JP2004257502A - ボールねじ - Google Patents

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Masahiro Nobutomo
雅弘 信朝
Kimito Ushida
公人 牛田
Koji Ito
光司 伊藤
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Abstract

【課題】高速回転、高加減則、高荷重での使用において、水素脆性剥離の発生を防止でき、安定した耐久寿命を実現できるボールねじを提供する。
【解決手段】ねじ軸1およびナット2の対向するボールねじ溝4,5の転走面4a,5a間にボール3を介在させる。ねじ軸1の転走面4a、ナット2の転走面5a、およびボール3の表面3aの少なくとも一つに、四三酸化鉄の皮膜9を施す。上記皮膜9の厚さは0.1〜5μmとする。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動射出成形機やプレス機、自動車等に使用されるボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電動射出成形機やプレス機、自動車等の機器の高効率化に伴い、従来、油圧作動されていたものが、電動化としてボールねじが使用されるようになってきている。いずれの用途においても、ボールねじには、高速移動、高速応答性が求められ、年々高速化している。この高速化により、ボールねじでは、ねじピッチを拡大したり、高加減速、高速回転での使用、さらには高荷重での使用となっている。
【0003】
ボールねじと同じく転動体を用いた機械部品であるベアリングでは、高荷重、高速化の対策として次の提案がなされている。すなわち、自動車用の電装部品や補機に使用されるグリース封入軸受の場合、高荷重、高速化品によって、特異性のある剥離現象(水素脆性剥離)が発生する。その対策として、軸受部品を酸化皮膜で覆い、皮膜厚さ0.1μm以上、表面粗さをRmax1.1μmを超えないものとされている(例えば特許文献1)。このような対策をボールねじに適用したものはまだ無い。軸受とボールねじとでは種々条件が異なる。
【0004】
ボールねじにおいては、トルク軽減を目的として、ボールねじの表面を有機化合物の皮膜で覆ったものが提案されている(例えば特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特公平6−89783号公報
【特許文献2】
特開平9−217809号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、ボールねじでは、高速化、高荷重化に伴い、リードピッチの拡大や、使用回転速度の増大を招くことになる。一般にボールねじでは、軸ねじ溝とナットねじ溝の間に介在するボールにすべりが発生するが、このすべりは、リードピッチの増大と、高荷重化によるボールねじの負荷容量増大のために採用されるボールの大径化によって大きくなる。また、使用回転速度の増大は、ボールねじ内部のボール公転速度の拡大となり、上記すべりが大きくなる原因となる。
【0007】
高荷重で高加減速を繰り返す用途にボールねじを使用する場合に、潤滑状態が悪いと、ボールねじの転走面に鏡面摩耗を引き起こし、それによる新生面の形成が触媒作用をなして潤滑剤を分解せしめ、その際に発生する水素が鋼中に侵入し、水素脆性を引き起こすことが稀に発生する。
この水素脆性による剥離は、使用条件を緩和すること、つまりボールねじの定格の負荷容量を大きくしたり、潤滑剤(特にグリース)を変更することで解消できるが、負荷容量を大きくするためのボールねじの大型化は、コスト上昇や機械装置自体のコンパクト化を阻害し、また、伝達効率を向上ができない要因ともなる。また、特殊なグリースを使用したり給脂すると、ランニングコストの増大を招く欠点がある。
【0008】
この発明は、上記従来の課題に対してなされたもので、高速回転、高加減速、高荷重での使用において、水素脆性剥離の発生を防止でき、安定した耐久寿命を実現できるボールねじを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明のボールねじは、ねじ軸およびナットの対向するボールねじ溝の転走面間にボールを介在させたボールねじにおいて、ねじ軸の転走面、ナットの転走面、およびボールの表面の少なくとも一つに、四三酸化鉄の皮膜を施したことを特徴とする。
この構成によると、四三酸化鉄の皮膜によって、グリース等の潤滑剤からの水素の分離を抑制してその分離水素が鋼中に侵入することが緩和でき、上記皮膜を設けた転走面またはボール表面に生じる水素脆弱剥離を防止することが可能になる。このため、ボールねじ本来の寿命が得られ、高速回転、高加減速、高荷重での使用条件下においても、寿命のばらつきの少ない安定した耐久性のボールねじが実現できる。
【0010】
この発明において、上記皮膜の厚さが0.1〜5μmであっても良い。上記皮膜の厚さは、薄過ぎると水素脆弱剥離が防止できず、また厚過ぎるとボールの循環部における円滑な循環が妨げられる。試験の結果、皮膜の厚さが0.1μm未満では剥離が発生したが、0.1μm以上では剥離の発生がなかった。また、皮膜の厚さが8μmでは循環部でのボールの円滑な移動に問題があったが、5μm以下ではボールの円滑な移動に支障がなかった。したがって、皮膜の厚さが0.1〜5μmであると、水素脆弱剥離が生じず、かつボールの潤滑が円滑に行われる。
【0011】
この発明は、循環部を有するボールねじと、循環部を有しないボールねじとのいずれにも適用できる。上記循環部は、上記ナットの上記ボールねじ溝に両端が連通して上記転走面間のボールを循環させるものである。ボールねじにおいて、移動距離が特に短く正逆駆動されるような用途では、簡素化のために循環部を設けないことがあるが、移動距離の確保の面から、一般的には循環部が設けられる。循環部を設けたボールねじでは、四三酸化鉄の皮膜を設けた場合、循環部におけるボールの円滑な循環が妨げられないようにする必要があるが、上記のように皮膜厚さを適切な厚さとすることで、円滑性の阻害が回避できる。
【0012】
この発明のボールねじは、上記のように高速回転、高加減速、高荷重の使用条件下で、水素脆性剥離の発生を防止でき、安定した耐久寿命を実現できるため、その用途として、例えば射出成形機の型締め軸または射出軸、プレス機のプレス圧を生じさせるプレス部駆動機構、自動車の操舵機構またはブレーキなどにこの発明のボールねじを適用した場合に、その厳しい荷重条件、速度条件等に対してこの発明の上記各効果が有効に発揮される。
【0013】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。このボールねじAは、ねじ軸1の外径面と、このねじ軸1の外周に遊嵌するナット2の内径面に、互いに対応するねじ溝4,5が形成され、両ねじ溝4,5の間で形成される螺旋状の転走路6に複数のボール3が介在している。ナット2は、ねじ溝5に両端が連通して転走路6のボール3を循環させる循環部7を有し、転走路6および循環部7によって周回経路8が形成されている。周回経路8は、ねじ溝4,5の螺旋の一周分であっても、複数周分であっても良く、この実施形態では複数周分とされている。また、周回経路8は、一つのボールねじAにおいて一つであっても、複数であっても良い。この実施形態では、ナット2に循環部7を2つ設け、2つの周回経路8を形成している。循環部7は、ナット2に取付けられたリターンチューブよりなる経路構成部品10により形成されている。
【0014】
このボールねじAにおいて、ねじ軸1のねじ溝4内の転走面4a、ナット2のねじ溝5内の転走面5a、およびボール3の表面3aの少なくとも一つに、図3のように四三酸化鉄の皮膜9が施されている。この皮膜形成処理は、一般に黒染めと呼ばれている。ねじ軸1、ナット2、およびボール3の材質は、軸受鋼等の鋼材である。
図3(A)〜(C)は、それぞれ図2のA部を拡大して示す上記皮膜9の各形成例である。そのうち、図3(A)は、ねじ軸1のねじ溝転走面4aおよびナット2のねじ溝転走面5aに前記皮膜9を施した例を示す。図3(B)は、ボール3の表面3aにのみ前記皮膜9を施した例を示す。図3(C)は、ねじ軸のねじ溝転走面4a、ナット2のねじ溝転走面5a、およびボール3の表面3aの全てに上記皮膜9を施した例を示す。これらの他に、ねじ軸1およびナット2の転走面4a,5aにおけるいずれか片方に皮膜9を設けても良い。皮膜9の厚さは、0.1〜5μmの範囲が好ましい。
【0015】
皮膜9の形成方法としては、例えば、ボール3、ねじ軸1、およびナット2のうち、皮膜形成対象となるものを、低温加熱(130℃〜160℃)のカセイソーダ水溶液中に浸漬することにより施される。
ボールねじAの寸法関係例等を説明すると、ねじ溝4,5のリードをL、ねじ軸1の呼び外径をDとした場合、D/L≦2とされる。ボールねじAの定格荷重は、荷重負荷時のボール3と各転走面4a,5aとの接触面圧が180kgf/mm以上とされる。なお、D/L>2であっても良く、また接触面圧が180kgf/mm未満であっても良い。
【0016】
この構成のボールねじAによると、ねじ軸1のねじ溝転走面4a、ナット2のねじ溝転走面5a、およびボール3の表面3aの少なくとも一つに、四三酸化鉄の皮膜9が施されているので、使用潤滑剤、特にグリースからの水素の分離を抑制でき、その分離水素が鋼中に侵入することが緩和される。そのため、上記皮膜9の形成されたねじ軸転走面4a、ナット転走面5a、またはボール3の表面3aでの水素脆性剥離の発生を防止することができ、ボールねじ本来の寿命を保証することができる。
水素脆性剥離は、ボールねじ一般において、ねじ溝4,5のリードL、ねじ軸呼び外径Dの関係で、D/L≦2であって、荷重負荷時の接触面圧が180kgf/mm以上の場合に発生し易いが、このようなリードLと外径Dの関係、および接触面圧(負荷荷重)の条件であっても、この構成のボールねじAによると水素脆性剥離が防止される。また、皮膜9の厚さを5μmとしたので、循環部7におけるボール3の循環も円滑に行われる。
【0017】
この実施形態のボールねじAを用いた水素脆性剥離の発生試験結果を、表1に示す。表1において、○印は剥離発生がなかったことを示し、×印は転走面4,5に剥離発生があったことを示している。△印は初期のボール循環に問題が発生したことを示している。
【0018】
この試験に用いたグリースおよびボールねじの諸元は以下の通りである。
(1)使用ボールねじ
呼び外径:63mm
リード:40mm
ボール径:5/8”(=φ15.875mm)
回転速度:800r/min
最大負荷荷重(最大接触面圧):9tonf(220kgf/mm
稼働ストローク回数:100×10
(2)使用グリース
基油:鉱油
増ちょう剤:リチウム
見かけ粘度(0℃ 10s−1):92
混和ちょう度:300
離油度(100℃ 24h):2.2
【0019】
【表1】
Figure 2004257502
【0020】
この試験結果によると、皮膜厚さが0.1μm未満であると、皮膜がない場合を含めて、転走面に剥離が発生したが、0.1μm以上であると、転走面の剥離が発生しなかった。また、皮膜厚さが5μm以下であると、ボール循環の問題が発生しなかったが、皮膜厚さを8μmにすると、ボール循環の問題、具体的にはボールのリターンチューブへの乗り移りが円滑に行えわれず、初期作動が悪くなった。よって、皮膜厚さを、0.1〜5μmに設定すると、水素脆性剥離の発生を防止でき、かつボールの循環にも問題が生じないことが分かる。
【0021】
なお、上記実施形態は、循環部7をリターンチューブ形式としたが、この発明は、循環部7の形式を問わず適用することができる。循環部の形式としては、大きくは、外部循環方式と、内部循環方式とがあり、いずれにもこの発明を適用することができる。外部循環方式は、ナット2の本体の外部でボール3を循環させる方式であり、上記リターンチューブ式の他に、図4に示すようにガイドプレート11に循環部7を形成したガイドプレート式がある。内部循環方式は、ナット2の本体の内部でボール3を循環させる方式であり、代表例として、図5に示すように循環部7をこま12で形成したこま式や、図6に示すように循環部7をエンドキャップ13で形成したエンドキャップ式がある。これらの各循環形式においても、この発明を適用することができる。
【0022】
この発明のボールねじを効果的に適用できる機器の例としては、電動射出成形機の射出部駆動機構および型締部駆動機構、電動プレス機におけるプレス部駆動機構、自動車における電動ブレーキおよび操舵機構が挙げられる。電動ブレーキはアンチロックブレーキシステム(ABS)を採用したものである。これらの適用機器は、一般のボールねじの使用例、例えば工作機械に用いられる場合に比べて、表2に示すように、高荷重でかつ高速の使用条件となる。このような高速で高荷重の場合に、この発明における水素脆性剥離の発生防止および循環部での動作円滑性の効果がより効果的に発揮される。
以下に、これら適用機器の具体例を図面と共に説明する。
【0023】
【表2】
Figure 2004257502
【0024】
図7は、この実施形態にかかるボールねじを応用した電動射出成形機の一例を示し、その射出部駆動機構21および型締駆動機構22にこのボールねじAが用いられている。この射出成形機はインラインスクリュー式横型射出成形機であって、射出部駆動機構21と型締部駆動機構22とを備えている。
射出部駆動機構21は、加熱シリンダ23内に挿入された押出しスクリュー24をその軸線方向に進退させる装置であって、減速機とモータとからなる回転駆動源25を有し、その駆動軸(射出軸)にボールねじAのねじ軸1を係合させている。ボールねじAのナット2は、連結部材29の内径面に一体化されている。連結部材29の一端は押出しスクリュー24の後端に連結され、その押出しスクリュー24とねじ軸1とは同心状に配置される。
押出しスクリュー24は、加熱シリンダ23の内部で軸受30により回転および進退自在に支持され、加熱シリンダ23の外部に露出した後端部にセレーション31が形成される。そのセレーション31の部分に、歯車32が噛み合わされ、この歯車32に噛み合った歯車33を介して、押出しスクリュー24の回転が駆動源34に連結される。加熱シリンダ23の上部に材料供給用のホッパー35が設けられ、また加熱シリンダ23の外周面にヒータ36が装着される。
【0025】
型締駆動機構22は、固定台39に軸受41を介してボールねじAのナット2を回転自在に支持し、そのナット2にモータと減速機とからなる回転駆動源44の回転駆動力をベルト45により伝達する。このボールねじAも、図1〜図3の実施形態のものである。ナット2にねじ軸1が嵌合され、そのねじ軸1の先端に可動盤47が連結される。可動盤47は、固定盤38と固定台39との間に設けられた案内バー48によりスライド自在に支持され、固定盤48に対して、接近・離反するようになっている。固定盤38と可動盤47との対向面に金型49,49Aが搭載される。ボールねじAのねじ軸1は型締め軸となる。
【0026】
このように、高速回転と高加減速、高荷重を受ける電動射出成形機の射出部駆動機構21や型締部駆動機構22に上記実施形態のボールねじAを用いた場合、寿命のばらつきの少ない安定したボールねじ性能を得ることができる。
【0027】
図8は、この実施形態にかかるボールねじを応用した電動プレス機の一例を示し、そのプレス部駆動機構51に前記実施形態にかかるボールねじAが用いられている。プレス部駆動機構51は、ラムガイド52に昇降自在に設置されたラム53を昇降駆動する手段である。ラム53は、パンチ金型54を押し下げる手段であり、その下端に設けられたストライカ53aを介してパンチ金型54を押し下げる。パンチ金型54は、タレット等の金型支持具55にパンチホルダ56を介して昇降自在に設置されている。
【0028】
プレス部駆動機構51は、ボールねじAと、そのねじ軸1を回転させるモータ57とを備え、モータ57の回転は、回転伝達機構58を介してねじ軸1に伝えられる。回転伝達機構58は、モータ57およびねじ軸1に設けられた歯付きプーリ59,60と、これらの間に掛装されたタイミングベルト61とからなる。ねじ軸1は、ラムガイド52の上方に設置された軸受62により回転のみ自在に支持されている。軸受62は、スラスト荷重の負担が可能なラジアル形式の転がり軸受である。ねじ軸1は、底付き円筒状とされたラム53の内部に遊嵌しており、ねじ軸1にボールを介して螺合したナット2は、ラム53内に挿入されて、その上端のフランジ部2aがラム53の上端にボルト等で結合されている。
【0029】
このプレス機は、モータ57を正方向に回転させることで、ねじ軸1の回転がナット2の下降動作に変換され、ナット2と共にラム53が下降する。ラム53の下降により、パンチ金型54が押し下げられ、パンチ金型54に対向するダイ金型(図示せず)とパンチ金型54との間で、板材(図示せず)に孔明け加工等のパンチ加工が行われる。ラム53が下死点まで下降すると、モータ57を逆方向に回転させ、ラム53を上昇復帰させる。このように、昇降ストロークHだけラム53を昇降させてパンチ加工を行う。
このように、電動プレス機のプレス駆動機構51に上記実施形態のボールねじAを用いた場合、高速回転と高加減速、高荷重という厳しい条件でありながら、寿命のばらつきの少ない安定したボールねじ性能を得ることができる。
【0030】
図9は、この実施形態にかかるボールねじを応用した電動パワーステアリング装置の一例を示す。同図において、ハウジング71は、図示しないブラケットを有していて、車体に固定される。ハウジング71内には操舵軸72が貫通し、操舵軸72はその両端にタイロッド73,74が連結されている。タイロッド73,74は、車輪を操舵する操舵機構(図示せず)に連結される。
ハウジング71の一端の近傍から斜め上方に延びるようにハンドル軸75が設けられ、ハンドル軸75は上端にハンドルが連結される。ハンドル軸75は、回転自在に支持されていて、ハンドル軸75の回転は、その下端から変換機構76を介して操舵軸72に、軸方向の移動力として伝達される。変換機構76は、操舵軸72の長手方向の一部で形成されるラック77と、ハンドル軸75の下端に設けられたピニオン(図示せず)とからなり、上記ピニオンは、ハウジング71内でラック77に噛み合う。ハンドル軸75に対して、その操舵トルクを検出する操舵トルク検出器(図示せず)が設けられている。
【0031】
ハウジング71は、円筒状に形成されたものであり、中央の筒体71aの両端に端部材71b,71cを結合して構成される。ハウジング71内の軸方向の中央部には、電動モータ78のステータ79が設けられている。ステータ79は、コアおよびステータコイルで構成される。ステータ79の内周側には、電動モータ78のロータ80がギャップを介して設けられている。ロータ80は、磁性体により円筒状に形成されていて、スリーブ81の外周に、このスリーブ81と一体に回転するように取付けられる。このスリーブ81内に、操舵軸72が軸方向移動自在に挿通されている。電動モータ78は、図示しないモータ制御回路により、上記操舵トルク検出器の検出値に従って制御される。
【0032】
操舵軸72は、一端、この例ではハンドル軸75側の端部が、ハウジング71内でラック77の背面のブッシュ(図示せず)に支持され、他端がハウジング71に設けられた厚肉筒状の軸サポート部71dで支持されている。軸サポート部71dは、ハウジング71の端部材71bに設けられたものである。
【0033】
この構成の電動パワーステアリング装置によると、車両が直進状態にあり、ハンドルの回転が停止しているときは、ハンドル軸75の操舵トルク検出器(図示せず)からトルク信号が出力されず、モータ制御手段(図示せず)により電動モータ78は回転停止状態とされる。したがって、この電動パワーステアリング装置は補助操舵力を出力しない状態にある。
ハンドルを操舵すると、ハンドル軸75の操舵トルク検出器からトルク信号が出力され、モータ制御回路の制御により、電動モータ78はロータ80を回転させる。ロータ80が回転すると、ロータ80と共にボールねじAのナット2が回転し、ねじ軸1で一部が構成される操舵軸72が軸方向に移動させられ、補助操舵力が発生する。このようにして、ハンドルの操舵力が電動モータ78で補われる。
このように、電動パワーステアリング装置に上記実施形態のボールねじAを用いた場合、高速回転と高加減速、高荷重という厳しい条件でありながら、寿命のばらつきの少ない安定したボールねじ性能を得ることができる。
【0034】
図10は、この実施形態にかかるボールねじを応用した電動ブレーキシステムの一例を示す。この電動ブレーキシステムは、自動車の車輪91を制動するシステムであり、車輪91は車輪用軸受92に回転自在に支持されている。車輪91は、リム93の外周にタイヤ94を設けたものである。
【0035】
ブレーキ105は、車輪91に設けられたブレーキ輪106およびこのブレーキ輪106に摩擦接触可能なブレーキ片107を有する作動部108と、ブレーキ片107を作動させる駆動部109とを有し、駆動部109に駆動源として電動モータ110を用いた電動ブレーキとされている。ブレーキ輪106はブレーキディスクからなる。ブレーキ片107はパッドからなり、ブレーキ輪106を挟み付けるように一対のブレーキ片107が設けられている。片方のブレーキ片107は、ブレーキフレーム111に固定され、もう片方のブレーキ片107は、ブレーキフレーム111に直線的に進退自在に設置された進退部材112に取付けられている。進退部材112の進退可能方向はブレーキ輪106に対面する方向である。進退部材112は、ブレーキフレーム111に対して回り止めされている。
【0036】
ブレーキ106の駆動部109に前記実施形態にかかるボールねじAが用いられている。すなわち、ブレーキ106の駆動部109は、上記電動モータ110と、この電動モータ110の回転出力を往復直線運動に変換してブレーキ片107に制動力として伝えるボールねじAとを有し、電動モータ110の出力は減速伝達機構118を介してボールねじAに伝達される。ボールねじAは、ねじ軸1が軸受117を介してブレーキフレーム111に回転のみ自在に支持され、ナット2が上記進退部材112に固定されている。進退部材112とナット2とは、互いに一体の部材であっても良い。
【0037】
減速伝達機構118は、電動モータ110の回転をボールねじAのねじ軸1に減速して伝える機構であり、ギヤ列で構成されている。減速伝達機構118は、この例では、モータ110の出力軸に設けられたギヤ119、およびねじ軸1に設けられて上記ギヤ119に噛み合うギヤ120からなる。
【0038】
この電動ブレーキシステムは、上記作動部108および駆動部109で構成されるブレーキ105と、ブレーキペダル等の操作部材の操作に従い上記電動モータ110を制御する操作部(図示せず)とを有し、操作部にアンチロック制御手段が設けられている。
【0039】
上記構成の電動ブレーキシステムによると、ブレーキペダル等の操作部材(図示せず)を制動操作すると電動モータ110が駆動され、その回転がボールねじAを介してブレーキ片107の直線往復動作に変換され、ブレーキ片107でブレーキ輪106を挟み付けることで制動が行われる。
このように、この電動ブレーキシステムは、電動モータ110の回転を往復直線運動に変換する機構として前記実施形態のボールねじAを用いているため、高速回転と高加減速、高荷重という厳しい条件でありながら、寿命のばらつきの少ない安定したボールねじ性能を得ることができる。
【0040】
【発明の効果】
この発明のボールねじは、ねじ軸の転走面、ナットの転走面、およびボールの表面の少なくとも一つに四三酸化鉄の皮膜を施したため、高速回転、高加減速、高荷重での使用においても、グリース等の使用潤滑剤からの水素の浸入を抑制し各転走面やボール表面等での水素脆性剥離の発生を防止することができ、ボールねじの安定した耐久寿命を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態にかかるボールねじの破断側面図である。
【図2】同ボールねじを斜めに破断した横断面図である。
【図3】(A)〜(C)はは四三酸化鉄の皮膜を施したボールねじの各例を示す部分拡大断面図である。
【図4】この発明の他の実施形態にかかるボールねじの横断面図である。
【図5】この発明のさらに他の実施形態にかかるボールねじの破断斜視図である。
【図6】この発明のさらに他の実施形態にかかるボールねじの断面図である。
【図7】この発明のボールねじを適用した電動射出成形機の断面図である。
【図8】同ボールねじを適用した電動プレス機の断面図である。
【図9】同ボールねじを適用した電動パワーステアリング装置の破断正面図である。
【図10】同じボールねじを適用した電動ブレーキシステムの断面図である。
【符号の説明】
1…ねじ軸
2…ナット
3…ボール
4…ねじ軸のねじ溝
4a…ねじ溝転走面
5…ナットのねじ溝
5a…ねじ溝転走面
9…四三化鉄の皮膜
21…射出部駆動機構
22…型締部駆動機構
51…プレス部駆動機構
105…ブレーキ

Claims (3)

  1. ねじ軸およびナットの対向するボールねじ溝の転走面間にボールを介在させたボールねじにおいて、ねじ軸の転走面、ナットの転走面、およびボールの表面の少なくとも一つに、四三酸化鉄の皮膜を施したことを特徴とするボールねじ。
  2. 請求項1において、上記皮膜の厚さが0.1〜5μmであるボールねじ。
  3. 請求項1または請求項2において、上記ナットが、このナットの上記ボールねじ溝に両端が連通して上記転走面間のボールを循環させる循環部を有するものであるボールねじ。
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