JP2004256724A - 芳香族ポリカーボネート原料の調製方法および芳香族ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents

芳香族ポリカーボネート原料の調製方法および芳香族ポリカーボネートの製造方法 Download PDF

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英海 竹本
Akiyoshi Manabe
昭良 真鍋
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Abstract

【課題】芳香族ポリカーボネート原料、および高品質な芳香族ポリカーボネートを、いずれも簡略な工程で、かつ安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】芳香族ジヒドロキシ化合物の製造工程で得られる溶融状態の芳香族ジヒドロキシ化合物を、不活性ガスの存在下、酸化防止剤を含む50〜95℃のアルカリ水溶液に直接接触させ溶解させることを特徴とする芳香族ポリカーボネート原料の調製方法およびかかる調製方法で得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を、界面重合法による芳香族ポリカーボネート製造工程での原料として使用することを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ポリカーボネート原料の調製方法および芳香族ポリカーボネートの界面重合法による製造方法に関する。さらに詳しくは、芳香族ポリカーボネート原料および高品質な芳香族ポリカーボネートを、いずれも簡略化された工程で、かつ安価に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネートは、耐衝撃性等の機械的物性や透明性に優れたエンジニアリングプラスチックであり、例えばコンパクトディスクやデジタルビデオディスク、自動車のヘッドランプレンズなど種々の用途に幅広く用いられている。芳香族ポリカーボネートの製造方法としては、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンを反応させる界面重合法や芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを加熱減圧下にてエステル交換反応させる溶融重合法がよく知られている。
【0003】
この界面重合法による芳香族ポリカーボネートの製造方法においては、通常、メチレンクロライドのような有機溶剤および芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液にホスゲンを導入させて重縮合させる方法が一般に採用されている。この場合、芳香族ポリカーボネートの主原料である芳香族ジヒドロキシ化合物(ビスフェノール化合物)は、原料の溶解調製工程で、プリルと呼ばれる造粒された固体状のビスフェノール化合物をアルカリ水溶液に溶解して水溶液を調製し、重縮合工程で、この水溶液にホスゲンを吹き込む方法がよく知られている。
【0004】
ところで、この芳香族ポリカーボネートの主原料であるビスフェノール化合物は、通常、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)においては、フェノールとアセトンより合成した後、フェノールアダクト状態での晶析精製工程を行い、最終的に脱フェノール蒸留工程を経て、窒素等の不活性ガスの気流下でスプレードライヤーなどの造粒装置によりビスフェノール化合物を液滴にした後、冷却固化してプリル化することにより得られる。
【0005】
このビスフェノール化合物を用いて界面重合法により芳香族ポリカーボネートを製造するに際しては、上記のビスフェノール化合物の造粒工程で固化したビスフェノール化合物の固体プリルを、アルカリ水溶液に溶解して得られるビスフェノール化合物のアルカリ水溶液が重縮合反応に用いられている。
【0006】
このように、界面重合法における芳香族ポリカーボネート原料のビスフェノール化合物の製造工程や芳香族ポリカーボネートの製造工程において、それぞれに固体プリル化や製品の収袋、製品の輸送、また固体を取り扱う製造工程を有することから、多くの設備を必要とし、そのために設備コストの増大が避けられなかった。また粉体のビスフェノール化合物は大気中の空気を吸着し、吸着した酸素が芳香族ポリカーボネートの品質を悪化させるため、ビスフェノール化合物の貯槽には不活性ガスの流通が不可欠であり、運転コストの増大にもつながっていた。
【0007】
このような問題を解決するために、特許文献1にはビスフェノール化合物の製造工程で得られる溶融状態のビスフェノール化合物を固化させることなく水と混合し、ビスフェノール化合物をその融点以下の温度で液体状態とし、ついでアルカリ水溶液に溶解させることを特徴とするポリカーボネート樹脂原料の製造法が示されている。しかしながら、かかるビスフェノール化合物のアルカリ水溶液の製造法は煩雑な方法で工業的には不利な方法である。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−37872号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、芳香族ポリカーボネート原料、および高品質な芳香族ポリカーボネートを、いずれも簡略な工程で、かつ安価に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ビスフェノール化合物の製造工程で得られる溶融状態のビスフェノール化合物を、特定の温度に保たれ、酸化防止剤を含んだアルカリ水溶液に不活性ガスの存在下にて接触させ溶解させることにより、また、このようにして得られるビスフェノール化合物のアルカリ水溶液を界面重合法による芳香族ポリカーボネート樹脂の製造法の原料として使用することにより、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、
1.芳香族ジヒドロキシ化合物の製造工程で得られる溶融状態の芳香族ジヒドロキシ化合物を、不活性ガスの存在下、酸化防止剤を含む50〜95℃のアルカリ水溶液に直接接触させ溶解させることを特徴とする芳香族ポリカーボネート原料の調製方法。
2.芳香族ジヒドロキシ化合物の製造工程で得られる溶融状態の芳香族ジヒドロキシ化合物を、不活性ガスの存在下、酸化防止剤を含む60〜80℃のアルカリ水溶液に直接接触させ溶解させることを特徴とする芳香族ポリカーボネート原料の調製方法。
3.芳香族ジヒドロキシ化合物が、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類である前記1または前記2記載の芳香族ポリカーボネート原料の調製方法。
4.前記1または前記2記載の調製方法で得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を、界面重合法による芳香族ポリカーボネート製造工程での原料として使用することを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法。
が提供される。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の芳香族ポリカーボネート原料の製造方法は、ビスフェノール化合物の製造工程で得られる溶融状態のビスフェノール化合物を不活性ガスの存在下、酸化防止剤を含む50〜95℃のアルカリ水溶液と混合する芳香族ポリカーボネート原料の製造方法であり、また、本発明の芳香族ポリカーボネートの製造方法は、このようにして得られるビスフェノール化合物のアルカリ水溶液を界面重合法による芳香族ポリカーボネート製造工程での原料として用いる芳香族ポリカーボネートの製造方法である。
【0013】
この界面重合法による芳香族ポリカーボネートの製造方法は、メチレンクロライド(塩化メチレン)などの芳香族ポリカーボネートの溶解性に優れるハロゲン系有機溶剤の存在下に、ビスフェノール化合物のアルカリ水溶液を攪拌しながら、ホスゲンを液状またはガス状で導入し、カーボネートオリゴマーを生成させ、ついでこのカーボネートオリゴマーをトリエチルアミンに代表される塩基性触媒の存在下、または無触媒で高分子量化する方法である。
【0014】
芳香族ポリカーボネートの製造方法における主原料のビスフェノール化合物としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジシクロヘキシルビフェニルなどの4,4’−ジヒドロキシビフェニル類;
【0015】
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−4メチルフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルフェニル)メタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン類;
【0016】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)エタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン類;
【0017】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフルオロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−4−sec−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルフェニル)プロパンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン類;
【0018】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ペンチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン類;
【0019】
3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類:
【0020】
ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド類:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド類:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン類:4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン類:
【0021】
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類:4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニルなどのジヒドロキシ−p−ターフェニル類:2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ピラジン、2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,6−ジメチルピラジン、2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,6−ジエチルピラジンなどのビス(ヒドロキシフェニル)ピラジン類:1,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メンタン、2,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メンタン、1,8−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メンタン、1,8−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メンタンなどのビス(ヒドロキシフェニル)メンタン類:1,4−ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼンなどのビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン類:1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類:レゾルシン、ヒドロキノン、カテコールなどのジヒドロキシベンゼン類などが挙げられる。
【0022】
これらビスフェノール類の中でも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が、特にビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましく用いられる。
【0023】
このビスフェノール類の製造方法については、例えば、ビスフェノールAは、触媒の存在下、アセトンとフェノールを反応させることにより製造される。ここで用いる触媒としては、例えば塩酸のような酸性触媒やスルホン酸型陽イオン交換樹脂が好ましく用いられる。これらアセトンとフェノールとの反応では、通常アセトンに対して過剰のフェノールを反応させる。
【0024】
このようにして得られる反応混合物中には、ビスフェノールAの他に、未反応フェノールや未反応アセトン、触媒、副生水、イソプロペニルフェノールのような着色物質などの副生物を含有している。そこで、この反応混合物は、減圧蒸留により、未反応アセトンや副生水、未反応フェノールが除去される。
【0025】
副生物を除去した後、晶析工程において、ビスフェノールAとフェノールとの付加物であるフェノールアダクトとして晶析した後、100〜180℃で加熱溶融して液状混合物として、これを減圧蒸留してフェノールを除去することにより、溶融状態のビスフェノールAが得られる。
【0026】
このようにして得られる溶融状態のビスフェノールAは、通常、冷却窒素を流通したスプレードライヤーにより液滴にされ、冷却固化されて固体プリル状の製品とする。このようにして得られる固体プリル状のビスフェノールAは、一般的にはフレキシブルコンテナなどに充填され、芳香族ポリカーボネート製造工場に搬送される。そして、芳香族ポリカーボネートの原料調製工程においては、固体プリル状のビスフェノールAを水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液へ溶解して溶液とする溶解工程を経て、ポリカーボネートの製造原料に用いられていた。
【0027】
本発明においては、上記のようにして得られる溶融状態のビスフェノール化合物を、不活性ガスの雰囲気下で酸化防止剤を含んだ50℃〜95℃のアルカリ水溶液に直接接触させて溶解させ、芳香族ポリカーボネート原料を調製する。
【0028】
ここで、溶融状態にあるビスフェノール化合物をアルカリ水溶液に溶解させるに際し、アルカリ水溶液は50℃〜95℃、更に好ましくは60〜80℃に加熱しておくことが好ましい。50℃を下回るとビスフェノール化合物がアルカリ水溶液中に塊状析出し、比表面積が低下して溶解に時間がかかり、得られる水溶液の色相が悪化するとともに、得られる芳香族ポリカーボネートの色相も悪化する為好ましくない。またアルカリ水溶液の温度が95℃を上回ると、ビスフェノール化合物はアルカリ水溶液の接触と同時に溶解するものの、熱分解によると思われる水溶液の着色が顕著になり、得られる芳香族ポリカーボネートの色相も悪化する。
【0029】
この溶融状態にあるビスフェノール化合物とアルカリ水溶液を直接接触させ混合する方法は、特に制約はなく、一般的に用いられているラインミキサーや攪拌機付きの完全混合槽などを使用することができる。この場合、ビスフェノール化合物が酸素と接触することを避けるため、これら機器へのビスフェノール化合物の導入に際しては、機器内の空気を不活性ガスにより置換して、不活性ガス雰囲気下で行うことが必要である。不活性ガスとして、例えばアルゴンガスや窒素ガスが挙げられる。かかる不活性ガスを直接アルカリ水溶液に導入して水溶液中の溶存酸素を排除しておくことがより好ましい。
【0030】
さらに、アルカリ水溶液には酸化防止剤を含有させておく。この酸化防止剤としては、例えば亜硫酸ナトリウムやチオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトウム(ハイドロサルファイト)などが好ましく、その含有量は、アルカリ水溶液の量に対して10〜10000ppmとすればよい。この酸化防止剤は、ビスフェノール化合物を溶解させるアルカリ水溶液に予め添加しておく。この酸化防止剤の添加により、得られるビスフェノール化合物のアルカリ水溶液の色相が良好となるとともに、これを原料として得られる芳香族ポリカーボネートの色相が著しく良好となる。
【0031】
そして、この溶融状態のビスフェノール化合物を溶解させるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が用いられるが、特に水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。このアルカリ水溶液の濃度は、2〜50重量%が好ましく、5〜10重量%が更に好ましい。また、このアルカリ水溶液の使用量については、これに溶解させるビスフェノール1モルに対して、1.9〜2.5モルを用いることが好ましく、2〜2.2モルを用いることが更に好ましい。
【0032】
このようにして得られるビスフェノール化合物のアルカリ水溶液を原料として芳香族ポリカーボネートを製造する方法は、従来のようにビスフェノール化合物の固体プリルをアルカリ水溶液に溶解する工程を必要としない他は、従来の界面重合法による芳香族ポリカーボネートの製造方法と同様の操作により芳香族ポリカーボネートを製造することができる。
【0033】
すなわち、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などのポリカーボネート樹脂の溶解性に優れた有機溶剤の存在下に、上記のビスフェノール化合物のアルカリ水溶液を攪拌しながら、これにホスゲンを液状またはガス状で加えてカーボネートオリゴマーとし、次いでカーボネートオリゴマーを高分子量化する方法が採用される。
【0034】
上記界面重合法によって芳香族ポリカーボネートを製造するにあたっては、必要に応じて触媒、末端停止剤等を使用しても良い。
【0035】
また、芳香族ポリカーボネートは、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートでもよく、さらに芳香族または脂肪族の二官能性芳香族カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートでもよい。
【0036】
また、触媒としてはトリエチルアミン等の第3級アミンや第4級アンモニウム塩が挙げられる。さらに、末端停止剤としては単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネートは、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
【0037】
かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノール又は低級アルキル置換フェノールであって、上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0038】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができ、これらを用いてポリカーボネート共重合体の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、殊に光学ディスク基板としての物性、特に樹脂の吸水率を低くする効果があり、また基板の複屈折が低減される効果もあり好ましく使用される。
【0039】
置換フェノール類として、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール及びトリアコンチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシル及びヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0040】
これらの末端停止剤は、得られた芳香族ポリカーボネートの全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、比粘度(ηsp)で0.2〜0.9が好ましく、0.23〜0.55が特に好ましい。かかる比粘度を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。
【0041】
前記製造方法により得られた芳香族ポリカーボネートの有機溶媒溶液は、その製造過程で使用されたハロゲン化炭化水素溶媒(例えば塩化メチレン)を少なからず含有している有機溶媒溶液であり、好ましくは実質的にハロゲン化炭化水素を溶媒とする溶液である。
【0042】
かかる芳香族ポリカーボネートの有機溶媒溶液は、通常水洗浄が施される。この水洗工程は、好ましくはイオン交換水等の電気伝導度10μS/cm以下、より好ましくは1μS/cm以下の水により行われ、前記有機溶媒溶液と水とを混合、攪拌した後、静置してあるいは遠心分離機等を用いて、有機溶媒溶液相と水相とを分液させ、有機溶媒溶液相を取り出すことを繰り返し行い、水溶性不純物を除去する。水洗浄を行うことにより水溶性不純物が除去され、得られる芳香族ポリカーボネートの色相は良好なものとなる。
【0043】
また、上述の芳香族ポリカーボネートの有機溶媒溶液は、触媒等の不純物を除去するために酸洗浄やアルカリ洗浄を行うことも好ましい。
【0044】
酸洗浄に用いる酸としてはりん酸、塩酸、硫酸等の水溶液が好ましく用いられ、好ましくは0.0004〜40g/リットル濃度(またはpH5以下)の水溶液が使用される。アルカリ洗浄に用いるアルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物が挙げられ、特に水酸化ナトリウムが好ましく用いられ、好ましくは0.1〜20g/リットル濃度(またはpH11.5以上)の水溶液が使用される。
【0045】
アルカリ洗浄や酸洗浄に用いる水溶液と有機溶媒溶液との割合は、水溶液/有機溶媒溶液(溶量比)で表わして0.2〜1.5の範囲で用いるのが、洗浄が効率的に行われ好ましい。
【0046】
また、上記有機溶媒溶液は不溶性不純物である異物を除去することが好ましく行われる。この異物を除去する方法は、濾過する方法あるいは遠心分離機で処理する方法が好ましく採用される。
【0047】
有機溶媒溶液を濾過する方法において、濾過に用いるフィルターは、有機溶媒溶液に耐えうる材質であり、例えばセルロース製、セラミック製、ポリオレフィン系樹脂製および銅・ステンレス等の金属製等の材質のものが挙げられる。
【0048】
また、フィルターの孔径は0.3〜5μmが好ましく、0.3〜2μmがより好ましく、0.3〜1.5μmがさらに好ましく、0.3〜1μmが特に好ましい。孔径が上記範囲のフィルターは、濾過効率が適度であり、また、芳香族ポリカーボネート中の異物量が十分に低減され好ましく使用される。
【0049】
また、有機溶媒溶液を遠心分離機で処理する方法において、その遠心力は500〜15000Gの範囲が好ましい。かかる範囲内であると有機溶媒溶液中の異物を極めて少なくでき、また機械強度面からの材質選定が容易であり好ましい。
【0050】
上記水洗浄が施された有機溶媒溶液は、次いで、溶媒を除去して芳香族ポリカーボネート樹脂の粉粒体を得る操作が行われる。
【0051】
芳香族ポリカーボネート粉粒体を得る方法(造粒工程)としては、操作や後処理が簡便なことから、芳香族ポリカーボネート粉粒体および温水(65〜90℃程度)が存在する造粒装置中に、攪拌状態で、芳香族ポリカーボネートの有機溶媒溶液を連続的に供給して、該溶媒を蒸発させることにより、スラリーまたは湿潤ペースト、好ましくはスラリーを製造する方法が好ましく採用される。造粒装置としては攪拌槽やニーダーなどの混合機が好ましく採用される。
【0052】
ここでいうスラリーとは芳香族ポリカーボネート粉粒体が有機溶媒および水よりなる混合溶媒中に懸濁した流動性を有する状態のものであり、湿潤ペーストとは、このスラリーよりも混合媒体の量が少なく、流動しないかあるいは流動性が低い状態のものをいう。かかるスラリーおよび湿潤ペーストは、芳香族ポリカーボネート粉粒体1重量部に対して、水0.005〜100重量部及びハロゲン化炭化水素0.001〜1.5重量部からなる芳香族ポリカーボネート混合物である。
【0053】
造粒装置内の芳香族ポリカーボネート混合物は、乾燥効率の良い粉粒体を効率良く得るためにスラリー状態とすることが好ましい。このスラリーは、芳香族ポリカーボネート粉粒体1重量部に対して、水の量が好ましくは1.0〜100重量部であり、より好ましくは1.1〜25重量部であり、さらに好ましくは1.3〜15重量部であり、特に好ましくは1.5〜10重量部である。
【0054】
また、このスラリーは、芳香族ポリカーボネート粉粒体1重量部に対して、有機溶媒の量が好ましくは0.01〜1.5重量部であり、より好ましくは0.03〜1.1重量部であり、さらに好ましくは0.05〜1.0重量部であり、特に好ましくは0.07〜0.9重量部である。
【0055】
かかる方法により、生成されたスラリーまたは湿潤ペーストは、好ましくは造粒装置の上部または下部から連続的に排出される。
【0056】
前記排出されたスラリーまたは湿潤ペーストは、次いで熱水処理を行うこともできる。
【0057】
熱水処理工程は、かかるスラリーまたは湿潤ペーストを90〜100℃の熱水の入った熱水処理容器に供給するかまたは供給した後に蒸気の吹き込みなどにより水温を90〜100℃にすることによって、スラリーまたは湿潤ペーストに含まれる有機溶媒を除去するものである。
【0058】
前記造粒工程で排出されたスラリーまたは湿潤ペーストもしくは前記熱水処理後のスラリーまたは湿潤ペーストは、好ましくは濾過、遠心分離等によって水および有機溶媒をある程度除去し、芳香族ポリカーボネートの湿潤ペーストを回収する。
【0059】
前記、芳香族ポリカーボネートの湿潤ペーストは、次いで乾燥され、粉粒体を得ることができる。
【0060】
乾燥工程に供する芳香族ポリカーボネートの湿潤ペーストは、芳香族ポリカーボネート粉粒体1重量部に対して、水の量が好ましくは0.005〜1.3重量部であり、より好ましくは0.01〜1.2重量部であり、さらに好ましくは0.05〜1.1重量部である。また、該湿潤ペーストは、芳香族ポリカーボネート粉粒体1重量部に対して、ハロゲン化炭化水素の量が好ましくは0.001〜0.5重量部であり、より好ましくは0.003〜0.1重量部であり、さらに好ましくは0.005〜0.05重量部である。
【0061】
乾燥機としては、伝導加熱方式でも熱風加熱方式でもよく、芳香族ポリカーボネート粉粒体が静置、移送されても攪拌されてもよい。なかでも、伝導加熱方式でポリカーボネート樹脂粉粒体が攪拌される溝形または円筒乾燥機が好ましく、溝形乾燥機が特に好ましい。乾燥温度は130〜150℃の範囲が好ましく採用される。
【0062】
本発明の製造方法で得られる芳香族ポリカーボネートには、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤(脂肪酸エステル等)、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、増白剤、紫外線吸収剤、耐候剤、抗菌剤、顔料、染料、充填剤、強化剤、他樹脂やゴム等の重合体、難燃剤等の改質改良剤を適宜添加して用いることができる。
【0063】
なかでも熱安定剤はリン系の熱安定剤が好ましく用いられ、例えば亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。
【0064】
具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0065】
なかでも、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、及び4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)等が好ましく使用され、特にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト及び4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)が好ましい。これらは単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの熱安定剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.1重量部、好ましくは0.002〜0.05重量部である。
【0066】
前記熱安定剤を芳香族ポリカーボネートに配合する方法としては、重合反応後の芳香族ポリカーボネート溶液に添加する方法、芳香族ポリカーボネートパウダーに添加する方法のいずれの方法で加えてもよい。特に、重合反応後の芳香族ポリカーボネート溶液に添加する方法が得られる芳香族ポリカーボネートの色相および熱安定性がより向上し好ましく、精製終了後の芳香族ポリカーボネート溶液に添加する方法または温水で造粒する際に温水中に添加する方法が好ましい。熱安定剤は、溶媒に溶解してあるいはそのまま添加しても構わない。
【0067】
上記乾燥後得られた芳香族ポリカーボネート粉粒体は、溶融押出し、ペレット化することもできる。このペレットは成形用に好ましく供される。
【0068】
【実施例】
次に、実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。
なお、得られる溶液のAPHAはJIS K−4101に準じて測定し、ポリカーボネートの比粘度(ηsp)はポリカーボネート0.7gを塩化メチレン100mlに溶解し、20℃で測定した。
【0069】
〔実施例1〕
混合槽に純水を毎時17.2kgと25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を毎時6.7kgおよびハイドロサルファイトを毎時70g添加し、ポンプで循環しながら外部熱交換器で70℃まで昇温した。この際混合槽には毎分10Lの乾燥窒素を導入した。
【0070】
このアルカリ水溶液を毎分10Lの窒素を導入している攪拌機付の完全混合槽に毎時23.9kgを供給しながら、フェノール/ビスフェノールAの1:1アダクトスラリーを170℃で減圧し、フェノールを除去した溶融状態のビスフェノールAを毎時4.5kgの速度で供給して混合した。完全混合槽での平均滞留時間(A)は1分間とした。
【0071】
さらに、完全混合槽から排出されるビスフェノールAのアルカリ溶液は熱交換器によって30℃まで冷却し、貯槽へ導入した。このようにして得られた、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液への溶解液には、ビスフェノールAの結晶は見られず、この溶解液のAPHA色相は5であった。
【0072】
〔実施例2〕
水酸化ナトリウム水溶液の温度を65℃とした他は、実施例1と同様にした。この結果、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液への溶解液には、ビスフェノールAの結晶は見られず、この溶解液のAPHA色相は5であった。
【0073】
〔実施例3〕
水酸化ナトリウム水溶液の温度を75℃とした他は、実施例1と同様にした。この結果、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液への溶解液には、ビスフェノールAの結晶は見られず、この溶解液のAPHA色相は5であった。
【0074】
〔実施例4〕
水酸化ナトリウム水溶液の温度を50℃とし、(A)を5分間に変更した他は、実施例1と同様にした。この結果、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液への溶解液には、ビスフェノールAの結晶は見られず、この溶解液のAPHA色相は5であった。
【0075】
〔実施例5〕
水酸化ナトリウム水溶液の温度を85℃とし、(A)を0.5分間に変更した他は、実施例1と同様にした。この結果、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液への溶解液には、ビスフェノールAの結晶は見られず、この溶解液のAPHA色相は10であった。
【0076】
〔実施例6〕
水酸化ナトリウム水溶液の温度を95℃とし、(A)を0.5分間に変更した他は、実施例1と同様にした。この結果、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液への溶解液には、ビスフェノールAの結晶は見られず、この溶解液のAPHA色相は10であった。
【0077】
〔比較例1〕
水酸化ナトリウム水溶液の温度を40℃とし、(A)を5分間に変更した他は、実施例1と同様にした。この結果、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液への溶解液には、ビスフェノールAの結晶が微量残存しており、この溶解液のAPHA色相は20であった。
【0078】
〔比較例2〕
水酸化ナトリウム水溶液の温度を98℃とし、(A)を0.5分間に変更した他は、実施例1と同様にした。この結果、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液への溶解液には、ビスフェノールAの結晶はみられなかったが、この溶解液のAPHA色相は25であった。
【0079】
〔比較例3〕
酸化防止剤であるハイドロサルファイトの使用を中止した他は、実施例1と同様にした。この結果、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液への溶解液には、ビスフェノールAの結晶はみられなかったが、この溶解液のAPHA色相は30であった。
【0080】
〔比較例4〕
アルカリ水溶液およびビスフェノールAを溶解する混合槽への乾燥窒素の導入を中止した他は、実施例1と同様にした。この結果、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液への溶解液には、ビスフェノールAの結晶はみられなかったが、この溶解液のAPHA色相は30であった。
【0081】
〔比較例5〕
酸化防止剤であるハイドロサルファイトの使用を中止し、アルカリ水溶液およびビスフェノールAを溶解する混合槽への乾燥窒素の導入を中止した他は、実施例1と同様にした。この結果、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液への溶解液には、ビスフェノールAの結晶はみられなかったが、この溶解液のAPHA色相は50であった。
【0082】
実施例1〜6および比較例1〜5の結果を表1にまとめた。
【0083】
【表1】
Figure 2004256724
【0084】
〔実施例7〕
実施例1で得られたビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液100重量部を攪拌機付回分式重合槽に移送し、塩化メチレン52部を加え攪拌を行いながら、反応液を25℃に保ちホスゲン7.75部を70分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み後、末端停止剤であるp−t−ブチルフェノール1.1部と塩化メチレン8.9部を混合して、末端停止剤溶液を調製した液から4.7部を加え、反応液を32℃に保ちながら150分間攪拌して反応を終了した。
【0085】
反応後生成物を塩化メチレンで希釈し、攪拌、静置後塩化メチレン層と水層に分離し、塩化メチレン層を導電率がイオン交換水と同程度になるまで水洗し、その後塩化メチレンを蒸発させてポリカーボネートのパウダーを得た。
パウダーの比粘度は0.45であり、パウダーの着色は見られなかった。
【0086】
〔比較例6〕
比較例4で得られたビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を使用する他は、実施例7と同様の方法でポリカーボネートを製造、精製してポリカーボネートのパウダーを得た。パウダーの比粘度は0.45であり、パウダーは薄黄色く着色していた。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、芳香族ポリカーボネート原料の調製工程で、ビスフェノール化合物の固体プリルを扱うことなく、短時間にビスフェノール化合物のアルカリ溶液が品質よく調製できるため、それらに伴う設備費や運転コストを低減することができ、さらに高品質のポリマーを得ることができる。

Claims (4)

  1. 芳香族ジヒドロキシ化合物の製造工程で得られる溶融状態の芳香族ジヒドロキシ化合物を、不活性ガスの存在下、酸化防止剤を含む50〜95℃のアルカリ水溶液に直接接触させ溶解させることを特徴とする芳香族ポリカーボネート原料の調製方法。
  2. 芳香族ジヒドロキシ化合物の製造工程で得られる溶融状態の芳香族ジヒドロキシ化合物を、不活性ガスの存在下、酸化防止剤を含む60〜80℃のアルカリ水溶液に直接接触させ溶解させることを特徴とする芳香族ポリカーボネート原料の調製方法。
  3. 芳香族ジヒドロキシ化合物が、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類である請求項1または請求項2記載の芳香族ポリカーボネート原料の調製方法。
  4. 請求項1または請求項2記載の調製方法で得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を、界面重合法による芳香族ポリカーボネート製造工程での原料として使用することを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法。
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