JP2004261723A - 膨張性組成物及びこれを含む破砕剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、幅広い温度範囲で安定して高い膨張圧を生起でき、しかも高い膨張圧の短時間での発現を容易にした膨張性組成物、並びに施工開始から約12〜24時間で破砕完結する静的破砕に適し、広範囲な温度で使用でき、且つ注入充填した際に充填孔からの噴出も起らない破砕剤の提供を課題とする。
【解決手段】遊離生石灰の生成量が異なることによって区別される2種以上のクリンカの混合物であって、クリンカの一部が風化熟成過程を経たクリンカからなり、風化熟成過程を経たクリンカ(α)と風化熟成過程を経ないクリンカ(β)の含有重量比がα:β=1:0.5〜1.0であることを特徴とする膨張性組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】遊離生石灰の生成量が異なることによって区別される2種以上のクリンカの混合物であって、クリンカの一部が風化熟成過程を経たクリンカからなり、風化熟成過程を経たクリンカ(α)と風化熟成過程を経ないクリンカ(β)の含有重量比がα:β=1:0.5〜1.0であることを特徴とする膨張性組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は膨張圧の発現時間が概ね12時間以上継続する膨張性組成物及び脆性物体の12〜24時間での静的破砕に適した破砕剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
岩石やコンクリート等の脆性物体を穿孔し、孔中に水性スラリー化させた膨張性破砕剤を充填注入し、水和過程で発生する膨張圧によって脆性物体を破砕することが行なわれている。膨張性破砕剤中の主な膨張性反応成分としては、CaO結晶やカルシウムサルホアルミネート類等がある。このうちCaO結晶は特に水和膨張力が大きく、強い破砕力が得られるが、水和発熱の蓄積により蒸気圧上昇を起こし易く、これに伴う充填破砕剤の噴出を防ぐために、破砕剤の組成に調整が加えられてきた。このような組成調整された破砕剤として、CaO結晶(遊離生石灰)をアリット(3CaO・SiO2)などのカルシウムシリケートと共存させたクリンカ組成物(例えば、特許文献1参照)、硬焼生石灰にセメントや減水剤を加えたもの(例えば、特許文献2参照)などが知られている。一般に、この種の破砕剤は組成によって適正な使用温度範囲が定められている。これは、使用温度下限は脆性物体の破砕に有効な膨張圧が得られる限界から、また使用温度上限は破砕剤の噴出を防止できる水和反応温度の限界から必然的に定まったものであるが、使用温度の許容範囲は何れも比較的狭く、およそ10℃程の範囲でしかない。一方で、施工環境の変化に応じて使用温度の異なる多種類の破砕剤を揃える煩雑さを解消するため、使用温度範囲を数十℃に広げた破砕剤も開発されている。このような破砕剤として溶解度が高い温度依存性を示す珪酸ソーダなどの水和遅延成分を生石灰に加えたものが知られている。(例えば、特許文献3参照)。しかるに、珪酸ソーダなどの水和遅延成分を用いると、水和反応活性も低下し易くなるため、遊離生石灰の活発な水和反応によって生起される高い膨張圧も低下し易くなり、脆性物体を半日〜1日の間に滞りなく破砕することに支障を生じることがあった。
【0003】
【特許文献1】
特開昭55−142894号公報
【特許文献2】
特開昭56−67059号公報
【特許文献3】
特開平4−81636号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、幅広い温度範囲で安定して高い膨張圧を生起でき、しかも高い膨張圧の12時間以上の継続発現を容易にした膨張性組成物の提供、並びに施工開始からおよそ12〜24時間で完結する静的破砕に適し、広範囲な温度範囲で使用でき、且つ注入充填した際に充填孔からの噴出も起らない破砕剤の提供を課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題に対し鋭意検討した結果、クリンカ中の遊離生石灰生成量によって所望の膨張圧を発生する水和反応の適正温度範囲も異なるという知見から、何れも生石灰を含み、遊離生石灰生成量の異なる2種以上のクリンカを混合することで、幅広い温度領域で高い膨張圧を安定して確保できたこと、またクリンカの一部を風化熟成過程を経たクリンカにすると所望の膨張圧の発現時間を極めて容易に調整することができたことから、風化熟成過程を経たクリンカと風化熟成過程を経ないクリンカを特定の含有割合にすることで、使用温度に影響を及ぼすことなく脆性物体を施工開始からおよそ12〜24時間で破砕完結できるような膨張圧発現性が得られたこと等から、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、次の(1)〜(3)で表される膨張性組成物、及び(4)で表される破砕剤である。(1)遊離生石灰の生成量が異なることによって区別される2種以上のクリンカの混合物であって、クリンカの一部が風化熟成過程を経たクリンカからなり、風化熟成過程を経たクリンカ(α)と風化熟成過程を経ないクリンカ(β)の含有重量比がα:β=1:0.5〜1.0であることを特徴とする膨張性組成物。(2)混合物が遊離生石灰生成量70重量%以上のクリンカと遊離生石灰生成量70重量%未満のクリンカを含有し、かつ含有クリンカ全量の50重量%以上が遊離生石灰生成量60重量%以上のクリンカであることを特徴とする前記(1)記載の膨張性組成物。(3)クリンカの風化熟成が風化度で強熱減量10重量%以下となる風化熟成であることを特徴とする前記(1)又は(2)の膨張性組成物。(4)前記(1)〜(3)の何れかの膨張性組成物を含有してなる破砕剤。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の膨張性組成物を形成するクリンカは、少なくとも遊離生石灰(CaO結晶)が生成しているものであれば良く、例えばカルサイトなどの石灰質原料を約1350〜1450℃で焼成して遊離生石灰(CaO結晶)を生成させたものや、また少なくとも遊離生石灰が生成している限り、石灰質原料を主成分とし、これに例えば二酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、石膏(CaSO4)等の1種又は2種以上を混合したものの焼成物であっても良い。また、クリンカ中には遊離生石灰以外の生成物質、例えばアリット(3CaO・SiO2)結晶などが存在しても、種類等は特に制限されない。本発明の膨張性組成物は、このようなクリンカで遊離生石灰の生成量が異なる2種以上のクリンカを用い、それを混合した物である。また、本発明の膨張性組成物は前記クリンカ以外の成分の混入を妨げるものではない。この場合、膨張性組成物中に占めるクリンカの含有量が概ね50重量%以上確保されていれば良い。混入が許容されるクリンカ以外の成分は、例えば珪砂、石灰石砂、水硬性の各種セメント等を挙げることができる。
【0008】
前記クリンカは、含まれる遊離生石灰の量によって水和反応速度が異なり、遊離生石灰含有量が増加するに連れ、水和反応速度は速まる。本発明の膨張性組成物は、何れも水和反応速度が異なる2種以上のクリンカから形成されるため、各クリンカに基づいた個々の水和反応が、全体としては継続性のある水和反応の進行となって、これが温度依存性の少ない、またムラの無い膨張圧を生起することになり、幅広い使用温度で強力な膨張圧を安定して得ることができる。
【0009】
本発明の膨張性組成物は、実用上有用な幅広い温度範囲で高い膨張圧を安定して発現させるために、遊離生石灰生成量70重量%以上のクリンカと遊離生石灰生成量70重量%未満のクリンカを混合させたものが好ましい。より好ましくは遊離生石灰生成量70重量%以上のクリンカ含有率を全クリンカ量の70〜90重量%とする。また、遊離生石灰含有量が60重量%未満のクリンカでは約5℃以下の低温時には低い膨張圧しか生起できないため、このようなクリンカの混合使用は膨張性組成物中の全クリンカ量の50重量%未満とするのが好ましい。最も好ましくは、前記事項を満たした上で、混合すべき遊離生石灰生成量が一番多いクリンカと一番少ないクリンカの遊離生石灰生成量の差を25〜35重量%程度にすることで、およそ−5℃〜35℃の広範囲な温度でも高い膨張圧を安定して生起できる。
【0010】
本発明の膨張性組成物を形成するクリンカの一部は風化熟成過程を経たものとする。風化熟成したクリンカを風化熟成しないクリンカと併用することで、遊離生石灰由来の膨張圧を喪失することなく、活性度の高い遊離生石灰の激しい水和反応を緩和して偏在無く水和反応が進行できることから、膨張圧発現時間の調整を極めて容易に行なうことができる。本膨張性組成物の膨張圧によって脆性物体をおよそ12〜24時間で破砕完結できるような高い膨張圧発現性を得るには、クリンカ混合物中における風化熟成過程を経たクリンカの含有量(α)と風化熟成過程を経ないクリンカの含有量(β)の重量比を、α:β=1:0.5〜1.0とする。ここでβが0.5未満では脆性物体を破砕しうるような高い膨張圧を24時間以内に得ることができないため好ましくなく、またβが1.0を超えると幅広い温度で高い膨張圧を12〜24時間安定して発現させるのが困難なため好ましくない。風化熟成過程を経るクリンカは、膨張性組成物としての水和速度調整作用も付与することから水和活性が高い遊離生石灰生成量が多い方のクリンカとするのが好ましい。また、風化熟成は、風化度が強熱減量で10%以下にするのが好ましく、より好ましくは風化度が強熱減量で3〜7%のものとする。風化度が強熱減量で10%を超えると水和反応速度が著しく遅くなり所望の膨張圧が生起し難くなるため好ましくない。風化熟成の方法は特に限定されるものではないが、推奨される一例を示すと、焼成直後のクリンカに噴霧散水し、サイロ等の貯蔵庫に搬送して一定期間貯蔵することで風化熟成が成される。また、風化熟成するクリンカの粉末度は、ブレーン比表面積でおよそ1500cm2/g〜3000cm2/gにするのが望ましい。
【0011】
本膨張性組成物を形成するクリンカの粒径は、12時間以上継続する高い膨張圧を安定して得るため、できる限り2.5mm以下とすることが好ましい。2.5mmを超える粒径では反応活性の低下によって12時間以上継続する高い膨張圧が得難くなり、またこれを破砕剤成分に用いると注入性が低下することがあるので好ましくない。
【0012】
また、本発明の破砕剤は前記膨張性組成物を含有してなるものである。前記膨張性組成物に水を加えるだけでも脆性物体に対する破砕効果が得られるものの、他の成分の配合も本発明の効果を損なわない範囲で許容される。このうち、特に推奨される配合成分としては、対象となる脆性物体への注入充填性を高める上でる上で分散剤・減水剤の類を挙げることができ、このような分散剤・減水剤はセメント混和用として使用可能なものであれば何れのものでも用いることができる。また水和反応の調整機能を補う上でクエン酸や酒石酸ナトリウム等のオキシカルボン酸、デキストリン類、糖類、又は炭酸アルカリ等の水和反応調整剤を配合使用しても良い。この他、破砕剤を水性スラリー化した際の材料分離の発生を抑制する必要がある場合には石灰石砂、珪石砂、粘土鉱物粉、ポゾラン反応性物質等の水硬性を有しない無機粉末の配合を、また破砕剤と破砕対象物の破砕剤充填孔壁との付着状態を緊密にし破砕効果をより確実なものとする上でセメント等の水硬性物質等も配合許容成分として例示することができる。
【0013】
本発明の破砕剤は、使用に際しては、本破砕剤100重量部に水約28〜32重量部を加えて水性スラリー化し、このスラリーを破砕対象とする脆性物体の穿孔部に注入すれば良い。この際、穿孔部の孔径等は特に制限されない。またスラリー化せず例えば乾粉状の破砕剤として水溶性の容器や袋に充填し、これを所望の破砕予定箇所に設置し、外部から水分を補給する破砕工法に用いることもできる。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
次のクリンカA〜C、メラミン系高性能減水剤(昭和電工株式会社製;品名「メルメントF10M」)、クエン酸(昭和化工株式会社製)を表1に示す配合割合で混練器に一括投入し、これに水配合比が30重量%となるよう水を加えて約1分間混練を行ない、スラリーを作製した。
【0015】
クリンカA・・・化学成分がCaO:95.1重量%、AI2O3:0.48重量%、SiO2:2.1重量%、Fe2O3:0.16重量%、SO3:0.4重量%のクリンカを比表面積2300cm2/g程度に粉砕後、強熱減量値で6%となるよう散水して強制風化したもので、遊離生石灰含有量が約86重量%。
クリンカB・・・化学成分がCaO:95.1重量%、AI2O3:0.48重量%、SiO2:2.1重量%、Fe2O3:0.16重量%、SO3:0.4重量%のクリンカを粉砕分級し、粒径2.5mm未満に調整したもので、遊離生石灰含有量が約86重量%。
クリンカC・・・化学成分がCaO:85.8重量%、AI2O3:1.7重量%、SiO2:7.3重量%、Fe2O3:0.9重量%、SO3:1.6重量%のクリンカを比表面積2100cm2/g程度に粉砕したもので、遊離生石灰含有量が約56重量%。
【0016】
【表1】
【0017】
次いで、地面に設置した各辺600mmの立方体形のコンクリート硬化体の上面のほぼ中央部に直径40mmで深さ400mmの孔を穿孔し、この孔に前記スラリーを流し込み、温度を変化させた際のコンクリート硬化体の破砕が完結するまでの時間及び注入後の孔からの注入スラリーの噴出有無を調べた。また、孔へのスラリー流し込みに先立ち、当該温度でのスラリーの材料分離有無を目視観察によってスラリー表面にブリージング水が発生しているか否かで判断した。以上の結果を表2に表す。
【0018】
【表2】
【0019】
【発明の効果】
本発明による膨張性組成物を用いた破砕剤は、例えば−5℃〜35℃という広範囲な温度でも使用可能なため、施工に際し、使用する環境や気候等の変化に対応して多種類の破砕剤を用意する必要が無くなる他、スラリー化しても材料分離を起こすことなく、脆性物体中への注入・充填性にも優れ、また充填孔からの噴出することもなく、注入後は約12〜24時間で殆どの脆性物体を破砕完結することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は膨張圧の発現時間が概ね12時間以上継続する膨張性組成物及び脆性物体の12〜24時間での静的破砕に適した破砕剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
岩石やコンクリート等の脆性物体を穿孔し、孔中に水性スラリー化させた膨張性破砕剤を充填注入し、水和過程で発生する膨張圧によって脆性物体を破砕することが行なわれている。膨張性破砕剤中の主な膨張性反応成分としては、CaO結晶やカルシウムサルホアルミネート類等がある。このうちCaO結晶は特に水和膨張力が大きく、強い破砕力が得られるが、水和発熱の蓄積により蒸気圧上昇を起こし易く、これに伴う充填破砕剤の噴出を防ぐために、破砕剤の組成に調整が加えられてきた。このような組成調整された破砕剤として、CaO結晶(遊離生石灰)をアリット(3CaO・SiO2)などのカルシウムシリケートと共存させたクリンカ組成物(例えば、特許文献1参照)、硬焼生石灰にセメントや減水剤を加えたもの(例えば、特許文献2参照)などが知られている。一般に、この種の破砕剤は組成によって適正な使用温度範囲が定められている。これは、使用温度下限は脆性物体の破砕に有効な膨張圧が得られる限界から、また使用温度上限は破砕剤の噴出を防止できる水和反応温度の限界から必然的に定まったものであるが、使用温度の許容範囲は何れも比較的狭く、およそ10℃程の範囲でしかない。一方で、施工環境の変化に応じて使用温度の異なる多種類の破砕剤を揃える煩雑さを解消するため、使用温度範囲を数十℃に広げた破砕剤も開発されている。このような破砕剤として溶解度が高い温度依存性を示す珪酸ソーダなどの水和遅延成分を生石灰に加えたものが知られている。(例えば、特許文献3参照)。しかるに、珪酸ソーダなどの水和遅延成分を用いると、水和反応活性も低下し易くなるため、遊離生石灰の活発な水和反応によって生起される高い膨張圧も低下し易くなり、脆性物体を半日〜1日の間に滞りなく破砕することに支障を生じることがあった。
【0003】
【特許文献1】
特開昭55−142894号公報
【特許文献2】
特開昭56−67059号公報
【特許文献3】
特開平4−81636号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、幅広い温度範囲で安定して高い膨張圧を生起でき、しかも高い膨張圧の12時間以上の継続発現を容易にした膨張性組成物の提供、並びに施工開始からおよそ12〜24時間で完結する静的破砕に適し、広範囲な温度範囲で使用でき、且つ注入充填した際に充填孔からの噴出も起らない破砕剤の提供を課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題に対し鋭意検討した結果、クリンカ中の遊離生石灰生成量によって所望の膨張圧を発生する水和反応の適正温度範囲も異なるという知見から、何れも生石灰を含み、遊離生石灰生成量の異なる2種以上のクリンカを混合することで、幅広い温度領域で高い膨張圧を安定して確保できたこと、またクリンカの一部を風化熟成過程を経たクリンカにすると所望の膨張圧の発現時間を極めて容易に調整することができたことから、風化熟成過程を経たクリンカと風化熟成過程を経ないクリンカを特定の含有割合にすることで、使用温度に影響を及ぼすことなく脆性物体を施工開始からおよそ12〜24時間で破砕完結できるような膨張圧発現性が得られたこと等から、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、次の(1)〜(3)で表される膨張性組成物、及び(4)で表される破砕剤である。(1)遊離生石灰の生成量が異なることによって区別される2種以上のクリンカの混合物であって、クリンカの一部が風化熟成過程を経たクリンカからなり、風化熟成過程を経たクリンカ(α)と風化熟成過程を経ないクリンカ(β)の含有重量比がα:β=1:0.5〜1.0であることを特徴とする膨張性組成物。(2)混合物が遊離生石灰生成量70重量%以上のクリンカと遊離生石灰生成量70重量%未満のクリンカを含有し、かつ含有クリンカ全量の50重量%以上が遊離生石灰生成量60重量%以上のクリンカであることを特徴とする前記(1)記載の膨張性組成物。(3)クリンカの風化熟成が風化度で強熱減量10重量%以下となる風化熟成であることを特徴とする前記(1)又は(2)の膨張性組成物。(4)前記(1)〜(3)の何れかの膨張性組成物を含有してなる破砕剤。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の膨張性組成物を形成するクリンカは、少なくとも遊離生石灰(CaO結晶)が生成しているものであれば良く、例えばカルサイトなどの石灰質原料を約1350〜1450℃で焼成して遊離生石灰(CaO結晶)を生成させたものや、また少なくとも遊離生石灰が生成している限り、石灰質原料を主成分とし、これに例えば二酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、石膏(CaSO4)等の1種又は2種以上を混合したものの焼成物であっても良い。また、クリンカ中には遊離生石灰以外の生成物質、例えばアリット(3CaO・SiO2)結晶などが存在しても、種類等は特に制限されない。本発明の膨張性組成物は、このようなクリンカで遊離生石灰の生成量が異なる2種以上のクリンカを用い、それを混合した物である。また、本発明の膨張性組成物は前記クリンカ以外の成分の混入を妨げるものではない。この場合、膨張性組成物中に占めるクリンカの含有量が概ね50重量%以上確保されていれば良い。混入が許容されるクリンカ以外の成分は、例えば珪砂、石灰石砂、水硬性の各種セメント等を挙げることができる。
【0008】
前記クリンカは、含まれる遊離生石灰の量によって水和反応速度が異なり、遊離生石灰含有量が増加するに連れ、水和反応速度は速まる。本発明の膨張性組成物は、何れも水和反応速度が異なる2種以上のクリンカから形成されるため、各クリンカに基づいた個々の水和反応が、全体としては継続性のある水和反応の進行となって、これが温度依存性の少ない、またムラの無い膨張圧を生起することになり、幅広い使用温度で強力な膨張圧を安定して得ることができる。
【0009】
本発明の膨張性組成物は、実用上有用な幅広い温度範囲で高い膨張圧を安定して発現させるために、遊離生石灰生成量70重量%以上のクリンカと遊離生石灰生成量70重量%未満のクリンカを混合させたものが好ましい。より好ましくは遊離生石灰生成量70重量%以上のクリンカ含有率を全クリンカ量の70〜90重量%とする。また、遊離生石灰含有量が60重量%未満のクリンカでは約5℃以下の低温時には低い膨張圧しか生起できないため、このようなクリンカの混合使用は膨張性組成物中の全クリンカ量の50重量%未満とするのが好ましい。最も好ましくは、前記事項を満たした上で、混合すべき遊離生石灰生成量が一番多いクリンカと一番少ないクリンカの遊離生石灰生成量の差を25〜35重量%程度にすることで、およそ−5℃〜35℃の広範囲な温度でも高い膨張圧を安定して生起できる。
【0010】
本発明の膨張性組成物を形成するクリンカの一部は風化熟成過程を経たものとする。風化熟成したクリンカを風化熟成しないクリンカと併用することで、遊離生石灰由来の膨張圧を喪失することなく、活性度の高い遊離生石灰の激しい水和反応を緩和して偏在無く水和反応が進行できることから、膨張圧発現時間の調整を極めて容易に行なうことができる。本膨張性組成物の膨張圧によって脆性物体をおよそ12〜24時間で破砕完結できるような高い膨張圧発現性を得るには、クリンカ混合物中における風化熟成過程を経たクリンカの含有量(α)と風化熟成過程を経ないクリンカの含有量(β)の重量比を、α:β=1:0.5〜1.0とする。ここでβが0.5未満では脆性物体を破砕しうるような高い膨張圧を24時間以内に得ることができないため好ましくなく、またβが1.0を超えると幅広い温度で高い膨張圧を12〜24時間安定して発現させるのが困難なため好ましくない。風化熟成過程を経るクリンカは、膨張性組成物としての水和速度調整作用も付与することから水和活性が高い遊離生石灰生成量が多い方のクリンカとするのが好ましい。また、風化熟成は、風化度が強熱減量で10%以下にするのが好ましく、より好ましくは風化度が強熱減量で3〜7%のものとする。風化度が強熱減量で10%を超えると水和反応速度が著しく遅くなり所望の膨張圧が生起し難くなるため好ましくない。風化熟成の方法は特に限定されるものではないが、推奨される一例を示すと、焼成直後のクリンカに噴霧散水し、サイロ等の貯蔵庫に搬送して一定期間貯蔵することで風化熟成が成される。また、風化熟成するクリンカの粉末度は、ブレーン比表面積でおよそ1500cm2/g〜3000cm2/gにするのが望ましい。
【0011】
本膨張性組成物を形成するクリンカの粒径は、12時間以上継続する高い膨張圧を安定して得るため、できる限り2.5mm以下とすることが好ましい。2.5mmを超える粒径では反応活性の低下によって12時間以上継続する高い膨張圧が得難くなり、またこれを破砕剤成分に用いると注入性が低下することがあるので好ましくない。
【0012】
また、本発明の破砕剤は前記膨張性組成物を含有してなるものである。前記膨張性組成物に水を加えるだけでも脆性物体に対する破砕効果が得られるものの、他の成分の配合も本発明の効果を損なわない範囲で許容される。このうち、特に推奨される配合成分としては、対象となる脆性物体への注入充填性を高める上でる上で分散剤・減水剤の類を挙げることができ、このような分散剤・減水剤はセメント混和用として使用可能なものであれば何れのものでも用いることができる。また水和反応の調整機能を補う上でクエン酸や酒石酸ナトリウム等のオキシカルボン酸、デキストリン類、糖類、又は炭酸アルカリ等の水和反応調整剤を配合使用しても良い。この他、破砕剤を水性スラリー化した際の材料分離の発生を抑制する必要がある場合には石灰石砂、珪石砂、粘土鉱物粉、ポゾラン反応性物質等の水硬性を有しない無機粉末の配合を、また破砕剤と破砕対象物の破砕剤充填孔壁との付着状態を緊密にし破砕効果をより確実なものとする上でセメント等の水硬性物質等も配合許容成分として例示することができる。
【0013】
本発明の破砕剤は、使用に際しては、本破砕剤100重量部に水約28〜32重量部を加えて水性スラリー化し、このスラリーを破砕対象とする脆性物体の穿孔部に注入すれば良い。この際、穿孔部の孔径等は特に制限されない。またスラリー化せず例えば乾粉状の破砕剤として水溶性の容器や袋に充填し、これを所望の破砕予定箇所に設置し、外部から水分を補給する破砕工法に用いることもできる。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
次のクリンカA〜C、メラミン系高性能減水剤(昭和電工株式会社製;品名「メルメントF10M」)、クエン酸(昭和化工株式会社製)を表1に示す配合割合で混練器に一括投入し、これに水配合比が30重量%となるよう水を加えて約1分間混練を行ない、スラリーを作製した。
【0015】
クリンカA・・・化学成分がCaO:95.1重量%、AI2O3:0.48重量%、SiO2:2.1重量%、Fe2O3:0.16重量%、SO3:0.4重量%のクリンカを比表面積2300cm2/g程度に粉砕後、強熱減量値で6%となるよう散水して強制風化したもので、遊離生石灰含有量が約86重量%。
クリンカB・・・化学成分がCaO:95.1重量%、AI2O3:0.48重量%、SiO2:2.1重量%、Fe2O3:0.16重量%、SO3:0.4重量%のクリンカを粉砕分級し、粒径2.5mm未満に調整したもので、遊離生石灰含有量が約86重量%。
クリンカC・・・化学成分がCaO:85.8重量%、AI2O3:1.7重量%、SiO2:7.3重量%、Fe2O3:0.9重量%、SO3:1.6重量%のクリンカを比表面積2100cm2/g程度に粉砕したもので、遊離生石灰含有量が約56重量%。
【0016】
【表1】
【0017】
次いで、地面に設置した各辺600mmの立方体形のコンクリート硬化体の上面のほぼ中央部に直径40mmで深さ400mmの孔を穿孔し、この孔に前記スラリーを流し込み、温度を変化させた際のコンクリート硬化体の破砕が完結するまでの時間及び注入後の孔からの注入スラリーの噴出有無を調べた。また、孔へのスラリー流し込みに先立ち、当該温度でのスラリーの材料分離有無を目視観察によってスラリー表面にブリージング水が発生しているか否かで判断した。以上の結果を表2に表す。
【0018】
【表2】
【0019】
【発明の効果】
本発明による膨張性組成物を用いた破砕剤は、例えば−5℃〜35℃という広範囲な温度でも使用可能なため、施工に際し、使用する環境や気候等の変化に対応して多種類の破砕剤を用意する必要が無くなる他、スラリー化しても材料分離を起こすことなく、脆性物体中への注入・充填性にも優れ、また充填孔からの噴出することもなく、注入後は約12〜24時間で殆どの脆性物体を破砕完結することができる。
Claims (4)
- 遊離生石灰の生成量が異なることによって区別される2種以上のクリンカの混合物であって、クリンカの一部が風化熟成過程を経たクリンカからなり、風化熟成過程を経たクリンカ(α)と風化熟成過程を経ないクリンカ(β)の含有重量比がα:β=1:0.5〜1.0であることを特徴とする膨張性組成物。
- 混合物が遊離生石灰生成量70重量%以上のクリンカと遊離生石灰生成量70重量%未満のクリンカを含有し、かつ含有クリンカ全量の50重量%以上が遊離生石灰生成量60重量%以上のクリンカであることを特徴とする請求項1記載の膨張性組成物。
- クリンカの風化熟成が風化度で強熱減量10重量%以下となる風化熟成であることを特徴とする請求項1又は2記載の膨張性組成物。
- 請求項1〜3の何れかの膨張性組成物を含有してなる破砕剤。
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CN112024104A (zh) * | 2020-08-19 | 2020-12-04 | 高检平 | 一种水溶肥使用前处理装置 |
-
2003
- 2003-03-03 JP JP2003055263A patent/JP2004261723A/ja active Pending
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