JP2004257460A - 車両用自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】オフアップシフト中のダウンシフトに際してショックの発生を防止でき且つ応答性に優れた車両用自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】タービン回転速度NT の変化に基づいてアップシフトのイナーシャ相が開始されたか否かを判定するイナーシャ相開始判定手段94と、タービン回転速度NT が所定の同期回転速度にて基準時間TST継続したか否かを判定する同期回転速度継続判定手段98と、多重変速出力時におけるイナーシャ相開始判定手段94による判定結果に応じて同期回転速度継続判定手段98における基準時間TSTを変更する基準時間決定手段96とを含むことから、イナーシャ相が開始されたか否かでアップ係合側のトルク容量を大まかに予測でき、その結果に応じて判定時間を変化させることで、アップ係合側のトルク容量が十分であることが予測される場合の応答性を高めることができる。
【選択図】 図6
【解決手段】タービン回転速度NT の変化に基づいてアップシフトのイナーシャ相が開始されたか否かを判定するイナーシャ相開始判定手段94と、タービン回転速度NT が所定の同期回転速度にて基準時間TST継続したか否かを判定する同期回転速度継続判定手段98と、多重変速出力時におけるイナーシャ相開始判定手段94による判定結果に応じて同期回転速度継続判定手段98における基準時間TSTを変更する基準時間決定手段96とを含むことから、イナーシャ相が開始されたか否かでアップ係合側のトルク容量を大まかに予測でき、その結果に応じて判定時間を変化させることで、アップ係合側のトルク容量が十分であることが予測される場合の応答性を高めることができる。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用自動変速機の制御装置に関し、特に、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧式多板クラッチ或いはブレーキのような複数の油圧式摩擦係合装置を備えた車両用自動変速機では、それら複数の油圧式摩擦係合装置の選択的係合状態の切換を行うことにより所望のギア段への変速が実行されるようになっている。斯かる車両用自動変速機の変速装置に関し、アクセルオフでのアップシフト時にショックを軽減する技術が開発されている。例えば、特許文献1に記載された自動変速機のライン圧制御装置がそれである。この自動変速機のライン圧制御装置によれば、スロットル開度を検出する手段と、そのスロットル開度の時間変化率を演算する手段と、そのスロットル開度の時間変化率が正の場合にはライン圧をオンアップ特性に従って制御し、負の場合にはオフアップ特性に従って制御するライン圧制御手段とを、備えており、上記オンアップ特性のライン圧は同一スロットル開度におけるオフアップ特性のライン圧より高く設定されていることから、アクセルオフでのアップシフト時には係合側油圧を比較的ゆっくりと上昇させることで、ショックを発生させることなく変速を行うことができる。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−307532号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速において、アップシフト係合側の油圧式摩擦係合装置は、同時にダウンシフト開放側の油圧式摩擦係合装置でもあることから、とりわけ急加速させようとアクセルオンされる等した場合、アップシフト係合側のトルク容量が入力トルクに対して不十分であることが原因でクラッチ滑りによるエンジンの吹き上がりが発生し易い。そのため、ダウンシフト制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を十分に長くすることでショックの発生を防いでいるが、エンジンの吹き上がりが発生しない場合には制御に要する時間が余分に増すことで応答性が悪化するという弊害があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速に際してショックの発生を防止でき且つ応答性に優れた車両用自動変速機の制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速を制御するための車両用自動変速機の制御装置であって、入力軸回転速度の変化に基づいて前記アップシフトのイナーシャ相が開始されたか否かを判定するイナーシャ相開始判定手段と、前記入力軸回転速度が出力軸回転速度と前記ダウンシフト後のギア比とに基づく同期回転速度にて所定の基準時間継続したか否かを判定する同期回転速度継続判定手段と、前記多重変速出力時における前記イナーシャ相開始判定手段による判定結果に応じて前記同期回転速度継続判定手段における基準時間を変更する基準時間決定手段とを、含むことを特徴とするものである。
【0007】
【発明の効果】
このようにすれば、入力軸回転速度の変化に基づいて前記アップシフトのイナーシャ相が開始されたか否かを判定するイナーシャ相開始判定手段と、前記入力軸回転速度が出力軸回転速度と前記ダウンシフト後のギア比とに基づく同期回転速度にて所定の基準時間継続したか否かを判定する同期回転速度継続判定手段と、前記多重変速出力時における前記イナーシャ相開始判定手段による判定結果に応じて前記同期回転速度継続判定手段における基準時間を変更する基準時間決定手段とを、含むことから、イナーシャ相が開始されたか否かでアップシフト係合側のトルク容量を大まかに予測でき、その結果に応じてダウンシフト制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を変化させることで、前記アップシフト係合側のトルク容量が十分であることが予測される場合の応答性を高めることができる。すなわち、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速に際してショックの発生を防止でき且つ応答性に優れた車両用自動変速機の制御装置を提供することができる。
【0008】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記基準時間決定手段は、前記イナーシャ相開始判定手段の判定が肯定される場合における基準時間を、その判定が否定される場合における基準時間よりも短い時間として決定するものである。このようにすれば、エンジンの吹き上がりが発生しない場合の応答性を可及的に高めることができる一方、斯かるエンジンの吹き上がりが発生する場合には、前記ダウンシフト出力が行われた後、前記エンジンの吹き上がりが発生するまでの前記入力軸回転速度が比較的なだらかに増減する時間帯において、誤判定によるショックの発生を防止することができるという利点がある。
【0009】
また、好適には、前記多重変速は、開放側の油圧式摩擦係合装置を開放させるのと同期して係合側の油圧式摩擦係合装置を係合させるクラッチツウクラッチ変速である。このようにすれば、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行するクラッチツウクラッチ変速に際してショックの発生を防止でき且つ応答性に優れた車両用自動変速機の制御装置を提供することができるという利点がある。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の制御装置が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関にて構成されている走行用駆動力源としてのエンジン12の出力は、流体式動力伝達装置であるトルクコンバータ14を経て自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置及び車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。このトルクコンバータ14は、上記エンジン12に連結されたポンプ翼車20と、上記自動変速機16の入力軸18に連結されたタービン翼車22と、一方向クラッチ26によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車24とを備えており、上記ポンプ翼車20とタービン翼車22との間で流体を介して動力伝達を行う一方、そのポンプ翼車20及びタービン翼車22の間を直結するためのロックアップクラッチ28を備えており、このロックアップクラッチ28が完全係合させられることにより、上記ポンプ翼車20及びタービン翼車22が一体回転させられる。また、所定のスリップ状態で係合するように差圧ΔPすなわち係合トルクがフィードバック制御されることにより、駆動時には例えば50rpm程度の所定のスリップ量でタービン翼車22をポンプ翼車20に対して追従回転させる一方、逆入力時には例えば−50rpm程度の所定のスリップ量でポンプ翼車20をタービン翼車24に対して追従回転させることができる。
【0012】
上記自動変速機16は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置30と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置32及び第3遊星歯車装置34とを備えた遊星歯車式の有段変速機である。上記第1遊星歯車装置30のサンギヤS1は、クラッチC3を介して上記入力軸18に選択的に連結されると共に、一方向クラッチF2及びブレーキB3を介して非回転部材であるハウジング36に選択的に連結され、逆方向(入力軸18の回転と反対方向)の回転が阻止されるようになっている。上記第1遊星歯車装置30のキャリアCA1は、ブレーキB1を介して上記ハウジング36に選択的に連結されると共に、そのブレーキB1と並列に設けられた一方向クラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。上記第1遊星歯車装置30のリングギヤR1は、上記第2遊星歯車装置32のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介して上記ハウジング36に選択的に連結されるようになっている。上記第2遊星歯車装置32のサンギヤS2は、上記第3遊星歯車装置34のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC1を介して上記入力軸18に選択的に連結されるようになっている。上記第2遊星歯車装置32のキャリアCA2は、上記第3遊星歯車装置34のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して上記入力軸18に選択的に連結されると共に、ブレーキB4を介して上記ハウジング36に選択的に連結されるようになっており、更にブレーキB4と並列に設けられた一方向クラッチF3により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。そして、上記第3遊星歯車装置34のキャリアCA3は、出力軸38に一体的に連結されている。
【0013】
上記クラッチC1乃至C3、及びブレーキB1乃至B4は、多板式のクラッチやブレーキ等の係合・開放が所定の油圧アクチュエータによって制御される油圧式摩擦係合装置であり、後述する図3に示す油圧制御回路82のソレノイド弁Sol1、Sol2、SolR、リニアソレノイド弁SL1及びSL2の励磁・非励磁や、図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、例えば図2に示すように係合・開放状態が切り換えられ、シフトレバー68の操作位置(ポジション)に応じて5つの前進変速段(1st乃至5th)及び1つの後進ギヤ段(Rev)が成立させられるようになっている。図2の「1st」乃至「5th」は、前進の第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段を意味しており、第1速ギヤ段「1st」から第5速ギヤ段「5th」へ向かうに従って変速比γ(入力軸18の回転速度NIN/出力軸38の回転速度NOUT )は順次小さくなり、第4速ギヤ段「4th」の変速比γ4 は1.0である。また、図2において「●」は係合を、空欄は開放を、「▲」はエンジンブレーキ時の係合を表す。前記自動変速機16において、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段への1→2変速は、上記ブレーキB3が係合させられることにより達成され、エンジンブレーキ作用を発生させる必要があるエンジンブレーキレンジでは、更に上記ブレーキB2が係合させられる。このブレーキB2は、専らエンジンブレーキレンジにおいてのみ係合させられるので、上記ブレーキB3よりも相対的に係合トルク容量が小さく構成されている。また、第2速ギヤ段から第3速ギヤ段への2→3変速は、上記クラッチC3が係合させられることにより達成され、エンジンブレーキ作用を発生させる必要があるエンジンブレーキレンジでは、更に上記ブレーキB1が係合させられる。また、第3速ギヤ段から第4速ギヤ段への3→4変速は、上記クラッチC2が係合させられることにより達成される。そして、第4速ギヤ段から第5速ギヤ段へ4→5アップ変速は、上記クラッチC1を開放すると同時に上記ブレーキB1を係合させるクラッチツウクラッチアップ変速制御が実行される。
【0014】
図3は、図1のエンジン12や自動変速機16等を制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図である。この図3に示すエンジン12の吸気配管には、スロットルアクチュエータ40によって基本的にはアクセルペダル42の操作量ACCに応じた開き角(開度)θTHとされる電子スロットル弁44が設けられている。このアクセルペダル42の操作量ACCは、アクセル操作量センサ46により検出されるようになっている。また、アイドル回転速度制御のために上記電子スロットル弁44に並列に設けられてそれをバイパスさせるバイパス通路48には、前記エンジン12のアイドル回転速度(回転数)NEIDLを制御するために上記電子スロットル弁44の全閉時の吸気量を制御するISC弁(アイドル回転速度制御弁)50が設けられている。また、前記エンジン12の回転速度(回転数)NE を検出するためのエンジン回転速度センサ52、前記エンジン12の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ54、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ56、上記電子スロットル弁44の全閉状態(アイドル状態)及びその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ58、車速Vに対応する前記出力軸38の回転速度(回転数)NOUT を検出するための出力軸回転速度センサ60、前記エンジン12の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ62、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ64、シフトレバー68のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ66、前記入力軸18の回転速度NINすなわちタービン回転速度(回転数)NT を検出するためのタービン回転速度センサ70、油圧制御回路82内の作動油の温度であるAT油温TOIL を検出するためのAT油温センサ72、アップシフトスイッチ74、ダウンシフトスイッチ76等が設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE 、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、出力軸回転速度NOUT 、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー68のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT 、AT油温TOIL 、変速レンジのアップ指令RUP、ダウン指令RDN等を表す信号が電子制御装置(ECU)84に供給されるようになっている。また、フットブレーキの操作時に車輪がロック(スリップ)しないようにブレーキ力を制御するABS(アンチロックブレーキシステム)78に接続され、ブレーキ力に対応するブレーキ油圧等に関する情報が供給されるとともに、エアコン80から作動の有無を表す信号が供給されるようになっている。
【0015】
上記シフトレバー68は、運転席の近傍に配設されており、例えば駐車のための「P(パーキング)」ポジション、後進走行のための「R(リバース)」ポジション、動力伝達経路を開放するための「N(ニュートラル)」ポジション、前進走行のための「D(ドライブ)」ポジション、エンジンブレーキ走行のための「4(フォース)」ポジション、「3(サード)」ポジション、「2(セカンド)」ポジション、又は「L(ロー)」ポジションへ択一的に手動操作されるようになっている。「R」ポジションではリバース用回路が機械的に成立させられる等して図2に示す後進変速段「Rev」が成立させられ、「N」ポジションではニュートラル回路が機械的に成立させられて総てのクラッチC及びブレーキBが開放される。
【0016】
前記油圧制御回路82は、前記変速用のソレノイド弁Sol1、Sol2、SolR、リニアソレノイド弁SL1、SL2の他に、主にロックアップ油圧すなわち前記ロックアップクラッチ28の係合側油室内の油圧と開放側油室内の油圧との差圧ΔPを制御するリニアソレノイド弁SLU、主にライン油圧PL を制御するリニアソレノイド弁SLTを備えており、この油圧制御回路82内の作動油は、前記ロックアップクラッチ26へも供給されると共に、前記自動変速機16等の各部の潤滑にも使用される。上記ライン油圧PL は、前記電子制御装置84により作動制御されるオイルポンプ88により発生させられた油圧が図示しない調圧弁及びマニュアル弁等を介して、油圧式摩擦係合装置の元圧として必要かつ十分な大きさとなるように調圧されて供給されるものである。
【0017】
前記電子制御装置84は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。このCPUは、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、車両の走行に関する様々な制御を実行する。また、前記電子制御装置84は、主に前記エンジン12の出力制御や前記自動変速機16の変速制御等を実行するためのエンジン−自動変速機用電子制御装置(EFI−ECT ECU)86を備えている。このエンジン−自動変速機用電子制御装置86は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等に加えて、所定の制御作動に際してその制御開始からの時間経過を計ることができるカウンタを備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。
【0018】
図4は、前記油圧制御回路82の一部を示す図である。この図4に示すリニアソレノイド弁SL1、SL2は、図示しない電磁ソレノイドをそれぞれ備え、エンジン−自動変速機用電子制御装置86によって制御されるそれら電磁ソレノイドの電磁力に従って、一定値に調圧されたモジュレータ圧PM (元圧)から連続的に変化する制御油圧PSL1 、PSL2 を発生させて出力する。第1係合制御弁90は、上記リニアソレノイド弁SL1から供給される制御油圧PSL1 に従って、上記ライン油圧PL から連続的に変化する係合制御油圧PC1を発生させて前記クラッチC1に供給する。この係合制御油圧PC1によって前記クラッチC1の係合トルクが制御される。また、第2係合制御弁92は、上記リニアソレノイド弁SL2から供給される制御油圧PSL2 に従って、上記ライン油圧PL から連続的に変化する係合制御油圧PB1を発生させて前記ブレーキB1に供給する。この係合制御油圧PB1によって前記ブレーキB1の係合トルクが制御される。
【0019】
図5は、前記エンジン−自動変速機用電子制御装置86の信号処理によって実行される制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図5に示す変速制御手段102は、イナーシャ相開始判定手段94、基準時間決定手段96、同期回転速度継続判定手段98、及び係合終了判定手段100を含むものであり、前記アップシフトスイッチ74からの変速レンジのアップ指令RUP及びダウンシフトスイッチ76からの変速レンジのダウン指令RDNに従って、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速、例えばアクセルオフでの4→5アップ変速中に5→4ダウン変速を実行する多重変速を制御する。
【0020】
イナーシャ相開始判定手段94は、入力軸回転速度すなわち前記タービン回転速度NT の変化に基づいてアクセルオフでのアップシフト、例えば4→5アップ変速のイナーシャ相が開始されたか否かを判定する。例えば、前記タービン回転速度NT が4→5アップ変速出力時乃至それ以前における定常値から少なくとも所定のイナーシャ相開始判定回転速度差ΔNIP降下したか否かを判定する。
【0021】
基準時間決定手段96は、前記多重変速出力時すなわち5→4ダウン変速出力時における上記イナーシャ相開始判定手段94による判定結果に応じて後述する同期回転速度継続判定手段98における基準時間TSTを変更する。例えば、上記イナーシャ相開始判定手段94の判定が肯定される場合には、所定の時間Ta を上記基準時間TSTとして決定し、判定が否定される場合には、上記時間Ta よりも短い所定の時間Tb を上記基準時間TSTとして決定する。これらの時間Ta 及びTb は、前記エンジン−自動変速機用電子制御装置86のROM等に予め記憶された値であり、すなわち、基準時間決定手段96は、換言すれば、予め定められた複数の基準時間TSTのうちから一つの時間を選択決定する基準時間選択決定手段である。
【0022】
同期回転速度継続判定手段98は、前記タービン回転速度NT が出力軸回転速度NOUT とダウン変速後のギア比γとに基づく同期回転速度にて上記基準時間決定手段96により決定された基準時間TST継続したか否かを判定する。例えば、前記タービン回転速度NT が出力軸回転速度NOUT と5→4ダウン変速後のギア比γ4 との積から所定の誤差±αの範囲内すなわち下記の数式1を満たす値にて上記基準時間TST継続したか否かを判定する。この判定には、前述のカウンタが用いられる。ここで、或る回転速度が所定時間継続することは、その回転速度にて所定の回数連続して回転することと等価であることから、同期回転速度継続判定手段98は、前記タービン回転速度NT が出力軸回転速度NOUT とダウン変速後のギア比γ4 とに基づく同期回転速度にて所定の基準回数連続して回転したか否かを判定するものであると言うことができ、基準時間決定手段96は、換言すれば、前記多重変速出力時における上記イナーシャ相開始判定手段94による判定結果に応じて上記同期回転速度継続判定手段98における基準回数を決定する基準回数決定手段である。この基準回数決定手段が、前記イナーシャ相開始判定手段94の判定が肯定される場合における基準回数を、その判定が否定される場合における基準回数よりも少ない回数に決定するものであることは言うまでもない。
【0023】
[数式1]
γ4 ×NOUT −α<NT <γ4 ×NOUT +α
【0024】
係合終了判定手段100は、上記同期回転速度継続判定手段98の判定結果に応じてダウン変速が終了したか否かを判定する。例えば、上記同期回転速度継続判定手段98の判定が肯定される場合には、前記クラッチC1が完全係合させられて5→4ダウン変速が終了したと判定し、所定時間(余裕値)後に変速制御を終了する。
【0025】
図6は、上述の変速制御作動により得られる前記自動変速機16及び油圧制御回路82の作動、すなわちアクセルオフでの4→5アップ変速中に5→4ダウン変速を実行する多重変速に際しての前記ブレーキB1の係合制御作動を示すタイムチャートであり、(a)はアップ変速のイナーシャ相が開始される前に多重変速が出力された場合の作動を、(b)はアップ変速のイナーシャ相が開始された後に多重変速が出力された場合の作動をそれぞれ示している。なお、この図6の係合制御油圧指令値のタイムチャートに示すように、5→4ダウン変速に際しての前記ブレーキB1の開放には、滑らかな変速を実現するためのスイープ制御(フィードバック制御)が用いられる。
【0026】
図6(a)において、4→5アップ変速出力が行われると、その4→5アップ変速を実行するために開放側油圧式摩擦係合装置である前記クラッチC1からの作動油排出と係合側油圧式摩擦係合装置である前記ブレーキB1への作動油供給とが開始され、前記クラッチC1の係合制御油圧PC1が前記リニアソレノイド弁SL1による直接圧制御により降下させられると共に、前記ブレーキB1の係合制御油圧PB1が前記リニアソレノイド弁SL2による直接圧制御により上昇させられる。このクラッチツウクラッチ変速の進行に従ってタービン回転速度NT は漸減し、そのタービン回転速度NT が4→5アップ変速出力時における定常値から所定のイナーシャ相開始判定回転速度差ΔNIP降下した段階でアップ変速のイナーシャ相が開始されるが、図6(a)では、アップ変速のイナーシャ相が開始される前に5→4ダウン変速出力が行われている。次いで、5→4ダウン変速を実行するために開放側油圧式摩擦係合装置である前記ブレーキB1からの作動油排出と係合側油圧式摩擦係合装置である前記クラッチC1への作動油供給とが開始され、前記クラッチC1の係合制御油圧PC1が前記リニアソレノイド弁SL1による直接圧制御により上昇させられると共に、前記ブレーキB1の係合制御油圧PB1が前記リニアソレノイド弁SL2による直接圧制御により降下させられるが、ダウン変速指令時におけるこの係合制御油圧PB1が比較的低いことから前記ブレーキB1のトルク容量(クラッチ容量)が比較的小さく、点線で囲った部分に示すような大幅なタービン吹きすなわち前記エンジン12の吹き上がりが発生し易い。そこで、斯かる場合には、ダウン変速制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を比較的長いTa とすること、すなわち同期回転速度継続の判定回数を比較的多い連続A回とすることで、ショックの発生を防いでいる。
【0027】
また、図6(a)から明らかなように、5→4ダウン変速出力が行われた後、上述のタービン吹きが発生するまでの間に前記タービン回転速度NT が比較的なだらかに増減する時間帯がある。この時間帯において、前記タービン回転速度NT が前述の数式1を一時的に満たすことが考えられるが、ダウン変速制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を比較的長いTa とすることで、誤判定によるショックの発生を防止することができる。
【0028】
図6(b)では、アップ変速のイナーシャ相が開始された後に5→4ダウン変速出力が行われているが、ここでは、ダウン変速指令時における前記係合制御油圧PB1が比較的高いことから前記ブレーキB1のトルク容量(クラッチ容量)が比較的大きく、図6(a)に示すような大幅なタービン吹きは発生し難い。斯かる場合には、ダウン変速制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を比較的短いTb とすること、すなわち同期回転速度継続の判定回数を比較的少ない連続B回とすることで、応答性を高めている。このように、ダウン変速指令時における開放側油圧式摩擦係合装置のトルク容量に応じてダウン変速制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間乃至判定回数を選択的に決定することで、タービン吹きに起因するショックの発生を防止しつつ応答性を高めることができる。
【0029】
図7は、前記エンジン−自動変速機用電子制御装置86の信号処理によって実行される制御作動の要部を説明するフローチャートであり、例えば数ミリ秒乃至数十ミリ秒といった所定の周期で繰り返し実行されるものである。このフローチャートは、アクセルオフでの4→5アップ変速中に5→4ダウン変速を実行する多重変速制御ルーチンを示している。
【0030】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、アクセルオフでの4→5アップ変速中に5→4ダウンシフトが実行されたか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S1の判断が肯定される場合には、S2において、5→4ダウンシフトが実行されてから所定時間(余裕値)後に変速レンジのダウン指令RDNが出力され、前記イナーシャ相開始判定手段98に対応するS3において、5→4ダウン変速指令が4→5アップ変速時のイナーシャ相開始前に出力されたか否かが判断される。このS3の判断が肯定される場合には、S4において、5→4ダウン変速制御終了の基準となるダウン同期回転速度継続の判定回数がA回と決定された後、S5において、ダウン同期回転速度が連続でA回成立したか否かが判断される。このS5の判断が否定されるうちは、S5の判断が繰り返し実行されるされることにより待機させられるが、S5の判断が肯定される場合は、前記係合終了判定手段100に対応するS8において、5→4ダウン変速が終了したと判断されて所定時間(余裕値)後にダウン変速制御が終了させられ、それをもって本ルーチンもまた終了させられる。一方、S3の判断が否定される場合、すなわち5→4ダウン変速指令が4→5アップ変速時のイナーシャ相開始後に出力されたと判断される場合には、S6において、5→4ダウン変速制御終了の基準となるダウン同期回転速度継続の判定回数が上述のA回よりも少ないB回と決定された後、S7において、ダウン同期回転速度が連続でB回成立したか否かが判断される。このS7の判断が否定されるうちは、S7の判断が繰り返し実行されるされることにより待機させられるが、S7の判断が肯定される場合は、S8において、5→4ダウン変速が終了したと判断されて所定時間後にダウン変速制御が終了させられ、それをもって本ルーチンもまた終了させられる。以上のS4、S6が前記基準時間決定手段96に、S5、S7が前記同期回転速度継続判定手段98に、それぞれ対応する。
【0031】
このように、本実施例によれば、入力軸回転速度すなわち前記タービン回転速度NT の変化に基づいて4→5アップシフトのイナーシャ相が開始されたか否かを判定するイナーシャ相開始判定手段94(S3)と、前記タービン回転速度NT が出力軸回転速度NOUT と5→4ダウンシフト後のギア比γ4 とに基づく同期回転速度にて所定の基準時間TST継続したか否かを判定する同期回転速度継続判定手段98(S5、S7)と、前記多重変速出力時における前記イナーシャ相開始判定手段94による判定結果に応じて前記同期回転速度継続判定手段98における基準時間TSTを変更する基準時間決定手段96(S4、S6)とを、含むことから、イナーシャ相が開始されたか否かで4→5アップシフト係合側のトルク容量を大まかに予測でき、その結果に応じて5→4ダウンシフト制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を変化させることで、4→5アップシフト係合側のトルク容量が十分であることが予測される場合の応答性を高めることができる。すなわち、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速に際してショックの発生を防止でき且つ応答性に優れた車両用自動変速機の制御装置を提供することができる。
【0032】
また、前記基準時間決定手段96は、前記イナーシャ相開始判定手段94の判定が肯定される場合における基準時間Ta を、その判定が否定される場合における基準時間Tb よりも短い時間として決定するものであるため、前記エンジン12の吹き上がりが発生しない場合の応答性を可及的に高めることができる一方、斯かるエンジン12の吹き上がりが発生する場合には、前記5→4ダウン変速出力が行われた後、前記エンジン12の吹き上がりが発生するまでの前記タービン回転速度NT が比較的なだらかに増減する時間帯において、誤判定によるショックの発生を防止することができるという利点がある。
【0033】
また、前記多重変速は、開放側の油圧式摩擦係合装置である前記ブレーキB1を開放させるのと同期して係合側の油圧式摩擦係合装置である前記クラッチC1を係合させるクラッチツウクラッチ変速であるため、アクセルオフでの4→5アップシフト中に5→4ダウンシフトを実行するクラッチツウクラッチ変速に際してショックの発生を防止でき且つ応答性に優れた車両用自動変速機の制御装置を提供することができるという利点がある。
【0034】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0035】
例えば、前述の実施例では、駆動力源として前記エンジン12のみを備えた車両について説明したが、例えば、燃料の燃焼によって駆動力を発生させる前記エンジン12に加えて電気エネルギによって駆動力を発生させるモータジェネレータを備えた所謂ハイブリッド自動車、或いは燃料電池自動車に本発明が適用されても構わない。
【0036】
また、前述の実施例では、前記エンジン−自動変速機用電子制御装置86の機能として係合終了判定手段100が設けられると共に、制御作動を示すフローチャートにその係合終了判定手段100に対応するS8が設けられていたが、それらは必ずしも設けられなくともよく、例えば、S5又はS7の判定が肯定された時点でダウン変速制御ルーチンが終了させられるものであっても構わない。
【0037】
また、前述の実施例では、前記基準時間決定手段96により決定される基準時間Ta 、Tb は何れも予め設定された一定値であったが、これらは種々のパラメータの関数であってもよい。
【0038】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制御装置が適用された車両用駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の自動変速機における複数の油圧式摩擦係合装置の組み合わせとそれにより成立させられる変速段との関係を示す図である。
【図3】図1の車両用駆動制御装置が備えている制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図4】図1の自動変速機の変速を実行させるための油圧制御回路の一部を説明する図である。
【図5】図3のエンジン−自動変速機用電子制御装置が備えている制御機能の要部すなわちアクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速制御機能を説明する機能ブロック線図である。
【図6】図3のエンジン−自動変速機用電子制御装置によるアクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速制御に際してのタイムチャートであり、(a)はアップシフトのイナーシャ相が開始される前に多重変速が出力された場合の作動を、(b)はアップシフトのイナーシャ相が開始された後に多重変速が出力された場合の作動をそれぞれ示している。
【図7】図3のエンジン−自動変速機用電子制御装置の制御作動の要部すなわちアクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速制御作動を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
16:自動変速機
18:入力軸
38:出力軸
86:エンジン−自動変速機用電子制御装置(制御装置)
94:イナーシャ相開始判定手段
96:基準時間決定手段
98:同期回転速度継続判定手段
B1:ブレーキ(油圧式摩擦係合装置)
C1:クラッチ(油圧式摩擦係合装置)
NOUT :出力軸回転速度
NT :タービン回転速度(入力軸回転速度)
Ta 、Tb 、TST:基準時間
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用自動変速機の制御装置に関し、特に、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧式多板クラッチ或いはブレーキのような複数の油圧式摩擦係合装置を備えた車両用自動変速機では、それら複数の油圧式摩擦係合装置の選択的係合状態の切換を行うことにより所望のギア段への変速が実行されるようになっている。斯かる車両用自動変速機の変速装置に関し、アクセルオフでのアップシフト時にショックを軽減する技術が開発されている。例えば、特許文献1に記載された自動変速機のライン圧制御装置がそれである。この自動変速機のライン圧制御装置によれば、スロットル開度を検出する手段と、そのスロットル開度の時間変化率を演算する手段と、そのスロットル開度の時間変化率が正の場合にはライン圧をオンアップ特性に従って制御し、負の場合にはオフアップ特性に従って制御するライン圧制御手段とを、備えており、上記オンアップ特性のライン圧は同一スロットル開度におけるオフアップ特性のライン圧より高く設定されていることから、アクセルオフでのアップシフト時には係合側油圧を比較的ゆっくりと上昇させることで、ショックを発生させることなく変速を行うことができる。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−307532号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速において、アップシフト係合側の油圧式摩擦係合装置は、同時にダウンシフト開放側の油圧式摩擦係合装置でもあることから、とりわけ急加速させようとアクセルオンされる等した場合、アップシフト係合側のトルク容量が入力トルクに対して不十分であることが原因でクラッチ滑りによるエンジンの吹き上がりが発生し易い。そのため、ダウンシフト制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を十分に長くすることでショックの発生を防いでいるが、エンジンの吹き上がりが発生しない場合には制御に要する時間が余分に増すことで応答性が悪化するという弊害があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速に際してショックの発生を防止でき且つ応答性に優れた車両用自動変速機の制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速を制御するための車両用自動変速機の制御装置であって、入力軸回転速度の変化に基づいて前記アップシフトのイナーシャ相が開始されたか否かを判定するイナーシャ相開始判定手段と、前記入力軸回転速度が出力軸回転速度と前記ダウンシフト後のギア比とに基づく同期回転速度にて所定の基準時間継続したか否かを判定する同期回転速度継続判定手段と、前記多重変速出力時における前記イナーシャ相開始判定手段による判定結果に応じて前記同期回転速度継続判定手段における基準時間を変更する基準時間決定手段とを、含むことを特徴とするものである。
【0007】
【発明の効果】
このようにすれば、入力軸回転速度の変化に基づいて前記アップシフトのイナーシャ相が開始されたか否かを判定するイナーシャ相開始判定手段と、前記入力軸回転速度が出力軸回転速度と前記ダウンシフト後のギア比とに基づく同期回転速度にて所定の基準時間継続したか否かを判定する同期回転速度継続判定手段と、前記多重変速出力時における前記イナーシャ相開始判定手段による判定結果に応じて前記同期回転速度継続判定手段における基準時間を変更する基準時間決定手段とを、含むことから、イナーシャ相が開始されたか否かでアップシフト係合側のトルク容量を大まかに予測でき、その結果に応じてダウンシフト制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を変化させることで、前記アップシフト係合側のトルク容量が十分であることが予測される場合の応答性を高めることができる。すなわち、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速に際してショックの発生を防止でき且つ応答性に優れた車両用自動変速機の制御装置を提供することができる。
【0008】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記基準時間決定手段は、前記イナーシャ相開始判定手段の判定が肯定される場合における基準時間を、その判定が否定される場合における基準時間よりも短い時間として決定するものである。このようにすれば、エンジンの吹き上がりが発生しない場合の応答性を可及的に高めることができる一方、斯かるエンジンの吹き上がりが発生する場合には、前記ダウンシフト出力が行われた後、前記エンジンの吹き上がりが発生するまでの前記入力軸回転速度が比較的なだらかに増減する時間帯において、誤判定によるショックの発生を防止することができるという利点がある。
【0009】
また、好適には、前記多重変速は、開放側の油圧式摩擦係合装置を開放させるのと同期して係合側の油圧式摩擦係合装置を係合させるクラッチツウクラッチ変速である。このようにすれば、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行するクラッチツウクラッチ変速に際してショックの発生を防止でき且つ応答性に優れた車両用自動変速機の制御装置を提供することができるという利点がある。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の制御装置が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関にて構成されている走行用駆動力源としてのエンジン12の出力は、流体式動力伝達装置であるトルクコンバータ14を経て自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置及び車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。このトルクコンバータ14は、上記エンジン12に連結されたポンプ翼車20と、上記自動変速機16の入力軸18に連結されたタービン翼車22と、一方向クラッチ26によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車24とを備えており、上記ポンプ翼車20とタービン翼車22との間で流体を介して動力伝達を行う一方、そのポンプ翼車20及びタービン翼車22の間を直結するためのロックアップクラッチ28を備えており、このロックアップクラッチ28が完全係合させられることにより、上記ポンプ翼車20及びタービン翼車22が一体回転させられる。また、所定のスリップ状態で係合するように差圧ΔPすなわち係合トルクがフィードバック制御されることにより、駆動時には例えば50rpm程度の所定のスリップ量でタービン翼車22をポンプ翼車20に対して追従回転させる一方、逆入力時には例えば−50rpm程度の所定のスリップ量でポンプ翼車20をタービン翼車24に対して追従回転させることができる。
【0012】
上記自動変速機16は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置30と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置32及び第3遊星歯車装置34とを備えた遊星歯車式の有段変速機である。上記第1遊星歯車装置30のサンギヤS1は、クラッチC3を介して上記入力軸18に選択的に連結されると共に、一方向クラッチF2及びブレーキB3を介して非回転部材であるハウジング36に選択的に連結され、逆方向(入力軸18の回転と反対方向)の回転が阻止されるようになっている。上記第1遊星歯車装置30のキャリアCA1は、ブレーキB1を介して上記ハウジング36に選択的に連結されると共に、そのブレーキB1と並列に設けられた一方向クラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。上記第1遊星歯車装置30のリングギヤR1は、上記第2遊星歯車装置32のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介して上記ハウジング36に選択的に連結されるようになっている。上記第2遊星歯車装置32のサンギヤS2は、上記第3遊星歯車装置34のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC1を介して上記入力軸18に選択的に連結されるようになっている。上記第2遊星歯車装置32のキャリアCA2は、上記第3遊星歯車装置34のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して上記入力軸18に選択的に連結されると共に、ブレーキB4を介して上記ハウジング36に選択的に連結されるようになっており、更にブレーキB4と並列に設けられた一方向クラッチF3により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。そして、上記第3遊星歯車装置34のキャリアCA3は、出力軸38に一体的に連結されている。
【0013】
上記クラッチC1乃至C3、及びブレーキB1乃至B4は、多板式のクラッチやブレーキ等の係合・開放が所定の油圧アクチュエータによって制御される油圧式摩擦係合装置であり、後述する図3に示す油圧制御回路82のソレノイド弁Sol1、Sol2、SolR、リニアソレノイド弁SL1及びSL2の励磁・非励磁や、図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、例えば図2に示すように係合・開放状態が切り換えられ、シフトレバー68の操作位置(ポジション)に応じて5つの前進変速段(1st乃至5th)及び1つの後進ギヤ段(Rev)が成立させられるようになっている。図2の「1st」乃至「5th」は、前進の第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段を意味しており、第1速ギヤ段「1st」から第5速ギヤ段「5th」へ向かうに従って変速比γ(入力軸18の回転速度NIN/出力軸38の回転速度NOUT )は順次小さくなり、第4速ギヤ段「4th」の変速比γ4 は1.0である。また、図2において「●」は係合を、空欄は開放を、「▲」はエンジンブレーキ時の係合を表す。前記自動変速機16において、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段への1→2変速は、上記ブレーキB3が係合させられることにより達成され、エンジンブレーキ作用を発生させる必要があるエンジンブレーキレンジでは、更に上記ブレーキB2が係合させられる。このブレーキB2は、専らエンジンブレーキレンジにおいてのみ係合させられるので、上記ブレーキB3よりも相対的に係合トルク容量が小さく構成されている。また、第2速ギヤ段から第3速ギヤ段への2→3変速は、上記クラッチC3が係合させられることにより達成され、エンジンブレーキ作用を発生させる必要があるエンジンブレーキレンジでは、更に上記ブレーキB1が係合させられる。また、第3速ギヤ段から第4速ギヤ段への3→4変速は、上記クラッチC2が係合させられることにより達成される。そして、第4速ギヤ段から第5速ギヤ段へ4→5アップ変速は、上記クラッチC1を開放すると同時に上記ブレーキB1を係合させるクラッチツウクラッチアップ変速制御が実行される。
【0014】
図3は、図1のエンジン12や自動変速機16等を制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図である。この図3に示すエンジン12の吸気配管には、スロットルアクチュエータ40によって基本的にはアクセルペダル42の操作量ACCに応じた開き角(開度)θTHとされる電子スロットル弁44が設けられている。このアクセルペダル42の操作量ACCは、アクセル操作量センサ46により検出されるようになっている。また、アイドル回転速度制御のために上記電子スロットル弁44に並列に設けられてそれをバイパスさせるバイパス通路48には、前記エンジン12のアイドル回転速度(回転数)NEIDLを制御するために上記電子スロットル弁44の全閉時の吸気量を制御するISC弁(アイドル回転速度制御弁)50が設けられている。また、前記エンジン12の回転速度(回転数)NE を検出するためのエンジン回転速度センサ52、前記エンジン12の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ54、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ56、上記電子スロットル弁44の全閉状態(アイドル状態)及びその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ58、車速Vに対応する前記出力軸38の回転速度(回転数)NOUT を検出するための出力軸回転速度センサ60、前記エンジン12の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ62、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ64、シフトレバー68のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ66、前記入力軸18の回転速度NINすなわちタービン回転速度(回転数)NT を検出するためのタービン回転速度センサ70、油圧制御回路82内の作動油の温度であるAT油温TOIL を検出するためのAT油温センサ72、アップシフトスイッチ74、ダウンシフトスイッチ76等が設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE 、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、出力軸回転速度NOUT 、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー68のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT 、AT油温TOIL 、変速レンジのアップ指令RUP、ダウン指令RDN等を表す信号が電子制御装置(ECU)84に供給されるようになっている。また、フットブレーキの操作時に車輪がロック(スリップ)しないようにブレーキ力を制御するABS(アンチロックブレーキシステム)78に接続され、ブレーキ力に対応するブレーキ油圧等に関する情報が供給されるとともに、エアコン80から作動の有無を表す信号が供給されるようになっている。
【0015】
上記シフトレバー68は、運転席の近傍に配設されており、例えば駐車のための「P(パーキング)」ポジション、後進走行のための「R(リバース)」ポジション、動力伝達経路を開放するための「N(ニュートラル)」ポジション、前進走行のための「D(ドライブ)」ポジション、エンジンブレーキ走行のための「4(フォース)」ポジション、「3(サード)」ポジション、「2(セカンド)」ポジション、又は「L(ロー)」ポジションへ択一的に手動操作されるようになっている。「R」ポジションではリバース用回路が機械的に成立させられる等して図2に示す後進変速段「Rev」が成立させられ、「N」ポジションではニュートラル回路が機械的に成立させられて総てのクラッチC及びブレーキBが開放される。
【0016】
前記油圧制御回路82は、前記変速用のソレノイド弁Sol1、Sol2、SolR、リニアソレノイド弁SL1、SL2の他に、主にロックアップ油圧すなわち前記ロックアップクラッチ28の係合側油室内の油圧と開放側油室内の油圧との差圧ΔPを制御するリニアソレノイド弁SLU、主にライン油圧PL を制御するリニアソレノイド弁SLTを備えており、この油圧制御回路82内の作動油は、前記ロックアップクラッチ26へも供給されると共に、前記自動変速機16等の各部の潤滑にも使用される。上記ライン油圧PL は、前記電子制御装置84により作動制御されるオイルポンプ88により発生させられた油圧が図示しない調圧弁及びマニュアル弁等を介して、油圧式摩擦係合装置の元圧として必要かつ十分な大きさとなるように調圧されて供給されるものである。
【0017】
前記電子制御装置84は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。このCPUは、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、車両の走行に関する様々な制御を実行する。また、前記電子制御装置84は、主に前記エンジン12の出力制御や前記自動変速機16の変速制御等を実行するためのエンジン−自動変速機用電子制御装置(EFI−ECT ECU)86を備えている。このエンジン−自動変速機用電子制御装置86は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等に加えて、所定の制御作動に際してその制御開始からの時間経過を計ることができるカウンタを備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。
【0018】
図4は、前記油圧制御回路82の一部を示す図である。この図4に示すリニアソレノイド弁SL1、SL2は、図示しない電磁ソレノイドをそれぞれ備え、エンジン−自動変速機用電子制御装置86によって制御されるそれら電磁ソレノイドの電磁力に従って、一定値に調圧されたモジュレータ圧PM (元圧)から連続的に変化する制御油圧PSL1 、PSL2 を発生させて出力する。第1係合制御弁90は、上記リニアソレノイド弁SL1から供給される制御油圧PSL1 に従って、上記ライン油圧PL から連続的に変化する係合制御油圧PC1を発生させて前記クラッチC1に供給する。この係合制御油圧PC1によって前記クラッチC1の係合トルクが制御される。また、第2係合制御弁92は、上記リニアソレノイド弁SL2から供給される制御油圧PSL2 に従って、上記ライン油圧PL から連続的に変化する係合制御油圧PB1を発生させて前記ブレーキB1に供給する。この係合制御油圧PB1によって前記ブレーキB1の係合トルクが制御される。
【0019】
図5は、前記エンジン−自動変速機用電子制御装置86の信号処理によって実行される制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図5に示す変速制御手段102は、イナーシャ相開始判定手段94、基準時間決定手段96、同期回転速度継続判定手段98、及び係合終了判定手段100を含むものであり、前記アップシフトスイッチ74からの変速レンジのアップ指令RUP及びダウンシフトスイッチ76からの変速レンジのダウン指令RDNに従って、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速、例えばアクセルオフでの4→5アップ変速中に5→4ダウン変速を実行する多重変速を制御する。
【0020】
イナーシャ相開始判定手段94は、入力軸回転速度すなわち前記タービン回転速度NT の変化に基づいてアクセルオフでのアップシフト、例えば4→5アップ変速のイナーシャ相が開始されたか否かを判定する。例えば、前記タービン回転速度NT が4→5アップ変速出力時乃至それ以前における定常値から少なくとも所定のイナーシャ相開始判定回転速度差ΔNIP降下したか否かを判定する。
【0021】
基準時間決定手段96は、前記多重変速出力時すなわち5→4ダウン変速出力時における上記イナーシャ相開始判定手段94による判定結果に応じて後述する同期回転速度継続判定手段98における基準時間TSTを変更する。例えば、上記イナーシャ相開始判定手段94の判定が肯定される場合には、所定の時間Ta を上記基準時間TSTとして決定し、判定が否定される場合には、上記時間Ta よりも短い所定の時間Tb を上記基準時間TSTとして決定する。これらの時間Ta 及びTb は、前記エンジン−自動変速機用電子制御装置86のROM等に予め記憶された値であり、すなわち、基準時間決定手段96は、換言すれば、予め定められた複数の基準時間TSTのうちから一つの時間を選択決定する基準時間選択決定手段である。
【0022】
同期回転速度継続判定手段98は、前記タービン回転速度NT が出力軸回転速度NOUT とダウン変速後のギア比γとに基づく同期回転速度にて上記基準時間決定手段96により決定された基準時間TST継続したか否かを判定する。例えば、前記タービン回転速度NT が出力軸回転速度NOUT と5→4ダウン変速後のギア比γ4 との積から所定の誤差±αの範囲内すなわち下記の数式1を満たす値にて上記基準時間TST継続したか否かを判定する。この判定には、前述のカウンタが用いられる。ここで、或る回転速度が所定時間継続することは、その回転速度にて所定の回数連続して回転することと等価であることから、同期回転速度継続判定手段98は、前記タービン回転速度NT が出力軸回転速度NOUT とダウン変速後のギア比γ4 とに基づく同期回転速度にて所定の基準回数連続して回転したか否かを判定するものであると言うことができ、基準時間決定手段96は、換言すれば、前記多重変速出力時における上記イナーシャ相開始判定手段94による判定結果に応じて上記同期回転速度継続判定手段98における基準回数を決定する基準回数決定手段である。この基準回数決定手段が、前記イナーシャ相開始判定手段94の判定が肯定される場合における基準回数を、その判定が否定される場合における基準回数よりも少ない回数に決定するものであることは言うまでもない。
【0023】
[数式1]
γ4 ×NOUT −α<NT <γ4 ×NOUT +α
【0024】
係合終了判定手段100は、上記同期回転速度継続判定手段98の判定結果に応じてダウン変速が終了したか否かを判定する。例えば、上記同期回転速度継続判定手段98の判定が肯定される場合には、前記クラッチC1が完全係合させられて5→4ダウン変速が終了したと判定し、所定時間(余裕値)後に変速制御を終了する。
【0025】
図6は、上述の変速制御作動により得られる前記自動変速機16及び油圧制御回路82の作動、すなわちアクセルオフでの4→5アップ変速中に5→4ダウン変速を実行する多重変速に際しての前記ブレーキB1の係合制御作動を示すタイムチャートであり、(a)はアップ変速のイナーシャ相が開始される前に多重変速が出力された場合の作動を、(b)はアップ変速のイナーシャ相が開始された後に多重変速が出力された場合の作動をそれぞれ示している。なお、この図6の係合制御油圧指令値のタイムチャートに示すように、5→4ダウン変速に際しての前記ブレーキB1の開放には、滑らかな変速を実現するためのスイープ制御(フィードバック制御)が用いられる。
【0026】
図6(a)において、4→5アップ変速出力が行われると、その4→5アップ変速を実行するために開放側油圧式摩擦係合装置である前記クラッチC1からの作動油排出と係合側油圧式摩擦係合装置である前記ブレーキB1への作動油供給とが開始され、前記クラッチC1の係合制御油圧PC1が前記リニアソレノイド弁SL1による直接圧制御により降下させられると共に、前記ブレーキB1の係合制御油圧PB1が前記リニアソレノイド弁SL2による直接圧制御により上昇させられる。このクラッチツウクラッチ変速の進行に従ってタービン回転速度NT は漸減し、そのタービン回転速度NT が4→5アップ変速出力時における定常値から所定のイナーシャ相開始判定回転速度差ΔNIP降下した段階でアップ変速のイナーシャ相が開始されるが、図6(a)では、アップ変速のイナーシャ相が開始される前に5→4ダウン変速出力が行われている。次いで、5→4ダウン変速を実行するために開放側油圧式摩擦係合装置である前記ブレーキB1からの作動油排出と係合側油圧式摩擦係合装置である前記クラッチC1への作動油供給とが開始され、前記クラッチC1の係合制御油圧PC1が前記リニアソレノイド弁SL1による直接圧制御により上昇させられると共に、前記ブレーキB1の係合制御油圧PB1が前記リニアソレノイド弁SL2による直接圧制御により降下させられるが、ダウン変速指令時におけるこの係合制御油圧PB1が比較的低いことから前記ブレーキB1のトルク容量(クラッチ容量)が比較的小さく、点線で囲った部分に示すような大幅なタービン吹きすなわち前記エンジン12の吹き上がりが発生し易い。そこで、斯かる場合には、ダウン変速制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を比較的長いTa とすること、すなわち同期回転速度継続の判定回数を比較的多い連続A回とすることで、ショックの発生を防いでいる。
【0027】
また、図6(a)から明らかなように、5→4ダウン変速出力が行われた後、上述のタービン吹きが発生するまでの間に前記タービン回転速度NT が比較的なだらかに増減する時間帯がある。この時間帯において、前記タービン回転速度NT が前述の数式1を一時的に満たすことが考えられるが、ダウン変速制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を比較的長いTa とすることで、誤判定によるショックの発生を防止することができる。
【0028】
図6(b)では、アップ変速のイナーシャ相が開始された後に5→4ダウン変速出力が行われているが、ここでは、ダウン変速指令時における前記係合制御油圧PB1が比較的高いことから前記ブレーキB1のトルク容量(クラッチ容量)が比較的大きく、図6(a)に示すような大幅なタービン吹きは発生し難い。斯かる場合には、ダウン変速制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を比較的短いTb とすること、すなわち同期回転速度継続の判定回数を比較的少ない連続B回とすることで、応答性を高めている。このように、ダウン変速指令時における開放側油圧式摩擦係合装置のトルク容量に応じてダウン変速制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間乃至判定回数を選択的に決定することで、タービン吹きに起因するショックの発生を防止しつつ応答性を高めることができる。
【0029】
図7は、前記エンジン−自動変速機用電子制御装置86の信号処理によって実行される制御作動の要部を説明するフローチャートであり、例えば数ミリ秒乃至数十ミリ秒といった所定の周期で繰り返し実行されるものである。このフローチャートは、アクセルオフでの4→5アップ変速中に5→4ダウン変速を実行する多重変速制御ルーチンを示している。
【0030】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、アクセルオフでの4→5アップ変速中に5→4ダウンシフトが実行されたか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S1の判断が肯定される場合には、S2において、5→4ダウンシフトが実行されてから所定時間(余裕値)後に変速レンジのダウン指令RDNが出力され、前記イナーシャ相開始判定手段98に対応するS3において、5→4ダウン変速指令が4→5アップ変速時のイナーシャ相開始前に出力されたか否かが判断される。このS3の判断が肯定される場合には、S4において、5→4ダウン変速制御終了の基準となるダウン同期回転速度継続の判定回数がA回と決定された後、S5において、ダウン同期回転速度が連続でA回成立したか否かが判断される。このS5の判断が否定されるうちは、S5の判断が繰り返し実行されるされることにより待機させられるが、S5の判断が肯定される場合は、前記係合終了判定手段100に対応するS8において、5→4ダウン変速が終了したと判断されて所定時間(余裕値)後にダウン変速制御が終了させられ、それをもって本ルーチンもまた終了させられる。一方、S3の判断が否定される場合、すなわち5→4ダウン変速指令が4→5アップ変速時のイナーシャ相開始後に出力されたと判断される場合には、S6において、5→4ダウン変速制御終了の基準となるダウン同期回転速度継続の判定回数が上述のA回よりも少ないB回と決定された後、S7において、ダウン同期回転速度が連続でB回成立したか否かが判断される。このS7の判断が否定されるうちは、S7の判断が繰り返し実行されるされることにより待機させられるが、S7の判断が肯定される場合は、S8において、5→4ダウン変速が終了したと判断されて所定時間後にダウン変速制御が終了させられ、それをもって本ルーチンもまた終了させられる。以上のS4、S6が前記基準時間決定手段96に、S5、S7が前記同期回転速度継続判定手段98に、それぞれ対応する。
【0031】
このように、本実施例によれば、入力軸回転速度すなわち前記タービン回転速度NT の変化に基づいて4→5アップシフトのイナーシャ相が開始されたか否かを判定するイナーシャ相開始判定手段94(S3)と、前記タービン回転速度NT が出力軸回転速度NOUT と5→4ダウンシフト後のギア比γ4 とに基づく同期回転速度にて所定の基準時間TST継続したか否かを判定する同期回転速度継続判定手段98(S5、S7)と、前記多重変速出力時における前記イナーシャ相開始判定手段94による判定結果に応じて前記同期回転速度継続判定手段98における基準時間TSTを変更する基準時間決定手段96(S4、S6)とを、含むことから、イナーシャ相が開始されたか否かで4→5アップシフト係合側のトルク容量を大まかに予測でき、その結果に応じて5→4ダウンシフト制御終了の基準となる同期回転速度継続の判定時間を変化させることで、4→5アップシフト係合側のトルク容量が十分であることが予測される場合の応答性を高めることができる。すなわち、アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速に際してショックの発生を防止でき且つ応答性に優れた車両用自動変速機の制御装置を提供することができる。
【0032】
また、前記基準時間決定手段96は、前記イナーシャ相開始判定手段94の判定が肯定される場合における基準時間Ta を、その判定が否定される場合における基準時間Tb よりも短い時間として決定するものであるため、前記エンジン12の吹き上がりが発生しない場合の応答性を可及的に高めることができる一方、斯かるエンジン12の吹き上がりが発生する場合には、前記5→4ダウン変速出力が行われた後、前記エンジン12の吹き上がりが発生するまでの前記タービン回転速度NT が比較的なだらかに増減する時間帯において、誤判定によるショックの発生を防止することができるという利点がある。
【0033】
また、前記多重変速は、開放側の油圧式摩擦係合装置である前記ブレーキB1を開放させるのと同期して係合側の油圧式摩擦係合装置である前記クラッチC1を係合させるクラッチツウクラッチ変速であるため、アクセルオフでの4→5アップシフト中に5→4ダウンシフトを実行するクラッチツウクラッチ変速に際してショックの発生を防止でき且つ応答性に優れた車両用自動変速機の制御装置を提供することができるという利点がある。
【0034】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0035】
例えば、前述の実施例では、駆動力源として前記エンジン12のみを備えた車両について説明したが、例えば、燃料の燃焼によって駆動力を発生させる前記エンジン12に加えて電気エネルギによって駆動力を発生させるモータジェネレータを備えた所謂ハイブリッド自動車、或いは燃料電池自動車に本発明が適用されても構わない。
【0036】
また、前述の実施例では、前記エンジン−自動変速機用電子制御装置86の機能として係合終了判定手段100が設けられると共に、制御作動を示すフローチャートにその係合終了判定手段100に対応するS8が設けられていたが、それらは必ずしも設けられなくともよく、例えば、S5又はS7の判定が肯定された時点でダウン変速制御ルーチンが終了させられるものであっても構わない。
【0037】
また、前述の実施例では、前記基準時間決定手段96により決定される基準時間Ta 、Tb は何れも予め設定された一定値であったが、これらは種々のパラメータの関数であってもよい。
【0038】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制御装置が適用された車両用駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の自動変速機における複数の油圧式摩擦係合装置の組み合わせとそれにより成立させられる変速段との関係を示す図である。
【図3】図1の車両用駆動制御装置が備えている制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図4】図1の自動変速機の変速を実行させるための油圧制御回路の一部を説明する図である。
【図5】図3のエンジン−自動変速機用電子制御装置が備えている制御機能の要部すなわちアクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速制御機能を説明する機能ブロック線図である。
【図6】図3のエンジン−自動変速機用電子制御装置によるアクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速制御に際してのタイムチャートであり、(a)はアップシフトのイナーシャ相が開始される前に多重変速が出力された場合の作動を、(b)はアップシフトのイナーシャ相が開始された後に多重変速が出力された場合の作動をそれぞれ示している。
【図7】図3のエンジン−自動変速機用電子制御装置の制御作動の要部すなわちアクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速制御作動を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
16:自動変速機
18:入力軸
38:出力軸
86:エンジン−自動変速機用電子制御装置(制御装置)
94:イナーシャ相開始判定手段
96:基準時間決定手段
98:同期回転速度継続判定手段
B1:ブレーキ(油圧式摩擦係合装置)
C1:クラッチ(油圧式摩擦係合装置)
NOUT :出力軸回転速度
NT :タービン回転速度(入力軸回転速度)
Ta 、Tb 、TST:基準時間
Claims (3)
- アクセルオフでのアップシフト中にダウンシフトを実行する多重変速を制御するための車両用自動変速機の制御装置であって、
入力軸回転速度の変化に基づいて前記アップシフトのイナーシャ相が開始されたか否かを判定するイナーシャ相開始判定手段と、
前記入力軸回転速度が出力軸回転速度と前記ダウンシフト後のギア比とに基づく同期回転速度にて所定の基準時間継続したか否かを判定する同期回転速度継続判定手段と、
前記多重変速出力時における前記イナーシャ相開始判定手段による判定結果に応じて前記同期回転速度継続判定手段における基準時間を変更する基準時間決定手段と
を、含むことを特徴とする車両用自動変速機の制御装置。 - 前記基準時間決定手段は、前記イナーシャ相開始判定手段の判定が肯定される場合における基準時間を、該判定が否定される場合における基準時間よりも短い時間として決定するものである請求項1の車両用自動変速機の制御装置。
- 前記多重変速は、開放側の油圧式摩擦係合装置を開放させるのと同期して係合側の油圧式摩擦係合装置を係合させるクラッチツウクラッチ変速である請求項1又は2の車両用自動変速機の制御装置。
Priority Applications (1)
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JP2003048130A JP2004257460A (ja) | 2003-02-25 | 2003-02-25 | 車両用自動変速機の制御装置 |
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ID=33114182
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JP2003048130A Withdrawn JP2004257460A (ja) | 2003-02-25 | 2003-02-25 | 車両用自動変速機の制御装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007147067A (ja) * | 2005-10-26 | 2007-06-14 | Toyota Motor Corp | 自動変速機の変速制御装置 |
JP2008069853A (ja) * | 2006-09-13 | 2008-03-27 | Toyota Motor Corp | 自動変速機の変速制御装置 |
CN104033255A (zh) * | 2013-03-08 | 2014-09-10 | 通用汽车环球科技运作有限责任公司 | 在静态换挡后维持基本稳定的发动机怠速的系统和方法 |
-
2003
- 2003-02-25 JP JP2003048130A patent/JP2004257460A/ja not_active Withdrawn
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