることができないため、基板Sの周辺部2にもシリコン結晶が成長することになる。そのために、周辺部についたシリコン結晶と成長面1上に成長したシリコン結晶とを分離するための、堀構造5が必要となる。これは、シリコン融液の表面張力により堀構造は完全に埋まることはないため、高品質な板状シリコンを得ることが可能となる。
【0017】
もし、堀構造5がないと、基板Sの前後面および横面(側面)にもシリコン結晶が成長するため、板状シリコン成長後の降温時に、板状シリコンと基板材質の熱膨張係数の違いおよび、温度変化の時間的な遅れのために、板状シリコン面内に応力が残ったり、あるいは、その応力のために板状シリコンにクラックが入る可能性が生じる。このように、堀構造5を設けた基板Sを用いることで、板状シリコンの面内に応力が加わらなくなり、高品質な板状シリコンを得ることができるようになる。
【0018】
また、本発明の基板には、図1において基板の進行方向の前方部3には、凹部4が形成されている。これは、成長面1から成長した板状シリコンは、堀構造5によって、周辺部2と分離されているために、落下する可能性が生じる。それを防止し、かつ、基板前方部から成長した板状シリコンに応力を加えないようにするために、凹部4が形成されている。この凹部4に板状シリコンはひっかかることになり、落下することがほとんどなくなる。この構造を設けることにより、歩留まり良く、高品質な板状シリコンが得られることになる。成長面1から凹部4までの長さL1は、1mm以上、8mm以下が特に好ましい。この長さL1が1mm以下であると、シリコン融液に浸漬させ、板状シリコンを成長させようとすると、シリコン融液から受ける熱のため、成長したシリコンと基板の凹部4が固着してしまい、それを起点としてクラックが発生したり、また、それを外そうとした場合には、基板を破損してしまうことに繋がる。一方、8mm以上であると、成長面もシリコン融液面から8mm以上まで浸漬しなければならなくなり、得られる板状シリコンの品質を常に一定に保つのが困難になるため、好ましくない。また、凹部4の幅W1は、基板のサイズより、小さければよい。例えば縦155mm、横155mmの正方形の基板より板状シリコンを得ようとするのであれば、幅W1は20mm以上、145mm以下が好ましい。特に好ましいのは、50mm以上、140mm以下である。この幅W1が小さすぎると、板状シリコンが引っ掛かる形状が不完全になり、落下する可能性が大きいため好ましくない。上述したように、図1のような基板形状にすることで、図3に示す概観形状を有する板状シリコン6を得ることができる。図3(A)は、基板S上に成長した板状シリコンの概略斜視図であり、図3(B)は図3(A)における一点鎖線X3−X3で切断した時の概略断面図である。板状シリコン6は、基板Sの進行方向となる前方部3から成長した前方シリコン63と、凹部4から成長したシリコン64と、基板の成長面から成長したシリコン61の3面で構成されているために、基板にひっかかる構造となるために、高歩留まりで板状シリコンを得ることができる。
【0019】
本発明においては、図1にあるように、基板の進行方向の前方部3には、凹部4が形成されている場合について説明したが、板状シリコン6が基板Sから落下しにくい構造にすることが本質となり、基板の進行方向の前方部3には、高低差を有する部分が存在していれば良いことになる。すなわち、基板の進行方向の前方部3に凸部を設けておくことも可能であるが、歩留まりを考慮すると、凹部が存在することが好ましい。
【0020】
高品質で、歩留まりよく板状シリコンが得られるようになるが、連続使用することで、基板Sの成長面1の表面が劣化する可能性が生じる。このような場合、基板の成長面をリフレッシュさせるために研削を行うが、基板が一体構造の場合、基板表面を再加工すると基板の厚みが減るだけでなく、成長面1と凹部4との距離が近づく。すなわち、図1中のL1の長さが短くなることになり、基板Sの進行方向となる前方部3から成長したシリコン63の長さH63が短くなり、板状シリコンは落下し易くなる。
【0021】
さらに、基板Sが一体構造であると、基板表面を再加工すると基板の厚みが減ることになる。これは、すなわち、浸漬軌道が一定の場合には、浸漬深さが浅くなることになり、上述と同様の理由により、板状シリコンは落下し易くなる。
【0022】
基板表面を研削しても、安定して、高品質な板状シリコンを得ようとする場合、シリコン融液の湯面高さと、基板表面の高さの位置関係を正確に制御することが必要になる。位置関係を維持する制御方法として、2つの方法が挙がられる。一つは、シリコン湯面を厳密に認知し、シリコン原料を連続的に供給して湯面を常に一定にする方法、もしくは、その湯面高さの変化に連動して坩堝の高さを変化させる方法などがある。
【0023】
もう一つは、基板の研削量に連動して、基板をシリコン融液に浸漬させるための軌道を随時変更する方法である。
【0024】
しかしながら、連続生産を行うと、シリコン湯面高さは、常に変動することから、基板の研削量によって、軌道も随時変更するのは、非常に困難となる。
【0025】
本発明の基板であると、基板部材SAと基板部材SBが分離可能な構造であるために、SA部分の成長面1の部分と、その周辺部との高さ関係を維持しつつ研削することで、基板表面の位置も、常に維持することが可能となる。すなわち、基板の研削量や研削回数に関係なく、軌道を常に一定にしておくことが可能となる。このように、基板側に工夫をすることにより、安定した制御が可能となる。
【0026】
また、基板部材SAと基板部材SBは、異なっていてもよい。特に成長面1を有する基板部材SAは高純度黒鉛であることが好ましい。これは、シリコン融液に対しての耐性があり、しかも表面加工が比較的容易であるためである。その他、基板部材SAとして、用いることができる材料としては、窒化珪素、窒化アルミ、アルミナなどのセラミックスが使用可能である。また、基板部材SBには、同じ材料を用いることができる。特に、基板部材SBの表面には、耐久性の高い材料でコーティングされていることが好ましい。特に好ましいのは、ダイアモンドライクカーボン、熱分解炭素、炭化珪素、窒化珪素などでコーティングされていることが好ましい。図4は、図1における一点鎖線Y1で切断したときの、本発明の基板Sの断面図であって、更にその上に板状シリコンが成長した状態の概略断面図である。基板部材SAは、基板部材SBの固定レール7に沿って挿入することにより、板状シリコンの成長面1とレールに接する部分の高さHの関係を常に維持できるような構造になっている。すなわち、この高さ関係を維持すれば、固定レールと接する部分からの距離は、一定であるために、基板部材SAの成長面1と、基板部材SBの周辺部2との高さが一致することになる。例えば、成長面1を5mm研削すれば、基板部材SBの固定レール7と接する部分も5mm研削することで、高さHを常に一定に維持することが可能となる。
【0027】
このような形状の基板を用いることで、シリコン融液に接触させるための軌道は、常に、一定にすることが可能となるだけでなく、成長面1と凹部4との距離関係を一定に維持することができ、板状シリコンの落下を抑制することが可能となる。本発明における基板の特徴は、成長面を有する基板の成長面を研削しても、成長面1と凹部4との高さ関係を維持する基板を提供することにある。
【0028】
次に、他の実施形態の基板について説明する。図5は、成長面1を有する基板SCと基板の前方部分に凹部4を有する基板SDとが組み合わせた時の基板の概略斜視図である。図1で示した基板との違いは、図1では成長面を有する基板部材SAとその周辺を有する基板部材SBとが分離されているが、図5では成長面を有する基板部材SCと基板の前方部に凹部4を有する基板部材SDとが分離されているところである。そのため、図1では、堀構造5は、成長面を有する基板部材SAと基板部材SBとの間に設けられているが、図5では成長面を有する基板部材SC側に設けられている。このような基板構造をしているために、基板の研削は、成長面1と、堀構造5と、基板SCが基板部材SDと接する部分を、同じ量だけ、同時に研削する必要がある。このような研削を行うことで、成長面1と凹部4との高さ関係を維持したままで、基板表面をリフレッシュすることが可能になる。
【0029】
このように、成長面と基板の凹部4とを別の基板部材で形成することで、それらの位置関係を変更せずに済むことになり、装置を煩雑にせずに済むだけでなく、安定して生産を行えることになる。
【0030】
(板状シリコンの製造方法)
次に、図2に示す板状シリコン製造装置を用いて、本発明による板状シリコンの製造方法について説明する。
【0031】
まず、得られる板状シリコンの比抵抗が所望の値になるようにボロンの濃度を調整したシリコン塊を、高純度黒鉛製坩堝25に一杯になるまで充填する。その坩堝を、図2に示すような装置内に設置する。次に、チャンバー内の真空引きを行ない、チャンバー内を所定の圧力まで減圧する。その後、チャンバー内にArガスを導入し、常に10L/minでチャンバー上部よりArガスを流したままにする。このように常にガスを流し続けるのは、清浄なシリコン湯面を得るためである。
【0032】
次に、シリコン溶融用のヒーター28の制御温度を1500℃に設定し、坩堝25内のシリコン塊を完全に溶融状態にする。このとき、シリコン原料は溶融することで液面が低くなることから、シリコン融液の湯面が、坩堝25上面から所定の位置になるように、新たにシリコン粉末を投入する。シリコン溶融用のヒーター28は、一度に1500℃に上げるのではなく、約1300℃位まで10〜50℃/minの昇温速度で加熱し、その後、所定温度まで上げるのが好ましい。これは、急激に温度を上げると、坩堝の角部などに熱応力が集中的にかかり、坩堝の破損に繋がるためである。
【0033】
その後、シリコン融液温度を1420℃に設定し、30分間そのまま保持し、融液温度の安定化を図り、坩堝昇降機構(図示せず)などを用いて、坩堝25を所定の位置に移動させる。このときのシリコン融液温度は、1500℃以下が好ましい。融点未満に設定すると、坩堝壁から徐々に湯面が固まってくるが、シリコン融液は熱による対流が存在するために、長時間の生産を行わない時は、融点付近に設定することも可能である。また、1500℃を超えると、得られる板状シリコンの成長速度が極端に遅くなり、生産性が悪くなるため余り好ましくない。
【0034】
次に、板状シリコンを基板S上に成長させるが、基板の成長面が、シリコン融液に接触するように移動させる。このように、基板Sの成長面がシリコン融液に接することで、基板の表面に板状シリコンが成長する。基板S上に板状シリコンを作製するための軌道は、円軌道、楕円軌道であってもよい。特に、任意の軌道を実現できるような構造にすることで、得られる板状シリコンの歩留まりを向上させることができる。
【0035】
シリコン融液への進入時の基板の表面温度は、1100℃以下が好ましい。基板の温度が1100℃を超えると、板状シリコンの成長速度が遅くなるだけでなく、基板とシリコンが固着したり、生産性が悪くなるおそれが生じる。このように、基板の温度によって、得られる板状シリコンのばらつきが生じやすくなるため、板状シリコンを作製する装置にも、冷却機構と加熱機構の両方を備えている方が好ましい。
【0036】
本発明の板状シリコンの製造方法では、基板の形状に特徴があり、さらに基板の凹部が存在する面を進行方向前面にすることが特徴となる。このような基板を用いることにより、基板前方部にもシリコンが成長し、そのシリコンが基板前方部に引っかかるような形状をとることとなり、重力に逆らいやすい形状になる。すなわち、図3に示した板状シリコンのように、基板に引っかかるような部分が存在することになる。そのため、板状シリコンが基板から落下することがなくなり、歩留まりよく、板状シリコンを作製することが可能となり、チャンバー外へも容易に搬出することが可能となる。
【0037】
図2にあるように、基板Sと板状シリコン6はチャンバー内で剥離してもいいし、チャンバー外へ搬出しても構わない。特に、生産速度を上げるのであれば、チャンバー内で、基板Sから剥離し、板状シリコン6だけをチャンバー外へ搬出するのが好ましい。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
<板状シリコンの作製>
得られる板状シリコンの比抵抗が1Ω・cmになるようにボロンの濃度を調節したシリコン原料を、高純度カーボン製坩堝に保護された石英坩堝内に充填し、図2にあるような装置内に設置した。その後、本体チャンバー内の圧力を300Paになるまでロータリーポンプを用いて排気を行った。その後、6Paになるまで、メカニカルブースターポンプを用いてさらに排気を行った。
【0039】
次に、坩堝を坩堝加熱用のコイルに周波数4kHz、電力80kWのインバーターを用いて、4℃/minの昇温レートにて500℃まで昇温する。本体チャンバー内の圧力を6Pa、坩堝温度が500℃を維持した状態で90分間保持することにより、カーボン製坩堝に含まれている水分を除去する。このようなベーキングを経た後、一旦インバーターの出力を停止し、坩堝の加熱を停止する。この状態で、本体チャンバーの圧力を800hPaになるまでアルゴンガスを充填する。
【0040】
本体チャンバー内が800hPaに達した時点で、再び坩堝を昇温レート10℃/minにて加熱し、坩堝温度が1500℃になるまで昇温する。坩堝温度を1500℃で安定させることにより、坩堝内のシリコン塊はやがて全て溶融して、シリコン融液となる。シリコン塊が完全に溶解したのを確認し、シリコン湯面の高さが坩堝上端より15mmになるように、シリコン塊を追加投入する。追加投入したシリコン塊が全て溶融したことを確認したのち、坩堝の設定温度を1430℃まで落として、シリコン融液の温度安定化のため30分間その状態を保持する。
【0041】
次に、基板表面の温度が300℃となるように加熱を行い、シリコン融液に浸漬させる。この時、用いた基板は図1のように2分割されており、成長面1の大きさは縦105mm、横105mmであった。さらに、成長面1から凹部4までの長さL1は5mmであり、凹部の幅W1は60mmであった。また、成長面1には、規則的な凹凸があり、凸部のピッチは1.5mmであり、その形状はピラミッド形状であった。
【0042】
同じ基板を用いて、繰り返し用いて、50回の浸漬を行い、板状シリコンを50枚作製し、その周辺部をレーザーで切断し、100mm角の板状シリコンを50枚得た。得られた板状シリコンの板厚の平均値は、約350μmであった。
【0043】
<太陽電池の作製>
100mm角の板状シリコンから太陽電池の作製を行った。得られた板状シリコンは、硝酸とフッ酸の混合液で洗浄も兼ねてエッチングを行った。その後、水酸化ナトリウムを用いてアルカリエッチングを行った。その後、PSG(リンシリケートガラス)拡散により、得られた板状シリコンにn+層を形成した。n+層形成時に形成されたPSG膜をフッ酸により除去した後、プラズマCVDにより、反射防止膜になるシリコン窒化膜を形成した。次に、太陽電池の裏面側となる面にも、形成されているn+層を硝酸とフッ酸の混合溶液でエッチング除去し、p型基板を露出させた。その上に、Alペーストをスクリーン印刷することにより、裏面電極およびp+層を同時に形成した。次に、Agペーストを印刷することにより、受光面電極を形成した。その後、半田コートを行い、太陽電池を得た。得られた太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にて、太陽電池特性を行った。なお測定方法は、「結晶系太陽電池セル出力測定方法(JIS C 8913(1988))」に従った。
【0044】
得られた50個の太陽電池の測定結果の平均値は、短絡電流32.3(mA/cm2)、開放電圧585(mV)、曲線因子0.75、効率14.2(%)であった。
【0045】
(実施例2)
実施例1で用いた基板部材SAの表面を2mm研削して平面にし、その後、再加工して、ピラミッド形状を形成して用いたこと以外、全て実施例1と同じ方法で50回の浸漬を行い、板状シリコンを50枚作製し、50個の太陽電池の作製を行った。
【0046】
得られた板状シリコンの板厚の平均値は、約345μmであった。
得られた50個の太陽電池の測定結果の平均値は、短絡電流32.5(mA/cm2)、開放電圧584(mV)、曲線因子0.75、効率14.2(%)であった。
【0047】
(比較例1)
実施例1で用いた基板の形状と同じで、分割されていない一体型の基板を用いたこと以外、全て実施例1と同じ方法で50回の浸漬を行い、板状シリコンを50枚作製し、50個の太陽電池を作製した。ここで板状シリコンの板厚の平均値は、約345μmであった。
【0048】
得られた50個の太陽電池の測定結果の平均値は、短絡電流32.4(mA/cm2)、開放電圧583(mV)、曲線因子0.74、効率14.0(%)であった。
【0049】
次に、その基板の表面を2mm研削して平面にし、その後、再加工して、ピラミッド形状を形成して用いたこと以外、全て実施例1と同じ方法で50回の浸漬を行い、板状シリコンを作製した。得られた板状シリコンは、50回の浸漬回数に対して、80%の40枚であり、残りの10枚は基板から落下した。
【0050】
得られた板状シリコンの板厚の平均値は、約320μmであった。
これは、基板表面を研削し、基板表面と凹部との距離が変化したために、引っ掛かりが悪くなり、得られる板状シリコンの枚数が減少した。
【0051】
さらに、同じ軌道で浸漬したために、浸漬深さが浅くなったことから、得られる板状シリコンの厚みも薄くなった。
【0052】
(実施例3)
<板状シリコンの作製>
得られる板状シリコンの比抵抗が2Ω・cmになるようにボロンの濃度を調節したシリコン原料を、高純度カーボン製坩堝に充填し、図2にあるような装置内に設置した。その後、本体チャンバー内の圧力を300Paになるまでロータリーポンプを用いて排気を行った。その後、6Paになるまで、メカニカルブースターポンプを用いてさらに排気を行った。
【0053】
次に、坩堝を坩堝加熱用のコイルに周波数4kHz、電力80kWのインバーターを用いて、2℃/minの昇温レートにて800℃まで昇温する。本体チャンバー内の圧力を6Pa、坩堝温度が800℃を維持した状態で30分間保持することにより、カーボン製坩堝に含まれている水分を除去する。このようなベーキングを経た後、一旦インバーターの出力を停止し、坩堝の加熱を停止する。この状態で、本体チャンバーの圧力を800hPaになるまでアルゴンガスを充填する。
【0054】
本体チャンバー内が800hPaに達した時点で、再び坩堝を昇温レート30℃/minにて加熱し、坩堝温度が1550℃になるまで昇温する。坩堝温度を1550℃で安定させることにより、坩堝内のシリコン塊はやがて全て溶融して、シリコン融液となる。シリコン塊が完全に溶解したのを確認し、シリコン湯面の高さが坩堝上端より10mmになるように、シリコン塊を追加投入する。追加投入したシリコン塊が全て溶融したことを確認したのち、坩堝の設定温度を1410℃まで落として、シリコン融液の温度安定化のため30分間保持し、坩堝壁面からの凝固が進行しないのを確認する。
【0055】
次に、基板表面の温度が200℃となるように基板加熱を行い、シリコン融液に浸漬させる。この時、用いた基板は、図5のように2分割されており、基板SCの成長面1の大きさは縦160mm、横160mm、厚み30mmであった。また、基板SCの成長面1の表面には、規則的な凹凸があり、凸部のピッチは1.0mmであり、その形状はピラミッド形状であり、そのピラミッドの高さは0.2mmであった。
【0056】
同じ基板を用いて、10回の浸漬を行い、板状シリコンを10枚作製した。その後、板状シリコンの周辺部をレーザーで切断し、155mm角の板状シリコンを10枚得た。得られた板状シリコンの板厚の平均値は、約400μmであった。
【0057】
<太陽電池の作製>
155mm角の板状シリコンから太陽電池の作製を行った。ここで板状シリコンは、洗浄も兼ねて水酸化ナトリウムを用いてアルカリエッチングを行った。その後、PSG(リンシリケートガラス)拡散により、得られた板状シリコンにn+層を形成した。n+層形成時に形成された余分なPSG膜をフッ酸により除去した後、プラズマCVDにより、反射防止膜になるシリコン窒化膜を形成した。次に、太陽電池の裏面側となる面にも、形成されているn層を硝酸とフッ酸の混合溶液でエッチング除去し、p型基板を露出させた。その上に、Alペーストをスクリーン印刷することにより、裏面電極およびp+層を同時に形成した。次に、Agペーストを印刷することにより、受光面電極を形成した。その後、半田コートを行い、太陽電池を得た。
【0058】
得られた太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にて、太陽電池特性を行った。なお測定方法は、「結晶系太陽電池セル出力測定方法(JIS C 8913(1988))」に従った。
【0059】
得られた10個の太陽電池の測定結果の平均値は、短絡電流31.0(mA/cm2)、開放電圧590(mV)、曲線因子0.743、効率13.6(%)であった。
【0060】
(実施例4)
実施例3で用いた基板SCの表面を2mm研削して、再加工して用いたこと以外、全て実施例3と同じ方法で10回の浸漬を行い、板状シリコンを10枚作製し、10個の太陽電池の作製を行った。
【0061】
得られた板状シリコンの板厚の平均値は、約395μmであった。
得られた10個の太陽電池の測定結果の平均値は、短絡電流30.9(mA/cm2)、開放電圧586(mV)、曲線因子0.741、効率13.4(%)であった。
【0062】
なお、今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記に示した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等な意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、基板を用いた板状シリコンの製造方法において、高歩留まりで、スライス工程が不要な生産性の高い板状シリコンを作製することが可能となる。これは、成長面の表面と基板の凹部との位置関係を変更せずに、基板を浸漬させることができるようになり、浸漬軌道を適宜変更する必要性がなくなり、装置を煩雑にすることがなくなる。
【0064】
また、得られた板状シリコンを太陽電池に用いることにより、低コストで製品にばらつきの少ない太陽電池を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は2個の基板部材SAおよび基板部材SBが組み合わさった時の概略斜視図であり、(B)は2個の基板部材SAおよび基板部材SBの概略斜視図である。
【図2】板状シリコンの製造装置の概略斜視図である。
【図3】(A)は図1(A)における基板S上で成長した板状シリコンの一点鎖線Y1−Y1で切断した概略斜視図であり、(B)は図3(A)における一点鎖線X3−X3で切断した板状シリコンの断面図である。
【図4】図1における一点鎖線Y1−Y1で切断した基板の断面図である。
【図5】本発明における分割された基板の概略斜視図である。
【符号の説明】
1 成長面、2 周辺部、3 基板の進行方向前方部、4 凹部、5 堀構造、6 板状シリコン、S,SA,SB,SC,SD 基板部材。
Claims (9)
- シリコンを含有する融液に、基板を接触させ、該基板表面上に板状シリコンを成長させる板状シリコンの製造方法において、前記基板は、成長面と、その成長面の周辺部が、異なる基板部材で構成されていることを特徴とする基板。
- 周辺部には、凹部があることを特徴とする請求項1に記載の基板。
- 周辺部の凹部と成長面との高さ関係が変化しないことを特徴とする請求項2に記載の基板。
- 周辺部の凹部は、基板の進行方向前方部に形成されていることを特徴とする請求項3記載の基板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の基板を用いた板状シリコンの製造方法。
- 基板の進行方向の前方部分が、先にシリコン融液面に接触することを特徴とする請求項5記載の板状シリコンの製造方法。
- 成長面と周辺部が2分割以上された基板から、1枚の板状シリコンを得ることを特徴とする請求項5記載の板状シリコンの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の基板を用いて製造された板状シリコン。
- 請求項8の板状シリコンを用いた太陽電池。
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- 2003-03-04 JP JP2003057564A patent/JP2004262732A/ja not_active Withdrawn
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