JP2004259869A - 誘電体膜の形成方法および誘電体膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の誘電体膜の形成方法は、(A)有機金属化合物および(B)有機金属化合物の加水分解縮合物の少なくとも一方を含む塗布液を用いて誘電体前駆体膜を形成し、フラッシュランプ1を用いて前記誘電体前駆体膜に対して光照射を行なうことにより、誘電体膜を形成すること、を含む。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラッシュランプによる光照射を用いた誘電体膜の形成方法および誘電体膜に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、半導体装置等の電子デバイスの製造プロセスは、複雑化および高度化している。これに伴い、例えば誘電体膜等の薄膜形成技術には、工程の簡略化や低温化など、プロセスの簡素化が強く求められている。
【0003】
高品質の薄膜を精度良く作成する方法としては、真空中において薄膜を製膜する方法が一般的である。この場合、薄膜を構成する物質や製膜条件によっては、原子、分子層レベルでの制御が可能な場合もある。
【0004】
しかしながら、一般に、薄膜形成時の制御性が優れているほど、製膜速度は遅くなる傾向がある。また、薄膜形成時の制御性が高くなるにつれて、装置自体が複雑化および高額化する。さらに、薄膜形成時の制御性は優れているけれども、大規模生産には不向きな方法も存在する。
【0005】
ところで、加熱工程は、電子デバイスの製造プロセスにおいて不可欠な要素の一つである。この加熱工程は、いわゆる前処理工程に相当するものから、物質の制御を目的とするものに至るまで、目的および精度も様々である。中でも、最も高度に制御された加熱方法の一つとして、レーザ光を用いるものがある。レーザ光は単一波長のコヒーレント光であり、かつ集光性に優れていることから、ミクロンスケールでの部分照射も可能である。この特性を生かして、例えば、微細な配線パターンの部分修復や切断などに代表されるレーザーリペアなどの応用技術がある。
【0006】
また、例えば、薄膜形成後に該薄膜の結晶性を向上させるために、レーザ光の照射が用いられている。薄膜の結晶性を向上させるためには、必要なエネルギーを必要な部分にいかに効率よく供給できるかが重要であることから、集光性に優れたレーザ光が好ましく用いられている。この場合、光照射の制御を精密に行なう必要がある。具体的には、アモルファスシリコン(a−Si)からなる薄膜にエキシマレーザ光を照射することにより、多結晶シリコン(p−Si)薄膜を形成する技術がある。この技術は、半導体装置の作成工程にも導入されている。
【0007】
前述したように、真空中での薄膜製膜方法は、膜厚の制御性や得られる薄膜の純度の点で優れている一方、製膜に要する時間が非常に長い傾向がある。また、前述のレーザ光を用いた薄膜の物性の制御においては、広面積の領域にレーザ光を照射することが困難である。
【0008】
例えば、数cm2あるいはそれ以上の面積の領域にレーザ光を照射する場合には、光学系(例えばビームエキスパンダー)を工夫することにより、意図的に照射領域を広げる必要がある。この場合、照射領域を広げることにより、照射強度密度は低下する。したがって、より広い領域へ高強度のレーザ光照射を必要とする場合には、高価な大型高出力のレーザ照射装置を必要とする。
【0009】
ところで、薄膜形成方法の一つとして、ゾルゲル法が知られている。このゾルゲル法は、金属の有機化合物または無機化合物を溶液状態として、加水分解や縮合重合などの反応を進行させ、溶液(あるいはゾル)が流動性を失うことによりある種の形状が得られることを利用して、薄膜を形成する方法の一つである。この方法によれば、バルク、薄膜、紛体、繊維など多様な形状および状態を作成することができる。また、ゾルゲル法に適用可能な材料の種類も様々であり、例えば、酸化物固体(ガラス、セラミックなど)や半導体などの薄膜形成に利用可能である。
【0010】
これまでにも、酸化亜鉛、酸化シリコン、チタン酸ジルコン酸鉛などの物質からなる薄膜を、ゾルゲル法を用いて形成することが試みられている。しかしながら、この方法は、当初は、例えば真空中における薄膜形成方法と比較して、薄膜の品質が十分ではなかった。例えば、ゾルゲル方法にて得られた薄膜は多孔性であるため、この薄膜は、例えば電子デバイスの絶縁層として適用するには絶縁耐圧が十分でなかった。また、この薄膜を、例えば半導体層として適用しようとしても、高性能のトランジスタを作成できるほどの優れた結晶性を持ち合わせていなかった。
【0011】
しかしながら、ゾルゲル法による薄膜形成方法は多くの利点を有する。中でも、工業的な利点としては、例えば、真空中における薄膜形成方法とは異なり、高価で複雑な装置を用いる必要がないことや、製膜方法自体が容易であることが挙げられる。
【0012】
ゾルゲル法による薄膜形成方法は、具体的には、大別して、(1)比較的低温でのプリベーク、(2)比較的高温での仮焼成、および(3)高温での本焼成、の3つの熱工程を必要とすることが一般的である。より具体的には、
(0)塗布:膜を形成しようとする基体(例えば基板など)の表面に、例えばスピンコートなどの方法により、粘性原料(塗布液)を塗布する
(1)プリベーク:主として乾燥を目的とした熱工程
(2)仮焼成:主として後の薄膜形成工程の進行ならびに薄膜の特性の制御を容易にするための準備を目的とした熱工程
(3)本焼成:主として所望の特性を有する膜(例えば結晶化した膜)とすることを目的とした熱工程
という工程が一般的である。したがって、一般に熱工程が3つあり、それぞれが目的に応じて異なる温度および時間を必要とするのが一般的である。
【0013】
各熱工程の温度としては、例えば多成分系の金属酸化物の場合、典型的には、前記(1)〜(3)の各熱工程をそれぞれ、100〜250℃、200〜400℃、700〜900℃などで行なう。従来の各加熱工程に要する加熱時間は長く、数10〜1時間に及ぶ場合もある。すなわち、複数回の異なる温度での熱工程が必要である。このことから判断すると、一般的なゾルゲル法を用いた薄膜形成方法においては、製造プロセスの簡素化が十分に達成されているとはいえない。
【0014】
一方、今後の電子デバイスの開発においては、ガラスや樹脂等からなる基板上に薄膜を形成する技術の開発が期待されている。特に、半導体集積回路は、微細化がさらに進行することが予想される。しかしながら、ゾルゲル法を用いた薄膜形成方法においては、現状は、前記(3)本焼成の温度がかなり高い。したがって、半導体集積回路の超微細化がさらに進行した場合、長時間の加熱が不可能になることが予想される。したがって、ゾルゲル法を用いた薄膜形成方法において、製造プロセスにおける技術革新が求められている。
【0015】
本発明に関連する従来技術として、例えば特許文献1には、塗布法によりSr,Bi,Ta,Nbのアルコキシドまたは有機金属塩を原料とし、薄膜キャパシタを製作する方法が述べられている。しかしながら、この方法では、結晶化のために600℃以上での加熱工程が必要であり、さらに、加熱のために赤外線ランプの使用が必要である。
【0016】
また、例えば特許文献2には、フラッシュランプを用いた強誘電体結晶膜を有する半導体デバイスの製造方法が述べられている。しかしながら、この方法においては、強誘電体結晶薄膜形成のために、強誘電体膜(アモルファス状態)をあらかじめ形成することが要件とされている。そのためには、実質上スパッタリング等の真空製膜手法を用いることが必要であるため、高価な生産設備が必要であり、かつ長時間の工程を要する。
【0017】
【特許文献1】
特許第2658878号公報
【特許文献2】
特開2002−57301号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、誘電体膜の形成において、プロセス温度の低温化を実現し、かつより短時間で広面積の処理を可能にすることにより、生産性を大幅に向上することができる誘電体膜の形成方法を提供する。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、誘電体膜を形成するために、フラッシュランプを用いた光照射を行なうことで、上記課題を一挙に解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
すなわち、本発明の誘電体膜の形成方法は、
(A)有機金属化合物および(B)有機金属化合物の加水分解縮合物の少なくとも一方を含む塗布液を用いて誘電体前駆体膜を形成し、
フラッシュランプを用いて前記誘電体前駆体膜に対して光照射を行なうことにより、誘電体膜を形成すること、
を含む。
【0021】
ここで、本発明の誘電体膜の形成方法は、
前記誘電体前駆体膜を、基板上に形成し、
前記基板の温度を500℃以下に設定して前記光照射を行なうことができる。
【0022】
また、ここで、本発明の誘電体膜の形成方法は、
前記光照射は、パルス点灯であり、
前記光照射における光エネルギーをE[J/cm2]とし、
前記パルス点灯におけるパルス幅をτ[sec]としたとき、
S=E/τ1/2により定義される照射指標Sを、350≦S≦1400となるよう前記光照射を行なうことができる。
【0023】
また、ここで、本発明の誘電体膜の形成方法は、
前記照射指標Sを500≦S≦1250の範囲とすることができる。
【0024】
また、ここで、本発明の誘電体膜の形成方法は、
前記(A)有機金属化合物は、Li,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba,La,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,PbおよびBiのうちから選択された1種以上の金属原子を含むことができる。
【0025】
また、ここで、本発明の誘電体膜の形成方法は、
前記(A)有機金属化合物は、金属アルコキシド、金属カルボキシレートおよび金属錯体のいずれかであることができる。
【0026】
また、ここで、本発明の誘電体膜の形成方法は、
前記(B)有機金属化合物の加水分解縮合物は、前記金属アルコキシド、前記金属カルボキシレートおよび前記金属錯体のいずれかを加水分解縮合して得られる。
【0027】
本発明の誘電体膜は、
(A)有機金属化合物および(B)有機金属化合物の加水分解縮合物の少なくとも一方を含む塗布液を用いて誘電体前駆体膜を形成し、
フラッシュランプを用いて前記誘電体前駆体膜に対して光照射を行なうことにより、誘電体膜を形成すること、
により形成された。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の誘電体膜の形成方法は、(A)有機金属化合物および(B)有機金属化合物の加水分解縮合物の少なくとも一方を含む塗布液を用いて誘電体前駆体膜を形成し、フラッシュランプを用いて前記誘電体前駆体膜に対して光照射を行なうことにより、誘電体膜を形成すること、を含む。
【0029】
まず、塗布液を構成する成分について、以下に説明する。
【0030】
[塗布液]
((A)有機金属化合物)
(A)有機金属化合物は、Li,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba,La,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,PbおよびBiから選択された1種以上からなる金属(以下、「特定金属」という)であることができる。好ましくは、(A)有機金属化合物は、特定金属の金属アルコキシド、金属カルボキシレートおよび金属錯体である。
【0031】
(A)有機金属化合物に含まれる特定金属は、合計で1種以上、好ましくは1〜5種、より好ましくは1〜4種である。(A)有機金属化合物は、特定金属を2種以上有する化合物であってもよいし、(A)有機金属化合物を2種以上組み合わせて使用することもできる。例えば、(A)有機金属化合物に含まれる特定金属は、Pb、Zr、TiおよびLaのうちから選ばれる1〜4種、あるいはSr、Bi、Ti、TaおよびNbのうちから選ばれる1〜4種であることがより好ましい。
【0032】
《金属アルコキシド》
金属アルコキシドは、特定金属の原子とアルコールとが反応した化合物であり、下記一般式(1)で表される。
【0033】
Ma(OR1)a (1)
〔式(1)中、Mは、Li,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba,La,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,PbおよびBiから選択された金属を表しており、aは、金属Mの価数に応じた1−7の正数であり、R1は、アルコールのOH基を除いた残基である。〕
上記金属アルコキシドを形成するアルコールとしては、例えば、下記式(2)に示すものを好適例として挙げることができる。
【0034】
R1OH (2)
〔式(2)中、R1は、炭素原子数1〜6の飽和または不飽和の炭化水素基、あるいは炭素原子数1〜6のアルコキシル基で置換された炭化水素基を示す。〕
上記一般式(2)において、R1が炭素原子数1〜6の飽和または不飽和の炭化水素基の場合は、アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール等を挙げることができる。
【0035】
また、上記一般式(2)において、R1が炭素原子数1〜6のアルコキシル基で置換された炭化水素基の場合は、アルコールとして、例えば、メトキシメタノール、メトキシエタノール、エトキシメタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、プロポキシプロパノール等を挙げることができる。
【0036】
《金属カルボキシレート》
金属カルボキシレートは、金属原子とカルボン酸が反応した化合物であり、下記一般式(3)で表される。
【0037】
Ma(OCOR2)a (3)
〔式(3)中、Mは、Li,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba,La,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,PbおよびBiから選択された金属を表しており、aは、金属Mの価数に応じた1−7の正数であり、R2は、カルボン酸のCOOH基を除いた残基である。〕
上記金属カルボキシレートを形成するカルボン酸としては、例えば、下記式(4)に示すものを好適例として挙げることができる。
【0038】
R2COOH (4)
〔式(4)中、R2は、炭素原子数1〜10の飽和または不飽和の炭化水素基で置換された炭化水素基を示す。〕
上記一般式(4)で示されるカルボン酸としては、例えば、酢酸、2−メチルプロピオン酸、ペンタン酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等を挙げることができる。
【0039】
《金属錯体》
金属錯体は、金属原子へ有機化合物が配位した化合物であり、下記一般式(5)で表される。
【0040】
Ma(OR1)b(OCOR2)cR3 d (5)
〔式(5)中、Mは、Li,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba,La,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,PbおよびBiから選ばれる金属を表しており、aは、金属Mの価数に応じた1−7の正数であり、bは1−7の正数、cは1−7の正数であり、a=b+cを満たす。dは1−7の正数である。R1は、アルコールのOH基を除いた残基であり、R2は、カルボン酸のCOOH基を除いた残基である。R3は、有機化合物である。〕
金属原子へ配位する有機化合物としてエーテル類があり、例えば下記式(6)に示す化合物を挙げることができる。
【0041】
R4OR5 (6)
〔式(6)中、R4、R5は、炭素原子数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。〕
具体的なエーテル類としては、例えば、メチラール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルエーテル、トリオキサン、ジオキサン等を挙げることができる。
【0042】
金属原子へ配位する有機化合物としてケトン類があり、例えば下記式(7)および(8)に示す化合物を挙げることができる。
【0043】
R6R7C=O (7)
R6R7(C=O)CH(C=O)R6R7 (8)
〔式(7)および(8)中、R6、R7は、炭素原子数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。〕
具体的なケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトニトリルアセトン、ジメチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール、アセチルアセトン等を挙げることができる。
【0044】
金属原子へ配位する有機化合物としてエステル類があり、例えば、下記式(9)に示す化合物を挙げることができる。
【0045】
R8COOR9 (9)
〔式(9)中、R8、R9は、炭素原子数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。〕
具体的なエステル類としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、酪酸エチル、オキシイソ酪酸エチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、メトキシブチルアセテート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル等を挙げることができる。
【0046】
((B)有機金属化合物の加水分解縮合物)
塗布液は、(A)有機金属化合物のかわりに、あるいは(A)有機金属化合物とともに、(B)有機金属化合物の加水分解縮合物(以下、「加水分解縮合物」ともいう)を含むことができる。
【0047】
(B)加水分解縮合物は、(A)有機金属化合物をさらに加水分解し、縮合させて得られる。この加水分解は、(A)有機金属化合物に水、または水および触媒を添加し、20〜100℃で数時間〜数日間撹拌することにより行なわれる。
【0048】
ここで、水は、(A)有機金属化合物100モル%に対して、通常100モル%以下、好ましくは50〜5モル%の量で使用する。
【0049】
また、ここで使用できる触媒としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸)、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マレイン酸)等の酸触媒や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の無機または有機アルカリ触媒等を挙げることができる。
【0050】
これらのうちでは、酸触媒を用いることがより好ましい。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリを用いた場合、ナトリウム、カリウム等の金属イオンが塗布液中に残存して、形成される誘電体膜の電気特性に影響を与える場合がある。また、アンモニア、アミン等の含窒素系のアルカリを用いた場合、加水分解後に沸点の高い窒素化合物を形成することがあり、この窒素化合物が、形成される誘電体膜の緻密化に影響を与える場合があるためである。
【0051】
なお、加水分解縮合の条件は、形成される誘電体膜の用途に応じて適宜選択することができる。
【0052】
このように、(A)有機金属化合物に対して、さらに加水分解縮合処理をして得られた(B)加水分解縮合物を含む塗布液を用いることにより、誘電体膜の形成工程において、乾燥工程(後述する)後における塗布膜全体に占める有機成分の含有量を低減させることができ、さらに、各金属のメタロキサン結合(例えば、Bi−O−Bi、Bi−O−Ta、Bi−O−Sr、Ta−O−Bi−O−Sr等の金属原子と酸素原子との結合)の形成を促進することができる。
【0053】
(塗布液の作成)
本発明においては、(A)有機金属化合物および(B)加水分解縮合物の少なくとも一方を有機溶媒へ溶解または分散することにより、誘電体膜形成用の塗布液が得られる。
【0054】
ここで、(A)有機金属化合物および(B)加水分解縮合物をそれぞれ2種以上混合することもできる。また、(A)有機金属化合物以外の有機金属化合物(以下、「その他の有機金属化合物」という)を併用することもできる。その他の有機金属化合物としては、(A)有機金属化合物を製造する際に用いられる金属アルコキシド、金属カルボキシレートなどを挙げることができる。
【0055】
(A)有機金属化合物および(B)加水分解縮合物の溶解または分散に用いられる有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、低級カルボン酸系溶媒等を挙げることができる。
【0056】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。
【0057】
多価アルコール系溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセトエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシブタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
【0058】
エーテル系溶媒としては、メチラール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルエーテル、トリオキサン、ジオキサン等を挙げることができる。
【0059】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトニトリルアセトン、ジメチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール等を挙げることができる。
【0060】
エステル系溶媒としては、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、酪酸エチル、オキシイソ酪酸エチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、メトキシブチルアセテート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル等を挙げることができる。
【0061】
低級カルボン酸系溶媒としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等を挙げることができる。
【0062】
上記の溶媒は、1種を用いてもよいし、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0063】
本発明において、この塗布液中の(A)有機金属化合物、(B)特定加水分解縮合物、およびその他の有機金属化合物の合計量の濃度は、金属酸化物換算で、固形分濃度1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%である。
【0064】
塗布液における各金属元素成分の含有量、例えば、Bi金属元素成分、Sr金属元素成分およびTa金属元素成分の含有量については、適用デバイスの種類(FRAM用,DRAM用,MFS用,MFIS用,MFMIS用等)や、使用する電極(例えば上部電極,下部電極)の種類、厚さ、組み合わせ、およびバリヤ層の種類、厚さ、さらに、シードレイヤー(配向膜)の有無等に応じて、適宜選択することができる。
【0065】
[誘電体前駆体膜の形成]
本発明において、誘電体膜を形成するためには、まず、誘電体前駆体膜を形成する。この誘電体前駆体膜は、(A)有機金属化合物、(B)加水分解縮合物および必要に応じてその他の有機金属化合物を溶媒に溶解させて混合して得られた塗布液を基板に塗布し、必要に応じて乾燥することにより形成される。
【0066】
具体的には、まず、前述した塗布液を基板上に塗布する。塗布液を製造するために用いる種々の溶媒は、前述したものを用いることができる。また、前記溶媒は、塗布条件の違いに応じて、適宜最も好ましいものを用いることができる。
【0067】
ここで、塗布方法としては、例えばオープンスピン塗布法、密閉スピン塗布法、ミスト化塗布のLSM−CVD法、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、印刷法、インクジェット法等の公知の塗布法を用いることができる。
【0068】
また、ここで、乾燥は、通常50〜400℃、好ましくは150〜250℃の温度で行う。さらに、250〜500℃の温度で仮焼成を行ってもよい。
【0069】
このように、塗布液の塗布、ならびに必要に応じて乾燥および仮焼成までの一連の操作を数回繰り返して行うことにより、誘電体前駆体膜を所望の膜厚に設定することが好ましい。
【0070】
塗布液が塗布される基板としては、平面でも非平面(例えば段差があるもの)でもよく、所望のカバレージを実現できるものであればその形態は特に限定されるものではない。また、基板の形状は特に制限されるものではなく、例えばバルク、薄板、フィルム形状のものを用いることができる。このような基板の材質の具体例としては、半導体、ガラス、金属、プラスチック、セラミックスなどを挙げることができる。
【0071】
半導体基板の例としては、シリコンウエーハなどが挙げられる。このシリコンウエーハ上にはシリコン酸化膜、Pt、Ir、Ru等の金属、およびその金属酸化物である導電性金属酸化物などからなる電極などが形成されていてもよい。またGaAsやInPなどの化合物半導体基板も使用可能である。
【0072】
ガラス基板としては、例えば石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス、ランタン系ガラス等からなる基板が使用できる。
【0073】
金属基板としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄の他ステンレス鋼等からなる基板が使用できる。
【0074】
プラスチック基板としては、例えばポリイミドやメタクリレート等からなる基板を使用することができる。これらのプラスチック基板は、ガラス基板や金属基板よりも耐熱性が低い場合があるが、本発明に適用するにあたって原理的な問題は存在しない。
【0075】
[光照射の概論]
本発明においては、前述した方法にて得られた誘電体前駆体膜に対して、フラッシュランプを用いた光照射を行なうことにより、誘電体膜を形成する。このフラッシュランプを用いた光照射について説明する前に、まず、一般的な光照射について説明する。
【0076】
(一般的な光照射)
一般に、焼成に必要なエネルギーを付与する手段として光照射を用いる場合、この光照射に用いる光源としては多様なものが存在する。波長領域の観点から大別すると、赤外線、可視光線、紫外線である。実際は、個々の光源が有するスペクトル特性に基づいて、目的に応じて適した光源を選択することになる。
【0077】
代表的な光源としては、低圧あるいは高圧の水銀ランプ、重水素ランプあるいはアルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスの放電ランプ、窒素レーザ、ガスレーザ(例えばHe−Cdレーザ、Arイオンレーザ、炭酸ガスレーザ)、固体レーザ(例えばルビーレーザやYAGレーザ)、エキシマレーザ(例えばXeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArCl)のなどが挙げられる。
【0078】
従来技術の欄で既に説明したように、レーザ光の照射は、広面積に光照射を行なう必要がある場合には不利である。例えば、数cm2またはそれ以上の領域にレーザ光を照射する場合、ビームエキスパンダーなどの光学系を使う必要がある。しかしながら、この場合、レーザ光の照射強度および照射密度は低下する。また、広面積の領域に高強度のレーザ光を照射することが必要な場合には、高価な大型高出力のレーザ装置が必要となるため、生産コストが増大する。一方、レーザ光の放射角を広げることによって、広面積の領域にレーザ光を照射することもできる。しかしながら、この場合、レーザ光の放射角の拡大には限界がある。
【0079】
また、水銀ランプやキセノンランプを連続点灯させて光照射を行なう方法もある。しかし、連続点灯による光照射では、被照射物(特に基板)に加わる熱的影響が大きい点で好ましい方法とはいえない。さらに、水銀ランプやキセノンランプを連続点灯させながら、ランプにパルス的に高い入力を重畳させる方法、あるいはランプと被照射物の間に機械的なシャッターを設けて、光を断続的に照射する方法などもある。しかしながら、前者は、パルス点灯を重畳させる時間とランプ入力に制約が多く、ランプの消費電力を抑える目的では効果があるものの、被照射物の熱的な影響を根本的に解決するものではない。また後者は、シャッター機構をあらたに設けることとなり装置が複雑化し、短パルス化とピーク出力向上を同時達成するためには、ランプの大型化とシャッター機構の高速化が必要であり、特にシャッター機構の高速化には限界がある。
【0080】
(フラッシュランプを用いた光照射)
これに対して、前述したように、本発明においては、誘電体膜を形成する際に、フラッシュランプによる光照射を用いる。フラッシュランプを用いた光照射によれば、最適エネルギー値の許容幅を広く選定することができ、かつ広面積の領域への光照射を極めて簡単に行なうことができる。さらに、フラッシュランプを使った光照射によれば、被照射物への熱的影響を最小限に留めることができる。そのうえ、フラッシュランプから放射される光は、コヒーレントではなく、かつ波長域が広いので、被照射物に応じて選択した波長選択フィルタを用いることにより、必要な波長域の光のみを極めて容易に利用することができる。
【0081】
本願において、「フラッシュランプを用いた光照射」とは、高電圧のトリガーをいわゆる放電ランプに印加することにより、外部コンデンサに蓄積された電気エネルギーを瞬間的に放電発光させるものである。本発明においては、パルス点灯により光照射することが好ましい。パルス点灯は、1ショットでもよいし、2ショット以上を連続して行なってもよい。すなわち、パルス点灯は、レーザ装置による間欠照射や放電ランプの連続点灯等とは異なるものである。
【0082】
パルス点灯においては、周波数が最大で約100KHzのパルス幅にて光照射を行なうことができる。ただし、実際に可能な周波数は、必要な出力およびパルス幅を実現するために使用される電源および高電圧回路の特性に支配されるものであり、任意の条件においてすべての周波数を取りうるわけではない。
【0083】
フラッシュランプを用いた光照射の条件は、被照射物および光照射の目的に応じて設定される。定性的には、パルス幅が長い程、光照射の効果は被照射物の深部まで及び、逆に、パルス幅が短い程、光照射の効果は被照射物の表面および浅い領域に限定される傾向がある。実際に光照射の効果が及ぶ深さは、被照射物の光吸収特性および光反射特性に大きく左右される。
【0084】
一方、フラッシュランプを用いた光照射は、フラッシュランプ自体の技術的側面からある程度の制約を受ける。フラッシュランプのパルス幅は、最長100ms程度まで可能であり、最短では実用的には0.01ms程度である。なお、放電の際のピーク電流値が7,000A/cm2を越える場合には電極に大きな負担がかかり電極材料の劣化が著しい。また、この際のプラズマ温度は10,000度Kを越える場合もあり得るため、石英ガラス管自身が急速に劣化して破損する場合がある。よって、放電の際のピーク電流値が7,000A/cm2を越えない条件にて光照射を行なうことにより、放電灯の寿命を維持することができる。
【0085】
本発明において、フラッシュランプにより誘電体前駆体膜に対して光照射を行なうことで誘電体膜を形成するにあたり、必要十分なエネルギーが誘電体前駆体膜に付与されるようにするとともに、誘電体膜が形成される基板の材質について考慮することが必要である。
【0086】
例えば、誘電体膜の結晶化に関しては、原理的には、被照射物である誘電体膜が溶融する温度あるいはそれに近い温度にまで昇温することが可能であれば、溶融再結晶により、結晶性の誘電体膜を作成することができる。この場合、単に昇温するだけであれば、高温炉で熱処理をすれば足りる。しかしながら、実際は、誘電体膜の形成工程における温度範囲は、種々の条件によって制約される。
【0087】
例えば、塗布液を塗布することによりガラス基板上に形成された誘電体前駆体膜を結晶化させる場合には、ガラス基板の耐熱性を考慮せねばならない。この場合、基板を構成するガラスの軟化点よりも高い温度に加熱することはできない。
【0088】
さらに、樹脂基板においては、樹脂の軟化点はガラスよりもさらに低いため、ガラス基板よりもさらに低い温度で誘電体膜を形成する必要がある。以上説明したように、誘電体膜を結晶化させる場合には、誘電体膜が形成される基板の材質を考慮しなければならない。
【0089】
すなわち、フラッシュランプによる光照射の効果は、パルス幅が大きいほど被照射物の深部にまで及ぶため、極端に長いパルスを使用する場合には、誘電体膜だけでなく基板を相当程度加熱するのと同等の状況を生じることとなり、基板へ大きな影響が加わる場合がある。以上の事項を考慮すると、実用的なフラッシュランプの光照射条件としては、好ましくはパルス幅0.01ms〜50msであり、より好ましくは0.05ms〜30msである。この範囲内で、例えば実施例で後述するように、シリコン基板上に前駆体膜を形成する場合、パルス幅を0.01〜5ms程度とすることができる。なお、本願において、「パルス幅」とは、通常、半値幅と呼ばれているものに相当し、パルスの尖頭値の1/2に相当する値の時間幅のことをいう。
【0090】
フラッシュランプによる光照射の条件を具体的に規定する要素のうち、パルス幅およびピーク電流値については上述したが、それ以外の要素としては、例えば照射エネルギー密度がある。照射エネルギー密度は、被照射物に照射される単位面積当たりのエネルギーであって、典型的には1〜100J/cm2の値をとる。光源の性能を考慮した上で、可能な照射エネルギー値は、光照射に用いられるフラッシュランプの構造、材料、封入ガス種および圧力、電源の性能、フラッシュランプと被照射物との位置関係、装置の構造など様々な要因に依存する。このため、すべての必ずしもこの範囲の値をとるということではない。本発明を案出した時点での本発明者らの実験機においては、照射エネルギー密度が2〜70J/cm2の範囲での光照射が可能である。
【0091】
一方、本発明においては、フラッシュランプを用いた光照射の制御は、照射指標Sに基づいて行なわれる。本発明者は、パルス光を被照射物に照射することにより被照射物を改質する場合、所定の程度に改質する条件は、パルス光のエネルギーの多寡とパルス幅により複数存在することを見出した。すなわち、照射エネルギー密度が等しくてもパルス幅が異なる場合には、被照射物の改質の度合いが異なる。したがって、本発明によれば、「光エネルギーE[J/cm2]とパルス幅τ[sec]を基に算出される照射指標S」に基づいて、フラッシュランプによる光照射を制御することにより、異なる光エネルギーEやパルス幅τを有する光照射においても、誘電体膜を改質するための条件を設定することができる。
【0092】
ところで、フラッシュランプの光照射において、試料ホルダあるいはステージの補助加熱温度(注:光照射により誘電体膜が到達する温度ではない)は、装置および被照射物(誘電体膜)の耐久性に依存するが、原理的には、いかなる温度においても照射そのものは可能である。結露などの恐れが無い環境であれば極低温でも良く、また、必要な排熱や断熱を施せるのであれば、数百℃あるいは1000℃を上回る温度でも可能である。しかしながら、実際には、被照射物を構成する材料の種類等その他の条件を勘案して、適当な範囲内の温度に設定する。例えば、基板上に形成された誘電体膜の結晶化を目的とする場合には、以下の方法にて最適な温度範囲の設定を行うことができる。
【0093】
実用上まず考慮すべき点は、基板の材質である。加熱の必要が無い場合には室温でよいが、加熱を併用する場合には、基板自体が軟化、溶融などを起こさないことが必要である。例えばSi基板を用いる場合、Siの融点である1400℃付近まで加熱しないようにする必要がある。また、例えば石英基板を用いる場合、透明材料としては相当の高温域での使用が可能なものであり、軟化点から判断すると1600℃付近、徐冷点から判断すると1100℃付近が、加熱可能な最高温度であると考えられる。また、ガラス基板を用いる場合、その材質によるが、軟化点に至らない温度、典型的には600℃程度あるいはそれ以下に設定することが必要となる。
【0094】
なお、照射エネルギーが低い場合には、基板をある程度昇温しておく方が結晶化しやすい傾向があり、また、照射エネルギーが高い場合には、基板温度が高いと薄膜に対してダメージを与える場合がある。
【0095】
さらに、フラッシュランプによる光照射より前の製造プロセス(例えばプリベークや仮焼成)において、一般に焼成によって誘電体膜を形成する際の温度よりも低い温度にすることが望ましい。フラッシュランプによる光照射より以前の工程において、一般に焼成によって誘電体膜を形成する際の温度よりも高い温度に基板を設定することは、焼成を行っているのと同等であり、基板に意図せぬ変性が生じる場合があるため好ましくない。したがって、例外的な場合を除いて、フラッシュランプによる光照射における基板の温度は、一般に焼成によって誘電体膜を形成する際の温度より低く設定することが望ましい。これにより、純粋に光照射効果を実効することができる。
【0096】
また、フラッシュランプによる光照射に際し、加熱効果を重畳させる方が好ましい場合には、目的とする加熱効果に応じて、誘電体膜が形成される基板の温度を所望の温度に設定することができる。なお、実際には、生産性を向上させることが重要である。例えば、一般的には、昇温工程および降温工程に要する時間を少なくする方が、製造プロセスに要する時間を短縮することができる。このため、同様の物性が得られる複数の条件が存在する場合には、基板の加熱を必要としない方法、あるいは基板の温度が低く設定された条件を選択することが好ましい場合もある。
【0097】
また、フラッシュランプによる光照射の際の雰囲気については、原理的には特に限定されない。しかしながら、まず、安全性の観点から、引火性あるいは爆発性の雰囲気でないことが望ましい。助燃性に関しては条件次第である。例えば、非酸化性雰囲気中で光照射を行なうのが望ましい場合には、酸化性物質(例えば、酸素、二酸化炭素、水蒸気)を実質的に含有しない雰囲気を用いる。このような雰囲気としては、具体的には、窒素、希ガス(例えばヘリウム、アルゴン、ネオン)ならびにこれらの混合ガス中の雰囲気が例示できる。
【0098】
(照射装置の構成例の詳細)
次に、フラッシュランプを光源とした光照射装置10について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の誘電体膜の形成方法を実施するための光照射装置10を模式的に示す断面図である。
【0099】
光照射装置10には、図1に示すように、複数本のフラッシュランプ1が配置されている。これらのフラッシュランプ1は、反射鏡2に囲まれている。図1においては、複数本のフラッシュランプ1は、等間隔で並行に配列されている場合を示したが、フラッシュランプ1の配置は特に限定されるわけではなく、例えば千鳥配置にすることもできる。また、各フラッシュランプ1に対して、それぞれ給電装置(図示せず)が接続されている。
【0100】
また、試料5はチャンバ(反応室)7内に設置されている。具体的には、試料5は、チャンバ7内のステージ4上に設置されている。この試料5は、誘電体膜前駆体(図示せず)が形成されている基板であり、この誘電体膜前駆体に対してフラッシュランプ1を用いた光照射を行なうことにより、誘電体膜(図示せず)が形成される。
【0101】
フラッシュランプ1からの放射光は、直接あるいは反射鏡2で反射された後、拡散板3を介して、ステージ4にセットされる試料5に照射する。この拡散板3は、石英板6の上に設置されている。この石英板6は、チャンバ7上に設置されている。拡散板3は、例えば、フロスト処理した石英ガラス板からなり、ランプ1からの放射光を均一にする機能を有する。
【0102】
チャンバ7内の雰囲気は、例えばアルゴン(Ar)、窒素(N2)、真空、大気雰囲気、あるいは反応性ガスなど、目的に応じて所望の雰囲気に設定することができる。
【0103】
また、ステージ4の下方にはヒータ8が設置されている。これにより、必要に応じてヒータ8によって試料5を加熱することができる。さらに、ステージ4には、必要に応じてランプ1との距離を調節できる昇降機構(図示せず)を設けることができる。この場合、ランプ1と試料5との距離は、装置の制約内において任意に設定することができ、例えば10〜70mmの範囲に設定することができる。実際には、フラッシュランプによる光照射の強度や目的に応じて、ランプ1と試料5との距離を適宜選択することができる。例えば、光照射の強度を必要とし、被照射物(誘電体膜)からの光源への影響が無視できる場合、ランプ1と試料5との距離を例えば25mmに設定することができる。
【0104】
ステージ4の表面の材質は、熱伝導率、耐光性、耐薬品性、被照射物の性質、使用温度、試料の均熱性などを考慮して、適宜選択することができる。例えば、ステージ4の表面の材質として、セラミックス(アルミナ、チッ化アルミニウム、シリコンカーバイトなど)、金属(アルミニウム、ステンレスなど)などを用いることができる。
【0105】
具体的には、ステージ4として、表面がアルミニウム(Al)膜による高反射面処理が行なわれているものを用いることができる。この場合、前記アルミニウム膜は、紫外域から赤外域にいたるまでの広帯域にわたって、均一かつ高い反射特性を有している。
【0106】
次に、図1に示すフラッシュランプ1の基本構造について説明する。図2は、図1に示すフラッシュランプ1を模式的に示す断面図である。
【0107】
フラッシュランプ1は、図2に示すように、放電容器21と、電極(陽極22および陰極23)と、トリガー電極24とを含む。
【0108】
放電容器21内には、例えばキセノンガスが封入されており、その両端が封止されて内部に放電空間26が区画される。この放電区間26にて放電が行なわれる。
【0109】
陽極22および陰極23は、放電容器21内に配置されている。放電容器21としては、例えば、直管型の石英ガラス製容器を用いることができる。陽極22および陰極23はそれぞれ、放電容器21の両端に設置され、かつ互いに対向するように設置されている。また、放電容器21の外面には、長手方向にトリガー電極24が設置されている。このトリガー電極24は、トリガーバンド25によって保持されている。
【0110】
フラッシュランプ1において、具体的には、放電容器21の内径は、φ8〜15mmの範囲から選択することができ、例えば10mmである。また、放電容器の長さは、200〜550mmの範囲から選択することができる。例えば300mmである。
【0111】
放電容器21に用いられる石英ガラスとしては、一般に、合成石英ガラス、溶融石英ガラス、酸化チタンをドープした石英ガラス、酸化チタンと酸化セリウムをドープした石英ガラスなどが利用される。このうち、酸化チタンをドープした石英ガラスは、250nm以下の短波長の光の発生が抑えられているものである。この石英ガラスによれば、酸化チタンがドープされていることにより、オゾンなど望ましくないガスの発生を抑えることができ、その結果、250nm以下の短波長の光の発生を抑えることができる。また、被照射物へ光照射する際に、250nm以下の短波長の光が存在することが好ましい場合には、合成石英ガラス、溶融石英ガラスが適宜利用される。
【0112】
また、放電容器21内のキセノンガスの封入量は、200〜1500torrの範囲から選択することができ、例えば500torrである。また、主発光成分としてはキセノンガスに限らず、その代わりにアルゴンやクリプトンガスを採用することもできる。また、キセノンガスに加えて水銀など他の物質を添加することもできる。
【0113】
陽極22および陰極23としては、タングステンを主成分とする焼結型電極を用いることができる。陽極22および陰極23の大きさは、外径が4〜10mmの範囲から選択することができ、例えば5mmである。陽極22および陰極23の長さは、5〜9mmの範囲から選択することができ、例えば7mmである。陽極22と陰極23との間の距離は、100〜2000mmの範囲から選択することができ、例えば500mmである。また、陰極23には、エミッタとして、酸化バリウム(BaO),酸化カルシウム(CaO),酸化ストロンチウム(SrO),アルミナ(Al2O3),希土類酸化物などが混入されている。
【0114】
さらに、トリガー電極24は、ワイヤ状であり、ニッケルやタングステンから形成されている。このトリガー電極24は、直接あるいは適宜誘電体を介して放電容器21に接触している。
【0115】
本発明の回路構成の一例を図3に示す。図3に示す回路は、照射指標Sを制御する機能を有する。この回路は、フラッシュランプ1に電気的に接続され、変圧器11、トリガーバー12、充電器13、トリガー充電器14、コイルL1,L2,L3、およびコンデンサーC1,C2,C3とを含む。
【0116】
この回路においては、充電器13からのエネルギーをコイルL1,L2,L3およびコンデンサーC1,C2,C3の組み合わせからなる回路に蓄積し、フラッシュランプ1の発光に利用する。ここではコイルとコンデンサーの組み合わせを3段用いる回路例を記載したが、コイルおよびコンデンサーは、目的に応じて段数および個々の部品の容量などを適宜選択することができる。
【0117】
キセノンフラッシュランプ1を点灯させて、所望の光照射効果を得るためには、必要とするエネルギーをフラッシュランプ1に対してほぼ瞬時に供給する必要がある。この場合、必要とするエネルギーは、通常の電源から直接給電する方法では不十分である。このため、蓄電機能を有するデバイスにエネルギーを蓄えた後、信号により一気に該エネルギーを放出させる手法を用いることができる。図3に示す回路においては、コンデンサーC1,C2,C3が蓄電機能を担っており、その容量Cは、目的に応じて適宜設定することができる。
【0118】
また、コイルL1,L2,L3は、インダクタンスLとして機能する。このインダクタンスLによれば、負荷に対して適切なパルスとして放電させることができる。これらCとLの組み合わせおよび個数によって、エネルギーおよびパルス幅を変化させることができる。図3においては、コイルが3段構成である場合を示しているが、コイルの構成は限定されるものではない。
【0119】
また、コンデンサーC1,C2,C3に電荷を蓄積しただけでは、フラッシュランプ1は発光しない。すなわち、何らかの方法で放電を開始させるためのトリガーをかける必要がある。コンデンサーCに蓄積された電荷の量が過大である場合、トリガー無しで発光する。しかしながら、このような態様では、トリガー制御が一切できないため、トリガーの制御が可能な電荷量の範囲内で使用する必要がある。このように、制御可能な外部トリガーを用いることにより、高電圧パルスを用い、フラッシュランプ1内の陽極22と陰極23の間に、薄いイオン化した領域を形成することができる。
【0120】
ここで、トリガーバー12に高電圧のパルスを印加することによって、電位勾配が生じ、この電位勾配によって、フラッシュランプ1を構成する放電容器21の壁部21aの近傍において、イオン化が開始する。そして、極めて短時間でフラッシュランプ1内でイオン化が進行し、瞬時の閃光が生じる。なお、図3において、Dはダイオード、Rは抵抗、C5,C6はコンデンサー、Swは起動スイッチ、11は変圧器である。トリガーバー12は、変圧器11に電気的に接続されている。このトリガーバー12は、フラッシュランプ1の放電容器21の外壁に設置されている。
【0121】
さらに、光エネルギーEは次のように求める。本発明のフラッシュランプの光量は、写真用のストロボフラッシュなどとは異なり高出力である。このような高出力の光を直接計測器に導入すると、センサにダメージを与えるおそれがある。そこで、図9に示すような測定系を用いる。
【0122】
図9に示す測定系においては、フラッシュランプからの入射光31を、所望の形状および穴径のオリフィス32を通して減光した後、センサヘッド33に導入する。センサヘッド33の内部には、吸収体を有するセンサ34が設置されている。このセンサ34は、光エネルギーを熱エネルギーとして測定する。測定された熱エネルギーは、表示部36にて読み取ることができる。また、センサヘッド33の内部には、測定部の温度変動による影響の懸念をなくすために、冷却機構35が設けられている。
【0123】
また、パルス幅τは、回路の電流波形をオシロスコープで測定し、その半値幅として求めている。
【0124】
本発明において、照射指標Sの範囲は、350≦S≦1400であることが望ましく、さらに、500≦S≦1250の範囲がより望ましい。図4は、照射指標Sと、フラッシュランプ1による光照射によって得られた誘電体膜(セラミック薄膜)の結晶性との関係を示す概念図である。
【0125】
図4に示すように、照射指標Sの値が350よりも小さい場合、結晶化した誘電体膜が形成されない。一方、照射指標Sが1400よりも大きい場合、誘電体膜の飛びや不均一性、さらには基板の損傷など何らかのダメージが生じる。
【0126】
例えば、ペロブスカイト型の結晶性薄膜からなる誘電体膜を形成する場合、均一な結晶構造の誘電体膜を得るためには、照射指標Sは、500≦S≦1250の範囲であるのが望ましい。
【0127】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0128】
[実施例1]
(塗布液1の調製)
Sr[OCH(CH3)2]21.14g、Ta(OC2H5)55.00g、および2−エチルヘキサン酸5.23gを混合し、150℃で4時間攪拌した後、室温まで冷却した。これにより、SrTa金属アルコキシド類が反応した有機金属化合物を得た。得られた有機金属化合物を、室温〜50℃にて減圧下で1時間撹拌した後、低沸点のアルコールを除去し、これを(a)有機金属化合物とした。
【0129】
Bi(OtC5H11)37.00gに酪酸0.99gを混合し、100℃で2時間攪拌した後、室温まで冷却した。これにより、Biアルコキシドが反応した有機金属化合物を得た。得られた有機金属化合物を、室温〜50℃にて減圧下で1時間撹拌した後、低沸点のアルコールを除去し、これを(b)有機金属化合物とした。
【0130】
上記(a)有機金属化合物と(b)有機金属化合物を、Sr:Bi:Ta=0.9:2:2となるように混合した後、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを用いて、金属酸化物換算で濃度が10重量%となるように希釈することにより、誘電体膜形成用の塗布液(塗布液1)を得た。
【0131】
(誘電体前駆体膜の形成)
次いで、熱酸化法により得られた膜厚1000nmの酸化シリコン層が表面に形成された直径6インチのシリコンウェーハ上に、スパッタリング法によって、膜厚100nmのPtからなる下部電極を形成した。
【0132】
次に、前記下部電極上に、塗布液1を、スピンコータを用いて500rpmで5秒間、続いて3000rpmで20秒間回転塗布した後、250℃で5分間乾燥を行うことにより、膜厚100nmの誘電体前駆体膜を作製した。
【0133】
(誘電体膜の形成)
次いで、基板を400℃に加熱しながら、照射指標Sが990の状態にて、フラッシュランプを用いた光照射を1回行うことにより、誘電体前駆体膜を結晶化させた。これにより、強誘電体膜が得られた。なお、使用するフラッシュランプの仕様は先に述べた通りである。
【0134】
実施例1において得られた強誘電体膜のX線回折チャートを図5に示す。図5によれば、強誘電体膜が、SrTaBi複合酸化物のペロブスカイト型の結晶構造になっていることが判断できる。
【0135】
実施例1によれば、フラッシュランプを用いない従来の焼成工程における典型的な温度(700℃)と比較して、加熱温度を大幅に低下させることができる。
【0136】
また、フラッシュランプによる光照射条件は、誘電体膜の塗布膜厚、密度、組成により異なるが、照射回数は1〜5回であることが望ましい。必要に応じて、上記のコーティング工程を複数回反復することにより厚さを調整することが可能である。
【0137】
[実施例2]
(塗布液2の調製)
Ba[OCH(CH3)2]22.61g、Ti[OCH(CH3)2]52.90g、および2−エチルヘキサン酸4.42gを混合して、150℃で2時間攪拌した。その後、室温まで冷却することにより、BaTi金属アルコキシド類が反応した(c)有機金属化合物を得た。
【0138】
次いで、上記(c)有機金属化合物を、プロピレングリコールモノプロピルエーテルで金属酸化物換算で濃度10重量%となるように希釈することにより、誘電体膜形成用の塗布液(塗布液2)を得た。
【0139】
(誘電体前駆体膜の形成)
次いで、実施例1と同様の方法にて、熱酸化法により得られた膜厚1000nmの酸化シリコン層が表面に形成された直径6インチのシリコンウェーハ上に、スパッタリング法によって、膜厚100nmのPtからなる下部電極を形成した。
【0140】
次に、前記下部電極上に、塗布液2を、スピンコータを用いて500rpmで5秒間、続いて3000rpmで20秒間回転塗布した後、200℃で1分間乾燥を行うことにより、膜厚100nmの誘電体前駆体膜を作製した。
【0141】
(誘電体膜の形成)
次いで、基板を400℃に加熱しながら、照射指標Sが880の状態にて、フラッシュランプを用いた光照射を1回行うことにより、誘電体前駆体膜を結晶化させた。これにより、強誘電体膜が得られた。なお、使用するフラッシュランプの仕様は先に述べたとおりである。
【0142】
実施例2において得られた強誘電体膜のX線回折チャートを図6に示す。図6によれば、強誘電体膜が、BaTi複合複合酸化物のペロブスカイト型の結晶構造になっていることが判断できる。
【0143】
実施例2によれば、フラッシュランプを用いない従来の焼成工程における典型的な温度(700℃)と比較して、加熱温度を大幅に低下させることができる。
【0144】
また、フラッシュランプによる光照射条件は、誘電体膜の塗布膜厚、密度、組成により異なるが、照射回数は1〜5回であることが望ましい。必要に応じて、上記のコーティング工程を複数回反復することにより厚さを調整することが可能である。
【0145】
[比較例1]
実施例1と同様の方法にて、膜厚1000nmの熱酸化酸化シリコン層が表面に形成された直径6インチのシリコンウェーハ上に、スパッタリング法によって、膜厚100nmのPtからなる下部電極を形成した。
【0146】
次に、上記下部電極上に、塗布液1を、スピンコータを用いて500rpmで5秒間、続いて3000rpmで20秒間回転塗布し、250℃で5分間乾燥を行ない、誘電体前駆体膜を形成した。
【0147】
次いで、この誘電体前駆体膜を400℃に加熱焼成した。この塗膜のX線回折チャートを図7に示す。図7によれば、塗膜がアモルファスであることがわかる。
【0148】
[比較例2]
実施例2と同様の方法にて、熱酸化法により得られた膜厚1000nmの酸化シリコン層が表面に形成された直径6インチのシリコンウェーハ上に、スパッタリング法によって、膜厚100nmのPtからなる下部電極を形成した。
【0149】
次に、上記下部電極上に、塗布液2を、スピンコータを用いて500rpmで5秒間、続いて3000rpmで20秒間回転塗布し、200℃で1分間乾燥を行ない、誘電体前駆体膜を形成した。
【0150】
次いで、この誘電体前駆体膜を300℃に加熱焼成した。この塗膜のX線回折チャートを図8に示す。図8によれば、塗膜がアモルファスであることがわかる。
【0151】
このように、フラッシュランプを用いて誘電体前駆体膜に対して光照射することにより、400℃以下の温度で、結晶性の誘電体膜を得ることができた。また、得られた誘電体膜は、良好な誘電率を有する。一方、誘電体前駆体膜を400℃以下の温度にて加熱するだけでは、良好な誘電率を有する誘電体膜は得られないことが明らかになった。
【0152】
【発明の効果】
本発明の誘電体膜の製造方法によれば、以下の効果を有する。
【0153】
(1)本発明の誘電体膜の製造方法によれば、フラッシュランプを用いた誘電体前駆体膜に光照射を行ない、誘電体膜を形成することにより、誘電体前駆体膜の加熱温度を必要最低限にしつつ、通常の加熱炉を使用した長時間加熱による製膜方法と同等の効果を得ることができる。これにより、下地物質に対する影響を抑制することができる。また、フラッシュランプを用いた光照射は、わずかな回数のパルス光照射で足りる。したがって、光照射に要する時間が非常に短く、通常の製膜方法すなわち加熱炉による加熱時間と比較して、大幅な処理時間の短縮が可能となるため、生産性が大幅に向上する。
【0154】
(2)また、レーザ光照射装置等の従来の光照射装置では、照射する光の強度を制御する方法が用いられてきた。この場合、必要となる光照射の強度は、被照射物に依存する。場合によっては、光照射の強度が、被照射物によって桁(オーダー)が異なるほど大きく相違することもあった。さらに、レーザアニール装置のように、光学系によってビーム形状を調整する光照射装置は、広範囲にわたって同時に製造プロセスを進行させることが要求される用途には適していない。そのうえ、従来の光照射装置では、光照射強度を制御するにあたり、被照射物において、必要とする深さ範囲のみに均等な効果をもたらし、その深さ範囲より深い部分に不要な悪影響を及ぼさないような条件を設定することは、非常に困難であった。
【0155】
これに対して、本発明の誘電体膜の製造方法によれば、幅広い用途に対応することができる。例えば、高精細度のレーザ照射を要する用途から、広面積の領域を一括して照射することが求められる用途に至るまで、幅広い用途に対応することができる。
【0156】
さらに、光源をパルス点灯し、その際に、照射指標S=E/τ1/2の値で光照射を制御することにより、被照射物に対する不要な障害(例えば、不純物の意図せぬ拡散、クラックの発生、下地物質の異常加熱など)を排除しつつ、所望の特性を有する誘電体膜を形成および改質が可能である。
【0157】
(3)本発明の誘電体膜によれば、(A)有機金属化合物および(B)有機金属化合物の加水分解縮合物の少なくとも一方を含む塗布液を用いて誘電体前駆体膜を形成し、フラッシュランプを用いて前記誘電体前駆体膜に対して光照射を行なうことにより、誘電体膜を形成すること、を含む工程によって形成される。これにより、安価でかつ所望の特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の誘電体膜の形成方法を実施するための光照射装置を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示すフラッシュランプを模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の回路構成の一例を示す図である。
【図4】図4は、照射指標Sと、フラッシュランプによる光照射によって得られた誘電体膜(セラミック薄膜)の結晶性との関係を示す概念図である。
【図5】図5は、実施例1の誘電体薄膜のX線回折チャートである。
【図6】図6は、実施例2の誘電体薄膜のX線回折チャートである。
【図7】図7は、比較例1の誘電体薄膜のX線回折チャートである。
【図8】図8は、比較例2の誘電体薄膜のX線回折チャートである。
【図9】図9は、光エネルギーEを測定するための測定系を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 フラッシュランプ
2 反射板
3 拡散板
4 試料ステージ
5 試料
6 石英板
7 チャンバー
8 ヒータ
10 光照射装置
11 変圧器
12 トリガーバー
13 充電器
14 トリガー充電器
31 入射光
32 オリフィス
33 センサヘッド
34 センサ
35 冷却機構
36 表示部
L1,L2,L3 コイル
C1,C2,C3,C4,C5,C6 コンデンサー
D ダイオード
SW 起動スイッチ
R 抵抗
21 放電容器
22 陽極
23 陰極
24 トリガー電極
25 トリガーバンド
Claims (8)
- (A)有機金属化合物および(B)有機金属化合物の加水分解縮合物の少なくとも一方を含む塗布液を用いて誘電体前駆体膜を形成し、
フラッシュランプを用いて前記誘電体前駆体膜に対して光照射を行なうことにより、誘電体膜を形成すること、
を含む、誘電体膜の形成方法。 - 請求項1において、
前記誘電体前駆体膜を、基板上に形成し、
前記基板の温度を500℃以下に設定して前記光照射を行なう、誘電体膜の形成方法。 - 請求項1または2において、
前記光照射は、パルス点灯であり、
前記光照射における光エネルギーをE[J/cm2]とし、
前記パルス点灯におけるパルス幅をτ[sec]としたとき、
S=E/τ1/2により定義される照射指標Sを、350≦S≦1400となるよう前記光照射を行なう、誘電体膜の形成方法。 - 請求項3において、
前記照射指標Sを500≦S≦1250の範囲とする、誘電体膜の形成方法。 - 請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記(A)有機金属化合物は、Li,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba,La,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,PbおよびBiのうちから選択された1種以上の金属原子を含む、誘電体膜の形成方法。 - 請求項5において、
前記(A)有機金属化合物は、金属アルコキシド、金属カルボキシレートおよび金属錯体のいずれかである、誘電体膜の形成方法。 - 請求項6において、
前記(B)有機金属化合物の加水分解縮合物は、前記金属アルコキシド、前記金属カルボキシレートおよび前記金属錯体のいずれかを加水分解縮合して得られる、誘電体膜の形成方法。 - (A)有機金属化合物および(B)有機金属化合物の加水分解縮合物の少なくとも一方を含む塗布液を用いて誘電体前駆体膜を形成し、
フラッシュランプを用いて前記誘電体前駆体膜に対して光照射を行なうことにより、誘電体膜を形成すること、
により形成された、誘電体膜。
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