JP2004258340A - 湿式電子写真用記録シート - Google Patents
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Abstract
【課題】湿式トナーを使った湿式電子写真方式を用いて印刷した際に、優れた湿式トナー定着性および転移性を有する湿式電子写真用記録シートを提供する。
【解決手段】シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層組成物中に、界面活性機能を有する素材が顔料に対して0.1〜2.0質量%含有してなることを特徴とする湿式電子写真用記録シート。好ましくは界面活性機能を有する素材が、顔料に対して0.2〜1.0質量%含有してなる。
【選択図】 なし
【解決手段】シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層組成物中に、界面活性機能を有する素材が顔料に対して0.1〜2.0質量%含有してなることを特徴とする湿式電子写真用記録シート。好ましくは界面活性機能を有する素材が、顔料に対して0.2〜1.0質量%含有してなる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿式電子写真用記録シートに関するものであり、さらに詳しくは、湿式トナーを使った湿式電子写真方式を用いて印刷した際に、優れたトナー定着性および転移性を有する湿式電子写真用記録シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式を用いて印刷する用途は、端末PC用プリンター、ファックス、または複写機に留まらず、多品種小ロット印刷、可変情報印刷などを可能とする、いわゆるオンデマンド印刷分野でも実用化が進み、技術的進展が目覚しい。近年では印刷速度向上に伴い、印刷部数が従来オフセット、グラビアなどの印刷でまかなわれていた領域に達しはじめた。
【0003】
電子写真印刷は可変情報を扱えるのがメリットであるが、オフセットやグラビア印刷は長年の技術蓄積により非常に高品質の印刷を、安価な価格で達成しているため、品質面、価格面では劣っていた。そのため、印刷機械、印刷用紙の両面から高画質化、高速化、省電力化、そして低コスト化へ向けた技術開発が一段と進められている。印刷物には、より高精細で、色再現性の良さが求められているが、これは高速化、低コスト化とは相反する部分があり、トナーや印刷機械の性能はもちろんのこと、電子写真用記録シートに関してもトナー定着性、転移性、色再現性、走行性など、さらに厳しい品質要望が集まっている。
【0004】
このような電子写真印刷方式のうち、乾式電子写真方式は、事務用複写機などに代表される方式で、画像を形成するトナーは、顔料と合成樹脂からなる固体粉末トナーを使用する。画像形成の方法は、コロナ帯電によって発生させた静電画像にトナーを吸着させ、このトナーを被転写物に加熱圧着する方式で印刷を行う。ところが、この方式はトナーを微細化すると周辺環境に飛散しやすくなり、これを吸入した場合健康上の問題を起こすため作業環境の悪化、さらに印刷物を汚すなどの問題が生じる。このため固体粉末トナーを微細化するには限界があり、高解像度が得られにくい。さらには被転写物の厚さが不均一なことから、コロナ放電による被転写物面の電荷密度にばらつきが生じ、非画線部に、かぶりと呼ばれる好ましくない画像が生じたり、ある程度高い温度で溶融固化しなければならないなどの多くの問題がある。
【0005】
一方、可変情報を扱える他の有望な印刷方式にはインクジェット方式がある。インクジェット方式は、細かなインク滴を被転写物表面に噴出し、画像を形成する方式である。近年の技術進歩は凄まじく、非常に高画質となり、弱点であった耐候性も顔料タイプのインクの出現により大幅に改善されてきた。しかし、オフセット印刷などと比べてしまうと、印刷速度が遅く、高画質を得るためには比較的高価な専用紙を使用しなければならないという問題がある。
【0006】
そこで、オンデマンド印刷領域で、可変情報を扱え、高画質、高速、コストなどの条件を満たすことを考えた場合、各種印刷方式の中でも、湿式電子写真方式が最も有望な方式である。これは湿式電子写真方式が、液体媒体中にトナーを分散させるため、粉体の飛散などが問題とならず、乾式電子写真方式に比べてトナーを1/10以上まで微細化できること、すなわちドットを微細にできることに加えて、色材として顔料を使用できるために耐候性や耐水性の問題がないことなどの理由による。
【0007】
湿式トナーは、ブランケットロールからシートに画像を転写するときに電荷などを利用しない。湿式トナーの印刷用シートの接着性がブランケットロールよりも高いことを利用して画像を転写させる。つまり、ブランケットロールからの湿式トナーの剥離能力が重要となり接着能力を必要以上に高くできない。
【0008】
このため、湿式電子写真方式の印刷の場合、シートの種類によっては印刷をしても十分なトナー強度が得られなかったり、トナー粒子が十分にシートに転写しないと言う欠点がある。このような問題を解決するため、原紙中の灰分量を規定し、かつ表面にジルコニウムを塗布したり(例えば、特許文献1参照)、表面平滑性とサイズ剤を工夫したりしている(例えば、特許文献2参照)例がある。これらは、普通紙(非塗工)タイプの印刷用紙に対して有効である。
【0009】
ところが、印刷用塗工シートの場合、上記手法は通用せず、また市販印刷用紙で湿式電子写真印刷方式に対し十分なトナー適性を持つ物は皆無である。この問題を解決するために、顔料やバインダーの種類とバインダーの配合量を規定することによって解決しようとしている例がある(例えば、特許文献3参照)。しかし、実際には、湿式トナーの定着性や転移性はさまざまな物質が複雑に関係したシート表面の物理的、化学的性質に大きく左右されており、このような手法だけでトナー定着性および転移性の向上を充分成し遂げることは難しいといえる。
【0010】
シートの種類を選ばずに湿式電子写真印刷適性を与えるための手段として、一般に知られている、サファイア処理と呼ばれている手段があるが、この手法はシートの作製において後工程を必要とするためコスト的に見合わない。また、経時でシートが黄色くなると言う欠点を持つ。ゆえに従来の技術では湿式トナーの十分な定着性や転移性を持った汎用的なシートの作製は難しかった。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−171146号公報
【特許文献2】
特開平10−171148号公報
【特許文献3】
特開平9−281739号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、湿式トナーを使った湿式電子写真方式を用いて印刷した際に、優れたトナー定着性および転移性を有する湿式電子写真用記録シートを提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明の湿式電子写真用記録シートを発明するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の湿式電子写真用記録シートは、シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層組成物中に、界面活性機能を有する素材が顔料に対して0.1〜2.0質量%含有してなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明において、好ましくは、界面活性機能を有する素材が、顔料に対して0.2〜1.0質量%含有してなることを特徴とする。
【0016】
また、本発明において、さらに好ましくは、界面活性機能を有する素材が、顔料に対して0.3〜0.7質量%含有してなることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の湿式電子写真用記録シートについて、詳細に説明する。
【0018】
本発明者は、湿式電子写真方式におけるトナーの湿式電子写真用記録シートへの定着性について研究を重ねた結果、湿式トナーの定着性や転移性には他の印刷方式とは全く異なった塗工紙物性が必要であることを見いだした。すなわち塗工紙表面への湿式トナーへの塗れ性が定着性に大きく影響していることを見いだした。
【0019】
これには、湿式トナーの接着機構が関わっている。湿式トナーの液体成分の大部分は石油系溶剤である。石油系溶剤は印刷時の熱による蒸発やシートへの吸収によって失われるので接着や転移には関与しない。接着や転移の主役になるのは接着剤として働く樹脂である。この樹脂はブランケットロールで画像を形成した段階でロールの熱によって溶融している。そしてシートと接触するとシートへ転移、固化、定着する。この作用がスムーズに働くためにはシート表面と溶融樹脂との相互作用が十分である必要がある。
【0020】
シート表面と溶融樹脂の相互作用の高さにはシート表面と溶融樹脂との塗れ性が関わる。溶融した樹脂がシートのミクロな凹凸にスムーズに入り込むことが必要不可欠である。これによって両者の分子間相互作用が広い範囲で働き、つまりは、トナーがシートに十分に転写する。さらには溶融樹脂が固化した段階でアンカー効果が強く働きトナーの定着が十分に起こる。
【0021】
通常、シートの塗工層の顔料成分への溶融樹脂の塗れ性は十分であるが、一般的な塗工層に含まれる他の配合物がこれを阻害する要因として働く。例えばプラスチックバインダーは溶融樹脂成分をはじき、ミクロな凹凸に入り込むのを阻害する。一方、澱粉のような多価水酸基はこういった阻害は起こしにくい。
【0022】
一般に、塗工液中には、界面活性機能を有する素材として、例えば、消泡剤、潤滑剤、乳化剤、および、分散剤などが挙げられ、塗工液中に添加される。これらは、親水基と親油基(疎水基)を持ち、水と、水とほとんど親和しない樹脂成分との親和性を向上させる結果、塗工液の紙への濡れ性の向上、化学的・電気的性質の制御、色むらの低減、塗工液の粘度調整、泡の抑制、顔料沈降の抑制などの機能を果たし、品質欠陥もしくは操業上の問題を低減する。本発明者の実験の結果、これらの界面活性機能を有する素材を塗工液に添加すると、湿式トナーの濡れ性が低下することが明らかとなった。一般に、2つの物質の性質が似るほど濡れ性が良くなることが知られている。湿式トナーの溶融樹脂成分は炭化水素鎖を側鎖としたアミノ基を持つことから親油性を持つ。したがって、塗工液に親油性官能基が存在するほど湿式トナーの濡れ性は良くなると予想される。塗工液に界面活性機能を有する素材を添加すると、塗工液中の親油性官能基は該素材の親油基と結合し、該素材の親水性官能基が表面に表れる。これらは湿式トナーの溶融樹脂成分の親油性官能基との親和性を低くすることから、界面活性機能を有する素材の添加量の増加に伴い、湿式トナーの濡れ性が低下すると考えられる。
【0023】
本発明で用いられる界面活性機能を有する素材としては、消泡剤、潤滑剤、乳化剤、および、分散剤などのアニオン性、カチオン性、両性、非イオン性の各種素材すべてを含み、特に限定されるものではない。
【0024】
本発明者の実験によると、界面活性機能を有する素材は、塗工液中の顔料質量に対し、0.1〜2.0質量%含まれていると良い。好ましくは、0.2〜1.0質量%、品質を求めれば、0.3〜0.7質量%がさらに好ましい。界面活性機能を有する素材の添加量を増やすほど、先に述べた品質欠陥、および、操業上の問題は低減する。ただし、界面活機能を有する素材の添加量を増やすと、先に述べた湿式トナーの濡れ性が悪化する。したがって、品質欠陥もしくは操業欠陥を低減することと、湿式トナー濡れ性の向上に関し、最もバランスの取れた好ましい範囲が0.3〜0.7質量%である。
【0025】
本発明における湿式電子写真用記録シートは、湿式電子写真用記録シートとしての使用に留まらず、乾式電子写真用記録シート、オフセット印刷用シート、インクジェット用シート、熱転写用シートなどの他の印刷方式に使用することもできる。
【0026】
本発明に用いられる湿式電子写真用記録シートの基材としては、木材パルプ、綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロース再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニールアルコール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維などの化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維をシート状にしたもの、またはその上に樹脂フィルム層を設けたものが使用される。
【0027】
各繊維をシート状にする製法としては、一般的な抄紙工程、湿式法、乾式法、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンボンド、スパンレース、ウォータージェット、メルトブロー、ニードルパンチ、ステッチブロー、フラッシュ紡糸、トウ開維などの各工程から一つ以上が適宜選ばれる。
【0028】
また、これらの繊維には、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミなどの各種填料、接着剤、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を各工程、各素材に合わせて好適に配合する。
【0029】
さらには、これらの繊維シートの上に樹脂コート層を設ける場合もある。
【0030】
その他の基材としては、上質紙、中質紙、色上質、書籍用紙、キャスト用紙、微塗工紙、軽量コート紙、コート紙、アート紙、中質コート紙、グラビア用紙、インディア紙、コートアイボリー、ノーコートアイボリー、アートポスト、コートポスト、ノーコートカード、特板、コートボール、トレーシングペーパー、タイプ紙、PPC用紙、NIP用紙、連続伝票用紙、フォーム用紙、複写紙、ノーカーボン紙、感熱紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、合成紙、などの紙や板紙、不織布、または各種樹脂やプラスチック、金属をフィルム状に成形したものも含まれる。
【0031】
塗工する前の基材は、必要とする密度、平滑度、透気度を得るために各種表面処理やカレンダー処理を施す場合がある。
【0032】
本発明において、塗工層に用いられる顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)などの精製した天然鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリン、プラスチック顔料などが挙げられる。
【0033】
塗工液に用いられるバインダーとしては、天然植物から精製した澱紛、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱紛、エーテル化澱紛、りん酸エステル化澱粉、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体が挙げられる。
【0034】
さらに、ガゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質およびその変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子やオリゴマーが挙げられる。
【0035】
加えて、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルなどの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物などが挙げられる。
【0036】
これらは一種以上で使用することができる。この他、公知の天然、合成有機化合物を使用することは特に限定されない。
【0037】
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
【0038】
また、塗工液に用いられる印刷適性向上剤としては、ポリアミドポリ尿素系樹脂、変性ポリアミドポリ尿素系樹脂、特殊ポリアミドポリ尿素系樹脂、特殊カチオン性樹脂、変性ポリアミン系樹脂、ノンホルマリン系樹脂などのすべてのカチオン性印刷適性向上剤が挙げられる。
【0039】
また、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
【0040】
本発明において、塗工層を塗工する方法は、特に限定されるものではなく、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、ダイレクトファウンテンコーター、スプレーコーター、キャストコーターなどの各方式を適宜使用する。
【0041】
さらに、一連の操業で、塗工、乾燥された塗工紙は要求される、密度、平滑度、透気度、外観を得るために、必要に応じてカレンダー処理などの各種仕上げ処理が施される。
【0042】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
【0043】
実施例1〜13および比較例1〜4
下記の配合にて、比較例1〜4および実施例1〜13の湿式電子写真用記録シートを作製した。
【0044】
<原紙>
LBKP(濾水度330〜440mlcsf) 70部
NBKP(濾水度390〜490mlcsf) 30部
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *8部
市販カチオン化澱粉 1.0部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調整し、坪量70g/m2の原紙を抄造した。
【0045】
この原紙に対して、サイズプレスにより両面0.80g/m2の酸化澱粉を付着させ、塗工用原紙を得た。
【0046】
<塗工液>
市販中空顔料(粒子径1μm) 5部
市販微粒カオリンクレー 45部
市販一級カオリンクレー 20部
市販重質炭酸カルシウム 30部
市販ポリリン酸塩系分散剤 0.1部
SBRラテックスバインダー
(平均粒子径100nm、ゲル含有量40%、Tg5℃) 10部
市販燐酸エステル澱粉 3部
市販カルボキシルメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.1部
水酸化ナトリウム pH9.6に調製
【0047】
上記の各種塗工液を調整し、さらに、界面活性機能を有する素材として、アミド系化合物の水分散物である潤滑剤を用い、その配合量を、それぞれ実施例1〜13では、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%。1.1%、1.5%、2.0%、比較例1〜5では、0%、0.05%、2.1%、2.5%添加した。塗工液の調整後、ファウンテン/ブレードコーターを用いて塗工速度1600m/分で該塗工液を片面15g/m2塗工し、スーパーカレンダー処理を施して実施例1〜13および比較例1〜5の湿式電子写真用記録シートを得た。
【0048】
上記実施例1〜13および比較例1〜4により得られた湿式電子写真用記録シートについて、下記の測定方法により測定し、その評価結果を表1に掲げた。
【0049】
1.印刷
湿式電子写真用転写機としてIndigo社製「E−print1000」を使って印刷を行った。評価に使用するための印刷画像としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各4色についてベタ印字部があるような画像を出力するようにした。ベタ印字部の印刷面積としては、最低でも一辺が3cm以上の四角形になるようにした。
【0050】
上記で述べたように「E−print1000」によって印刷したブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のベタ印刷部について以下のような定着評価を行った。
【0051】
2.テープ剥離
印刷後、24時間経過した印刷サンプルにに幅18mmのニチバン社製セロハン粘着テープ「セロテープ No.405」を各色の印刷部に貼りむらが無いように貼りつけ、180度剥離で約5mm/秒の速さでゆっくりとテープを剥がした。剥離後のトナーの紙への定着度合いを目視により判定し、以下の基準で5段階評価を行った。「△」以上を発明の対称とした。
◎:各色共にトナーが紙の上に大部分残っている。
○:各色共にトナーが残っているが、テープ剥離後の印刷部の印刷濃度が下がるのがわかる。
△:一部の色でトナーが紙から剥がれ、印刷部に白く抜けた部分がある。
×:各色共にトナーが紙から剥がれ、印刷部の白く抜けた部分が目立つ。
【0052】
3.こすれ
こすれ評価は、JIS P8147「紙および板紙の摩擦係数試験方法」の水平法を応用した。各実施例および比較例について、水平板には、白紙の湿式電子写真用記録シートを取り付け、おもりには、上記の印刷機で印刷された印刷部がある該記録シートを取り付けた。そして、印刷部がある該転写紙をおもりに貼りつける場合、印刷部の印刷された面が、水平板に取り付けられた白紙の該記録シートと擦りあうようにした。
【0053】
以上のように、試験片を水平板、おもりに貼りつけた後は、JIS P8147に記載されている条件でおもりを水平板の上で滑らせる。「摩擦試験」においては、一つの試験片の組み合わせで一度だけ、水平板上でおもりを滑らせるが、本評価においては、一つの試験片の組み合わせで50回、おもりを水平板の上で滑らせた。使用した試験片は印刷後24時間経過したものを使用した。
【0054】
その後、おもりに取り付けられた印刷部を観察し、紙同士の擦れによるトナーの脱落度合いを観察した。印刷部のトナーの残り具合いを目視により判定し、以下の基準で4段階評価を行った。「△」以上を発明の対称とした。
◎:各色共に印刷部の濃度低下がほどんと認められない。
○:各色共にわずかながら印刷濃度が下がるのがわかる。
△:各色共に印刷濃度が下がるのがわかる。
×:各色共に印刷濃度が下がるのがわかり、部分的に白く抜けた部分がある。
【0055】
4.消しゴム剥離
印刷後、24時間後に各色の印刷部を未使用消しゴム「トンボ鉛筆、PEー01A」の角を利用して、均一の力で5往復させた。往復後のトナーの紙への定着度合いを目視により判定し、以下の基準で4段階評価を行った。「○」以上を発明の対称とした。
◎:各色共にトナーが紙から剥離しない。
○:一部に紙から剥離するトナーが存在するが2割未満である。
△:5割未満でトナーが紙から剥がれ、一部に白く抜けた部分がある。
×:各色とも紙からトナーが容易に剥がれ、白く抜けた部分が目立つ。
【0056】
5.転移性
湿式電子写真用転写機としてIndigo社製「E−print1000」を使って印刷を行った後、プリントクリーナーで掃除を行い、プリントクリーナーの汚れ方で転移性を判断した。「△」以上を発明の対象とした。
◎:全く汚れない。
○:ごく小さい汚れが付着する。
△:小さい汚れが付着する。
×:はっきりと汚れる。
【0057】
6.搬送性
湿式電子写真用転写機としてIndigo社製「E−print1000」を使用し、1000枚印刷する際の用紙のジャムリ(紙づまりなど)回数を測定し、以下の基準で3段階評価をおこなった。「○」以上を発明の対象とした。
○:全くジャムリがない。
△:1〜3回ジャムリが起こる。
×:3回以上ジャムリが起こる。
【0058】
7.泡立ち
塗工液のストレージタンクにおいて、攪拌の際の泡立ち程度を目視で判断した。「○」以上を発明の対象とした。
◎:全く泡は発生しない。
○:ごくまれに泡が発生する。
△:泡の発生が顕著となり、操業性が多少悪化する。
×:はっきりと泡立ち操業性が著しく悪化する。
【0059】
8.カレンダ汚れ
マルチニップスーパーカレンダを用いてカレンダ処理を行い、200000mカレンダ処理後のスーパーカレンダロールのカレンダ汚れを目視で判断した。「△」以上を発明の対象とした。
◎:全く汚れない。
○:ほとんど汚れない。
△:ごく薄く汚れが付着する。
×:はっきりと汚れる。
【0060】
【表1】
【0061】
<評価結果>
比較例1、2のように、界面活性機能を有する素材の添加量が0.1質量%に満たない塗工紙は、ベタツキに伴う搬送性の問題が発生する。一方、すべての実施例のように、添加量が0.1質量%を超えると、良好な搬送性を持つ。実施例1と実施例2〜13とを比べてわかるように、添加量が0.2質量%以上であれば泡立ちに伴う操業性の悪化が軽減される。さらに、実施例1〜2と実施例3〜13とを比べてわかるように、添加量が0.3質量%を超えると、カレンダ汚れが低減し、操業性が向上する。界面活性機能を有する素材の添加量を増やしていくと、湿式トナーの濡れ性に問題が発生してくる。実施例1〜7と実施例8〜13とを比べてわかるように、添加量が0.7質量%を超えるとテープ剥離に若干問題が発生する。また、実施例1〜10と実施例11〜13とを比べてわかるように、添加量が1.0質量%を超えると、こすれが若干悪化する。さらに、すべての実施例と比較例3、4とを比較すると、添加量が2.0質量%を超えると、テープ剥離、こすれ、消しゴム、転移性といったすべての湿式トナー適性が極めて悪化する。ゆえに、界面活性機能を有する素材の添加量は、0.1〜2.0質量%が良く、さらに好ましくは、0.2〜1.0質量%が良く、さらに好ましくは、0.3〜0.7質量%が望ましい。
【0062】
【発明の効果】
本発明の湿式電子写真用記録シートは、湿式トナーを使った湿式電子写真方式を用いて印刷した際に、優れたトナー定着性および転移性を有する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿式電子写真用記録シートに関するものであり、さらに詳しくは、湿式トナーを使った湿式電子写真方式を用いて印刷した際に、優れたトナー定着性および転移性を有する湿式電子写真用記録シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式を用いて印刷する用途は、端末PC用プリンター、ファックス、または複写機に留まらず、多品種小ロット印刷、可変情報印刷などを可能とする、いわゆるオンデマンド印刷分野でも実用化が進み、技術的進展が目覚しい。近年では印刷速度向上に伴い、印刷部数が従来オフセット、グラビアなどの印刷でまかなわれていた領域に達しはじめた。
【0003】
電子写真印刷は可変情報を扱えるのがメリットであるが、オフセットやグラビア印刷は長年の技術蓄積により非常に高品質の印刷を、安価な価格で達成しているため、品質面、価格面では劣っていた。そのため、印刷機械、印刷用紙の両面から高画質化、高速化、省電力化、そして低コスト化へ向けた技術開発が一段と進められている。印刷物には、より高精細で、色再現性の良さが求められているが、これは高速化、低コスト化とは相反する部分があり、トナーや印刷機械の性能はもちろんのこと、電子写真用記録シートに関してもトナー定着性、転移性、色再現性、走行性など、さらに厳しい品質要望が集まっている。
【0004】
このような電子写真印刷方式のうち、乾式電子写真方式は、事務用複写機などに代表される方式で、画像を形成するトナーは、顔料と合成樹脂からなる固体粉末トナーを使用する。画像形成の方法は、コロナ帯電によって発生させた静電画像にトナーを吸着させ、このトナーを被転写物に加熱圧着する方式で印刷を行う。ところが、この方式はトナーを微細化すると周辺環境に飛散しやすくなり、これを吸入した場合健康上の問題を起こすため作業環境の悪化、さらに印刷物を汚すなどの問題が生じる。このため固体粉末トナーを微細化するには限界があり、高解像度が得られにくい。さらには被転写物の厚さが不均一なことから、コロナ放電による被転写物面の電荷密度にばらつきが生じ、非画線部に、かぶりと呼ばれる好ましくない画像が生じたり、ある程度高い温度で溶融固化しなければならないなどの多くの問題がある。
【0005】
一方、可変情報を扱える他の有望な印刷方式にはインクジェット方式がある。インクジェット方式は、細かなインク滴を被転写物表面に噴出し、画像を形成する方式である。近年の技術進歩は凄まじく、非常に高画質となり、弱点であった耐候性も顔料タイプのインクの出現により大幅に改善されてきた。しかし、オフセット印刷などと比べてしまうと、印刷速度が遅く、高画質を得るためには比較的高価な専用紙を使用しなければならないという問題がある。
【0006】
そこで、オンデマンド印刷領域で、可変情報を扱え、高画質、高速、コストなどの条件を満たすことを考えた場合、各種印刷方式の中でも、湿式電子写真方式が最も有望な方式である。これは湿式電子写真方式が、液体媒体中にトナーを分散させるため、粉体の飛散などが問題とならず、乾式電子写真方式に比べてトナーを1/10以上まで微細化できること、すなわちドットを微細にできることに加えて、色材として顔料を使用できるために耐候性や耐水性の問題がないことなどの理由による。
【0007】
湿式トナーは、ブランケットロールからシートに画像を転写するときに電荷などを利用しない。湿式トナーの印刷用シートの接着性がブランケットロールよりも高いことを利用して画像を転写させる。つまり、ブランケットロールからの湿式トナーの剥離能力が重要となり接着能力を必要以上に高くできない。
【0008】
このため、湿式電子写真方式の印刷の場合、シートの種類によっては印刷をしても十分なトナー強度が得られなかったり、トナー粒子が十分にシートに転写しないと言う欠点がある。このような問題を解決するため、原紙中の灰分量を規定し、かつ表面にジルコニウムを塗布したり(例えば、特許文献1参照)、表面平滑性とサイズ剤を工夫したりしている(例えば、特許文献2参照)例がある。これらは、普通紙(非塗工)タイプの印刷用紙に対して有効である。
【0009】
ところが、印刷用塗工シートの場合、上記手法は通用せず、また市販印刷用紙で湿式電子写真印刷方式に対し十分なトナー適性を持つ物は皆無である。この問題を解決するために、顔料やバインダーの種類とバインダーの配合量を規定することによって解決しようとしている例がある(例えば、特許文献3参照)。しかし、実際には、湿式トナーの定着性や転移性はさまざまな物質が複雑に関係したシート表面の物理的、化学的性質に大きく左右されており、このような手法だけでトナー定着性および転移性の向上を充分成し遂げることは難しいといえる。
【0010】
シートの種類を選ばずに湿式電子写真印刷適性を与えるための手段として、一般に知られている、サファイア処理と呼ばれている手段があるが、この手法はシートの作製において後工程を必要とするためコスト的に見合わない。また、経時でシートが黄色くなると言う欠点を持つ。ゆえに従来の技術では湿式トナーの十分な定着性や転移性を持った汎用的なシートの作製は難しかった。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−171146号公報
【特許文献2】
特開平10−171148号公報
【特許文献3】
特開平9−281739号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、湿式トナーを使った湿式電子写真方式を用いて印刷した際に、優れたトナー定着性および転移性を有する湿式電子写真用記録シートを提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明の湿式電子写真用記録シートを発明するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の湿式電子写真用記録シートは、シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層組成物中に、界面活性機能を有する素材が顔料に対して0.1〜2.0質量%含有してなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明において、好ましくは、界面活性機能を有する素材が、顔料に対して0.2〜1.0質量%含有してなることを特徴とする。
【0016】
また、本発明において、さらに好ましくは、界面活性機能を有する素材が、顔料に対して0.3〜0.7質量%含有してなることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の湿式電子写真用記録シートについて、詳細に説明する。
【0018】
本発明者は、湿式電子写真方式におけるトナーの湿式電子写真用記録シートへの定着性について研究を重ねた結果、湿式トナーの定着性や転移性には他の印刷方式とは全く異なった塗工紙物性が必要であることを見いだした。すなわち塗工紙表面への湿式トナーへの塗れ性が定着性に大きく影響していることを見いだした。
【0019】
これには、湿式トナーの接着機構が関わっている。湿式トナーの液体成分の大部分は石油系溶剤である。石油系溶剤は印刷時の熱による蒸発やシートへの吸収によって失われるので接着や転移には関与しない。接着や転移の主役になるのは接着剤として働く樹脂である。この樹脂はブランケットロールで画像を形成した段階でロールの熱によって溶融している。そしてシートと接触するとシートへ転移、固化、定着する。この作用がスムーズに働くためにはシート表面と溶融樹脂との相互作用が十分である必要がある。
【0020】
シート表面と溶融樹脂の相互作用の高さにはシート表面と溶融樹脂との塗れ性が関わる。溶融した樹脂がシートのミクロな凹凸にスムーズに入り込むことが必要不可欠である。これによって両者の分子間相互作用が広い範囲で働き、つまりは、トナーがシートに十分に転写する。さらには溶融樹脂が固化した段階でアンカー効果が強く働きトナーの定着が十分に起こる。
【0021】
通常、シートの塗工層の顔料成分への溶融樹脂の塗れ性は十分であるが、一般的な塗工層に含まれる他の配合物がこれを阻害する要因として働く。例えばプラスチックバインダーは溶融樹脂成分をはじき、ミクロな凹凸に入り込むのを阻害する。一方、澱粉のような多価水酸基はこういった阻害は起こしにくい。
【0022】
一般に、塗工液中には、界面活性機能を有する素材として、例えば、消泡剤、潤滑剤、乳化剤、および、分散剤などが挙げられ、塗工液中に添加される。これらは、親水基と親油基(疎水基)を持ち、水と、水とほとんど親和しない樹脂成分との親和性を向上させる結果、塗工液の紙への濡れ性の向上、化学的・電気的性質の制御、色むらの低減、塗工液の粘度調整、泡の抑制、顔料沈降の抑制などの機能を果たし、品質欠陥もしくは操業上の問題を低減する。本発明者の実験の結果、これらの界面活性機能を有する素材を塗工液に添加すると、湿式トナーの濡れ性が低下することが明らかとなった。一般に、2つの物質の性質が似るほど濡れ性が良くなることが知られている。湿式トナーの溶融樹脂成分は炭化水素鎖を側鎖としたアミノ基を持つことから親油性を持つ。したがって、塗工液に親油性官能基が存在するほど湿式トナーの濡れ性は良くなると予想される。塗工液に界面活性機能を有する素材を添加すると、塗工液中の親油性官能基は該素材の親油基と結合し、該素材の親水性官能基が表面に表れる。これらは湿式トナーの溶融樹脂成分の親油性官能基との親和性を低くすることから、界面活性機能を有する素材の添加量の増加に伴い、湿式トナーの濡れ性が低下すると考えられる。
【0023】
本発明で用いられる界面活性機能を有する素材としては、消泡剤、潤滑剤、乳化剤、および、分散剤などのアニオン性、カチオン性、両性、非イオン性の各種素材すべてを含み、特に限定されるものではない。
【0024】
本発明者の実験によると、界面活性機能を有する素材は、塗工液中の顔料質量に対し、0.1〜2.0質量%含まれていると良い。好ましくは、0.2〜1.0質量%、品質を求めれば、0.3〜0.7質量%がさらに好ましい。界面活性機能を有する素材の添加量を増やすほど、先に述べた品質欠陥、および、操業上の問題は低減する。ただし、界面活機能を有する素材の添加量を増やすと、先に述べた湿式トナーの濡れ性が悪化する。したがって、品質欠陥もしくは操業欠陥を低減することと、湿式トナー濡れ性の向上に関し、最もバランスの取れた好ましい範囲が0.3〜0.7質量%である。
【0025】
本発明における湿式電子写真用記録シートは、湿式電子写真用記録シートとしての使用に留まらず、乾式電子写真用記録シート、オフセット印刷用シート、インクジェット用シート、熱転写用シートなどの他の印刷方式に使用することもできる。
【0026】
本発明に用いられる湿式電子写真用記録シートの基材としては、木材パルプ、綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロース再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニールアルコール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維などの化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維をシート状にしたもの、またはその上に樹脂フィルム層を設けたものが使用される。
【0027】
各繊維をシート状にする製法としては、一般的な抄紙工程、湿式法、乾式法、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンボンド、スパンレース、ウォータージェット、メルトブロー、ニードルパンチ、ステッチブロー、フラッシュ紡糸、トウ開維などの各工程から一つ以上が適宜選ばれる。
【0028】
また、これらの繊維には、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミなどの各種填料、接着剤、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を各工程、各素材に合わせて好適に配合する。
【0029】
さらには、これらの繊維シートの上に樹脂コート層を設ける場合もある。
【0030】
その他の基材としては、上質紙、中質紙、色上質、書籍用紙、キャスト用紙、微塗工紙、軽量コート紙、コート紙、アート紙、中質コート紙、グラビア用紙、インディア紙、コートアイボリー、ノーコートアイボリー、アートポスト、コートポスト、ノーコートカード、特板、コートボール、トレーシングペーパー、タイプ紙、PPC用紙、NIP用紙、連続伝票用紙、フォーム用紙、複写紙、ノーカーボン紙、感熱紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、合成紙、などの紙や板紙、不織布、または各種樹脂やプラスチック、金属をフィルム状に成形したものも含まれる。
【0031】
塗工する前の基材は、必要とする密度、平滑度、透気度を得るために各種表面処理やカレンダー処理を施す場合がある。
【0032】
本発明において、塗工層に用いられる顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)などの精製した天然鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリン、プラスチック顔料などが挙げられる。
【0033】
塗工液に用いられるバインダーとしては、天然植物から精製した澱紛、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱紛、エーテル化澱紛、りん酸エステル化澱粉、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体が挙げられる。
【0034】
さらに、ガゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質およびその変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子やオリゴマーが挙げられる。
【0035】
加えて、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルなどの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物などが挙げられる。
【0036】
これらは一種以上で使用することができる。この他、公知の天然、合成有機化合物を使用することは特に限定されない。
【0037】
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
【0038】
また、塗工液に用いられる印刷適性向上剤としては、ポリアミドポリ尿素系樹脂、変性ポリアミドポリ尿素系樹脂、特殊ポリアミドポリ尿素系樹脂、特殊カチオン性樹脂、変性ポリアミン系樹脂、ノンホルマリン系樹脂などのすべてのカチオン性印刷適性向上剤が挙げられる。
【0039】
また、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
【0040】
本発明において、塗工層を塗工する方法は、特に限定されるものではなく、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、ダイレクトファウンテンコーター、スプレーコーター、キャストコーターなどの各方式を適宜使用する。
【0041】
さらに、一連の操業で、塗工、乾燥された塗工紙は要求される、密度、平滑度、透気度、外観を得るために、必要に応じてカレンダー処理などの各種仕上げ処理が施される。
【0042】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
【0043】
実施例1〜13および比較例1〜4
下記の配合にて、比較例1〜4および実施例1〜13の湿式電子写真用記録シートを作製した。
【0044】
<原紙>
LBKP(濾水度330〜440mlcsf) 70部
NBKP(濾水度390〜490mlcsf) 30部
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *8部
市販カチオン化澱粉 1.0部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調整し、坪量70g/m2の原紙を抄造した。
【0045】
この原紙に対して、サイズプレスにより両面0.80g/m2の酸化澱粉を付着させ、塗工用原紙を得た。
【0046】
<塗工液>
市販中空顔料(粒子径1μm) 5部
市販微粒カオリンクレー 45部
市販一級カオリンクレー 20部
市販重質炭酸カルシウム 30部
市販ポリリン酸塩系分散剤 0.1部
SBRラテックスバインダー
(平均粒子径100nm、ゲル含有量40%、Tg5℃) 10部
市販燐酸エステル澱粉 3部
市販カルボキシルメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.1部
水酸化ナトリウム pH9.6に調製
【0047】
上記の各種塗工液を調整し、さらに、界面活性機能を有する素材として、アミド系化合物の水分散物である潤滑剤を用い、その配合量を、それぞれ実施例1〜13では、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%。1.1%、1.5%、2.0%、比較例1〜5では、0%、0.05%、2.1%、2.5%添加した。塗工液の調整後、ファウンテン/ブレードコーターを用いて塗工速度1600m/分で該塗工液を片面15g/m2塗工し、スーパーカレンダー処理を施して実施例1〜13および比較例1〜5の湿式電子写真用記録シートを得た。
【0048】
上記実施例1〜13および比較例1〜4により得られた湿式電子写真用記録シートについて、下記の測定方法により測定し、その評価結果を表1に掲げた。
【0049】
1.印刷
湿式電子写真用転写機としてIndigo社製「E−print1000」を使って印刷を行った。評価に使用するための印刷画像としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各4色についてベタ印字部があるような画像を出力するようにした。ベタ印字部の印刷面積としては、最低でも一辺が3cm以上の四角形になるようにした。
【0050】
上記で述べたように「E−print1000」によって印刷したブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のベタ印刷部について以下のような定着評価を行った。
【0051】
2.テープ剥離
印刷後、24時間経過した印刷サンプルにに幅18mmのニチバン社製セロハン粘着テープ「セロテープ No.405」を各色の印刷部に貼りむらが無いように貼りつけ、180度剥離で約5mm/秒の速さでゆっくりとテープを剥がした。剥離後のトナーの紙への定着度合いを目視により判定し、以下の基準で5段階評価を行った。「△」以上を発明の対称とした。
◎:各色共にトナーが紙の上に大部分残っている。
○:各色共にトナーが残っているが、テープ剥離後の印刷部の印刷濃度が下がるのがわかる。
△:一部の色でトナーが紙から剥がれ、印刷部に白く抜けた部分がある。
×:各色共にトナーが紙から剥がれ、印刷部の白く抜けた部分が目立つ。
【0052】
3.こすれ
こすれ評価は、JIS P8147「紙および板紙の摩擦係数試験方法」の水平法を応用した。各実施例および比較例について、水平板には、白紙の湿式電子写真用記録シートを取り付け、おもりには、上記の印刷機で印刷された印刷部がある該記録シートを取り付けた。そして、印刷部がある該転写紙をおもりに貼りつける場合、印刷部の印刷された面が、水平板に取り付けられた白紙の該記録シートと擦りあうようにした。
【0053】
以上のように、試験片を水平板、おもりに貼りつけた後は、JIS P8147に記載されている条件でおもりを水平板の上で滑らせる。「摩擦試験」においては、一つの試験片の組み合わせで一度だけ、水平板上でおもりを滑らせるが、本評価においては、一つの試験片の組み合わせで50回、おもりを水平板の上で滑らせた。使用した試験片は印刷後24時間経過したものを使用した。
【0054】
その後、おもりに取り付けられた印刷部を観察し、紙同士の擦れによるトナーの脱落度合いを観察した。印刷部のトナーの残り具合いを目視により判定し、以下の基準で4段階評価を行った。「△」以上を発明の対称とした。
◎:各色共に印刷部の濃度低下がほどんと認められない。
○:各色共にわずかながら印刷濃度が下がるのがわかる。
△:各色共に印刷濃度が下がるのがわかる。
×:各色共に印刷濃度が下がるのがわかり、部分的に白く抜けた部分がある。
【0055】
4.消しゴム剥離
印刷後、24時間後に各色の印刷部を未使用消しゴム「トンボ鉛筆、PEー01A」の角を利用して、均一の力で5往復させた。往復後のトナーの紙への定着度合いを目視により判定し、以下の基準で4段階評価を行った。「○」以上を発明の対称とした。
◎:各色共にトナーが紙から剥離しない。
○:一部に紙から剥離するトナーが存在するが2割未満である。
△:5割未満でトナーが紙から剥がれ、一部に白く抜けた部分がある。
×:各色とも紙からトナーが容易に剥がれ、白く抜けた部分が目立つ。
【0056】
5.転移性
湿式電子写真用転写機としてIndigo社製「E−print1000」を使って印刷を行った後、プリントクリーナーで掃除を行い、プリントクリーナーの汚れ方で転移性を判断した。「△」以上を発明の対象とした。
◎:全く汚れない。
○:ごく小さい汚れが付着する。
△:小さい汚れが付着する。
×:はっきりと汚れる。
【0057】
6.搬送性
湿式電子写真用転写機としてIndigo社製「E−print1000」を使用し、1000枚印刷する際の用紙のジャムリ(紙づまりなど)回数を測定し、以下の基準で3段階評価をおこなった。「○」以上を発明の対象とした。
○:全くジャムリがない。
△:1〜3回ジャムリが起こる。
×:3回以上ジャムリが起こる。
【0058】
7.泡立ち
塗工液のストレージタンクにおいて、攪拌の際の泡立ち程度を目視で判断した。「○」以上を発明の対象とした。
◎:全く泡は発生しない。
○:ごくまれに泡が発生する。
△:泡の発生が顕著となり、操業性が多少悪化する。
×:はっきりと泡立ち操業性が著しく悪化する。
【0059】
8.カレンダ汚れ
マルチニップスーパーカレンダを用いてカレンダ処理を行い、200000mカレンダ処理後のスーパーカレンダロールのカレンダ汚れを目視で判断した。「△」以上を発明の対象とした。
◎:全く汚れない。
○:ほとんど汚れない。
△:ごく薄く汚れが付着する。
×:はっきりと汚れる。
【0060】
【表1】
【0061】
<評価結果>
比較例1、2のように、界面活性機能を有する素材の添加量が0.1質量%に満たない塗工紙は、ベタツキに伴う搬送性の問題が発生する。一方、すべての実施例のように、添加量が0.1質量%を超えると、良好な搬送性を持つ。実施例1と実施例2〜13とを比べてわかるように、添加量が0.2質量%以上であれば泡立ちに伴う操業性の悪化が軽減される。さらに、実施例1〜2と実施例3〜13とを比べてわかるように、添加量が0.3質量%を超えると、カレンダ汚れが低減し、操業性が向上する。界面活性機能を有する素材の添加量を増やしていくと、湿式トナーの濡れ性に問題が発生してくる。実施例1〜7と実施例8〜13とを比べてわかるように、添加量が0.7質量%を超えるとテープ剥離に若干問題が発生する。また、実施例1〜10と実施例11〜13とを比べてわかるように、添加量が1.0質量%を超えると、こすれが若干悪化する。さらに、すべての実施例と比較例3、4とを比較すると、添加量が2.0質量%を超えると、テープ剥離、こすれ、消しゴム、転移性といったすべての湿式トナー適性が極めて悪化する。ゆえに、界面活性機能を有する素材の添加量は、0.1〜2.0質量%が良く、さらに好ましくは、0.2〜1.0質量%が良く、さらに好ましくは、0.3〜0.7質量%が望ましい。
【0062】
【発明の効果】
本発明の湿式電子写真用記録シートは、湿式トナーを使った湿式電子写真方式を用いて印刷した際に、優れたトナー定着性および転移性を有する。
Claims (3)
- シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層組成物中に、界面活性機能を有する素材が顔料に対して0.1〜2.0質量%含有してなることを特徴とする湿式電子写真用記録シート。
- 界面活性機能を有する素材が、顔料に対して0.2〜1.0質量%含有してなることを特徴とする請求項1記載の湿式電子写真用記録シート。
- 界面活性機能を有する素材が、顔料に対して0.3〜0.7質量%含有してなることを特徴とする請求項1記載の湿式電子写真用記録シート。
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