JP2004259993A - 可変容量コンデンサ及びそれを用いた高周波部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、高周波信号による容量変化が小さくかつ、直流バイアスによる容量変化は大きい小形な可変容量薄膜コンデンサを提供し、さらに、この可変容量薄膜コンデンサ素子を利用した高周波部品を提供する。
【解決手段】入力端子Iと出力端子Oとの間に、印加電圧によって容量が変化する第1乃至第3の可変容量素子C1〜C3を順次直列接続して成る可変容量コンデンサにおいて、入力電極4aと出力電極4bとの間に、入出力電極4a、4bの配列方向と直交する方向に第1の接続電極3a、第2の接続電極3bを配置した。
【選択図】図1
【解決手段】入力端子Iと出力端子Oとの間に、印加電圧によって容量が変化する第1乃至第3の可変容量素子C1〜C3を順次直列接続して成る可変容量コンデンサにおいて、入力電極4aと出力電極4bとの間に、入出力電極4a、4bの配列方向と直交する方向に第1の接続電極3a、第2の接続電極3bを配置した。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は直流電圧の印加により容量を変化することができ、高周波入力電力に対しても低歪み、または高耐電力を実現出来るコンデンサに関するものである。また、接続電極、入出力電極、誘電体、インピーダンス素子を薄膜技法により形成した可変容量コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、薄膜コンデンサは、上下電極及び誘電体層が薄膜で形成された薄膜コンデンサがある。これは通常、電気絶縁性の支持基板上に薄膜状の下部電極、誘電体層、上部電極が順に積層されている。このような薄膜コンデンサでは下部電極、上部電極が各々スパッタ法、蒸着法、イオンプレ−ティング法などで形成されており、誘電体層もスパッタ、ゾルゲル法などで形成されている。このような薄膜コンデンサの製造では、以下のようにフォトリソグラフィが用いられる。まず、絶縁性支持基板上の全面に下部電極となる導体層を形成した後、必要部のみレジストで覆い、その後、ドライエッチングあるいはウェットエッチングを行い、不要部を除去して、所定形状の下部誘電体層を形成する。つぎに、支持基板上に薄膜誘電体層を全面に形成し、下部電極と同様に、不要部を除去し所定形状の誘電体層を形成する。最後に上部電極を全面に形成し、同様に、不要部を除去し所定形状の上部電極を形成する。この後、保護膜層やハンダ端子部を形成することにより、表面実装が可能になる。また、誘電体層の材料として(Bax,Sr1−x)yTi1−yO3z誘電材料を用いて、上部電極と下部電極との間に所定電位を与えて、誘電体層の誘電率を変化させて、容量を変化させる薄膜コンデンサも同様な構造である。直流バイアスの印加により容量を変化させる可変容量薄膜コンデンサとしては、例えば特許文献(特開平11−260667号)に開示されている。
【0003】
薄膜コンデンサでは直流バイアスを印加することで誘電率が変化し、その結果として容量が変化する。容量の変化は高周波領域にも及び、高周波でも可変容量薄膜コンデンサとして利用可能となる。この様な高周波での可変容量薄膜コンデンサの容量変化を利用して、直流バイアスの印加により周波数特性を変化できる電子部品が得られる。例えば、上述の可変容量薄膜コンデンサと薄膜インダクタを組み合わせて、LC共振回路の一部に用いた電圧制御型薄膜共振器では、直流バイアスの印加により共振周波数を変化させることができる。また、複数のLC共振回路を結合するための結合素子として可変容量薄膜コンデンサを用いた電圧制御型薄膜帯域通過フィルタでは、直流バイアスの印加により通過帯域を変化させることができる。このような高周波部品に関しては例えば特許文献2(特表平8−509103号)に開示されている。
【0004】
[特許文献1]
特開平11−260667号公報
[特許文献2]
特表平8−509103号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様な可変容量薄膜コンデンサを高周波用電子部品で用いる場合、可変容量薄膜コンデンサには可変容量用の直流バイアス電圧と高周波信号の電圧(高周波電圧)が同時に印加されることになる。高周波電圧が高い場合は高周波電圧によっても可変容量薄膜コンデンサの容量が変化するようになる。この様な可変容量薄膜コンデンサを高周波用電子部品に用いると、高周波電圧によるコンデンサの容量変化のため波形歪、相互変調歪みノイズが生じる様になる。波形歪、相互変調歪みノイズを小さくするためには高周波電界強度を下げ高周波電圧による容量変化を小さくする必要があり、その為には誘電体層の厚みを厚くすることが有効であるが、誘電体層の厚みを厚くすると直流電界強度も小さくなるため容量変化率も下がってしまう問題があった。
【0006】
また、高周波ではコンデンサには電流が流れやすくなるため、コンデンサを高周波で使用中にはコンデンサの損失抵抗によりコンデンサが発熱し破壊してしまう。この様な耐電力の問題に対しても誘電体の厚みを厚くし、単位体積当たりの発熱量を小さくすることが有効であるが、前述のように誘電体層の厚みを厚くすると直流電界強度も小さくなるため直流バイアスによる容量変化率も下がってしまう問題があった。
【0007】
また、上述の従来技術では2層、3層と多数積層するため、複数の作業工程があり大量生産しにくく、集積化、コスト、信頼性に問題があった。
【0008】
本発明は上述の問題に鑑みて案出されたものであり、その目的は高周波信号による容量変化が小さく、かつ直流バイアスによる容量変化は大きいようなコンデンサかつ集積化または小型化、低コスト、高信頼性を実現する可変容量コンデンサを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに別の目的は上述の薄膜コンデンサを用いて相互変調低歪みを実現し、耐電力、耐電圧に優れ、温度特性の良い高周波用電圧制御型薄膜共振器、電圧制御型薄膜高周波フィルタ、電圧制御型整合回路素子および電圧制御型薄膜アンテナ共用器などの高周波部品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持基板上に、一方電極と他方電極とで薄膜誘電体層を挟持してなる第1乃至第3の可変容量素子を互いに直列接続するとともに、前記第1の可変容量素子と前記第2の可変容量素子とを第1のインピーダンス素子で、前記第2の可変容量素子と前記第3の可変容量素子とを第2のインピーダンス素子で接続して成る可変容量コンデンサであって、
前記支持基板上に、第1の可変容量素子の一方電極を構成する入力電極と、第3の可変容量素子の他方電極を構成する出力電極と、該入出力電極間に該入力電極の配列方向と直交するように、前記第1の可変容量素子の他方電極及び前記第2の可変容量素子の一方電極を構成する第1の接続電極と、前記第2の可変容量素子の他方電極及び前記第3の可変容量素子の一方電極を構成する第2の接続電極とを夫々配置するとともに、
前記入力電極と前記第1の接続電極との間に前記第1の可変容量素子を構成する誘電体層を、前記第1の接続電極と前記第2の接続電極との間に前記第2の可変容量素子を構成する誘電体層を、前記第2の接続電極と前記出力電極との間に前記第3の可変容量素子を構成する誘電体層を夫々配置し、
且つ前記入力電極と前記第2の接続電極との間に第1のインピーダンス素子を、前記第1の接続電極と前記出力電極との間に第2のインピーダンス素子を夫々配置した可変容量コンデンサである。
【0011】
前記入力電極と前記出力電極とは、前記支持基板の中心に対して、概略対称に配置されている。
【0012】
前記第1乃至第3の可変容量素子を構成する誘電体層は、一方電極が下部電極となり、他方電極が上部電極となって、その電極間に配置されている。
【0013】
前記インピーダンス素子は、抵抗成分を有している。
【0014】
前記インピーダンス素子は、インダクタンス成分を有している。
【0015】
接続電極は、高周波信号の信号入力端子と直流電圧の供給端子とが共用されている。
【0016】
前記支持基板は、ほぼ平らな表面を持ち、約30未満の誘電率を有する。
【0017】
前記基板は、MgO、アルミナ、サファイア、LaAlO3のいずれかである。
【0018】
前記誘電体は、(Bax,Sr1−x)yTi1−yO3zからなる。
【0019】
前記接続電極かつ入出力電極は、Au,Pt,Al,Cuなどの金属からなる。
【0020】
前記インピーダンス素子は、Ni−Cr合金あるいはFe−Cr−Ar合金などの高抵抗合金薄膜からなる。
【0021】
前記インピーダンス素子は、Au,Pt,Tiなどの貴金属薄膜からなる。
【0022】
前記インピーダンス素子は、Ni,Feなどの強磁性体薄膜からなる。
【0023】
前記インピーダンス素子は、酸化物導電体材料、窒化物導電体材料又は半導体材料からなる。
【0024】
前記インピーダンス素子は、直線状、ループ状、ミアンダ状、あるいはスパイラル状である。
【0025】
また、このような可変容量コンデンサをLC共振回路の一部として、また、LC共振回路を接合する素子として用いた高周波部品である。
【0026】
【作用】
本発明の可変容量コンデンサは、支持基板上に、第1の可変容量素子の一方電極を構成する入力電極と、第3の可変容量素子の他方電極を構成する出力電極と、該入出力電極間と直交に、前記第1の可変容量素子の他方電極及び前記第2の可変容量素子の一方電極を構成する第1の接続電極と、前記第2の可変容量素子の他方電極及び前記第3の可変容量素子の一方電極を構成する第2の接続電極とを夫々独立して配置するとともに、
前記入力電極と前記第1の接続電極との横方向間に前記第1の可変容量素子を構成する誘電体層を、前記第1の接続電極と前記第2の接続電極との縦方向間に前記第2の可変容量素子を構成する誘電体層を、前記第2の接続電極と前記出力電極との横方向間に前記第3の可変容量素子を構成する誘電体層を夫々配置し、且つ前記入力電極と前記第2の接続電極との横方向間に第1のインピーダンス素子を、前記第1の接続電極と前記出力電極との間に第2のインピーダンス素子を夫々配置したことを特徴とする可変容量コンデンサである。このような電極の配列により、浮遊容量値は小さくなる。また、直列に接続する可変容量素子に印加される高周波電圧がそれぞれの容量素子に分圧されるため個々の容量素子に印加される電圧は減少する。その結果、高周波信号による容量の変化を小さく抑えることができる。また、インピーダンス素子を設けることにより、直流バイアスは個々の誘電体に独立に印加することができるため、直流バイアスによる容量の変化は大きく保つことができる。また、入出力電極の面積が広いため、半田の面積が大きく出来るので実装が容易になる。
【0027】
また、入力電極と出力電極とが、支持基板の中心に対して、概略対称に配置されていることを特徴とする可変容量コンデンサである。このことより、特に規則正しく配列させることができ、小型化にも寄与できる。
【0028】
第1乃至第3の可変容量素子を構成する誘電体層が、一方電極が下部電極となり、他方電極が上部電極となって、その電極間に配置されていることを特徴とする可変容量コンデンサである。このことより、誘電体層の対向面積を任意に変えられ、また、安定したバアイアス電圧を印加することができ、大容量の可変容量コンデンサとすることができる。
【0029】
また、インピーダンス素子が少なくとも抵抗成分あるいは/およびインダクタンス成分からなることを特徴とする可変容量コンデンサであることにより、インピーダンス素子に高周波信号が入り込むことはなく、また、直流電流は可変容量素子を流れないため、高周波的には直列に接続される可変容量素子で、直流的には並列接続される可変容量素子と見ることができる。
【0030】
また、可変容量コンデンサを構成する各可変容量素子同士の接続がインピーダンス素子により交互に印加電圧の供給するため、接続された全ての可変容量素子に印加電圧が安定して供給できるため、個々の可変容量素子の容量変化率を最大限に利用できる。
【0031】
可変容量コンデンサを用いた高周波の入力端子と直流電圧の供給端子を共通化しているため、別途端子を設けること無く、通常のコンデンサとしての取扱うことができる。
【0032】
支持基板は、ほぼ平らな表面を持ち約30未満の誘電率を用いることにより、密着性が良く、誘電体の誘電率に影響を及ぼさないため、可変容量コンデンサの容量変化率を最大限に利用できる。
【0033】
支持基板は、MgO、アルミナ、サファイア、LaAlO3を用いることにより、高温プロセスが可能となる。
【0034】
また、電極かつ入出力電極は、Au,Pt,Alなどの金属を用いることにより、低抵抗が実現でき、高Q化が可能となる。
【0035】
また、可変容量コンデンサにおいて、各可変容量素子が支持基板上に誘電体層、電極を順次被着してなり、プロセスの簡単化また省略化が出来ることにより、低コスト、高信頼性等が実現できる。
【0036】
また、前記誘電体が(Bax,Sr1−x)yTi1−yO3zからなり、コンデンサ素子の容量変化率が大きく損失が小さい可変容量コンデンサを作製することができる。
【0037】
また、前記インピーダンス素子の全てまたは一部がNi−Cr合金あるいはFe−Cr−Ar合金などの高抵抗合金薄膜からなることを特徴とする薄膜コンデンサ素子で、高抵抗の合金薄膜を用いることで、短い抵抗線でも高抵抗が達成でき、小型化、低コスト等の可変容量コンデンサを作製することができる。
【0038】
また、インピーダンス素子の全てまたは一部がAu、Ptなどの貴金属薄膜からなり、金属薄膜をスパッタ法、蒸着法などでごく薄く成膜した場合、完全な膜にはならず、微小な島状の金属塊からなる膜質の悪い膜になり、膜厚が薄くなると抵抗値が急激に高くなる。この性質を用いて、抵抗率の小さな貴金属類を用いることで、高抵抗で耐酸化性に優れたインピーダンス成分を有する導体膜(インピーダンス素子)が得られる。
【0039】
また、前記インピーダンス素子の全てまたは一部がNi,Fe等の強磁性体薄膜からなる。このことから、強磁性体では透磁率μが大きいため、δ=1/(πfμσ)1/2で表わされる表皮深さが常磁性体よりも小さくなる傾向がある。(ただし、fは周波数、σは導電率である。)このため、機械的に安定な厚みの膜を作製しても、高周波では表皮深さが薄くなり、抵抗が高くなるため高抵抗の膜を作製できる。
【0040】
また、前記インピーダンス素子の全てまたは一部が酸化物伝導体、窒化物導伝体または半導体からなる。このことにより絶縁層または支持基板との密着性の良いインピーダンス素子を作製することができる。
【0041】
また、前記インピーダンス素子が直線状、ループ状、メアンダ状あるいはスパイラル状であることを特徴とする可変容量薄膜コンデンサ素子である。インピーダンス素子を直線状とすることよりインピーダンス素子にインダクタンス成分を具備させることができ、インピーダンス成分とした時と同様の効果が得られる。
【0042】
可変容量コンデンサは集積化、小型化等が容易なため、フィルタやデュプレクサなどの高周波部品に用いることが容易である。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の可変容量コンデンサを図面に基づいて説明する。
【0044】
図1を用いて互いに直列接続された可変容量素子C1〜C3を具備する可変容量コンデンサを説明する。尚、図1は、各膜の構造が明確にわかるように透視状態の平面図である。図2は、図1のA−A‘の透視断面図を示している。
【0045】
図1及び図2において1は支持基板であり、2は誘電体層(第1の誘電体を2a、第2の誘電体を2b、第3の誘電体を2cで示す)であり、3は電極(第1の接続電極を3a、第2の接続電極を3bで示す)であり、4は入出力電極(入力電極を4a、出力電極第を4bで示す)であり、5はインピーダンス素子(第1のインピーダンス素子を5a、第2のインピーダンス素子を5bで示す)であり、6は端子部(入力端子I側を6a、出力端子O側を6bと付す)である。そして、図中C1〜C3は、直流電圧によって容量成分を調整できる可変容量素子を示す。
【0046】
支持基板1はアルミナなどのセラミック基板、サファイアなどの単結晶基板などである。そして、支持基板1の表面には、誘電体層2が形成されて、電極3かつ入出力電極4は支持基板1上の全面に同一バッチで形成されている。まず、誘電体層2のスパッタをし、フォトリソグラフィを用いて所定形状に物理的または化学的にエッチングして、所定形状の誘電体層2a〜2cを形成し、その後、電極3かつ入出力電極4のスパッタ終了後にフォトリソグラフィを用いて所定形状に物理的または化学的にエッチングして、所定形状の接続電極3a〜3b、入出力電極され、その後にインピーダンス素子5a、5bをスパッタ終了後にフォトリソグラフィを用いて所定形状に物理的エッチングされる。
【0047】
第1乃至第3の誘電体層2a、2b、2cは、少なくともBa、Sr、Tiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶粒子から成る高誘電率の誘電体材料である。この誘電体層2は、上述の支持基板1の表面に形成されている。例えば、ペロブスカイト型酸化物結晶粒子が得られる誘電体をターゲットとして、スパッタリングを行なう。例えば、基板温度を800℃として、厚みを考慮した時間だけ成膜を行う。高温でスパッタを行なうことにより、スパッタ後の熱処理を行なうこと無く、高誘電率で変化率が大きく損失の低い誘電体層2a〜2cが得られる。
【0048】
また、第1、第2接続電極3a、3b及び入出力電極4a、4bの材料としては電極の抵抗を下げるため、抵抗率の小さなAuが望ましく、他に、Ag、Alなども使用できるが、誘電体層との密着性向上のためにはPt、Pdなどの高融点貴金属が望ましい。また、その厚みは、0.1〜10μmとなっている。厚みの下限については、各電極3a、3b、4a、4b自身の抵抗を考慮して設定され、また、厚みの上限については密着性の低下を考慮して設定される。
【0049】
インピーダンス素子5a、5bは、図3の回路図中、接続点A1と接続点A2とを結ぶ第1のインピーダンス素子V1と、接続点B1と接続点B2とを結ぶ第2のインピーダンス素子V2とからなる。図1では、インピーダンス素子5bは、前記第1の接続電極3aと出力電極4bとの間にそれぞれ接続されている。
【0050】
等価回路で所定インピーダンス成分Z1,Z2を具備させるため、インピーダンス素子5a、5bの材料には、高抵抗材料のNi−Cr合金、Fe−Cr−Al合金、Au,Ptなどの貴金属材料(厚みを制御してインピーダンス成分を調整)、Ni,Fe等の強磁性体材料、酸化物導電体材料、窒化物導電体材料又は半導体材料を用いることができる。厚み、長さにおいては、必要とするインピーダンス値によって設定される。インピーダンス素子5a、5bは、例えば図1および図2に示した様に第1の接続電極3a、第2の接続電極3b及び入出力電極4a、4b上に配置される。
【0051】
絶縁層7は、外部からの機械的な衝撃からの保護の他、温度湿度による劣化、薬品の汚染、酸化等を防止する役割を持っている。また、入出力電極4a、4b上には形成した端子部6a、6bは、半田ペーストを印刷後、リフローを行なうことにより形成される。また、端子部6a、6bは、金属ワイヤーのファーストボンディングを行い、所定長さで切断することにより、金などのバンプを形成しても構わない。
【0052】
以上のように、上述の可変容量コンデンサにおいて、第1乃至第3の可変容量素子C1〜C3が高周波的には直列接続されて、しかも各可変容量素子C1〜C3は、インピーダンス成分Z1,Z2を有する第1及び第2のインピーダンス素子5a、5bで接続され、しかも、入出力端子I、O(入出力電極4a、4b)が共用されている。また、接続電極3a、3b及び入出力電極4a、4bと誘電体層2a、2b、2cとが上下逆に配置されていても構わない。
【0053】
図3は本発明の3素子の可変容量コンデンサ素子を直列接続した場合の等価回路を示すものである。図3は3つの可変容量素子C1〜C3(第1の可変容量素子C1、第2の可変容量素子C2、第3の可変容量素子C3)を回路接続したものであり、さらに、インピーダンス素子5a、5bによりインピーダンス成分またはインダクタンス成分をZ1,Z2(図3では、インピーダンス成分を示す)を有する。
【0054】
図3ではRF信号およびDCバイアスは、それぞれ共通端子であり、入力端子I、Oとなっている。
【0055】
そして、第1の可変容量素子C1の入力端子側端部A1と第2の可変容量素子C2と第3の可変容量素子C3との接続点A2との間は、バイアスラインV1となり、第2インピーダンス成分Z1を有している。また、前記第1の可変容量素子C1と第2の可変容量素子C2の接続点B1と第3の可変容量素子C3の外部出力端子側端部B2との間は、バイアスラインV2となり、第2のインピーダンス成分Z2を有している。
【0056】
ここで、インピーダンス成分Z1,Z2は、RF信号の周波数領域でインピーダンスよりも大きなインピーダンス成分となっており、RF信号は直列に接続した可変容量素子C1〜C3を通ることになる。また、DCバイアスは各可変容量素子C1〜3に別々に印加されることになる。第1及び第2のバイアスラインV1、V2のインピーダンス成分Z1,Z2が小さすぎると、RF信号もバイアスラインV1、V2を流れることになり、RF信号による容量変化が大きくなり、Qが低下する。また、インピーダンス成分Z1,Z2が大きすぎると時定数が大きくなり、DCバイアス印加後、容量変化が一定になるまでに時間がかかるようになる。
【0057】
このため、可変容量コンデンサ回路の使用条件に応じてインピーダンス値を決める必要がある。
【0058】
図3に示す回路図において、入力端子Iから供給されたバイアス電流は、第1の可変容量素子C1にそのまま供給されて、接続点B1からバイアスラインV2を介して出力端子Oに流れる。また、入力端子Iから供給されたバイアス電流は、バイアスラインV1を流れ、接続点A2に供給され、接続点A2から第3の可変容量素子C3に供給され出力端子Oに流れるとともに、接続点A2から第2の可変容量素子C2に供給され、接続点B1からバイアスラインV2に流れ、接続点B2を介して出力端子Oに流れることになる。
【0059】
ここで、インピーダンス成分Z1,Z2の設定においては、図4に示すように、直流に対する等価回路(可変容量素子C1〜C3を絶縁抵抗Rp1、Rp2、Rp3に置換)で説明する。
【0060】
インピーダンス成分Z1,Z2の上限値は、直列接続した各可変容量素子C1〜C3にかかる電圧が抵抗で無い場合よりも大きくなる抵抗値を上限とする。バイアス電圧は図4の抵抗により分圧されるので、
可変容量素子C1について考えると、Rp1/(Z2+Rp1) > Rp1/(Rp1+Rp2+Rp3)が必要となり、Z2 < Rp2+Rp3となるようにする。
【0061】
同様に、可変容量素子C2について考えると
Rp2/(Z1+Z2+Rp2) > Rp2/(Rp1+Rp2+Rp3)が必要となり、Z1+Z2 < Rp1+Rp3となるようにする。
【0062】
同様に、可変容量素子C3について考えると
Rp3/(Z1+Rp3) > Rp3/(Rp1+Rp2+Rp3)が必要となり、Z1 < Rp2+Rp3となるようにする。
【0063】
ここでZ1=Z2=R、Rp1=Rp2=Rp3=Rp=1GΩとすると
R < Rp=1GΩ
が得られる。各可変容量素子C1〜C3にかかるバイアス電圧が1/10になる抵抗値を限界とすると、R < 100MΩとなる。
【0064】
また、時定数の4倍が応答時間より小さいことを要求すると、
T < 4*2*RC より R<T/8Cとなり、ここで応答時間10μs、容量2pFとすると
R<10e−6/8*2e10−12 = 625kΩ
となる。仮に、応答時間がms程度でよければ上限は62MΩ程度となる。
【0065】
また、インピ−ダンス成分Z1,Z2の下限については、使用RF信号の周波数で直列の可変容量素子C1〜C3であるためには、インピーダンス成分Z1より可変容量素子C1、C2の合成インピーダンスが小さくなる周波数が使用周波数より小さく、インピーダンス成分Z2より可変容量素子C2、C3の合成インピーダンスが小さくなる周波数が使用周波数より小さい必要がある。
【0066】
即ち、Z1 > (C1+C2)/(ω*C1*C2)
Z2 > (C2+C3)/(ω*C2*C3)
ここでZ1=Z2=R、C1=C2=C3=2pF、使用周波数を2GHzとすると
R > 2C/ωC^2 = 2/ωC = 80Ω
また、使用周波数の1/10までコンデンサであるためには、R> 800Ωが必要となる。
【0067】
以上より、第1のインピーダンス素子V1、第2のインピーダンス素子V2のインピーダンス成分Z1,Z2は数100Ωから100MΩ程度の範囲であればよいことになる。
【0068】
【実施例】
容量6pF、直列抵抗0.1Ω、直列インダクタンス100pHの可変容量素子C1〜C3を直列接続し、10kΩのインピーダンス成分Z1、Z2をインピーダンス素子5に備えた可変容量コンデンサのインピーダンス特性を図5に示したものである。
【0069】
6.5GHzに可変容量素子の自己共振、1.2MHzインピーダンス素子5による変曲点が見られ、この間では3素子の容量6pFの可変容量素子C1〜C3を直列接続による合成容量2pFとなっており、変曲点より低周波側では可変容量素子C1〜C3の容量6pFのコンデンサを並列接続した合成抵抗18pFとなっていることがわかる。これにより、変曲点と自己共振周波数の間の高周波信号に対しては3素子の可変容量素子C1〜C3は直列になっているため1素子あたりの可変容量素子にかかる高周波電圧は1/3になり、容量変化による波形歪が小さく、直流も含む変曲点以下の周波数に対しては3素子の可変容量素子C1〜C3は並列になっており、容量変化を大きく保つことができる。
【0070】
支持基板としてサファイアR基板上に、誘電体層2として(Ba0.5Sr0.5)TiO3からなるターゲットを用いて同一バッチで成膜した。これは、基板温度は800℃、成膜時間は20分で成膜を行なった。その後、ECR装置により誘電体層をエッチングし、レジスト層を剥離して所定形状の誘電体層2a〜2cを形成した後、その上に入出力電極4a、4b、第1及び第2の接続電極3a、3bとなる電極層としてPtおよびAu電極を同一バッチで形成膜し、取り出し後レジスト層を形成し、ECR装置によりエッチングした。
【0071】
レジスト層剥離後、インピーダンスアナライザによる測定の結果、各可変容量素子C1〜C3の容量は高周波で約1.5pFであり、容量変化率はDC3V印加時で約6%であった。
【0072】
測定後、第1及び第2のインピーダンス素子5a、5bとしてTaNを同一バッチで成膜し、取り出し後レジスト層を形成し、ECR装置により不要部をエッチングして形成した。
【0073】
インピーダンス素子5a、5bを形成後に、再度インピーダンスアナライザで可変容量素子C1〜C3を測定した結果、容量変化率はDC3V印加時で約18%であった。また、容量は高周波では1.5pFであった。
【0074】
即ち、容量変化率が大きく、低周波では並列接続で、高周波で直列接続されたコンデンサができることを確認した。
【0075】
また、前記可変容量コンデンサをLC共振回路に含む高周波部品、例えば、高周波用電圧制御型共振器、電圧制御型高周波フィルタ、電圧制御型整合回路素子および電圧制御型アンテナ共用器入出力端子側バイアスラインもといることにより、直流バイアス電圧の印加により周波数特性を大きく変化できるが、高周波信号による周波数特性の変化、ノイズ、非線形歪みは小さく抑えることができ、波形歪、相互変調歪みノイズを小さく抑えることができ、さらに耐電力に優れた高周波部品とすることができる。
【0076】
【発明の効果】
支持基板上に、第1の可変容量素子の一方電極を構成する入力電極と、第3の可変容量素子の他方電極を構成する出力電極と、該入出力電極間に該入力電極の配列方向と直交するように、第1の可変容量素子の他方電極及び第2の可変容量素子の一方電極を構成する第1の接続電極と、第2の可変容量素子の他方電極及び第3の可変容量素子の一方電極を構成する第2の接続電極とを夫々配置するとともに、入力電極と第1の接続電極との間に第1の可変容量素子を構成する誘電体層を、第1の接続電極と第2の接続電極との間に第2の可変容量素子を構成する誘電体層を、第2の接続電極と出力電極との間に第3の可変容量素子を構成する誘電体層を夫々配置し、且つ入力電極と第2の接続電極との間に第1のインピーダンス素子を、第1の接続電極と出力電極との間に第2のインピーダンス素子を夫々配置している。これにより、第1の接続電極、第2の接続電極、入出電極を合わせた形状が概略矩形状とすることができ、支持基板における電極層の配置位置を効率的に配置することができ、支持基板の小型化、即ち、可変容量コンデンサの小型化に大きく寄与できる。
【0077】
直列に接続した第1乃至第3の可変容量素子に直流バイアス印加用の第1のインピーダンス素子及び第2のインピーダンス素子を配置することにより、各可変容量素子に直流バイアス電圧を安定且つ均一に印加できる。このため、容量の変化を大きくし、且つ高周波信号による容量の変化、ノイズ、非線形歪みは小さく抑えることができる可変容量コンデンサとなる。同時に、これを支持基板上に形成して取り扱いに容易で、容量を大きく変化できるが、高周波信号による容量の変化、ノイズ、非線形歪みは小さく抑えることができる可変容量コンデンサとすることができる。さらに、耐電力に優れた可変容量コンデンサとすることができる。
また、このような可変容量コンデンサを、高周波用電圧制御型共振器、電圧制御型高周波フィルタ、電圧制御型整合回路素子および電圧制御型アンテナ共用器などの高周波部品に用いることにより、直流バイアス電圧の印加により周波数特性を大きく変化できるが、高周波信号による周波数特性の変化、ノイズ、非線形歪みは小さく抑えることができ、波形歪、相互変調歪みノイズを小さく抑えることができ、さらに耐電力に優れた小型化な高周波部品が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可変容量素子の概略平面図である。
【図2】本発明の図1のA―A’で可変容量素子の概略断面図である。
【図3】本発明の可変容量コンデンサの等価回路図である。
【図4】図3をインピーダンス成分に置き換えた等価回路図である。
【図5】本発明の可変容量コンデンサのインピーダンス特性を示す特性図である。
【符号の説明】
1・・・支持基板
2・・・誘電体層
2a〜2c・・第1乃至第3の誘電体層
3・・・接続電極
3a、3b・・第1及び第2の接続電極
4・・・入出力電極
4a・・入力電極
4b・・出力電極
5・・・インピーダンス素子
5a、5b・・第1及び第2のインピーダンス素子
47・・・ 絶縁層
6a、6b・・端子部
C1〜C3 可変容量素子
V1 第1のバイアスライン
V2 第2のパイアスライン
Z1,Z2 インピーダンス成分
I、O 入出力端子
【発明の属する技術分野】
本発明は直流電圧の印加により容量を変化することができ、高周波入力電力に対しても低歪み、または高耐電力を実現出来るコンデンサに関するものである。また、接続電極、入出力電極、誘電体、インピーダンス素子を薄膜技法により形成した可変容量コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、薄膜コンデンサは、上下電極及び誘電体層が薄膜で形成された薄膜コンデンサがある。これは通常、電気絶縁性の支持基板上に薄膜状の下部電極、誘電体層、上部電極が順に積層されている。このような薄膜コンデンサでは下部電極、上部電極が各々スパッタ法、蒸着法、イオンプレ−ティング法などで形成されており、誘電体層もスパッタ、ゾルゲル法などで形成されている。このような薄膜コンデンサの製造では、以下のようにフォトリソグラフィが用いられる。まず、絶縁性支持基板上の全面に下部電極となる導体層を形成した後、必要部のみレジストで覆い、その後、ドライエッチングあるいはウェットエッチングを行い、不要部を除去して、所定形状の下部誘電体層を形成する。つぎに、支持基板上に薄膜誘電体層を全面に形成し、下部電極と同様に、不要部を除去し所定形状の誘電体層を形成する。最後に上部電極を全面に形成し、同様に、不要部を除去し所定形状の上部電極を形成する。この後、保護膜層やハンダ端子部を形成することにより、表面実装が可能になる。また、誘電体層の材料として(Bax,Sr1−x)yTi1−yO3z誘電材料を用いて、上部電極と下部電極との間に所定電位を与えて、誘電体層の誘電率を変化させて、容量を変化させる薄膜コンデンサも同様な構造である。直流バイアスの印加により容量を変化させる可変容量薄膜コンデンサとしては、例えば特許文献(特開平11−260667号)に開示されている。
【0003】
薄膜コンデンサでは直流バイアスを印加することで誘電率が変化し、その結果として容量が変化する。容量の変化は高周波領域にも及び、高周波でも可変容量薄膜コンデンサとして利用可能となる。この様な高周波での可変容量薄膜コンデンサの容量変化を利用して、直流バイアスの印加により周波数特性を変化できる電子部品が得られる。例えば、上述の可変容量薄膜コンデンサと薄膜インダクタを組み合わせて、LC共振回路の一部に用いた電圧制御型薄膜共振器では、直流バイアスの印加により共振周波数を変化させることができる。また、複数のLC共振回路を結合するための結合素子として可変容量薄膜コンデンサを用いた電圧制御型薄膜帯域通過フィルタでは、直流バイアスの印加により通過帯域を変化させることができる。このような高周波部品に関しては例えば特許文献2(特表平8−509103号)に開示されている。
【0004】
[特許文献1]
特開平11−260667号公報
[特許文献2]
特表平8−509103号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様な可変容量薄膜コンデンサを高周波用電子部品で用いる場合、可変容量薄膜コンデンサには可変容量用の直流バイアス電圧と高周波信号の電圧(高周波電圧)が同時に印加されることになる。高周波電圧が高い場合は高周波電圧によっても可変容量薄膜コンデンサの容量が変化するようになる。この様な可変容量薄膜コンデンサを高周波用電子部品に用いると、高周波電圧によるコンデンサの容量変化のため波形歪、相互変調歪みノイズが生じる様になる。波形歪、相互変調歪みノイズを小さくするためには高周波電界強度を下げ高周波電圧による容量変化を小さくする必要があり、その為には誘電体層の厚みを厚くすることが有効であるが、誘電体層の厚みを厚くすると直流電界強度も小さくなるため容量変化率も下がってしまう問題があった。
【0006】
また、高周波ではコンデンサには電流が流れやすくなるため、コンデンサを高周波で使用中にはコンデンサの損失抵抗によりコンデンサが発熱し破壊してしまう。この様な耐電力の問題に対しても誘電体の厚みを厚くし、単位体積当たりの発熱量を小さくすることが有効であるが、前述のように誘電体層の厚みを厚くすると直流電界強度も小さくなるため直流バイアスによる容量変化率も下がってしまう問題があった。
【0007】
また、上述の従来技術では2層、3層と多数積層するため、複数の作業工程があり大量生産しにくく、集積化、コスト、信頼性に問題があった。
【0008】
本発明は上述の問題に鑑みて案出されたものであり、その目的は高周波信号による容量変化が小さく、かつ直流バイアスによる容量変化は大きいようなコンデンサかつ集積化または小型化、低コスト、高信頼性を実現する可変容量コンデンサを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに別の目的は上述の薄膜コンデンサを用いて相互変調低歪みを実現し、耐電力、耐電圧に優れ、温度特性の良い高周波用電圧制御型薄膜共振器、電圧制御型薄膜高周波フィルタ、電圧制御型整合回路素子および電圧制御型薄膜アンテナ共用器などの高周波部品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持基板上に、一方電極と他方電極とで薄膜誘電体層を挟持してなる第1乃至第3の可変容量素子を互いに直列接続するとともに、前記第1の可変容量素子と前記第2の可変容量素子とを第1のインピーダンス素子で、前記第2の可変容量素子と前記第3の可変容量素子とを第2のインピーダンス素子で接続して成る可変容量コンデンサであって、
前記支持基板上に、第1の可変容量素子の一方電極を構成する入力電極と、第3の可変容量素子の他方電極を構成する出力電極と、該入出力電極間に該入力電極の配列方向と直交するように、前記第1の可変容量素子の他方電極及び前記第2の可変容量素子の一方電極を構成する第1の接続電極と、前記第2の可変容量素子の他方電極及び前記第3の可変容量素子の一方電極を構成する第2の接続電極とを夫々配置するとともに、
前記入力電極と前記第1の接続電極との間に前記第1の可変容量素子を構成する誘電体層を、前記第1の接続電極と前記第2の接続電極との間に前記第2の可変容量素子を構成する誘電体層を、前記第2の接続電極と前記出力電極との間に前記第3の可変容量素子を構成する誘電体層を夫々配置し、
且つ前記入力電極と前記第2の接続電極との間に第1のインピーダンス素子を、前記第1の接続電極と前記出力電極との間に第2のインピーダンス素子を夫々配置した可変容量コンデンサである。
【0011】
前記入力電極と前記出力電極とは、前記支持基板の中心に対して、概略対称に配置されている。
【0012】
前記第1乃至第3の可変容量素子を構成する誘電体層は、一方電極が下部電極となり、他方電極が上部電極となって、その電極間に配置されている。
【0013】
前記インピーダンス素子は、抵抗成分を有している。
【0014】
前記インピーダンス素子は、インダクタンス成分を有している。
【0015】
接続電極は、高周波信号の信号入力端子と直流電圧の供給端子とが共用されている。
【0016】
前記支持基板は、ほぼ平らな表面を持ち、約30未満の誘電率を有する。
【0017】
前記基板は、MgO、アルミナ、サファイア、LaAlO3のいずれかである。
【0018】
前記誘電体は、(Bax,Sr1−x)yTi1−yO3zからなる。
【0019】
前記接続電極かつ入出力電極は、Au,Pt,Al,Cuなどの金属からなる。
【0020】
前記インピーダンス素子は、Ni−Cr合金あるいはFe−Cr−Ar合金などの高抵抗合金薄膜からなる。
【0021】
前記インピーダンス素子は、Au,Pt,Tiなどの貴金属薄膜からなる。
【0022】
前記インピーダンス素子は、Ni,Feなどの強磁性体薄膜からなる。
【0023】
前記インピーダンス素子は、酸化物導電体材料、窒化物導電体材料又は半導体材料からなる。
【0024】
前記インピーダンス素子は、直線状、ループ状、ミアンダ状、あるいはスパイラル状である。
【0025】
また、このような可変容量コンデンサをLC共振回路の一部として、また、LC共振回路を接合する素子として用いた高周波部品である。
【0026】
【作用】
本発明の可変容量コンデンサは、支持基板上に、第1の可変容量素子の一方電極を構成する入力電極と、第3の可変容量素子の他方電極を構成する出力電極と、該入出力電極間と直交に、前記第1の可変容量素子の他方電極及び前記第2の可変容量素子の一方電極を構成する第1の接続電極と、前記第2の可変容量素子の他方電極及び前記第3の可変容量素子の一方電極を構成する第2の接続電極とを夫々独立して配置するとともに、
前記入力電極と前記第1の接続電極との横方向間に前記第1の可変容量素子を構成する誘電体層を、前記第1の接続電極と前記第2の接続電極との縦方向間に前記第2の可変容量素子を構成する誘電体層を、前記第2の接続電極と前記出力電極との横方向間に前記第3の可変容量素子を構成する誘電体層を夫々配置し、且つ前記入力電極と前記第2の接続電極との横方向間に第1のインピーダンス素子を、前記第1の接続電極と前記出力電極との間に第2のインピーダンス素子を夫々配置したことを特徴とする可変容量コンデンサである。このような電極の配列により、浮遊容量値は小さくなる。また、直列に接続する可変容量素子に印加される高周波電圧がそれぞれの容量素子に分圧されるため個々の容量素子に印加される電圧は減少する。その結果、高周波信号による容量の変化を小さく抑えることができる。また、インピーダンス素子を設けることにより、直流バイアスは個々の誘電体に独立に印加することができるため、直流バイアスによる容量の変化は大きく保つことができる。また、入出力電極の面積が広いため、半田の面積が大きく出来るので実装が容易になる。
【0027】
また、入力電極と出力電極とが、支持基板の中心に対して、概略対称に配置されていることを特徴とする可変容量コンデンサである。このことより、特に規則正しく配列させることができ、小型化にも寄与できる。
【0028】
第1乃至第3の可変容量素子を構成する誘電体層が、一方電極が下部電極となり、他方電極が上部電極となって、その電極間に配置されていることを特徴とする可変容量コンデンサである。このことより、誘電体層の対向面積を任意に変えられ、また、安定したバアイアス電圧を印加することができ、大容量の可変容量コンデンサとすることができる。
【0029】
また、インピーダンス素子が少なくとも抵抗成分あるいは/およびインダクタンス成分からなることを特徴とする可変容量コンデンサであることにより、インピーダンス素子に高周波信号が入り込むことはなく、また、直流電流は可変容量素子を流れないため、高周波的には直列に接続される可変容量素子で、直流的には並列接続される可変容量素子と見ることができる。
【0030】
また、可変容量コンデンサを構成する各可変容量素子同士の接続がインピーダンス素子により交互に印加電圧の供給するため、接続された全ての可変容量素子に印加電圧が安定して供給できるため、個々の可変容量素子の容量変化率を最大限に利用できる。
【0031】
可変容量コンデンサを用いた高周波の入力端子と直流電圧の供給端子を共通化しているため、別途端子を設けること無く、通常のコンデンサとしての取扱うことができる。
【0032】
支持基板は、ほぼ平らな表面を持ち約30未満の誘電率を用いることにより、密着性が良く、誘電体の誘電率に影響を及ぼさないため、可変容量コンデンサの容量変化率を最大限に利用できる。
【0033】
支持基板は、MgO、アルミナ、サファイア、LaAlO3を用いることにより、高温プロセスが可能となる。
【0034】
また、電極かつ入出力電極は、Au,Pt,Alなどの金属を用いることにより、低抵抗が実現でき、高Q化が可能となる。
【0035】
また、可変容量コンデンサにおいて、各可変容量素子が支持基板上に誘電体層、電極を順次被着してなり、プロセスの簡単化また省略化が出来ることにより、低コスト、高信頼性等が実現できる。
【0036】
また、前記誘電体が(Bax,Sr1−x)yTi1−yO3zからなり、コンデンサ素子の容量変化率が大きく損失が小さい可変容量コンデンサを作製することができる。
【0037】
また、前記インピーダンス素子の全てまたは一部がNi−Cr合金あるいはFe−Cr−Ar合金などの高抵抗合金薄膜からなることを特徴とする薄膜コンデンサ素子で、高抵抗の合金薄膜を用いることで、短い抵抗線でも高抵抗が達成でき、小型化、低コスト等の可変容量コンデンサを作製することができる。
【0038】
また、インピーダンス素子の全てまたは一部がAu、Ptなどの貴金属薄膜からなり、金属薄膜をスパッタ法、蒸着法などでごく薄く成膜した場合、完全な膜にはならず、微小な島状の金属塊からなる膜質の悪い膜になり、膜厚が薄くなると抵抗値が急激に高くなる。この性質を用いて、抵抗率の小さな貴金属類を用いることで、高抵抗で耐酸化性に優れたインピーダンス成分を有する導体膜(インピーダンス素子)が得られる。
【0039】
また、前記インピーダンス素子の全てまたは一部がNi,Fe等の強磁性体薄膜からなる。このことから、強磁性体では透磁率μが大きいため、δ=1/(πfμσ)1/2で表わされる表皮深さが常磁性体よりも小さくなる傾向がある。(ただし、fは周波数、σは導電率である。)このため、機械的に安定な厚みの膜を作製しても、高周波では表皮深さが薄くなり、抵抗が高くなるため高抵抗の膜を作製できる。
【0040】
また、前記インピーダンス素子の全てまたは一部が酸化物伝導体、窒化物導伝体または半導体からなる。このことにより絶縁層または支持基板との密着性の良いインピーダンス素子を作製することができる。
【0041】
また、前記インピーダンス素子が直線状、ループ状、メアンダ状あるいはスパイラル状であることを特徴とする可変容量薄膜コンデンサ素子である。インピーダンス素子を直線状とすることよりインピーダンス素子にインダクタンス成分を具備させることができ、インピーダンス成分とした時と同様の効果が得られる。
【0042】
可変容量コンデンサは集積化、小型化等が容易なため、フィルタやデュプレクサなどの高周波部品に用いることが容易である。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の可変容量コンデンサを図面に基づいて説明する。
【0044】
図1を用いて互いに直列接続された可変容量素子C1〜C3を具備する可変容量コンデンサを説明する。尚、図1は、各膜の構造が明確にわかるように透視状態の平面図である。図2は、図1のA−A‘の透視断面図を示している。
【0045】
図1及び図2において1は支持基板であり、2は誘電体層(第1の誘電体を2a、第2の誘電体を2b、第3の誘電体を2cで示す)であり、3は電極(第1の接続電極を3a、第2の接続電極を3bで示す)であり、4は入出力電極(入力電極を4a、出力電極第を4bで示す)であり、5はインピーダンス素子(第1のインピーダンス素子を5a、第2のインピーダンス素子を5bで示す)であり、6は端子部(入力端子I側を6a、出力端子O側を6bと付す)である。そして、図中C1〜C3は、直流電圧によって容量成分を調整できる可変容量素子を示す。
【0046】
支持基板1はアルミナなどのセラミック基板、サファイアなどの単結晶基板などである。そして、支持基板1の表面には、誘電体層2が形成されて、電極3かつ入出力電極4は支持基板1上の全面に同一バッチで形成されている。まず、誘電体層2のスパッタをし、フォトリソグラフィを用いて所定形状に物理的または化学的にエッチングして、所定形状の誘電体層2a〜2cを形成し、その後、電極3かつ入出力電極4のスパッタ終了後にフォトリソグラフィを用いて所定形状に物理的または化学的にエッチングして、所定形状の接続電極3a〜3b、入出力電極され、その後にインピーダンス素子5a、5bをスパッタ終了後にフォトリソグラフィを用いて所定形状に物理的エッチングされる。
【0047】
第1乃至第3の誘電体層2a、2b、2cは、少なくともBa、Sr、Tiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶粒子から成る高誘電率の誘電体材料である。この誘電体層2は、上述の支持基板1の表面に形成されている。例えば、ペロブスカイト型酸化物結晶粒子が得られる誘電体をターゲットとして、スパッタリングを行なう。例えば、基板温度を800℃として、厚みを考慮した時間だけ成膜を行う。高温でスパッタを行なうことにより、スパッタ後の熱処理を行なうこと無く、高誘電率で変化率が大きく損失の低い誘電体層2a〜2cが得られる。
【0048】
また、第1、第2接続電極3a、3b及び入出力電極4a、4bの材料としては電極の抵抗を下げるため、抵抗率の小さなAuが望ましく、他に、Ag、Alなども使用できるが、誘電体層との密着性向上のためにはPt、Pdなどの高融点貴金属が望ましい。また、その厚みは、0.1〜10μmとなっている。厚みの下限については、各電極3a、3b、4a、4b自身の抵抗を考慮して設定され、また、厚みの上限については密着性の低下を考慮して設定される。
【0049】
インピーダンス素子5a、5bは、図3の回路図中、接続点A1と接続点A2とを結ぶ第1のインピーダンス素子V1と、接続点B1と接続点B2とを結ぶ第2のインピーダンス素子V2とからなる。図1では、インピーダンス素子5bは、前記第1の接続電極3aと出力電極4bとの間にそれぞれ接続されている。
【0050】
等価回路で所定インピーダンス成分Z1,Z2を具備させるため、インピーダンス素子5a、5bの材料には、高抵抗材料のNi−Cr合金、Fe−Cr−Al合金、Au,Ptなどの貴金属材料(厚みを制御してインピーダンス成分を調整)、Ni,Fe等の強磁性体材料、酸化物導電体材料、窒化物導電体材料又は半導体材料を用いることができる。厚み、長さにおいては、必要とするインピーダンス値によって設定される。インピーダンス素子5a、5bは、例えば図1および図2に示した様に第1の接続電極3a、第2の接続電極3b及び入出力電極4a、4b上に配置される。
【0051】
絶縁層7は、外部からの機械的な衝撃からの保護の他、温度湿度による劣化、薬品の汚染、酸化等を防止する役割を持っている。また、入出力電極4a、4b上には形成した端子部6a、6bは、半田ペーストを印刷後、リフローを行なうことにより形成される。また、端子部6a、6bは、金属ワイヤーのファーストボンディングを行い、所定長さで切断することにより、金などのバンプを形成しても構わない。
【0052】
以上のように、上述の可変容量コンデンサにおいて、第1乃至第3の可変容量素子C1〜C3が高周波的には直列接続されて、しかも各可変容量素子C1〜C3は、インピーダンス成分Z1,Z2を有する第1及び第2のインピーダンス素子5a、5bで接続され、しかも、入出力端子I、O(入出力電極4a、4b)が共用されている。また、接続電極3a、3b及び入出力電極4a、4bと誘電体層2a、2b、2cとが上下逆に配置されていても構わない。
【0053】
図3は本発明の3素子の可変容量コンデンサ素子を直列接続した場合の等価回路を示すものである。図3は3つの可変容量素子C1〜C3(第1の可変容量素子C1、第2の可変容量素子C2、第3の可変容量素子C3)を回路接続したものであり、さらに、インピーダンス素子5a、5bによりインピーダンス成分またはインダクタンス成分をZ1,Z2(図3では、インピーダンス成分を示す)を有する。
【0054】
図3ではRF信号およびDCバイアスは、それぞれ共通端子であり、入力端子I、Oとなっている。
【0055】
そして、第1の可変容量素子C1の入力端子側端部A1と第2の可変容量素子C2と第3の可変容量素子C3との接続点A2との間は、バイアスラインV1となり、第2インピーダンス成分Z1を有している。また、前記第1の可変容量素子C1と第2の可変容量素子C2の接続点B1と第3の可変容量素子C3の外部出力端子側端部B2との間は、バイアスラインV2となり、第2のインピーダンス成分Z2を有している。
【0056】
ここで、インピーダンス成分Z1,Z2は、RF信号の周波数領域でインピーダンスよりも大きなインピーダンス成分となっており、RF信号は直列に接続した可変容量素子C1〜C3を通ることになる。また、DCバイアスは各可変容量素子C1〜3に別々に印加されることになる。第1及び第2のバイアスラインV1、V2のインピーダンス成分Z1,Z2が小さすぎると、RF信号もバイアスラインV1、V2を流れることになり、RF信号による容量変化が大きくなり、Qが低下する。また、インピーダンス成分Z1,Z2が大きすぎると時定数が大きくなり、DCバイアス印加後、容量変化が一定になるまでに時間がかかるようになる。
【0057】
このため、可変容量コンデンサ回路の使用条件に応じてインピーダンス値を決める必要がある。
【0058】
図3に示す回路図において、入力端子Iから供給されたバイアス電流は、第1の可変容量素子C1にそのまま供給されて、接続点B1からバイアスラインV2を介して出力端子Oに流れる。また、入力端子Iから供給されたバイアス電流は、バイアスラインV1を流れ、接続点A2に供給され、接続点A2から第3の可変容量素子C3に供給され出力端子Oに流れるとともに、接続点A2から第2の可変容量素子C2に供給され、接続点B1からバイアスラインV2に流れ、接続点B2を介して出力端子Oに流れることになる。
【0059】
ここで、インピーダンス成分Z1,Z2の設定においては、図4に示すように、直流に対する等価回路(可変容量素子C1〜C3を絶縁抵抗Rp1、Rp2、Rp3に置換)で説明する。
【0060】
インピーダンス成分Z1,Z2の上限値は、直列接続した各可変容量素子C1〜C3にかかる電圧が抵抗で無い場合よりも大きくなる抵抗値を上限とする。バイアス電圧は図4の抵抗により分圧されるので、
可変容量素子C1について考えると、Rp1/(Z2+Rp1) > Rp1/(Rp1+Rp2+Rp3)が必要となり、Z2 < Rp2+Rp3となるようにする。
【0061】
同様に、可変容量素子C2について考えると
Rp2/(Z1+Z2+Rp2) > Rp2/(Rp1+Rp2+Rp3)が必要となり、Z1+Z2 < Rp1+Rp3となるようにする。
【0062】
同様に、可変容量素子C3について考えると
Rp3/(Z1+Rp3) > Rp3/(Rp1+Rp2+Rp3)が必要となり、Z1 < Rp2+Rp3となるようにする。
【0063】
ここでZ1=Z2=R、Rp1=Rp2=Rp3=Rp=1GΩとすると
R < Rp=1GΩ
が得られる。各可変容量素子C1〜C3にかかるバイアス電圧が1/10になる抵抗値を限界とすると、R < 100MΩとなる。
【0064】
また、時定数の4倍が応答時間より小さいことを要求すると、
T < 4*2*RC より R<T/8Cとなり、ここで応答時間10μs、容量2pFとすると
R<10e−6/8*2e10−12 = 625kΩ
となる。仮に、応答時間がms程度でよければ上限は62MΩ程度となる。
【0065】
また、インピ−ダンス成分Z1,Z2の下限については、使用RF信号の周波数で直列の可変容量素子C1〜C3であるためには、インピーダンス成分Z1より可変容量素子C1、C2の合成インピーダンスが小さくなる周波数が使用周波数より小さく、インピーダンス成分Z2より可変容量素子C2、C3の合成インピーダンスが小さくなる周波数が使用周波数より小さい必要がある。
【0066】
即ち、Z1 > (C1+C2)/(ω*C1*C2)
Z2 > (C2+C3)/(ω*C2*C3)
ここでZ1=Z2=R、C1=C2=C3=2pF、使用周波数を2GHzとすると
R > 2C/ωC^2 = 2/ωC = 80Ω
また、使用周波数の1/10までコンデンサであるためには、R> 800Ωが必要となる。
【0067】
以上より、第1のインピーダンス素子V1、第2のインピーダンス素子V2のインピーダンス成分Z1,Z2は数100Ωから100MΩ程度の範囲であればよいことになる。
【0068】
【実施例】
容量6pF、直列抵抗0.1Ω、直列インダクタンス100pHの可変容量素子C1〜C3を直列接続し、10kΩのインピーダンス成分Z1、Z2をインピーダンス素子5に備えた可変容量コンデンサのインピーダンス特性を図5に示したものである。
【0069】
6.5GHzに可変容量素子の自己共振、1.2MHzインピーダンス素子5による変曲点が見られ、この間では3素子の容量6pFの可変容量素子C1〜C3を直列接続による合成容量2pFとなっており、変曲点より低周波側では可変容量素子C1〜C3の容量6pFのコンデンサを並列接続した合成抵抗18pFとなっていることがわかる。これにより、変曲点と自己共振周波数の間の高周波信号に対しては3素子の可変容量素子C1〜C3は直列になっているため1素子あたりの可変容量素子にかかる高周波電圧は1/3になり、容量変化による波形歪が小さく、直流も含む変曲点以下の周波数に対しては3素子の可変容量素子C1〜C3は並列になっており、容量変化を大きく保つことができる。
【0070】
支持基板としてサファイアR基板上に、誘電体層2として(Ba0.5Sr0.5)TiO3からなるターゲットを用いて同一バッチで成膜した。これは、基板温度は800℃、成膜時間は20分で成膜を行なった。その後、ECR装置により誘電体層をエッチングし、レジスト層を剥離して所定形状の誘電体層2a〜2cを形成した後、その上に入出力電極4a、4b、第1及び第2の接続電極3a、3bとなる電極層としてPtおよびAu電極を同一バッチで形成膜し、取り出し後レジスト層を形成し、ECR装置によりエッチングした。
【0071】
レジスト層剥離後、インピーダンスアナライザによる測定の結果、各可変容量素子C1〜C3の容量は高周波で約1.5pFであり、容量変化率はDC3V印加時で約6%であった。
【0072】
測定後、第1及び第2のインピーダンス素子5a、5bとしてTaNを同一バッチで成膜し、取り出し後レジスト層を形成し、ECR装置により不要部をエッチングして形成した。
【0073】
インピーダンス素子5a、5bを形成後に、再度インピーダンスアナライザで可変容量素子C1〜C3を測定した結果、容量変化率はDC3V印加時で約18%であった。また、容量は高周波では1.5pFであった。
【0074】
即ち、容量変化率が大きく、低周波では並列接続で、高周波で直列接続されたコンデンサができることを確認した。
【0075】
また、前記可変容量コンデンサをLC共振回路に含む高周波部品、例えば、高周波用電圧制御型共振器、電圧制御型高周波フィルタ、電圧制御型整合回路素子および電圧制御型アンテナ共用器入出力端子側バイアスラインもといることにより、直流バイアス電圧の印加により周波数特性を大きく変化できるが、高周波信号による周波数特性の変化、ノイズ、非線形歪みは小さく抑えることができ、波形歪、相互変調歪みノイズを小さく抑えることができ、さらに耐電力に優れた高周波部品とすることができる。
【0076】
【発明の効果】
支持基板上に、第1の可変容量素子の一方電極を構成する入力電極と、第3の可変容量素子の他方電極を構成する出力電極と、該入出力電極間に該入力電極の配列方向と直交するように、第1の可変容量素子の他方電極及び第2の可変容量素子の一方電極を構成する第1の接続電極と、第2の可変容量素子の他方電極及び第3の可変容量素子の一方電極を構成する第2の接続電極とを夫々配置するとともに、入力電極と第1の接続電極との間に第1の可変容量素子を構成する誘電体層を、第1の接続電極と第2の接続電極との間に第2の可変容量素子を構成する誘電体層を、第2の接続電極と出力電極との間に第3の可変容量素子を構成する誘電体層を夫々配置し、且つ入力電極と第2の接続電極との間に第1のインピーダンス素子を、第1の接続電極と出力電極との間に第2のインピーダンス素子を夫々配置している。これにより、第1の接続電極、第2の接続電極、入出電極を合わせた形状が概略矩形状とすることができ、支持基板における電極層の配置位置を効率的に配置することができ、支持基板の小型化、即ち、可変容量コンデンサの小型化に大きく寄与できる。
【0077】
直列に接続した第1乃至第3の可変容量素子に直流バイアス印加用の第1のインピーダンス素子及び第2のインピーダンス素子を配置することにより、各可変容量素子に直流バイアス電圧を安定且つ均一に印加できる。このため、容量の変化を大きくし、且つ高周波信号による容量の変化、ノイズ、非線形歪みは小さく抑えることができる可変容量コンデンサとなる。同時に、これを支持基板上に形成して取り扱いに容易で、容量を大きく変化できるが、高周波信号による容量の変化、ノイズ、非線形歪みは小さく抑えることができる可変容量コンデンサとすることができる。さらに、耐電力に優れた可変容量コンデンサとすることができる。
また、このような可変容量コンデンサを、高周波用電圧制御型共振器、電圧制御型高周波フィルタ、電圧制御型整合回路素子および電圧制御型アンテナ共用器などの高周波部品に用いることにより、直流バイアス電圧の印加により周波数特性を大きく変化できるが、高周波信号による周波数特性の変化、ノイズ、非線形歪みは小さく抑えることができ、波形歪、相互変調歪みノイズを小さく抑えることができ、さらに耐電力に優れた小型化な高周波部品が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可変容量素子の概略平面図である。
【図2】本発明の図1のA―A’で可変容量素子の概略断面図である。
【図3】本発明の可変容量コンデンサの等価回路図である。
【図4】図3をインピーダンス成分に置き換えた等価回路図である。
【図5】本発明の可変容量コンデンサのインピーダンス特性を示す特性図である。
【符号の説明】
1・・・支持基板
2・・・誘電体層
2a〜2c・・第1乃至第3の誘電体層
3・・・接続電極
3a、3b・・第1及び第2の接続電極
4・・・入出力電極
4a・・入力電極
4b・・出力電極
5・・・インピーダンス素子
5a、5b・・第1及び第2のインピーダンス素子
47・・・ 絶縁層
6a、6b・・端子部
C1〜C3 可変容量素子
V1 第1のバイアスライン
V2 第2のパイアスライン
Z1,Z2 インピーダンス成分
I、O 入出力端子
Claims (16)
- 支持基板上に、一方電極と他方電極とで薄膜誘電体層を挟持してなる第1乃至第3の可変容量素子を互いに直列接続するとともに、前記第1の可変容量素子と前記第2の可変容量素子とを第1のインピーダンス素子で、前記第2の可変容量素子と前記第3の可変容量素子とを第2のインピーダンス素子で接続して成る可変容量コンデンサであって、
前記支持基板上に、第1の可変容量素子の一方電極を構成する入力電極と、第3の可変容量素子の他方電極を構成する出力電極と、該入出力電極間に該入力電極の配列方向と直交するように、前記第1の可変容量素子の他方電極及び前記第2の可変容量素子の一方電極を構成する第1の接続電極と、前記第2の可変容量素子の他方電極及び前記第3の可変容量素子の一方電極を構成する第2の接続電極とを夫々配置するとともに、
前記入力電極と前記第1の接続電極との間に前記第1の可変容量素子を構成する誘電体層を、前記第1の接続電極と前記第2の接続電極との間に前記第2の可変容量素子を構成する誘電体層を、前記第2の接続電極と前記出力電極との間に前記第3の可変容量素子を構成する誘電体層を夫々配置し、
且つ前記入力電極と前記第2の接続電極との間に第1のインピーダンス素子を、前記第1の接続電極と前記出力電極との間に第2のインピーダンス素子を夫々配置したことを特徴とする可変容量コンデンサ。 - 前記入力電極と前記出力電極とは、前記支持基板の中心に対して、概略対称に配置されていることを特徴とする請求項1記載の可変容量コンデンサ。
- 前記第1乃至第3の可変容量素子を構成する誘電体層は,一方電極が下部電極となり、他方電極が上部電極となって、その電極間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の可変容量コンデンサ。
- 前記インピーダンス素子は、抵抗成分を有することを特徴とする請求項1記載の可変容量コンデンサ。
- 前記インピーダンス素子は、インダクタンス成分を有することを特徴とする請求項1記載の可変容量コンデンサ。
- 接続電極は、高周波信号の信号入力端子と直流電圧の供給端子とが共用されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可変容量コンデンサ。
- 前記支持基板は、ほぼ平らな表面を持ち、約30未満の誘電率を有するよりなる請求項1乃至5のいずれかに記載の可変容量コンデンサ。
- 前記基板は、MgO、アルミナ、サファイア、LaAlO3のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可変容量コンデンサ。
- 前記誘電体は、(Bax,Sr1−x)yTi1−yO3zからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可変容量コンデンサ。
- 前記接続電極かつ入出力電極は、Au,Pt,Al,Cuなどの金属からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可変容量コンデンサ。
- 前記インピーダンス素子は、Ni−Cr合金あるいはFe−Cr−Ar合金などの高抵抗合金薄膜からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可変容量コンデンサ。
- 前記インピーダンス素子は、Au,Pt,Tiなどの貴金属薄膜からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可変容量コンデンサ。
- 前記インピーダンス素子は、Ni,Feなどの強磁性体薄膜からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可変容量コンデンサ。
- 前記インピーダンス素子は、酸化物導電体材料、窒化物導電体材料又は半導体材料からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可変容量コンデンサ。
- 前記インピーダンス素子は、直線状、ループ状、ミアンダ状、あるいはスパイラル状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可変容量コンデンサ。
- 請求項1記載の可変容量コンデンサを、LC共振回路とともに用いたことを特徴とする高周波部品。
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